説明

ブリスク型ロータホイール翼端の製造方法

【課題】航空機用ガスタービンのコンプレッサロータ翼端の製造方法を提供する。
【解決手段】ブリスク型ロータホイール、航空機用ガスタービン又は工業用ガスタービン用多段コンプレッサロータ1の翼端2を最終機械加工する方法により、固定治具内に固定されるロータホイール又は多段コンプレッサロータの翼端は円錐形カッタ5によりブレード3毎、段4毎に機械加工され、円錐形カッタの刃先7はロータホイール又はコンプレッサロータの外表面に対し正接するよう配向され、翼端上で原則的に翼端の中心線に沿って誘導され、切削力は工具の軸11に垂直かつブレードの最も剛性の高い方向、すなわちブレード断面の中心線および中心線から伸長する垂直軸に作用する。翼端における円錐形カッタの切断動作、力作用は、各ブレードの翼端端部を幾何学的に正しく製造可能であり、ブレードの変形や寸法誤差、時間を要し、高コストな減衰手段の組立、分解作業が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブリスク型ロータホイール翼端の製造方法に関し、詳細には航空機用ガスタービンのコンプレッサロータ翼端の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ブレードがロータディスクに取付けられる従来のロータホイールの翼端は、ロータを高速で回転して研削することにより、遠心力がブレードを外側へ移動させ、砥石車に対して減衰しながら配置させることにより製造されることが公知である。
【0003】
翼端の研削は、航空機用ガスタービン用コンプレッサと一体形成されたロータもしくはロータドラムを加工するものであるが、ブレードはブレードに発生する振動により大きい負荷を受け、更に、砥石車が発生する力の影響により緩む可能性があるため、難しい機械加工である。これにより、ブレードの耐用年数および寸法精度が影響を受ける。ブリスクブレードの振動が原因の不都合を防止するため、ブレード間に弾性の減衰要素を設けるか、もしくはブレードをエラストマ要素により封止するか、もしくはブレード間の空間を鋳込み処理する。上述のような振動減衰方法に伴う大きい労力に加えて、研削時に固定されるブレードを解放する際、好ましくない変形および寸法誤差が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
したがって本発明の目的は、高価な減衰方法を備えることなくブレードの高寸法精度および明確な翼端形状を保証する、ガスタービンエンジンのコンプレッサ用ブリスク型ロータの翼端を機械加工する方法を提供することである。
【0005】
本発明の詳細な目的は、本発明の請求項1に記載の特性に基づく方法により上述の問題を解決することである。本発明の効果的な変形例は従属請求項より明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は本質的に、ブリスク型ロータホイール、詳細には航空機用ガスタービンもしくは工業用ガスタービン用の多段コンプレッサロータ(コンプレッサドラム)の翼端を最終機械加工する方法であって、クランピング固定具内に固定されるロータホイールもしくは多段コンプレッサロータの翼端は円錐形カッタによりブレード毎および段毎に機械加工され、円錐形カッタの刃先はロータホイールもしくはコンプレッサロータの外表面に対して正接するよう配向され、かつ翼端上で原則的に翼端の中心線に沿って誘導され、切削力は工具の軸に垂直かつブレードの最も剛性の高い方向、すなわちブレード断面の中心線および中心線から伸長する垂直軸に作用する方法を提供する。翼端における円錐形カッタの切断動作および力作用は、各ブレードを振動させることなく翼端端部を幾何学的に正しく製造可能なようになっており、これにより、ブレードの変形および寸法誤差の原因となる、時間を要し、かつ高コストな減衰手段の組立作業および分解作業が不要となる。
【0007】
ブレード形状は、ブレード厚さおよび中心線に対する工具通路に依存して線形状、斜面形状もしくは切子面を有してもよい。
【0008】
本発明の実施の形態において、円錐形カッタの先端角は30°から150°、ねじれ角は0°から60°である。
【0009】
本発明の更なる変形例において、翼端の機械加工は冷却潤滑剤を用いて実行される。
【0010】
本発明による方法の他の実施の形態において、ロータホイールもしくはコンプレッサロータが固定されると、まず加工材料の位置および零点位置が計測装置により決定され、その後、全ての翼端が順次粗フライス前加工され、その後の寸法の再検査および補正値の決定に基づき、最終フライス加工され、その後、検査工程が実行される。
【0011】
本発明の他の実施の形態において、ロータホイールもしくはコンプレッサロータが固定されると、まず加工材料の位置および零点位置が計測装置により決定され、その後、翼端が粗フライス加工され、寸法検査および補正値決定に基づき、当該翼端は最終加工され、その後、検査工程が実行される。その後、残りのブレードが同様に加工される。
【0012】
必要に応じて、最終フライス加工および寸法の再検査は任意の最終寸法が得られるまで繰り返し実行される。
【0013】
好ましい実施の形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、翼端を円錐形カッタにより機械加工する過程における、コンプレッサロータの部分図である。
【図2】図2は、段における各ブレードの拡大平面図である。
【図3】図3は、3個の異なるブレード形状の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、段4のブレード3の翼端2を円錐形カッタ5および冷却潤滑剤を使用した5軸フライス加工により機械加工する過程における、航空機用ガスタービンのブリスク型コンプレッサロータ1の部分図を示す。円錐形カッタ5の先端角は30°から150°であり、ねじれ角は0°から60°である。コンプレッサドラムを固定治具内に固定すると、コンプレッサドラムの位置および零点位置は工作機械内で光学計測装置により直接決定される。その後、翼端2は粗フライス加工され、その後、寸法的に再検査され、次の連続して行われる最終フライス加工のための補正値が翼端2の各々に対して決定される。機械加工時、円錐形カッタ5は、刃先6がコンプレッサロータ1の段4の各々の外表面に常に正接するよう誘導される。(コンプレッサロータの外表面に正接する投影面から分かる通り、工具の軸は通常の方向に配向される。)最終フライス加工時においては、翼端直径が寸法的に再検査され、必要に応じて、最終フライス加工およびその後の寸法検査が繰り返し実行される。
【0016】
フライス加工は通常、図2に示す翼端2の中心線7に沿って実行され、その際、切削力は工具の軸11に対して常に垂直かつブレード3の最も剛性の高い方向に作用する。この場合、図3aに示す平面形状もしくは線形状の翼端形状8が得られる。また、工具通路を中心線7から多少補正することにより、斜面形状を有する(図3b)翼端形状9もしくは切子面を有する(図3c)翼端形状10もそれぞれ製作可能である。
【0017】
上述したように、粗フライス加工および最終フライス加工は、前フライス加工した後、段全体もしくは各段のブレード毎に最終フライス加工する等、段4の各々において完結工程として実行される。新規の製造に加えて、コンプレッサドラムの各段もしくは各ブレードの補修もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0018】
上述の方法は、減衰装置もしくは鋳込み減衰手段が不要となるため、従来の研削加工に比べて短時間および省コストである。ターニングフライス加工センタにおいて、基準面、基準直径および翼端直径が1つの固定手順で形成可能なため、寸法精度を向上し、処理時間を更に減少することが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1 コンプレッサロータ、コンプレッサドラム
2 翼端
3 ブレード
4 段、コンプレッサ段
5 円錐形カッタ
6 工具刃先
7 2の中心線
8 線状翼端形状
9 斜面を有する翼端形状
10 切子面を有する翼端形状
11 工具の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスク型ロータホイール、詳細には航空機用ガスタービン用の多段コンプレッサロータ(1)の翼端の製造方法であって、固定治具内に固定されるロータホイールもしくはコンプレッサロータ(1)の翼端(2)は円錐形カッタ(5)により機械加工され、
前記円錐形カッタ(5)の刃先(6)は前記ロータホイールもしくは前記コンプレッサロータ(1)の外表面に対して正接に配向され、かつ前記翼端(2)上で原則的に前記翼端(2)の中心線(7)に沿って誘導され、
切削力は前記中心線(7)および前記中心線(7)に垂直な軸に沿って、工具の軸(11)に対して垂直かつ前記ブレード(3)の最も剛性の高い方向に作用することを特徴とする方法。
【請求項2】
ブレード形状は、ブレード厚さおよび前記中心線(7)に対する工具通路に依存して線形状、斜面形状もしくは切子面を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
円錐形カッタ(5)の先端角は30°から150°、ねじれ角は0°から60°であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
翼端の機械加工は冷却潤滑剤を用いて実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ロータホイールもしくは前記コンプレッサロータが固定されると、まず加工材料の位置および零点位置が計測装置により決定され、その後、全ての前記翼端(2)が順次粗フライス前加工され、その後実行される寸法の再検査および補正値の決定に基づき最終フライス加工され、その後、更なる検査工程が実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータホイールもしくは前記コンプレッサロータが固定されると、まず加工材料の位置および零点位置が計測装置により決定され、その後、翼端が粗フライス加工され、寸法検査および補正値決定に基づき、当該翼端は最終加工され、その後、検査工程が実行され、その後、残りのブレードが同様に加工されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
最終フライス加工および寸法の再検査は、必要に応じて、任意の最終寸法が得られるまで繰り返し実行されることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180877(P2010−180877A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2666(P2010−2666)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(505421788)ロールスロイス ドイチランド リミテッド ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Rolls−Royce Deutschland Ltd & Co KG
【住所又は居所原語表記】Eschenweg 11,15827 Blankenfelde−Mahlow,Germany
【Fターム(参考)】