説明

ブレーキ保護装置

【課題】ディスクホイール内側のブレーキ装置を保護する。
【解決手段】ディスクホイール14は、タイヤ20を装着して保持するリム部18と、車軸28に取り付けられてリム部18を保持するディスク部16と、ディスク部16の周方向に並んで配設された複数の開口部34と、複数の開口部34のそれぞれに設けられた、開口部34を開閉可能な複数のカバー36と、複数のカバー36をそれぞれ独立して開閉させる電磁石48とを備える。車輪速センサ32は、ディスクホイール14の回転位置を検出する検出する。ECU100は、車輪速センサ32の検出値に基づいて、電磁石48を操作してカバー36の開閉状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置を保護するブレーキ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のホイールとして、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたホイールは、同心状に配置されたハブとリムを連結するサイドディスクに窓孔を開設したホイール本体と、該ホイール本体のサイドディスクの内側に設けた連動装置とから構成されている。連動装置は、ホイール本体の回転の加速又は減速に連動して、サイドディスクの窓孔に臨んで進退移動する移動部材を備えて成っている。このように構成されたホイールは、加速時の遠心力を生じたときに移動部材が窓孔を開放せしめ、遠心力が消失したときに移動部材が窓孔を閉鎖するようになっている。
【特許文献1】特開2002−362103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されたホイールの場合、車両走行時には全ての窓孔が開口するので、窓孔を介して外気が取り込まれ、ホイール内側に位置するブレーキ装置が冷却される。しかしながら、車両停車時には全ての窓孔が閉鎖され、ホイールの内側から外側への空気の流れが妨げられるため、ブレーキ装置の冷却効率が低下しがちである。一方、ブレーキ装置の冷却効率を確保するために、単に開口部を設けただけの場合、開口部を介してブレーキ装置のブレーキキャリパに水が掛かるおそれがある。ブレーキキャリパに水が掛かると、ブレーキパッドとディスクロータの張り付きの原因となり、ブレーキ性能が低下するおそれがある。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、好適にブレーキ装置を保護できるブレーキ保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ保護装置は、車両のブレーキ装置を保護するブレーキ保護装置であって、タイヤを装着して保持するリム部と、車軸に取り付けられてリム部を保持するディスク部と、ディスク部の周方向に並んで配設された複数の開口部と、複数の開口部のそれぞれに設けられた、開口部を開閉可能な複数のカバーと、複数のカバーをそれぞれ独立して開閉させる開閉手段と、を備えるブレーキ装置の車両幅方向外側に位置するディスクホイールと、ディスクホイールの回転位置を検出する検出手段と、検出手段の検出値に基づいて、開閉手段を操作してカバーの開閉状態を制御する制御手段とを備える。
【0006】
この態様によると、検出手段により検出されたディスクホイールの回転位置に基づいて、適宜各カバーの開閉状態を制御できるので、車両の走行状態に応じて必要な開口部のみ開いたり、閉じたりすることが可能となる。その結果、必要に応じて、ブレーキ装置を冷却する制御や、ブレーキキャリパに水が掛かるのを防止する制御などが可能となるので、ブレーキ装置を好適に保護することができる。
【0007】
制御手段は、検出手段の検出値に基づいて、ブレーキ装置のブレーキキャリパ近傍に位置するキャリパ近傍開口部を判定し、判定されたキャリパ近傍開口部に対応するカバーを閉状態に制御してもよい。この場合、ブレーキキャリパに水が掛かるのを好適に防止することができる。
【0008】
また、制御手段は、キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態に制御してもよい。この場合、ブレーキキャリパに水が掛かるのを防止しつつ、ブレーキ装置を冷却することができる。
【0009】
検出手段は、ディスクホイールとともに回転するセンサロータと、センサロータの回転速度を検出する車輪速センサとを備え、センサロータは、車軸に対して偏心していてもよい。この場合、車輪側センサが検出する信号に規則性を持たせることができるので、ディスクホイールの回転位置を好適に検出することが可能となる。
【0010】
本発明の別の態様もまた、ブレーキ保護装置である。この装置は、車両のブレーキ装置を保護するブレーキ保護装置であって、ブレーキ装置の車両幅方向外側に位置するディスクホイールに装着されるキャップ本体と、キャップ本体の周方向に並んで配設された複数の開口部と、複数の開口部のそれぞれに設けられた、開口部を開閉可能な複数のカバーと、複数のカバーをそれぞれ独立して開閉させる開閉手段と、を備えるホイールキャップと、ホイールキャップの回転位置を検出する検出手段と、検出手段の検出値に基づいて、開閉手段を操作してカバーの開閉状態を制御する制御手段とを備える。
【0011】
この態様によると、検出手段により検出されたホイールキャップの回転位置に基づいて、適宜各カバーの開閉状態を制御できるので、車両の走行状態に応じて必要な開口部のみ開いたり、閉じたりすることが可能となる。その結果、必要に応じて、ブレーキ装置を冷却する制御や、ブレーキキャリパに水が掛かるのを防止する制御などが可能となるので、ブレーキ装置を好適に保護することができる。
【0012】
制御手段は、検出手段の検出値に基づいてブレーキ装置のブレーキキャリパ近傍に位置するキャリパ近傍開口部を判定し、判定されたキャリパ近傍開口部に対応するカバーを閉状態に制御してもよい。この場合、ブレーキキャリパに水が掛かるのを好適に防止することができる。
【0013】
また、制御手段は、キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態に制御してもよい。この場合、ブレーキキャリパに水が掛かるのを防止しつつ、ブレーキ装置を冷却することができる。
【0014】
検出手段は、ホイールキャップとともに回転するセンサロータと、センサロータの回転速度を検出する車輪速センサとを備え、センサロータは、車軸に対して偏心していてもよい。この場合、車輪側センサが検出する信号に規則性を持たせることができるので、ホイールキャップの回転位置を好適に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、好適にブレーキ装置を保護できるブレーキ保護装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るブレーキ保護装置を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ保護装置10を説明するための図である。ブレーキ保護装置10は、ディスクロータ22、ブレーキキャリパ24、ブレーキパッド26などで構成される車両のブレーキ装置40を保護するための装置である。図1に示すように、ブレーキ保護装置10は、車輪12と、車輪速センサ32と、センサロータ30と、ECU100とを備える。
【0018】
車輪12は、タイヤ20と、タイヤ20を保持するディスクホイール14により構成されている。ディスクホイール14は、タイヤ20を装着して保持するリム部18と、車軸28に取り付けられてリム部18を保持するディスク部16とを備える。
【0019】
ディスクホイール14は、リム部18とディスク部16が一体になったワンピースホイール、リム部18とディスク部16が別体で組み合わせたツーピースホイール、さらにディスク部16を2分割したスリーピースホイールなどがある。いずれのタイプも鋼材などの金属材料で形成されている。
【0020】
ディスクホイール14は締結孔を有し、ディスクホイール14を車両に取り付ける取り付け部であるディスク部16を、車両側のハブにハブボルトおよびハブナットにより締結することにより、車両に回転可能に取り付けられている。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る車輪12を車両幅方向外側から見た図である。図1に示す車輪12は、図2に示す車輪12のA−A断面を示している。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態に係るブレーキ保護装置10においては、ディスクホイール14のディスク部16に、第1開口部34a、第2開口部34b、第3開口部34c、第4開口部34dが設けられている。第1開口部34a、第2開口部34b、第3開口部34cおよび第4開口部34dは、ディスク部16の周方向に90度間隔で配設されている。なお、以下においては、第1開口部34a、第2開口部34b、第3開口部34cおよび第4開口部34dを総称する場合は、単に「開口部34」と呼ぶ。本実施の形態においては、開口部34は台形状に形成されているが、開口部34の形状は、台形に限られず、長方形、円形、楕円形などであってもよい。
【0023】
第1開口部34a、第2開口部34b、第3開口部34c、第4開口部34dにはそれぞれ、開口部を開閉可能な第1カバー36a、第2カバー36b、第3カバー36c、第4カバー36dが設けられている。なお、以下においては、第1カバー36a、第2カバー36b、第3カバー36c、第4カバー36dを総称する場合は、単に「カバー36」と呼ぶ。
【0024】
図3は、カバー36を説明するための図である。カバー36は、略台形状の平板である第1スライド部材38a、第2スライド部材38b、第3スライド部材38c、第4スライド部材38dから構成されている。図3に示すように、第1スライド部材38a、第2スライド部材38b、第3スライド部材38c、第4スライド部材38dは、一方の長手辺が互いに重なり合うにようにして、ディスクホイールの径方向に並べられて配置されている。
【0025】
図3に示すように、第1スライド部材38aには第1長孔42aが、第2スライド部材38bには第2長孔42bが、第3スライド部材38cには第3長孔42cが、それぞれ形成されている。第1長孔42a、第2長孔42b、第3長孔42cは、ディスクホイールの径方向に開けられた長孔である。また、第2スライド部材38bには第1突起部44aが、第3スライド部材38cには第2突起部44bが、第4スライド部材38dには第3突起部44cがそれぞれ突設されている。
【0026】
第2スライド部材38bの第1突起部44aは、第1スライド部材38aの第1長孔42aに挿入されている。また、第3スライド部材38cの第2突起部44bは、第2スライド部材38bの第2長孔42bに挿入されている。また、第4スライド部材38dの第3突起部44cは、第3スライド部材38cの第3長孔42cに挿入されている。第1スライド部材38は、開口部34の径方向外側の縁部に固定されており、第4スライド部材38dは、バネ46により開口部34の径方向内側の縁部に連結されている。
【0027】
このように構成されたカバー36においては、バネ46の付勢力により第4スライド部材38dが径方向内側に移動すると、第3突起部44cが第3長孔42cの径方向内側の端部に係止されて、第3スライド部材38cも径方向内側に移動する。第3スライド部材38cが移動すると、第2突起部44bが第2長孔42bの径方向内側の端部に係止されて、第2スライド部材38bも径方向内側に移動する。このようにして、カバー36は、後述する電磁石を働かせない場合には、バネ46の付勢力により、開口部34が閉じた閉状態となる。
【0028】
本実施の形態においては、図1に示すように、各開口部34の径方向外側縁部に電磁石48が設けられている。さらに、各カバー36の第4スライド部材38dには、金属で形成されたウェイト50が設けられている。
【0029】
電磁石48がECU100からの指令により磁力を発生させると、第4スライド部材38dは、ウェイト50が電磁石48に引き寄せられることにより、バネ46の付勢力に抗して径方向外側に移動する。第4スライド部材38dが移動すると、第3突起部44cが第3長孔42cの径方向外側の端部に係止されて、第3スライド部材38cが径方向外側に移動する。同じように、第3スライド部材38cが移動すると、第2突起部44bが第2長孔42bの径方向外側の端部に係止されて、第2スライド部材38bが径方向外側に移動する。このようにして、電磁石48に磁力を発生させることにより、開口部34が開いた開状態とすることができる。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係るディスクホイール14においては、各開口部34におけるカバー36をそれぞれ独立して開閉させることができる。図1では、第1カバー36aを閉状態とし、第2カバー36b、第3カバー36cおよび第4カバー36dを開状態とした様子を示している。本実施の形態において、電磁石48、ウェイト50およびバネ46は、カバー36を開閉させる開閉手段として機能している。
【0031】
図1に示すように、ディスクホイール14の内側、すなわち車両側には、ブレーキ装置40が配設されている。ブレーキ装置40はディスクブレーキ方式のものであり、ディスクロータ22、ブレーキパッド26およびブレーキキャリパ24などから構成される。ブレーキ装置40は、車両側のスペースの有効活用などのため、円筒形状のリム部18の内部にほぼ収容されるように配設されている。ディスクロータ22は制動力をディスクホイール14に伝えるために、ディスクホイール14のディスク部16に固定されている。
【0032】
ディスクロータ22は、摩耗を低減するため硬度の高い鋳鉄により成型されている。ディスクロータ22を狭持するブレーキパッド26を形成する材料には、メタル、ノンアスベスト、セラミック、カーボンなどがあり、どの材料を使ったパッドが使われるかは、それぞれの特質を考慮して選択される。ブレーキパッド26はディスクロータ22の摩耗を低減するために、ディスクロータ22よりも硬度の低い材料によって成型されている。
【0033】
ブレーキ装置40においては、油圧ピストンにより車両側のブレーキパッド26がディスクロータ22に押しつけられ、ブレーキキャリパ24を介して車両外側のブレーキパッド26もディスクロータ22に押しつけられ、これによりディスクロータ22がブレーキパッド26に狭持されることにより、制動力が発生される。本実施の形態では、ディスクホイール14内部の上方にブレーキキャリパ24が固定されている。
【0034】
図1に示すように、車軸28の外周には、センサロータ30が一体的に設けられている。センサロータ30は、車軸28とともに回転する。センサロータ30の外周面には、複数の歯が形成されている。また、図示しないステアリングナックルには、車輪速センサ32が取り付けられている。車輪速センサ32は、マグネットとコイルから構成されており、センサロータのセレーションが回転すると、車輪速センサ32のコイルを貫く磁束が変化し、コイルに交流電圧が発生する。この交流電圧の周波数が車輪回転数に比例して変化することにより、車輪速度を検出できるようになっている。
【0035】
本実施の形態においては、センサロータ30は、車軸28に対して偏心して設けられている。すなわち、センサロータ30の中心軸は、車軸28の中心軸からずれて位置している。このように、センサロータ30を車軸28に対して偏心させることにより、ディスクホイール1回転中の車輪速センサ32が検出する信号に規則性を持たせることができるので、ディスクホイール14の回転位置を検出することができる。車輪速センサ32は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)100に接続されている。
【0036】
ECU100は、車輪速センサ32の検出値であるディスクホイール14の回転位置に基づいて、電磁石48を操作してカバー36の開閉状態を制御する制御手段として機能する。ECU100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
【0037】
ECU100により、ディスクホイール14の回転位置に基づいて、適宜各カバー36の開閉状態を制御することで、車両の走行状態に応じて必要な開口部34のみ開いたり、閉じたりすることが可能となる。その結果、必要に応じて、ブレーキ装置40を冷却する制御や、ブレーキキャリパ24に水が掛かるのを防止する制御などが可能となるので、ブレーキ装置40を好適に保護することができる。
【0038】
本実施の形態においては、ECU100は、車両が停車したときに、車輪速センサ32の検出値に基づいて、ブレーキキャリパ24の近傍に位置する開口部であるキャリパ近傍開口部を判定する。上述したように、ブレーキキャリパ24はディスクホイール14内部の上方に固定されているので、ECU100は、車輪速センサ32により検出されたディスクホイール14の回転位置に基づいて、キャリパ近傍開口部を判定することができる。
【0039】
そして、ECU100は、判定されたキャリパ近傍開口部に対応するカバー36が閉状態となり、キャリパ近傍開口部以外の開口部34が開状態となるように、各電磁石48を制御する。すなわち、図2に示す例においては、キャリパ近傍開口部は第1開口部34aであるので、第1カバー36aの電磁石48をオフ状態とし、第1開口部34a以外の第2開口部34b、第3開口部34cおよび第4開口部34dの各電磁石48をオン状態とする。これにより、図2に示すように、キャリパ近傍開口部である第1開口部34aはバネの付勢力により閉状態、それ以外の第2開口部34b、第3開口部34cおよび第4開口部34dは磁力により開状態とすることができる。
【0040】
キャリパ近傍開口部を閉状態とすることにより、ブレーキキャリパ24にディスクホイール14外部からの水が掛かるのを防止することができる。また、キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態とすることにより、ディスクホイール14内側の熱い空気をディスクホイール14外部に逃がすことができるので、ブレーキ装置40の冷却効率を向上させることができる。このように、本実施の形態に係るブレーキ保護装置10によれば、ブレーキキャリパ24への水掛かり防止とブレーキ装置40の冷却とを両立できるので、ブレーキ装置40を好適に保護することができる。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ保護装置400を説明するための図である。第2の実施の形態に係るブレーキ保護装置400は、ディスクホイール414に取り付けたホイールキャップ410に開口部およびカバーを設けた点が、第1の実施の形態に係るブレーキ保護装置10と異なる。なお、図4に示すブレーキ保護装置400においては、図1に示すブレーキ保護装置10と同一の構成要素については同一の符号を用いて表し、説明を適宜省略する。
【0042】
図4に示すように、ブレーキ保護装置400の車輪412においては、車軸28の先端にタイヤ420を保持するディスクホイール414が固定される。ディスクホイール414は、タイヤ420を装着して保持するリム部418と、車軸28に取り付けられてリム部418を保持するディスク部416とで構成されている。ディスク部416には、ブレーキ装置40を冷却するための複数の冷却孔415が設けられている。
【0043】
ディスクホイール414の車両幅方向外側には、見栄えの向上を主要な目的としてホイールキャップ410が装着されている。ホイールキャップ410は主としてプラスチックなどの樹脂や金属で成型することができる。
【0044】
ホイールキャップ410は、キャップ本体426と、勘合突起部428とを備える。キャップ本体426は、ディスクホイール414を覆う略円盤形状の部品である。図4に示すように、勘合突起部428は、キャップ本体426をディスクホイール414に装着するためにキャップ本体426の内面側の外周近傍に複数形成されている。図4は2個のみが見えているが、実際には、キャップ本体426の外周に沿って等間隔で、たとえば12個の勘合突起部428が成型されている。なお、勘合突起部428の配置数や配置位置は、キャップ本体426大きさや重量、勘合突起部428の強度等に応じて決定可能である。この勘合突起部428は弾性変形可能な部品であり、ホイールキャップ410をディスクホイール414に装着する際に弾性変形して、リム部418に形成された係合部437と勘合する。そして、この勘合の結果、ホイールキャップ410をディスクホイール414に保持する保持力が発生する。
【0045】
第2の実施の形態に係るブレーキ保護装置400においては、ホイールキャップ410のキャップ本体426に、複数の開口部が設けられている。図4では、第1開口部434aと第3開口部434cの2つの開口部のみが見えているが、実際には、キャップ本体426の周方向に90度間隔で4つの開口部が形成されている。なお、以下においては、この4つの開口部を総称する場合は、「開口部434」と呼ぶ。
【0046】
開口部434のそれぞれには、開口部434を開閉可能なカバーが設けられている。図4には、第1カバー436aと第3カバー436cの2つのカバーが見えているが、キャップ本体426には、4つの開口部434に対応して4つのカバーが設けられている。なお、以下においては、この4つのカバーを総称する場合は、「カバー436」と呼ぶ。
【0047】
カバー436の構成は、図3に示した第1の実施形態のものと同様である。カバー436は、ホイールキャップ410の勘合突起部428に設けられた電磁石448と、カバー436に設けられたウェイト450と図示しないバネの作用により、それぞれ独立して開閉させることができるようになっている。図4では、第1カバー436aを閉状態とし、第3カバー436cを開状態とした様子を示している。本実施の形態において、電磁石448、ウェイト450およびバネは、カバー436を開閉させる開閉手段として機能している。
【0048】
ECU100は、車輪速センサ32の検出値であるホイールキャップ410の回転位置に基づいて、電磁石448を操作してカバー436の開閉状態を制御する制御手段として機能する。ECU100により、ホイールキャップ410の回転位置に基づいて、適宜各カバー436の開閉状態を制御することで、車両の走行状態に応じて必要な開口部434のみ開いたり、閉じたりすることが可能となる。その結果、必要に応じて、ブレーキ装置40を冷却する制御や、ブレーキキャリパ24に水が掛かるのを防止する制御などが可能となるので、ブレーキ装置40を好適に保護することができる。
【0049】
本実施の形態においては、ECU100は、車両が停車したときに、車輪速センサ32の検出値に基づいて、ブレーキキャリパ24の近傍に位置する開口部であるキャリパ近傍開口部を判定する。ブレーキキャリパ24はディスクホイール414内部の上方に固定されているので、ECU100は、車輪速センサ32により検出されたホイールキャップ410の回転位置に基づいて、キャリパ近傍開口部を判定することができる。
【0050】
そして、ECU100は、判定されたキャリパ近傍開口部に対応するカバー436が閉状態となり、キャリパ近傍開口部以外の開口部434が開状態となるように、各電磁石448を制御する。すなわち、図4に示す例においては、キャリパ近傍開口部は第1開口部434aであるので、第1カバー436aの電磁石448をオフ状態とし、第1開口部434a以外の開口部の各電磁石448をオン状態とする。これにより、図4に示すように、キャリパ近傍開口部である第1開口部434aはバネの付勢力により閉状態、それ以外の開口部は磁力により開状態とすることができる。
【0051】
キャリパ近傍開口部を閉状態とすることにより、ブレーキキャリパ24にホイールキャップ410外部からの水が掛かるのを防止することができる。また、キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態とすることにより、ディスクホイール14内側の熱い空気をホイールキャップ410外部に逃がすことができるので、ブレーキ装置40の冷却効率を向上させることができる。このように、本実施の形態に係るブレーキ保護装置400によれば、ブレーキキャリパ24への水掛かり防止とブレーキ装置40の冷却とを両立できるので、ブレーキ装置40を好適に保護することができる。
【0052】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0053】
上述の実施の形態では、ホイールディスクまたはホイールキャップに4個の開口部を設ける例について説明したが、開口部の数は、4個に限られず、たとえば、8個や16個であってもよい。開口部の数を増やした場合には、ブレーキキャリパの大きさに応じて、複数の開口部を閉じるなどの制御を行うことも可能である。
【0054】
また、上述の実施の形態では、車両停止時にキャリパ近傍開口部を判定して、そのキャリパ近傍開口部のみ閉じる制御を行う例について説明したが、車両走行時に、次々にキャリパ近傍開口部を閉じていくように制御を行ってもよい。この場合、車両走行時におけるブレーキキャリパへの水掛かり防止とブレーキ装置の冷却とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ保護装置を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車輪を車両幅方向外側から見た図である。
【図3】カバーを説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ保護装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
10、400 ブレーキ保護装置、 14、414 ディスクホイール、 16、416 ディスク部、 18 リム部、 20 タイヤ、 22 ディスクロータ、 24 ブレーキキャリパ、 28 車軸、 30 センサロータ、 32 車輪速センサ、 34、434 開口部、 36、436 カバー、 40 ブレーキ装置、 46 バネ、 48、448 電磁石、 50、450 ウェイト、 100 ECU、 410 ホイールキャップ、 426 キャップ本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ装置を保護するブレーキ保護装置であって、
タイヤを装着して保持するリム部と、
車軸に取り付けられて前記リム部を保持するディスク部と、
前記ディスク部の周方向に並んで配設された複数の開口部と、
前記複数の開口部のそれぞれに設けられた、開口部を開閉可能な複数のカバーと、
前記複数のカバーをそれぞれ独立して開閉させる開閉手段と、を備える前記ブレーキ装置の車両幅方向外側に位置するディスクホイールと、
前記ディスクホイールの回転位置を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記開閉手段を操作して前記カバーの開閉状態を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするブレーキ保護装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段の検出値に基づいて、前記ブレーキ装置のブレーキキャリパ近傍に位置するキャリパ近傍開口部を判定し、判定されたキャリパ近傍開口部に対応する前記カバーを閉状態に制御することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ保護装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態に制御することを特徴とする請求項2に記載のブレーキ保護装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記ディスクホイールとともに回転するセンサロータと、前記センサロータの回転速度を検出する車輪速センサとを備え、前記センサロータは、車軸に対して偏心していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブレーキ保護装置。
【請求項5】
車両のブレーキ装置を保護するブレーキ保護装置であって、
前記ブレーキ装置の車両幅方向外側に位置するディスクホイールに装着されるキャップ本体と、
前記キャップ本体の周方向に並んで配設された複数の開口部と、
前記複数の開口部のそれぞれに設けられた、開口部を開閉可能な複数のカバーと、
前記複数のカバーをそれぞれ独立して開閉させる開閉手段と、を備えるホイールキャップと、
前記ホイールキャップの回転位置を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記開閉手段を操作して前記カバーの開閉状態を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするブレーキ保護装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段の検出値に基づいて前記ブレーキ装置のブレーキキャリパ近傍に位置するキャリパ近傍開口部を判定し、判定されたキャリパ近傍開口部に対応する前記カバーを閉状態に制御することを特徴とする請求項5に記載のブレーキ保護装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記キャリパ近傍開口部以外の開口部を開状態に制御することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ保護装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記ホイールキャップとともに回転するセンサロータと、前記センサロータの回転速度を検出する車輪速センサとを備え、前記センサロータは、車軸に対して偏心していることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のブレーキ保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−126423(P2009−126423A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305101(P2007−305101)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】