説明

ブリケットの製造方法、還元鉄の製造方法、及び亜鉛もしくは鉛の分離方法

【課題】バインダーの使用量と水の使用量を極力減らしても強度が高められるブリケットを製造すること。
【解決手段】酸化鉄原料および/または炭素質物質を粉砕する工程と、酸化鉄原料および炭素質物質を用いて一次粒状物を形成する工程と、さらに複数の一次粒状物を加圧することにより二次粒状物に成型する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉄を含む鉄鉱石やダスト原料を用いた塊成化物(ブリケット)の製造方法に関するものであり、得られた塊成化物から還元鉄を製造する方法、及び亜鉛や鉛等の揮発性金属を分離回収する方法に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
還元鉄を製造するための原料としては、当然のことながら鉄鉱石原料も使用されるが、近年の鉄鉱石原料の需要増加に伴う価格高騰から、製鉄所内で生じる鉄原料を含むダストをリサイクルすることが注目されている。製銑、製鋼過程では、高炉、転炉、溶解炉、電気炉等において吹き上げられた粉状の鉄および酸化鉄を含むダストが集塵機で回収されている。回収された粉末(特許請求の範囲、明細書において「製鋼ダスト」と記載する)は、鉄および酸化鉄を含有するため、鉄原料として用いられる。
【0003】
還元鉄の製造設備の一つである回転炉床炉では、還元反応の均一化のため、酸化金属と炭素質物質を含む原料を塊成化物として供給する必要があり、また塊成化物には一定の強度を持たせることが必要である。ところが炭素質物質を含ませる場合、炭素は比較的低温でも燃焼してしまうため、焼結ペレットや焼結鉱の様に、焼結化によって塊成化物の強度を高める手法は取れない。このため、澱粉や糖蜜などの高価な結合剤(以下、「バインダー」と記載することもある)を使用することにより塊成化物の強度を高めていた。
【0004】
塊成化物を製造する設備としては、ペレット製造設備、ブリケット製造設備のいずれかを用いるのが一般的であり、そのどちらの設備においてもできるだけ均一な大きさでかつ高強度を持った塊成化物を製造する必要がある。しかしながら、主に以下の2つの理由から、微粉状原料の塊成化物を製造することは非常に困難であった。一つめは、微粉のダスト原料は嵩密度が小さく空隙が多いため、強度を持った塊成化物を製造し難いことである。塊成化物の強度が低ければ、圧力により崩壊する畏れがあるために大量に貯蔵することはできないし、搬送中に割れ等も発生する。二つめは、塊成化物の強度を高めるために微粉原材料にバインダーを混合させるが、バインダーを均一に混合することが困難である。何故ならばバインダーは接着剤の機能を有するものであるから粘性を有し、その粘性のために均一な混合が妨げられるのである。またバインダー材料自体が高価なものであるうえに、接着機能を有するため塊成化物の製造又は供給過程(例えば中間ホッパー等)において材料詰まりを発生してしまう原因ともなる。原材料が詰まってしまうと、回転炉床炉等への原料の供給が途絶えたり、突然大量に供給されたりと、還元炉の操業が不安定になってしまう。したがって、バインダーの使用量は極力少なくすることが望まれている。
【0005】
以下、従来知られている微粉のダスト原料のペレット製造方法、ブリケット製造方法について例を挙げて説明する。
【0006】
特許文献1には、同特許文献の図1に示されるように、原料備蓄槽から払い出した原料を混練装置で混練し、酸化金属と炭素を含む粒子を原料として、パン式造粒装置でペレットを製造する方法が知られている。詳細には、複数の原料備蓄ビンから、混合比率を決めて、複数の原料を原料コンベア上に切り出す。原料の粒径、化学成分、および、含有水分の混合比率が決められる。特に還元反応を適切に行うためには酸化金属と炭素の比率が調整される。
また特許文献1の特許請求の範囲には、製鋼ダストを含有する金属酸化物を含み、かつ、炭素含有粉体を含む粉体を、パン式造粒機で球形のペレットを製造するに際して、当該粉体が10μm以下の粒径の粒子を20〜80%含んでいることを特徴とする還元炉向けペレット製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献2では、同特許文献の図1に示されるように製鋼ダストから固形化物を製造する方法が記載されている。同図にみられるように、このシステムでは、鉄鋼生成過程で生じる鉄およびその酸化物を主成分とするダストを、炭素を主成分とする粉体と混ぜ合わせて造粒しペレットとする造粒過程と、この混合造粒体に水を含浸させる水含浸過程と、この水を含浸させたペレットを成形型に入れ加圧成形することで、ブリケットとする固形化過程と、このブリケットを溶融炉の原料として搬送する過程と、前記ダストを前記溶融炉から得て前記固形化過程に至るまでの間に、このダストの亜鉛濃度を濃縮し、この濃縮した状態のダストを脱亜鉛処理する脱亜鉛処理工程を含むものである。さらにこの方法では、成形直前に水を含浸させることにより、混合造粒体の表面を柔らかくし、ブリケット成型時に造粒体の変形を容易とさせ、これにより造粒体同士の接着強度を上げることができる。
【特許文献1】特開2002−206120号公報
【特許文献2】特開2007−270229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、酸化鉄の還元を行う還元炉では均質な還元反応を行う必要があることから、還元炉に供給する塊成化物には大きさの均一性が必要となる。塊成化物の大きさがばらつくと、還元反応が均質にならず、還元鉄の品質が非常に低くなってしまうからである。特許文献1の図1においてペレット篩装置によりペレットを分級することにより、還元炉で要求されるような均一性を保とうとしている。しかし、ペレット篩装置によりペレットの供給効率が悪くなるのは勿論のこと、ペレット篩装置自体のコストデメリットもある。
【0009】
特許文献2の方法ではブリケットを成型している。ブリケットはペレットに比べると均一性は高く、また大きな塊成化物を成型することができる。しかし、ブリケットは圧縮により原料を押し固めるものであるため、通常、上述したようにバインダーを必要とするものである。特許文献2の方法は、できるだけバインダーの使用量を減らすためにブリケットの成型直前に水を含浸させるものであるが、ペレットの集合物の全体にわたって水を均一に含浸させることは実際上難しい。水分が付着しない部分が一部でも残れば、その部分では混合造粒体の表面が柔らかくすることができないため、ブリケット全体での強度が上がらない。また、ブリケット化後、水分の乾燥時間も長くなってしまう。
【0010】
なお、特許文献2においてペレットを集めてさらにブリケット化するのは、小さな豆炭状に造粒する場合に比べて、ある程度大きいために取扱性が良いからであり([0007]段落)、ブリケットの強度をペレット強度よりも更に高くするためではない。
【0011】
本発明は、バインダーの使用量を極力減らしても強度が高められるブリケットを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成し得た本発明のブリケットの製造方法は、酸化鉄原料および/または炭素質物質を粉砕する工程と、酸化鉄原料および炭素質物質を用いて一次粒状物を形成する工程と、さらに複数の一次粒状物を加圧することにより二次粒状物に成型する工程を含むものである。
【0013】
上記ブリケットの製造方法において、一次粒状物が転動造粒、混練造粒、もしくは加圧成型の方法により形成されることが好ましい。
【0014】
上記ブリケットの製造方法において、粉砕工程と一次粒状物の形成工程との間に、酸化鉄原料と炭素質物質とを混合することにより混合原料を準備する工程をさらに含むことが推奨される。
【0015】
上記ブリケットの製造方法において、酸化鉄原料が製鋼ダストを含むことが好ましい。
【0016】
上記ブリケットの製造方法において、酸化鉄原料が、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウムから選択される金属のいずれか1種以上を含有し、該金属を含んだ状態で前記二次粒状物の成型を行うことが好ましい。
【0017】
上記ブリケットの製造方法において、酸化鉄原料が、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウムから選択される1種以上の金属の酸化物、塩化物、もしくは硫化物のいずれか1種以上を合計で10質量%以上含有していることが好ましい。
【0018】
上記ブリケットの製造方法において、酸化鉄原料は、融点が1500℃以下の金属(以下、「揮発性金属」と記載する)の酸化物を含有し、該揮発性金属の酸化物を含んだ状態で二次粒状物の成型を行うことが好ましい。
【0019】
上記ブリケットの製造方法において、一次粒状物に水分を含有させることが好ましい。
【0020】
上記ブリケットの製造方法において、二次粒状物への成型前に一次粒状物を乾燥させることにより、一次粒状物の含有水分量を乾燥前に対して50〜95質量%(以下、単に「%」と記載することがある)にすることが好ましい。
【0021】
上記ブリケットの製造方法に、二次粒状物を乾燥させる工程をさらに追加することが好ましい。
【0022】
上記ブリケットの製造方法において、一次粒状物の体積を、二次粒状物を成型するための型の内容積の1/500以上にすることが好ましい。
【0023】
上記ブリケットの製造方法により得られたブリケットを還元することにより、還元鉄を製造することができる。
【0024】
上記還元鉄の製造方法において、還元工程が、回転炉床炉、キルン式炉、もしくは電気式加熱還元溶解炉を用いて行われる態様とすることが好ましい。
【0025】
上記ブリケットの製造方法により得られたブリケットであって酸化亜鉛を含有するものを、加熱、還元により亜鉛を揮発させる工程を追加することにより、亜鉛を分離することができる。
【0026】
上記亜鉛の分離方法において、加熱、還元する工程が、回転炉床炉、キルン式炉、もしくは電気式加熱還元溶解炉を用いて行われる態様とすることが好ましい。
【0027】
上記ブリケットの製造方法により得られたブリケットであって酸化鉛を含有するものを加熱、もしくは加熱、還元により鉛を揮発させる工程を追加することにより、鉛を分離することができる。
【0028】
上記鉛の分離方法において、加熱、もしくは加熱、還元する工程が、回転炉床炉、キルン式炉、もしくは電気式加熱還元溶解炉を用いて行われる態様とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、鉄鉱石や製鋼ダストなどの酸化鉄原料および/または炭素質物質を粉砕した原料を用い、かつ、造粒を二段階で行ったことによって、粒子同士の間に働く分子間力により粒子同士の結合力が高くなり、ブリケットの成型前に糖蜜等のバインダーや水を使用する必要はなく、設備を特段に複雑化することなく高強度のブリケットを効率よく製造することができ、かつ、後述するようにブリケットの連続的製造を可能としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
1.概要説明
(1)酸化鉄原料の粉砕
本発明者らは、これまで鉄鉱石や製鋼ダスト等の酸化鉄を原料として含む塊成化物の強度を向上させるために、鉄鉱石や製鋼ダスト、炭素質物質、糖蜜等のバインダーの選定及び配合量、水分の配合量、水分配合のタイミング、塊成化物の乾燥度等、様々な角度から検討し続けてきた。その結果、酸化鉄原料または粗い炭素質物質(好ましくはその両方)をボールミルやロールクラッシャ等の粉砕機により粉砕すると、粒子が細かくなるほど粒子1個当たりの質量が小さくなるので、粒子同士が付着凝集しやすくなり、一次粒状物、二次粒状物の2段階の造粒工程を経ることにより、最終的な塊成化物の強度が非常に向上することを突き止め、本発明を完成した。
【0031】
(2)酸化亜鉛等の含有
さらに本発明者らは、上記のように原料の粉砕を行うことを前提とした上で、酸化亜鉛、酸化鉛等、絵の具等の顔料として使用されている物質を、ブリケットの原料である、製鋼ダストを含有する酸化鉄原料の粉末に含有させておくことにより、これらが酸化鉄原料の結合剤として働き、バインダーや水分を混合しなくても成型されたブリケットの強度が向上するという知見を得た。
【0032】
また、ペレットを製造する造粒機としては、通常、パン型ペレタイザまたはドラム型ペレタイザが用いられる。いずれの造粒機を用いても、その造粒原理から、得られるペレットは比較的広い粒度分布を有する。特許文献1に記載されているようにパン式造粒装置によりペレットを形成した場合には、形成されたペレットを予め定めた複数の粒径範囲に分級する装置が必要となることが通常であった。しかし本発明者らが鋭意検討した結果、ペレットを形成した後さらにペレットを押圧してブリケット化すれば、大きなペレット粒の隙間に小さなペレット粒が入り込み、ペレット径にばらつきがあることがむしろブリケットの密度の増大に寄与することを突き止め、本発明を完成した。
【0033】
2.より詳細な説明
(1)酸化鉄原料の粉砕
本発明のブリケットの製造方法は、鉄鉱石や製鋼ダスト等の酸化鉄原料、或いは炭素質物質を粉砕機により粉砕する工程を有しており、その後、酸化鉄原料および炭素質物質を用いて一次粒状物を形成する工程と、さらに複数の一次粒状物を加圧することにより二次粒状物に成型する工程を含むものであるので、まず、酸化鉄原料を粉砕機により粉砕することについて説明する。以降の説明においては、酸化鉄原料の一例としての製鋼ダスト原料を用いた場合を代表的に説明する。一次粒状物および二次粒状物の製造については後述する。
【0034】
製鋼ダストおよび/または炭素質物質の粉砕には、原料の粒子を細かく砕く機能を有する限りどのような粉砕機を用いてもよいが、例えばボールミルやロールクラッシャ、ハンマミル、チューブミル等の粉砕機を用いることができる。粉砕機による粉砕の対象は、製鋼ダストまたは炭素質物質のいずれでもよい。
【0035】
原料の粒子を細かくすれば塊成化物の強度が向上することは従来から一般的に知られている。しかし原料の粒子が細かい場合、原料の内部に入り込む気体量が多くなるために原料の嵩密度が低くなりやすい。原料の嵩密度の低下は成形物の見かけ密度、ひいては成形物の強度の低下に繋がる。これを防止するために、従来は、冷間等方加圧法を用いた超高圧機を使用せざるを得なかった。冷間等方加圧法を用いた超高圧機は、いわゆるバッチ式の生産設備であるために連続操業に対応せず、生産効率が頭打ちとなり大量生産には不向きであった。本発明では粉砕機により粉砕した製鋼ダスト等の原料を2段階に分けて造粒することにより、連続操業によるスピードアップを実現したものである。
【0036】
その他、粉砕された原料を用いることにより塊成化物の強度が向上する他の原因(分子間力の向上以外の原因)として、粉砕された微粒子は球状ではなく、凹凸の多い形状を有するため、アンカー効果(絡み合い効果)もあり、僅かな量の水分或いはバインダーの配合によって粒子同士の結着が強固なものになるものと考えられる。
【0037】
(2)酸化亜鉛等の含有
上述のように原料の粉砕を行うことを前提とした上で、更に改良された本発明のブリケットの製造方法は、(2−1)酸化亜鉛、酸化鉛等の揮発性金属を含む粉末状の原料を用いて一次粒状物を形成する工程と、(2−2)揮発性金属を含んだままの状態で、複数の一次粒状物を加圧することにより二次粒状物に成型する工程とを含むものである。
【0038】
一次粒状物の形成方法には、例えば転動造粒による方法、混練造粒による方法、もしくは加圧成型による方法があるが、ここでは転動造粒により形成された一次粒状物を「ペレット」と呼び、加圧成型した二次粒状物を「ブリケット」と呼ぶことがある。以下、(2−1)ペレット形成工程、(2−2)ブリケット成型工程についての説明を中心としながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るプロセス図であり、図2は、このプロセスを実施するための設備の一例を示す図である。
【0039】
(造粒プロセス)
図1に示すように、(ア)製鋼ダスト、(イ)炭素質物質、及び必要に応じて(ウ)揮発性金属(例えば亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウム等)を含む酸化物等、もしくはそれらの錯体や錯塩等、(エ)バインダー、(オ)水分をそれぞれ配合して得られる混合原料から(2−1)ペレットを形成する。次に、必要に応じて更に(カ)水分を加えた後、揮発性金属を含んだままの状態で(2−2)加圧圧縮によりブリケットを成型する。更に、必要に応じて(2−3)ブリケットを乾燥する。その後、(2−4)得られたブリケットを還元炉に供給すれば還元鉄を得ることができるし、(2−5)供給されたブリケットが亜鉛および/または鉛を含むものである場合は、還元炉での加熱還元によりブリケットから亜鉛および/または鉛を回収することができる。
【0040】
(ア)製鋼ダスト
製鋼ダストには酸化鉄が含まれるため、成型された酸化鉄のブリケットを還元炉で還元することにより還元鉄を製造することができる。製鋼ダストとしては、高炉、溶鋼炉、電炉等から一度揮発した後にガス中で固化するダストなど様々な発生源・形態のものを使用できる。
【0041】
(イ)炭素質物質
成型されたブリケットを移動型還元炉、例えば回転炉床炉に供給して酸化鉄を還元する場合には、還元反応に必要な還元剤をペレットの形成段階で混合させる。還元剤として例えば石炭、褐炭、無煙炭、コークス粉、炭材を含む製鋼ダスト、プラスチック、木材粉等の炭素含有物質を用いることができる。ブリケットの強度保持の観点から一般的には揮発分の少ない還元剤を使用することが好まれるが、本発明のブリケットの製造方法によればブリケットの強度が高くなるため、揮発分の多い石炭でも使用可能となる。
【0042】
また、還元剤以外に溶解炉で必要な調整剤(石灰、ドロマイトなど)を事前混合する場合にも本発明の方法は有効である。
【0043】
(ウ)揮発性金属(酸化亜鉛等)
本発明はブリケットの強度を向上させることを目的として、上述したように製鋼ダストおよび/または炭素質物質を粉砕するものであるが、ブリケットの強度を一層向上させるために、混合原料に融点が1500℃以下である揮発性金属を含有させてもよい。絵の具等の顔料にも用いられている酸化亜鉛、酸化鉛等の揮発性金属を原料に含有させておくことにより、これらが製鋼ダスト等の結合剤として働き、バインダーや水分を混合しなくても成型されたブリケットの強度が向上する。ブリケットの強度が向上すれば様々な効果をもたらす。例えば、ブリケットを還元する場合には、その還元工程においてもブリケットが粉化し難いため、酸化鉄の還元率(還元鉄の生成率)が向上する。また、ブリケットに含まれる亜鉛や鉛等の揮発性金属を回収する場合には、その回収率や純度も向上する。さらに、ペレットの造粒の際に材料の混合と脱気が促進されるため、混合原料のペレット化において、練り機能のある高価な混合機を必要としない。
【0044】
以上の理由により、本発明では、混合材料に揮発性金属を含有させることが好ましい。ダスト源の種類によっても量は異なるが、上記の製鋼ダストには通常、亜鉛メッキ鋼等に由来する酸化亜鉛等の金属を含んでいる。
【0045】
また、揮発性金属の合計含有量を適切に調節すれば、一層確実な結合作用が発揮される。具体的な調節方法であるが、上述の通りダスト源の種類によって含有している酸化亜鉛の濃度は異なるため、ダスト源の異なる製鋼ダストを適量混合することにより酸化亜鉛、酸化鉛等の揮発性金属の合計含有量を調節することが可能である。揮発性金属の合計含有量は、例えば10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上にする。一方、揮発性金属の合計含有量に特に制限はないが、工業的に使用し得る範囲を考慮すると、例えば60質量%以下、より好ましくは50質量%以下にする。
【0046】
(エ)バインダー
ペレットの強度向上のため、必要により適量の澱粉や糖蜜などのバインダーを混合させてもよい。
【0047】
(オ)水分(ペレット化前、ペレット化工程中)
ペレットの強度向上のため、必要により適量の水分を混合させてもよい。ペレット化前、ペレット化工程中の段階では、比較的容易に水分を均一に混合することができる。また、バインダーの使用量削減の効果もある。
【0048】
(カ)水分(ブリケット化前)
本発明では、製鋼ダスト等の原料粒子の粉砕を行うことから、粒子同士の分子間力が強化されるため、基本的にはブリケット化前に水分を添加する必要はない。しかし、混合使用する炭素質物質の量や種類に応じて補助的に水分を加えることはもちろん実施し得る態様の一つである。
【0049】
ブリケットの乾燥は本発明の必須要件ではないが、乾燥によりブリケットの強度を一層高めることができる。高強度化によりブリケット成型工程後の崩壊による粉化を防止することができ、また乾燥により表面の粘着性を抑えることもできるため、ビンやパイル等の貯蔵庫にて、中間製品であるブリケットを多量に蓄えておくことができる。乾燥手法は、加熱乾燥、通気乾燥、自然乾燥など方法は問わないが、ブリケット内に炭素が含まれる場合には、炭素が自然発火しない温度にしておくことが重要である。
【0050】
以上、本発明のブリケットの製造方法について説明したが、ブリケットへの成型前にペレットを乾燥させることが望ましい。ペレットの表面が乾燥していれば、ペレットがブリケット製造装置に供給される際に装置内に付着し難くなるからである。乾燥方法としては、強制乾燥させるか、或いは自然乾燥(例えば4時間、好ましくは1日以上)させることが考えられる。なお、ペレットの表面が乾燥してもブリケットの成型時にはペレットの内部に存在する水分が全体に分散されるため、ブリケットの強度向上に寄与する。乾燥の程度としては、ペレットの含有水分量を乾燥前に対して50〜95%にすることが望ましい。95%以下としたのは、ブリケット製造装置への付着防止効果を有効に得るためであり、90%以下とすることがより好ましい。一方、50%以上としたのはブリケットの強度をある程度保つためであり、60%以上とすることがより好ましい。乾燥の程度を表す指標として用いたペレット含有水分量は、ペレットの表面や内部といった一部分を測定するものではなく、ペレット全体の含有水分量を測定するものとする。
【0051】
(設備例)
次に、図2に基づき本発明の実施の形態に係る設備例について説明する。下記の設備はあくまで一例であり、本発明のブリケットの製造方法が下記設備の機能により限定されるものではない。
【0052】
図2に示すように、3つの貯蔵庫1には、製鋼ダスト、還元剤である炭素質物質、バインダーがそれぞれ貯蔵されている。貯蔵庫1から排出された各材料は、ミキサー2で混合された後、転動造粒機であるパン式造粒装置3に供給される。ここで、製鋼ダストおよび/または炭素質物質は、ボールミルやロールクラッシャ等の粉砕機により粉砕されたものを使用する。粉砕機の配置は、原料が貯蔵庫1に貯蔵される前であってもよいし、貯蔵庫1から排出された後、ミキサー2に供給される前であってもよい。
【0053】
パン式造粒装置3は、例えば特許文献1にも記載されているように、中華鍋の形状をした直径が2〜6mの回転するパンからなるものである。パンは約45度傾斜しており、この中を、水分を含んだ製鋼ダストや還元剤が転動し、生成した核の周りに新たな粉体材料がまぶされながらペレットが成長していく。十分に成長したペレットは自重でパンから出てくる。
【0054】
ペレット状となった材料は、ブリケット装置4に挿入される。ブリケット装置4では、凹部を有する2つのローラーによってペレット材料が加圧圧縮されることにより固形化(ブリケット化)され、順次ブリケットとして排出される。
【0055】
なお、ペレット等の一次粒状物の体積が、ブリケットを成型するための型(通常、「ポケット」と呼ばれている)の内容積の1/500以上であることが好ましい。1/500未満になると、ブリケットとポケット内壁との接触面積が大き過ぎ、ポケット内壁への付着が多くなってしまうためである。ブリケット体積の上限は特に制限されないが、実用的にはポケットの内容積以下である。
【0056】
このブリケット装置4に挿入されるペレットは、次の2つの特徴を有する。
(i)酸化亜鉛、酸化鉛等の揮発性金属を含んだ状態で
ペレットは、酸化亜鉛、酸化鉛等の揮発性金属を含んだ状態のままでブリケット装置4に挿入される。したがって、揮発性金属の結合作用により生成されるブリケットの強度がより一層向上する。これにより、バインダーの使用量を削減することが可能である。バインダー使用量の削減は、中間ホッパー等、設備内壁への材料付着を防止することに繋がる。また、製鋼ダストを含有する金属酸化物に炭素質物質等の還元剤を配合する場合にはブリケットの強度が低下しやすいため、酸化亜鉛等の含有効果により強度を向上することができる本発明の方法が特に有用である。
【0057】
(ii)造粒されたペレットのままで
本発明の好ましい実施態様として、造粒されたペレットをその大きさにより分級することなく造粒(ペレット化)したままでブリケット装置4に挿入することが推奨される。上述したようにペレットには粒径にかなりのばらつきが存在しているため、通常は、ペレット篩装置を用いて粒径を均一なものにする。本実施の形態における粒径のばらつきが大きいペレットの集合体では、大きなペレットの隙間に小さなペレットが入り込み、嵩密度が大きく空隙の少ない状態のものである。このようなペレットの集合体を加圧圧縮する(ブリケット化する)ことにより、嵩密度が高く強度の高いブリケットを得ることができる。また上記のようにペレット篩装置を設置する必要がなく、しかも分級に伴って不要となるペレットをリサイクルする設備を設ける必要もなくなる。
【0058】
以上のように成型されたブリケットは、乾燥機5により水分を蒸発させた後に回転炉床炉6に投入され、炉床上で加熱されることにより、還元剤(炭素)の働きで還元鉄(金属鉄)が生成される。回転炉床炉6は、バーナー7により加熱されている。回転炉床炉6での加熱により還元した後、気化された亜鉛または鉛はダスト回収装置8(例えば、バグフィルターを装備するもの)により回収され、亜鉛原料または鉛原料としてリサイクルされる。残りのガスは排気ファン9により排気される。排気経路の途中には熱交換器10が設けられており、乾燥機5及びバーナー7に供給される熱風の熱源として有効利用されている。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係るプロセス図である。
【図2】同プロセスを実施するための設備例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 貯蔵庫
2 ミキサー
3 パン式造粒装置
4 ブリケット装置
5 乾燥機
6 回転炉床炉
7 バーナー
8 ダスト回収装置
9 排気ファン
10 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄原料および/または炭素質物質を粉砕する工程と、酸化鉄原料および炭素質物質を用いて一次粒状物を形成する工程と、さらに複数の一次粒状物を加圧することにより二次粒状物に成型する工程を含むブリケットの製造方法。
【請求項2】
前記一次粒状物が転動造粒、混練造粒、もしくは加圧成型の方法により形成されるものである請求項1に記載のブリケットの製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程と前記一次粒状物の形成工程との間に、前記酸化鉄原料と前記炭素質物質とを混合することにより混合原料を準備する工程をさらに含む請求項1または2に記載のブリケットの製造方法。
【請求項4】
前記酸化鉄原料が製鋼ダストを含む請求項1〜3のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
【請求項5】
前記酸化鉄原料が、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウムから選択される金属のいずれか1種以上を含有し、該金属を含んだ状態で前記二次粒状物の成型を行う請求項1〜4のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
【請求項6】
前記酸化鉄原料が、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウムから選択される1種以上の金属の酸化物、塩化物、もしくは硫化物のいずれか1種以上を合計で10質量%以上含有する請求項5に記載のブリケットの製造方法。
【請求項7】
前記酸化鉄原料は、融点が1500℃以下の金属(以下、「揮発性金属」と記載する)の酸化物を含有し、該揮発性金属の酸化物を含んだ状態で前記二次粒状物の成型を行う請求項1〜4のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
【請求項8】
前記一次粒状物に水分を含有させる請求項1〜7のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
【請求項9】
前記二次粒状物への成型前に前記一次粒状物を乾燥させることにより、前記一次粒状物の含有水分量を乾燥前に対して50〜95質量%にする請求項8に記載のブリケットの製造方法。
【請求項10】
前記二次粒状物を乾燥させる工程を有する請求項8または9に記載のブリケットの製造方法。
【請求項11】
前記一次粒状物の体積が、前記二次粒状物を成型するための型の内容積の1/500以上である、請求項1〜10のいずれかに記載のブリケットの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載された方法により製造されたブリケットを還元する工程を含む還元鉄の製造方法。
【請求項13】
前記還元工程が、回転炉床炉、キルン式炉、もしくは電気式加熱還元溶解炉を用いて行われる請求項12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載された方法により製造されたブリケットであって酸化亜鉛を含有するものを加熱、還元により亜鉛を揮発させる工程を含む亜鉛の分離方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載された方法により製造されたブリケットであって酸化鉛を含有するものを加熱、もしくは加熱、還元により鉛を揮発させる工程を含む鉛の分離方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−53376(P2010−53376A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217126(P2008−217126)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】