フロントフォーク
【課題】 アウターチューブにめっきが施されるフロントフォークの改良に関し、倒立型に設定したときアウターチューブのバリでキャップ部材が変形することを防止する。
【解決手段】 車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結されるアウターチューブ1と、このアウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2とを備えてなり、上記アウターチューブ1の両端開口をマスキング部材6で密栓して上記アウターチューブ1の両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、上記キャップ部材2は、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備え、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側の端面10に衝合する蓋部23を有し、この蓋部23に上記車体側の端面10の内周部に対向する円周溝23aを形成した。
【解決手段】 車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結されるアウターチューブ1と、このアウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2とを備えてなり、上記アウターチューブ1の両端開口をマスキング部材6で密栓して上記アウターチューブ1の両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、上記キャップ部材2は、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備え、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側の端面10に衝合する蓋部23を有し、この蓋部23に上記車体側の端面10の内周部に対向する円周溝23aを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、倒立型のフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントフォークは、これまでに種々の提案がなされており、自転車や自動二輪車等の鞍乗り用車両の前輪を懸架し、この前輪に入力される路面振動を吸収する。
【0003】
特許文献1には、従来のフロントフォークの構成が開示されており、上記フロントフォークは、車軸側に連結されるアウターチューブと、車体側に連結されて上記アウターチューブ内に摺動自在に挿入するインナーチューブとを備えて正立型に設定される。
【0004】
上記アウターチューブは、アルミ素材からなり、アルマイト処理をしてその外周面に陽極酸化皮膜を形成する。これにより、フロントフォークを軽量化しながら防錆性能を得ることが可能となる。
【0005】
しかしながら、陽極酸化皮膜を形成した場合において、アウターチューブ外周面が艶消し調の外観となり、金属光沢のある外観を得ることができない。そこで、出願人は、先の出願においてアウターチューブ外周面に装飾用クロムめっきを施すことを提案した。
【0006】
上記アウターチューブにめっきを施すとき、当該アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓した状態でめっき液に浸漬し、内部にめっき液が浸入することを防止してアウターチューブの両端面及び外周面のみをめっき液と接触させる。これにより、アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施すことが可能となる。
【0007】
当該提案のフロントフォークを倒立型に設定した場合、フロントフォークは、図4に示すように、車体側に連結されるめっきが施されたアウターチューブ1と、このアウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2Aとを備える。
【0008】
上記キャップ部材2Aは、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備え、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側端面10に衝合する蓋部230を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−186500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来のフロントフォークにおいて、上記方法によりアウターチューブの外周面及び両端面にめっきを施した場合、防錆性能を得ると共にアウターチューブを金属光沢のある外観にすることが可能となる点において有用である。
【0011】
しかしながら、従来のフロントフォークを正立型に設定した場合において不具合はないが、上述のように、従来のフロントフォークを倒立型に設定した場合において、以下の不具合を指摘される虞がある。
【0012】
即ち、従来のフロントフォークにおいては、アウターチューブ1にめっきを施す際、図3に示すように、マスキング部材6の側面とアウターチューブ1の端面10内周部とが接触するため、マスキング境界となる上記接触部に気泡が付着して端面10上にバリが発生する場合がある。
【0013】
この場合において、キャップ部材2Aを装着して蓋体230を端面10に衝合させたときたとき、上記端面10上で凸となるバリ部分のみ面圧が高くなり、キャップ部材2Aが変形して要求される軸力が得られずキャップ部材2Aが緩む虞があるため、バリ取り作業をして端面10を水平にする必要がある。
【0014】
そこで、本発明は、倒立型のフロントフォークにおけるアウターチューブにめっきを施した場合においても、バリ取り作業をすることなくキャップ部材の変形を防止することが可能なフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段は、車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、上記アウターチューブの車体側開口部に装着されるキャップ部材とを備えてなり、上記アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓して上記アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、上記キャップ部材は、装着状態において上記アウターチューブの外部に配置される蓋体と、アウターチューブ内部に配置されるキャップ本体とを備え、上記蓋体は、外周部が上記アウターチューブの車体側の端面に衝合する蓋部を有し、この蓋部に上記車体側の端面の内周部に対向する円周溝を形成したことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャップ部材の蓋部に円周溝を形成することにより、アウターチューブにおける車体側端面の内周部に発生するバリを避けながら端面と蓋部とを衝合させることが可能となり、蓋部と端面とが衝合する部分に均等に面圧がかかる。
【0017】
したがって、バリ取り作業をすることなくキャップ部材が変形することを防止してキャップ部材が緩むことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の一実施の形態を示すフロントフォークを部分的に示す側面図であり、その一部を切り欠いて示す。
【図2】本発明の一実施の形態を示すフロントフォークにおけるアウターチューブを部分的に示す半断面図である。
【図3】(a)図2に示すアウターチューブの車体側開口をマスキング部材で密栓した状態を示す半断面図である。(b)(a)に示すアウターチューブの入口部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】従来のフロントフォークを部分的に示す側面図であり、その一部を切り欠いて示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本願発明の一実施の形態を示すフロントフォークについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0020】
本実施の形態に係るフロントフォークは、車体と車軸との間に介装されて、図1に示すように、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブ1と、このアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ(図示せず)とからなるフォーク本体と、上記アウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2とを備え、上記アウターチューブ1の両端開口をマスキング部材6で密栓して上記アウターチューブ1の両端面及び外周面にめっきを施したものである。
【0021】
上記キャップ部材2は、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備える。そして、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側の端面10に衝合する蓋部23を有し、この蓋部23には、上記端面10の内周部に対向する円周溝23aが形成される。
【0022】
以下に、詳細に説明すると、本実施の形態に係るフロントフォークは、自動二輪車の前輪を懸架する懸架装置であり、車体側に連結されるアウターチューブ1と、車軸側に連結されて上記アウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ(図示せず)とからなるフォーク本体を備え、倒立型に設定される。
【0023】
上記フォーク本体は、内部に作動流体や気体を収容し、これら作動流体や気体は、アウターチューブ1の車体側開口を塞ぐキャップ部材2と、インナーチューブの車軸側開口を塞ぐボトム部材(図示せず)と、上記アウターチューブ1の車軸側開口端部内周に設けられて上記インナーチューブ外周に摺接する環状のシール部材(図示せず)により、フォーク本体外に漏れることが防がれる。
【0024】
上記キャップ部材2が装着されるアウターチューブ1の車体側開口部は、図2に示すように、筒状に形成されると共にその端面10が水平に形成されてなり、キャップ部材2が装着された状態においてキャップ部材2に係合する環状のシール3が密着するシール面11aを内周に有するシール部11と、このシール部11の図中下側に連設されてキャップ部材2が螺合する螺合部13とを備える。
【0025】
また、アウターチューブ1の車体側開口部は、シール部11と端面10との間に形成される入口部12を備え、この入口部12には、内周が徐々に縮径されてなるシール用傾斜面5が形成される。
【0026】
上記構成を備えることにより、シール3が係合した状態でキャップ部材2を螺合部13に螺合するとき、上記シール3が上記シール用傾斜面5を介してシール部11内に案内され、シール3外周がシール面11aに密着する。これにより、上記シール3でキャップ部材2とアウターチューブ1との隙間を封止することが可能となる。
【0027】
更に、上記アウターチューブ1は、アルミ素材からなり、図3に示すように、両端開口をマスキング部材6で密栓されながらアウターチューブ1の外周面及び上記端面10に装飾用クロムめっきが施される。
【0028】
上記マスキング部材6は、環状の弾性体からなり、めっき用治具に固定される支柱7の外周に装着される。そして、マスキング部材6をアウターチューブ1の両端開口内に挿入したとき、圧縮変形しながらアウターチューブ1の両端部内周面に密着する。これにより、マスキング部材6は、アウターチューブ1内にめっき液が浸入することを防止して、めっき液と接触する部分にのみめっきを施すことが可能となる。
【0029】
このとき、アウターチューブ1の車体側開口部において、マスキング部材6は、シール部11内で圧縮変形し、その外周をシール面11aに密着させてアウターチューブ1の車体側開口を封止する。そして、マスキング部材6は、シール用傾斜面5に沿って徐々に拡径され、その側面が端面10の内周部に接触する。
【0030】
マスキング部材6が接触する部分と接触しない部分との境界にマスキング境界ができ、めっきを施したとき上記マスキング境界にバリが発生する。つまり、端面10の内周部にマスキング境界ができるため、図3(b)に示すように、端面10の内周部にバリ10aが発生する。
【0031】
ところで、上記アウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2は、図1に示すように、装着状態においてアウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1の内部に配置されるキャップ本体21とを備える。
【0032】
上記キャップ本体21は、外周に沿って形成されてシール3が係合するシール溝24と、アウターチューブ1の螺子部13に螺合するボルト部25とを有する。
【0033】
上記蓋体20は、締め付け用の工具が係合可能な頭部22と、外周部がアウターチューブ1の車体側端面10に衝合する蓋部23とを有し、上記蓋部23には、上記端面10の内周部と対向する位置に円周溝23aが形成される。
【0034】
キャップ部材2が上記円周溝を備えることにより、アウターチューブ1における車体側端面10の内周部に発生するバリ10aを避けながら端面10と蓋部23とを衝合させることが可能となり、蓋部23と端面10とが衝合する部分に均等に面圧がかかる。
【0035】
したがって、バリ取り作業をすることなくキャップ部材2が変形することを防止してキャップ部材2が緩むことを防止することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0037】
例えば、上記実施の形態においては、アウターチューブ1がアルミ素材からなり、装飾用クロムめっきを施したものとしたがこの限りではなく、アウターチューブ1の素材及びめっきの種類は、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 アウターチューブ
2、2A キャップ部材
3 シール
5 シール用傾斜面
6 マスキング部材
10 端面
11 シール部材
11a シール面
12 入口部
13 螺合部
20 蓋体
21 キャップ本体
22 頭部
23 蓋部
23a 円周溝
24 シール溝
25 ボルト部
【技術分野】
【0001】
この発明は、倒立型のフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントフォークは、これまでに種々の提案がなされており、自転車や自動二輪車等の鞍乗り用車両の前輪を懸架し、この前輪に入力される路面振動を吸収する。
【0003】
特許文献1には、従来のフロントフォークの構成が開示されており、上記フロントフォークは、車軸側に連結されるアウターチューブと、車体側に連結されて上記アウターチューブ内に摺動自在に挿入するインナーチューブとを備えて正立型に設定される。
【0004】
上記アウターチューブは、アルミ素材からなり、アルマイト処理をしてその外周面に陽極酸化皮膜を形成する。これにより、フロントフォークを軽量化しながら防錆性能を得ることが可能となる。
【0005】
しかしながら、陽極酸化皮膜を形成した場合において、アウターチューブ外周面が艶消し調の外観となり、金属光沢のある外観を得ることができない。そこで、出願人は、先の出願においてアウターチューブ外周面に装飾用クロムめっきを施すことを提案した。
【0006】
上記アウターチューブにめっきを施すとき、当該アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓した状態でめっき液に浸漬し、内部にめっき液が浸入することを防止してアウターチューブの両端面及び外周面のみをめっき液と接触させる。これにより、アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施すことが可能となる。
【0007】
当該提案のフロントフォークを倒立型に設定した場合、フロントフォークは、図4に示すように、車体側に連結されるめっきが施されたアウターチューブ1と、このアウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2Aとを備える。
【0008】
上記キャップ部材2Aは、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備え、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側端面10に衝合する蓋部230を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−186500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来のフロントフォークにおいて、上記方法によりアウターチューブの外周面及び両端面にめっきを施した場合、防錆性能を得ると共にアウターチューブを金属光沢のある外観にすることが可能となる点において有用である。
【0011】
しかしながら、従来のフロントフォークを正立型に設定した場合において不具合はないが、上述のように、従来のフロントフォークを倒立型に設定した場合において、以下の不具合を指摘される虞がある。
【0012】
即ち、従来のフロントフォークにおいては、アウターチューブ1にめっきを施す際、図3に示すように、マスキング部材6の側面とアウターチューブ1の端面10内周部とが接触するため、マスキング境界となる上記接触部に気泡が付着して端面10上にバリが発生する場合がある。
【0013】
この場合において、キャップ部材2Aを装着して蓋体230を端面10に衝合させたときたとき、上記端面10上で凸となるバリ部分のみ面圧が高くなり、キャップ部材2Aが変形して要求される軸力が得られずキャップ部材2Aが緩む虞があるため、バリ取り作業をして端面10を水平にする必要がある。
【0014】
そこで、本発明は、倒立型のフロントフォークにおけるアウターチューブにめっきを施した場合においても、バリ取り作業をすることなくキャップ部材の変形を防止することが可能なフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段は、車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、上記アウターチューブの車体側開口部に装着されるキャップ部材とを備えてなり、上記アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓して上記アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、上記キャップ部材は、装着状態において上記アウターチューブの外部に配置される蓋体と、アウターチューブ内部に配置されるキャップ本体とを備え、上記蓋体は、外周部が上記アウターチューブの車体側の端面に衝合する蓋部を有し、この蓋部に上記車体側の端面の内周部に対向する円周溝を形成したことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャップ部材の蓋部に円周溝を形成することにより、アウターチューブにおける車体側端面の内周部に発生するバリを避けながら端面と蓋部とを衝合させることが可能となり、蓋部と端面とが衝合する部分に均等に面圧がかかる。
【0017】
したがって、バリ取り作業をすることなくキャップ部材が変形することを防止してキャップ部材が緩むことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の一実施の形態を示すフロントフォークを部分的に示す側面図であり、その一部を切り欠いて示す。
【図2】本発明の一実施の形態を示すフロントフォークにおけるアウターチューブを部分的に示す半断面図である。
【図3】(a)図2に示すアウターチューブの車体側開口をマスキング部材で密栓した状態を示す半断面図である。(b)(a)に示すアウターチューブの入口部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】従来のフロントフォークを部分的に示す側面図であり、その一部を切り欠いて示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本願発明の一実施の形態を示すフロントフォークについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0020】
本実施の形態に係るフロントフォークは、車体と車軸との間に介装されて、図1に示すように、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブ1と、このアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ(図示せず)とからなるフォーク本体と、上記アウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2とを備え、上記アウターチューブ1の両端開口をマスキング部材6で密栓して上記アウターチューブ1の両端面及び外周面にめっきを施したものである。
【0021】
上記キャップ部材2は、装着状態において上記アウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1内部に配置されるキャップ本体21とを備える。そして、上記蓋体20は、外周部が上記アウターチューブ1の車体側の端面10に衝合する蓋部23を有し、この蓋部23には、上記端面10の内周部に対向する円周溝23aが形成される。
【0022】
以下に、詳細に説明すると、本実施の形態に係るフロントフォークは、自動二輪車の前輪を懸架する懸架装置であり、車体側に連結されるアウターチューブ1と、車軸側に連結されて上記アウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ(図示せず)とからなるフォーク本体を備え、倒立型に設定される。
【0023】
上記フォーク本体は、内部に作動流体や気体を収容し、これら作動流体や気体は、アウターチューブ1の車体側開口を塞ぐキャップ部材2と、インナーチューブの車軸側開口を塞ぐボトム部材(図示せず)と、上記アウターチューブ1の車軸側開口端部内周に設けられて上記インナーチューブ外周に摺接する環状のシール部材(図示せず)により、フォーク本体外に漏れることが防がれる。
【0024】
上記キャップ部材2が装着されるアウターチューブ1の車体側開口部は、図2に示すように、筒状に形成されると共にその端面10が水平に形成されてなり、キャップ部材2が装着された状態においてキャップ部材2に係合する環状のシール3が密着するシール面11aを内周に有するシール部11と、このシール部11の図中下側に連設されてキャップ部材2が螺合する螺合部13とを備える。
【0025】
また、アウターチューブ1の車体側開口部は、シール部11と端面10との間に形成される入口部12を備え、この入口部12には、内周が徐々に縮径されてなるシール用傾斜面5が形成される。
【0026】
上記構成を備えることにより、シール3が係合した状態でキャップ部材2を螺合部13に螺合するとき、上記シール3が上記シール用傾斜面5を介してシール部11内に案内され、シール3外周がシール面11aに密着する。これにより、上記シール3でキャップ部材2とアウターチューブ1との隙間を封止することが可能となる。
【0027】
更に、上記アウターチューブ1は、アルミ素材からなり、図3に示すように、両端開口をマスキング部材6で密栓されながらアウターチューブ1の外周面及び上記端面10に装飾用クロムめっきが施される。
【0028】
上記マスキング部材6は、環状の弾性体からなり、めっき用治具に固定される支柱7の外周に装着される。そして、マスキング部材6をアウターチューブ1の両端開口内に挿入したとき、圧縮変形しながらアウターチューブ1の両端部内周面に密着する。これにより、マスキング部材6は、アウターチューブ1内にめっき液が浸入することを防止して、めっき液と接触する部分にのみめっきを施すことが可能となる。
【0029】
このとき、アウターチューブ1の車体側開口部において、マスキング部材6は、シール部11内で圧縮変形し、その外周をシール面11aに密着させてアウターチューブ1の車体側開口を封止する。そして、マスキング部材6は、シール用傾斜面5に沿って徐々に拡径され、その側面が端面10の内周部に接触する。
【0030】
マスキング部材6が接触する部分と接触しない部分との境界にマスキング境界ができ、めっきを施したとき上記マスキング境界にバリが発生する。つまり、端面10の内周部にマスキング境界ができるため、図3(b)に示すように、端面10の内周部にバリ10aが発生する。
【0031】
ところで、上記アウターチューブ1の車体側開口部に装着されるキャップ部材2は、図1に示すように、装着状態においてアウターチューブ1の外部に配置される蓋体20と、アウターチューブ1の内部に配置されるキャップ本体21とを備える。
【0032】
上記キャップ本体21は、外周に沿って形成されてシール3が係合するシール溝24と、アウターチューブ1の螺子部13に螺合するボルト部25とを有する。
【0033】
上記蓋体20は、締め付け用の工具が係合可能な頭部22と、外周部がアウターチューブ1の車体側端面10に衝合する蓋部23とを有し、上記蓋部23には、上記端面10の内周部と対向する位置に円周溝23aが形成される。
【0034】
キャップ部材2が上記円周溝を備えることにより、アウターチューブ1における車体側端面10の内周部に発生するバリ10aを避けながら端面10と蓋部23とを衝合させることが可能となり、蓋部23と端面10とが衝合する部分に均等に面圧がかかる。
【0035】
したがって、バリ取り作業をすることなくキャップ部材2が変形することを防止してキャップ部材2が緩むことを防止することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0037】
例えば、上記実施の形態においては、アウターチューブ1がアルミ素材からなり、装飾用クロムめっきを施したものとしたがこの限りではなく、アウターチューブ1の素材及びめっきの種類は、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 アウターチューブ
2、2A キャップ部材
3 シール
5 シール用傾斜面
6 マスキング部材
10 端面
11 シール部材
11a シール面
12 入口部
13 螺合部
20 蓋体
21 キャップ本体
22 頭部
23 蓋部
23a 円周溝
24 シール溝
25 ボルト部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、上記アウターチューブの車体側開口部に装着されるキャップ部材とを備えてなり、
上記アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓して上記アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、
上記キャップ部材は、装着状態において上記アウターチューブの外部に配置される蓋体と、アウターチューブ内部に配置されるキャップ本体とを備え、
上記蓋体は、外周部が上記アウターチューブの車体側の端面に衝合する蓋部を有し、この蓋部に上記車体側の端面の内周部に対向する円周溝を形成したことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記アウターチューブは、アルミ素材からなり、上記めっきが装飾用クロムめっきであることを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項1】
車体と車軸との間に介装されて、車体側に連結され両端に車体側開口部及び車軸側開口部を有するアウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなるフォーク本体と、上記アウターチューブの車体側開口部に装着されるキャップ部材とを備えてなり、
上記アウターチューブの両端開口をマスキング部材で密栓して上記アウターチューブの両端面及び外周面にめっきを施したフロントフォークにおいて、
上記キャップ部材は、装着状態において上記アウターチューブの外部に配置される蓋体と、アウターチューブ内部に配置されるキャップ本体とを備え、
上記蓋体は、外周部が上記アウターチューブの車体側の端面に衝合する蓋部を有し、この蓋部に上記車体側の端面の内周部に対向する円周溝を形成したことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記アウターチューブは、アルミ素材からなり、上記めっきが装飾用クロムめっきであることを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−97840(P2012−97840A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246438(P2010−246438)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
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