説明

ブラシレス電気機械及びそれを用いた装置

【課題】十分な性能を有するインナーロータ構造のブラシレス電気機械を実現することを目的とする。
【解決手段】インナーロータ構造のブラシレス電気機械100aであって、回転軸110と、前記回転軸の周りに配置された磁石20と、前記磁石から等距離に配置された複数の電磁コイル30A、30Bとを備え、前記複数の電磁コイル30A、30Bは、前記回転軸110の回転方向に並んだコイル列であって、互いに平行なN相(Nは2以上の整数)のコイル列を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシレスモータやブラシレス発電機などのブラシレス電気機械及びそれを用いた各種の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス電気機械は、ブラシレスモータとブラシレス発電機とを包含する意味を有する用語である。ブラシレスモータとしては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−298982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インナーロータ構造のブラシレス電気機械を実現しようとする場合、電磁コイルの配置について工夫が十分でなかった。そのため、トルクリップルや回転軸方向の振動が発生し、十分な性能のブラシレス電気機械を実現することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決し、十分な性能を有するインナーロータ構造のブラシレス電気機械を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
インナーロータ構造のブラシレス電気機械であって、回転軸と、前記回転軸の周りに配置された磁石と、前記磁石から等距離に配置された複数の電磁コイルとを備え、前記複数の電磁コイルは、前記回転軸の回転方向に並んだコイル列であって、お互いに平行なN相(Nは2以上の整数)のコイル列を形成している、ブラシレス電気機械。
この適用例によれば、磁石と各相のコイル列の電磁コイルとの距離が等距離なのでトルクリップルが発生しにくい。従って、十分な性能のインナーロータ構造のブラシレス電気機械を実現することが可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載のブラシレス電気機械において、前記磁石は、前記コイル列毎に独立して設けられ、前記N相のコイル列の電磁コイルのコイルエンドが前記磁石と重ならないように配置されている、ブラシレス電気機械。
この適用例によれば、隣接するコイル列の間のコイルエンドに不要な力が働かないので、振動を抑制することが可能となる。
【0009】
[適用例3]
適用例2に記載のブラシレス電気機械において、前記N相のコイル列は、その電磁コイルが同じ位置になるように配置され、前記磁石は、対応するコイル列毎に位置をずらして配置されている、ブラシレス電気機械。
電磁コイルの位置と電磁石の相対的位置関係は変わらないので、このように構成してもよい。
【0010】
[適用例4]
適用例1に記載のブラシレス電気機械において、全部が前記磁石と重なるように配置されている、ブラシレス電気機械。
この適用例によれば、コイルエンドにかかる力は打ち消しあう。そのため、コイルに不要な力が働かず、振動を抑制することが可能となる。
【0011】
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、同相のコイル列を複数備え、前記回転軸に垂直な面を対称面として前記同相のコイル列が互いに対称となるように配置されている、ブラシレス電気機械。
この適用例によれば、コイル列の配置のバランスをよくすることが可能となる。その結果、回転運動を安定させ、さらに高トルク特性にすることが可能となる。
【0012】
[適用例6]
適用例1から適用例4のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、同相のコイル列を複数備え、同相のコイル列が周期的に並ぶようにN相のコイル列が順番に配置されている、ブラシレス電気機械。
この適用例によっても、コイル列の配置のバランスをよくすることが可能となる。その結果、回転運動を安定させ、さらに高トルク特性にすることが可能となる。
【0013】
[適用例7]
適用例1から適用例6のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、隣接するコイル列のコイルエンドが、円周方向に並んで配置されている。ブラシレス電気機械。
この適用例によれば、隣接するコイル列の間隔を狭くできるので、コイル損失距離を減らし、ブラシレス電気機械の効率を向上させることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、ブラシレス電気機械の他に、これを用いた各種の装置(例えば、電動モータ、発電機、それらを用いたアクチュエータや電子機器、移動体、ロボット等)、及び、それらの制御方法等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の実施例:
図1は、第1の実施例に係る2相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。図1(A)は回転軸と平行な面で切った断面図であり、図1(B)、(C)は回転軸と垂直な面で切った断面図である。この2相ブラシレスモータ100aは、略円筒状のステータ60が外側に配置され、略円筒状のロータ50が内側に配置されたインナーロータ型モータである。ステータ60は、ケーシング130の内周に沿って配列された複数のA相電磁コイル30A及び複数のB相電磁コイル30Bを有している。ここで、複数のA相電磁コイル30Aが形成する列と、複数のB相電磁コイル30Bが形成する列とは、平行になっている。ステータ60には、さらに、ロータ50の位相を検出する位置センサとしての磁気センサ80A、80Bが、それぞれA相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bと対応して配置されている。A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bと磁気センサ80A、80Bは、回路基板140の上に固定されている。回路基板140は、ケーシング130に固定されている。ケーシング130は、軟磁性材によるバックヨークとして、軟磁性粉材を含有した樹脂で覆う構造を有していてもよい。また、ケーシング130と電磁コイル30A、30Bの間に軟磁性材によるバックヨークを設けてもよい。
【0016】
ロータ50は、その外周に磁石モジュール20を有しており、ロータ50の中心に回転軸110が設けられている。この回転軸110は、軸受け部112で支持されている。磁石モジュール20は、6つの磁石を有している。各磁石は、回転軸110の中心から外部に向かう径方向に沿って磁化されている。図1(B)、(C)では、図示の便宜上、電磁コイル30A、30Bに面した側の極のみが示されている。なお、この例では、ケーシング130の内側に、コイルバネ114が設けられており、このコイルバネ114が磁石モジュール20を図の左方向に押すことによって、磁石モジュール20の位置決めを行っている。但し、コイルバネ114は省略可能である。
【0017】
A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bは、磁石モジュール20によって形成される磁場方向と交差する方向に巻かれている。この図では、磁場方向は上下方向であり、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bは水平方向に巻かれている。また、図1(B)、(C)では、磁場方向は回転軸110を中心とした半径方向にあるので、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bも半径方向を中心としてそれに垂直な方向に巻かれている。本実施例では2相ブラシレスモータ100aはコア32A、32Bを備え、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bはそれぞれコア32A、32Bに巻かれているが、図2に示すように、コア32A、32Bを備えない構成であってもよい。図2は、電磁コイルにコアを有さない2相ブラシレスモータの断面図である。なお、コア32A、32Bを備えると、磁束密度を強くすることが可能となる。また、コア32A、32Bとしては、例えば鉄または鉄の合金を用いることが可能である。本実施例では、磁石モジュール20とA相電磁コイル30Aの距離と、磁石モジュール20とB相電磁コイル30Bの距離と、が同じ距離になるように、A相電磁コイル30AとB相電磁コイル30Bが配置されている。そのため、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bが受ける力(ローレンツ力)は同じ大きさになるので、トルクリップルの発生を抑制できる。
【0018】
図3は、2相ブラシレスモータを軸に平行な線で切って展開し、矢印Yに示す方から見た模式図である。A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bは、それぞれ複数の電磁コイルが連なって列31A、31Bを形成しており、A相電磁コイル30Aが形成する列31Aと、B相電磁コイル30Bが形成する列31Bとは平行となっている。また、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bは、外側のコイルエンド30AE1、30BE1を含めて、磁石モジュール20と重なるように配置されている。このように、配置されていると、外側のコイルエンド30AE1、30BE1に働く力と、内側のコイルエンド30AE2、30BE2に働く力が打ち消しあう。その結果、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bに対する不要な振動の発生を抑制することが可能となる。
【0019】
図4は、センサ出力と電磁コイルの逆起電力波形との関係を示す説明図である。図4(A)は、位相が0(2π)における磁石モジュール20とA相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bの位置を模式的に示している。図4(B)、(D)は、それぞれA相電磁コイル30Aに発生する逆起電力の波形、及びB相電磁コイル30Bに発生する逆起電力の波形の例を示しており、図4(C)、(E)は、それぞれA相用の磁気センサ80Aのセンサ出力SSA、及びB相用の磁気センサ80Bのセンサ出力SSBの波形の例を示している。これらの磁気センサ80A、80Bは、モータ運転時の電磁コイルの逆起電力とほぼ相似形状のセンサ出力SSA、SSBを発生することができる。図4(B)に示すA相電磁コイル30Aの逆起電力は、モータの回転数とともに上昇する傾向にあるが、波形形状(正弦波)はほぼ相似形状に保たれる。B相電磁コイル30Bの逆起電力も同様である。磁気センサ80A、80Bとしては、例えばホール効果を利用したホールICを採用することができる。この例では、センサ出力SSAと逆起電力Ecは、いずれも正弦波か、正弦波に近い波形である。このモータの駆動制御回路(図示せず)は、センサ出力SSA、SSBを利用して、逆起電力Ecとほぼ相似波形の電圧をそれぞれの電磁コイル30A、30Bに印加する。
【0020】
ところで、電動モータは、機械的エネルギと電気的エネルギとを相互に変換するエネルギ変換装置として機能するものである。そして、電磁コイルの逆起電力は、電動モータの機械的エネルギが電気的エネルギに変換されたものである。従って、電磁コイルに印加する電気的エネルギを機械的エネルギに変換する場合(すなわちモータを駆動する場合)には、逆起電力と相似波形の電圧を印加することによって、最も効率良くモータを駆動することが可能である。なお、以下に説明するように、「逆起電力と相似波形の電圧」は、逆起電力と逆向きの電流を発生する電圧を意味している。
【0021】
図5は、本実施例のブラシレスモータの正転動作の様子を示す説明図である。図5(A)は、位相が0(2π)の直前における状態を示している。電磁コイル30A、30Bが励磁されると、電磁コイル30A、30Bと磁石モジュール20との間に吸引力と反発力が生じる。この結果、ロータ50は、正転方向(図の右方向)に回転する。なお、位相が0となるタイミングで、A相電磁コイル30Aの励磁方向が反転する(図3参照)。図5(B)は、位相がπ/2の直前まで進んだ状態を示している。位相がπ/2となるタイミングでは、B相電磁コイル30Bの励磁方向が反転する。図5(C)は、位相がπの直前まで進んだ状態を示している。位相がπとなるタイミングでは、A相電磁コイル30Aの励磁方向が再び逆転する。図5(D)は、位相が3π/2の直前まで進んだ状態を示している。位相が3π/2となるタイミングでは、B相電磁コイル30Bの励磁方向が再び逆転する。
【0022】
なお、図4(C)、(E)からも理解できるように、位相がπ/2の整数倍となるタイミングでは、センサ出力SSA、SSBの一方がゼロとなるので、2相の電磁コイル30A、30Bのうちの一方のみから駆動力を発生する。しかし、位相がπ/2の整数倍となるタイミングを除く他のすべての期間において、2相の電磁コイル30A、30Bの両方が同時に駆動力を発生することが可能である。従って、2相の電磁コイル30A、30Bの両方を用いて大きなトルクを発生することができる。
【0023】
ところで、図5(A)から理解できるように、A相用の磁気センサ80Aは、A相電磁コイル30Aの中心が磁石モジュール20の中心と対向する位置においてそのセンサ出力の極性が切り替わる位置に配置されている。同様に、B相用の磁気センサ80Bは、B相電磁コイル30Bの中心が磁石モジュール20の中心と対向する位置においてそのセンサ出力の極性が切り替わる位置に配置されている。このような位置に磁気センサ80A、80Bを配置すれば、磁気センサ80A、80Bから、電磁コイルの逆起電力とほぼ相似形状のセンサ出力SSA、SSB(図4)を発生することが可能である。
【0024】
回路構成:
図6は、ブラシレス電気機械の制御回路の構成を示すブロック図である。この制御回路は、CPUシステム300と、駆動信号生成部200と、駆動ドライバ部210と、回生制御部220と、蓄電器230と、蓄電制御部240とを備えている。駆動信号生成部200は、駆動ドライバ部210に供給する駆動信号を生成する。
【0025】
図7は、駆動ドライバ部210の構成を示す回路図である。この駆動ドライバ部210は、H型ブリッジ回路を構成している。駆動信号生成部200からは、第1の駆動信号DRVA1と、第2の駆動信号DRVA2のうちの一方が駆動ドライバ部210に供給される。図6に示す電流IA1,IA2は、これらの駆動信号DRVA1,DRVA2に応じて流れる電流(「駆動電流」とも呼ぶ)の方向を示している。なお、N相の場合には、N組の駆動信号が生成される。
【0026】
図8は、回生制御部220の内部構成を示す回路図である。回生制御部220は、A相電磁コイル30Aに対して駆動ドライバ部と並列に接続されている。回生制御部220は、ダイオードで構成される整流回路222と、スイッチングトランジスタ224とを備えている。蓄電制御部240によってスイッチングトランジスタ224がオン状態になると、A相電磁コイル30Aで発生した電力を回生して蓄電器230を充電することが可能である。また、蓄電器230からA相電磁コイル30に電流を供給することも可能である。なお、制御部から、回生制御部220と蓄電器230と蓄電制御部240を省略してもよく、或いは、駆動信号生成部200と駆動ドライバ部210を省略してもよい。なお、上記説明ではA相電磁コイル30Aを用いて説明したが、B相電磁コイル30Bについても同様である。
【0027】
また、本実施例によれば、磁石モジュール20とA相電磁コイル30Aの距離と、磁石モジュール20とB相電磁コイル30Bの距離と、が同じ距離になるように、A相電磁コイル30AとB相電磁コイル30Bが配置されているので、トルクリップルの発生を抑制できる。
【0028】
さらに、コイルエンド30AE1、30AE2、30BE1、30BE2と磁石モジュール20とが重なるように配置されているので、不要な力が打ち消しあい、不要な振動の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
第2の実施例:
図9は、第2の実施例に係る2相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。第2の実施例に係る2相ブラシレスモータ100bでは、磁石モジュール20が、A相電磁コイル30AとB相電磁コイル30Bと対応するように、磁石モジュール20A、20Bの2つに分割されている点が異なる。磁石モジュール20Aと磁石モジュール20Bとは、接続部材21により接続されている。接続部材21としては、例えば、軟磁性体、非磁性体、樹脂材を用いることが可能である。接合部材21として樹脂材を用いる場合には、例えば、インジェクション成形により、磁石モジュール20A、磁石モジュール20Bと一体成形することも可能である。
【0030】
図10は、2相ブラシレスモータ100bを軸に平行な線で切って展開し、矢印Yに示す方から見た模式図である。第2の実施例に係る2相ブラシレスモータ100bでは、磁石モジュール20A、20Bが一定の間隔を開けて配置されている。そのため、A相電磁コイル30AとB相電磁コイル30Bの境界部にあるコイルエンド30AE1、30AE2、30BE1、30BE2と、磁石モジュール20A、20Bとは、重なっていない。その結果、コイルエンド30AE1、30AE2、30BE1、30BE2には、磁石モジュール20A、20Bの磁束が通っていない。その結果、コイルエンド30AE1、30AE2、30BE1、30BE2に不要な力を発生させず、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bに対する不要な振動の発生を抑制することが可能となる。なお、コイルエンド30AE1、30AE2と磁石モジュール20Aとが重なり、30BE1、30BE2と磁石モジュール20Aとが重なるように構成してもよい。この場合には、第1の実施例と同様に、外側のコイルエンド30AE1、30BE1に働く力と、内側のコイルエンド30AE2、30BE2に働く力が打ち消しあうので、A相電磁コイル30A、B相電磁コイル30Bに対する不要な振動の発生を抑制することが可能となる。
【0031】
第3の実施例:
図11は、第3の実施例を模式的に示す説明図である。第3の実施例では、2つのA相のコイル列31A1、31A2と、2つのB相のコイル列31B1、31B2とを備えている。さらに、コイル列31A1と31A2は、回転軸110と垂直な平面Xを対称面として互いに対称に配置されている。また、コイル列31B1と31B2も、平面Xを対称面として互いに対称に配置されている。このように平面Xを対称面として同相のコイル列を互いに対称に配置することにより2相ブラシレスモータ10の回転バランスを良くし、回転運動を安定させることが可能となる。さらに、回転のバランスを良くすることにより、2相ブラシレスモータ10を高トルク特性にさせることが可能となる。
【0032】
図12は、第3の実施例の別の構成例である。この構成例では、A相のコイル列(31A1、31A2)とB相のコイル列(31B1、31B2)が周期的に並ぶように順番に配置されている。このようにコイル列を配置することにより、2相ブラシレスモータ10の回転バランスを良くし、回転運動を安定させることが可能となる。さらに、回転のバランスを良くすることにより、2相ブラシレスモータ10を高トルク特性にさせることが可能となる。
【0033】
図13、図14は、第3の構成の別の実施例である。これらの実施例では、第2の実施例のように、磁石モジュール20を、コイル列毎に分割する構成を採用している。こうしても2相ブラシレスモータ10の回転バランスを良くし、回転運動を安定させることが可能となる。
【0034】
図15、図16は、第3の構成の別の実施例である。上記の第3の実施例では、磁石モジュール20Aと20Bの位置を同じにし、A相のコイル列(31A1、31A2)の位置とB相のコイル列(31B1、31B2)の位置とを半ピッチずらした構成を採用しているが、A相のコイル列(31A1、31A2)の位置とB相のコイル列(31B1、31B2)の位置を同じにし、磁石モジュール20Aの位置と磁石モジュール20Bの位置とを半ピッチずらした構成を採用してもよい。こうしても2相ブラシレスモータ10の回転バランスを良くし、回転運動を安定させることが可能となる。
【0035】
第4の実施例:
図17は、第4の実施例に係る2相ブラシレスモータの展開図を示す説明図である。第4の実施例では、A相の電磁コイル30Aのコイルエンド30AE2と、隣接するB相の電磁コイル30Bのコイルエンド30BE2との境界22が、ジグザグになるようにA相の電磁コイル30AとB相の電磁コイル30Bが配置されている。このように配置することにより、A相のコイル列31AとB相のコイル列31Bの間隔を狭くすることができる。その結果、電磁コイル損失距離を減らすことができ、2相ブラシレスモータの効率を向上させることができる。
【0036】
第5の実施例:
図18は、第4の実施例に係る3相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。第4の実施例では、A相電磁コイル30AからC相電磁コイル30Cまでが、それぞれコイル列を形成して3つのコイル列を形成している点が異なる。このように、2相ブラシレスモータに限られず、3相ブラシレスモータやそれ以上のN相ブラシレスモータであっても、各相のコイル列を1列に並べて互いに平行なN列を形成し、各相のコイル列を磁石モジュール20から等距離に配置することができる。なお、第1の実施例のように磁石モジュール20を1つ設ける構成よりも、第2の実施例のようにコイル列毎に磁石モジュール20を分割して設ける構成の方が好ましい。こうすると、振動をより生じ難くすることが可能となる。尚、3相時の駆動回路は、スター結線(Y結線、星型結線)あるいはデルタ結線(三角結線)によるHブリッジ回路の構成で実現できる。また、第3の実施例と同様に、同相のコイル列を複数備え、回転軸110と垂直な平面Xを対称面として、同相のコイル列を互いに対称に配置してもよい。また、同相のコイル列が周期的に並ぶように、各コイル列を順番に配置してもよい。
【0037】
変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態、適用例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次の様な変形も可能である。
【0038】
変形例1:
上記実施例では、ブラシレス電気機械の機械的構成や回路構成の具体例を説明したが、本発明のブラシレス電気機械の機械的構成や回路構成としては、これら以外の任意の構成を採用することが可能である。
【0039】
変形例2:
本発明は、ファンモータ、時計(針駆動)、ドラム式洗濯機(単一回転)、ジェットコースタ、振動モータなどの種々の装置のモータに適用可能である。本発明をファンモータに適用した場合には、上述した種々の効果(低消費電力、低振動、低騒音、低回転ムラ、低発熱、高寿命)が特に顕著である。このようなファンモータは、例えば、デジタル表示装置や、車載機器、燃料電池式パソコン、燃料電池式デジタルカメラ、燃料電池式ビデオカメラ、燃料電池式携帯電話などの燃料電池使用機器、プロジェクタ等の各種装置のファンモータとして使用することができる。本発明のモータは、さらに、各種の家電機器や電子機器のモータとしても利用可能である。例えば、光記憶装置や、磁気記憶装置、ポリゴンミラー駆動装置等において、本発明によるモータをスピンドルモータとして使用することが可能である。また、本発明によるモータは、移動体やロボット用のモータとしても利用可能である。
【0040】
図19は、本発明の適用例によるモータを利用したプロジェクタを示す説明図である。このプロジェクタ600は、赤、緑、青の3色の色光を発光する3つの光源610R、610G、610Bと、これらの3色の色光をそれぞれ変調する3つの液晶ライトバルブ640R、640G、640Bと、変調された3色の色光を合成するクロスダイクロイックプリズム650と、合成された3色の色光をスクリーンSCに投写する投写レンズ系660と、プロジェクタ内部を冷却するための冷却ファン670と、プロジェクタ600の全体を制御する制御部680と、を備えている。冷却ファン670を駆動するモータとしては、上述した各種のブラシレスモータを利用することができる。
【0041】
図20は、本発明の適用例によるモータを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。図20(A)は携帯電話700の外観を示しており、図20(B)は、内部構成の例を示している。携帯電話700は、携帯電話700の動作を制御するMPU710と、ファン720と、燃料電池730とを備えている。燃料電池730は、MPU710やファン720に電源を供給する。ファン720は、燃料電池730への空気供給のために携帯電話700の外から内部へ送風するため、或いは、燃料電池730で生成される水分を携帯電話700の内部から外に排出するためのものである。なお、ファン720を図20(C)のようにMPU710の上に配置して、MPU710を冷却するようにしてもよい。ファン720を駆動するモータとしては、上述した各種のブラシレスモータを利用することができる。
【0042】
図21は、本発明の適用例によるモータ/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車800は、前輪にモータ810が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路820と充電池830とが設けられている。モータ810は、充電池830からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモータ810で回生された電力が充電池830に充電される。制御回路820は、モータの駆動と回生とを制御する回路である。このモータ810としては、上述した各種のブラシレスモータを利用することが可能である。
【0043】
図22は、本発明の適用例によるモータを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット900は、第1と第2のアーム910,920と、モータ930とを有している。このモータ930は、被駆動部材としての第2のアーム920を水平回転させる際に使用される。このモータ930としては、上述した各種のブラシレスモータを利用することが可能である。
【0044】
また、これらの技術は、電動モータ、リニアモータ、リニアアクチュエータに応用することができ、上記説明した、適用例、応用例の他、様々な機器に適用することができる。
【0045】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施例に係る2相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。
【図2】電磁コイルにコアを有さない2相ブラシレスモータの断面図である。
【図3】2相ブラシレスモータを軸に平行な線で切って展開し矢印Yに示す方から見た模式図である。
【図4】センサ出力と電磁コイルの逆起電力波形との関係を示す説明図である。
【図5】本実施例のブラシレスモータの正転動作の様子を示す説明図である。
【図6】ブラシレス電気機械の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図7】駆動ドライバ部210の構成を示す回路図である。
【図8】回生制御部220の内部構成を示す回路図である。
【図9】第2の実施例に係る2相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。
【図10】2相ブラシレスモータ100bを軸に平行な線で切って展開し矢印Yに示す方から見た模式図である。
【図11】第3の実施例を模式的に示す説明図である。
【図12】第3の実施例の別の構成例である。
【図13】第3の実施例の別の構成例である。
【図14】第3の実施例の別の構成例である。
【図15】第3の実施例の別の構成例である。
【図16】第3の実施例の別の構成例である。
【図17】第4の実施例に係る2相ブラシレスモータの展開図を示す説明図である。
【図18】第5の実施例に係る3相ブラシレスモータの構成を示す断面図である。
【図19】本発明の適用例によるモータを利用したプロジェクタを示す説明図である。
【図20】本発明の適用例によるモータを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。
【図21】本発明の適用例によるモータ/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図22】本発明の適用例によるモータを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
20、20A、20B…磁石モジュール
21…接続部材
22…境界
30A、30B…電磁コイル
30AE1,30AE2、30BE1、30BE2…コイルエンド
31A、31A1,31A2、31B、31B1、31B2…コイル列
32A、32B…コア
50…ロータ
60…ステータ
80A、80B…磁気センサ
100a…2相ブラシレスモータ
110…回転軸
112…軸受け部
114…コイルバネ
130…ケーシング
140…回路基板
200…駆動信号生成部
210…駆動ドライバ部
220…回生制御部
222…整流回路
224…スイッチングトランジスタ
230…蓄電器
240…蓄電制御部
600…プロジェクタ
610R…光源
640R…液晶ライトバルブ
650…クロスダイクロイックプリズム
660…投写レンズ系
670…冷却ファン
680…制御部
700…携帯電話
720…ファン
730…燃料電池
800…自転車
810…モータ
820…制御回路
830…充電池
900…ロボット
910…第2のアーム
920…第2のアーム
930…モータ
DRVA1、DRVA2…駆動信号
SC…スクリーン
SSA、SSB…センサ出力
X…平面
Y…矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーロータ構造のブラシレス電気機械であって、
回転軸と、
前記回転軸の周りに配置された磁石と、
前記磁石から等距離に配置された複数の電磁コイルと、
を備え、
前記複数の電磁コイルは、前記回転軸の回転方向に並んだコイル列であって、互いに平行なN相(Nは2以上の整数)のコイル列を形成している、ブラシレス電気機械。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレス電気機械において、
前記磁石は、前記コイル列毎に独立して設けられ、
前記N相のコイル列の電磁コイルのコイルエンドが前記磁石と重ならないように配置されている、ブラシレス電気機械。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレス電気機械において、
前記N相のコイル列は、その電磁コイルが同じ位置になるように配置され、
前記磁石は、対応するコイル列毎に位置をずらして配置されている、ブラシレス電気機械。
【請求項4】
請求項1に記載のブラシレス電気機械において、
前記電磁コイルは、全部が前記磁石と重なるように配置されている、ブラシレス電気機械。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、
同相のコイル列を複数備え、
前記回転軸に垂直な面を対称面として前記同相のコイル列が互いに対称となるように配置されている、ブラシレス電気機械。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、
同相のコイル列を複数備え、
同相のコイル列が周期的に並ぶようにN相のコイル列が順番に配置されている、ブラシレス電気機械。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のブラシレス電気機械において、
隣接するコイル列のコイルエンドが並んで配置され、隣接するコイル列のコイルエンドの境界線がジグザグである、ブラシレス電気機械。
【請求項8】
電子機器であって、
請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレス電気機械を備える電子機器。
【請求項9】
請求項8記載の電子機器であって、
前記電子機器はプロジェクタである、電子機器。
【請求項10】
燃料電池使用機器であって、
請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレス電気機械を備える燃料電池使用機器。
【請求項11】
ロボットであって、
請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレス電気機械を備えるロボット。
【請求項12】
移動体であって、
請求項1から請求項7のいずれかに記載のブラシレス電気機械を備える移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−29020(P2010−29020A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189813(P2008−189813)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】