説明

ブラインドリベット及びその締結方法

【課題】一方の被取付部材の取付孔の内径が大きくても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができるブラインドリベット。
【解決手段】複数の第1の取付孔(42)を有する第1の被取付部材(41)と、第1の被取付部材の作業する側に配置され、複数の第2の取付孔(45)を有する第2の被取付部材(44)とを締結する。第1の取付孔(42)と第2の取付孔(45)とは対応する位置に配置され、第2の取付孔の内径は、第1の取付孔の内径より大きく、取付孔の加工による位置誤差を補償することができる。ブラインドリベットは、中空のスリーブ(11)とリベット頭部(12)と貫通孔(13)を有するリベットボディ(10)と、細長い軸部(21)と頭部(23)とを有するマンドレル(20)と、ワッシャ(30)とを備える。ワッシャはリベットボディのスリーブの外周上にリベット頭部に隣接して配置される。スリーブの拡径した端部とワッシャの間に被取付部材を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットに関する。特に、ワッシャを有するブラインドリベットにより、大きい取付孔を有する被取付部材を締結することができるブラインドリベット及びその締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スリーブ及びスリーブの一端のリベット頭部からなる中空の金属製リベットボディと、リベットボディの貫通孔を通って軸部が延び出る金属製マンドレルを包含するブラインドリベットは良く知られている。ブラインドリベットは、複数の被取付部材を一方の側からだけの作業で連結できるという利点がある。
ブラインドリベットのリベットボディは、一端にリベット頭部が形成され、リベット頭部から延びる筒状の中空スリーブを有する。ブラインドリベットのマンドレルは、スリーブの内径より大径の頭部を端部に有し、リベットボディを貫通する軸部を有する。マンドレルは、リベット頭部とは反対側のスリーブの一端部にマンドレルの頭部が隣接配置されて、リベット頭部からマンドレルの軸部が延び出るように、リベットボディの貫通孔に挿入されて、ブラインドリベットとして組付けられる。組付けたブラインドリベットをマンドレルの頭部を先頭にして、パネル等の被取付部材の孔に挿入し、リベット頭部を被取付部材の孔の周囲に当接させる。この状態で、リベット頭部を締結工具で保持して、マンドレルの軸部を把持してリベット頭部側から強く引き抜くと、リベットボディのスリーブの一端部が拡径するように変形し、マンドレルは軸部の細い破断可能部で破断し、リベット頭部と、拡径したスリーブの一端部の間に被取付部材を締結することができる。
【0003】
マンドレルを引き抜いて、リベットボディのスリーブの一端部を拡径させた後、締結工具のノーズピースによりリベット頭部を外周から絞り込んで、リベットボディ頭部の内周をマンドレルの軸部に係合させ、しっかり固定するブラインドリベットが知られている。このようなブラインドリベットは、リベット頭部を絞り込んで軸方向に伸ばすので、被締結部材を軸方向に強い圧着力で締結することができる。
しかし、リベット頭部を絞り込むので、リベット頭部の外径を大きくすることができなかった。ブラインドリベットは、リベット頭部の外径が、締結する被取付部材の孔の内径より大きいことが前提であり、リベット頭部の外径が、締結する被取付部材の孔の内径より小さいと、パネルを締結することができない。
【0004】
自動車等のボディパネル等の被取付部材に他の被取付部材をブラインドリベットで締結する場合、一方の被取付部材の複数の取付孔の位置と、他方の被取付部材の複数の取付孔の位置を整列させ、各取付孔をブラインドリベットで締結する。一般に、一方(ブラインド側)の被取付部材の取付孔の内径はリベットボディの中空スリーブの外径より少し大きい。被取付部材の取付孔の位置誤差を補償するため、他方(作業側)の被取付部材の取付孔の内径はブラインド側の被取付部材の取付孔より大きい取付孔(バカ孔)としている。そのため、リベット頭部の外径が小さいブラインドリベットでは、一方の被取付部材の取付孔の内径より他方の被取付部材の取付孔の内径が大きい被取付部材を締結することができなかった。
【0005】
この問題を解決するため、リベット頭部に外径の大きいフランジを一体成形したブラインドリベットがある。このようなブラインドリベットにより、被取付部材の取付孔の内径が大きい被取付部材を締結することができる。しかし、外径の大きいフランジを有するリベットボディを使用して、2つの被取付部材を締結すると、2つの被取付部材が十分な圧着力で締結できないという問題がある。
リベット頭部を絞り込むタイプのブラインドリベットでは、ブラインドリベットを締結するとき、リベット頭部を締結工具のノーズピースで絞ることにより、リベット頭部は軸方向に伸ばされる。この作用により、軸方向に伸ばされたリベット頭部と、拡径したスリーブの一端部との間に、2つの被取付部材が強く挟まれ、圧着力が生じる。
しかし、リベット頭部にフランジが一体成形されていると、リベット頭部が軸方向に伸ばされる力がフランジによりブロックされるため、被取付部材を圧着する強い圧着力が発生せず、十分な締結力が得られない。
【0006】
特許文献1は、スプリングワッシャ付きブラインドリベットを開示する。特許文献1のブラインドリベットは、鍔と円筒を有する中空リベットと、頭部と軸部とを有するマンドレルからなる締結具において、中空リベットの円筒の鍔側の一端に溝を形成し、この溝内にスプリングワッシャを設けた構造である。マンドレルの軸部を引き抜いて、鍔とマンドレルの頭部との間に被取付部材を締結すると、スプリングワッシャが円筒の端部と被取付部材の間に挟まり、被取付部材を強く締結するものである。
特許文献1のブラインドリベットは、スプリングワッシャの外径が鍔の外径と同じであり、取付孔の大きい被取付部材を締結するものではない。また、円筒にスプリングワッシャを入れる溝を形成する必要がある。
【0007】
特許文献2は、締結時に筒状本体の頭部が変形して、軸幹のロック溝に入りこむことにより、リベット本体の孔を閉塞するように構成された自己閉塞タイプのブラインドリベットを開示する。特許文献2のブラインドリベットは、胴とその一端のフランジ付リベット頭を有するリベットボディと、軸幹テール部と折れやすい部分により接続され螺旋状の溝が形成されプラグ体と、端部を有する軸幹とを備える。ブラインドリベットを締結すると、リベット頭の材料が螺旋状の溝に入り締結される。リベット頭を回転させると、比較的容易にリベットの締結を解除することができる。
特許文献2のブラインドリベットは、リベット頭にフランジが一体に設けられているので、ある程度の大きさの内径の取付孔を有する被取付部材を締結することができる。しかし、上述したように外径の大きいフランジを有するブラインドリベットで被取付部材を締結すると、被取付部材を十分な圧着力で締結することができないという問題がある。
【0008】
特許文献3は、複数のロック溝を有するピン部材と、主スリーブと、拡張可能スリーブと、カラーと、離隔ワッシャとを有する盲ファスナーを開示する。拡張可能スリーブが半径方向に拡張して主スリーブ上に移動し、カラーがロック溝の中にスエージ加工され、複数のワークピースを固定する。離隔ワッシャは、ピン部材の周りに配置されている。
特許文献3の盲ファスナーは、ピン部材と、主スリーブと、拡張可能スリーブと、カラーと、離隔ワッシャとの5部品からなる。ロック溝の中にスエージ加工するカラーは、主スリーブ、拡張可能スリーブとは別部品で部品数が多く、通常のブラインドリベットとは構造が異なる。そのため、部品の加工、組立てのコストが大きくなる。
また、特許文献3では、離隔ワッシャはなくてもよく、被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償するため大きい内径の被取付部材を締結するという課題はない。
【0009】
そのため、被取付部材の取付孔の内径が、リベット頭部の外径より大きくても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができ、部品点数が少なく容易に加工できるブラインドリベットが求められていた。
被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償するため、一方の被取付部材の複数の取付孔が通常の内径で、他方の被取付部材の複数の取付孔がそれより大きい内径であっても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができるブラインドリベットが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭63‐87312号公報
【特許文献2】特開昭63−254212号公報
【特許文献3】特開平5−149313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、被取付部材の取付孔の内径が、リベット頭部の外径より大きくても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができ、部品点数が少なく容易に加工できるブラインドリベットを提供することである。
また、被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償するため、一方の被取付部材の複数の取付孔が通常の内径で、他方の被取付部材の複数の取付孔がそれより大きい内径であっても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができるブラインドリベットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明のブラインドリベットは、リベットボディと、マンドレルと、ワッシャとの3部品からなる。リベットボディのリベット頭部を絞ってマンドレルの軸部に係合させる。ワッシャはリベットボディに対して回転または摺動可能に装着される。ワッシャは、リベットボディより硬い材料で形成されている。更に、強い圧着力で被取付部材を締結できるようにするため、ワッシャの材質、板厚、形状を規定した。
【0013】
本発明の第1の態様は、複数の第1の取付孔を有する第1の被取付部材と、前記第1の被取付部材の作業する側に配置され、前記第1の取付孔と対応する位置に前記第1の取付孔の内径より大きい内径の複数の第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔と前記第2の取付孔との加工による位置誤差を補償することができるようになっている第2の被取付部材とを締結するためのブラインドリベットであって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたリベット頭部とを有し、スリーブ側端部からリベット頭部側端部まで貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記リベットボディより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを備え、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置されているブラインドリベットである。
【0014】
被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償するため、作業側の被取付部材の取付孔の内径が、ブラインド側の被取付部材の取付孔より大きい取付孔として形成されている場合でも、2つの被取付部材を締結することができる。
【0015】
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記第1、第2の被取付部材の前記第1、第2の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記第2の被取付部材の前記第2の取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周から絞られて、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記第1、第2の被取付部材を締結することが好ましい。
【0016】
リベット頭部は、外周から絞られて伸ばされ、このリベット頭部を伸ばす力はワッシャにより阻害されないので、被取付部材を十分な圧着力で締結することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたリベット頭部とを有し、スリーブ側端部からリベット頭部側端部まで貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記リベットボディより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを備え、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置され、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周から絞られて、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記被取付部材を締結するブラインドリベットである。
【0018】
前記ワッシャの硬度は、前記リベットボディの硬度より高いことが好ましい。
リベットボディとワッシャとは別部材であり、リベット頭部を絞って締結するとき、リベット頭部は変形して、マンドレルの軸部と係合する。このとき、リベットボディより硬いワッシャは塑性変形することなく、十分な圧着力で被取付部材を締結することができる。
【0019】
前記ワッシャは、降伏点560MPa〜1000MPa、又は硬度Hv270〜Hv480の鉄鋼又はステンレス鋼により構成されることが好ましい。
この降伏点又は硬さであれば、リベット頭部を絞って引き伸ばすとき、ワッシャは塑性変形しない。
【0020】
前記第1の取付孔の内径が5.4±0.1mm、前記リベットボディの外径が5.2±0.1mmである場合、前記ワッシャの板厚が0.8mm〜2.4mmであり、外径が7.5mm〜22.5mmであることが好ましい。
この寸法であれば、リベット頭部を絞って引き伸ばすとき、ワッシャは塑性変形しない。
【0021】
本発明の第3の態様は、複数の第1の取付孔を有する第1の被取付部材と、前記第1の被取付部材の作業する側に配置され、前記第1の取付孔と対応する位置に複数の第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔と前記第2の取付孔との加工による位置誤差を補償することができるようになっている第2の被取付部材とをブラインドリベットで締結する方法であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端のリベット頭部を有し、貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを用意し、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置され、前記リベットボディと前記マンドレルとワッシャとを組み合わせて、ブラインドリベットとし、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記第1、第2の被取付部材の前記第1、第2の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記第2の被取付部材の前記第2の取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜き、前記スリーブの端部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周が絞って伸ばされ、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記第1、第2の被取付部材を締結する、段階を備える方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被取付部材の取付孔の内径が、リベット頭部の外径より大きくても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができるブラインドリベットを得ることができる。また、部品点数が少なく容易に加工できるブラインドリベットを得ることができる。
また、被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償するため、一方の被取付部材の複数の取付孔が通常の内径で、他方の被取付部材の複数の取付孔がそれより大きい内径であっても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができるブラインドリベットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態のブラインドリベットの一部を断面とした正面図である。
【図2】図1のブラインドリベットのリベットボディの一部を断面とした正面図である。
【図3】図1のブラインドリベットのマンドレルの正面図である。
【図4】図1のブラインドリベットのワッシャの断面図である。
【図5A】本発明の実施形態による図1のブラインドリベットを被取付部材の取付孔に挿入した状態を示す一部を断面とした正面図である。
【図5B】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結する中間段階の一部を断面とした正面図である。
【図5C】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結する中間段階の一部を断面とした正面図である。
【図5D】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結した後の一部を断面とした正面図である。
【図6】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結する中間段階でワッシャが変形した場合の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるワッシャを備えるブラインドリベットについて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態のブラインドリベットの一部を断面とした正面図である。ブラインドリベットは、リベットボディ10と、マンドレル20と、ワッシャ30とを含む。リベットボディ10のスリーブ側端部14から、リベットボディ10の貫通孔13に、マンドレル20を挿入し、マンドレル20の頭部23が、リベットボディ10のスリーブ側端部14に隣接して配置される。更に、リベットボディ10のスリーブ側端部14から、スリーブ11の外周にワッシャ30が挿入され、リベット頭部12に隣接して配置される。スリーブ11とワッシャ30との間は隙間があいている。
【0026】
以下、図2〜4を参照して、本発明の実施形態のブラインドリベットを構成するリベットボディ10と、マンドレル20と、ワッシャ30について説明する。
図2は、本発明の実施形態のブラインドリベットに使用するリベットボディ10の一部を断面とした正面図である。リベットボディ10は、円筒状のスリーブ11と、スリーブ11の一端に形成され、スリーブ11より大径のリベット頭部12とを含む。リベット頭部12の先端部は、テーパ状に外径が小さくなる斜面部19となり、リベット頭部側端部15で終わる。斜面部19は、ブラインドリベットを締結するとき、締結工具のノーズピース50により外周から絞り込まれ、外径と内径が小さくなる。
【0027】
スリーブ11のリベット頭部12と反対側はスリーブ側端部14である。リベットボディ10のリベット頭部側端部15と、スリーブ側端部14との間に貫通孔13が延びる。貫通孔13の内径13dは、マンドレル20の軸部21を挿入できる大きさであるが、マンドレル20の頭部23の外径より小さく、頭部23がスリーブ側端部14に当接して止まるようになっている。
スリーブ11の外径11dは、被取付部材の取付孔の内径より小さく、取付孔を通ることができる大きさである。リベット頭部12の外径は12dである。
リベットボディ10は、マンドレル20より軟質の材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等で作られる。又は、マンドレル20と同じスチール等で作ることもできる。
【0028】
図3は、本発明の実施形態のブラインドリベットに使用するマンドレル20の正面図である。マンドレル20は、細長い軸部21と、軸部21の一端部の頭部23とを備える。頭部23の外径23dは、リベットボディ10の貫通孔13の内径13dより大きい。頭部23の外径23dは、被取付部材44,41の取付孔の内径より小さく、取付孔を通ることができる。軸部21は円柱状で、リベットボディ10の貫通孔13の内径13dより小さい外径を有し、貫通孔13内に挿入することができる。軸部21の長さは、リベットボディ10の貫通孔13の長さより長く、マンドレル20の軸部21をリベットボディ10の貫通孔13に挿入すると、軸部21の先端は、リベットボディ10のリベット頭部側端部15から突き出す。
【0029】
マンドレル20の軸部21は、頭部23の側から、円柱部24と、係止部28と、破断可能部25と、把持部26と、先端部27とを含む。頭部23に隣接して、円柱状の円柱部24がある。
円柱部24に隣接して、係止部28がある。係止部28には周上に離間した周溝が形成され、周溝の間は係止山となっている。ブラインドリベットを締結するとき、リベット頭部12の部分が締結工具のノーズピースにより外周より絞られて内径が小さくなり、内径が小さくなった貫通孔13の内周に係止山が係合し、強い圧着力を発生し、被取付部材44,41を強く締結するようにする。ここに、圧着力とは、ブラインドリベットの軸方向に被取付部材を押し付ける力を言う。
【0030】
係止部28に隣接して、係止部28より外径の小さい、破断可能部25がある。破断可能部25は、ブラインドリベットを組み立てた状態で、リベットボディ10の貫通孔13に収容される部分にある。破断可能部25は、締結工具でマンドレル20の軸部21を引き抜くとき、ある引抜力を超えると破断する部分である。
破断可能部25に隣接して、破断可能部25より径の大きい把持部26がある。把持部26には締結工具の把持部材51で把持する場合スリップしないように多段の係止溝が形成されている。軸部21の先端部27は先が細くなり、締結工具に挿入しやすいように、先が細くなっている。マンドレル20の材質はスチール等である。
【0031】
図4は、本発明の実施形態のブラインドリベットに使用するワッシャ30の断面図である。ワッシャ30は、中心部分に軸方向に断面が円形の中心孔31が開いた円板状の部材である。中心孔31の内径31dは、マンドレル20の頭部23の外径23dより少し大きく、スリーブ11の外径11dより少し大きく、マンドレル20とリベットボディ10を組み合わせたブラインドリベットに、マンドレル20の頭部23の側から、ワッシャ30をスリーブ11の外周に挿入することができる。中心孔31の内径31dは、ワッシャ30をスリーブ11との間に隙間があき、スリーブ11の外側で移動できる大きさである。ワッシャ30の外径は30dである。
【0032】
ワッシャ30は、リベットボディ10のリベット頭部12を絞って伸ばす荷重に耐え、大きい取付孔を有する被取付部材を十分な圧着力で締結するため、十分剛性があることが必要である。ワッシャ30は、リベットボディ10より硬さが硬い材料でできている。
ワッシャは、降伏点560MPa〜1000MPa、又は硬度Hv270〜Hv480の鋼、ステンレス等の金属でできている。降伏点が560MPaより小さいと、ワッシャの強度が弱くなり、締結時に変形しやすくなる。又、硬度がHv270より小さいと、ワッシャの強度が弱くなり、締結時に変形しやすくなる。降伏点が1000MPaより高いと、ワッシャの加工が難しくなる。又、硬度がHv480より高いと、ワッシャの加工が難しくなる。
【0033】
ブラインドリベットのリベットボディの外径 5.2mm
ブラインド側の被取付部材の取付孔の内径φ5.4±0.1mm
作業側の被取付部材の取付孔の内径9mm(バカ孔)
という条件でブラインドリベットにより被取付部材を締結する場合、ワッシャは次のような寸法条件を満たす必要がある。
板厚 0.8mm〜2.4mm
外径 φ13.0mm〜22.5mm
【0034】
板厚が0.8mmより薄いと、ワッシャの強度が弱くなり、締結時に変形しやすくなる。また、2.4mmより厚いと、締結部が厚くなり、作業性が悪くなる。
外径が13.0mmより小さいと、取付穴がずれた場合、ワッシャで取付穴を覆うことができず、被取付部材を十分に押圧することができない。外径が22.5mmより大きいと、締結部が大きくなり、作業性が悪くなる。
上記条件の材質、板厚、外径のワッシャを使用すると、十分な圧着力で被取付部材を締結することができる。
【0035】
本発明の実施形態とは、リベットボディの外径、被取付部材の取付孔の内径が異なる場合は、その条件にあう板厚、材質、外径のワッシャを使用すれば、被取付部材を高い圧着力で締結することができる。
【0036】
図5A〜5Dを参照して、図1の本発明の実施形態のワッシャ付ブラインドリベットにより、被取付部材44,41を締結する動作について説明する。図5Aは、図1のワッシャ付ブラインドリベットを被取付部材44,41にセットした状態を示す一部を断面とした正面図である。図5Aの左側がブラインド側であり、右側からブラインドリベットを取り付ける作業をする(作業側)。図5A〜5Dには1箇所の締結部を示すが、被取付部材41の複数の取付孔42と、被取付部材44の複数の取付孔45とが、対応した位置に配列されている。複数の取付孔の位置誤差を補うため、被取付部材44の取付孔45は、被取付部材41の取付孔42より大きいバカ孔である。
【0037】
図5Aでは、被取付部材44の取付孔45の内径は、リベット頭部12の外径12dより大きい。本発明の実施形態では、リベット頭部12と一体のフランジを形成せず、被取付部材44の取付孔45の内径より大きい外径の別体のワッシャ30を使用するので、被取付部材44と41を強い圧着力で締結することができる。
【0038】
被取付部材44の取付孔45と被取付部材41の取付孔42の位置があうように、被取付部材44と41を重ね合わせる。
リベットボディ10とマンドレル20とワッシャ30とを組み合わせた図1のブラインドリベットのマンドレル30の把持部26を、取付工具の把持部材51で把持する。ワッシャ30と、リベットボディ10のスリーブ11との間には隙間があいている。図1のブラインドリベットを、被取付部材44,41の取付孔に、図5Aの右側から挿入し、リベットボディ10に取付けたワッシャ30が被取付部材44の取付孔45の周りの表面に当接するようにする。取付工具のノーズピース50の内周が、リベットボディ10のリベット頭部12の先端に近い斜面部19に当接するようにする。
【0039】
図5Bは、ブラインドリベットにより被取付部材44,41を締結する中間段階を示す一部を断面とした正面図である。取付工具のノーズピース50でリベットボディ10のリベット頭部12の先端に近い斜面部19を保持しながら、マンドレル20の把持部26を取付工具の把持部材51で把持して引き抜いていく。このとき、マンドレル20の頭部23は、リベットボディ10のスリーブ11のスリーブ側端部14を押し潰し、膨張部18を形成する。膨張部18は被取付部材41の取付孔42の周りに当接する。
【0040】
図5Cは、マンドレル20の把持部26を更に引き抜き、締結動作が更に進行した段階を示す一部を断面とした正面図である。ノーズピース50は、リベット頭部12の斜面部19を外周から押しながら、リベット頭部12の外径12dを外径が小さくなるように変形させていき、外径は12d'となる。このとき、頭部12の部分の貫通孔13の内周は、内径13dより径が小さくなるように変形し、マンドレル20の係止部28に係合する。ノーズピース50は、その先端の面がワッシャ30の表面に当接すると停止する。ブラインドリベットは、拡径した膨張部18と、ワッシャ30との間に被取付部材44,41を挟む。
【0041】
図5Dは、マンドレル20の把持部26を更に引き抜き、締結が完了した状態を示す一部を断面とした正面図である。マンドレル20は、破断可能部25で破断し、破断可能部25から頭部23の側は締結した部分に残る。リベットボディ10のリベット頭部12の内周が、マンドレル20の係止部28に係合するので、しっかり締結することができる。この後、ノーズピース50を図9Dの右方向に後退させて、締結は完了する。
【0042】
ブラインドリベットで被取付部材を締結する場合、通常は、被取付部材の取付孔の内径は、リベット頭部12の外径12dより小さい。本発明の実施形態では、取付孔45の内径は、リベット頭部12の外径12dより大きいが、取付孔45の内径より大きい外径30dを有するワッシャ30を取り付けてある。そのため、ワッシャ30が被取付部材44の取付孔45の外周に当接し、被取付部材44と41とを締結することができる。
また、締結前にはワッシャ30は、スリーブ11と隙間をあけて保持されているので、リベット頭部12を絞り込んで軸方向に伸ばす力は、ワッシャ30により阻害されない。そのため、軸方向の強い圧着力が発生し、被取付部材44と41を強い圧着力で締結することができる。
【0043】
図6は、図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結する場合、ワッシャの強度が不十分で、中間段階でワッシャが塑性変形した状態を示す正面図である。リベット頭部を絞って伸ばす荷重に耐えるため、ワッシャは、十分剛性があることが必要である。ワッシャの剛性が不十分だと、締結の中間段階でワッシャが塑性変形する。このような塑性変形を防止し、十分な圧着力を得るためには、ワッシャは前述した材質、板厚、外径の条件を満たす必要がある。
【0044】
本発明のブラインドリベットは、被取付部材の取付孔の内径が、リベット頭部の外径より大きくても、被取付部材を十分な圧着力で締結することができる。また、部品点数が少なく容易に加工できる。
また、一方の被取付部材の複数の取付孔が通常の内径で、他方の被取付部材の複数の取付孔がそれより大きい内径で、被取付部材の複数の取付孔の位置誤差を補償することができる被取付部材を十分な圧着力で締結することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 リベットボディ
11 スリーブ
12 リベット頭部
13 貫通孔
14 スリーブ側端部
15 リベット頭部側端部
18 膨張部
19 斜面部
20 マンドレル
21 軸部
23 頭部
24 円柱部
25 破断可能部
26 把持部
27 先端部
28 係止山
30 ワッシャ
31 中心孔
41 被取付部材
42 取付孔
43 取付孔
44 被取付部材
45 取付孔(バカ孔)
50 ノーズピース
51 把持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の取付孔を有する第1の被取付部材と、前記第1の被取付部材の作業する側に配置され、前記第1の取付孔と対応する位置に前記第1の取付孔の内径より大きい内径の複数の第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔と前記第2の取付孔との加工による位置誤差を補償することができるようになっている第2の被取付部材とを締結するためのブラインドリベットであって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたリベット頭部とを有し、スリーブ側端部からリベット頭部側端部まで貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記リベットボディより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを備え、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置されていることを特徴とするブラインドリベット。
【請求項2】
請求項1に記載のブラインドリベットであって、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記第1、第2の被取付部材の前記第1、第2の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記第2の被取付部材の前記第2の取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周から絞られて、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記第1、第2の被取付部材を締結するブラインドリベット。
【請求項3】
取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたリベット頭部とを有し、スリーブ側端部からリベット頭部側端部まで貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記リベットボディより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを備え、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置され、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周から絞られて、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記被取付部材を締結することを特徴とするブラインドリベット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、前記ワッシャの硬度は、前記リベットボディの硬度より高いブラインドリベット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、
前記ワッシャは、降伏点560MPa〜1000MPa、又は硬度Hv270〜Hv480の鉄鋼又はステンレス鋼でできているブラインドリベット。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、
前記第1の取付孔の内径が5.4±0.1mm、前記リベットボディの外径が5.2±0.1mmである場合、
前記ワッシャの板厚が0.8mm〜2.4mmであり、外径が7.5mm〜22.5mmである、
ブラインドリベット。
【請求項7】
複数の第1の取付孔を有する第1の被取付部材と、前記第1の被取付部材の作業する側に配置され、前記第1の取付孔と対応する位置に複数の第2の取付孔を有し、前記第1の取付孔と前記第2の取付孔との加工による位置誤差を補償することができるようになっている第2の被取付部材とをブラインドリベットで締結する方法であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端のリベット頭部を有し、貫通孔が形成されたリベットボディと、
前記スリーブの内径より小さい外径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、
前記リベット頭部の外径より小さく、前記リベットボディのスリーブの外径より大きい内径で、前記リベット頭部の外径より大きい外径のワッシャとを用意し、
前記マンドレルの頭部が、前記リベットボディの前記スリーブ側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記リベット頭部側端部から延び出て、前記ワッシャは前記リベットボディの前記スリーブの外周上に前記リベット頭部に隣接して配置され、前記リベットボディと前記マンドレルとワッシャとを組み合わせて、ブラインドリベットとし、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記第1、第2の被取付部材の前記第1、第2の取付孔に挿入し、前記ワッシャの面を前記第2の被取付部材の前記第2の取付孔の周りに当接させ、
前記リベット頭部を支持して、前記リベット頭部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜き、前記スリーブの端部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて拡径し、前記リベット頭部は、外周が絞って伸ばされ、前記リベット頭部の内周は前記マンドレルの前記軸部に係合し、前記スリーブの拡径した端部と、前記ワッシャとの間に前記第1、第2の被取付部材を締結する、
段階を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219948(P2012−219948A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87960(P2011−87960)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】