説明

フルボ酸含有物およびフルボ酸含有物の製造方法

【課題】工業的に利用可能なフルボ酸の回収方法を確立することにより、未利用資源の有効活用を実現する。
【解決手段】フルボ酸含有水性液体を活性炭に接触させ、該フルボ酸を該活性炭に吸着する工程と、該フルボ酸が吸着された該活性炭に溶離液として40〜95℃の温アルカリ性水性液体を接触させ、該フルボ酸を溶離させる工程とを含む方法により、フルボ酸含有物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にフルボ酸を含有するフルボ酸含有物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界において植物は死滅すると腐朽し腐植物質となる。腐植物質の主成分は高分子有機酸であり、腐植物質は、土壌、湖、河川および海底などに広く分布しており、特に泥炭、褐炭および風化炭などに豊富に含まれている。腐植物質は、植物の生長、鉱物の遷移および堆積と密接に関連している応用分野の広い天然資源である。
【0003】
腐植物質はフミン酸とフルボ酸に大別され、フミン酸は一般に分子量が数万でアルカリ性水溶液に可溶であり、フルボ酸は一般に分子量数千で酸性水溶液に可溶である。なお、腐植物質の厳密な定義は、国際腐植物質学会(International Humic Substances Society、IHSSと略記する)によって定められている。
【0004】
また、フルボ酸の精製方法は、IHSS法(国際標準法)として確立されている。同法では、フルボ酸水溶液を酸性(pH<2)としXAD樹脂に吸着後、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液で溶離し、陽イオン交換樹脂でナトリウムを交換(H+型)後、凍結乾燥する。
【0005】
しかしながら、泥炭、褐炭および風化炭などに含まれている腐植物質の主成分はフミン酸であるため、これらの物質からフルボ酸を精製し、植物生長剤として使用する際、十分な量のフルボ酸を得ることが困難な場合があり、またフルボ酸の製造コストが高くなる場合があった。
【0006】
一方、腐植物質は上記の様な堆積層などに含まれるのみならず、地下かん水にも含まれる場合があることが知られており、特許文献1には、地下かん水からフルボ酸を精製することが記載されている。特に、第0040段落に、一次濃縮方法として活性炭などを使用するフルボ酸の吸着法が記載されているが、具体的な条件などは記載されていない。
【0007】
また、一般の上水処理において、天然水中のフルボ酸を活性炭により吸着除去することが可能と考えられるが、吸着されたフルボ酸は回収されず、800〜1000℃の高温で蒸発または分解して脱着されるのが一般的である。
【特許文献1】特開2003−171215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の様な従来法によりフルボ酸含有物を製造した場合、以下の様な不具合が生じる場合があった。
【0009】
第一に、IHSS法を工業的に行うと酸消費量、減圧濃縮および凍結乾燥などのコストがかかりすぎる場合がある。
【0010】
第二に、活性炭を高温で再生すると、フルボ酸は熱分解または熱変成されてしまう。
【0011】
第三に、従来法を利用して製造されたフルボ酸含有物の性能が不十分の場合がある。
【0012】
以上より、フルボ酸の回収は未利用資源の有効活用、また排水の色度低減、COD値低減につながることが期待されるが、未だ十分に実現されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明によれば、フルボ酸含有水性液体を活性炭に接触させ、該フルボ酸を該活性炭に吸着する工程と、
該フルボ酸が吸着された該活性炭に溶離液として20〜95℃の温アルカリ性水性液体を接触させ、該フルボ酸を溶離させる工程と
を含むフルボ酸含有物の製造方法が提供される。
【0014】
この方法で製造されたフルボ酸含有物のフルボ酸成分については、炭素、水素、窒素、硫黄および酸素の総和に占める炭素の含有量が45〜55質量%で、水素の含有量が4.5〜5.30質量%で、窒素の含有量が2.0〜3.0質量%で、硫黄および酸素の和の含有量が35〜46.0質量%(但し、灰分は除く)である。
【0015】
また、炭素に対する水素の数比が1.00〜1.35で、炭素に対する酸素の数比が0.55〜0.75である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第一に、IHSS法と異なり、コストが低減できる。
【0017】
第二に、高品位なフルボ酸を含有する製品を製造できる。
【0018】
第三に、従来法を利用して製造されたものより、高性能なフルボ酸含有物が得られる。
【0019】
以上より、フルボ酸の回収を通じて、未利用資源の有効活用、排水の色度低減、COD値の低減を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
(フルボ酸含有物の製造方法)
図1に、活性炭が充填されたカラムを使用してフルボ酸含有物を製造する概要を示した。
【0022】
先ず、原料のフルボ酸含有水性液体として地下かん水を使用し、これをカラムに流入し、フルボ酸を活性炭に吸着させる。その後、溶離工程に先立ち、フルボ酸が吸着された活性炭を酸性水性液体で洗浄することが望ましい。吸着後、アルカリ溶離の前に、酸処理を行うことで溶離効率が上がる。使用する酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などが好ましく、吸着したフルボ酸量1gに対し3〜6m当量を通液し、pHは0以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、一方、2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。吸着後の酸処理(HCl通液)により吸着したCa等の金属類が溶出され、さらに吸着したフルボ酸のカウンターイオンがH+型に交換し、次の溶離工程で効率が上昇する。
【0023】
次に、フルボ酸が吸着された活性炭に溶離液として温アルカリ性水性液体を通液し、フルボ酸を溶離させる。アルカリ性水性液体の温度は20℃以上で、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、一方、95℃以下とする。使用するアルカリとしては水酸化カリウム、ピロリン酸カリウム、水酸化アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム等が好ましく、pHは13以上が好ましく、13.2以上がより好ましく、13.3以上が更に好ましく、一方、14以下が好ましく、13.8以下がより好ましく、13.6以下が更に好ましい。特に、溶離剤として水酸化カリウムを使用し、中和にリン酸や硝酸を用いることで、得られるフルボ酸含有物を精製せずとも植物活力剤などとして、そのまま利用できる。
【0024】
なお、酸性水性液体による洗浄工程後で溶離工程に先立ち、酸性水性液体を除去し、減圧状態で過熱しながら上向流で溶離液を満たすことが好ましい。ジャケット付きカラムで吸着溶離を行うが、昇温する際カラム内に気泡が発生するため、気泡により溶離効率が落ちる。酸処理後、一度脱水し、真空状態で加温しながらアップフローで温水を満たすと気泡が実質的に無い状態で溶離が可能となる。なお、効果や設備コスト面で有利な場合、気泡除去の方法は逆洗(下部から洗浄液を、流速を高くして吹込む)とすることが好ましい。このとき、酸処理することで、疎水性が強くなり、加温時に70℃の温水を通液してもフルボ酸の溶出は殆どなく、ヨウ素などその他不純物のみがフルボ酸溶離前に溶離される。また、H+型フルボ酸の状態で吸着しているため、アルカリ通液時に中和熱で界面に気泡が発生するが、この中和熱で溶離が加速される。
【0025】
更に、溶離工程中、溶離液を温アルカリ性水性液体から温純水に切替えることが好ましい。温アルカリ性水性液体だけの溶離に比べ、溶離液を途中で温純水に切り替えることでフルボ酸の溶離量が増える場合がある。温純水の温度は20℃以上で、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、一方、95℃以下とする。また、純水としては、イオン交換水、蒸留水などを使用する。アルカリ溶出液が薄まったのち、温純水を通液すると再び濃い液が溶出する。アルカリ液よりも純水への分配係数が高いためと考えられる。吸着されているフルボ酸量1gに対しアルカリを、好ましくは4mmol以上、より好ましくは5mmol以上、更に好ましくは6mmol以上、一方、好ましくは9mmol以下、より好ましくは8mmol以下、更に好ましくは7mmol以下通液後、純温水に切り替えるとアルカリの過剰使用が避けられる。
【0026】
また、使用する活性炭としては再生品が好ましい。活性炭をリサイクル使用することで回収率があがり、コスト低減にもなる。活性炭を1回使用後、残存アルカリを中和し再使用すると、溶離効率が上がる。1回目で活性炭の溶離されにくい細内部にフルボ酸が吸着され、2回目以降は、より脱着しやすいサイトに吸着され、容易に溶離するためと考えられる。この観点から使用する活性炭の細孔径はある程度大きなものの方が好ましい。中和に使用する酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などが好ましく、pHは0以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、一方、2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。
【0027】
なお、吸着条件としては、吸着条件LV=1〜6m/hで下向流の場合、LV値は低ければ低いほど、破過しづらく、吸着率が高い。また、溶離しやすい成分も吸着されるため、溶離効率が上昇する。ただし低LVで吸着させた場合、酸洗浄、温水で一部低分子画分と思われるフルボ酸が溶出する。吸着条件を低速とし、通液量を減らせば高い回収率を維持できる可能性がある。また、吸着条件によって、得られるフルボ酸物性とその効果が異なる可能性があるため、条件を注意深く決定する必要がある。
【0028】
(フルボ酸含有物のフルボ酸成分)
得られる製品の性能の観点から、本発明の方法で製造されたフルボ酸含有物のフルボ酸成分については、炭素、水素、窒素、硫黄および酸素の総和に占める炭素の含有量は45質量%以上で、46質量%以上が好ましく、47質量%以上がより好ましく、48質量%以上が更に好ましく、一方、55質量%以下で、54質量%以下が好ましく、53質量%以下がより好ましく、52質量%以下が更に好ましい。水素の含有量は4.5質量%以上で、4.6質量%以上が好ましく、4.7質量%以上がより好ましく、4.8質量%以上が更に好ましく、一方、5.30質量%以下で、5.25質量%以下が好ましく、5.20質量%以下がより好ましい。窒素の含有量は2.0質量%以上で、2.1質量%以上が好ましく、2.2質量%以上がより好ましく、2.3質量%以上が更に好ましく、一方、3.0質量%以下で、2.70質量%以下が好ましく、2.65質量%以下がより好ましく、2.60質量%以下が更に好ましく、2.55質量%以下が最も好ましい。硫黄および酸素の和の含有量は35質量%以上で、36質量%以上が好ましく、37質量%以上がより好ましく、38質量%以上が更に好ましく、一方、46.0質量%以下で、45.5質量%以下が好ましく、45.0質量%以下がより好ましく、44.5質量%以下が更に好ましい。
【0029】
また、炭素に対する水素の数比は1.00以上で、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましく、1.15以上が更に好ましく、一方、1.35以下で、1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。炭素に対する酸素の数比は0.55以上で、0.57以上が好ましく、0.59以上がより好ましく、0.60以上が更に好ましく、一方、0.75以下で、0.70以下が好ましく、0.65以下がより好ましい。
【0030】
なお、各元素の含有量は元素分析法によって決定することができ、例えば、ヤナコ社製CHN CORDER MT−5を用いて測定し、必要に応じて、乾燥灰分を差引いて計算する。
【0031】
(フルボ酸含有水性液体)
得られる製品の性能の観点から、原料のフルボ酸含有水性液体は地下かん水が好ましく、地下かん水中の腐植物質より得られ、実質的にフルボ酸のみを含有するフルボ酸含有物が好ましい。本発明の方法は、フルボ酸含有水性液体が地下かん水の場合に、特に良好な結果を得ることができる。
【0032】
地下かん水とは淡水に比べ塩分濃度の高い地下水を言い、例えば、地殻変動により地中に封鎖された海水、周辺の地層から溶出した塩分を含有する地下水、塩濃度の高い湧水、塩濃度の高い温泉水などを使用することができる。しかしながら、原料となる地下かん水としては、腐植物質を多量に含有しているものが好ましく、腐植物質を多量に含有している地下かん水は一般に着色している。
【0033】
従って、地下かん水中の腐植物質量は分光学的に色度として定量化することができる。例えば、JIS K 0102に準拠して測定される色度の主波長が550〜600nmであることが好ましい。また、その主波長での刺激純度が5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。一方、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。
【0034】
なお、地下かん水の含有物および含有物濃度は産出される地域により大きく異なる。また、同じ地域から産出される地下かん水の場合も、採取する深度によって、含有物および含有物濃度は大きく異なる。従って、十分な品質のフルボ酸含有物を十分な生産性で得るためには、使用する地下かん水を注意深く選択する必要がある。
【0035】
上記の様な地下かん水の中には、腐植物質の大部分がフルボ酸であるものが存在し、この様な地下かん水を用いれば、実質的にフルボ酸のみを含有するフルボ酸含有物を、安価に製造できるので好ましい。具体的には、腐植物質中のフルボ酸含有量が70質量%以上の地下かん水が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0036】
この様な地下かん水から、本発明の方法によりフルボ酸含有物を製造することにより、フルボ酸成分の純度が好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上のフルボ酸含有物を、生産性良好に得ることができる。
【0037】
なお、フルボ酸の含有量は、例えばIHSSで規格化されている酸による分画法に準拠して測定することができる。また、TOCと相関のあるUV260nm吸光値を指標として定量化することもできる。
【0038】
(フルボ酸含有の固体状組成物)
固体状組成物としては、フルボ酸水溶液を肥料や土改材に混合した固体の組成物、固体のフルボ酸を混合した固体の組成物、濃縮液をさらに濃縮しスラリー化または固化された組成物などを挙げることができ、固体化されたフルボ酸を利用した農業用資材や,液体のフルボ酸を利用して作られた固体組成物などを挙げることができる。
【0039】
活性炭経由の濃縮液からの固形化法としては、凍結乾燥、減圧濃縮、蒸発乾固、薬剤による凝集沈殿、スプレー噴霧などにより固形肥料等を核にした造粒法などを挙げることができる。
【0040】
固体化したものの場合、輸送保管や貯蔵安定性などにメリットがある。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
三菱化学カルゴン社製の液相用粒状活性炭(瀝青炭)CAL(登録商標)から水酸化カリウム水溶液でフルボ酸を溶出後、0.1mol/lの塩酸(pH1.0)により、金属類を溶出して再生し、これをφ40mmカラムに1800ml充填した。なお、実際には、第1回目のときに充填し、そのままの状態でφ40mmカラムに1800ml充填したものに通液と再生中和処理を3回繰り返した再生品を使用した。ここで、再生という表現はアルカリ/温水溶離による再生を意味し、塩酸処理は中和を意味する。
【0042】
一方、日本国千葉県九十九里地区の地下100〜2100mから、地下かん水を採取した。この地下かん水は着色しており、色度の主波長は575nmであり、575nmでの刺激純度は30質量%であった。この地下かん水は0.098MPa(1atm)下で25℃の水に対する飽和溶解度以上のメタンと98質量ppmのヨウ素とを含有しており、地下かん水を採取後、常圧とすることにより、メタンを主成分とする天然ガスが発生し、脱気された。この地下かん水の腐植物質中のフルボ酸含有量は、95質量%であった。
【0043】
脱気された地下かん水より、上記の再生活性炭が充填されたカラムに、LV=1.7m/h、SV=1.7で142時間通液し、フルボ酸を吸着して、88質量%の吸着率となった。
【0044】
その後、0.1mol/l塩酸(pH1.0)(吸着しているフルボ酸量1gに対し3.8m当量)により洗浄した。
【0045】
次に、一度脱水し、減圧状態で加温しながらアップフローで70℃の温水を満たし7.25lの温水で洗浄した。そして、カラムを70℃に保温しながら、アップフローで0.25mol/l水酸化カリウム(pH13.5)を2l(吸着しているフルボ酸1gに対し6mmol)に相当する量通液し、フルボ酸をカリウム塩に置換した。更に、70℃の水酸化カリウム水溶液を70℃のイオン交換水に切り替え10lに相当する量通液し、引続きフルボ酸を溶出させた。結果として、吸着したフルボ酸の77質量%を回収でき、3400質量ppmのフルボ酸含有物を得た。なお、リン酸により中和した。
【0046】
以上により十分な性能を有するフルボ酸を得た。
【0047】
(実施例2)
実施例1と実質的に同等の方法により、別途、フルボ酸を得た。
【0048】
得られたフルボ酸をIHSS法に準じ結晶化し分析したところ、炭素、水素、窒素、硫黄および酸素の総和に占める炭素の含有量は50.9質量%で、水素の含有量は5.1質量%で、窒素の含有量は2.5質量%で、硫黄および酸素の和の含有量は41.5質量%であった。また、炭素に対する水素の数比は1.20で、炭素に対する酸素の数比は0.61であった。
【0049】
(実施例3)
三菱化学カルゴン社製の液相用粒状活性炭(瀝青炭)CAL(登録商標)から水酸化カリウム水溶液でフルボ酸を溶出後、0.1mol/lの塩酸(pH1.0)により、金属類を溶出して再生し、これをφ40mmカラムに1800ml充填した。なお、実際には、第1回目のときに充填し、そのままの状態でφ40mmカラムに1800ml充填したものに第1回目の通液と溶離処理を終えてから、そのまま塩酸を通液(中和)した。ここで、再生という表現はアルカリ/温水溶離による再生を意味し、塩酸処理は中和を意味する。
【0050】
一方、日本国千葉県九十九里地区の地下100〜2100mから、地下かん水を採取した。この地下かん水は着色しており、色度の主波長は575nmであり、575nmでの刺激純度は30質量%であった。この地下かん水は0.098MPa(1atm)下で25℃の水に対する飽和溶解度以上のメタンと98質量ppmのヨウ素とを含有しており、地下かん水を採取後、常圧とすることにより、メタンを主成分とする天然ガスが発生し、脱気された。この地下かん水の腐植物質中のフルボ酸含有量は、95質量%であった。
【0051】
脱気された地下かん水より、上記の再生活性炭が充填されたカラムに、SV=2で150時間通液し、フルボ酸を吸着して、89質量%の吸着率となった。
【0052】
その後、0.1mol/l塩酸(pH1.0)(吸着したフルボ酸量1gに対し4.5mg)により洗浄した。
【0053】
次に、一度脱水し、減圧状態で加温しながらアップフローで70℃の温水を満たした。そして、カラムを70℃に保温しながら、アップフローで0.25mol/l水酸化カリウム(pH13.5)を1.9l(吸着しているフルボ酸1gに対し7mmol)に相当する量通液し、フルボ酸をカリウム塩に置換し溶出させた。更に、70℃の水酸化カリウム水溶液を70℃のイオン交換水に交換し9lに相当する量通液し、引続きフルボ酸を溶出させた。結果として、79質量%のフルボ酸を回収でき、3400質量ppmのフルボ酸含有物を得た。なお、リン酸により中和した。
【0054】
以上により、十分な性能を有するフルボ酸を得た。
【0055】
(実施例4)
活性炭を未使用の三菱化学カルゴン社製の液相用粒状活性炭(瀝青炭)CAL(登録商標)または未使用の同社製高賦活粒状活性炭(瀝青炭)APC(登録商標)とした以外は、実施例1と実質的に同様にしてフルボ酸を回収した。吸着率は夫々87及び80質量%で、回収率は夫々46及び45質量%であった。
【0056】
(実施例5)
未使用の活性炭で塩酸による洗浄工程を省略した以外は、実施例1と実質的に同様にしてフルボ酸を回収した。吸着率が83質量%と同じものを用い、塩酸洗浄なしの場合と、ありの場合、回収率は夫々27及び41質量%であった。
【0057】
(実施例6)
未使用の活性炭で溶離液をイオン交換水に切替えず水酸化カリウムのみで溶出させた以外は、実施例1と実質的に同様にしてフルボ酸を回収した。吸着率が89質量%の活性炭に0.2mol/lで60℃のKOHを通液すると、回収率が5質量%の時点で溶出液の濃度ピークを迎え、その後、徐々に薄まっていき7質量%の回収率に達した。この時点で温純水に切り替えると、溶出液は再度濃度ピーク迎え、新たに17質量%が溶出され24質量%の回収率にまで達した。その後、徐々に薄まっていき最終的に30質量%の回収率に達した。KOHの量を減らし温純水に早めに切り替える事で、より濃度の高い液を短時間で溶出する事ができた。
【0058】
(実施例7)
溶出の際の温度を60℃とした以外は、実施例1と実質的に同様にしてフルボ酸を回収した。吸着率は85質量%で、回収率は55質量%であった。
【0059】
(実施例8)
吸着条件をLV=4.6m/h、SV=3.2、74時間通液とした以外は、実施例1と同様にしてフルボ酸を回収した。吸着率は84質量%で、回収率は63質量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
工業的に利用可能なフルボ酸の回収方法を確立することにより、未利用資源の有効活用を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】製造方法を説明するための模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、水素、窒素、硫黄および酸素の総和に占める炭素の含有量が45〜55質量%で、水素の含有量が4.5〜5.30質量%で、窒素の含有量が2.0〜3.0質量%で、硫黄および酸素の和の含有量が35〜46.0質量%である(但し、灰分は除く)フルボ酸含有物。
【請求項2】
炭素に対する水素の数比が1.00〜1.35で、炭素に対する酸素の数比が0.55〜0.75であるフルボ酸含有物。
【請求項3】
地下かん水中の腐植物質より得られ、実質的にフルボ酸のみを含有する請求項1又は2記載のフルボ酸含有物。
【請求項4】
フルボ酸含有水性液体を活性炭に接触させ、該フルボ酸を該活性炭に吸着する工程と、
該フルボ酸が吸着された該活性炭に溶離液として20〜95℃の温アルカリ性水性液体を接触させ、該フルボ酸を溶離させる工程と
を含むフルボ酸含有物の製造方法。
【請求項5】
前記溶離工程中に、前記溶離液を前記温アルカリ性水性液体から20〜95℃の温純水に切替える請求項4記載のフルボ酸含有物の製造方法。
【請求項6】
前記吸着工程後で前記溶離工程に先立ち、前記フルボ酸が吸着された前記活性炭を酸性水性液体で洗浄する請求項4又は5記載のフルボ酸含有物の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄工程後で前記溶離工程に先立ち、前記酸性水性液体を除去し、減圧状態で過熱しながら上向流で前記溶離液を満たす請求項6記載のフルボ酸含有物の製造方法。
【請求項8】
前記温アルカリ性水性液体は水酸化カリウムであり、リン酸および硝酸の少なくとも何れか一方を用いて前記溶離液を中和する請求項4乃至7何れか記載のフルボ酸含有物の製造方法。
【請求項9】
前記活性炭は再生品である請求項4乃至8何れか記載のフルボ酸含有物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−151705(P2006−151705A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340495(P2004−340495)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000157108)関東天然瓦斯開発株式会社 (11)
【Fターム(参考)】