説明

フローインデックスの高いポリアミド

本発明は、ポリアミド、当該ポリアミドの製造方法及び当該ポリアミドを含む組成物に関する。特に、本発明は、多官能性化合物及び随意に一官能性化合物の存在下で二酸単量体及びジアミン単量体を重合させることによって得られたポリアミドに関するものである。このポリアミドは、例えば成形を目的とした組成物を製造するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド、その製造方法及びそれを含有する組成物に関するものである。特に、本発明は、多官能性化合物及び随意に一官能性化合物の存在下で二酸及びジアミンを重合させることによって得られたポリアミドに関するものである。このポリアミドは、例えば成形されることを目的とした組成物の製造に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドを主成分とする熱可塑性組成物は、成形、特に射出成形により変形させてプラスチック部品を製造することのできる原料である。
【0003】
特にポリアミドを主成分とする組成物をこれらの変形プロセスにおいて使用する場合に、当該組成物のために得ることが望ましい少なくとも3つの主要な特性がある。
【0004】
これらの特性のうち第1のものは、使用するこれらの熱可塑性組成物が、その溶融状態で、所定の成形方法、例えば射出成形に合致するフローインデックス又は流動学的挙動によって特徴付けられなければならないという事実にある。特に、これらの熱可塑性組成物は、溶融したときに、所定の成形装置、例えば射出成形装置内において容易かつ迅速に輸送及び取り扱いをすることができる程度に十分に流動的でなければならない。
【0005】
また、これらの組成物の機械的性質を増大させることも求められている。これらの機械的性質は、とりわけ衝撃強さ、曲げ率又は引張係数及び曲げ又は引張破断応力である。この目的のために、一般にガラス繊維などの補強充填剤が使用される。
【0006】
最後に、これらの熱可塑性組成物から成形された部品の場合には、清浄かつ均質な表面形態が求められる。この制約は、ガラス繊維が高度に充填された熱可塑性組成物を使用する場合には特に困難な解決課題となる。というのは、これらのガラス繊維は、成形部品の表面形態を損なうからである。許容できる表面形態を得るために、フローインデックスの高い熱可塑性組成物を使用することが知られている。しかしながら、この流動性の増加により、得られた物品の機械的性質が減少することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5346984号明細書
【特許文献2】米国特許第5959069号明細書
【特許文献3】国際公開第96/35739号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第672703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果的に、同じポリアミドを主成分とする熱可塑性組成物についてこれらの様々な特性を得ることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願出願人は、標準的な直鎖状ポリアミドと同等の又はそれよりも優れた、高いフローインデックスと機械的性質とを有し、かつ、特に大量の充填剤を含有する場合でも優れた表面形態を有する物品を製造することを可能にする、多官能性化合物、随意に二官能性化合物及び/又は一官能性化合物で変性されたポリアミドを開発した。
【0010】
かかるポリアミドは、ジカルボン酸及びジアミン単量体と、該ジカルボン酸単量体及びジアミン単量体の官能基と共にアミド結合を形成することのできる少なくとも3個の酸官能基又はアミン官能基を有する一官能性化合物と、随意に、該ジカルボン酸単量体及びジアミン単量体の官能基と共にアミド官能基を形成することのできる酸官能基又はアミン官能基を有する二官能性化合物及び/又は一官能性化合物とを重合させることによって得られる。重合方法は従来のものであり、かつ、二酸及びジアミン単量体を主成分とするポリアミド、例えばナイロン66の重合のために通常使用されるものに相当する。
【0011】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも:
・AA型のジカルボン酸単量体及びBB型のジアミン単量体又はそれらの塩;
・少なくとも3個の官能基A又は少なくとも3個の官能基Bを有する多官能性化合物(i);
・随意に、官能基A又は官能基Bを有する一官能性化合物(ii)
の存在下での重合により得られたポリアミドであって、
ここで、該官能基A及び官能基Bは、互いに反応してアミド結合を形成することのできる官能基であり;
該ポリアミドは、
・該ポリアミドの構成単量体のモル数に対して、該多官能性化合物(i)に相当する単位を0.02モル%〜0.6モル%、
・随意に、ポリアミドの構成単量体のモル数に対して、該一官能性化合物(ii)に相当する単位を0〜2モル%
含み、
得られた該ポリアミドは、その末端基間の絶対値ΔGTの差が値Q(限界ΔGT)以上であり;
この値Qは、
Q=α.[(β−Tii2−γ]0.5(角括弧(β−Tii2−γの総計が正の場合);又は
Q=0(角括弧(β−Tii2−γの総計が負又ゼロの場合)
によって定義され、ここで、
・α=72
・β=0.625.(f−2)3.Ti2+(f−2).Ti+2
・γ=2.6
・Tiは、多官能性化合物(i)のモルパーセントに相当し
・Tiiは、多官能性化合物(ii)のモルパーセントに相当し
・fは、多官能性化合物(i)の官能価、つまり多官能性化合物(i)が保持する官能基A又は官能基Bの数に相当し;
・ΔGT及びQの量は、meq/kgで表される、前記ポリアミドである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
末端基間の差ΔGTがその絶対値と解釈されること、すなわち常にゼロであると解釈されることは、明確に理解される。
【0013】
官能基A及びBは、互いに反応してアミド結合を形成することのできる官能基である。官能基Aは、ジカルボン酸官能基又はその塩或いは重合媒体中において官能基Aを生じさせることのできる官能基Aの前駆体官能基であることができる。特に、ニトリル、第一アミド、無水物及びエステル官能基が挙げられる。官能基Bは、第一又は第二アミン官能基又はその塩或いは重合媒体中において官能基Bを生じさせることのできる官能基Bの前駆体官能基であることができる。特に、イソシアネート及びカルバメート官能基が挙げられる。
【0014】
例えば、該多官能性化合物(i)がそれぞれ三官能性(f=3)又は四官能性(f=4)である特定の場合には、これは、それぞれ、
f=3については、β=0.625.Ti2+Ti+2、及び
f=4については、β=5.Ti2+2.Ti+2
を与える。
【0015】
選択肢として、βについての値は、
・α=85、
・β=0.46.(f−2)3.Ti2+1.15.(f−2).Ti+2.1、及び
・γ=2.14
であることができる。
【0016】
選択肢として、三官能性(f=3)又は四官能性(f=4)の多官能性化合物について、これは、それぞれ
f=3については、β=0.46.Ti2+1.15.Ti+2.1、及び
f=4については、β=3.68.Ti2+2.3.Ti+2.1
を与えることができる。
【0017】
つまり、本発明によれば、得られた変性ポリアミドは、多官能性化合物(i)の含有量及び随意に多官能性化合物(ii)の含有量を考慮して、絶対値として値Q以上であるべきΔGTを有することが分かる。該値Q以上のΔGTを得るために、当業者は、必要なら、重合化合物に特にジカルボン酸又はジアミン単量体を完全に添加することができる。言うまでもなく、使用する重合方法及びそれによって生じた揮発性単量体の喪失に応じて、当業者であれば、所望のΔGTを得るために、導入された単量体と化合物(i)及び(ii)との特性に関して必要な補正を行うことができるであろう。
【0018】
末端基間の差ΔGTは、特に、化合物(i)及び(ii)の添加によって誘導されたΔGT、二酸又はジアミン型の過剰の単量体の添加によって誘導されたΔGT、及び重合方法における揮発性化合物の喪失によって算出又は測定されたΔGTを加えることによって算出できる。
【0019】
例えば重合の際に、同一の又は異なる性質の、等モル量のジカルボン酸及びジアミンと所定の割合のジカルボン酸又はジアミンとを添加することが完全に可能である。
【0020】
用語「該ポリアミドの構成単量体のモル数」とは、単量体単位のモル数と、該ポリアミドの他の構成物に相当する単位のモル数との総数、すなわち、ジアミン単位のモル数に化合物(i)のモル数及び随意に化合物(ii)のモル数を加えたジカルボン酸のモル数であって、随意にそれにアミノ酸又はラクタムのモル数を加えたものを意味する。化合物のモルパーセントは、該ポリアミドの構成単量体のモル数に対するこの化合物のモル数に相当する。
【0021】
ここで、多官能性化合物(i)及び一官能性化合物(ii)は、同一の性質の官能基A又はBを保持することができる;カルボン酸型若しくはカルボン酸官能基の前駆体、又はアミン型若しくはアミン官能基の前駆体;或いは異なる性質の官能基A及びBを保持することができる。
【0022】
選択肢として、多官能性化合物(i)がA型の官能基を保持するときには、一官能性化合物(ii)は、B型の官能基を保持する;同様に、多官能性化合物(i)がB型の官能基を保持するときには、一官能性化合物(ii)はA型の官能基を保持する。
【0023】
好ましくは、本発明に従うポリアミドは、ジカルボン酸単量体及びジアミン単量体又はそれらの塩、多官能性化合物(i)の1種及び一官能性化合物(ii)の1種の重合によって得られる。
【0024】
しかしながら、特に官能基A又はBを保持する異なる多官能性化合物(i)の混合物、例えば2,2,6,6−テトラキス(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノンとトリメシン酸との混合物で重合を実施することも可能である。
【0025】
この場合には、式Qの総計βを次の態様で変更することが好ましい:
β=2+Σk[0.625(fk-2)3ik2+(fk-2)Tik]
(式中、kは、使用されるそれぞれの多官能性化合物の指数を表し、ここで、化合物kは、官能価fkを有し、モルパーセントTikで添加される。)。
【0026】
好ましくは、式Qの総計βは以下に等しい:
β=2.1+Σk[0.46.(fk−2)3ik2+1.15.(fk−2)Tik]。
【0027】
ジカルボン酸単量体及びジアミン単量体は、特に、次の物質の製造に従来から使用されているものである:
・PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA12.12及びPA4.6型などの脂肪族ポリアミド、
・半芳香族ポリアミド、例えば、ポリ(m−キシリレンジアミンアジペート)(MXD6)、ポリテレフタルアミド、例えばポリアミド6.T及び6.6.6T及びポリイソフタルアミド、例えばポリアミド6.I及び6.6.6I、
・ポリアラミド、
・又はそれらの共重合体。
【0028】
これらのジカルボン酸及び/又はジアミン単量体は、特に直鎖、分岐鎖若しくは環状鎖を有する脂肪族又は芳香族であることができる。
【0029】
特に言及できるジカルボン酸単量体としては、4〜12個の炭素原子を含有する脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、デカン二酸及びドデカン二酸が挙げられる。
【0030】
特に言及できるジアミン単量体としては、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族、随意に脂環式又は芳香族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、ブタンジアミン、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミン及びメチルペンタメチレンジアミンが挙げられる。
【0031】
単量体は、ジカルボン酸及びジアミン単量体の塩の形態で随意に混合できる。
【0032】
本発明によれば、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンであるナイロン66の構成単量体又はそれらの塩、例えば、ナイロン塩又はN塩としても知られているヘキサメチレンジアンモニウムアジペートを使用することが特に好ましい。
【0033】
本発明に従う変性ポリアミドは、様々なタイプの1種以上のジカルボン酸及び1種以上のジアミンを含むことができる。
【0034】
また、アミノ酸又はそれらのラクタム、例えばカプロラクタムをジカルボン酸及びジアミン単量体に添加することもできる。該ポリアミドの構成単量体のモル数に対して1モル%〜15モル%、好ましくは2モル%〜10モル%のアミノ酸又はラクタムを特に反応媒体に添加することができる。
【0035】
本発明に従う多官能性化合物(i)は、少なくとも3個、好ましくは3〜8個、より好ましくは3又は4個の官能基A又はBを有する。
【0036】
多官能性化合物(i)は、概して、1〜100個の炭素原子を含有し、かつ、場合によっては1個以上のヘテロ原子を有する脂肪族、脂環式及び/又は芳香族炭化水素を主成分とする化合物である。ヘテロ原子は、O、S、N又はPであることができる。
【0037】
多官能性化合物(i)は、特に、シクロヘキシル、シクロヘキサノイル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニル、トリフェニル、ピリジン、ビピリジン、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、プリン、キノリン、フェナントレン、ポルフィリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、1,3,5−トリアジン、1,4−ジアジン、2,3,5,6−テトラエチルピペラジン、ピペラジン及び/又はテトラチアフルバレンを含むことができる。
【0038】
カルボン酸官能基を保持する多官能性化合物(i)の例としては、特に、2,2,6,6−テトラキス(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ジアミノプロパン−N,N、N’,N’−四酢酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、フタロシアニン及びナフタロシアニンから誘導された酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,3,5,7−ナフタリンテトラカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び2,4,6−トリアミノカプロン酸−1,3,5−トリアジン(TACT)が挙げられる。
【0039】
官能基A及びカルボン酸型の前駆体官能基を保持する多官能性化合物(i)としては、特に、先に列挙したポリ酸のニトリル、第一アミド、無水物又はエステルが挙げられる。
【0040】
アミン官能基を有する多官能性化合物(i)の例としては、特に、ニトリロトリアルキルアミン、特にニトリロトリエチルアミン、ジアルキレントリアミン、特にジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリアルキレンテトラミン及びテトラアルキレンペンタミン(ここで、アルキレンは好ましくはエチレンである)、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、メラミン、及びポリアルキレンアミン、例えば、ハンストマン社製のJeffamine T(商標)製品、特にJeffamine T403(商標)(ポリオキシプロピレントリアミン)が挙げられる。
【0041】
アミン型の官能基Bを有する多官能性化合物(i)としては、特に、先に列挙したポリアミン化合物のイソシアネート又はカルバメートが挙げられる。
【0042】
使用するのに好適な多官能性化合物の例が米国特許第5346984号、米国特許第5959069号、WO96/35739及び欧州特許第672703号で言及されている。
【0043】
一官能性化合物(ii)は、好ましくは、2〜30個の炭素原子及び場合によってはO、S、N又はPといった1個以上のヘテロ原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素を主成分とする化合物である。
【0044】
一官能性化合物(ii)は、好ましくは、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン及びn−ドデシルアミン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、プロピオン酸及び4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンよりなる群から選択される。
【0045】
カルボン酸型の前駆体官能基を有する一官能性化合物(ii)の例としては、特に、無水酢酸、安息香酸エチル、安息香酸メチル及びヘキサンニトリルが挙げられる。
【0046】
アミン型の前駆体官能基を有する一官能性化合物(ii)の例としては、特に、イソシアン酸オクチル及びそのカルバミン酸メチルが挙げられる。
【0047】
本発明の方法の重合は、これが多官能性化合物及び一官能性化合物の非存在下で実施される場合には、特に、ジカルボン酸とジアミンとの重合のための標準的な操作条件に従って実施される。
【0048】
このような重合方法は、手短に言えば、次の工程を含むことができる:
・単量体と多官能性化合物(i)及び一官能性化合物(ii)との混合物を攪拌しつつ加圧下で加熱し、
・好適な装置を使用して水蒸気を除去しつつ該混合物を加圧及び加温下で所定時間にわたり維持し、次いで、特に水蒸気の自然圧力下、窒素下又は真空下で、該混合物の融点よりも高い温度で所定時間にわたり減圧及び保持を行って、形成された水の除去により重合を続行する。
【0049】
多官能性化合物(i)及び随意に一官能性化合物(ii)は、好ましくは重合の開始時に添加される。この場合には、ジカルボン酸とジアミン単量体と多官能性化合物(i)と一官能性化合物(ii)との混合物の重合が実施される。
【0050】
重合の開始時、重合中又は重合の終了時に、一般的な添加剤、例えば触媒、特に燐含有触媒、消泡剤及び光安定剤又は熱安定剤などのものを添加することも可能である。
【0051】
重合の終了時に、重合体を有利にには水で冷却させ、そして押出し、次いで切断して顆粒を生じさせることができる。
【0052】
本発明に従う重合方法は、連続的に又はバッチ式で完全に実行できる。
【0053】
多官能性化合物(i)のモルパーセントTiは、先に定義した値βが3.6以下、好ましくは3以下、有利には2.8以下であるように選択できる。
【0054】
本発明によれば、変性ポリアミドは、好ましくは、基準法ISO 307(90%の蟻酸中に溶解された0.5%重合体、25℃の温度)に従う、80〜120、特に85〜115、より好ましくは85〜105の溶液粘度指数を有する。
【0055】
本発明の主題は、先に定義したようなポリアミドを少なくとも含む組成物でもある。
【0056】
好ましくは、本発明のポリアミドは、特に成形物品を得るために、この組成物中のマトリックスとして使用される。
【0057】
この組成物の機械的性質を改善させるためには、それに、好ましくはガラス繊維などの繊維質充填剤、クレー、カオリン又は補強用ナノ粒子又は熱硬化性材料から作られたナノ粒子などの無機充填剤、及びタルクなどの粉末状充填剤よりなる群から選択される少なくとも1種の補強充填剤及び/又は増量剤を添加することが有利な場合がある。補強充填剤及び/又は増量剤の導入レベルは、複合材料の分野における基準法に従う。これは、例えば、1〜80%、好ましくは10〜70%、特に30%〜60%の充填剤含有量であることができる。
【0058】
該組成物は、本発明の変性ポリアミドの他に、1種以上の他の重合体、好ましくはポリアミド又はコポリアミドを含むことができる。
【0059】
また、本発明に従う組成物は、成形目的のポリアミド組成物の製造のために一般的に使用される添加剤を含むこともできる。例えば、滑剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、触媒、弾力改良剤、例えばグラフトしていてよいエラストマー、光及び/又は熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤、成形添加剤その他の従来の添加剤が挙げられる。
【0060】
これらの充填剤及び添加剤を、充填剤又は添加剤に適合した通常の手段によって、例えば重合中に又はコールドブレンド若しくは溶融ブレンドによって、変性ポリアミドに添加することができる。
【0061】
また、本発明に従うポリアミドは、別の熱可塑性組成物と混合されることを目的としたマスターバッチ型の添加剤を高い割合で含む組成物においてマトリックスとして使用することもできる。
【0062】
また、本発明に従うポリアミドは、特に所定の特性、とりわけ流動学的特性を、熱可塑性重合体、特に(コ)ポリアミドをマトリックスとして含む組成物に付与するための添加剤又は混合物として使用することもできる。次いで、本発明に従うポリアミドは、一般に、熱可塑性重合体と溶融状態で混合される。特に、(コ)ポリアミド及び本発明に従うポリアミドの全割合に対して、10重量%〜90重量%の割合の(コ)ポリアミド、例えば直鎖状(コ)ポリアミド、特に30〜80重量%の割合を使用することが可能である。
【0063】
本発明に従うポリアミド又は組成物は、プラスチック処理の分野では、例えば射出成形、射出/ブロー成形、押出又は押出/ブロー成形によって得られる物品を製造するための原料として使用できる。
【0064】
共通の実施形態によれば、変性ポリアミドを、例えば二軸押出装置で棒の状態で押し出し、次いで、これらの棒を切断して顆粒にする。次いで、上で製造された顆粒を溶融し、そして溶融した組成物を射出−成形装置に供給することによって成形物品を作る。
【0065】
本発明の原理の理解を容易にするために本明細書において特定の用語を使用している。しかしながら、これら特定の用語の使用により本発明の範囲は限定されることはないことを理解すべきである。用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」という意味だけでなく、この用語に連結される要素の任意の好適な組合せも包含する。
【0066】
本発明の他の詳細又は利点は、単なる例示として与えられる以下の実施例を考慮すればさらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0067】
実験の部
例1:ポリアミドの製造
重合を、撹拌手段及び揮発性副生成物を排気するための手段を備える加熱型オートクレーブで実施する。
92560gのN塩(等モル量のアジピン酸及びヘキサメチレンジアミン)、607.9gのビスヘキサメチレントリアミン(0.4モル%)、344.3gの安息香酸(0.4モル%)、1504.6gのアジピン酸(1.46モル%)及び6.4gの消泡剤を、84230gの脱イオン水と共に100℃の温度のオートクレーブ中に置く。
この撹拌混合物を、70重量%のN塩濃度が達成されるまで大気圧で沸騰させる。次いで、排水を停止し、次いで温度及び圧力をそれぞれ215℃及び17.5バール絶対値にまで上昇させる。この混合物をこの圧力で1時間保持する。この工程の間に、水を蒸発させ、そして温度を250℃に到達するように上昇させる。次いで、圧力を1bar絶対値にまで徐々に低下させ、続いて、この混合物を30分間撹拌しつつ、1bar絶対値で温度を275℃に維持する。
続いて、溶融重合体を棒の状態で押出し、次いで水で迅速に冷却し、そして切断して顆粒にする。
多官能性化合物、一官能性化合物及び二官能性化合物の割合を変化させることにより、この態様で様々な重合体を合成する(表1)。
例C1は、多官能性化合物、一官能性化合物及び二官能性化合物の非存在下に産業規模で製造された直鎖状ナイロン66に相当する。
【0068】
例2:ポリアミドの製造
重合を、撹拌手段及び揮発性副生成物を排気するための手段を備える加熱型オートクレーブで実施する。
150gのN塩(等モル量のアジピン酸及びヘキサメチレンジアミン)、1.231gのビスヘキサメチレントリアミン(0.5モル%)、1.116gの安息香酸(0.8モル%)、1.337gのアジピン酸(0.8モル%)及び0.01gの消泡剤を138.5gの脱イオン水と共に70℃の温度のオートクレーブ内に置く。
この撹拌混合物を、70重量%のN塩濃度が達成されるまで大気圧で沸騰させる。次いで、排水を停止し、次いで、温度及び圧力を、それぞれ225℃及び17.5bar絶対値に到達するように上昇させる。この混合物をこの圧力で40分間保持する。この工程の間に、水を蒸発させ、そして温度を250℃に到達するように上昇させる。次いで、圧力を1bar絶対値にまで徐々に低下させ、続いて、この混合物を30分間撹拌しつつ、1bar絶対値で温度を275℃に維持する。
続いて、この溶融重合体を棒の状態で押出、続いて水中で急速に冷却し、切断して顆粒にする。
多官能性化合物、一官能性化合物及び二官能性化合物の割合を変化させることにより、この態様で様々な重合体を合成する(表2、重合体3〜6)。
例C2は、ΔGT>Qの条件を満たさない多官能性化合物及び一官能性化合物の割合から製造された重合体に相当する。これは、標準的な直鎖状ポリアミドと同等のフローインデックスを有する重合体を生じさせる。
【0069】
例3:ポリアミドの製造
重合を、撹拌手段及び揮発性副生成物を排気するための手段を備える加熱型オートクレーブで実施する。
150gのN塩(等モル量のアジピン酸及びヘキサメチレンジアミン)、0.986gのビスヘキサメチレントリアミン(0.4モル%)、0.559gの安息香酸(0.4モル%)、1.059gのヘキサメチレンジアミン(0.8モル%)及び0.01gの消泡剤を138.5gの脱イオン水と共に70℃の温度のオートクレーブ内に置く。
この撹拌混合物を、70重量%のN塩濃度が達成されるまで大気圧で沸騰させる。次いで、排水を停止し、次いで、温度及び圧力を、それぞれ225℃及び17.5bar絶対値に到達するように上昇させる。この混合物をこの圧力で40分間保持する。この工程の間に、水を蒸発させ、そして温度を250℃に到達するように上昇させる。次いで、圧力を1bar絶対値にまで徐々に低下させ、続いて、この混合物を30分間撹拌しつつ、1bar絶対値で温度を275℃に維持する。
次いで、溶融重合体を棒の状態で押出し、続いて水中で急速に冷却し、そして切断して顆粒にする(表2、重合体7)。
【0070】
例4:ポリアミドの特性
これらの重合体の流動学的特性及び機械的性質並びに特徴を以下の表1及び2にまとめている。所定の特性を測定するために、射出成形によって作製された試験片を製造する。
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
酸末端基及びアミン末端基の含有量は電位差計で検定し、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、基準法ISO 179−1/1eAに従い23℃の温度で測定し、伸び率及び引張係数は、基準法ISO 527に従い23℃の温度で測定する。
【0073】
例5:充填組成物
ポリアミドマトリックスとして、先に製造されたポリアミドを含む組成物に50重量%のガラス繊維及び1.5重量%未満の他の添加剤(EBSワックス及びFerroplast社が54/1033という商品名で販売するニグロシン)を、Werner & Pfleiderer ZSK 40二軸押出器内で脱気しながら溶融ブレンドすることによって充填する(L/D=36)。ガラス線維はVetrotex 995である。押出パラメーターは次のとおりである:上昇プロファイル250〜280℃の押出温度;軸回転速度:250rpm;組成物の流量40kg/時間;電動機トルク及び吸収原動力はポリアミドに応じて変化する。
充填組成物の特性を以下の表3にまとめる。これらの特性のうちのいくつかを測定するために、射出成形によって作製された試験片を製造する。
【0074】
【表3】

【0075】
ノッチなしシャルピー衝撃強さは、基準法ISO 179−1/1eUに従って23℃の温度で測定し、張力、伸び率及び引張係数は、基準法ISO527に従って23℃の温度で測定する。
【0076】
表面形態は、100×60×3mmの寸法のプレート(その表面の少なくとも一つは滑らかである)について視覚的に評価する。表面に繊維があることが視覚的に明らかであると共に、表面が白色化している場合には、不良と見なされる。表面が滑らかで、かつ、均質に黒色の場合には、良好と見なされる。
【0077】
スパイラル試験は、顆粒を溶融させ、そしてそれらを、BM−Biraghi 85Tプレス内にある半円断面の2mmの厚さ及び4cmの直径のらせん形状の型に、280℃の鞘温度、80℃の型温度及び80barの射出圧力で射出することによって、上記組成物のフローインデックスを定量することを可能にする(結果は、組成物が正確に充填された型の長さとして表される)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも:
・AA型のジカルボン酸単量体及びBB型のジアミン単量体又はそれらの塩;
・少なくとも3個の官能基A又は少なくとも3個の官能基Bを有する多官能性化合物(i);
・随意に、官能基A又は官能基Bを有する一官能性化合物(ii)
の存在下での重合により得られたポリアミドであって、
該官能基A及び官能基Bは、互いに反応してアミド結合を形成することのできる官能基であり;
該ポリアミドは、
・該ポリアミドの構成単量体のモル数に対して、該多官能性化合物(i)に相当する単位を0.02モル%〜0.6モル%、
・随意に、ポリアミドの構成単量体のモル数に対して、該一官能性化合物(ii)に相当する単位を0〜2モル%
含み、
得られた該ポリアミドは、その末端基間の絶対値ΔGTの差が値Q(限界ΔGT)以上であり;
この値Qは、
Q=α.[(β−Tii2−γ]0.5(角括弧(β−Tii2−γの総計が正の場合);又は
Q=0(角括弧(β−Tii2−γの総計が負又ゼロの場合)
によって定義され、ここで、
・α=72
・β=0.625.(f−2)3.Ti2+(f−2).Ti+2
・γ=2.6
・Tiは、多官能性化合物(i)のモルパーセントに相当し
・Tiiは、多官能性化合物(ii)のモルパーセントに相当し
・fは、多官能性化合物(i)の官能価、つまり多官能性化合物(i)が保持する官能基A又は官能基Bの数に相当し;
・ΔGT及びQの量は、meq/kgで表される、
前記ポリアミド。
【請求項2】
前記多官能性化合物(i)がA型の官能基を有するときには、前記一官能性化合物(ii)はB型の官能基を有し;同様に、前記多官能性化合物(i)がB型の官能基を有するときには、前記一官能性化合物(ii)はA型の官能基を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
前記ジカルボン酸単量体がアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、デカン二酸又はドデカン二酸といった4〜12個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
前記ジアミン単量体が、ヘキサメチレンジアミン、ブタンジアミン、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミン及びメチルペンタメチレンジアミンといった4〜12個の炭素原子を有する脂肪族化合物、随意に脂環式化合物、又は芳香族化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
使用するポリアミド単量体がアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン又はヘキサメチレンジアンモニウムアジペートであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項6】
前記ポリアミドがアミノ酸又はラクタムも添加することによって得られた、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項7】
前記多官能性化合物(i)が、1〜100個の炭素原子を含み、場合によっては1個以上のヘテロ原子を有する脂肪族、脂環式及び/又は芳香族炭化水素を主成分とする化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項8】
前記多官能性化合物(i)が2,2,6,6−テトラキス(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ジアミノプロパン−N,N、N’,N’−四酢酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、フタロシアニン及びナフタロシアニンから誘導された酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,3,5,7−ナフタリンテトラカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び2,4,6−トリアミノカプロン酸−1,3,5−トリアジン(TACT)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項9】
前記多官能性化合物(i)がニトリロトリアルキルアミン、特にニトリロトリエチルアミン、ジアルキレントリアミン、特にジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリアルキレンテトラミン及びテトラアルキレンペンタミン(ここで、アルキレンは好ましくはエチレンである)、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、メラミン、及びポリアルキレンアミンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項10】
前記一官能性化合物(ii)が2〜30個の炭素原子及び場合によっては1個以上のヘテロ原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素を主成分とする化合物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項11】
前記一官能性化合物(ii)がn−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン及びn−ドデシルアミン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、プロピオン酸及び4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項12】
導入された前記多官能性化合物(i)のモルパーセントTiは、βの値が3.6以下、特に2.8以下となることを可能にする、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項13】
基準法ISO307に従って90%蟻酸に溶解した0.5%の重合体により25℃の温度で80〜120の溶液粘度指数を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項14】
少なくともジカルボン酸及びジアミン単量体又はそれらの塩と、多官能性化合物(i)及び一官能性化合物(ii)とを含む混合物を重合させる、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミドの重合方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の少なくとも1種のポリアミドと、随意に補強充填剤及び/又は増量剤、1種以上の他の重合体及び/又は一般的な添加剤とを含む、ポリアミド組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミドを補強充填剤及び/又は増量剤、1種以上の他の重合体及び/又は一般的な添加剤とコールドブレンド又は溶融ブレンドする、請求項15に記載の組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド又は請求項15に記載の組成物の、特に射出成形、射出/ブロー成形、押出又は押出/ブロー成形によって物品を製造するための使用。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の少なくとも1種のポリアミド又は請求項15に記載の組成物を含む成形物品又は押出物品。

【公表番号】特表2011−504941(P2011−504941A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526318(P2010−526318)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063002
【国際公開番号】WO2009/040436
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】