説明

フロアパネル

【課題】 微細発泡により寸法精度の向上したフロアパネルを提供する。
【解決手段】 微細発泡のための超臨界流体を含浸した樹脂を成形樹脂とし、上記成形樹脂を成型金型に射出注入して、上記成型金型内で微細発泡して形成したフロアパネル1であり、上記微細発泡により、フロアパネル1の載置物を載置する載置面12の寸法誤差を低減してフロアパネル1間の段差を軽減し、更に衝撃特性を向上したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネル、殊に樹脂性フロアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からコンピュータや、ディスプレイ、印刷機等、多数の電気機器を使用するオフィスでは、それら電気機器に接続する電源ケーブルや通信ケーブル等の配線が、邪魔になったり、損傷したりしないようにするため、上記配線を配設する床下空間を設けた二重構成の樹脂製フロアパネルとしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、上記樹脂製フロアパネルの載置物を載置する載置面は平滑であるため、カーペットなどの載置物との密着性を十分に得られなかった。
【0004】
また、金型成型であるため、成形後の冷却時に収縮しひけを載置面に生じ、フロアパネル間に段差を発生していた。
【0005】
そこで、研磨や、表面処理などの二次加工を行い、載置面を微細に荒らして摩擦抵抗を増加し載置物との密着性を向上させたり、平坦に均しフロアパネル間の段差を軽減したりしているが、製造工程や、製造費用を増加させるという問題を抱えていた。
【特許文献1】特開2006−226040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、強度を保持したまま、カーペットなどの載置物に対する密着性の向上および上記載置物を載置する載置面の寸法精度の向上を、二次加工を行わずに可能とするフロアパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、載置物を載置する載置面12を備えたフロアパネル本体11と、上記載置面12と反対の上記フロアパネル本体11の面に一端を接し設けた複数のリブ部2と、からなるフロアパネル1であり、微細発泡のための超臨界流体を含浸した成形樹脂を、成型金型に射出注入して上記成型金型内で微細発泡させ形成したことを特徴とするフロアパネル1である。
【0008】
このような構成をすることで、発泡剤を用いた従来の化学発泡では、強度が著しく低下していたが、フロアパネル1の強度を保持することができ、更に上記載置面12の寸法誤差を抑制し、且つ載置物との密着性を向上したものとなる。
【0009】
また、前記載置面12の反対の面側から、前記成形樹脂を注入し形成することで、上記リブ部2側に比べ上記載置面12側の成形樹脂の注入密度を下げられ、上記載置面12の微細発泡を促進でき、上記載置面12の寸法精度を向上でき、且つ載置物との密着性を向上でき、好ましい。
【0010】
また、ポリエステル系熱可塑性樹脂に超臨界流体を含浸して前記成形樹脂とし、260℃以下の成形温度で形成することで、上記ポリエステル系熱可塑性樹脂を用いた従来成形では成形温度が290〜300℃程度であったのに対し、超臨界流体を含浸したことで、成形温度が低下し、260以下でも形成可能となり、成形後の冷却時間を短縮できフロアパネル1の結晶化が抑制され、衝撃特性を向上することができ、好ましい。
【0011】
また、溶融粘度の異なる二種類以上の成形樹脂を用いることで、溶融粘度の低い方の成形樹脂が回り込み現象を生じて優先的にフロアパネル1の表面側に流動するため、溶融粘度の高い方の成形樹脂が、フロアパネル1内部で未発泡状態のまま固化し、フロアパネル1の強度を向上できるものとなり、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記のように本発明のフロアパネルの効果は、微細発泡により従来のフロアパネルに比べ載置物に対する摩擦抵抗を増加でき、上記載置物との密着性を向上することができる。尚且つ、載置面の寸法精度が向上し、フロアパネル間の段差が軽減される。
【0013】
これらは、研磨や表面処理などの二次加工を行わずに効果が得られるため、製造工程および製造費用を削減できる。更に、フロアパネルとしての機能に十分な強度を保持しつつ、表面に発泡層が形成され、衝撃特性を向上することができる。
【0014】
また、微細発泡によりフロアパネルは不透明になっており、成形樹脂に顔料などの色素を含ませなくても、上記フロアパネルにより形成される床下空間に配設した配線を外部に見え難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1の実施形態1は、微細発泡成形によって形成した樹脂製フロアパネルである。上記微細発泡成形とは、成形樹脂を成型金型に射出注入して、上記成型金型内で上記成形樹脂に微細な発泡(100μm以下)を行わせる成形方法である。
【0017】
そして、上記成形樹脂は、樹脂に超臨界状態の二酸化炭素もしくは窒素などの超臨界流体を含浸したものである。なお、超臨界流体を含浸する樹脂は、熱可塑性樹脂を用いることが望ましいが、本発明のフロアパネル1を形成可能とするものであれば特に限定しない。
【0018】
また、前記フロアパネル1は、カーペットなどの載置物を載置する載置面12を備えたフロアパネル本体11と、上記載置面12の反対のフロアパネル本体11の面に設けた複数のリブ部2と、からなるものである。
【0019】
そして、複数の上記リブ部2の内、フロアパネル1の側面に沿って延長した形で設けた二つのリブ部2は、他のリブ部2より高さ寸法が長く、上記床面に対してフロアパネル1を支持する支持脚部3となっており、上記支持脚部3のフロアパネル本体11と繋がっていない側の端面が構造体の床面に接する接地面32となっている。
【0020】
また、上記接地面32を形成する成型金型の接地面32形成部には、上記成形樹脂を射出注入するゲートが設けてある。これにより、注入した上記成形樹脂の圧力分布は、ゲートに近いリブ部2からフロアパネル本体11の載置面12に向かうほど低くなっている。
【0021】
したがって、リブ部2に比べ上記フロアパネル本体11の微細発泡が促進され、上記載置面12の発泡層の向上できる。なお、上記ゲートは、夫々の前記支持脚部3の接地面32の長手方向の中央に位置し設けることが望ましいが、他のリブ部2であってもよく、特に限定しない。
【0022】
また、前記載置面12には、表面に生じた微細発泡により、微細な凹凸が形成されており、載置物との高い密着性を有する。そして、フロアパネル本体11の前記リブ部2を設けた位置の載置面12側においては、上記リブ部2の固化による収縮の影響を受けるため、従来成形ではひけを生じていた。
【0023】
しかし、実施形態1ではひけの生じる上記位置にも微細発泡が生じるため、上記載置面12の、ひけによる影響を軽減し、フロアパネル1の寸法誤差を低減することができる。
【0024】
したがって、超臨界流体を含浸した樹脂を成形樹脂とした実施形態1は、成形時に微細発泡させることで、載置物との密着度を向上し、且つ寸法精度が向上し、フロアパネル1間の段差を軽減し、表面処理や研磨などの二次加工が不要となり、製造工程を容易にできる。
【0025】
更に、実施形態1に基づいたフロアパネル1と、従来成形によるフロアパネルの表面形状の測定結果を示した図2を説明する。
【0026】
図2の(a)は微細発泡を行ったフロアパネル1の載置面12の表面形状の測定結果であり、(b)は微細発泡を行わない従来のフロアパネルの載置面の表面形状の測定結果であり、(c)は(b)における測定部位の写真である。
【0027】
図2の(a)と(b)を比較すると、微細発泡を行ったフロアパネル1は、従来のフロアパネルに比べ、凹凸を微細とし、載置面12の摩擦抵抗が増加し載置物との密着性を向上できたことを示している。更に、上記載置面12の表面形状の寸法誤差の幅が低減しており、上記載置面12が略平坦になり寸法精度が向上され、フロアパネル1間の段差を軽減できたことを示している。
【0028】
また、本発明の実施形態2として、超臨界二酸化炭素を含浸したポリエステル系熱可塑性樹脂を成形樹脂として用いたフロアパネル1を、図3〜5に基づき説明する。
【0029】
図3は、横軸に時間、縦軸に温度をとり、成形後のフロアパネルを、同一条件下で固化温度に低下するまでの冷却時間を模式的に示したものである。
【0030】
そして、290〜300℃間で成形した方が、超臨界流体を含浸していないポリエステル系熱可塑性樹脂を用いた従来成形によるフロアパネルであり、250〜260℃間で成形した方が、超臨界二酸化炭素を含浸したポリエステル系熱可塑性樹脂を用いた微細発泡成形である上記実施形態2によるフロアパネル1である。
【0031】
図3に示されるように、超臨界流体の含浸により、実施形態2は従来成形より低い成形温度で行えるため、冷却時間が短縮されている。
【0032】
そして、図4の結晶化度の値が示すように、超臨界二酸化炭素を含浸したポリエステル系熱可塑性樹脂を成形樹脂として用いたことにより、従来成形に比べ結晶化度を半分に抑えられている。
【0033】
更に、上記実施形態2のフロアパネル1と、従来成形のフロアパネルに夫々落球衝撃試験を行った結果が図5である。そして、図5からは、上記実施形態2のフロアパネル1の衝撃特性が、従来成形のフロアパネルに比べ1kJ/m程度向上したことが示されている。
【0034】
したがって、超臨界二酸化炭素を含浸したポリエステル系熱可塑性樹脂を成形樹脂として用いた実施形態2は、成形温度の低下だけでなく、冷却時間を短縮でき、結晶による機械的性質への影響を低減され、衝撃特性を向上することができる。
【0035】
また図6は、横軸にせん断速度、縦軸に溶融粘度をとったものであり、夫々に超臨界二酸化炭素を含浸した材料A,Bの200℃と250℃での測定値である。そして、超臨界二酸化炭素を含浸した二種類の成形樹脂として、図6に示した材料A,Bを用いた本発明の実施形態3を以下説明する。
【0036】
実施形態3の射出成形の条件を、成形温度250℃、せん断速度1000/sec以下とし、図6より上記条件では、材料Aが材料Bより粘度が高いため、材料Aを粘度の高い方の成形樹脂(以下、高粘度樹脂と記載)Aとし、材料Bを粘度の低い方の成形樹脂(低粘度樹脂)Bとした。
【0037】
上記成形樹脂を二種類とも成型金型内のキャビティに注入すると、上記キャビティでは、上記低粘度樹脂Bが回り込み現象を生じて、フロアパネル1の表面側の位置に流動される。この流動により、上記高粘度樹脂Aは、上記フロアパネル1の内部側の位置に集められ、上記低粘度樹脂Bに包み込まれる形となる。そして、微細発泡時には、フロアパネル1の表面側を形成する上記低粘度樹脂Bが優先して微細発泡するため、内部の上記高粘度樹脂Aは、略未発泡状態のまま固化する。
【0038】
したがって、上記実施形態3のフロアパネル1は、図7のように、上記低粘度樹脂Bが微細発泡した状態で表面を形成し、上記高粘度樹脂Aが略未発泡状態で内部を形成したものとなる。
【0039】
上記フロアパネル1は、高粘度樹脂Aが略未発泡状態で固化したため、フロアパネル1としての機能に十分な強度を形成し、且つ低粘度樹脂Bが表面で微細発泡したため、上記強度を略保持したまま、載置面12の寸法精度および衝撃特性を向上したものとなっている。なお、二種類の成形樹脂は、上記材料A,Bの二つに限定するものではなく、他の材料であってもよく、ましてや三種類以上の材料であってもよい。
【0040】
もちろん、本発明において、成形温度は250℃までと限定するものではなく、ましてや250℃のみに限定するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1のフロアパネルの斜視図である。
【図2】同上の表面形状を測定した図であり、(a)は実施形態1であり、(b)は従来成形によるものであり、(c)は(b)の測定部位の写真である。
【図3】同上の実施形態2に関するものであり、横軸に時間、縦軸に成形樹脂の温度をとった概念図である。
【図4】同上の結晶化度の測定結果である。
【図5】同上の落球衝撃試験の試験結果である。
【図6】同上の実施形態3に関するものであり、横軸にせん断速度、縦軸に粘度(絶対粘度)をとった二種類の材料の溶融粘度のせん断速度および温度依存性の図である。
【図7】同上の二種類の成形樹脂からなるフロアパネルにおける成形樹脂の分布模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 フロアパネル
11 フロアパネル本体
12 載置面
2 リブ部
3 支持脚部
32 接地面
A 高粘度樹脂
B 低粘度樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置物を載置する載置面を備えたフロアパネル本体と、上記載置面と反対の上記フロアパネル本体の面に一端を接し設けた複数のリブ部と、からなるフロアパネルであり、微細発泡のための超臨界流体を含浸した成形樹脂を、成型金型に射出注入して上記成型金型内で微細発泡させ形成したことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
前記載置面の反対の面側から、前記成形樹脂を注入し形成したことを特徴とする請求項1記載のフロアパネル。
【請求項3】
ポリエステル系熱可塑性樹脂に超臨界流体を含浸して前記成形樹脂とし、260℃以下の成形温度で形成したことを特徴とする請求項1または2記載のフロアパネル。
【請求項4】
溶融粘度の異なる二種類以上の成形樹脂を用いたことを特徴とする請求項1から3いずれか一つに記載のフロアパネル。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−24689(P2010−24689A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186340(P2008−186340)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】