説明

ブレーキ装置のピストンストローク調節機構

【課題】調節誤差の発生を防止可能なブレーキ装置のピストンストローク調節機構を提供する。
【解決手段】ブレーキ板25,26をピストン31で車軸2の軸方向に押圧する形式のブレーキ装置4におけるピストンストローク調節機構35であって、手動カム44がロッド43の軸線回りに回転することで、スリーブ42が手動カム44と一体的に固定筒41に対して回転しながら軸方向に進退し、かつ、手動カム44がカム軸45回りに90°回転することで、ロッド43が手動カム44に従動してスリーブ42に対して軸方向に進退する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内で車軸と共に回転するブレーキ板をピストンで軸方向に押圧する形式のブレーキ装置のピストンストローク調節機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械等のブレーキ容量の大きな機械には、湿式ブレーキが採用されている(例えば、特許文献1)。この湿式ブレーキでは、繰り返し使用することによりブレーキ板が摩耗してくると、ブレーキ板を側方から押圧するためのピストンが新品時よりも大きい距離を移動しなければ、新品時と同じ力でブレーキを押圧することができず、ブレーキの利きが変化する。よって、ブレーキ板の摩耗量に合わせてピストンとブレーキ板との距離を適宜調節することが望ましい。そこで従来は、一般的には、ピストンのブレーキ板を押圧する面の反対面に対向するようにピストンの可動範囲を制限するネジ付きロッドを設け、メンテナンス時にロッドをピストンに突き当たるまでネジを回して進出させ、そこから所定回転だけ緩めて後退させることで、ピストンストロークを調節している。
【特許文献1】特開2000−297830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の調節機構であると、ロッドがピストンに突き当った後、ユーザは回転数を数えながらロッドを所定量だけ逆回転させてロッドを後退させるため、その緩め量にユーザごとの誤差が出やすくなる。
【0004】
そこで本発明は、調節誤差の発生を防止可能なブレーキ装置のピストンストローク調節機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るブレーキ装置のピストンストローク調節機構は、ハウジング内で車軸と共に回転するブレーキ板をピストンで前記車軸の軸方向に押圧する形式のブレーキ装置における前記ピストンのストロークを調節する機構であって、前記車軸と略平行に配置され、前記ピストンの前記ブレーキ板を押圧する面の反対面に一端部を対向させて、前記ピストンのストローク量を制限するロッドと、前記ロッドが前記軸方向に進退自在に挿入され、外周面に雄ネジ部が刻設されたスリーブと、前記スリーブが内嵌される貫通穴を画定し、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が刻設された周状の固定壁面と、前記ロッドの他端部に接触するように前記スリーブに取り付けられ、前記軸方向と直交する方向にカム軸を有する手動カムと、を備え、前記手動カムが前記ロッドの軸線回りに回転することで、前記スリーブが、前記手動カムと一体的に前記固定壁面に対して回転しながら前記軸方向に進退し、かつ、前記手動カムが前記カム軸回りに所定角回転することで、前記ロッドが、前記手動カムに従動して前記スリーブに対して前記軸方向に進退する構成である。
【0006】
前記構成によれば、手動カムをカム軸回りに回転させてロッドをスリーブに対してピストン側に進出させた状態で、手動カムをロッドの軸線回りに回転させると、スリーブが手動カムと共に固定壁面に対してピストン側に進出し、手動カムにより他端部が押されたロッドがピストン側に進出する。そして、ロッドの一端部がピストンに突き当った後には、手動カムをカム軸回りに逆回転させると、ロッドがピストンから決まった距離だけ後退する。即ち、ピストンに突き当ったロッドを後退させる動作は、ロッドを軸線回りに回転数を数えながら逆回転させることにより行うのではなく、手動カムをカム軸回りに所定角回転させることにより行う。したがって、ユーザごとの調節誤差の発生を防止することが可能となる。
【0007】
前記手動カムを覆うように前記ハウジングに直接又は間接的に着脱可能なキャップをさらに備え、前記キャップは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態では前記手動カムに干渉して取付不可となる一方、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンから後退させる後退姿勢にある状態では取付可能となる構成であってもよい。
【0008】
前記構成によれば、手動カムが、ロッドをピストンから後退させる後退姿勢にある状態でないと、キャップを取り付けることができない。つまり、ピストンストローク調節後にキャップが正しく取り付けることができないことで、ユーザはロッドがピストンに突き当った後にロッドを後退させるのを忘れたことに気付くこととなる。したがって、ユーザによるピストンストロークの調節ミスを防止することができる。
【0009】
前記固定壁面は、前記ブレーキ装置のハウジングに一体的に設けられた固定筒の内周面であり、前記固定筒の前記ブレーキ板と反対側の端部は、前記手動カムに対応する位置にあり、前記固定筒の前記端部には、前記軸方向に延びるスリット又は溝部が形成されており、前記手動カムは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態では前記スリット又は溝部に嵌合不可である一方、前記ロッドを前記ピストンから後退させる後退姿勢にある状態では前記スリット又は溝部に嵌合可能な構成であってもよい。
【0010】
前記構成によれば、ピストンストロークの調整後には、手動カムを後退姿勢でスリット又は溝部に嵌合させることで、手動カムが不意にロッドの軸線回りに回転するのが防がれ、ピストンストロークを安定的に維持することが可能となる。また、手動カムが進出姿勢にあるときには、手動カムをスリット又は溝部に嵌合させることができないため、ユーザはロッドがピストンに突き当った後にロッドを後退させるのを忘れたことに気付くことも可能となる。したがって、ユーザによるピストンストロークの調節ミスも防止することもできる。
【0011】
前記固定壁面は、前記ブレーキ装置のハウジングに一体的に設けられた固定筒の内周面であり、前記手動カムは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態で前記カム軸及び前記ロッドの軸線に直交する方向に突出する突出部を有し、前記突出部は、前記進出姿勢において前記軸方向に前記固定筒の端部と対向する構成であってもよい。
【0012】
前記構成によれば、手動カムが進出姿勢でロッドがピストンに突き当った状態において、手動カムの突出部と固定筒の端部との距離を目視することで、ブレーキ板の磨耗量を推測することができる。よって、ノギス等を用いてブレーキ板の磨耗量を調べる手間を無くすことが可能となる。
【0013】
前記突出部は、前記ブレーキ板の磨耗限界において前記固定筒の端部と接触するよう構成されていてもよい。
【0014】
前記構成によれば、手動カムが進出姿勢の状態で手動カムの突出部が固定筒の端部に接触することにより、ブレーキ板が磨耗限界に達したことを把握することができ、ブレーキ板の寿命管理が容易になる。
【0015】
前記突出部は、前記進出姿勢において前記固定筒の外周面と略平行となるハンドル部を有していてもよい。
【0016】
前記構成によれば、手動カムの突出部に設けられたハンドル部が固定筒の外周面と略平行となることで、手動カムが進出姿勢にあることを正しく把握することができ、ブレーキ板の磨耗量チェックを正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ユーザごとの調節誤差の発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るアクスル装置1の縦断面図である。なお、以下の説明で用いる方向の概念は図1を見たときの方向を基準とする。図1に示すように、アクスル装置1は、建設機械等の車両の駆動輪を駆動する車軸2の軸端に設けられている。このアクスル装置1は、遊星歯車減速機3及びブレーキ装置4を備え、遊星歯車減速機3のキャリア5の外周部がタイヤホイール6に固定されている。アクスルハウジング7は、車軸2に外嵌された状態で、タイヤホイール6の軸方向中央部まで進出配置されており、その左端部にはインターナルギヤハブ8のハブ本体9がスプライン結合で外嵌されている。インターナルギヤハブ8の外周側は、ホイールハブ13により囲繞されている。ホイールハブ13の右端部は、一対の軸受14を介してアクスルハウジング7及びハブ本体9に回転自在に支持されている。
【0020】
ブレーキ装置4は、アクスルハウジング7の右端面に固定されたブレーキハウジング23を有し、ブレーキハウジング23の右端面には第2のアクスルハウジング24が固定されている。但し、ブレーキハウジング23とアスクルハウジング24とは一部材から構成されていてもよい。ブレーキ装置4は湿式多板式であり、ブレーキハウジング23内には複数の非回転ブレーキ板25と複数の回転ブレーキ板26とが交互に積層配置されている。非回転ブレーキ板25には、アクスルハウジング7及びブレーキハウジング23に固定されたピン27が貫通している。これにより、非回転ブレーキ板25は、軸方向に移動可能で且つ回転不可の状態となっている。
【0021】
回転ブレーキ板26は、車軸2に外嵌固定されたリング部材28にスプライン接続されている。これにより、回転ブレーキ板26は、軸方向に移動可能であり、かつ、車軸2と共に回転可能の状態となっている。アクスルハウジング7には、非回転ブレーキ板25及び回転ブレーキ板26からなるブレーキ板群29のうち一番左側にある非回転ブレーキ板25の外側面に対向するように受圧部材30が設けられている。一方、ブレーキ板群29のうち一番右側にある非回転ブレーキ板25に右側面に対向するように、軸方向に移動可能なピストン31が配置されている。
【0022】
ブレーキハウジング23には、ピストン31の非回転ブレーキ板25を直接押圧する面の反対面(右側面)に圧油を供給するための油圧孔23aが形成されている。つまり、油圧孔23aに圧油が供給されることで、ピストン31は左側へ移動する圧力を受けて一番右側の非回転ブレーキ板25を直接押圧する。また、ピストン31は、リターンスプリング32により、ブレーキ板群29から離反するように右側に向けて付勢されている。さらに、ブレーキハウジング23及び第2のアクスルハウジング24には、このピストン31の可動範囲を調節するためのピストンストローク調節機構35が設けられている。
【0023】
図2は図1に示すアクスル装置1のブレーキ装置4のピストンストローク調節機構35を示す拡大断面図である。図2に示すように、ピストンストローク調節機構35は、第2のアクスルハウジング24に固定された固定筒41と、固定筒41に内嵌螺着されたスリーブ42と、車軸2と略平行に配置されてスリーブ42に軸方向に進退自在に挿入されたロッド43と、ロッド43の他端部43bに接触するようにスリーブ42に取り付けられた手動カム44とを備えている。
【0024】
詳しくは、ブレーキハウジング23には、ピストン31の右側面に対向する挿通孔23bが形成されており、固定筒41は、その挿通孔23bに連通するように第2のアクスルハウジング24の取付孔24aに固定されている。固定筒41には、スリーブ42が内嵌される貫通穴47を画定する周状の固定壁面41aが内周面として設けられている。固定筒41の右端部41bは、第2のアクスルハウジング24から右側に突出している。固定筒41の内周面には、雌ネジ部41cが刻設されている。固定筒41の右端部41bには、周方向に間隔をあけて軸方向に延びる6つのスリット41d(図3参照)が形成されている。
【0025】
スリーブ42は、その外周面に雄ネジ部42aが刻設されており、固定筒41の雌ネジ部41cに螺着されている。ロッド43は、スリーブ42に進退自在に挿入された状態で貫通孔23aを貫通して一端部43aがピストン31に対向し、ピストン31のストローク量を制限している。スリーブ42には、ロッド43の軸方向と直交する方向に軸線を有するカム軸45が接続されており、そのカム軸45には手動カム44が回転可能に設けられている。この手動カム44は、固定筒41の右端部41bに対応する位置に配置されている。
【0026】
手動カム44は、薄肉部44aと、当該薄肉部44aに直交する隣接辺となる厚肉部44bとを有している。即ち、薄肉部44aのカム軸45から径方向外側に向けた厚みをT1、厚肉部44bのカム軸45から径方向外側に向けた厚みをT2とすると、T1<T2の関係が成立している。ここで、図2のように薄肉部44aがロッド43の他端部43bに対向した状態では、ロッド43がピストン31から離れる方向に後退するので、当該状態における手動カム44の姿勢を後退姿勢と称することとする。一方、後述する図3のように厚肉部44bがロッド43の他端部43bに対向した状態では、ロッド43がピストン31に向けて進出するので、当該状態における手動カム44の姿勢を進出姿勢と称することとする。
【0027】
薄肉部44aの外面は平坦面で、かつ、厚肉部44bの外面は薄肉部44aの外面と直交する平坦面であり、薄肉部44aと厚肉部44bとの間の角部はカム軸45を中心として円弧状に形成された円弧部44cとなっている。よって、手動カム44は、その円弧部44cをロッド43の他端部43bに当接させながらカム軸45回りに90°回転することにより、後退姿勢と進出姿勢との間で姿勢変化することができる。
【0028】
手動カム44は、その後退姿勢(図2)にある状態でピストン31から離れる方向に突出する突出部44dを有している。その突出部44dの突出端には、手動カム44が後退姿勢(図2)にある状態おいて、カム軸45と直交する方向に厚肉部44bのある側に向けて突出するハンドル部44eが設けられている。また、固定筒41の右端部41bの外周面には雄ネジ部41eが刻設されており、その雄ネジ部41eには、内周面に雌ネジ部49aが刻設されたキャップ49が螺着されている。キャップ49と第2のアクスルハウジング24との間にはウェービングワッシャ48が介装されている。
【0029】
次に、ピストンストローク調節機構35による調節動作を図3〜6を参照して説明する。図3は図2に示すピストンストローク調節機構35のロッド43進出時を示す拡大断面図である。図4は図3のIV矢印方向から見た側面図である。図5は図3の状態からロッド43後退させた状態のピストンストローク調節機構35を示す拡大断面図である。図6は図5のVI矢印方向から見た側面図である。
【0030】
ブレーキ装置4の繰り返し使用によりブレーキ板25,26が磨耗してきた際には、図3に示すように、ユーザはキャップ49(図2参照)を取り外し、手動カム44をカム軸45回りに回転させて厚肉部44bをロッド43の他端部43bに対向させる。これにより、手動カム44は進出姿勢となり、ロッド43が手動カム44に従動してスリーブ42に対してピストン31側に進出する。この状態では、突出部44dは、ロッド43の軸方向において固定筒41の右端部41dと対向し、かつ、ハンドル部44eは、固定筒41の外周面と略平行となる。
【0031】
図4に示すように、この進出姿勢では、手動カム44は、ロッド43の軸線回りに回転しても固定筒41と干渉しないようになっている。つまり、手動カム44は、進出姿勢にある状態では固定筒41のスリット41dに嵌合不可となっている。さらに、手動カム44が進出姿勢にある状態では、突出部44d及びハンドル部44eが固定筒41よりも径方向外側に突出するため、キャップ49(図2参照)は手動カム44に干渉して取付不可となっている。
【0032】
この状態からユーザは、ハンドル部44eを把持して手動カム44をロッド43の軸線の時計回りに回転させる。そうすると、スリーブ42が固定筒41に対してピストン31側に進出し、スリーブ42と一体である手動カム44もピストン31側に進出する。これにより、手動カム44に押されたロッド43の一端部43aがピストン31に突き当たる。この突き当たった状態において、手動カム44の突出部44dが固定筒41の右端部41bと接触した場合には、ブレーキ板25,26が磨耗限界に達していると判断される。
【0033】
次いで、図5に示すように、ユーザはハンドル部44eを把持して手動カム44をカム軸45回りに90°逆回転させ、手動カム44の薄肉部44aをロッド43の他端部43bに対向させる。これにより、手動カム44は後退姿勢となり、ロッド43が手動カム44に従動してスリーブ42に対してピストン31から所定距離(T2−T1)だけ後退する。この状態では、図6に示すように、手動カム44は、固定筒41のスリット41dに嵌合可能となっている。そして、この状態から、図1のようにキャップ49を固定筒41に取り付けて手動カム44を覆う。この際、図5のVI矢印方向から見て、手動カム44が固定筒41の外周面よりも径方向外側に突出していないので、キャップ49を手動カム44に干渉することなく取り付けることができる。
【0034】
以上に説明した構成によれば、ピストン31に突き当ったロッド43を後退させる動作は、ロッド43を軸線回りに回転させることにより行うのではなく、手動カム44をカム軸45回りに90°回転させることにより行うので、ユーザごとの調節誤差の発生を防止することができる。また、手動カム44が後退姿勢にある状態でないと、キャップ49を取り付けることができないので、ピストンストローク調節後にキャップ49が正しく取り付けることができないことで、ユーザはロッド43がピストン31に突き当った後にロッド43を後退させるのを忘れたことに気付き、調節ミスを防止することができる。さらに、ピストンストローク調整後には、手動カム44を後退姿勢でスリット41dに嵌合させることにより、手動カム44が不意にロッド43の軸線回りに回転するのが防がれ、ピストンストロークを安定的に維持することができる。
【0035】
また、手動カム44が進出姿勢となってロッド43がピストン31に突き当った状態において、手動カム44の突出部44dと固定筒41の右端部41bとの距離を目視することで、ブレーキ板25,26の磨耗量を推測することができる。よって、ノギス等を用いてブレーキ板25,26の磨耗量を調べる手間を無くすことができる。かつ、手動カム44が進出姿勢の状態で手動カム44の突出部44dが固定筒41の右端部41bに接触することにより、ブレーキ板25,26が磨耗限界に達したことを把握することもでき、ブレーキ板25,26の寿命管理が容易になる。さらに、手動カム44のハンドル部44eが固定筒41の外周面と略平行となることで、手動カム44が進出姿勢にあることを正しく把握することができ、ブレーキ板25,26の磨耗量チェックを正確に行うことができる。
【0036】
なお、前述した実施形態においては、固定筒41は第2のアクスルハウジング24と別体で設けられているが、一体に設けてもよい。即ち、スリーブ42が内嵌挿通される貫通穴41aはハウジングの一部に形成されてもよい。また、固定筒41には、スリット41dの代わりに、径方向に貫通していない溝部を設けてもよい。また、ピストン31が直接押圧するブレーキ板は、非回転ブレーキ板25となっているが、回転ブレーキ板26であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るブレーキ装置のピストンストローク調節機構は、ユーザごとの調節誤差の発生を防止することが可能となる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる湿式ブレーキ等に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るアクスル装置の縦断面図である。
【図2】図1に示すアクスル装置のブレーキ装置のピストンストローク調節機構を示す拡大断面図である。
【図3】図2に示すピストンストローク調節機構のロッド進出時を示す拡大断面図である。
【図4】図3のIV矢印方向から見た側面図である。
【図5】図3の状態からロッド後退させた状態のピストンストローク調節機構を示す拡大断面図である。
【図6】図5のVI矢印方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 車軸
4 ブレーキ装置
5 キャリア
23 ブレーキハウジング
25,26 ブレーキ板
31 ピストン
35 ピストンストローク調節機構
41 固定筒
41a 固定壁面
41c 雌ネジ部
41d スリット
42 スリーブ
42a 雄ネジ部
43 ロッド
43a 一端部
43b 他端部
44 手動カム
44e ハンドル部
45 カム軸
47 貫通穴
49 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸と共に回転するブレーキ板をピストンで前記車軸の軸方向に押圧する形式のブレーキ装置における前記ピストンのストロークを調節する機構であって、
前記車軸と略平行に配置され、前記ピストンの前記ブレーキ板を押圧する面の反対面に一端部を対向させて、前記ピストンのストローク量を制限するロッドと、
前記ロッドが前記軸方向に進退自在に挿入され、外周面に雄ネジ部が刻設されたスリーブと、
前記スリーブが内嵌される貫通穴を画定し、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が刻設された周状の固定壁面と、
前記ロッドの他端部に接触するように前記スリーブに取り付けられ、前記軸方向と直交する方向にカム軸を有する手動カムと、を備え、
前記手動カムが前記ロッドの軸線回りに回転することで、前記スリーブが、前記手動カムと一体的に前記固定壁面に対して回転しながら前記軸方向に進退し、かつ、
前記手動カムが前記カム軸回りに所定角回転することで、前記ロッドが、前記手動カムに従動して前記スリーブに対して前記軸方向に進退する構成であるブレーキ装置のピストンストローク調節機構。
【請求項2】
前記手動カムを覆うように前記ハウジングに直接又は間接的に着脱可能なキャップをさらに備え、
前記キャップは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態では前記手動カムに干渉して取付不可となる一方、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンから後退させる後退姿勢にある状態では取付可能となる構成である請求項1に記載のブレーキ装置のピストンストローク調節機構。
【請求項3】
前記固定壁面は、前記ブレーキ装置のハウジングに一体的に設けられた固定筒の内周面であり、
前記固定筒の前記ブレーキ板と反対側の端部は、前記手動カムに対応する位置にあり、
前記固定筒の前記端部には、前記軸方向に延びるスリット又は溝部が形成されており、
前記手動カムは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態では前記スリット又は溝部に嵌合不可である一方、前記ロッドを前記ピストンから後退させる後退姿勢にある状態では前記スリット又は溝部に嵌合可能な構成である請求項1又は2に記載のブレーキ装置のピストンストローク調節機構。
【請求項4】
前記固定壁面は、前記ブレーキ装置のハウジングに一体的に設けられた固定筒の内周面であり、
前記手動カムは、前記手動カムが前記ロッドを前記ピストンに向けて進出させる進出姿勢にある状態で前記カム軸及び前記ロッドの軸線に直交する方向に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記進出姿勢において前記軸方向に前記固定筒の端部と対向する構成である請求項1乃至3のいずれかに記載のブレーキ装置のピストンストローク調節機構。
【請求項5】
前記突出部は、前記ブレーキ板の磨耗限界において前記固定筒の端部と接触するよう構成されている請求項4に記載のブレーキ装置のピストンストローク調節機構。
【請求項6】
前記突出部は、前記進出姿勢において前記固定筒の外周面と略平行となるハンドル部を有している請求項4又は5に記載のブレーキ装置のピストンストローク調節機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281473(P2009−281473A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133383(P2008−133383)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】