説明

ブレーキ制御装置

【課題】電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置において、要求される車輪の制動力に対応した液圧をより簡単な構成で精度よく発生させる。
【解決手段】ブレーキ制御装置1は、流路を介して供給されたブレーキフルードの液圧により車輪に制動力を付与するホイールシリンダ4FR〜4RRと、動力によりブレーキフルードをホイールシリンダ4FR〜4RRに供給し、供給したブレーキフルードを加圧することで液圧を発生させるポンプ60、61と、ブレーキフルードを加圧された状態で収容し、収容したブレーキフルードをホイールシリンダ4FR〜4RRに供給することで液圧を発生させるアキュムレータ63と、ポンプ60、61とアキュムレータ63とを組み合わせて、目標液圧となるようにホイールシリンダ圧を制御するブレーキECU300とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動液回路を介したホイールシリンダへのブレーキフルード(作動液)の供給をアクチュエータにより電子制御して、各ホイールシリンダに供給する液圧を調整する電子制御式ブレーキ(ECB:Electronically Controlled Brake)を備えたブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
特許文献1および2には、リザーバタンクに貯留されたブレーキフルードをポンプでホイールシリンダに供給して加圧することで、運転者によるブレーキ操作部材の操作から独立してホイールシリンダ圧を発生させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−283055号公報
【特許文献2】特開平9−76890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置では、ブレーキ操作部材の操作量の変化、すなわち、要求される車輪の制動力の変化に対して、ホイールシリンダに発生させる液圧を精度よく追従させることが求められる。これに対し、特許文献1に記載されたブレーキ制御装置は、低圧ポンプと高圧ポンプとを備え、これら2つのポンプを用いてホイールシリンダ圧が目標圧となるように調整している。すなわち、特許文献1に記載されたブレーキ制御装置は、作動特性の異なる2つのポンプを組み合わせることで、要求制動力に対するホイールシリンダ圧の追従性を高めている。
【0006】
一方で、車両の低コスト化や、燃費を向上させたいという要求は常に存在しており、そのため電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置についても、さらなる低コスト化、軽量化の要請があり、したがってブレーキ制御装置の構造の簡略化が求められている。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置において、要求される車輪の制動力に対応した液圧をより簡単な構成で精度よく発生させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、作動液流路を介して供給された作動液の液圧により車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、動力により作動液を前記ホイールシリンダに供給し、供給した作動液を加圧することで液圧を発生させる第1動力液圧源と、作動液を加圧された状態で収容し、収容した作動液を前記ホイールシリンダに供給することで液圧を発生させる第2動力液圧源と、前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源とを組み合わせて、目標液圧となるようにホイールシリンダにおける液圧を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、要求される車輪の制動力に対応した液圧をより簡単な構成で精度よく発生させることができる。
【0010】
上記態様において、前記制御部は、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値以下の場合に第1動力液圧源により液圧を発生させ、前記差が前記しきい値を上回った場合に第1動力液圧源および第2動力液圧源により液圧を発生させてもよい。これによっても、要求される車輪の制動力に対応した液圧を精度よく発生させることができる。
【0011】
上記態様において、前記第2動力液圧源は、前記第1動力液圧源により供給された作動液を加圧された状態で収容してもよい。これによれば、ブレーキ制御装置の部品点数の増大を抑えることができる。
【0012】
上記態様において、前記制御部は、前記車輪への制動非要求状態にあるときに、第2動力液圧源に液圧を蓄えてもよい。これによれば、不使用時の第1動力液圧源を有効利用できる。
【0013】
上記態様において、前記制御部は、前記ホイールシリンダに液圧を発生させる際の最大出力よりも低い出力で前記第1動力液圧源により作動液を供給し、前記第2動力液圧源に液圧を蓄えてもよい。これによれば、消費電力の低減を図ることができる。
【0014】
上記態様において、前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源とを接続する作動液流路に設けられ、開弁して前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源との間の作動液の流通を許容するカット弁を備えてもよい。これによれば、ホイールシリンダに安定した液圧を発生させることができる。
【0015】
上記態様において、作動液を貯留するリザーバタンクと、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記リザーバタンクに貯留された作動液を前記ホイールシリンダに供給し、供給した作動液を加圧することで液圧を発生させるマニュアル液圧源と、前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、閉弁してマニュアル液圧源による前記ホイールシリンダへの作動液の供給を遮断するマスタカット弁と、を備え、前記第1動力液圧源および前記第2動力液圧源は、前記マニュアル液圧源と並列に設けられ、前記制御部は、前記第1動力液圧源または前記第2動力液圧源により前記ホイールシリンダに液圧を発生させる場合に、前記マスタカット弁を閉弁してもよい。これによれば、ホイールシリンダの液圧の変化にともなうブレーキ操作部材の変位を抑えてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0016】
上記態様において、前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、弁の開度により前記ホイールシリンダに発生させた液圧を調整する調圧リニア制御弁を備えてもよい。これによれば、ホイールシリンダの液圧を高精度に調整することができる。
【0017】
上記態様において、前記調圧リニア制御弁は、非通電時は開弁状態で、通電制御により開度が調整される常開型制御弁であり、前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、閉弁してホイールシリンダに液圧を保持するリザーバカット弁を備えてもよい。これによれば、フェールセーフ機能を確保することができ、ブレーキ制御装置の信頼性を向上させることができる。
【0018】
上記態様において、前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路における前記調圧リニア制御弁の作動液流れ下流側と上流側とを、前記調圧リニア制御弁を介さずに接続する減圧用流路と、前記減圧用流路上に設けられ、開弁して前記減圧用流路を介した前記ホイールシリンダと前記リザーバタンクとの間の作動液の流通を許容する減圧弁と、を備え、前記制御部は、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値以下の場合に前記調圧リニア制御弁の開度を大きくすることで液圧を低減し、前記差が前記しきい値を上回った場合に前記調圧リニア制御弁の開度の増大と前記減圧弁の開弁とにより液圧を低減してもよい。これによれば、要求される車輪の制動力に対応した液圧を精度よく発生させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置において、要求される車輪の制動力に対応した液圧をより簡単な構成で精度よく発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】図2(A)は、通常加圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図であり、図2(B)は、通常減圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。
【図3】図3(A)は、急加圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図であり、図3(B)は、急減圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。
【図4】ブレーキ動作の制御フローチャートである。
【図5】従来のVSC機構を備えたブレーキ制御装置に回生ブレーキユニットが組み込まれた状態を示す概略図である。
【図6】実施形態2に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図7】従来のABS機構を備えたブレーキ制御装置に回生ブレーキユニットが組み込まれた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。同図に示されるブレーキ制御装置1は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置1による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
【0023】
ブレーキ制御装置1は、図1に示されるように、ディスクブレーキユニット2FR、2FL、2RR、2RLと、マスタシリンダ14(マニュアル液圧源)と、リザーバタンク16と、ストロークシミュレータ部18と、液圧アクチュエータ100と、ブレーキECU300(制御部)と、を備える。
【0024】
各ディスクブレーキユニット2FR、2FL、2RL、2RR(以下、適宜、総称して「ディスクブレーキユニット2」という)は、それぞれ車両の右前輪、左前輪、左後輪、右後輪(全て図示せず)に設けられている。また、各ディスクブレーキユニット2は、それぞれブレーキディスク3FR、3FL、3RL、3RR(以下、適宜、総称して「ブレーキディスク3」という)と、ブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ4FR、4FL、4RL、4RR(以下、適宜、総称して「ホイールシリンダ4」という)とを含む。各ホイールシリンダ4は、それぞれ異なる作動液流路を介して液圧アクチュエータ100に接続されている。
【0025】
各ディスクブレーキユニット2においては、ホイールシリンダ4に液圧アクチュエータ100からブレーキフルード(作動液)が供給され、ブレーキフルードの液圧により車輪と共に回転するブレーキディスク3にブレーキパッド(図示せず)が押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット2を用いているが、例えばドラムブレーキなどの他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0026】
マスタシリンダ14は、運転者によるブレーキペダル10(ブレーキ操作部材)の操作によってブレーキフルードをホイールシリンダ4に向けて送出する。マスタシリンダ14は、プライマリ室14aと、セカンダリ室14bと、プライマリピストン14cと、セカンダリピストン14dと、スプリング14e、14fとを備える。また、マスタシリンダ14は、ブレーキフルードを貯留するリザーバタンク16に接続されている。
【0027】
マスタシリンダ14は、プライマリピストン14cおよびセカンダリピストン14dによってプライマリ室14aとセカンダリ室14bとに区画されている。プライマリピストン14cには、ブレーキペダル10から延びるプッシュロッドが接続されている。そして、プライマリピストン14cは、スプリング14eの弾性力を受けてブレーキペダル10が踏み込まれていないときにブレーキペダル10を初期位置側に戻すようにプッシュロッドを押圧している。また、セカンダリピストン14dは、スプリング14fの弾性力を受けて、スプリング14e、プライマリピストン14cを介してプッシュロッドを押圧している。運転者によってブレーキペダル10が踏み込まれると、プッシュロッドがマスタシリンダ14に進入し、プライマリピストン14cおよびセカンダリピストン14dが押圧される。これにより、ブレーキペダル10の操作量としてのペダルストロークがマスタシリンダ14に伝達され、プライマリ室14aおよびセカンダリ室14bにブレーキペダル10のペダルストロークに応じたマスタシリンダ圧が発生する。
【0028】
一方、ブレーキペダル10が踏み込まれると、ブレーキペダル10のペダルストロークがストロークセンサ12に入力され、ペダルストロークに応じた検出信号がストロークセンサ12から出力される。この検出信号はブレーキECU300に入力され、ブレーキECU300でブレーキペダル10のペダルストロークが検出される。なお、ここではブレーキペダル10の操作量を検出するための操作量センサとしてストロークセンサ12を例に挙げているが、ブレーキペダル10に加えられる踏力を検知する踏力センサなどであってもよい。
【0029】
リザーバタンク16は、ブレーキペダル10が初期位置にあるときに、プライマリ室14aおよびセカンダリ室14bのそれぞれと図示しない通路を介して接続され、マスタシリンダ14内にブレーキフルードを供給したり、マスタシリンダ14内の余剰ブレーキフルードを貯留する。
【0030】
マスタシリンダ14のプライマリ室14aにはマスタ配管202が接続され、セカンダリ室14bにはマスタ配管201が接続されている。また、リザーバタンク16にはリザーバ配管203、204が接続されている。これらのマスタ配管201、202、およびリザーバ配管203、204は、それぞれ液圧アクチュエータ100に接続されている。
【0031】
ストロークシミュレータ部18は、ストロークシミュレータ18aと、シミュレータカット弁18bとを備える。ストロークシミュレータ18aは、シミュレータカット弁18bを介してマスタ配管201に接続されている。すなわち、シミュレータカット弁18bは、マスタシリンダ14とストロークシミュレータ18aとを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁18bは、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有し、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁18bが閉弁状態であるときは、マスタ配管201とストロークシミュレータ18aとの間のブレーキフルードの流通が遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁18bが開弁されると、ストロークシミュレータ18aとマスタシリンダ14との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0032】
ストロークシミュレータ18aは、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁18bの開弁時に運転者によるブレーキペダル10の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ18aとしては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
【0033】
液圧アクチュエータ100は、マスタシリンダ14や後述する第1動力液圧源および第2動力液圧源によるホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給を適宜調整する。これにより、各ホイールシリンダ4が車輪に付与する制動力が調整される。液圧アクチュエータ100は、複数の作動液流路が形成されたアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された作動液流路には、マスタ流路205、206と、リザーバ流路207、208と、個別流路209、210、211、212と、ポンプ連通路213、214と、増圧用流路215、216と、減圧用流路217、218、219、220と、アキュムレータ連通路221、222とが含まれる。
【0034】
マスタ流路205はマスタ配管201に接続され、マスタ流路206はマスタ配管202に接続されている。また、リザーバ流路207はリザーバ配管203に接続され、リザーバ流路208はリザーバ配管204に接続されている。そして、マスタ流路205およびリザーバ流路207は、ホイールシリンダ4FRに接続された個別流路209に接続されている。また、マスタ流路206およびリザーバ流路208は、ホイールシリンダ4RRに接続された個別流路212に接続されている。個別流路209の中途には、ホイールシリンダ4FLに接続された個別流路210が接続され、個別流路212の中途には、ホイールシリンダ4RLに接続された個別流路211が接続されている。これらにより、各ホイールシリンダ4とマスタシリンダ14およびリザーバタンク16とが連通されている。
【0035】
ここで、マスタ配管201、202と、マスタ流路205、206と、個別流路209〜212とによって、マスタシリンダ14とホイールシリンダ4とを接続する作動液流路が構成される。また、リザーバ配管203、204と、リザーバ流路207、208と、個別流路209〜212とによって、リザーバタンク16とホイールシリンダ4とを接続する作動液流路が構成される。また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1では、ホイールシリンダ4FR、4FLと、ホイールシリンダ4RL、4RRとが、それぞれ別々のリザーバ配管203、204、およびリザーバ流路207、208を介してリザーバタンク16と接続されている。そのため、各ホイールシリンダ4とリザーバタンク16とが一本の流路で接続されている場合と比べて、より多くのブレーキフルードを各ホイールシリンダ4に供給することができる。また、上述の構成により流路や弁の故障などによって全ての車輪に制動力を付与することができなくなってしまう状態が発生するおそれを低減することができる。その結果、ブレーキ制御装置1の信頼性が向上する。
【0036】
マスタ流路205、206は、それぞれ中途にマスタカット弁20、21を有する。すなわち、マスタカット弁20、21は、マスタシリンダ14とホイールシリンダ4とを接続する作動液流路上に設けられている。マスタカット弁20、21は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁状態とされる常開型電磁制御弁である。マスタカット弁20が開弁状態であると、マスタシリンダ14と個別流路209、210との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができ、マスタカット弁21が開弁状態であると、マスタシリンダ14と個別流路211、212との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁20、21が閉弁されると、マスタ流路205、206におけるブレーキフルードの流通は遮断される。すなわち、マスタカット弁20、21が閉弁されると、マスタシリンダ14によるホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給が遮断される。
【0037】
また、マスタ流路205、206には、それぞれマスタカット弁20、21のブレーキフルード流れの上流側に、マスタシリンダ圧センサ50、51が設けられている。マスタシリンダ圧センサ50、51は、マスタカット弁20、21の上流側でマスタ流路205、206内のブレーキフルードの圧力、すなわちマスタシリンダ圧を検知することができる。
【0038】
リザーバ流路207、208は、それぞれ中途にリザーバカット弁22、23を有する。すなわち、リザーバカット弁22、23は、リザーバタンク16とホイールシリンダ4とを接続する作動液流路上に設けられている。リザーバカット弁22、23は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。リザーバカット弁22が閉弁状態であると、リザーバタンク16と個別流路209、210との間のブレーキフルードの流通が遮断され、リザーバカット弁23が閉弁状態であると、リザーバタンク16と個別流路211、212との間のブレーキフルードの流通が遮断される。したがって、ホイールシリンダ4に液圧が発生している状態でリザーバカット弁22、23が閉弁されると、ホイールシリンダ4にかかる液圧が保持される。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてリザーバカット弁22が開弁されると、リザーバ流路207と個別流路209、210との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。同様に、リザーバカット弁23が開弁されると、リザーバ流路208と個別流路211、212との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0039】
個別流路209、212は、それぞれ個別流路210、211の接続部よりもブレーキフルード流れの上流側に、調圧リニア制御弁24、25を有する。すなわち、調圧リニア制御弁24、25は、リザーバタンク16と各ホイールシリンダ4とを接続する作動液流路上に設けられている。調圧リニア制御弁24、25は、リニアソレノイドおよびスプリングを有しており、リニアソレノイドが非通電状態にある場合に開弁状態とされ、リニアソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される常開型電磁制御弁である。調圧リニア制御弁24、25が開弁状態であると、マスタシリンダ14またはリザーバタンク16と、ホイールシリンダ4との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。リニアソレノイドに電流が通電されると、通電された電流に比例して弁が閉じてブレーキフルードの流通量が減少していく。したがって、調圧リニア制御弁24、25の開度を変化させることで、各ホイールシリンダ4からマスタシリンダ14またはリザーバタンク16へのブレーキフルードの流通量を変化させることができる。これにより、各ホイールシリンダ4に発生させた液圧を調整することができる。
【0040】
調圧リニア制御弁24は、ホイールシリンダ4FR、4FLに共通の調圧制御弁として設けられ、調圧リニア制御弁25は、ホイールシリンダ4RL、4RRに共通の調圧制御弁として設けられている。このように、調圧リニア制御弁24、25を複数のホイールシリンダ4に対して共通化すれば、各ホイールシリンダ4ごとにリニア制御弁を設ける場合と比べてコストを抑えることができる。
【0041】
ここで、リザーバカット弁22、23は、調圧リニア制御弁24、25よりもブレーキフルード流れの上流側に設けられている。そして、調圧リニア制御弁24、25が常開型電磁制御弁であるのに対し、リザーバカット弁22、23は常閉型電磁制御弁となっている。このような構成によれば、調圧リニア制御弁24、25が故障した場合に、リザーバカット弁22、23のソレノイドへの通電をOFFにしてリザーバカット弁22、23を閉弁状態としてホイールシリンダ4に発生した液圧を保持できるため、フェールセーフ機能を確保することができる。
【0042】
また、調圧リニア制御弁24、25により各ホイールシリンダ4に発生した液圧を長時間調整すると、長時間の通電により調圧リニア制御弁24、25で発生する熱量が大きくなり、調圧リニア制御弁24、25が高温になってしまう場合がある。これに対し、上述の構成によれば、リザーバカット弁22、23への通電をOFFにしてリザーバカット弁22、23を閉弁することでホイールシリンダ4に発生した液圧を保持できるため、液圧を保持したまま調圧リニア制御弁24、25への通電をOFFにして、調圧リニア制御弁24、25に発生した熱を放熱することができる。そのため、ブレーキ制御装置1の信頼性を向上させることができる。
【0043】
個別流路209〜212は、それぞれ中途に保持弁26、27、28、29を有する。保持弁26〜29は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れも規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁状態とされる常開型電磁制御弁である。開弁状態とされた保持弁26〜29は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、マスタシリンダ14およびリザーバタンク16からホイールシリンダ4へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ4からマスタシリンダ14およびリザーバタンク16へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて保持弁26〜29が閉弁されると、個別流路209〜212におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0044】
個別流路209〜212には、それぞれ保持弁26〜29よりも下流側に減圧用流路217、218、219、220が接続されている。減圧用流路217〜220の中途には、それぞれ減圧弁30、31、32、33が設けられている。減圧弁30〜33は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れも規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。減圧弁30〜33が閉弁状態であるときは、減圧用流路217〜220におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに規定の制御電流が通電されて減圧弁30〜33が開弁状態とされると、減圧用流路217〜220におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードをホイールシリンダ4から減圧用流路217〜220、ポンプ連通路213、214、リザーバ流路207、208、およびリザーバ配管203、204を介してリザーバタンク16へ還流させることができる。
【0045】
個別流路209、212における調圧リニア制御弁24、25よりもブレーキフルード流れの上流側には、それぞれポンプ連通路213、214の一端が接続されている。ポンプ連通路213、214の他端は、ポンプ60、61の吸込口に接続されている。これによりポンプ60、61とリザーバタンク16とが、ポンプ連通路213、214、個別流路209、212、リザーバ流路207、208、およびリザーバ配管203、204を介して接続される。ポンプ60、61は、モータ62により駆動されてブレーキフルードをホイールシリンダ4に供給する動力を生成する。本実施形態では、ポンプ60、61により第1動力液圧源が構成される。第1動力液圧源は、動力によって運転者によるブレーキペダル10の操作から独立して、ホイールシリンダ4に対してブレーキフルードを送出することが可能である。ポンプ60、61は、静寂性に優れたトロコイドポンプにより構成される。なお、ポンプ60、61は、他のポンプにより構成されてもよい。
【0046】
ポンプ60は、ホイールシリンダ4FR、ホイールシリンダ4FLに共通の動力液圧源として設けられ、ポンプ61は、ホイールシリンダ4RL、4RRに共通の動力液圧源として設けられている。このように、ポンプ60、61を複数のホイールシリンダ4に対して共通化すれば、各ホイールシリンダ4ごとにポンプを設ける場合と比べてコストを抑えることができる。
【0047】
ポンプ60、61の吐出口には、それぞれ増圧用流路215、216の一端が接続されている。増圧用流路215の他端は、個別流路209、210の保持弁26、27よりも上流側であって、調圧リニア制御弁24よりも下流側に接続されている。また、増圧用流路216の他端は、個別流路211、212の保持弁28、29よりも上流側であって、調圧リニア制御弁25よりも下流側に接続されている。これにより、ポンプ60、61によってリザーバタンク16から汲み上げられたブレーキフルードが、増圧用流路215、216、および個別流路209〜212を介してホイールシリンダ4に供給される。なお、本実施形態の増圧用流路215、216は、それぞれ個別流路210、211の一部を介して個別流路209、212に接続されている。
【0048】
増圧用流路215、216の中途には、それぞれアキュムレータ連通路221、222の一端が接続されている。アキュムレータ連通路221、222の他端は、アキュムレータ63に接続されている。すなわち、ポンプ60、61とアキュムレータ63とはアキュムレータ連通路221、222を介して連通されている。アキュムレータ63は、ポンプ60、61から吐出されたブレーキフルードが供給され、ポンプ60、61により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギーを窒素などの封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄えるものである。アキュムレータ63には、例えば14〜22MPa程度の圧力エネルギーが蓄えられる。本実施形態では、アキュムレータ63が第2動力液圧源を構成している。第2動力液圧源は、ポンプ60、61により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル10の操作から独立してホイールシリンダ4に対して送出することが可能である。
【0049】
アキュムレータ63のアキュムレータ圧は、ポンプ60、61により維持されるべき設定範囲に保たれる。ブレーキECU300は、後述するホイールシリンダ圧センサ52、53の測定値に基づいてアキュムレータ圧を推定する。そしてブレーキECU300は、アキュムレータ圧が設定範囲の下限を下回った場合にポンプ60、61をONにしてアキュムレータ圧を加圧し、アキュムレータ圧が設定範囲の上限を超えた場合にポンプ60、61をOFFにしてアキュムレータ圧の加圧を終了する。
【0050】
アキュムレータ連通路221、222の中途には、それぞれアキュムレータカット弁34、35(カット弁)が設けられている。アキュムレータカット弁34、35は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態とされ、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁である。アキュムレータカット弁34、35が閉弁状態であると、アキュムレータ連通路221、222におけるブレーキフルードの流通が遮断される。すなわち、アキュムレータカット弁34、35が閉弁されると、ポンプ60、61によるアキュムレータ63へのブレーキフルードの供給が遮断され、また、アキュムレータ63からホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給も遮断される。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてアキュムレータカット弁34、35が開弁されると、アキュムレータ連通路221、222におけるブレーキフルードの流通が許容され、ポンプ60、61からアキュムレータ63へのブレーキフルードの供給、およびアキュムレータ63からホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給が可能となる。
【0051】
アキュムレータカット弁34、35が閉弁状態であると、ポンプ60、61から吐出されたブレーキフルードはアキュムレータ63に流れ込まないため、第1動力液圧源によって発生した液圧がアキュムレータ63に吸収されない。これにより、第1動力液圧源によってホイールシリンダ4に安定した液圧を発生させることができる。
【0052】
アキュムレータ連通路221、222の中途には、ホイールシリンダ圧センサ52、53が設けられている。すなわち、ホイールシリンダ圧センサ52、53は、ポンプ60、61とアキュムレータカット弁34、35との間に設けられ、アキュムレータ連通路221、222内の圧力、すなわちホイールシリンダ4のホイールシリンダ圧を検知することができる。
【0053】
ブレーキECU300は、ストロークシミュレータ部18、液圧アクチュエータ100の動作を制御する。ブレーキECU300は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポートなどを備える。そして、ブレーキECU300は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて、シミュレータカット弁18bや、ポンプ60、61、マスタカット弁20、21、リザーバカット弁22、23、調圧リニア制御弁24、25、保持弁26〜29、減圧弁30〜33、アキュムレータカット弁34、35を制御する。
【0054】
ブレーキECU300には、ストロークセンサ12、マスタシリンダ圧センサ50、51、およびホイールシリンダ圧センサ52、53が接続される。ストロークセンサ12は、ブレーキペダル10のペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU300に送信する。マスタシリンダ圧センサ50、51は、マスタシリンダ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU300に送信する。ストロークセンサ12、およびマスタシリンダ圧センサ50、51の検出値は、所定時間おきにブレーキECU300に順次与えられ、ブレーキECU300の所定の記憶領域に格納保持される。
【0055】
ブレーキ制御装置1では、運転者によってブレーキペダル10が踏み込まれた際、ストロークセンサ12によりその踏み込み操作量が検出されるが、マスタシリンダ圧センサ51、52によって検知されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル10の踏み込み操作量を求めることができる。このように、ストロークセンサ12の故障を想定して、マスタシリンダ圧をマスタシリンダ圧センサ50、51によって監視することは、フェールセーフの観点からみて好ましい。
【0056】
ホイールシリンダ圧センサ52、53は、ホイールシリンダ4のホイールシリンダ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU300に送信する。ここで、ブレーキECU300は、ホイールシリンダ圧センサ52、53によってアキュムレータカット弁34、35が開弁状態にあるときのアキュムレータ連通路221、222内の圧力を検知することで、アキュムレータ63のアキュムレータ圧を推定することができる。ホイールシリンダ圧センサ52、53の出力値も、所定時間おきにブレーキECU300に順次与えられ、ブレーキECU300の所定の記憶領域に格納保持される。
【0057】
また、ブレーキECU300にはストップランプスイッチ(図示せず)が接続されている。ストップランプスイッチはブレーキペダル10が踏み込まれるとON状態となる。これによりストップランプが点灯される。また、ブレーキペダル10の踏み込みが解除されるとストップランプスイッチはOFF状態となり、ストップランプは消灯される。ストップランプスイッチの点灯状態を示す信号がストップランプスイッチからブレーキECU300へと所定時間おきに入力され、ブレーキECU300の所定の記憶領域に格納保持される。
【0058】
上述のように構成されたブレーキ制御装置1は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置1は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル10を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU300は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置1により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力の実効値は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置1に供給される。そして、ブレーキECU300は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ4の目標液圧を算出する。ブレーキECU300は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、ポンプ60、61の駆動やアキュムレータ63によるブレーキフルードの供給を制御するとともに、フィードバック制御則により調圧リニア制御弁24、25に供給する制御電流の値を決定する。
【0059】
その結果、ブレーキ制御装置1においては、ブレーキフルードがリザーバタンク16あるいはアキュムレータ63から各ホイールシリンダ4に供給され、車輪に制動力が付与される。また、ブレーキフルードが各ホイールシリンダ4から調圧リニア制御弁24、25を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、ポンプ60、61およびアキュムレータ63、調圧リニア制御弁24、25などを含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成され、このホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダ14からホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。すなわち、第1動力液圧源であるポンプ60、61および第2動力液圧源であるアキュムレータ63は、マニュアル液圧源であるマスタシリンダ14と並列に設けられている。なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。
【0060】
ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御を行う場合には、ブレーキECU300は、マスタカット弁20、21を閉弁状態とするとともにシミュレータカット弁18bを開弁状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル10の操作に伴ってマスタシリンダ14から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ4ではなくストロークシミュレータ部18へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、マスタカット弁20、21の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。
【0061】
ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御において要求制動力を液圧制動力のみにより発生させる場合には、ブレーキECU300はマスタシリンダ圧をホイールシリンダ圧の目標液圧として制御することになる。よって、この場合は必ずしもホイールシリンダ圧制御系統によってホイールシリンダ4にブレーキフルードを供給しなくてもよい。運転者によるブレーキペダル10の操作によって加圧されたマスタシリンダ圧をホイールシリンダ4にそのまま導入すれば自然に要求制動力を発生させることができるからである。
【0062】
続いて、本実施形態に係るブレーキ制御装置1のブレーキ動作について、図2(A)〜図3(B)を参照しながら、通常加減圧時と急加減圧時とに分けて説明する。図2(A)は、通常加圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。図2(B)は、通常減圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。図3(A)は、急加圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。図3(B)は、急減圧時のブレーキ制御装置の状態を示す概略図である。図2(A)〜図3(B)では、ブレーキフルードの主な流れを太線で示している。
【0063】
ここで、通常加減圧時とは、要求液圧制動力から算出された各ホイールシリンダ4の目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値以下である場合をいう。そして、急加減圧時とは、ホイールシリンダ4の目標液圧と現在の液圧との差がしきい値を上回り、通常加減圧時と比べて単位時間あたりの液圧の変動幅が大きい場合をいう。通常加減圧と急加減圧とを分けるしきい値は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能であり、また当該しきい値はブレーキECU300の所定の記憶領域に格納保持される。
【0064】
ブレーキペダル10の踏み込み量が変化して、その際のストロークセンサ12の検出信号がブレーキECU300に入力されると、ブレーキECU300はブレーキペダル10の踏み込み量に対応する要求制動力を演算し、要求制動力から回生制動力を減じて要求液圧制動力を算出する。そして、ブレーキECU300は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ4の目標液圧を算出し、目標液圧と現在の液圧とを比較して行うべき制御が加圧であるか減圧であるかを判定するとともに、目標液圧と現在の液圧との差と所定のしきい値とを比較して通常加減圧であるか急加減圧であるかを判定する。
【0065】
(通常加減圧時のブレーキ動作)
通常加圧であった場合、ブレーキECU300は、図2(A)に示すように、シミュレータカット弁18bを開弁状態とし、マスタカット弁20、21を閉弁状態とする。これにより、マスタシリンダ14からホイールシリンダ4へのブレーキフルードの供給が遮断され、マスタシリンダ14から送出されるブレーキフルードはストロークシミュレータ18aに供給される。また、ブレーキECU300は、モータ62を制御してポンプ60、61を駆動するとともに、リザーバカット弁22、23、保持弁26〜29を開弁状態とし、減圧弁30〜33、アキュムレータカット弁34、35を閉弁状態とする。これにより、リザーバタンク16に貯留されているブレーキフルードが、リザーバ配管203、204、リザーバ流路207、208、ポンプ連通路213、214、増圧用流路215、216、個別流路209〜212を介して各ホイールシリンダ4に供給される。このようにポンプ60、61によりホイールシリンダ4にブレーキフルードが供給されると、供給されたブレーキフルードが加圧され、これにより各ホイールシリンダ4に液圧が発生する。
【0066】
また、ブレーキECU300は、ホイールシリンダ圧センサ52、53の検知結果に基づいて、調圧リニア制御弁24、25の開度を調整する。これにより、ホイールシリンダ4に供給されたブレーキフルードが調圧リニア制御弁24、25の開度に応じてリザーバタンク16に還流し、各ホイールシリンダ4の液圧が目標液圧となるように調整される。なお、ブレーキECU300は、調圧リニア制御弁24、25の開度の調整とともに、ホイールシリンダ圧センサ52、53の検知結果に基づいてモータ62への通電量を調整してポンプ60、61の駆動量を制御することで、各ホイールシリンダ4の液圧を調整するようにしてもよい。
【0067】
一方、通常減圧であった場合、ブレーキECU300は、図2(B)に示すように、ポンプ60、61の駆動を停止するとともに、ホイールシリンダ圧センサ52、53の検知結果に基づいて調圧リニア制御弁24、25の開度を大きくする。これにより、各ホイールシリンダ4に供給されたブレーキフルードが、調圧リニア制御弁24、25の上下流間の差圧によって個別流路209〜212、リザーバ流路207、208、リザーバ配管203、204を介してリザーバタンク16に還流する。その結果、各ホイールシリンダ4の液圧が減圧される。
【0068】
(急加減圧時のブレーキ動作)
急加圧であった場合、ブレーキECU300は、図3(A)に示すように、シミュレータカット弁18bを開弁し、マスタカット弁20、21を閉弁状態として、マスタシリンダ14から送出されるブレーキフルードをストロークシミュレータ18aに供給する。また、ブレーキECU300は、ポンプ60、61を駆動するとともに、リザーバカット弁22、23、保持弁26〜29を開弁状態とし、減圧弁30〜33を閉弁状態とする。これにより、リザーバタンク16のブレーキフルードが、リザーバ配管203、204、リザーバ流路207、208、ポンプ連通路213、214、増圧用流路215、216、個別流路209〜212を介して各ホイールシリンダ4に供給される。また、ブレーキECU300は、アキュムレータカット弁34、35を開弁状態とする。これにより、アキュムレータ63に加圧状態で収容されていたブレーキフルードがアキュムレータ連通路221、222、増圧用流路215、216、個別流路209〜212を介して各ホイールシリンダ4に供給される。このように、ポンプ60、61およびアキュムレータ63によりブレーキフルードが各ホイールシリンダ4に供給されることで、各ホイールシリンダ4に液圧が発生する。
【0069】
また、ブレーキECU300は、通常加圧時と同様に調圧リニア制御弁24、25の開度を調整して、各ホイールシリンダ4に供給されたブレーキフルードをリザーバタンク16に還流し、各ホイールシリンダ4の液圧が目標液圧となるように調整する。なお、ブレーキECU300は、調圧リニア制御弁24、25の開度の調整とともに、ポンプ60、61の駆動量を制御することで、各ホイールシリンダ4の液圧を調整するようにしてもよい。
【0070】
このように急加圧時には、ブレーキECU300は、ポンプ60、61によるホイールシリンダ4への液圧の発生と、アキュムレータ63によるホイールシリンダ4への液圧の発生とを組み合わせてホイールシリンダ4の液圧を目標液圧に調整している。具体的には、ブレーキECU300は、ポンプ60、61によりブレーキフルードを供給して各ホイールシリンダ4に液圧を発生させるとともに、アキュムレータ63によりブレーキフルードを供給して各ホイールシリンダ4に液圧を発生させる。そのため、ポンプ60、61のみで液圧を発生させる場合と比べて単位時間当たりの液圧の上昇量を増やすことができ、したがって各ホイールシリンダ4の液圧を短時間で目標液圧に到達させることができる。なお、ブレーキECU300は、ポンプ60、61による液圧の発生に換えて、アキュムレータ63による液圧の発生によりホイールシリンダ4の液圧を調整するようにしてもよい。
【0071】
一方、急減圧であった場合、ブレーキECU300は、図3(B)に示すように、ポンプ60、61の駆動を停止するとともに、ホイールシリンダ圧センサ52、53の検知結果に基づいて調圧リニア制御弁24、25の開度を大きくする。これにより、各ホイールシリンダ4に供給されたブレーキフルードが、調圧リニア制御弁24、25の上下流間の差圧によって個別流路209〜212、リザーバ流路207、208、リザーバ配管203、204を介してリザーバタンク16に還流する。また、ブレーキECU300は、減圧弁30〜33を開弁状態とする。これにより、各ホイールシリンダ4に供給されたブレーキフルードが、減圧弁30〜33の上下流間の差圧によって減圧用流路217〜220、ポンプ連通路213、214、リザーバ流路207、208、リザーバ配管203、204を介してリザーバタンク16に還流する。その結果、各ホイールシリンダ4の液圧が減圧される。
【0072】
このように、急減圧時には、ブレーキECU300はポンプ60、61の駆動を停止し、調圧リニア制御弁24、25を開弁して個別流路209〜212を介してブレーキフルードをリザーバタンク16に還流するとともに、減圧弁30〜33を開弁して減圧用流路217〜220を介してブレーキフルードをリザーバタンク16に還流している。そのため、調圧リニア制御弁24、25の開弁によるブレーキフルードの還流のみの場合と比べて、単位時間当たりの液圧の減少量を増やすことができ、したがって各ホイールシリンダ4の液圧を短時間で目標液圧に到達させることができる。
【0073】
なお、ブレーキECU300や、液圧アクチュエータ100の各電磁制御弁に異常が発生した場合には、モータ62や、各電磁制御弁への通電が全てOFFにされる。その結果、図1に示されるように、シミュレータカット弁18b、リザーバカット弁22、23、減圧弁30〜33、アキュムレータカット弁34、35が閉弁状態とされ、マスタカット弁20、21、調圧リニア制御弁24、25、保持弁26〜29が開弁状態とされる。その結果、ブレーキペダル10の踏み込みによってマスタシリンダ14に発生したマスタシリンダ圧が直接各ホイールシリンダ4に伝えられ、これにより車輪に制動力を付与することができる。
【0074】
続いて、ブレーキ制御装置1におけるブレーキ動作の制御フローについて説明する。図4は、ブレーキ動作の制御フローチャートである。このフローは、ブレーキECU300により実行され、例えばイグニッションスイッチがONとなった場合に所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0075】
図4に示すように、ブレーキ動作の制御フローが開始されると、まず、ブレーキペダル10の踏み込み量が変化したか判断される(ステップ1:以下S1と略記する。他のステップも同様)。ブレーキペダル10の踏み込み量が変化していない場合(S1_No)、ブレーキペダル10の踏み込み量が変化するまで判断を繰り返す。ブレーキペダル10の踏み込み量が変化した場合(S1_Yes)、目標液圧が算出され、算出された目標液圧と現在の液圧とが比較される(S2)。そして、目標液圧と現在の液圧との比較から、行うべき制御が加圧制御であるか否かが判断される(S3)。行うべき制御が加圧であった場合(S3_Yes)、目標液圧と現在液圧との差と、所定のしきい値とが比較される(S4)。そして、当該比較から、行うべき制御が急加圧制御であるか否かが判断される(S5)。
【0076】
行うべき制御が急加圧であった場合(S5_Yes)、ポンプ60、61によるブレーキフルードの供給とアキュムレータ63によるブレーキフルードの供給、すなわち、第1動力液圧源と第2動力液圧源による加圧が実行され(S6)、制御が終了する。行うべき制御が急加圧でなかった場合(S5_No)、行うべき制御は通常加圧であると判定され(S7)、ポンプ60、61によるブレーキフルードの供給、すなわち、第1動力液圧源による加圧が実行され(S8)、制御が終了する。
【0077】
一方、行うべき制御が加圧でなかった場合(S3_No)、行うべき制御は減圧であると判定され(S9)、目標液圧と現在液圧との差と、所定のしきい値とが比較される(S10)。そして、当該比較から、行うべき制御が急減圧制御であるか否かが判断される(S11)。行うべき制御が急減圧であった場合(S11_Yes)、調圧リニア制御弁24、25の開弁と、減圧弁30〜33の開弁とによる減圧が実行され(S12)、制御が終了する。行うべき制御が急減圧でなかった場合(S11_No)、行うべき制御は通常減圧であると判定され(S13)、調圧リニア制御弁24、25の開弁にる減圧が実行され(S14)、制御が終了する。
【0078】
アキュムレータ63への蓄圧は、以下のようにして実施される。すなわち、ブレーキECU300は、ストロークセンサ12の信号からブレーキペダル10が操作されていないことを検知すると、ポンプ60、61を駆動するとともに、リザーバカット弁22、23、アキュムレータカット弁34、35を開弁状態として、ポンプ60、61からアキュムレータ63にブレーキフルードを供給する。これにより、アキュムレータ63に圧力エネルギーが蓄えられる。また、このときブレーキECU300は、ホイールシリンダ4に液圧を発生させる際の最大出力よりも低い出力でポンプ60、62によりブレーキフルードを供給し、アキュムレータ63に液圧を蓄える。なお、ホイールシリンダ4に液圧が発生しないように、保持弁26〜29は閉弁状態とされる。
【0079】
このように、本実施形態では、ポンプ60、61によりアキュムレータ63に液圧を蓄えているため、アキュムレータ63への蓄圧用のポンプを設ける必要がなく、部品点数の増大を抑えることができる。また、車輪への制動要求が出されていない制動非要求状態にあるとき、あるいは、車輪に制動力を付与していないときにポンプ60、61によりアキュムレータ63に液圧を蓄えているため、不使用時のポンプ60、61を有効利用できる。また、ホイールシリンダ4に液圧を発生させる際のポンプ60、61の最大出力よりも低い出力でアキュムレータ63に液圧を蓄えるため、アキュムレータ63への蓄圧で消費される電力の低減を図ることができる。
【0080】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、図5に示すように、従来公知の車両安定性制御(VSC:Vehicle Stability Control)機構を備えたブレーキ制御装置を利用して形成することができる。図5は、従来のVSC機構を備えたブレーキ制御装置に回生ブレーキユニットが組み込まれた状態を示す概略図である。すなわち、従来のブレーキ制御装置が有するVSCユニットに、アキュムレータ連通路221、222が追加されてVSCユニット100bが形成される。そして、VSCユニット100bとマスタシリンダ14との間に、マスタカット弁20、21、リザーバカット弁22、23、アキュムレータカット弁34、35、およびアキュムレータ63を備えた回生ブレーキユニット100aが組み込まれて、対応する流路が互いに接続されて、本実施形態に係るブレーキ制御装置1が形成される。
【0081】
この場合、液圧アクチュエータ100は、回生ブレーキユニット100aとVSCユニット100bとで構成される。従来のECB機構を備えたブレーキ制御装置では、一般に1つの動力液圧源を備えていた。そして、当該動力液圧源とホイールシリンダとを接続する流路に調圧リニア制御弁を備え、この調圧リニア制御弁は、動力液圧源の高い圧力が常にかかり、また調圧リニア制御弁の上下流間で差圧の大きい状態でホイールシリンダの液圧を調整していた。そのため、従来の調圧リニア制御弁には高い耐圧性と、高精度な調圧機能が必要であった。これに対し、本実施形態に係るブレーキ制御装置1では、2つの動力液圧源を備えるため、それぞれの動力液圧源で発生させる液圧を小さくすることができ、また動力液圧源の1つであるアキュムレータ63からの高圧はアキュムレータカット弁34、35が受けている。そのため、調圧リニア制御弁24、25は従来と比べて高い圧力を受けることなく、またその上下流間での差圧が小さい状態で各ホイールシリンダ4の調圧を行うことができる。したがって、調圧リニア制御弁24、25は従来のECB機構において求められるほどの高耐圧性と高精度な調圧機能を備えている必要がない。そのため、従来のVSCユニットに備えられた調圧リニア制御弁をブレーキ制御装置1の調圧リニア制御弁24、25に利用することができる。
【0082】
また、ポンプだけでホイールシリンダに液圧を発生させる構成では、ホイールシリンダに高圧を付与するためにポンプを大型にしたり複数設ける必要があった。これに対し、ブレーキ制御装置1ではポンプ60、61とアキュムレータ63とを組み合わせてホイールシリンダ4に液圧を発生させるため、ポンプを大型にしたり複数設ける必要がない。そのため、従来のVSCユニットに備えられたポンプをブレーキ制御装置1のポンプ60、61に利用することができる。これらの理由により、従来のVSC機構を利用して本実施形態に係るブレーキ制御装置1を形成することができる。
【0083】
このように、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、従来のECB機構を持たないブレーキ制御装置を利用して構成することができる。そのため、ECB機構を持たないブレーキ制御装置を搭載した車両へのECB機構の追加を、搭載されているブレーキ制御装置をECB機構付きブレーキ制御装置と置き換える場合と比べて、より低コストに実現でき、また発生する廃棄物の量も削減することができる。また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1の構成であれば、従来のブレーキ制御装置に加える変更の規模を小さく抑えることができるため、ECB機構を持たないブレーキ制御装置に対して、簡単にECB機構を追加することができる。なお、従来のVSCユニットに設けられたホイールシリンダ圧センサ54、およびリザーバ64、65は、本実施形態に係るブレーキ制御装置1では不要であるため廃棄することができるが、従来のブレーキ制御装置に加える変更を極力少なくする観点から、本実施形態ではこれらを搭載したままとする。
【0084】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、ポンプ60、61を含む第1動力液圧源と、アキュムレータ63からなる第2動力液圧源とを組み合わせて、目標液圧となるようにホイールシリンダ圧を調整する。具体的には、ブレーキ制御装置1は、通常時は第1動力液圧源によりホイールシリンダ4に液圧を発生させ、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値を上回った場合に第1動力液圧源および第2動力液圧源によりホイールシリンダ4に液圧を発生させている。そのため、本実施形態に係るブレーキ制御装置1によれば、電子制御式ブレーキを備えたブレーキ制御装置において、要求される車輪の制動力に対応した液圧を精度よく発生させることができる。
【0085】
また、ポンプだけでホイールシリンダに液圧を発生させる構成では、ホイールシリンダに高圧を付与するためにポンプを大型にしたり複数設ける必要があり、アキュムレータだけでホイールシリンダに液圧を発生させる構成では、アキュムレータ圧を精度よく調整する構成が必要である。これに対し、ブレーキ制御装置1ではポンプ60、61とアキュムレータ63とを組み合わせて高圧を付与する構成であって、ポンプ60、61およびアキュムレータ63のそれぞれで発生させる液圧は低く抑えることができる。そのため、ブレーキ制御装置1をより簡単な構成とすることができる。また、ポンプの設置数を減らせるため、ブレーキ制御装置1の静粛性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1では、第1動力液圧源としてのポンプ60、61によりアキュムレータ63を蓄圧しているため、アキュムレータ63への蓄圧用のポンプを設ける必要がなく、部品点数の増大を抑えることができる。また、車輪に制動力を付与していないときにポンプ60、61によりアキュムレータ63に液圧を蓄えているため、不使用時のポンプ60、61を有効利用できる。また、ホイールシリンダ4に液圧を発生させる際のポンプ60、61の最大出力よりも低い出力でアキュムレータ63に液圧を蓄えるため、アキュムレータ63への蓄圧で消費される電力の低減を図ることができる。
【0087】
また、ブレーキ制御装置1は、ポンプ60、61およびホイールシリンダ4とアキュムレータ63とを接続するアキュムレータ連通路221、222に、アキュムレータカット弁34、35を備える。これにより、ポンプ60、61でホイールシリンダ4にブレーキフルードを供給する際にアキュムレータカット弁34、35を閉弁することで、ポンプ60、61からアキュムレータ63へのブレーキフルードの流入を回避することができ、その結果、ホイールシリンダ4に安定した液圧を発生させることができる。
【0088】
また、ブレーキ制御装置1は、リザーバタンク16とホイールシリンダ4とを接続する流路上、具体的には個別流路209、212における個別流路210、211の接続部よりも上流側に、調圧リニア制御弁24、25が設けられている。これにより、ホイールシリンダ4の液圧を高精度に調整することができる。また、アキュムレータカット弁34、35がアキュムレータ63からの高圧を受けているため、従来のECB構成と比べて、調圧リニア制御弁24、25に高い耐圧性を持たせる必要がない。また、調圧リニア制御弁24、25は、差圧の小さい状態でホイールシリンダ圧を調整することができるため、脈動の発生を抑えることができ、その結果、異音、振動の発生を抑えることができる。
【0089】
さらに、ブレーキ制御装置1は、マスタシリンダ14とホイールシリンダ4とを接続する流路上、具体的にはマスタ流路205、206に、マスタカット弁20、21を備え、ポンプ60、61またはアキュムレータ63によりホイールシリンダ4に液圧を発生させる際にマスタカット弁20、21を閉弁する。これにより、ホイールシリンダ圧の変動にともなってブレーキフルードがマスタシリンダ14に流入、あるいはマスタシリンダ14から流出することで生じるブレーキペダル10の変位を回避でき、ブレーキフィーリングを向上させることができる。また、ブレーキフルードの液圧を大気圧相当まで低減できる。
【0090】
また、ブレーキ制御装置1は、調圧リニア制御弁24、25よりも上流側にリザーバカット弁22、23を備える。これにより、調圧リニア制御弁24、25が故障した場合であっても、ホイールシリンダ4に発生した液圧を保持できるため、フェールセーフ機能を確保することができる。また、ホイールシリンダ4に発生した液圧を保持しながら、調圧リニア制御弁24、25への通電をOFFにして調圧リニア制御弁24、25に発生した熱を放熱することができる。そのため、ブレーキ制御装置1の信頼性を向上させることができる。
【0091】
また、ブレーキ制御装置1は、調圧リニア制御弁24、25の下流側と上流側とを調圧リニア制御弁24、25を介さずに接続する減圧用流路217〜220と、減圧用流路217〜220に設けられた減圧弁30〜33を備える。そして、通常時は調圧リニア制御弁24、25の開度を調整することで液圧が低減され、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値を上回った場合に調圧リニア制御弁24、25の開度の調整に加えて減圧弁30〜33の開弁により液圧が低減される。これにより、要求される車輪の制動力に対応した液圧を精度よく発生させることができる。
【0092】
(実施形態2)
実施形態2に係るブレーキ制御装置1は、調圧リニア制御弁24、25がリザーバ流路207、208に設けられ、ポンプ連通路213、214がリザーバカット弁22、23よりも上流側でリザーバ流路207、208に接続されている点が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、ブレーキ制御装置1のその他の構成、およびブレーキ動作とその制御フローは、実施形態1と基本的に同一である。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0093】
図6は、実施形態2に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。ブレーキ制御装置1は、図6に示されるように、ディスクブレーキユニット2と、マスタシリンダ14と、リザーバタンク16と、ストロークシミュレータ部18と、液圧アクチュエータ100と、ブレーキECU300と、を備える。リザーバ流路207、208におけるリザーバカット弁22、23よりもブレーキフルード流れの下流側には、それぞれ調圧リニア制御弁24、25が設けられている。また、リザーバ流路207、208におけるリザーバカット弁22、23よりも上流側には、それぞれポンプ連通路213、214の一端が接続されている。このような構成によっても、実施形態1と同様のブレーキ動作を行うことができる。
【0094】
また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、図7に示すように、従来公知のABS(Anti-lock Brake System)機構を備えたブレーキ制御装置を利用して形成することができる。図7は、従来のABS機構を備えたブレーキ制御装置に回生ブレーキユニットが組み込まれた状態を示す概略図である。すなわち、従来公知のABS機構を備えたブレーキ制御装置が有するABSユニットに、アキュムレータ連通路221、222が追加されてABSユニット100cが形成される。そして、ABSユニット100cとマスタシリンダ14との間に、マスタカット弁20、21、リザーバカット弁22、23、調圧リニア制御弁24、25、アキュムレータカット弁34、35、およびアキュムレータ63を備えた回生ブレーキユニット100aが組み込まれて、対応する流路が互いに接続されて、本実施形態に係るブレーキ制御装置1が形成される。
【0095】
この場合、液圧アクチュエータ100は、回生ブレーキユニット100aとABSユニット100cとで構成される。ここで、ポンプだけでホイールシリンダに液圧を発生させる構成では、ホイールシリンダに高圧を付与するためにポンプを大型にしたり複数設ける必要があった。これに対し、ブレーキ制御装置1ではポンプ60、61とアキュムレータ63とを組み合わせてホイールシリンダ4に液圧を発生させるため、ポンプを大型にしたり複数設ける必要がない。そのため、従来のABSユニットに備えられたポンプをブレーキ制御装置1のポンプ60、61に利用することができる。これにより、従来のABS機構を利用して本実施形態に係るブレーキ制御装置1を形成することができる。
【0096】
このように、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、従来のECB機構を持たないブレーキ制御装置を利用して構成することができる。そのため、ECB機構を持たないブレーキ制御装置を搭載した車両へのECB機構の追加をより低コストに実現でき、また発生する廃棄物の量も削減することができる。また、本実施形態に係るブレーキ制御装置1の構成であれば、従来のブレーキ制御装置に加える変更の規模を小さく抑えることができるため、ECB機構を持たないブレーキ制御装置に対して、簡単にECB機構を追加することができる。なお、従来のABSユニットに設けられたホイールシリンダ圧センサ54、およびリザーバ64、65は、本実施形態に係るブレーキ制御装置1では不要であるため廃棄することができるが、従来のブレーキ制御装置に加える変更を極力少なくする観点から、本実施形態ではこれらを搭載したままとする。
【0097】
以上説明した構成を備えたブレーキ制御装置1によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0098】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ブレーキ制御装置、 4,4FR,4FL,4RL,4RR ホイールシリンダ、 14 マスタシリンダ、 16 リザーバタンク、 20,21 マスタカット弁、 22,23 リザーバカット弁、 24,25 調圧リニア制御弁、 30,31,32,33 減圧弁、 34,35 アキュムレータカット弁、 60,61 ポンプ、 63 アキュムレータ、 217,218,219,220 減圧用流路、 300 ブレーキECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液流路を介して供給された作動液の液圧により車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、
動力により作動液を前記ホイールシリンダに供給し、供給した作動液を加圧することで液圧を発生させる第1動力液圧源と、
作動液を加圧された状態で収容し、収容した作動液を前記ホイールシリンダに供給することで液圧を発生させる第2動力液圧源と、
前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源とを組み合わせて、目標液圧となるようにホイールシリンダにおける液圧を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値以下の場合に第1動力液圧源により液圧を発生させ、前記差が前記しきい値を上回った場合に第1動力液圧源および第2動力液圧源により液圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記第2動力液圧源は、前記第1動力液圧源により供給された作動液を加圧された状態で収容することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車輪への制動非要求状態にあるときに、第2動力液圧源に液圧を蓄えることを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ホイールシリンダに液圧を発生させる際の最大出力よりも低い出力で前記第1動力液圧源により作動液を供給し、前記第2動力液圧源に液圧を蓄えることを特徴とする請求項3または4に記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源とを接続する作動液流路に設けられ、開弁して前記第1動力液圧源と前記第2動力液圧源との間の作動液の流通を許容するカット弁を備えたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
作動液を貯留するリザーバタンクと、
運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記リザーバタンクに貯留された作動液を前記ホイールシリンダに供給し、供給した作動液を加圧することで液圧を発生させるマニュアル液圧源と、
前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、閉弁してマニュアル液圧源による前記ホイールシリンダへの作動液の供給を遮断するマスタカット弁と、を備え、
前記第1動力液圧源および前記第2動力液圧源は、前記マニュアル液圧源と並列に設けられ、
前記制御部は、前記第1動力液圧源または前記第2動力液圧源により前記ホイールシリンダに液圧を発生させる場合に、前記マスタカット弁を閉弁することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、弁の開度により前記ホイールシリンダに発生させた液圧を調整する調圧リニア制御弁を備えたことを特徴とする請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記調圧リニア制御弁は、非通電時は開弁状態で、通電制御により開度が調整される常開型制御弁であり、
前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路上に設けられ、閉弁してホイールシリンダに液圧を保持するリザーバカット弁を備えたことを特徴とする請求項8に記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記リザーバタンクと前記ホイールシリンダとを接続する作動液流路における前記調圧リニア制御弁の作動液流れ下流側と上流側とを、前記調圧リニア制御弁を介さずに接続する減圧用流路と、
前記減圧用流路上に設けられ、開弁して前記減圧用流路を介した前記ホイールシリンダと前記リザーバタンクとの間の作動液の流通を許容する減圧弁と、を備え、
前記制御部は、目標液圧と現在の液圧との差が所定のしきい値以下の場合に前記調圧リニア制御弁の開度を大きくすることで液圧を低減し、前記差が前記しきい値を上回った場合に前記調圧リニア制御弁の開度の増大と前記減圧弁の開弁とにより液圧を低減することを特徴とする請求項8または9に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269772(P2010−269772A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125782(P2009−125782)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】