説明

フローろう付け用の電子部品冷却治具

【課題】フローろう付けの際に、溶融ろうからの熱で電子部品に対して熱ストレスが生じる。
【解決手段】この発明のフローろう付け用の電子部品冷却治具1は、はんだをろう付け面にはんだ付けしてプリント基板と数字表示部品のリードとを電気的に接続するフローろう付け装置に用いられる、フローろう付け用の電子部品冷却治具であって、金属ブロック2と、この金属ブロック2の電子部品に載置される側の露出面を除いた全体を断熱材で覆った断熱覆体3とを備え、数字表示部品に載置し金属ブロック2で数字表示部品を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフローはんだ付けを行う場合に適したフローろう付け用の電子部品冷却治具に関する。
【背景技術】
【0002】
フローはんだ付け装置は、電子部品が搭載されたプリント基板を搬送コンベアによって一定方向に移動させながら、フラックス塗布部、プリヒータ、はんだ槽の順で通過させてフラックス塗布、予備加熱、はんだ付けの各処理を自動的に行うものである。
【0003】
このフローはんだ付け工程では、まずプリント基板に塗布されたフラックスを活性温度(摂氏100度〜120度程度)まで加熱するために、プリヒータによってプリント基板を加熱し、続いてプリント基板の裏側のはんだ付け面をはんだ槽に浸け、槽内の溶融はんだを付着させる。
【0004】
フローはんだ付け工程では、プリント基板の裏面と、この裏面から突出した電子部品のリードを十分に加熱する必要があり、十分に加熱されていない場合は、はんだのなじみ不足やはんだ上がり不足となり、はんだ付け品質の低下を招くことになる。
【0005】
プリント基板の裏面であるはんだ付け面を十分に加熱しようとした場合、プリヒータによって加熱された熱風がプリント基板の部品搭載面側にも及び、プリント基板に搭載された電子部品のハウジングも加熱される。
【0006】
また、特に鉛フリーはんだを用いたフローはんだ付けでは、鉛を成分に含む共晶はんだを用いる場合と比較して、はんだの融点が高い(約250℃)ことからはんだ付け温度が高くなり、溶融はんだから受けた熱により、リードがより加熱され、ハウジングに伝わる熱量も多くなる。
【0007】
電子部品は、電子部品のリード及びハウジングの熱膨張係数が異なるため、上記のようにしてハウジングの温度が高くなると、ハウジングがリードよりも大きく膨張することにより、リードに端部が接続されたボンディングワイヤーのボンディング部で断線することが起こり得る。
【0008】
このような不都合を解消すべく、ハウジングのみを目標として、かつハウジングに追従して冷却風を噴射するブロアーが設けられたフローはんだ付け装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−177014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記フローはんだ付け装置は、冷却風が対象物であるハウジングの周囲にも僅かながら当たり、周辺のプリント基板温度の低下は免れない。
このため、電子部品が搭載された、冷却風を受けたプリント基板の表面の温度と、高温の溶融はんだがろう付けされたはんだ付け面であるプリント基板の裏面との温度差が大きくなると、プリント基板のそりが発生し、場合によってはプリント基板上のパターンに応力がかかり、パターン断線が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0011】
また、フローはんだ付け装置内にブロアーを設置する必要があり、既存の設備のままでは対応することが困難であるし、冷却する必要のある電子部品が同一基板上に複数個存在する場合、それに応じてブロアーの数を増やさなければならず、設備変更に莫大な費用が必要になるという問題点もあった。
【0012】
この発明は、かかる問題点を解決することを課題とするものであって、低コストで電子部品に対する熱ストレスを低減することができるフローろう付けの電子部品冷却治具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るフローろう付け用の電子部品冷却治具は、リード及び電子部品本体を有する電子部品が搭載された基板を搬送コンベアによって一定方向に移動させながら、溶融したろうが貯留されたろう槽を通過させて前記基板の裏側のろう付け面をろう槽に浸け、前記ろうをろう付け面にろう付けして前記基板と前記リードとを電気的に接続するフローろう付け装置に用いられる、フローろう付け用の電子部品冷却治具であって、
金属ブロックと、この金属ブロックの前記電子部品に載置される側の露出面を除いた全体を断熱材で覆った断熱覆体とを備え、
前記電子部品に載置し前記金属ブロックで前記電子部品を冷却するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るフローろう付け用の電子部品冷却治具によれば、ろう付け時に溶融ろうからリードが吸収する熱が電子部品本体に伝わるものの、この熱を金属ブロックが吸収するため、フローろう付け時の電子部品の温度を低下させることが可能になり、電子部品に対する熱ストレスが低減する。
また、金属ブロックを冷却することで、新たに別の電子部品のろう付けにも供することができるので、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1のフローはんだ付け用の電子部品冷却治具を示す透視斜視図である。
【図2】電子部品である数字表示部品の構成を示す縦断面図である。
【図3】図1の電子部品冷却治具を用いた場合のフローはんだ付け工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
【0017】
図1は、この発明の実施の形態1のフローはんだ付け用の電子部品冷却治具1を示す透斜斜視図である。
この電子部品冷却治具1は、直方体形状であって銅で構成された金属ブロック2と、この金属ブロック2の五面を覆った耐熱性のエポキシ樹脂の断熱材で構成された断熱覆体3と、金属ブロック2の底面に密接し外部に露出したシリコーンシートからなる熱伝導板4と、金属ブロック2の天面に付着し金属ブロックの温度を検知する温度検知部5とを備えている。この温度検知部5は、温度の変化に応じて色が変色する、例えば温度が高い時には赤色で常温では青色に変色するサーモラベルであり、色の変化は外部から肉眼観察される。
【0018】
図2は、電子部品冷却治具1で冷却される電子部品である数字表示部品6を示す縦断面図であり、この数字表示部品6は、電子部品本体である表示部品本体14と、この表示部品本体14の底面から突出した第1のリード9a及び第2のリード9bとを備えている。
表示部品本体14は、ハウジング7と、このハウジング7内に収納され第1のリード9aに接続された発光体8と、この発光体8に一端部が接続され、他端部がボンディング部12を介して第2のリード9bに接続されたボンディングワイヤ10と、ハウジング7内にエポキシ樹脂が充填された充填材11とを備えている。
【0019】
図3は、フローはんだ付け工程を示す図であり、プリント基板20に搭載された数字表示部品6は、搬送コンベア21によって一方向に移動し、フラックス塗布部(図示せず)でプリント基板20の裏面がフラックス塗布される。
引き続き、数字表示部品6は、プリヒータ22上を通過して予備加熱された後、プリント基板20の裏面のろう付け面であるはんだ付け面が、溶融ろうである約250℃の溶融はんだ24が貯留されたはんだ槽23に浸漬され、溶融はんだ24は、プリント基板20の裏側に付着される。
【0020】
このフローはんだ付け工程では、プリント基板20に塗布されたフラックスを活性温度(100℃〜120℃程度)まで加熱されない場合には、はんだのなじみ不足やはんだの上がり不足となり、はんだ付け品質の低下を招くことになる。
従って、プリント基板20のはんだ付け面に溶融はんだ24が付着される前の段階では、プリヒータ22を用いてプリント基板20の裏面及びリード9a,9bが所定の温度に達するまで加熱される。
【0021】
次に、この実施の形態の電子部品冷却治具1に関して説明する。
この電子部品冷却治具1は、プリヒータ22の手前で数字表示部品6の上面に載置する。
このとき、数字表示部品6の上面に、熱伝導板4が面接触しており、断熱覆体3がプリヒータ22からの熱が金属ブロック2に伝達されるのを遮断している。
これは、プリヒータ22からの熱で金属ブロック2が加熱されてしまうと、はんだ付け前に、金属ブロック2が高温になり、金属ブロック2と溶融はんだ24から受けた熱によって加熱された数字表示部品6との間の温度差が小さくなり、数字表示部品6の冷却効率が低下するのを防ぐためである。
なお、図3では、プリヒータ22はプリント基板20の下側のみに記載されているが、プリヒータ22は、搬送コンベア21を囲うようにして配置されており、この電子部品冷却治具1は、矢印に示すように上方向から数字表示部品6に向かっての熱を主に遮断している。
【0022】
プリヒータ22による予備加熱の後のはんだ付け工程では、溶融はんだ24からの高熱は、矢印に示すように第1のリード9a、第2のリード9bを介して表示部品本体14に熱伝導される。
しかしながら、数字表示部品6の上面には熱伝導板4を介して部品冷却治具1の金属ブロック2が面接触しているので、表示部品本体14は温度の低い金属ブロック2により温度上昇が抑制される。
即ち、はんだつけ時における数字表示部品6の温度上昇が抑制され、数字表示部品6に対する熱ストレスが低減されるので、例えばボンディング部12での剥がれの発生を低減することができる。
また、金属ブロック2を冷却することで、同じ部品冷却治具1を用いて新たに別の数字表示部品6のろう付けにも供することができるので、経済的である。
【0023】
フローはんだ付けが完了した後、数字表示部品6から部品冷却治具1を取り外して、部品冷却治具1を繰り返し使用する際、はんだ付け時に部品冷却治具1が吸収した熱が十分に放熱したかどうかは、温度検知部5の色の変化で検知される。
【0024】
なお、上記の実施の形態では、金属ブロック2は銅を用いて説明したが、他の熱伝導率の高いアルミニウム等の他の材料を使用してもよい。
また、断熱覆体3は、エポキシ樹脂を用いたが、プリヒータ22、溶融はんだ24からの熱でも変形したり溶融しない程度の耐熱性を有する断熱材料であれがよい。
また、電子部品として数字表示部品6について説明したが、数字表示部品6は一例であり、この電子部品冷却治具1は、要はリードが基板にフローろう付けされて電気的に接続される電子部品であれば適用される。
また、プリント基板20も一例であり、他の基板であってもよい。
また、ろうとしてはんだを用いて説明したが、はんだは一例であり、銀、銅等であってもよい。
また、フラックス塗布、プリヒータ22による予備加熱工程がないフローろう付け装置にも、この発明の電子部品冷却治具1は適用される。
また、温度検知部5は、温度を正確に検知する必要はなく、常温まで冷却されたかを色の変色で判別できるサーモラベルを用いたが、勿論ディジタル温度計のように、数値で温度を読み取ることができるものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 部品冷却治具、2 金属ブロック、3 断熱覆体、4 熱伝導板、5 温度検知部、6 数字表示部品(電子部品)、7 ハウジング、8 発光体、9a 第1のリード、9b 第2のリード、10 ボンディングワイヤ、11 充填材、12 ボンディング部、14 表示部品本体、20 プリント基板(基板)、21 搬送コンベア、22 プリヒータ、23 はんだ槽(ろう槽)、24 溶融はんだ(溶融ろう)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード及び電子部品本体を有する電子部品が搭載された基板を搬送コンベアによって一定方向に移動させながら、溶融したろうが貯留されたろう槽を通過させて前記基板の裏側のろう付け面をろう槽に浸け、前記ろうをろう付け面にろう付けして前記基板と前記リードとを電気的に接続するフローろう付け装置に用いられる、フローろう付け用の電子部品冷却治具であって、
金属ブロックと、この金属ブロックの前記電子部品に載置される側の露出面を除いた全体を断熱材で覆った断熱覆体とを備え、
前記電子部品に載置し前記金属ブロックで前記電子部品を冷却することを特徴とするフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項2】
前記搬送コンベアの移動往路において、前記ろう槽の手前には、フラックス塗布部、プリヒータが配置され、前記ろうが前記ろう付け面にろう付けされる前に、前記基板の前記ろう付け面は、フラックス塗布、予備加熱されることを特徴とする請求項1に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項3】
前記金属ブロックの前記露出面には、熱伝導板が付着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項4】
前記熱伝導板は、シリコーンシートであることを特徴とする請求項3に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項5】
前記金属ブロックには、前記金属ブロックの温度を検知する温度検知部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項6】
前記温度検知部は、温度の変化により変色するサーモラベルであることを特徴とする請求項5に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項7】
前記金属ブロックは、銅またはアルミニウムで構成され、前記断熱覆体は、エポキシ樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項8】
前記ろうは、はんだであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。
【請求項9】
前記基板は、プリント基板であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のフローろう付け用の電子部品冷却治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−134365(P2012−134365A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285982(P2010−285982)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】