説明

ブリモニジンおよびチモロールの組成物

ブリモニジンおよびチモロールを含有する組成物を開示する。それに関する方法および医薬をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明において、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜15.8mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である組成物を開示する。
また、本発明において、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜16mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である組成物も開示する。
本発明の組成物は、緑内障を処置するため、または上昇した眼圧を低下するために有用である。
【0002】
本発明において、哺乳動物の眼への局所投与により緑内障または高眼圧を処置するのに有用な医薬であって、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜15.8mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である医薬も開示する。
【0003】
本発明において、哺乳動物の眼に組成物を局所投与することを含んで成る、緑内障または高眼圧の処置に有用な方法であって、組成物は、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜15.8mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である方法も開示する。
【0004】
本発明において、緑内障または高眼圧の処置に有用な医薬の製造における組成物の使用であって、組成物は、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜15.8mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である使用をも開示する。
【0005】
本発明において、組成物、該組成物の液滴をディスペンスする容器、および該組成物を個体の眼に局所投与するための指示書を含んで成るキットであって、組成物は、約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜15.8mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5であるキットも開示する。
【0006】
ブリモニジンは下記式で示される化合物である。ブリモニジンは酒石酸塩の形態で、Alphagan(登録商標)(0.2%酒石酸ブリモニジン)またはAlphagan P(登録商標)(0.15%酒石酸ブリモニジン)として、緑内障または高眼圧処置用にAllengan, Inc.から市販されている。しかし、本発明の開示のためには、「ブリモニジン」は、酒石酸塩に限らないいずれのブリモニジン塩をも意味し、また遊離塩基をも意味する。
【化1】

【0007】
ある組成物は酒石酸ブリモニジンを含有する。
4.5M酒石酸ブリモニジン濃度は0.2%酒石酸ブリモニジンよりも低い。
別のある組成物においては、ブリモニジン濃度が約2〜3.5mMである。
別のある組成物においては、ブリモニジン濃度が約3.4mMである。
別のある組成物においては、ブリモニジン濃度が約2.26mMである。
【0008】
チモロールは下記式で示される化合物である。チモロールは概ね、マレイン酸塩の濃度0.5%または0.25%の溶液として、複数の販売元から市販されている。しかし、本発明の開示のためには、「チモロール」は、マレイン酸塩に限らないいずれのチモロール塩をも意味し、また遊離塩基をも意味する。

【0009】
ある組成物においては、チモロール濃度が約15.8mMまたは約7.9mMである。
別のある組成物においては、チモロール濃度が約7〜15.8mMである。
【0010】
略号「mM」は、当分野で一般に認識されているように、ミリモル濃度、すなわち10−3Mを意味する。均一な液体ではない液体、例えばエマルジョンの場合は、ミリモル濃度は、化合物のミリモル数を液体体積(リットル)で除した値を包含すると理解される。液体体積は、油相および水相のすべてを含む液体全体の体積である。
【0011】
理論による制限を意図するものではないが、本発明者は、マレイン酸チモロール0.5%および酒石酸ブリモニジン0.2%を含有する組成物はpH6.9で充分に安定でないことを見出した。該組成物を通常の条件下に貯蔵および/または輸送した場合、何ヶ月もの間に1種またはそれ以上の新たに生じた不純物が組成物中に見出された。そのような不純物は、組成物の有効な貯蔵寿命を著しく短縮しうるので問題となりうる。理論によるいかなる制限も意図するものではないが、マレイン酸チモロールおよびブリモニジンを含有する組成物は、pH7またはそれ以上で顕著により安定でありうると考えられる。また、pH範囲7〜8.5においては、pHを少し高めるだけでも組成物の安定性に実質的な影響が及びうると考えられる。したがって、本発明の配合物は、組成物の貯蔵寿命を改善すると考えられるので、実質的により有用である。
【0012】
ある組成物においては、pHが約7.4〜8.5である。
別のある組成物においては、pHが約7.8〜8.5である。
他の一態様においては、組成物は、酒石酸ブリモニジン約0.2重量%およびチモロール約0.5重量%を含有する組成物ではない。
【0013】
眼に局所投与できるように、眼科学的に許容しうる液体を調製する。快適性を可能な限り高めるべきであるが、製剤の都合上(例えば薬物安定性の都合上)、快適性を最適にはできないこともありうる。快適性を最大限にし得ない場合には、液体を、患者にとって眼への局所使用に忍容性となるように調製すべきである。さらに、眼科学的に許容しうる液体は、単回使用用に包装するか、または複数回の使用にわたって汚染を防止するように保存剤を含有すべきである。
【0014】
眼科学的適用のための溶液または医薬はしばしば、主な賦形剤として生理食塩液を用いて調製する。眼用溶液はしばしば、適切な緩衝系によって快適なpHに維持する。そのような製剤は、従来の薬学的に許容しうる保存剤、安定剤および界面活性剤をも含有しうる。
【0015】
得られる製剤が眼科学的に許容しうる限り、pH調節のためにどのような緩衝剤および手段を用いてもよい。したがって、緩衝剤は、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤およびホウ酸緩衝剤を包含するが、それらに限定されない。製剤のpHを調節するのに、必要に応じて酸または塩基を使用しうる。
【0016】
本発明が開示する医薬組成物中に使用しうる保存剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、および硝酸フェニル水銀を包含するが、それらに限定されない。
【0017】
ある組成物は、与えられたpHでブリモニジンの溶解性を向上するのに有効な量の溶解性向上成分(SEC)を含有する。そのようなSECはアニオン性であり得、ポリマーでありうる。一態様においてはSECはセルロース誘導体であり、他の一態様においてはSECはセルロース誘導体またはシクロデキストリンではない。そのような組成物において、ブリモニジンの溶解性を向上するためにSECを使用する。換言すれば、有効量のSECの存在以外は同一である二つのブリモニジン含有組成物において、SEC不含有組成物よりもSEC含有組成物に、より多くのブリモニジンが溶解しうる。
【0018】
SECは、非イオン性またはポリアニオン性の成分を包含しうる。本発明において、用語「ポリアニオン性成分」は、個別のアニオン電荷を複数有する化学種、例えばイオン荷電種(例えばイオン荷電したポリマー材料)を意味する。非イオン性SECは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、並びに種々のガムおよび他の非イオン性剤を包含しうる。
一態様において、SECは、複数のアニオン電荷を有するポリマー材料およびその混合物から選択しうるポリアニオン性成分である。
【0019】
有用なポリアニオン性成分の例は、アクリル酸から誘導されるアニオン性ポリマー(アクリル酸、アクリレートなどから誘導されるポリマーおよびそれらの混合物を包含することを意図する)、メタクリル酸から誘導されるアニオン性ポリマー(メタクリル酸、メタクリレートなどから誘導されるポリマーおよびそれらの混合物を包含することを意味する)、アルギン酸から誘導されるアニオン性ポリマー(アルギン酸、アルギネートなどから誘導されるポリマーおよびそれらの混合物を包含することを意図する)、アミノ酸から誘導されるアニオン性ポリマー(アミノ酸、アミノ酸塩などのポリマーおよびそれらの混合物を包含することを意図する)など、およびそれらの混合物から選択する。非常に有用なポリアニオン性成分は、アニオン性セルロース誘導体およびその混合物、特にカルボキシメチルセルロースおよびその混合物から選択するものである。
【0020】
賦形剤もしくは活性剤の溶解の補助、組成物中の固体もしくは液体の分散、湿潤の向上、液滴サイズの調節、または多くの他の目的のために、界面活性剤を使用しうる。有用な界面活性剤は、ソルビタンエステルのポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアレートのグリセリルステアレート、イソプロピルステアレート、ポリオキシステアレート、プロピレングリコールステアレート、スクロースステアレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマー、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、脂肪アルコール、リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなどを包含するが、それらに限定されない。
【0021】
同様に、種々の有用な賦形剤を本発明の眼用製剤中に使用しうる。そのような賦形剤は、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水を包含するがそれらに限定されない。
【0022】
必要に応じて、または好都合に、浸透圧調節剤を加えうる。浸透圧調節剤は、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または任意の他の適当な眼科学的に許容しうる浸透圧調節剤を包含するが、それらに限定されない。
【0023】
同様に、眼科学的に許容しうる抗酸化剤は、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンを包含するが、それらに限定されない。
【0024】
本発明の眼用製剤に加えうる他の賦形剤成分は、キレート剤である。有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、その代わりに、またはそれと組み合わせて、他のキレート剤も使用しうる。
【0025】
組成物は水性の溶液もしくはエマルジョン、または他の許容しうる液体の形態でありうる。エマルジョンの場合、エマルジョンの形成のために1種またはそれ以上の油を使用し得、場合によっては1種またはそれ以上の界面活性剤および/またはエマルジョン安定化賦形剤が必要でありうる。適当な油は、アニス油、ヒマシ油、丁子油、カシア油、桂皮油、アーモンド油、コーン油、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、トウモロコシ油、アマニ油、ナタネ油、ダイズ油、オリーブ油、キャラウェー油、ローズマリー油、ピーナツ油、ペパーミント油、ヒマワリ油、ユーカリ油、ゴマ油などを包含するが、それらに限定されない。
【0026】
一態様においては、本発明の組成物はα,β−不飽和カルボン酸またはその塩を含有しない。α,β−不飽和カルボン酸とは、カルボキシル炭素が直接に二重または三重結合炭素に結合しているカルボン酸、例えば−C(H)=C(H)−COH、−C≡C−COH、その塩などである。別のある組成物は、マレイン酸またはマレイン酸塩を含有しない。
別のある組成物は、カルボン酸またはその塩を含有しない。
【実施例1】
【0027】
表1に従って水溶液組成物を調製しうる。
【表1】

【実施例2】
【0028】
米国特許第5981607号(引用により本発明の一部とする)に記載の方法を用い、表2に示す組成のエマルジョンを調製する。ブリモニジンおよびチモロールをヒマシ油に加え、その油相をエマルジョンに導入する。
【表2】

【実施例3】
【0029】
高眼圧または緑内障の患者を実施例1または2の組成物で処置する。組成物を患者の眼に1日2回局所投与する。数時間以内に眼圧低下が認められ、1日または2日以内に、許容しうる眼圧が達成される。患者に組成物を1日2回投与している間、正常眼圧が維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1〜4.5mMの濃度のブリモニジンおよび約2〜16mMの濃度のチモロールを含有し、pHが7〜約8.5である組成物。
【請求項2】
ブリモニジン濃度が約2〜3.5mMである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
チモロール濃度が約15.8mMまたは約7.9mMである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ブリモニジン濃度が約3.4mMである請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
ブリモニジン濃度が約2.26mMである請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
pHが約7.4〜8.5である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
溶解性向上成分をも含有する請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
マレイン酸またはマレイン酸塩を含有しない請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
カルボン酸またはその塩を含有しない請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
pHが約7.8〜8.5である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
エマルジョンである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を含有する、哺乳動物の眼への局所投与により緑内障または高眼圧を処置するための医薬。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする哺乳動物の眼に局所投与することを含んで成る、緑内障または高眼圧の処置に有用な方法。
【請求項14】
緑内障または高眼圧を処置するための医薬の製造における、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−533462(P2009−533462A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505535(P2009−505535)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/065754
【国際公開番号】WO2007/121077
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】