説明

フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ

【課題】直流電源が低電圧・大電流の直流電力で、その直流電源からの入力電圧が該低電圧の範囲内で比較的高く、かつ軽負荷時の場合でも、出力電圧を容易に制御でき、電力変換効率も高いフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】直流電源8が低電圧・大電流の直流電力で、その直流電源8からの入力電圧が該低電圧の範囲内で高く、かつ軽負荷時の場合でも、電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路5を単にフルブリッジから特定変形ハーフブリッジに切り替えるだけで、その制御範囲が広くなり出力電圧を容易に制御できる。また、フルブリッジ複合共振回路5の電流共振および電圧共振によりスイッチング素子Qのスイッチングロスを低減させるので、コンバータの電力変換効率を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池や太陽電池などの直流電源からの直流電力を所定電圧の直流電力に変換するフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池や太陽電池などの直流電源の直流電力をコンバータ部により昇圧した電圧の直流電力に変換した後、インバータ部により商用の交流電力に変換する電力変換装置が知られている。
【0003】
この例として、直流電源からの直流電力をスイッチング素子のスイッチングにより昇圧するDC−DCコンバータと、この直流電力をスイッチング素子のスイッチングにより交流電力に変換するインバータと、電力変換損失を最小化するようにインバータを制御する直流電圧最適化手段とを有する系統連系インバータが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−101581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、直流電源の低コスト化のため、例えば燃料電池は、セル数を少なくできるので、より低電圧・大電流の直流電力の直流電源を使用することが要請されており、直流電源からの低電圧・大電流で入力する直流電力の場合、スイッチング素子のターンオフ、ターンオン時の電圧と電流の重なりが大きいとき、スイッチングロスが大きくなり、コンバータ部の電力変換効率の向上が困難となるという問題があった。このため、コンバータ部を電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータにして前記電圧と電流の重なりをなくすことによりスイッチングロスを低減させて、電力変換効率を高くすることが考えられる。
【0006】
その一方、直流電源からの直流電力の入力電圧が該低電圧の範囲内で比較的高くて、かつ軽負荷時の場合に、前記フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータの通常制御では、当該直流電力の入力電圧の変動に対して、その出力電圧の制御が困難となるという問題があった。
【0007】
本発明は、直流電源が低電圧・大電流の直流電力で、その直流電源からの入力電圧が該低電圧の範囲内で比較的高く、かつ軽負荷時の場合でも、出力電圧を容易に制御でき、電力変換効率も高いフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータは、一次巻線および二次巻線をもつトランスを有し電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路であるコンバータ部と、制御手段とを備え、前記制御手段によるコンバータ制御により、直流電源からの低電圧・大電流で入力する直流電力を所定電圧の直流電力に変換するものであって、前記フルブリッジ複合共振回路は、フルブリッジに結合されたスイッチング素子にそれぞれ並列に電圧共振コンデンサが接続され、かつ、該回路と前記トランスの一次巻線との間に直列に電流共振コンデンサが接続されており、前記制御手段は、前記直流電源からの入力電圧が前記低電圧の範囲内で高い場合に、かつ軽負荷時に、フルブリッジから、いずれか1つのスイッチング素子の発振を停止させて他のスイッチング素子を発振させる特定変形ハーフブリッジに切り替えるブリッジ切替制御部を備えているものである。
【0009】
ここで、変形ハーフブリッジとは2つのスイッチング素子と1つの直列コンデンサとからなって、一方のスイッチング素子のスイッチングで直列コンデンサを充電させた後に、他方のスイッチング素子のスイッチングでこれを放電させることにより、ハーフブリッジの動作波形を示すものをいう。特定変形ハーフブリッジとは、フルブリッジの4つのスイッチング素子のうちいずれか1つを停止させて、これを除いた他の3つのスイッチング素子と直列共振コンデンサとにより、前記変形ハーフブリッジと同様の動作を行うものをいう。
【0010】
この構成によれば、直流電源が低電圧・大電流の直流電力で、その直流電源からの入力電圧が該低電圧の範囲内で高く、かつ軽負荷時の場合でも、電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路を単にフルブリッジから特定変形ハーフブリッジに切り替えるだけで、出力する直流電力の電力量がフルブリッジと比べて半減等することによってその制御範囲が広くなり出力電圧を容易に制御できる。また、フルブリッジ複合共振回路の電流共振および電圧共振によりスイッチング素子のスイッチングロスを低減させるので、コンバータの電力変換効率を高くすることができる。
【0011】
好ましくは、軽負荷時にフルブリッジ複合共振回路をバースト発振に移行させるので、無駄な電力を省いて軽負荷時でのスイッチング素子のスイッチングロスをさらに低減させることができるから、軽負荷時にも高い電力変換効率を実現することができる。
【0012】
好ましくは、前記トランスが一次巻線および昇圧出力する二次巻線を有する昇圧トランスであって、前記昇圧トランスの二次電圧を前記所定電圧に倍圧する倍電圧回路を備えている。したがって、昇圧トランスの昇圧と倍電圧回路の倍圧との組み合わせにより、コンバータの電力変換効率をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータを示す回路構成図である。
【図2】(A)はフルブリッジ複合共振回路をフルブリッジにした場合、(B)は特定変形ハーフブリッジにした場合における各スイッチング素子の発振波形を示す特性図である。
【図3】(A)はフルブリッジ複合共振回路のフルブリッジにおける、(B)(C)は特定変形ハーフブリッジにおける各スイッチング素子の発振波形を示す。
【図4】フルブリッジ複合共振回路について特定変形ハーフブリッジ制御した場合とフルブリッジ制御した場合を比較した特性図である。
【図5】図1のコンバータ部のバースト発振動作を示す特性図である。
【図6】図1の電力変換装置のコンバータ部に倍電圧回路を用いた場合の電力変換効率を示す特性図である。
【図7】図1のコンバータ部の電力変換効率を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態であるフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータを備えた電力変換装置の回路構成図である。この電力変換装置は、例えば燃料電池の直流電源8が低電圧・大電流である直流電力を交流電力に変換して交流電力系統1へ連系するもので、この交流電力系統1および直流電源8のほかに、前記低電圧・大電流の直流電力を昇圧した所定電圧の直流電力に変換するコンバータ部3、コンバータ3からの昇圧した直流電力を所定の交流電力に変換するインバータ部2、および装置全体を制御する制御手段10を備えている。前記インバータ部2は例えば4つのトランジスタのようなスイッチング素子およびダイオードのフルブリッジの構成(図示せず)を有する。
【0015】
前記コンバータ部3は、一次巻線Npおよび昇圧出力する二次巻線Nsをもつ昇圧トランス6を有し、電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路5と、前記昇圧トランス6の二次電圧を前記所定電圧に倍圧する倍電圧回路7とを備えたフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータからなる。つまり、コンバータ部3は、昇圧トランス6の一次側にフルブリッジ複合共振回路5を、二次側に倍電圧回路7を配置した構成を有している。
【0016】
前記フルブリッジ複合共振回路5は、4つのスイッチング部にそれぞれスイッチング素子Q(Q1〜Q4)を有し、直流電源1の両端に並列に接続された電解コンデンサのような平滑コンデンサCsを介して、スイッチング素子Q1、Q3の直列回路と、スイッチング素子Q2、Q4の直列回路とが並列に接続されており、スイッチング素子Q1、Q3の接続点と、スイッチング素子Q2、Q4の接続点とが昇圧トランス6の一次巻線Npに接続されて、フルブリッジが構成されている。そして、フルブリッジに結合された4つのスイッチング素子Q1〜Q4にそれぞれ並列に電圧共振コンデンサCv1〜Cv4が接続され、かつ、該回路5と昇圧トランス6の一次巻線Npとの間に直列に電流共振コンデンサCiが接続されている。スイッチング素子Qには例えばMOS−FETが使用されているが、NPN型トランジスタなどでもよい。
【0017】
フルブリッジ複合共振回路5の電流共振は、スイッチング素子Qがオンのとき、電流共振コンデンサCiと、昇圧トランス6の漏れインダクタンスLlと、後述する倍電圧用コンデンサCdとによる所定の共振周波数foにより行われる。この共振周波数foは、漏れインダクタンス値Ll、一次、二次自己インダクタンス値Lp、Ls、電流共振コンデンサのキャパシタンス値Ci、倍電圧用コンデンサのキャパシタンス値Cdとしたとき、次式で表される。
fo=(1/2π)√((1/CiLl)+(1/CdLl)(Lp/Ls))
前記倍電圧用コンデンサCdは、その設定容量を変えることにより、この共振周波数の調整用として使用することができ、電流共振の共振周波数を最適に調整することができる。
【0018】
なお、本回路5は、後述する一次巻線Npと二次巻線Nsの巻数比の調整によりフライバック的な動作を行うとき、前記電流共振は昇圧トランス6の自己インダクタンス(漏れインダクタンスおよび励磁インダクタンス)と電流共振コンデンサCiとで行われる。
【0019】
フルブリッジ複合共振回路5の電圧共振は、スインチング素子Qがオンからオフ、オフからオンに切替時に、電圧共振コンデンサCvと昇圧トランスの自己インダクタンス(漏れインダクタンスおよび励磁インダクタンス)、電流共振コンデンサCiとによる所定の共振周波数で行われる。さらに、昇圧トランス6のギャップを所定の長さに設定し、そのインダクタンスを変化させることにより、共振周波数を調整することができる。
【0020】
このフルブリッジ複合共振回路5は、直流電源8が低電圧・大電流の直流電力であっても、電流共振および電圧共振により、スイッチング素子Qのターンオフ、ターンオン時に電圧と電流の重なりをなくすことができ、オフ時に若干のスイッチング損失があるものの、回路全体でスイッチング損失が低減されて、コンバータ部3の電力変換効率を向上させることができる。この例では、電圧共振よりも電流共振の方がスイッチングロスの低減効果がより大きい。
【0021】
前記制御手段10は、コンバータ部3を制御して、低電圧・大電流の直流電源8の直流電力を昇圧した所定電圧の直流電力に変換した後、インバータ部2を制御して、昇圧した直流電力を所定の交流電力に変換する。制御手段10は、インバータ部2の交流出力の検出に基づき、その値が所定の電圧値となるように、フルブリッジ複合共振回路5のスイッチング素子Qおよびインバータ部2のスイッチング素子をスイッチング制御する。図2(A)はフルブリッジ複合共振回路5におけるフルブリッジの各スイッチング素子Q1〜Q4をたすき掛けに動作させた発振波形を示す。中程度の負荷から定格負荷の範囲、および直流電源8からの入力電圧が低電圧の範囲内で比較的低い場合にはこのフルブリッジで発振させる。
【0022】
制御手段10は、直流電源8からの入力電圧が前記低電圧の範囲内で高い場合に、かつ軽負荷時に、フルブリッジから、いずれか1つのスイッチング素子Qの発振を停止させてこれを除いた他のスイッチング素子Qを発振させる特定変形ハーフブリッジに切り替えるブリッジ切替制御部12を備えている。
【0023】
図2(B)は、フルブリッジ複合共振回路5のスイッチング素子Q1〜Q4のうち例えばスイッチング素子Q1の発振を停止させて、フルブリッジを特定変形ハーフブリッジとした場合の各スイッチング素子Q1〜Q4の発振波形を示す。図2(B)のように、スイッチング素子Q1の発振が停止していること以外、各スイッチング素子Q2〜Q4は図2(A)と同様の発振波形を示す。この例では、スイッチング素子Q1の発振を停止させて特定変形ハーフブリッジとしているが、これに代えて、スイッチング素子Q2〜Q4のいずれか1つの発振を停止させるようにしてもよい。
【0024】
図1において、このスイッチング素子Q1の発振を停止させた(細線の破線内)特定変形ハーフブリッジの場合、制御手段10により、斜め向かいのスイッチング素子Q2、Q3を発振させると、一点鎖線(太線)のように、直流電源8の+極からスイッチング素子Q2、電流共振コンデンサCi、昇圧トランス6を経由して、スイッチング素子Q3、直流電源8の−極に電流が流れて、電流共振コンデンサCiが充電される。つぎに、停止させたスイッチング素子Q1の斜め向かいのスイッチング素子Q4を発振させると、破線(太線)のように、電流共振コンデンサCiの充電電流がスイッチング素子Q4、スイッチング素子Q3、昇圧トランス6を経由して、電流共振コンデンサCiに流れる。
【0025】
図3(A)は、フルブリッジ複合共振回路5がフルブリッジの場合における各スイッチング素子Q1〜Q4のVDS(ドレイン−ソース電圧)、ID(ドレイン電流)、VGS(ゲート−ソース電圧)の各波形を示す。図3(B)は、スイッチング素子Q1を停止させた場合のスイッチング素子Q2〜Q4のVDS、ID、VGSの各波形を示す。図3(C)はスイッチング素子Q1のVDS、ID、VGSの各波形を示す。図3(B)の特定変形ハーフブリッジ(変形ハーフブリッジ)を、図3(A)のフリブリッジの場合と比較すると、特定変形ハーフブリッジの各信号の周期がフルブリッジの場合の2倍と長くなっている。
【0026】
ここで、特定変形ハーフブリッジ(変形ハーフブリッジ)とフルブリッジとは以下の点で相違する。すなわち、フルブリッジでは、各スイッチング素子がオンの時、直流電源から電力が供給されるのに対し、特定変形ハーフブリッジでは、一方のスイッチング素子がオンの時、直流電源から電力が供給されるが、他方のスイッチング素子がオンの時に、電流共振コンデンサに蓄えられた電力によって2次側へエネルギを伝達する。したがって、一連のオン・オフ動作を考えた場合、特定変形ハーフブリッジは、直流電源からの電力供給がフルブリッジとした場合の1/2となる。
【0027】
図4は、実験により得られたもので、フルブリッジ複合共振回路5について特定変形ハーフブリッジ制御した場合とフルブリッジ制御した場合を比較した特性図で、横軸は入力電圧、縦軸は出力電圧である。図4のように、本発明に係る特定変形ハーフブリッジ制御は、フルブリッジ制御に比べて入力電圧の変動に対して共振できる範囲が広いので出力電圧の範囲が広くなり、また広範囲の入力電圧に対応することも可能となる。特定変形ハーフブリッジでは、出力する直流電力の電力量がフルブリッジと比較して半減すること等によるものである。したがって、直流電源8からの入力電圧が低電圧の範囲内で高い場合で、かつ軽負荷時に、単にフルブリッジをスイッチング素子の1つの発振を停止させた特定変形ハーフブリッジに切り替えるだけで、その制御範囲が広くなり出力電圧を容易に制御できる。
【0028】
さらに、制御手段10は、軽負荷時にフルブリッジ複合共振回路5のスイッチング周波数を任意の所定間隔に間欠させたバースト発振に移行させる制御を行うバースト発振制御部14を有する。バースト発振制御部14は、直流電源8の直流電力からの入力電圧および電力範囲に応じてトリガ信号を発生させて任意に間欠させたバースト発振制御を行う。図4は、連続動作の波形、および発振と停止を繰り返すバースト(間欠)発振の波形を示す。この例では、バースト発振は、トリガ信号の入力に基づいて指定の波数の発振を繰り返すが、指定の波数で発振と停止を繰り返すオートバースト発振でもよい。
【0029】
このバースト発振により、各スイッチング素子Qの不必要なターンオフ、ターンオンを減らすことにより、軽負荷時でのスイッチング素子Qのスイッチングロス、導通ロス、およびトランスでの鉄損、銅損を低減することができる。また、バースト(間欠)発振により出力電圧の上昇を抑制できるので、このコンバータ部3は、軽負荷時に、前記特定変形ハーフブリッジへの切り替え動作と相俟って、出力電圧を容易に制御することができる。
【0030】
前記昇圧トランス6は、上記したように、一次巻線Npがフルブリッジ複合共振回路5と接続され、二次巻線Nsが倍電圧回路7と接続されている。直流電源8の直流電力が低電圧・大電流のため、昇圧トランス6の昇圧と倍電圧回路7の倍圧とで、次段のインバータ部2のインバータ効率を高めるのに最も良好な電圧の直流電力を出力させるように、一次巻線Npと二次巻線Nsの巻数比を所定の巻数比に設定される。
【0031】
そして、このコンバータ部3では、昇圧トランス6の巻数比は、そのコアロスがより少なくなるように、一次巻線Npと二次巻線Nsの巻数比を前記所定の巻数比よりも若干高く設定している。低電圧・大電流の入力で、巻数比を若干高くしたとき、二次電圧は上昇しようとするが、制御手段10は出力電圧を一定電圧になるように制御するので、前記電流共振における自己インダクタンスと電流共振コンデンサとの共振区間を狭くすることにより、スイッチング素子Qがオンの状態で昇圧トランス6に電力を蓄積する、いわゆるフライバック的な動作区間が短くなる。実験の結果、この動作によって、このコンバータ部3は昇圧トランス6のコアロスをより低減することができる。なお、一次巻線Npと二次巻線Nsの巻数比の設定を変えることにより、前記共振周波数を調整することができる。
【0032】
前記倍電圧回路7は、例えば昇圧トランス6の二次巻線Nsの一端と直列に接続された倍電圧用コンデンサCdおよび第2ダイオードD2と、この倍電圧用コンデンサCdと第2ダイオードD2間で二次巻線Nsの両端と並列に接続された第1ダイオードD1と、回路出力端に並列に接続された直流出力コンデンサCoとを有している。二次巻線Nsに励起される交番電圧の一方の半周期に第1ダイオードD1が導通して倍電圧用コンデンサCdを充電し、他方の半周期に第2ダイオードD2が導通して倍電圧用コンデンサCdを放電して、倍電圧用コンデンサCdに充電された電圧およびそれと同方向、同電圧レベルの二次巻線Nsに励起される交番電圧を生成する。この例では、倍電圧回路7は昇圧トランス6の二次電圧を2倍に倍圧しているが、3倍以上に倍圧してもよい。なお、倍電圧用コンデンサCdは共振周波数の調整用のコンデンサとして使用することができ、前記フルブリッジ複合共振回路5は、この倍電圧用コンデンサCdを含む電流共振を行う。
【0033】
図5は、昇圧トランス6の2次側に倍電圧回路7を接続した場合と、全波整流回路を接続した場合における、コンバータ部3の電力変換効率を比較した特性図で、実験により得られたものである。この図のように、昇圧トランス6の2次側に倍電圧回路7を接続した場合の方がコンバータ部3の電力変換効率が高い。昇圧トランス6の昇圧と倍電圧回路7の倍圧との組み合わせにより二次巻線Nsの巻数を減少させながら低電圧・大電流の直流電力を最適に昇圧した電圧の直流電力にすることが可能であること、および前記巻数比の若干高い設定によるフライバック的動作区間が短くなり、コアロスをより低減できたことによる。このように、昇圧トランス6の昇圧と倍電圧回路7の倍圧との組み合わせにより二次巻線Nsの巻数を減少させながら低電圧・大電流の直流電力を最適に昇圧した電圧の直流電力にすることが可能となり、コンバータ部3の電力変換効率を向上させることができる。直流電源8が燃料電池よりも比較的高い電圧で高入力の太陽電池のような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0034】
(実施例)
図1の燃料電池の直流電源8の直流電力は例えば電圧15V、電流60Aの直流電力であり、従前の電圧35V、電流30Aよりも低電圧・大電流である。DC−DCコンバータ(コンバータ部)3の定格負荷は例えば400Wで、フルブリッジ複合共振回路5の電流共振および電圧共振によりスイッチング素子Qのスイッチングロスを低減し、昇圧トランス6の昇圧と倍電圧回路7の倍圧との組み合わせによりコンバータ部3の電力変換効率を向上させることができる。直流電源8からの入力電圧が例えば12V〜22Vの低電圧の範囲内で22Vに近く比較的高い場合で、かつ例えば100〜200Wの軽負荷時に、フルブリッジ複合共振回路5をフルブリッジから特定変形ハーフブリッジに切り替えることにより、制御範囲が広くなりその制御が可能となる。軽負荷時にさらにフルブリッジ複合共振回路5をバースト発振に移行させるので、軽負荷時でのスイッチング素子Qの不必要なスイッチングロス、導通ロス、およびトランスの鉄損、銅損を低減することができる。DC−DCコンバータ3では例えば直流電圧380Vの直流電力をインバータ部2に与え、インバータ部2で交流電力に変換して商用の交流電力系統1へ連系する。
【0035】
図6はこのコンバータ部3の電力変換効率を示す。従来のスイッチング素子を用いたコンバータ部の一般的な電力変換効率の特性(破線)に対して、実線で示すように、このコンバータ部3の電力変換効率は、軽負荷時から定格負荷時にかけて全体的に高く、軽負荷時に電力変換効率がさらに上昇する特性、つまり軽負荷時(100〜200W)に電力変換効率がピークを示す特性を有する。
【0036】
この場合、上述のとおり、フルブリッジ複合共振回路5、これに含まれる昇圧トランス6および倍電圧回路7の組み合わせにより上記特性を得ることができるが、さらに、前記した昇圧トランス6の巻数比、ギャップ長および倍電圧用コンデンサCdの調整を加えることにより、より最適な電力変換効率を得ることができる。
【0037】
こうして、本発明は、直流電源8が低電圧・大電流の直流電力で、その直流電源8からの入力電圧が該低電圧の範囲内で高く、かつ軽負荷時の場合でも、電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路5を単にフルブリッジから特定変形ハーフブリッジに切り替えるだけで、出力する直流電力の電力量がフルブリッジに比べて半減等することによりその制御範囲が広くなり出力電圧を容易に制御できる。また、フルブリッジ複合共振回路5の電流共振および電圧共振によりスイッチング素子Qのスイッチングロス、導通ロス、並びにトランスの鉄損および銅損を低減させるので、コンバータの電力変換効率を高くすることができる。
【0038】
なお、この実施形態では、フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータを電力変換装置に使用しているが、これに限定するものではなく、他の装置に使用してもよい。
【0039】
なお、この実施形態では、制御手段10は、インバータ部2の交流出力の検出に基づきフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ(コンバータ部)3を制御しているが、コンバータ部3の直流出力(倍電圧回路7の直流電圧出力)の検出に基づきコンバータ部3を制御してもよい。
【0040】
また、この実施形態では、フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータは、フルブリッジ複合共振回路5および倍電圧回路7を備えているが、倍電圧回路7を省略してもよい。
【0041】
なお、この実施形態では、直流電源8を燃料電池としているが、太陽電池や風力発電等に応用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:交流電力系統
2:インバータ部
3:コンバータ部(フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ)
5:フルブリッジ複合共振回路
6:昇圧トランス
7:倍電圧回路
8:直流電源
10:制御手段
12:ブリッジ切替制御部
14:バースト発振制御部
Ci:電流共振コンデンサ
Cv1〜Cv4:電圧共振コンデンサ
Cs:平滑コンデンサ
Cd:倍電圧用コンデンサ
Q(Q1〜Q4):スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線および二次巻線をもつトランスを有し電流共振および電圧共振を行うフルブリッジ複合共振回路であるコンバータ部と、制御手段とを備え、前記制御手段によるコンバータ制御により、直流電源からの低電圧・大電流で入力する直流電力を所定電圧の直流電力に変換するフルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータであって、
前記フルブリッジ複合共振回路は、フルブリッジに結合されたスイッチング素子にそれぞれ並列に電圧共振コンデンサが接続され、かつ、該回路と前記トランスの一次巻線との間に直列に電流共振コンデンサが接続されてなり、
前記制御手段は、前記直流電源からの入力電圧が前記低電圧の範囲内で高い場合に、かつ軽負荷時に、フルブリッジから、いずれか1つのスイッチング素子の発振を停止させて他のスイッチング素子を発振させる特定変形ハーフブリッジに切り替えるブリッジ切替制御部を備えている、
フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御手段は、さらに、軽負荷時に前記フルブリッジ複合共振回路のスイッチング周波数を所定間隔に間欠させたバースト発振に移行させる制御を行う、
フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1において、さらに
前記トランスが一次巻線および昇圧出力する二次巻線を有する昇圧トランスであって、前記昇圧トランスの二次電圧を前記所定電圧に倍圧する倍電圧回路を備えている、
フルブリッジ複合共振型のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−142765(P2011−142765A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2731(P2010−2731)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構電力変換装置の技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】