説明

フロントフェンダ構造

【課題】フロントピラー下部との間を容易に遮蔽することができるフロントフェンダ構造を提供する。
【解決手段】車体の一部を構成するフロントピラー2の下部前方に設置されるフロントフェンダ10の構造であって、フロントフェンダ10は、フロントフェンダ10の少なくとも前部を構成し金属で形成された本体部11と、本体部11と一体をなし樹脂で形成されたガーニッシュ部12とを備え、ガーニッシュ部12の一部が、フロントフェンダ10の後端にてフロントピラー2の下部との間を遮蔽する遮蔽部19として形成されている。ガーニッシュ部12は、フロントホイールアーチ14より後方に設けられてフロントフェンダ10の後端下部を形成する意匠部18を備え、遮蔽部19は、意匠部18の後縁から車幅方向内側に屈曲し上延するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフェンダ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に車両では、遮音性を高めるなどを目的として、フロントフェンダの後部とフロントピラーの下部との間の隙間を遮蔽板で塞いでいる(例えば、特許文献1参照)。
従来、遮蔽板はフロントフェンダおよびフロントピラーから独立した別部品として形成し、一般的な組み立て手順としては、フロントピラーを含む車体骨格を組み立てた後、この車体骨格にフロントフェンダを取り付け、その後に遮蔽板をフロントフェンダあるいはフロントピラーに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3598745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遮蔽板の取り付け部位であるフロントフェンダ後部とフロントピラー下部との間は極めて狭く、そのため、遮蔽板取り付けの作業性が悪く、取り付けが困難であるという課題があった。
【0005】
そこで、この発明は、フロントピラー下部との間を容易に遮蔽することができるフロントフェンダ構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るフロントフェンダ構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車体(例えば、後述する実施例における車体1)の一部を構成するフロントピラー(例えば、後述する実施例におけるフロントピラー2)の下部前方に設置されるフロントフェンダ(例えば、後述する実施例におけるフロントフェンダ10)の構造であって、前記フロントフェンダは、該フロントフェンダの少なくとも前部を構成し金属で形成された本体部(例えば、後述する実施例における本体部11)と、該本体部と一体をなし樹脂で形成されたガーニッシュ部(例えば、後述する実施例におけるガーニッシュ部12)とを備え、前記ガーニッシュ部の一部が、該フロントフェンダの後端にて前記フロントピラーの下部との間を遮蔽する遮蔽部(例えば、後述する実施例における遮蔽部19)として形成されていることを特徴とするフロントフェンダ構造である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガーニッシュ部は、フロントホイールアーチ(例えば、後述する実施例におけるフロントホイールアーチ14)より後方に設けられてフロントフェンダ後端下部を形成する意匠部(例えば、後述する実施例における意匠部18)と、この意匠部の後縁から車幅方向内側に屈曲し上延するように設けられた前記遮蔽部(例えば、後述する実施例における遮蔽部19)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記ガーニッシュ部の意匠部の外面と、この意匠部に隣接する前記本体部の外面とが面一に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、金属製の本体部と樹脂製のガーニッシュ部が一体にされてフロントフェンダが構成されているので、フロントピラーを含む車体骨格を組み立てた後、この車体骨格にフロントフェンダを取り付けることで、フロントフェンダ後部とフロントピラー下部との間の隙間をガーニッシュ部の遮蔽部によって遮蔽することができ、作業性が向上し、組み立てが容易となる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、ガーニッシュ部の存在を目立たなくすることができる。
請求項3に係る発明によれば、本体部とガーニッシュ部との連結部分の意匠性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るフロントフェンダ構造を備えた車両の斜視図である。
【図2】実施例におけるフロントフェンダの後部とフロントピラーの下部の連結部の斜視図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】図2のB−B矢視断面図である。
【図5】図2のC−C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係るフロントフェンダ構造の実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、車両の車体1には、車体骨格の一部を構成するフロントピラー2が、フロントガラスGの側部からサイドシル3の前部にかけて配設されており、フロントピラー2の下部前方であってボンネット4とフロントドア5との間にはフロントフェンダ10が配設されている。
フロントピラー2は、図3、図4に示すように、フロントピラーアウターパネル2aとフロントピラーインナパネル2bとを接合し閉断面に構成されている。
【0013】
フロントフェンダ10は、フロントフェンダ10の後端下部を除いてほぼ全域を占める本体部11と、フロントフェンダ10の後端下部および背部を占めるガーニッシュ部12とから構成されている。
【0014】
本体部11はアルミニウム合金等の金属で形成されている。本体部11は、その後縁から車幅方向内側に屈曲形成されたフランジ部13を備えており、フランジ部13の上部には、フロントピラー2の側壁(フロントピラーアウターパネル2aの側壁)に対向配置される取付フランジ24が形成されている。この取付フランジ24はフロントピラー2の側壁にボルト・ナット(図示略)により固定される。
【0015】
また、本体部11においてフロントホイールアーチ14の後方に位置するアーチ後方形成部15の下縁からは、図5に示すように、車幅方向内側に屈曲した後、下方へ延びるガーニッシュ取付部16が一体的に延設されており、ガーニッシュ取付部16の下延部16aには2つの貫通孔17が互いに車体前後方向に所定寸法離間して設けられている。
【0016】
ガーニッシュ部12は樹脂で一体成形されている。ガーニッシュ部12は、本体部11のアーチ後方形成部15に取り付けられる意匠部18と、この意匠部18の後縁から車幅方向内側に屈曲した後に上延する遮蔽部19とを備えている。
【0017】
意匠部18は、本体部11のアーチ後方形成部15を下方に延長するような形態に形成されており、本体部11のフロントホイールアーチ14よりも後方に配置されてフロントフェンダ10の後端下部を構成する。
【0018】
図5に示すように、意匠部18の上部裏面側には、車幅方向内側に向かって突出し断面コ字状をなす脚部20が形成されており、この脚部20に装着したクリップ21を、本体部11におけるガーニッシュ取付部16の貫通孔17に固着することにより、意匠部18はガーニッシュ取付部16に固定されている。この取り付け状態において、意匠部18の上縁と本体部11におけるアーチ後方形成部15の下縁とがほぼ接触し、且つ、意匠部18の外面とアーチ後方形成部15の外面が面一となる。
【0019】
図2、図3に示すように、遮蔽部19は、本体部11のフランジ部13よりも車幅方向の寸法が大きく、その一部がフランジ部13の車幅方向内側の端部に重合するように配置されており、その重合部分において遮蔽部19はフランジ部13にピン22などにより固定されている。
【0020】
図3、図4に示すように、遮蔽部19の車幅方向の内側端部は車体前方向へ屈曲されて、当接フランジ23部が形成されており、この当接フランジ23部が、フロントピラーアウターパネル2aに接触するように遮蔽部19の車幅方向の寸法が設定されている。その結果、ガーニッシュ部12の意匠部18の上縁よりも下方では、図4に示すように、本体部11とフロントピラーアウターパネル2aとの間がガーニッシュ部12の遮蔽部19によって塞がれ、ガーニッシュ部12の意匠部18の上縁よりも上方では、図3に示すように、本体部11とフロントピラーアウターパネル2aとの間が本体部11のフランジ部13とガーニッシュ部12の遮蔽部19によって塞がれる。
【0021】
図3、図4において、符号6はフロントピラーアウターパネル2aに固定されたドアヒンジを示し、ドアヒンジ6を介してフロントドア5はフロントピラー2に回動可能に取り付けられている。なお、図2では、フロントドア5およびドアヒンジ6の図示を省略している。
【0022】
フロントフェンダ10は次のようにして車体1に組み込まれる。
まず、フロントピラー2をサイドシル3等と一体化して車体骨格を組み立てておく。
また、これとは別工程で、樹脂製のガーニッシュ部12をクリップ21およびピン22によって金属製の本体部11に固定し、本体部11とガーニッシュ部12とを一体にして、フロントフェンダ10を組み立てておく。
次に、前記車体骨格に対して、フロントフェンダ10をボルトナットにより固定する。その際に、フロントフェンダ10におけるガーニッシュ部12の当接フランジ部23をフロントピラーアウターパネル2aに当接させ、本体部11の取付フランジ24をフロントピラーアウターパネル2aにボルト止めする。これにより、フロントフェンダ10の後端とフロントピラー2の下部との間が、本体部11のフランジ部13およびガーニッシュ部12の遮蔽部19とによって遮蔽される。
【0023】
このように、この実施例のフロントフェンダの構造によれば、金属製の本体部11と樹脂製のガーニッシュ部12が一体にされてフロントフェンダ10が構成されているので、フロントピラー2を含む車体骨格を組み立てた後、この車体骨格にフロントフェンダ10を取り付けることで、フロントフェンダ10の後部とフロントピラー2の下部との間の隙間を遮蔽することができ、作業性が向上し、組み立てが容易となる。
また、フロントフェンダ10の後端下部を形成する意匠部18と、この意匠部18の後縁から車幅方向内側に屈曲し上延する遮蔽部19とからガーニッシュ部12を構成し、意匠部18を本体部11におけるアーチ後方形成部15の下方に連結させたので、ガーニッシュ部12の存在を目立たなくすることができる。
さらに、アーチ後方形成部15の外面と意匠部18の外面とを面一にしているので、本体部11とガーニッシュ部12の連結部分の意匠性が向上する。
【0024】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、本体部11とガーニッシュ部12の材質は前述した例に限るものではない。また、本体部11とガーニッシュ部12との固定手段は前述したクリップ21に限定されず、種々の固定手段が採用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 車体
2 フロントピラー
10 フロントフェンダ
11 本体部
12 ガーニッシュ部
14 フロントホイールアーチ
18 意匠部
19 遮蔽部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を構成するフロントピラーの下部前方に設置されるフロントフェンダの構造であって、前記フロントフェンダは、該フロントフェンダの少なくとも前部を構成し金属で形成された本体部と、該本体部と一体をなし樹脂で形成されたガーニッシュ部とを備え、前記ガーニッシュ部の一部が、該フロントフェンダの後端にて前記フロントピラーの下部との間を遮蔽する遮蔽部として形成されていることを特徴とするフロントフェンダ構造。
【請求項2】
前記ガーニッシュ部は、フロントホイールアーチより後方に設けられてフロントフェンダ後端下部を形成する意匠部と、この意匠部の後縁から車幅方向内側に屈曲し上延するように設けられた前記遮蔽部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のフロントフェンダ構造。
【請求項3】
前記ガーニッシュ部の意匠部の外面と、この意匠部に隣接する前記本体部の外面とが面一に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のフロントフェンダ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−215114(P2010−215114A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64561(P2009−64561)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】