説明

ブラシ及びこれを備えたモータ

【課題】本発明の目的は、分割ブラシの接着剤による絶縁層の厚さが減少若しくは消失した場合であっても、内部導通を確実に防止することができる絶縁性の高い絶縁層を有するブラシ及びこれを備えたモータを提供することにある。
【解決手段】複数の本体導電部片11Aと、少なくとも一つの絶縁層11Bを有するブラシに関する。
絶縁層11Bは、複数の本体導電部片11A,11A間に挟持されるように積層されており、この絶縁層11Bは、絶縁性粉体11dを混入した液状接着剤11cからなり、複数の本体導電部片11A,11Aは絶縁層11Bにより接合されており、この絶縁層11Bは、ブラシ11が整流子4と対向して設置された際に、整流子4との摺接面Tにおいて、隣接する整流子片4a,4a間に形成されたスリットに沿って配設されるよう積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ及びこれを備えたモータに係り、特に、整流時において内部導通を確実に防止することが可能な絶縁性の高いブラシ及びこれを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に直流モータなどでは、ブラシを用いて整流子への整流を行っている。
ブラシは通常ブラシ装置に収められており、このブラシが厚み方向に沿って付勢されて整流子と当接することによって整流が実行される。
ところで、従来のブラシ付き直流モータにおいては、電磁ノイズを低くする技術の開発が望まれている。
特に、自動車用直流モータにおいては、車載電子機器の増加に伴い、様々な周波数帯にて電磁ノイズを低く抑制する必要が生じている。
従来は、コンデンサやコイル単体、或いはそれらの組合せで、所謂フィルタ効果で電磁ノイズを抑制していた。
しかし、フィルタは、特定の周波数帯では効果を発揮するものの、広範囲の周波数帯を一組のフィルタで抑制することは困難であった。
【0003】
そこで、電磁ノイズの発生源であるモータを見直す必要が生じた。
電磁ノイズの一種である放射ノイズは、モータのブラシと整流子との間で整流中に発生する火花と密接な関係を有しており、このため放射ノイズを抑制するためには、ブラシと整流子との間で発生する火花を抑制することが必要である。
このブラシと整流子との間で発生する火花は、整流中に回路を遮断するときに生じるリアクタンス電圧が高い場合に多く発生する。
この火花を抑制することは、整流を改善することにつながるとともにブラシ寿命を延ばすことにもつながるため、多くの火花抑制技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1には、分割刷子に関する技術が開示されている。
特許文献1に記載の分割刷子は、複数個の刷子片からなり、それらの腹合する面には、電気絶縁層が設けられている。
つまり、特許文献1に記載の分割刷子は、複数の刷子片の間に電気絶縁層が挟持された状態に形成されている。
このように構成することにより、腹合面間の絶縁抵抗が大きくさらに刷子片相互が密着することがなく、整流特性が向上する等の効果が奏される。
また、特許文献2にもまた、電刷子に関する技術が開示されている。
特許文献2に記載の電刷子は、整流子と接触する摺動面が低抵抗層及び高抵抗層両者で構成されるよう、低抵抗層片及び高抵抗層片を積層して両者を接着剤で接着することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−055272号公報
【特許文献2】特開2007−049827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1及び特許文献2のような所謂「分割ブラシ」を使用することにより、ブラシと整流子との間で発生する火花を抑制し、整流中に回路を遮断するときに生じるリアクタンス電圧を調整する工夫がなされている。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の技術においては、確かに一定の効果はあるが、火花発生を抑制するレベルが十分ではない。
【0007】
つまり、複数のブラシ片を接合する際には、樹脂溶液(所謂「接着剤」:例えば、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂等の樹脂)を使用するのであるが、接着剤硬化の際、接着剤に用いられる液状の溶剤が減少若しくは無くなることで、その箇所に空隙が生じることとなる。
そして、その空隙のため絶縁性が減少してしまうという問題があった。
また、接着剤硬化の際、収縮が生じることもあり、この収縮のために複数のブラシ片が引き合ってしまい、高い絶縁性を保つことが困難となるという問題が生じていた。
【0008】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、分割ブラシの接着剤による絶縁層の厚さが減少若しくは消失した場合であっても、内部導通を確実に防止することができる絶縁性の高い絶縁層を有するブラシ及びこれを備えたモータを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ブラシの構成に改良を加えることにより良好な整流を実現することが可能なブラシを提供するとともに、電磁ノイズを抑制し、搭載性の良好なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明に係るブラシによれば、複数の本体導電部片と、少なくとも一つの絶縁層を有するブラシであって、前記絶縁層は、複数の前記本体導電部片間に挟持されるように積層されており、前記絶縁層は、絶縁性粉体を混入した液状接着剤からなり、複数の前記本体導電部片は前記絶縁層により接合されており、前記絶縁層は、前記ブラシが整流子と対向して設置された際に、前記整流子との摺接面において、前記整流子を構成している隣接する整流子片間に形成されたスリットに沿って配設されるよう積層されていることにより解決される。
【0010】
このように構成されていることにより、整流中において、ブラシが、隣接する整流子片間に跨る際、整流電流は、絶縁層を通過することができないため、抵抗整流が有効に実行される。
その結果、電磁ノイズの一種である放射ノイズが有効に抑制されるため、電界強度が低くなる。
よって、従来のように、フィルタを使用する必要がなく、部品点数を少なくすることが可能となり、コンパクトに収めることができるため、搭載性が向上する。
また、絶縁層には、絶縁性粉体が混在しているため、液状接着剤による絶縁層の厚さが減少若しくは消失しても、この絶縁性粉体が残り、絶縁性が保持される。
【0011】
このとき具体的には、前記本体導電部片には、銅粉が混合されており、
前記絶縁性粉体の粒径は、前記銅粉の粒径よりも大きいよう構成されていると好適である。
このように構成されていると、絶縁性粉体の量が少ない場合でも、銅通性の銅粉は粉体が複数個連続しないと導通しないため、絶縁度は高くなる。
【0012】
更に、具体的には、前記絶縁層には、前記絶縁性粉体が、前記絶縁層の重量に対して3重量%〜50重量%混合されていると好適である。
また、更に具体的には、前記絶縁層の前記整流子回転方向の幅は、前記ブラシの前記整流子回転方向の幅の0.3%〜15%に形成されていると好適である。
【0013】
また、更に、前記絶縁性粉体は、炭化珪素成分を含有すると好適である。
通常、カーボンブラシの場合、ブラシの主成分として使用されるブラシ粉は黒鉛を含有するが、長時間ブラシを整流子と摺接させると、この黒鉛が整流子の表面に被膜として付着する。
しかし、上記のように構成されていると、炭化珪素は、整流子に付着する黒鉛被膜を切磨する機能を果たすため、整流子表面に黒鉛が被膜として付着することを有効に阻止することが可能となり、電流供給が維持される。
【0014】
更に、本発明に係るモータは、整流子と、請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載のブラシ装置と、を少なくとも備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るブラシは、整流時であっても内部導通を確実に防止する絶縁性の高い絶縁層を備える。
つまり、整流中において、ブラシが、隣接する整流子片間に跨る際、整流電流は、絶縁層を通過することができないため、抵抗整流が有効に実行される。
その結果、電磁ノイズの一種である放射ノイズが有効に抑制されるため、電界強度が低くなる。
また、本発明に係るブラシの絶縁層には、絶縁性粉体が混在しているため、液状接着剤による絶縁層の厚さが少なく若しくは消失しても、この絶縁性粉体が残り、絶縁性が確実に保持される。
よって、本発明によれば、整流中にブラシと整流子との間で生じる火花発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明に係るブラシは、良好な整流を実現することができ、このため電磁ノイズを有効に抑制することが可能となり、特に、自動車用直流モータとして使用する場合等には、車載電磁機器の機能を妨害することなく、搭載性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るブラシ本体を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るブラシ本体の素材構成を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るブラシ本体の素材構成を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るブラシ本体を使用した際の電界強度と従来のブラシを使用した際の電界強度の比を示す棒グラフである。
【図6】他の実施形態に係るブラシ本体の素材構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、整流時であっても内部導通を確実に防止する絶縁性の高い絶縁層を有するブラシ及びこれを備えたモータに関するものである。
【0018】
図1乃至図5は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1はモータの概略構成を示す断面図、図2はブラシ本体を示す斜視図、図3及び図4はブラシ本体の素材構成を示す模式図、図5はブラシ本体を使用した際の電界強度と従来のブラシを使用した際の電界強度を示す棒グラフである。
また、図6は他の実施形態に係るブラシ本体の素材構成を示す模式図である。
【0019】
図1により、本実施形態に係るモータMの構成の一例について説明する。
本実施形態に係るモータMは、ブラシ装置Sを除いて、公知のブラシ付き直流モータの構成を採用したものである。
本実施形態に係るモータMは、図1に示すように、出力軸となるシャフト1と、コイル2が形成された鉄心3と、整流子4と、界磁機構としての磁石5と、ブラシ装置Sと、これらを内部に収納するハウジング6とを主たる構成要素として構成されている。
【0020】
シャフト1は、軸受7を介して回転自在にハウジング6に支持されている。
なお、本実施形態においてはモータMとして一方向回転モータを例示しているため、シャフト1は一方向に回転する構成となる。
シャフト1には鉄心3が固定されており、その周囲には鉄心3の外周を囲むように磁石5が配置されている。
また、シャフト1には整流子4もまた固定されている。
整流子4は、シャフト1と一体的に一方向に回転する円筒状の部材であり、その回転方向に沿って一定間隔毎に配置された複数の整流子片4aを備える。
この整流子4は、回転に伴って、ブラシ装置Sのブラシ本体11と当接する整流子片4aが切り替わることにより、コイル2を流れる電流の向きを切り替える。
【0021】
また、ブラシ装置Sは、整流子4を通じてコイル2に電流を流すものであり、ブラシ本体11と、収納ボックス12と、付勢手段としての付勢バネ13と、図示しない給電用のリード線から給電されるピグテール14とを主たる構成要件として構成されている。
【0022】
本実施形態に係るブラシ本体11は、主成分として銅粉11aを含有した黒鉛(ブラシ粉11b)から構成された略直方体形状の部材である。
このブラシ本体11の構成は、本発明の主要構成であるため、後に詳述する。
ブラシ本体11は、摺接面T側の端部を突出させた状態で、その他部分が収納ボックス12に収納されており、同じく収納ボックス12内に収納された付勢バネ13によって、整流子4側へ向けて付勢される。
【0023】
このように、付勢バネ13が付加する付勢力によって、ブラシ本体11は、その厚み方向(整流子4の径方向に沿う方向)の前端に位置する摺接面Tにて回転状態の整流子4と当接することとなる。
換言すると、整流子4は、その外周面においてブラシ本体11の前端面(摺接面T)に接しながら同面上を摺動することとなる。
【0024】
この結果、ブラシ本体11は、摺接面Tが上記の厚み方向(整流子4の径方向に沿う方向)に沿って後退するように磨耗することになる。
すなわち、ブラシ本体11は、未消費の状態からモータMの利用時間の経過に伴って徐々に厚み方向に磨耗し、ブラシ本体11として適当に機能することができなくなるまで消費される。
【0025】
なお、本実施形態において、ブラシ本体11が消費され始めてから消費され終わるまでの期間(つまり、ブラシ本体11の寿命)は、モータMが使用され始めた時点から、摺接面Tが所定位置(例えば、ピグテール14の接続位置から幾分手前の位置)まで後退した時点までの期間である。
【0026】
図2にブラシ本体11の構成を示す。
本実施形態に係るブラシ本体11は、2個の本体導電部片11Aと、これらに挟持される絶縁層11Bを有して、略直方体形状に形成されている。
これら2個の本体導電部片11Aと絶縁層11Bは、本体導電部片11A→絶縁層11B→本体導電部片11Aの順に整流子4回転方向に沿って積層されている。
【0027】
つまり、絶縁層11Bは、ブラシ本体11が整流子4と対向して設置された際に、整流子4との摺接面Tにおいて、整流子片4a,4a間に形成されるスリットに沿って配設される。
このように構成されているため、整流中において、ブラシ本体11が隣接する整流子片4a,4a間に跨る際、整流電流は、絶縁層11Bを通過することができず、有効に抵抗整流が実行されることとなる。
【0028】
なお、本実施形態においては、絶縁層11Bの幅(整流子4回転方向の距離)は、ブラシ本体11の幅(整流子4回転方向の距離)に対して0.3%〜15%となるように構成されている。
【0029】
なお、本実施形態においては、2個の本体導電部片11Aを同素材のものとして構成しているが、これに限られるものではない。
例えば、絶縁層11Bを挟持する2個の本体導電部片11Aは、抵抗値が異なる素材(高抵抗値ブラシ片と低抵抗値ブラシ片)で構成されていてもよい。
【0030】
図3に、ブラシ本体11の素材構成の模式図を示す。
なお、本図は、ブラシ本体11の素材構成を説明するための模式図であり、各成分の形状やサイズ等は特に化学的に正確なものではない。
本実施形態に係る本体導電部片11Aは、黒鉛11bを主成分とし、銅粉11aが混合されてなるブラシ粉から構成される。つまり、通常のカーボンブラシを構成する素材が採用されている。
なお、機能向上のために、添加剤等を混合してもよい。
【0031】
本実施形態に係る絶縁層11Bは、所謂「接着剤」として使用される接着剤11cを主成分とし、フィラー11dが混合されている。
接着剤としては、液状の合成樹脂が使用されている。
本実施形態においては、接着剤11cとして、エポキシ樹脂が使用されている。
しかし、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、接着剤としての機能を果たす樹脂であればどのようなものでもよく、例えば、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂等の樹脂が使用されていてもよい。
【0032】
フィラー11dは、絶縁性の粉体であり、絶縁層11Bの中に絶縁層11Bの重量に対して3%〜50%(重量比)混合されている。
フィラー11dとしては、シリカ、木粉、フェノール樹脂、ポリエチレン粉体、グラスファイバー粉、グラファイトパウダー等が使用される。
なお、フィラー11dは、絶縁性の物質であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、どのような物質が使用されていてもよい。
【0033】
ただし、フィラー11dとして使用される物質は、本体導電部片11Aに混在している銅粉11aの粒子径よりも大きい粒子径を有する物質が使用される。
このように、フィラー11dの粒子径が銅粉11aの粒子径よりも大きいため、絶縁性粉体のフィラー11dが少ない状態であっても、導電性の高い銅粉11aは複数連続しないと導通しないため、絶縁度は高くなる。
【0034】
図4に、絶縁層11Bの幅(整流子4回転方向の距離)が小さい場合の例を示す。
このような状態は、絶縁層11Bの幅(整流子4回転方向の距離)を小さく形成したときのみならず、接着剤として使用される接着剤11cの溶剤が固化の際若しくは使用時間につれて減少若しくは消失して、絶縁層11Bが収縮した場合にもあらわれる。
【0035】
図4に示すように、絶縁層11Bの幅(整流子4回転方向の距離)を小さい場合や絶縁層11Bが収縮して体積が減少した状態においても、絶縁性粉体であるフィラー11dが存在するため、絶縁性が確実に保たれる。
つまり、2個の本体導電部片11A,11A間の距離が近づいても、絶縁性粉体であるフィラー11dが存在するため、絶縁性が確実に保たれることとなる。
【0036】
図5は、本実施形態に係るブラシ本体11を使用してモータMを稼動した際のUHF帯における電磁ノイズを、従来のブラシ本体を使用した場合と比較したグラフである。
このように、本実施形態に係るブラシ本体11を使用すると、従来のブラシ本体を使用した場合に比して、電磁ノイズが低く抑制されている。
つまり、本実施形態に係るブラシ本体11を使用することにより、モータの電磁ノイズを抑制することが可能となることが示された。
【0037】
図6に他の実施形態に係るブラシ本体11の構成を示す。
本例においては、フィラー11eの成分が上記実施形態と異なるのみで、他の構成は上記実施形態と同様の構成であるため、説明は省略する。
本例においては、フィラー11eとして、炭化珪素若しくは炭化珪素含有成分が使用されている。
炭化珪素は、モータMを長時間回転させた際に、整流子4表面に付着する黒鉛被膜を切磨する機能を果たすことができる。
このため、整流子4表面に黒鉛が付着することを有効に防止し、電流供給力が維持されることとなる。
【0038】
なお、本実施形態においては、絶縁層11Bが1箇所形成されたブラシ本体11を説明したが、これに限られるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、何個形成されていてもよい。
また、本実施形態においては、ブラシ本体11の形状を略直方体形状としたが、これに限られるものではなく、例えば、略円筒形状のように、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、どのような形状であってもよい。
更に、本実施形態においては、ブラシ本体11の整流子4接触面を平面としているが、これに限られるものではなく、例えば、傾斜面、湾曲面等、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、どのような形態のものであってもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態係るブラシ本体11によれば、本体導電部11A,11A間には(ピグテール14を除いて)導通がない。
このため、本実施形態に係るブラシ本体11を使用すると、整流中において、ブラシ本体11が隣接する整流子片4a,4a間に跨る際、整流電流は、絶縁層11Bを通過することができないため、抵抗整流が有効に実行される。
その結果、電磁ノイズの一種である放射ノイズが有効に抑制されるため、電界強度が低くなる。
よって、従来のように、フィルタを使用する必要がなく、部品点数を少なくすることが可能となり、コンパクトに収めることができるため、搭載性が向上する。
【0040】
また、絶縁層11Bを構成する接着剤11cの接着剤による絶縁層の厚さが減少した場合であっても、フィラー11d(11e)が存在するため、絶縁性は有効に保たれるため、公知技術に比して極めて有効な効果を奏する。
本実施形態に係るブラシ本体11は、電磁ノイズを抑制することが可能であるが、簡易な構造であり安価に製造できるため、コスト面等においても非常に有効である。
【符号の説明】
【0041】
1‥シャフト、2‥コイル、3‥鉄心、4‥整流子、4a‥整流子片、
5‥磁石、6‥ハウジング、7‥軸受、
11‥ブラシ本体(ブラシ)、11A‥本体導電部片、11B‥絶縁層、
11a‥銅粉、11b‥黒鉛、11c‥接着剤、11d,11e‥フィラー、
12‥収納ボックス、
13‥付勢バネ、14‥ピグテール、
M‥モータ、S‥ブラシ装置、T‥摺接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の本体導電部片と、少なくとも一つの絶縁層を有するブラシであって、
前記絶縁層は、複数の前記本体導電部片間に挟持されるように積層されており、
前記絶縁層は、絶縁性粉体を混入した液状接着剤からなり、複数の前記本体導電部片は前記絶縁層により接合されており、
前記絶縁層は、前記ブラシが整流子と対向して設置された際に、前記整流子との摺接面において、前記整流子を構成している隣接する整流子片間に形成されたスリットに沿って配設されるよう積層されていることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記本体導電部片には、銅粉が混合されており、
前記絶縁性粉体の粒径は、前記銅粉の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記絶縁層には、前記絶縁性粉体が、前記絶縁層の重量に対して3重量%〜50重量%混合されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項4】
前記絶縁層の前記整流子回転方向の幅は、前記ブラシの前記整流子回転方向の幅の0.3%〜15%に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項5】
前記絶縁性粉体は、炭化珪素成分を含有することを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項6】
整流子と、前記請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載のブラシと、を少なくとも備えたモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34342(P2013−34342A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169970(P2011−169970)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】