説明

ブラシレス振動モータ

【課題】スリム化され、組み立て作業性が良くなり、動作信頼性を向上させたブラシレス振動モータを提供する。
【解決手段】本発明のブラシレス振動モータにおいて、支持軸22は、上部ケース26及び下部ケース21の少なくとも一方に固定される。プリント回路基板23は、下部ケース21の上面に配置される。ローター25は、支持軸にベアリングを介して結合され偏心回転する。マグネット251は、ローター25に固定される。複数のコイル24は、マグネット251との間に電磁力を発生させる。コギングプレート27は、コギングトルクを発生させる。プリント回路基板23には、挿入孔232が形成され、コイル24およびコギングプレート27は、挿入孔232を貫通して下部ケース21に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス振動モータとは、回転子であるローターが偏心された状態で回転する過程で振動を発生するようにした振動モータである。前記ブラシレス振動モータは、主に小型に製造され、携帯電話又はポケベルなどで着信信号及び各種付加サービス機能に対して受信状態を振動で通知する機能を担う。前記ブラシレス振動モータは、近年、通信及び電子部品の技術が発達するにつれて、次第に集積化、小型化され、厚さもスリムに製作されている。
【0003】
一方、ブラシレスタイプ振動モータは、振動モータの不起動点(death point)をなくすためにコギングトルクの発生を誘導するコギングトルク発生部が多様な形態で設けられている。
【0004】
従来の一般的なコギングトルク発生部は、鉛直方向に見て、下部ケースとプリント回路基板との間に配置されている。このような従来のブラシレス振動モータは、コギングプレートがプリント回路基板の下部に装着されているため、振動モータ全体の厚さが前記コギングプレートの厚さ分だけ増加することになる。仮に振動モータの厚さをそのまま維持しながらコギングプレートを装着するようにすると、ローターの厚さをその分だけ小さくする必要があり、振動量が減少するという問題が生じる。
【0005】
このため、例えば、コギングトルクを発生させるために下部ケースに溝を設け、コギングに下部ケースが機能する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、コイルの内部にコギングピンを設けてコギング発生手段として利用する方式が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】大韓民国特許公開10−2004−38703
【特許文献2】大韓民国特許公開10−2004−60154
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示される技術は、下部ケースの強度を補強するために、プリント回路基板、コイル、コントローラー集積回路を挿入し射出して固定するものとなっている。したがって、射出時に上下金型がコイル又はコントローラー集積回路を押さえた状態で射出されるため、上下金型の押さえ圧力によりコイルの断線する、コントローラー集積回路が押さえられることによりプリント回路基板とコントローラー集積回路との間に亀裂が発生する、及びコントローラー集積回路が破壊されるという問題が発生し、振動モータの信頼性に影響を与えるおそれがある。このような信頼性への影響を抑制するため、上述の特許文献1では、下部ケースの下部に非磁性体を追加してレーザー溶接する技術も開示されている。しかし、このような技術を採用した場合、溶接時に溶接部位にバリ(burr)が突出して形成されるため、紙やすりなどを利用して溶接バリを除去しなければならないという問題が生じる。もちろん、非磁性体自体の厚さによって振動モータの厚さが増加するという問題も生じる。このような問題を解決するために、上述の特許文献1には下部ケースに磁性粉末を印刷する技術も提案されているが、この場合、磁性粉末の印刷時にコギング力が相当に弱くなるため、ローターが不起動点から移動しない場合が生じるという問題がある。
【0007】
また、上述の特許文献2に開示される技術では、コギングピンをコイルの内部に設けなければならず、コギングピンを正確な位置に配置することが困難であるため、コギングピンを立てた後、ボンドで接着する工程をさらに行わなければならない。したがって、振動モータ製造の作業性が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、スリム化され、組み立て作業性がよく、動作信頼性が向上したブラシレス振動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブラシレス振動モータは、下部ケースと、上部ケースと、前記上部ケース及び下部ケースの少なくとも一方に固定される支持軸と、前記下部ケースの上面に配置されるプリント回路基板と、前記支持軸にベアリングを介して結合され偏心回転するローターと、前記ローターに固定されるマグネットと、前記マグネットとの間に電磁力を発生させる複数のコイルと、コギングトルクを発生させるコギングトルク発生部と、を備える。前記プリント回路基板には、少なくとも一つの孔が形成され、前記コイルおよび前記コギングトルク発生部は、前記孔を貫通して前記下部ケースに当接する。
【0010】
前記コイルおよび前記コギングトルク発生部は、対をなして配置されてもよい。
【0011】
前記コイルと前記コギングトルク発生部とが互いに対向する少なくとも一面は、略同一形状に形成され互いに当接してもよい。
【0012】
前記孔は、前記コイルと同数設けられ、前記コイルをそれぞれ収容してもよい。
【0013】
前記下部ケースは、非磁性体で形成されてもよい。
【0014】
前記コギングトルク発生部はプレート形状であって、略水平方向に延在するよう配置されてもよい。
【0015】
前記プリント回路基板には、入力電流を調節するコントローラー集積回路が設けられ、前記孔は、コントローラー集積回路の左右両側にそれぞれ設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブラシレス振動モータをスリム化することができ、組み立て作業性が良くなり、振動モータの動作信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るブラシレス振動モータの縦断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係るブラシレス振動モータは、中央にバーリング部(burring portion)211を有する下部ケース21、バーリング部211に支持される支持軸22、電流が流れる経路が設けられたプリント回路基板23、電界を発生させるコイル24、支持軸22に支持され偏心されて装着されるローター25、振動モータの上部を覆う上部ケース26、コギングトルクの発生を誘導するコギングプレート27を備える。
【0019】
下部ケース21は円板形状に形成され、中央にバーリング部211が設けられ、外周に結合端が設けられる。支持軸22は、下部ケース21のバーリング部211に下部が固定され、中間部にベアリング28がその外部に挿入され設置される。ここで、下部ケース21は非磁性体で形成されることが好ましい。これは、下部ケース21の材質が磁性体である場合、後述するマグネット251の吸引力が上昇してローター25の回転数が急激に落ちたり、コギングトルク(Cogging Torque)が減少して死点が発生するおそれがあることから、これらを防止するためである。
【0020】
コイル24は、プリント回路基板23の挿入孔232内に挿入され、下部ケース21に固定される。このとき、コイル24と下部ケース21との絶縁は、コイル24又は下部ケース21を絶縁塗装することにより達成できる。
【0021】
ローター25は、支持軸22に結合されたベアリング28の外周面にコイル24と上下方向に所定の距離を隔てて対向する位置に固定され磁界を発生するマグネット251と、マグネット251に固定されて偏心回転力を発生するウェイト252と、を有する。
【0022】
上部ケース26は、中央に支持軸22が取り付けられ、周縁部に下部ケース21の結合端が固定される。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係るプリント回路基板自体の概略的な平面図であり、図3は、本発明の実施の形態に係るプリント回路基板の配線、コイル、及びコギングプレートなどが装着された状態の平面図である。
【0024】
図1〜図3に関連して、コギングプレートとコイルなどの配置について詳細に説明する。プリント回路基板23は入力端子部を備え、円板形状に形成され下部ケース21の上面に配置される。プリント回路基板23の上面には、プリント回路基板23と電気的に接続され、入力される電流を制御するコントローラー集積回路231が配置され、極性を判別するホールセンサ(図示せず)がコントローラー集積回路231と共に、又は分離して設けられる。
【0025】
また、プリント回路基板23は、コントローラー集積回路231の左側及び右側に略楕円形状の挿入孔232を備える。挿入孔232は、プリント回路基板23が部分的に除去されて形成される部分であって、プリント回路基板23の上面から下側へ陥没するよう形成される。挿入孔232の内部には、電界を形成するコイル24とコギングプレート27が配置される。
【0026】
詳細に説明すると、コギングプレート27は、コイル24の磁気中心とローター25のマグネット251の極中心とが一致する時点でトルクがゼロ状態になる不起動点を解消する。コギングプレート27は、コイル24と共に挿入孔232の内部の同一線上に配置され、下部ケース21に固定される。言い換えれば、コイル24とコギングプレート27は、挿入孔232の内部で同じ水平高さに互いに左右側に配置されている。
【0027】
以下、本実施の形態に係るブラシレス振動モータの製造過程を説明する。まず、下部ケース21のバーリング部211に、ベアリング28が結合された支持軸22の下端が挿入固定され、支持軸22の下部、すなわち下部ケース21の上面には、コントローラー集積回路231と挿入孔232とを備えるプリント回路基板23が固定される。プリント回路基板23の挿入孔232には、コイル24と共にコギングプレート27が左右方向に並べて挿入され、下部ケース21の上面の同じ高さに配置され固定される。コイル24とコギングプレート27が挿入孔232の内部に固定される方式は、接着又は嵌めこみなど、多様な方法が適用され得る。
【0028】
このように、挿入孔232の内部にコイル24とコギングプレート27が挿入され固定されるので、コギングプレート27を配置するための、振動モータの内部から上下方向へ延在する空間が別途要求されない。これによって、同じ大きさの振動モータではローターを大きくすることができるため、従来と比較して振動モータの振動量を大きくすることができる。また、振動量が同じである小さな振動モータを製造することができることは勿論である。
【0029】
一方、図3に示されるように、コギングプレート27とコイル24の外面の少なくとも一部が互いに当接するよう配置することによって、両者の位置が互いにねじれることなく、本来の位置に堅固に配置することができる。また、各部材が置かれる位置を分かりやすくすることができ、装着が容易になるというメリットがある。
【0030】
支持軸22のベアリング28には、底面にマグネット251とウェイト252を備えるローター25が固定結合される。支持軸22の上端には、コイル24とローター25を保護する上部ケース26が取り付けられ下部ケース21の結合端に対して固定される。このような方式により、本実施の形態に係るブラシレス振動モータの製造が完了する。
【0031】
本実施の形態に係るブラシレス振動モータの動作を説明する。まず、プリント回路基板23のコントローラー集積回路231に電圧が印加されると、プリント回路基板23に固定されているコイル24に電圧が印加され、電界が発生する。発生した電界は、コイル24の上部に位置しているマグネット251から発生する磁界と鎖交して、回転電磁力を発生してローター25を回転させる。
【0032】
このとき、ローター25は、コントローラー集積回路231によって制御されながら回転し、ローター25に設けられるウェイト252などによって偏心を起こして振動が発生する。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0034】
上述の実施の形態では、挿入孔の深さは、コイルが置かれる位置やコギングプレートが置かれる位置に関係なく、プリント回路基板に全体的に挿入孔が形成されて、プリント回路基板自体が除去されて下部ケースに結合されている。これに対して、コギングプレートが置かれる部分では挿入孔の深さを浅くして、プリント回路基板が全体的に除去されず、コイルが置かれる部分に挿入孔がプリント回路基板の全体厚にわたって形成されてもよい。この場合、コギングプレートとマグネットとの距離を短くすることができ、コギングの効果が可能なかぎり大きくなるというメリットを得ることができる。
【0035】
コギングプレートとコイルが同じ高さ、言い換えれば下部ケースに直接締結することによって、コギングプレート等の結合等において、振動モータの製造をさらに容易にすることができると考えられる。挿入孔はプリント回路基板全体にわたって貫通しないためコイルも下部ケースに触れない。このため、コギングプレートとコイルとがプリント回路基板自体に固定されてもよい。この場合、挿入孔は、孔の形状ではなく溝の形状となるため、挿入溝と言うことができる。さらに、このような挿入孔及び挿入溝を総称して挿入部と言うことができる。このとき、コイルの設置高さを下げることが好ましく、コイルとコギングプレートとの固定力を高めることが好ましい。また、プリント回路基板の製造を容易にするため、コイル及びコギングプレートが下部ケースの同一線上に配置されることがさらに好ましい。
【0036】
コギングプレートは、コギングトルク発生部の例示的な形態である。したがって、高さが許容されれば、プレートの形状でなく例えば立方体の形態で設けられる他の形態のコギングトルク発生部を採用することも可能である。しかしながら、挿入孔の面積を充分にとれる場合には、プレートの形状で提案されるコギングプレートが好ましいことはもちろんである。
【0037】
本発明によれば、ブラシレス振動モータの厚さを減少させることができ、振動モータ自体をスリム化することができる。また、コギングプレートとして例示されるコギングトルク発生部を挿入孔の内部に容易に位置付けることができ、後処理過程も要らないため、製造工程を簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るブラシレス振動モータの縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリント回路基板自体の概略的な平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るプリント回路基板の配線と、コイル、及びコギングプレートなどが装着された状態の平面図である。
【符号の説明】
【0039】
21 下部ケース、 22 支持軸、 23 プリント回路基板、 24 コイル、 25 ローター、 26 上部ケース、 27 コギングプレート、 28 ベアリング、 211 バーリング部、 231 コントローラー集積回路、 232 挿入孔、 251 マグネット、 252 ウェイト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ケースと、
上部ケースと、
前記上部ケース及び下部ケースの少なくとも一方に固定される支持軸と、
前記下部ケースの上面に配置されるプリント回路基板と、
前記支持軸にベアリングを介して結合され偏心回転するローターと、
前記ローターに固定されるマグネットと、
前記マグネットとの間に電磁力を発生させる複数のコイルと、
コギングトルクを発生させるコギングトルク発生部と、を備え、
前記プリント回路基板には、少なくとも一つの孔が形成され、前記コイルおよび前記コギングトルク発生部は、前記孔を貫通して前記下部ケースに当接することを特徴とするブラシレス振動モータ。
【請求項2】
前記コイルおよび前記コギングトルク発生部は、対をなして配置されることを特徴とする請求項1に記載のブラシレス振動モータ。
【請求項3】
前記コイルと前記コギングトルク発生部とが互いに対向する少なくとも一面は、略同一形状に形成され互いに当接することを特徴とする請求項2に記載のブラシレス振動モータ。
【請求項4】
前記孔は、前記コイルと同数設けられ、前記コイルをそれぞれ収容することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブラシレス振動モータ。
【請求項5】
前記下部ケースは、非磁性体で形成されることを特徴とする請求項1に記載のブラシレス振動モータ。
【請求項6】
前記コギングトルク発生部はプレート形状であって、略水平方向に延在するよう配置されることを特徴とする請求項1に記載のブラシレス振動モータ。
【請求項7】
前記プリント回路基板には、入力電流を調節するコントローラー集積回路が設けられ、前記孔は、コントローラー集積回路の左右両側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載のブラシレス振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−282491(P2007−282491A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100107(P2007−100107)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(506149726)エルジー イノテック カンパニー リミテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】LG Innotek Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】33Fl., LG Twin Tower West,20,Yeouido−dong,Yeongdeungpo−gu Seoul,150−721,Korea
【Fターム(参考)】