説明

フレキシブルプリント基板のGND接続構造およびフレキシブルプリント基板

【課題】簡単な構成でGND接続の安定化を実現し、小型化、薄型化の実現が可能な、フレキシブルプリント基板のGND接続構造を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント基板を、絶縁フィルムからなるベース材11の一方の面に形成された配線パターンと第1のGNDパターン18、及び該配線パターンと第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー19と、ベース材11の他方の面に形成された第2のGNDパターン12によって構成し、GNDパターン12を被覆する絶縁カバーは設けない構成とする。このフレキシブルプリント基板が携帯端末装置内で接続配置されたとき、GNDパターン12と携帯端末装置側の導電体14が接触するようにして、携帯端末装置側の導電体14でGND面積を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯型電子機器において、表示装置としての液晶、有機EL、あるいはカメラといったデバイスの電気回路接続用に用いられるフレキシブルプリント基板に関し、特に、フレキシブルプリント基板のGND接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やPHSなどの無線通信機能を持った携帯端末装置においては、小型化、軽量化のために、表示装置としての液晶、有機EL、あるいはカメラといったデバイスと携帯端末本体の基板とを電気回路接続用のフレキシブルプリント基板(FPC)で接続する方法が採用されている(特許文献1,2等参照)。フレキシブルプリント基板は、柔軟性のある基材上に信号線やグランド(GND)パターンなどの印刷配線パターンを形成すると共に、その基材の対向する両端部に設けたコネクタ端子で2つの回路基板を接続することにより、GND接続の安定化を図っている。
【0003】
図4は、従来のフレキシブルプリント基板の一例を示す断面図及び上面GNDパターン配置例を示す概略図である。図4に示すフレキシブルプリント基板構造の場合、絶縁フィルムからなるベース材41の一方の面に配線パターンとGNDパターン48、及びこれらのパターンを被覆するカバー層49が形成され、他方の面にGNDパターン42及びこのGNDパターン42を被覆するカバー層43が形成されており、FPC上に多くのGNDを設けることにより、GND接続を安定化させて携帯端末装置の無線特性改善を図っている。
【0004】
一方、携帯端末装置の更なる薄型化、小型化に伴い、携帯端末装置に実装される液晶デバイスなどを接続するフレキシブルプリント基板の小型化も要求されており、そのため、フレキシブルプリント基板上に従来設けていたGNDの面積を十分に確保することが難しくなってきた。しかし、携帯端末装置の無線特性改善のためには、GND接続の安定化は必要である。
【0005】
このような問題を解決する手段として、図5〜図6に示すようなフレキシブルプリント基板のGND接続構造が考えられている。
【0006】
図5に示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造では、絶縁フィルムからなるベース材51の一方の面に配線パターンとGNDパターン58、及びこれらのパターンを被覆するカバー層59が形成され、他方の面にGNDパターン52及びこのGNDパターン52を被覆するカバー層53が形成されたFPCの、GNDパターン52のみが配置されている側を保護しているカバー53の一部を除去してGNDパターン52を露出させた開口55を設けるとともに、携帯端末装置側に設けられたスペーサ56により、開口55から露出しているGNDパターン52を携帯端末装置側の導電体54に押し付けて接触させ、携帯端末装置側の導電体54でGND面積を確保することによって、GND接続の安定化を図っている。
【0007】
また、図6に示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造では、絶縁フィルムからなるベース材61の一方の面に配線パターンとGNDパターン68、及びこれらのパターンを被覆するカバー層69が形成され、他方の面にGNDパターン62及びこのGNDパターン62を被覆するカバー層63が形成されたFPCの、GNDパターン62のみが配置されている側を保護しているカバー63の一部を除去してGNDパターン62を露出させた開口65を設けるとともに、携帯端末装置側に設けられた導電体64に形成された凸部67を、開口65から露出しているGNDパターン62に押し付けることにより携帯端末装置側の導電体64と接触させ、携帯端末装置側の導電体64でGND面積を確保することによって、GND接続の安定化を図っている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−036509号公報
【特許文献2】特開2004−088020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5〜図6に示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造によれば、携帯端末装置側の基板や板金といった導電体54、あるいは64でGND面積を確保できるため、フレキシブルプリント基板上のGNDパターン52、あるいは62の面積を縮小することができ、GNDの面積確保が緩和されるので、その分フレキシブルプリント基板の小型化を図ることができる。
【0010】
しかし、図5〜図6に示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造の場合、フレキシブルプリント基板のGNDパターン52、あるいは62を携帯端末装置側の導電体54、あるいは64と接触させるために、携帯端末装置側に、フレキシブルプリント基板を携帯端末装置側の基板や板金へ押し付けるスペーサ56、あるいは携帯端末装置側の導電体64にフレキシブルプリント基板のGNDパターン62と接触させるための凸部67を設ける必要があり、その分、携帯端末装置側の構成が複雑となるとともに機器の厚みを増やす要因となるので、コストが増加し、また機器の小型化、薄型化の実現を妨げるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、簡単な構成でGND接続の安定化を実現し、小型化、薄型化の実現が可能な、フレキシブルプリント基板のGND接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、フレキシブルプリント基板による電気回路接続機構を備えた携帯型電子機器内における前記フレキシブルプリント基板のGND接続構造であって、前記フレキシブルプリント基板は、絶縁フィルムからなるベース材の一方の面に配線パターンおよび第1のGNDパターンと、該配線パターンおよび第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層が形成され、前記ベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみが形成され、かつ該第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層を有しない構成となっており、前記電子機器内での前記フレキシブルプリント基板による前記電気回路接続状態において、前記第2のGNDパターンと前記電子機器内のGND導電体面とが、直接接触した状態となっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のフレキシブルプリント基板のGND接続構造に用いられるフレキシブルプリント基板は、絶縁フィルムからなるベース材の一方の面に、配線パターンおよび第1のGNDパターンと、該配線パターンおよび第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層が形成され、前記ベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみが形成され、かつ該第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層を有しない構成となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、絶縁フィルムからなるベース材の一方の面には配線パターンと第1のGNDパターン、及び該配線パターンと第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層が形成されており、前記ベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみが形成され、該第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層は形成されていないフレキシブルプリント基板を、電気回路接続用のフレキシブルプリント基板として用いているので、図5あるいは図6の従来の課題で記述した、第2のGNDパターンを前記電子機器内でGNDとして機能する導体平面に押し付けるためのスペーサ56、あるいは導体平面に第2のGNDパターンを接触させるための凸部67を設ける必要がなくなるので、構成が簡単となってコストの増加を抑えることができ、また機器の小型化、薄型化を容易に実現できる。
【0015】
さらに、本発明のフレキシブルプリント基板は、絶縁フィルムからなるベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみを形成し、この第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層を省いているために、その分フレキシブルプリント基板の厚みを薄くすることができるので、更なる機器の小型化、薄型化を図ることができる。
【0016】
また本発明では、図5あるいは図6の構成と同様に、携帯端末装置側の導電体がGNDになるため、フレキシブルプリント基板のサイズを小型化しても、十分にGND面積を確保することができ、無線特性への影響を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すフレキシブルプリント基板構成、および回路接続時における携帯端末装置の基板や板金といった導電体との位置関係を示す断面図である。
【0018】
本実施形態の構成要素は、液晶デバイスなどのフレキシブルプリント基板のベース材11、GNDパターン12、配線パターンおよびGNDパターン18、配線パターンおよびGNDパターン18を被覆する絶縁カバー19、携帯端末装置の基板や板金といった導電体14である。
【0019】
本実施形態も、携帯端末装置側の導電体14でGND面積を確保することによって、GND接続の安定化を図っているが、本実施形態の場合、フレキシブルプリント基板のGNDパターン12と、携帯端末装置の導電体14を簡単に接触させるために、導電体14と対向しているGNDパターン12側には、このGNDパターン12を被覆する絶縁カバーは設けない構造を採用している。
【0020】
即ち本実施形態のフレキシブルプリント基板は、GNDパターン12を被覆する絶縁カバーを配置しない構造となっているので、フレキシブルプリント基板を反対側から押すためのスペーサを設けなくても、フレキシブルプリント基板のGNDパターン12と、携帯端末装置側の導電体14を容易に接触させることができる。あるいは、フレキシブルプリント基板のGNDパターン12と、携帯端末装置側の導電体14を接触させるための凸部を、携帯端末装置側の基板や板金を凸形状にする必要もなくなる。
【0021】
また図2(a)に示すように、本実施形態では図2(b)に示すGNDパターン22を被覆する絶縁カバー23を配置しない構造となっているので、このカバーの厚み26だけフレキシブルプリント基板の厚みを薄くすることができ、機器の更なる薄型化に寄与させることができる。
【0022】
図3は、本発明の第2の実施形態を示すフレキシブルプリント基板構成および携帯端末装置の基板や板金といった導電体の位置関係を示す断面図、およびGNDパターンの上面図である。
【0023】
本実施形態の構成要素も、第1の実施形態と同様に、液晶デバイスなどのフレキシブルプリント基板のベース材31、GNDパターン32、配線パターンおよびGNDパターン38、配線パターンおよびGNDパターン38を被覆する絶縁カバー39、携帯端末装置の基板や板金といった導電体34であるが、本実施形態では、GNDパターン32を島形状のパターンとしたことを特徴とし、この島形状のGNDパターン32を携帯端末装置側の導電体34と接触させることにより、携帯端末装置側の導電体34でGND面積を確保することによって、GND接続の安定化を図っている。
【0024】
本実施形態においても、フレキシブルプリント基板を反対側から押すためのスペーサを設けなくても、フレキシブルプリント基板のGNDパターン32と、携帯端末装置側の導電体34を容易に接触させることができる。また、フレキシブルプリント基板のGNDパターン32と、携帯端末装置側の導電体34を接触させるための凸部を、携帯端末装置側の基板や板金を凸形状にする必要もない。
【0025】
さらに本実施形態では、導電体34の面と接触するGNDパターン32が島形状のGNDパターンとなっているので、フレキシブルプリント基板と導電体34が接触したときの接圧を島形状のパターンに集中させることができ、このGNDパターン32と導電体34間の電気的接続を一層安定して確保することができる。ベース材31上に形成されるこの島形状のGNDパターン32は、1つに限らず、複数の島形状のGNDパターン32をベース材31上に形成した構成であってもよい。
【0026】
また本実施形態では、GNDパターン32と反対側の面に形成されたGNDパターン38との間を、スルーホール33で接続することによりシールド効果を高めている。このスルーホールは、第1の実施形態にも適用することができる。また本実施形態において、スルーホール33が設けられていなくても、携帯端末装置側の導電体34でGND面積が確保されているので、GND接続の安定化を図ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、携帯端末装置を例にして説明したが、本発明は携帯端末装置に限らず、小型化、薄型化が要求される適宜の携帯型電子機器に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造図である。
【図2】本実施形態と従来例のフレキシブルプリント基板の比較図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すフレキシブルプリント基板のGND接続構造図である。
【図4】従来のフレキシブルプリント基板の一例を示す図である。
【図5】従来のフレキシブルプリント基板のGND接続構造を示す図である。
【図6】従来のフレキシブルプリント基板のGND接続構造を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
11,21,31,41,51,61 ベース材
12,22,32,42,52,62 GNDパターン
19,23,29,39,43,49,53,59,63,69 カバー
14,34,44,54,64 導電体
18,28,38,48,58,68 GNDパターンおよび配線パターン
33 スルーホール
55,65 カバー開口
56 スペーサ
67 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント基板による電気回路接続機構を備えた携帯型電子機器内における前記フレキシブルプリント基板のGND接続構造であって、
前記フレキシブルプリント基板は、絶縁フィルムからなるベース材の一方の面に配線パターンおよび第1のGNDパターンと、該配線パターンおよび第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層が形成され、前記ベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみが形成され、かつ該第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層を有しない構成となっており、
前記電子機器内での前記フレキシブルプリント基板による前記電気回路接続状態において、前記第2のGNDパターンと前記電子機器内のGND導電体面とが、直接接触した状態となっていることを特徴とするフレキシブルプリント基板のGND接続構造。
【請求項2】
前記第2のGNDパターンは、前記ベース材の他方の面内において1つまたは複数の島形状のGNDパターンとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント基板のGND接続構造。
【請求項3】
前記第1のGNDパターンと前記第2のGNDパターンは、スルーホールにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルプリント基板のGND接続構造。
【請求項4】
請求項1に記載のフレキシブルプリント基板のGND接続構造に用いられるフレキシブルプリント基板であって、
絶縁フィルムからなるベース材の一方の面に、配線パターンおよび第1のGNDパターンと、該配線パターンおよび第1のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層が形成され、前記ベース材の他方の面には第2のGNDパターンのみが形成され、かつ該第2のGNDパターンを被覆する絶縁カバー層を有しない構成となっていることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
前記第2のGNDパターンは、前記ベース材の他方の面内において1つまたは複数の島形状のGNDパターンとして形成されていることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項6】
前記第1のGNDパターンと前記第2のGNDパターンは、スルーホールにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載のフレキシブルプリント基板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−76698(P2009−76698A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244526(P2007−244526)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】