説明

フローティング型コネクタ

【課題】可動側ハウジングの過度な移動を規制することでコンタクトの塑性変形を防止できるフローティング型コネクタを提供する。
【解決手段】レセプタクルコネクタ1は、固定側ハウジング10と、可動側ハウジング20と、固定側ハウジング10と可動側ハウジング20とに跨って取り付けられるコンタクト30とを有し、コンタクト30が弾性変形することにより固定側ハウジング10に対して可動側ハウジング20が移動可能であり、固定側ハウジング10に取り付けられて、固定側ハウジング10に対する可動側ハウジング20の所定移動量を越える移動を規制する移動規制金具40を備え、移動規制金具40が、固定側ハウジング10に形成されたスリット状の圧入溝18a内に圧入されて係止される圧入部44と、可動側ハウジング20に対し上下に対向して位置し、可動側ハウジング20が上下に所定移動量を越えて移動することを規制する移動規制部45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に固定された固定側ハウジングと相手方コネクタと嵌合する可動側ハウジングとを有し、可動側ハウジングが固定側ハウジングに対して移動自在な構成とすることにより、相手方コネクタとの嵌合時にコネクタが装着された基板同士に位置ずれがあった場合でも、これを吸収してコネクタ同士を確実に嵌合させることができるように構成されたフローティング型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるフローティング型と称されるコネクタは、例えば基板に固定された固定側ハウジングと相手方コネクタと嵌合する嵌合部を備えた可動側ハウジングとを有し、コンタクトが固定側ハウジングと可動側ハウジングとの双方に跨って保持されて構成される。可動側ハウジングは、コンタクトの弾性力により固定側ハウジングに対して移動自在であるため、相手方コネクタとの嵌合時に、フローティング型コネクタが装着された基板と相手方コネクタが装着された基板との間に位置ずれがある場合でも、可動側ハウジングが移動されることでこの位置ずれが吸収され、相手方コネクタと容易に嵌合させることができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−265742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すようなフローティング型コネクタにおいて、可動側ハウジングに対して例えば相手方コネクタとの嵌合方向に極端に大きな外力が作用した場合、コンタクトが弾性変形可能な範囲内を越えて可動側ハウジングが移動されることがある。そうすると、コンタクトが塑性変形して、相手方コネクタが嵌合されていない状態での固定側ハウジングに対する可動側ハウジングの位置が変化するという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、可動側ハウジングの過度な移動を規制することでコンタクトの塑性変形を防止できるフローティング型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るフローティング型コネクタ(例えば、実施形態におけるレセプタクルコネクタ1)は、相手方コネクタと嵌合する嵌合部(例えば、実施形態における受容凹部26)が形成されるとともに電気絶縁性を有する可動側ハウジングと、前記可動側ハウジングを移動可能に受容するとともに電気絶縁性を有する固定側ハウジングと、前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとに跨って取り付けられる複数のコンタクトとを有して構成されるフローティング型コネクタであって、前記コンタクトはそれぞれ、一端側において前記固定側ハウジングに固定されて前記固定側ハウジングの外部に露出するリード部と、他端側において前記可動側ハウジングに固定されるとともに前記嵌合部に位置して前記相手方コネクタのコンタクトと当接可能な接触部と、前記リード部と前記接触部とを繋ぐとともに弾性変形可能に形成された中間部(例えば、実施形態における内側当接部33、折曲部34、外側当接部35)とを備え、前記コンタクトが前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとに跨って取り付けられた状態で前記中間部が弾性変形することにより、前記固定側ハウジングに対して前記可動側ハウジングが移動可能であり、前記固定側ハウジングに取り付けられて、前記固定側ハウジングに対する前記可動側ハウジングの所定移動量を越える移動を規制する移動規制部材(例えば、実施形態における移動規制金具40)を備えており、前記移動規制部材が、前記固定側ハウジングに形成されたスリット状の圧入空間(例えば、実施形態における圧入溝18a)内に圧入されて係止される圧入部と、前記圧入部に繋がって設けられて、前記圧入部が前記圧入空間に圧入係止されて前記固定側ハウジングに取り付けられた状態で、前記可動側ハウジングに対し前記相手方コネクタとの嵌合方向に対向して位置し、前記可動側ハウジングが前記嵌合方向に前記所定移動量を越えて移動することを規制する移動規制部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上述のフローティング型コネクタにおいて、前記移動規制部材が、前記圧入部に繋がり前記圧入部の側方に対となって設けられて、基板に固定される一対の脚部を備えたことが好ましい。
【0008】
また、前記一対の脚部が前記圧入部と略平行に形成され、前記固定側ハウジングにおける前記嵌合方向に延びて形成されたガイド溝に嵌合することにより、前記圧入部が前記圧入空間に圧入されるときのガイドとしての役割を果たすように構成されたことが好ましい。
【0009】
上述のフローティング型コネクタにおいて、前記可動側ハウジングにおける前記移動規制部に対向する部分に、前記移動規制部を収容可能な収容凹部が形成されており、前記移動規制部が前記収容凹部内に位置して前記収容凹部の側面に当接することで、前記嵌合方向に直交する面内においても前記可動側ハウジングの移動が規制されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフローティング型コネクタは、固定側ハウジングに取付けられた移動規制部材が、スリット状の圧入空間内に係止される圧入部と、可動側ハウジングに対し相手方コネクタとの嵌合方向に対向して位置し、可動側ハウジングが嵌合方向に所定移動量を越えて移動することを規制する移動規制部とを備えて構成される。この構成により、例えば可動側ハウジングと移動規制部との対向間隔が、コンタクトが弾性変形可能な最大の変形量よりも小さくなるように構成することで、可動側ハウジングと移動規制部とを当接させて可動側ハウジングの嵌合方向への過度な移動を規制して、コンタクトの塑性変形を防止可能になる。
【0011】
上述のフローティング型コネクタにおいて、移動規制部材が、圧入部の側方に対となって設けられて基板に固定される一対の脚部を備えたことが好ましい。このように構成した場合には、移動規制部材は、圧入部による固定側ハウジングに対する係止に加えて脚部により基板に強固に固定されるので、可動側ハウジングに大きな外力が作用して移動される場合であっても、この外力に抗して可動側ハウジングの過度な移動を確実に規制できる。
【0012】
また、一対の脚部が、固定側ハウジングに形成されたガイド溝に嵌合することにより、圧入部が圧入空間に圧入されるときのガイドとしての役割を果たすように構成されたことが好ましい。この構成の場合には、一対の脚部のガイド機能により、圧入空間に対して圧入部を嵌合方向にまっすぐ圧入することができ、圧入空間に圧入部を確実に係止させて移動規制部材を固定側ハウジングに強固に取り付けることができる。
【0013】
上述のフローティング型コネクタにおいて、可動側ハウジングにおける移動規制部に対向する部分に、移動規制部を収容可能な収容凹部が形成された構成が好ましい。この構成の場合には、移動規制部が収容凹部内に位置して移動規制部の側面と収容凹部の側面とが当接することで、嵌合方向に直交する面内においても可動側ハウジングの移動を規制可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した一例としてのレセプタクルコネクタ(移動規制金具が取り付けられる前の状態)を示す斜視図である。
【図2】上記レセプタクルコネクタ(移動規制金具が取り付けられた状態)を示す斜視図である。
【図3】図2中に示すIII−III部分の断面図である。
【図4】上記レセプタクルコネクタを構成する固定側ハウジングを示す図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図5】固定側ハウジングを示す断面図であって、(a)は図4(b)中に示すV(a)−V(a)部分を、(b)は図4(b)中に示すV(b)−V(b)部分をそれぞれ示す。
【図6】上記レセプタクルコネクタを構成する可動側ハウジングを示す図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図7】可動側ハウジングを示す断面図であって、(a)は図6(a)中に示すVII(a)−VII(a)部分を、(b)は図6(a)中に示すVII(b)−VII(b)部分をそれぞれ示す。
【図8】上記レセプタクルコネクタを構成するコンタクトを示す図であって、(a)は正面図を、(b)は側面図を、(c)は背面図をそれぞれ示す。
【図9】別の実施形態に係る可動側ハウジングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、本発明を適用したフローティング型コネクタの一例としてのレセプタクルコネクタ1の構成について、図1〜図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態では説明の便宜上、各図中に付記する矢印方向で前後、左右および上下方向を定義して説明を行う。
【0016】
レセプタクルコネクタ1は、図1に示すように、下面側において基板(図示せず)に固定される固定側ハウジング10と、この固定側ハウジング10に移動可能に取り付けられた可動側ハウジング20と、これら固定側ハウジング10および可動側ハウジング20の双方に跨って保持された複数のコンタクト30と、固定側ハウジング10を基板に固定する役割と、後述するように可動側ハウジング20の過度な移動を規制する役割とを有した一対の移動規制金具40とを有して構成される。なお、このレセプタクルコネクタ1を構成する可動側ハウジング20に、図示しない相手方コネクタとしてのプラグコネクタが上方から嵌合可能となっている。また、この移動規制金具40が、特許請求の範囲の移動規制部材に対応している。
【0017】
固定側ハウジング10は、図4(a)および図4(b)に示すように、前後方向に延びた略矩形形状を有しており、電気絶縁性を有する樹脂等を用いて成形される。固定側ハウジング10は、前後方向に延びる左右壁11,11と、この左右壁11,11の前後端において左右壁11,11よりも上方向に高く形成されて左右方向に延びる前後壁12,12と、左右壁11,11および前後壁12,12の下端部に繋がる平板状の底部13とを有し、全体として略箱状に形成される。固定側ハウジング10には、これら左右壁11,11、前後壁12,12および底部13によって囲まれて上方に向けて開放された可動側ハウジング収容空間14が形成されている。
【0018】
左右壁11,11の左右外面には、上下に延びて形成されてコンタクト30を保持するコンタクト保持溝11a(図5(a)参照)が、前後に複数並んで設けられている。前後壁12,12の前後外面には、平板状の金具保持部18、および前後壁12と金具保持部18とを繋ぐ一対の接続部19,19が形成されている。前後壁12と金具保持部18とにより形成される前後方向の隙間のうちで、一対の接続部19,19の間に形成された領域が圧入溝18a、接続部19の左右外側に形成された領域がガイド溝18bとなっており、それぞれ上下に延びて形成されている(図5(b)参照)。
【0019】
また、底部13の下面側には、基板に対する位置決め用としての位置決め突起15が、下方に突出して形成されている。なお、固定側ハウジング10は、上記底部13を備えた構成に代えて、底部13を備えず可動側ハウジング収容空間14が上下に貫通した構成でも良い。
【0020】
可動側ハウジング20は、図6(a)および図6(b)に示すように、前後方向に延びる略矩形形状を有しており、電気絶縁性を有した樹脂等を用いて成形される。可動側ハウジング20は、矩形枠状に形成された基部21と、この基部21の枠内縁部から下方に突出して前後方向に延びる下面視矩形状の中央突出部22と、基部21の左右端部から下方に突出して前後方向に延びる外側規制壁25とを有して構成される。基部21の前後端部上面には、左右に延びる段差部21aが形成されている。
【0021】
中央突出部22は、基部21の枠内縁部から下方に突出するとともに前後および左右に延びる内側規制壁22aと、この内側規制壁22aの下端部と繋がる平板状の中央底部23とから構成される。中央突出部22の上面側には、内側規制壁22aの左右内面と中央底部23の上面とによって囲まれて上方に向けて開口された受容凹部26が、前後に延びて形成されている。また、中央底部23の上面には板状の嵌合突起24が上方に突出して前後に延びて形成され、この嵌合突起24が受容凹部26内に位置している。
【0022】
また、中央突出部22の左右外側にはそれぞれ、基部21の下面と、内側規制壁22aの左右外側面と、外側規制壁25の左右内側面とによって囲まれて、下方に向けて開放されたコンタクト収容空間27が形成されている(図7(a)参照)。嵌合突起24の左右側面には、図7(b)に示すように、上下に貫通する複数のコンタクト収容溝24aが前後に並んで形成されている。
【0023】
コンタクト30は、例えば弾性変形可能な導電性金属板を針金状に打ち抜き加工した後、図8(a)〜図8(c)に示すような所定の形状に折曲されて形成される。このコンタクト30は、上下に延びる接触部31と、接触部31の下端部を左右方向にほぼ直角に折曲させた内側基部32と、内側基部32の端部を斜め上方に折曲させた内側当接部33と、内側当接部33の上端部を逆U字状に曲げて弾性変形可能な折曲部34と、折曲部34と繋がり下方に延びる外側当接部35と、外側当接部35の下端部を左右方向に折曲させた外側基部36と、外側基部36の端部を下方にほぼ直角に折曲させた固定側被保持部37と、固定側被保持部37の下端部を左右方向にほぼ直角に折曲させたリード部38とを有して構成される。接触部31には、部分的に前後幅が広がった可動側係止部31aが形成され、また、固定側被保持部37には、部分的に前後幅が広がった固定側係止部37aが形成されている。
【0024】
移動規制金具40は、図1に示すように、例えばプレス金型を用いて平板状の金属板を打ち抜きおよび折り曲げ加工することにより、全体として略平板状に形成される。移動規制金具40は、平板状の連結部41と、この連結部41の左右端部から下方に延びる左右一対の脚部42,42と、脚部42の下端部から左右外側に突出するマウント部43と、連結部41の左右中央部分から下方に延びる圧入部44と、連結部41の上端部が前後内側にほぼ直角に折曲された平面視略矩形の移動規制部45とを備えて構成される。圧入部44の左右側面には、左右方向に突出する複数の係止突起44aが形成されている。
【0025】
このように、移動規制金具40は、移動規制部45が折り曲げ加工により形成されるのを除いて、他の部分は全て打ち抜き加工により形成できるので、折り曲げ加工工程を減らした安価なプレス金型により製造できるので、移動規制金具40の製造コストを大きく低減可能である。また、移動規制金具40は、移動規制部45を除く部分が同一平面上に形成されて、全体としてほぼ平板状となっているので、例えば前後方向に突出する部分が多数形成されたものと比較して保管や搬送等の取り扱いが容易である。
【0026】
以上ここまでは、レセプタクルコネクタ1の構成について説明した。次に、レセプタクルコネクタ1の組立構成について説明する。
【0027】
まず、可動側ハウジング20にコンタクト30を取り付ける。このとき、可動側ハウジング20のコンタクト収容溝24aに対して、下側からコンタクト30の接触部31を挿入し、可動側係止部31aをコンタクト収容溝24aに係止させることで、可動側ハウジング20にコンタクト30が取り付けられる。そうすると、可動側ハウジング20における嵌合突起24の左右側面に接触部31が露出するとともに、コンタクト30の内側当接部33、折曲部34および外側当接部35がコンタクト収容空間27内に収容された状態になる(図3参照)。
【0028】
次に、コンタクト30が取り付けられた可動側ハウジング20を、固定側ハウジング10に取り付ける。このとき、固定側ハウジング10のコンタクト保持溝11aに、上方からコンタクト30の固定側被保持部37を挿入し、固定側係止部37aをコンタクト保持溝11aに係止させることで、コンタクト30を介して可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に取り付けられる(図3参照)。そうすることで、コンタクト収容空間27内において内側当接部33、折曲部34および外側当接部35が弾性変形することで、固定側ハウジング10に対して可動側ハウジング20が前後、左右および上下に移動自在となる。
【0029】
続いて、固定側ハウジング10に移動規制金具40を取り付ける。このとき、一対の脚部42をそれぞれガイド溝18bに嵌合させて上下に挿入することで、この脚部42と平行に延びる圧入部44を圧入溝18aに上下に圧入させる。ここで、一対の脚部42が、圧入溝18aに圧入部44が圧入されるときのガイドとしての機能を果たすので、圧入溝18aに対する圧入部44の位置精度が確保されるとともに、圧入溝18aに沿って圧入部44をまっすぐ上下に挿入することができる。
【0030】
そうすることで、圧入部44に形成された係止突起44aが圧入溝18aに係止されて、移動規制金具40が固定側ハウジング10に強固に固定されるとともに、可動側ハウジング20の段差部21aと移動規制金具40の移動規制部45とが所定間隔をおいて上下に対向した状態となる。このように、レセプタクルコネクタ1は、スリット状の圧入溝18aおよびガイド溝18bに、移動規制金具40の平板状部分を挿入して取り付ける構成となっているので、移動規制金具40を備えた構成でありながら前後方向へ小型化されている。
【0031】
続いて、基板に形成された位置決め孔(図示せず)に、固定側ハウジング10に形成された位置決め突起15を挿入することで、レセプタクルコネクタ1が基板に位置決めされて載置される。そして、例えばリフロー炉内で加熱することにより、移動規制金具40のマウント部43と基板上のマウントパターン(図示せず)、コンタクト30のリード部38と基板上の配線パターン(図示せず)とがそれぞれ半田付けされて結合される。このように、コンタクト30のリード部38と基板上の配線パターンとの結合に加えて、移動規制金具40のマウント部43と基板のマウントパターンとの結合により、基板に対してレセプタクルコネクタ1(固定側ハウジング10)が一層強固に固定される。
【0032】
このようにして基板に固定されたレセプタクルコネクタ1は、上述したようにコンタクト30の一部が弾性変形することにより、固定側ハウジング10に対して可動側ハウジング20が前後、左右および上下に移動自在となっている。そのため、例えばレセプタクルコネクタ1が固定された基板と、相手方コネクタが固定された基板との間に位置ずれがある状態で、受容凹部26に相手方コネクタが嵌合される場合であっても、この位置ずれを吸収する方向に可動側ハウジング20が移動されるので、レセプタクルコネクタ1と相手方コネクタとを確実に嵌合させることができる。これにより、コンタクト30の接触部31と相手方コネクタのコンタクトとを弾性的に接触させて、電気接続状態を安定して維持することが可能になる。
【0033】
以上ここまでは、レセプタクルコネクタ1の組立構成について説明した。次に、レセプタクルコネクタ1において、固定側ハウジング10に対する可動側ハウジング20の所定移動量内での移動を許容しつつ、この所定移動量を越える移動を規制する構成について説明する。なお、上記の所定移動量とは、コンタクト30が弾性変形可能な最大の変形量であり、このことは特許請求の範囲についても同様である。
【0034】
例えば、可動側ハウジング20に嵌合された相手方コネクタを可動側ハウジング20から抜去する際に、相手方コネクタがこじるようにして左右に操作される場合がある。このような場合、図3において、外側当接部35と外側基部36との接続部分を起点として内側当接部33、折曲部34および外側当接部35が、内側規制壁22aまたは外側規制壁25に近づくように弾性変形される。内側規制壁22aに近づくように弾性変形された場合には、内側当接部33が内側規制壁22aに当接し、一方、外側規制壁25に近づくように弾性変形された場合には、外側当接部35が外側規制壁25に当接することで、コンタクト30が塑性変形するような過度な可動側ハウジング20の移動を規制できる構成となっている。
【0035】
上述の左右への操作に加えて上下(嵌合方向)に相手方コネクタが操作されると、相手方コネクタと一緒に可動側ハウジング20が上方に引っ張られる場合がある。このような場合には、図2において、可動側ハウジング20の段差部21aに移動規制金具40の移動規制部45が当接することで、可動側ハウジング20がそれ以上上方に移動されることが規制され、コンタクト30が塑性変形するような過度な可動側ハウジング20の移動を規制できる構成となっている。また、移動規制金具40は、係止突起44aが圧入溝18aに係止されるとともに、マウント部43が基板上のマウントパターンに半田付けされて固定されているので、大きな力で可動側ハウジングが上方に引っ張られて移動規制部45に対して上方に大きな外力が作用する場合であっても、移動規制金具40が固定側ハウジング10から外れることがなく、可動側ハウジング20の過度な移動を確実に規制できるようになっている。
【0036】
また、本発明に係るレセプタクルコネクタ1においては、固定側ハウジング10を基板に強固に固定するための移動規制金具40を利用して、可動側ハウジング20の過度な移動を規制する構成となっているので、例えば可動側ハウジング20の過度な移動を規制するために別途新たな部品を設ける構成と比較して、部品点数を減らして製造コストの低減を図ることが可能である。また、上記の新たな部品を設ける必要がないので、その分だけレセプタクルコネクタ1をコンパクトに構成可能である。
【0037】
上述の実施形態においては、可動側ハウジング20の段差部21aと移動規制金具40の移動規制部45とを上下に対向させておいて、移動規制部45により可動側ハウジング20が上下に所定移動量を越えて移動されることを規制する構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、図9に示すように、可動側ハウジング120の上面に移動規制部45を収容可能な平面視略矩形の収容凹部121を形成し、上下に所定間隔をおいて収容凹部121に移動規制部45を収容させた構成も可能である。
【0038】
この図9に示す構成によれば、移動規制部45の下面と収容凹部121内の上面122とが上下に当接することで可動側ハウジング120の上方への過度な移動が規制されることに加えて、移動規制部45の前後側面と収容凹部121の前後側面123とが前後に当接することで可動側ハウジング120の前後への過度な移動も規制でき、また、移動規制部45の左右側面と収容凹部121の左右側面124とが左右に当接することで可動側ハウジング120の左右への過度な移動も規制できる。
【0039】
上述の実施形態において説明したレセプタクルコネクタ1は、本発明を適用した一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば移動規制金具40について、可動側ハウジング20の過度な移動を規制することを主眼においたシンプルな構成とする場合には、脚部42およびマウント部43を省いて、連結部41、圧入部44および移動規制部45からなる構成としても良い。このように構成した場合、移動規制金具は、圧入部44が圧入溝18aに圧入されて保持され、移動規制部45が可動側ハウジング20の上面に対向するように固定側ハウジング10に取り付けられる。可動側ハウジング20が過度に上方に移動されて移動規制部45に当接するときには、圧入溝18aにおける圧入部44を保持する保持力によって可動側ハウジング20がそれ以上上方に移動することが規制され、コンタクト30の塑性変形を防止できる。また、脚部42とマウント部43との接続部分を円弧形状または面取り形状にすることで、脚部42をガイド溝18bに上下に挿入するときに、この接続部分が接続部19に引っ掛かることがないのでスムーズに挿入できる。
【符号の説明】
【0040】
1 レセプタクルコネクタ(フローティング型コネクタ)
10 固定側ハウジング
18a 圧入溝(圧入空間)
18b ガイド溝
20 可動側ハウジング
26 受容凹部(嵌合部)
30 コンタクト
31 接触部
33 内側当接部(中間部)
34 折曲部(中間部)
35 外側当接部(中間部)
38 リード部
40 移動規制金具(移動規制部材)
42 脚部
44 圧入部
45 移動規制部
121 収容凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コネクタと嵌合する嵌合部が形成されるとともに電気絶縁性を有する可動側ハウジングと、
前記可動側ハウジングを移動可能に受容するとともに電気絶縁性を有する固定側ハウジングと、
前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとに跨って取り付けられる複数のコンタクトとを有して構成されるフローティング型コネクタであって、
前記コンタクトはそれぞれ、一端側において前記固定側ハウジングに固定されて前記固定側ハウジングの外部に露出するリード部と、他端側において前記可動側ハウジングに固定されるとともに前記嵌合部に位置して前記相手方コネクタのコンタクトと当接可能な接触部と、前記リード部と前記接触部とを繋ぐとともに弾性変形可能に形成された中間部とを備え、
前記コンタクトが前記固定側ハウジングと前記可動側ハウジングとに跨って取り付けられた状態で前記中間部が弾性変形することにより、前記固定側ハウジングに対して前記可動側ハウジングが移動可能であり、
前記固定側ハウジングに取り付けられて、前記固定側ハウジングに対する前記可動側ハウジングの所定移動量を越える移動を規制する移動規制部材を備えており、
前記移動規制部材が、
前記固定側ハウジングに形成されたスリット状の圧入空間内に圧入されて係止される圧入部と、
前記圧入部に繋がって設けられて、前記圧入部が前記圧入空間に圧入係止されて前記固定側ハウジングに取り付けられた状態で、前記可動側ハウジングに対し前記相手方コネクタとの嵌合方向に対向して位置し、前記可動側ハウジングが前記嵌合方向に前記所定移動量を越えて移動することを規制する移動規制部とを備えたことを特徴とするフローティング型コネクタ。
【請求項2】
前記移動規制部材が、前記圧入部に繋がり前記圧入部の側方に対となって設けられて、基板に固定される一対の脚部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフローティング型コネクタ。
【請求項3】
前記一対の脚部が前記圧入部と略平行に形成され、前記固定側ハウジングにおける前記嵌合方向に延びて形成されたガイド溝に嵌合することにより、前記圧入部が前記圧入空間に圧入されるときのガイドとしての役割を果たすように構成されたことを特徴とする請求項2に記載のフローティング型コネクタ。
【請求項4】
前記可動側ハウジングにおける前記移動規制部に対向する部分に、前記移動規制部を収容可能な収容凹部が形成されており、
前記移動規制部が前記収容凹部内に位置して前記収容凹部の側面に当接することで、前記嵌合方向に直交する面内においても前記可動側ハウジングの移動が規制されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフローティング型コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−16363(P2013−16363A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148720(P2011−148720)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000105338)ケル株式会社 (51)
【Fターム(参考)】