説明

ブレーキ装置への作動液充填方法

【課題】ブレーキ装置の仕様によらず、作動液の真空充填処理を効率的に実行可能な技術を提供する。
【解決手段】ある態様のブレーキ装置への作動液充填方法は、液圧源に接続された真空引き装置を駆動し、液圧回路の真空引き処理を実行する真空引き工程と、液圧源に接続された作動流体圧送装置を駆動し、真空引き後の液圧回路に作動液を圧送する圧送工程と、圧送開始後の所定のタイミングにてポンプを所定期間駆動し、そのポンプ駆動による追加の液圧を液圧回路に供給する加圧工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置の液圧回路への作動液充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブレーキペダルの操作力に応じた液圧を液圧回路内に発生させ、その液圧を配管を通じて各車輪のホイールシリンダに供給することにより車両に制動力を付与するブレーキ装置が知られている。この液圧回路は、ブレーキフルード(作動液)を貯留する液圧源と各車輪のホイールシリンダとを配管等の液圧通路によりつなぎ、その液圧通路には増圧弁や減圧弁等のアクチュエータが設けられている。ブレーキ制御装置は、これらのアクチュエータを制御することによって各車輪に適切な制動力を付与している。
【0003】
ところで、このようなブレーキ装置の配管内にエアが存在すると、増圧時にそのエアが圧縮されることによりブレーキ操作時の応答速度や制御性が低下する。そのため、車両組立工場において、ブレーキ装置にブレーキフルードを充填する際には、まずブレーキ装置の配管内のエアを取り除く真空引きを行い、その後、作動液を充填する「真空充填処理」が一般的に行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
真空充填処理に際しては、ブレーキ装置のリザーバタンクに車両組立工場の設備、すなわち外部設備である真空引き用ポンプや作動流体圧送装置が取り付けられる。続いて真空引き用ポンプを駆動して真空引きを行い、その後、作動流体圧送装置により作動液を液圧回路の全ての流路に圧送充填させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブレーキ装置の仕様は車種によって異なることもあり、液圧回路を構成する通路や配管の大きさや長さ、電磁弁等のアクチュエータの配置やその数等も様々である。このため、外部設備によるブレーキフルードの圧送能力が十分な場合もあれば、そうでない場合もありうる。圧送能力が不足するためにエア残り等の真空充填不良が発生すると、そのエア抜き作業やアクチュエータの組み替え作業等を要し、別途作業コストが嵩む可能性がある。このため、通常の真空充填ラインにおいては、その充填時における作動液の必要量が最大となる車種に合わせて外部設備による注入圧や注入時間等が設定される。しかし、その場合には作動液の必要量がそれより少ない車種にも同じ設定が適用されることとなり、非効率であるといった問題が生じる。逆に、作動液の必要量がさらに大きな車種が追加された場合、その外部設備における設定変更が他の車種にも及ぶといった問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、ブレーキ装置の仕様によらず、作動液の真空充填処理を効率的に実行可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ装置への作動液充填方法は、ポンプの駆動により作動液を供給可能な液圧源と、作動液の供給を受けて車輪に液圧制動力を付与するホイールシリンダと、液圧源とホイールシリンダとをつなぐ液圧回路とを備えたブレーキ装置の液圧回路に作動液を充填する方法であって、液圧源に接続された真空引き装置を駆動し、液圧回路の真空引き処理を実行する真空引き工程と、液圧源に接続された作動流体圧送装置を駆動し、真空引き後の液圧回路に作動液を圧送する圧送工程と、圧送開始後の所定のタイミングにてポンプを所定期間駆動し、そのポンプ駆動による追加の液圧を液圧回路に供給する加圧工程と、を備える。
【0009】
この態様によれば、真空充填処理における作動液の圧送開始後にポンプが駆動され、液圧回路に追加の液圧が供給される。このため、仮に作動流体圧送装置の圧送能力が不足するような場合、つまりそれだけでは作動液が液圧回路の末端にまで十分に到らない場合であっても、その不足分を補うことができ、真空充填処理を正常に完了させることができる。作動流体圧送装置の圧送能力を一定の水準に設定したとしても、処理対象となるブレーキ装置の仕様に応じてポンプの駆動状態を調整することにより、同じ水準にて様々な車種に対応することができる。また、圧送能力が足りる場合であっても、液圧の追加供給によりその圧送時間を短縮できるというメリットがある。
【0010】
ここで、「所定のタイミング」は、圧送開始からポンプへの作動液の充填が完了するまでの時間が少なくとも確保されるように設定されるのが好ましい。このようにすることで、ポンプの空転を防止でき、その摺動部の焼き付き等の故障を回避することができる。
【0011】
ブレーキ装置は、ポンプの駆動による液圧を所定の封入圧をもって蓄圧可能な蓄圧部を有し、その蓄圧された液圧を各車輪のホイールシリンダに供給して制動力を発生させるように構成されていてもよい。そして、加圧工程において、液圧回路に供給される液圧が封入圧以下となるように追加の液圧の供給を調整してもよい。
【0012】
この態様のブレーキ装置には、制動制御の応答性を確保するために蓄圧部が設けられているが、そのブレーキ装置が実際に機能する前の真空充填処理の段階ではその蓄圧部の蓄圧機能は必ずしも要しない。逆に、その蓄圧機能が作動すると、液圧回路に必要以上に作動液が充填される可能性がある。この態様ではそれを考慮し、蓄圧機能が実質的に作動しない範囲、つまり液圧回路に供給される液圧が蓄圧部の封入圧以下となる範囲にて液圧の追加供給を行うものである。
【0013】
また、加圧工程において、ホイールシリンダにおける液圧が封入圧より低い予め定める許容圧以下となるように追加の液圧の供給を調整してもよい。真空充填処理は液圧回路内の全ての経路、つまり液圧源からホイールシリンダへの作動液の供給経路のみならず、ホイールシリンダから液圧源への作動液の帰還経路においても実行される。作動液の帰還経路は通常、供給経路に比べて耐圧強度が小さく構成されているため、ここではその液圧として許容圧を設定し、その許容圧を超えるようであれば、追加の液圧の供給を規制するものである。
【0014】
液圧回路には、液圧源からホイールシリンダへの作動液の供給を許容または遮断するために開閉される複数の増圧制御弁と、ホイールシリンダから液圧源への作動液の開放を許容または遮断するために開閉される複数の減圧制御弁とが設けられてよい。そして、加圧工程において、ポンプ駆動が開始される前に複数の増圧制御弁および複数の減圧制御弁をそれぞれ開閉制御して、液圧回路内に予め設定した加圧領域を形成し、その加圧領域に対して追加の液圧を供給してもよい。
【0015】
ここで、「加圧領域」として、液圧回路内の特定の領域をひとつ設定してもよいし、複数の領域を段階的に切り替えるように設定してもよい。この態様によれば、追加の液圧を供給する際にその加圧領域を制限することで、液圧回路内における必要箇所への作動液の速やかな充填を実現することができる。加圧領域の設定によっては、例えば液圧回路内において作動液が回り込みにくい袋小路部分への充填を促進することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブレーキ装置の仕様によらず、作動液の真空充填処理を効率的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態に係る作動液の充填技術が適用されるブレーキ装置を、その液圧回路を中心に示す系統図である。
【図2】ブレーキフルードの充填方法を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態の作用効果を表す図である。
【図4】真空充填処理の流れの概要を示すシーケンス図である。
【図5】第2の実施の形態にかかるブレーキフルードの充填方法を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る作動液の充填技術が適用されるブレーキ装置を、その液圧回路を中心に示す系統図である。まず、既に作動液が充填されて、制動制御を実現可能な状態にあるブレーキ装置について説明する。
【0019】
ブレーキ装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に設定するものである。ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体(作動液)としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。また、ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。更に、マスタシリンダ14には、リザーバタンク26が接続されており、マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、シミュレータ作動弁23を介して、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。なお、シミュレータ作動弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り換えられる常閉型電磁弁である。シミュレータ作動弁23が開弁されることにより、ストロークシミュレータ24が機能できるようになる。
【0020】
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。
【0021】
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧センサ48FLが設けられている。ブレーキ装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧センサ48FRおよび左マスタ圧センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。
【0022】
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。アキュムレータ50、オイルポンプ34、モータ32は、ブレーキフルード圧を蓄圧可能なアキュムレータ部として機能する。オイルポンプ34の吸入口は、非駆動時、油圧給排管28との連通が遮断される。本実施例では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
【0023】
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって所定のアキュムレータ圧(例えば14〜22MPa程度)にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
【0024】
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
【0025】
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRは、減圧弁42FRおよび低圧管31を介して油圧給排管28に接続されている。左前輪用のホイールシリンダ20FLは、減圧弁42FLおよび低圧管31を介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRは、減圧弁42RRおよび低圧管31を介して油圧給排管28に接続されている。左後輪用のホイールシリンダ20RLは、減圧弁42RLおよび低圧管31を介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42RRおよび42RLは、常開型の電磁流量制御弁(リニア弁)であり、増圧制御中には通電されて開弁する。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。各減圧弁42が開弁されると、低圧管31におけるブレーキフルードの流通が許容され、ホイールシリンダ20内のブレーキフルードが、低圧管31および油圧給排管28を介してリザーバタンク26へと還流する。
【0026】
ホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、シリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「シリンダ圧センサ44」という。
【0027】
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、計時用のカウンタ、入出力インターフェース、メモリ等を備える。
【0028】
ECU200は、制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル12を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。ECU200は、制動要求を受けて要求制動力を演算し、要求制動力に応じた液圧制動力である要求液圧制動力を算出する。そして、ECU200は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ20の目標液圧を算出する。ECU200は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御により増圧弁40や減圧弁42に供給する制御電流の値を決定する。
【0029】
その結果、動力液圧源から送出されたブレーキフルードが増圧弁40を介して各ホイールシリンダ20に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ20からブレーキフルードが減圧弁42を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施の形態においては、動力液圧源、増圧弁40及び減圧弁42等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成され、いわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダ14からホイールシリンダ20へのブレーキフルードの供給路に並列に設けられている。この制動力制御が実行されるときには、ECU200は、電磁開閉弁22FR,22FLを閉状態としてマスタシリンダ14から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ20へ供給されないようにする。
【0030】
次に、ブレーキフルードの充填方法について説明する。
図2は、ブレーキフルードの充填方法を示すタイミングチャートである。同図には、オイルポンプ34の駆動状態、電磁開閉弁22FR,22FLの開閉制御状態、増圧弁40FR〜40RLの開閉制御状態、減圧弁42FR〜42RLの開閉制御状態が示されている。同図の横軸は時間の経過を表している。
【0031】
本実施の形態に係るブレーキフルードの真空充填処理は、車両組立工場において以下に述べる真空引き工程、圧送工程および加圧工程を経て行われる。
車両組立工場においてはまず、外部設備である真空充填装置100がリザーバタンク26に取り付けられる。真空充填装置100は、真空引き用ポンプ110および作動流体圧送装置120を含んで構成されている。そして、真空引き工程において、真空引き用ポンプ110が、リザーバタンク26からブレーキ装置10の液圧回路内を真空引きする。この真空引き工程においては、液圧回路内の全ての空間を真空引きすることが必要である。一方で液圧回路においては様々な電磁弁が流路上に配置されており、常閉弁などにより閉じられた閉塞空間が存在している。具体的には、オイルポンプ34は、非駆動時にその吸入口側で油圧給排管28と高圧管30との連通を遮断しており、また高圧管30の下流側に位置する増圧弁40は常閉弁として構成されている。そのため、真空引き工程は、閉塞空間をなくすために必要な電磁弁を開弁させ、高圧管30とリザーバタンク26とを連通させた状態で行われる。このようにして真空引きが完了すると、作動流体圧送装置120が液圧回路内にブレーキフルードを圧送する圧送工程へ移行する。
【0032】
圧送工程においては、作動流体圧送装置120が駆動され、液圧回路へ向けてブレーキフルードを圧送する。図示の例では、真空引き完了後の時刻t1においてブレーキフルードの注入が開始されている。このとき、電磁開閉弁22FR,22FL、増圧弁40および減圧弁42は全て開弁状態とされ、作動流体圧送装置120から吐出されたブレーキフルードは、リザーバタンク26からブレーキ油圧制御管16、ブレーキ油圧制御管18および油圧給排管28を介して複数の方向から液圧回路へ圧送される。すなわち、圧送工程においては油圧給排管28を経るブレーキフルードの液圧が通常よりも高圧になり、オイルポンプ34が非駆動状態にあっても低圧管31から液圧回路内に供給される。つまり、低圧管31についてはブレーキフルードが通常とは逆方向に流れるようになる。
【0033】
一方、作動流体圧送装置120の圧送能力には限界があり、本実施の形態ではその注入圧および注入時間を一定水準に設定しているため、ブレーキ装置の仕様によっては、その作動流体圧送装置120の圧送能力のみではブレーキフルードの充填不良を招く可能性がある。そこで、本実施の形態ではこの圧送工程の終期に追加の液圧を供給する加圧工程に移行する。
【0034】
加圧工程においては、まず、液圧回路において加圧すべき加圧回路を形成するために、増圧弁40を開弁状態に保持する一方、電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42を閉弁状態とする。すなわち、本実施の形態ではオイルポンプ34の駆動によって高圧管30を介して追加の液圧を供給する際、その液圧が低圧管31、ブレーキ油圧制御管16、ブレーキ油圧制御管18を介してリザーバタンク26側に開放されないようにする。図示の例では、時刻t2において電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42FR〜42RLが開弁状態から閉弁状態に切り替えられている。
【0035】
このようにして加圧回路が形成された後、時刻t3にモータ32が駆動され、オイルポンプ34が作動を開始している。そして、時刻t4において電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42を閉弁状態から開弁状態に切り替え、さらに時刻t5にオイルポンプ34を停止させて加圧前の状態に戻している。なお、本実施の形態では、ブレーキフルードの注入を開始してからオイルポンプ34の駆動を開始するまでの時間(時刻t1からt3までの時間)を30秒程度に設定し、そのオイルポンプ34の駆動時間(時刻t3からt5までの時間)を5秒程度に設定している。また、電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42FR〜42RLの閉弁タイミングとオイルポンプ34の駆動タイミングとのずれ(時刻t2からt3までの時間)、および電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42FR〜42RLの開弁タイミングとオイルポンプ34の駆動停止タイミングとのずれ(時刻t4からt5までの時間)を、それぞれ1秒程度に設定している。それにより、オイルポンプ34の駆動開始時には加圧領域が確実に形成され、駆動停止時には加圧領域が開放されるようにしている。ただし、これらの時間設定はあくまで一例であり、ブレーキ装置の仕様等により適切な値を適宜設定可能であることはいうまでもない。
【0036】
図3は、本実施の形態の作用効果を表す図である。同図(A)は、加圧工程による追加の液圧供給を行う本実施の形態による作用効果を表している。同図(B)は、追加の液圧供給を行わない比較例の作用効果を表している。各図において、横軸は時間の経過を表し、縦軸は作動流体圧送装置120によるブレーキフルードの注入液量を表している。また、図中の実線は作動流体圧送装置120によるブレーキフルードの吐出量を表し、破線は液圧回路におけるブレーキフルードの充填量を表している。また、Vallは必要ブレーキ液量を表し、リザーバタンク26における液面が予め設定された上限値に達する程度のブレーキフルードの注入量に相当する。
【0037】
同図(A)に示すように、作動流体圧送装置120によるブレーキフルードの圧送が開始されると、その吐出量はほぼ比例的に増加する。一方、液圧回路におけるブレーキフルードの充填量は当初、その吐出量に対して遅れ時間Tdをもって増加する。このときのブレーキフルードの注入圧は、作動流体圧送装置120の圧送能力に応じた注入圧Pとなる。本実施の形態ではブレーキフルードの圧送過程において追加の液圧供給が行われるが、オイルポンプ34の焼き付き等を防止するために、オイルポンプ34へのブレーキフルードの充填完了が想定されるタイミングを待ってオイルポンプ34の駆動が開始される。
【0038】
すなわち、オイルポンプ34内にブレーキフルードが満たされるまでに要する液圧回路へのブレーキフルードの注入液量Vpが実験的に求められる。そして、作動流体圧送装置120の圧送能力に応じたその圧送開始から注入液量Vpに到るまでの時間Tpが予め実験等により取得されている。ECU200は、作動流体圧送装置120によるブレーキフルードの圧送開始から時間Tpが経過したタイミングでオイルポンプ34を駆動することにより加圧工程に移行させる。その結果、作動流体圧送装置120の吐出量は一定であるものの、オイルポンプ34の駆動による注入圧Ppumpが追加され、ブレーキフルードの注入圧は、作動流体圧送装置120の圧送能力に応じた液圧に追加の液圧を加えた注入圧(P+Ppump)となる。このように注入圧が増加した結果、液圧回路におけるブレーキフルードの充填速度も高まり、その充填量も必要ブレーキ液量Vallに速やかに到達するようになる。仮に、ブレーキ装置の仕様に対して作動流体圧送装置120の圧送能力が不足するようなことがあっても、このオイルポンプ34の駆動により液圧回路へのブレーキフルードの充填を確保できるようになる。
【0039】
図示の例では、液圧回路におけるブレーキフルードの充填量が必要ブレーキ液量Vallに達したと推定される時点Tbでオイルポンプ34が停止されるとともに、作動流体圧送装置120による圧送も停止される。この時間Tbについては、実験等により予め設定されている。その後、リザーバタンク26内の液面調整のためのレベリング処理が行われる。このレベリング処理においては、リザーバタンク26内に貯留されるブレーキフルードの液面が設定範囲内に位置するよう、作動流体圧送装置120によるブレーキフルードの注入または排出が行われる。それにより液圧回路へのブレーキフルードの充填量が必要ブレーキ液量Vallに収束する。
【0040】
本実施の形態では、このようにブレーキフルードの圧送過程でポンプ駆動による追加の液圧が供給されるため、液圧回路へのブレーキフルードの充填が完了する時点においては、ブレーキフルードの注入遅れ、つまり作動流体圧送装置120により必要液量が注入されてからそのブレーキフルードがホイールシリンダ20を満たすまでの時間遅れTeを短縮することが可能となる。また、その注入遅れが短縮されるため、レベリング処理による液面調整時間Tcについても短縮することができる。
【0041】
これに対し、比較例においては追加の液圧供給がなされないため、作動流体圧送装置120の圧送能力に応じた注入圧Pにて継続的にブレーキフルードの注入が行われる。このため、液圧回路におけるブレーキフルードの充填量が必要ブレーキ液量Vallに到達するまでの時間Tbが本実施の形態に比較して長くかかり、その結果、時間遅れTe(実質的に遅れ時間Tdに等しい)および液面調整時間Tcも長くなっている。言い換えれば、本実施の形態によれば、これらの処理時間を短くすることができるため、ブレーキフルードの効率的かつ無駄のない充填処理を行うことができる。
【0042】
図4は、真空充填処理の流れの概要を示すシーケンス図である。
本実施の形態の真空充填処理に際しては、上述のように事前にECU200と油圧アクチュエータ80との電気的接続を完了させておく。また、リザーバタンク26に外部設備の真空充填装置100を取り付け、真空充填装置100のコネクタをECU200に接続し、両者の通信とECU200への電源供給を可能にしておく。
【0043】
作業員により図示しない駆動スイッチがオンにされると、真空充填装置100が駆動を開始し、予め設定されたスケジュールにしたがって真空充填処理を実行する。なお、この真空充填処理において真空引き用ポンプ110と作動流体圧送装置120とが同時にリザーバタンク26に連通されることはない。真空引き用ポンプ110が駆動されて真空引き処理が完了し、真空引き用ポンプ110とリザーバタンク26との間の連通が遮断された後、作動流体圧送装置120がリザーバタンク26に連通されて、ブレーキフルードをブレーキ装置10に圧送する。
【0044】
すなわち、真空充填装置100は、まず予め設定された真空充填パターンにしたがって油圧アクチュエータ80を駆動させるための駆動開始要求を出力する(S102)。ECU200は、この駆動開始要求を受けると、液圧回路上の常閉弁への通電を行ってそれらを開弁させ、真空充填許可状態とする(S202)。このとき、その真空充填許可状態を表す情報を真空充填装置100へ送るようにしてもよい。
【0045】
真空充填装置100は、このように真空充填許可状態になると、まず真空引き用ポンプ110を駆動して真空引き処理を開始する(S104)。そして、予め設定した時間(例えば60秒)が経過すると(S106のY)、真空引き処理が完了したとして真空引き用ポンプ110の駆動を停止する。この設定時間には、液圧回路の真空引きを完了させるのに十分な時間が予め設定される。
【0046】
続いて、真空充填装置100は、作動流体圧送装置120を駆動してブレーキフルードを一定の注入圧(例えば0.3Mpa程度)にて液圧回路内に圧送する圧送処理を開始する(S108)。そして、予め設定した時間Tpが経過すると(S110のY)、オイルポンプ34へのブレーキフルードの充填が完了したとして加圧処理の実行要求を出力する(S112)。
【0047】
ECU200は、その加圧処理の実行要求を受けると、それに応じて加圧制御を実行する(S204)。すなわち、上述のように電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42RR,22RLへの通電を行う一方、減圧弁42FR,22FLへの通電を停止してこれらの電磁弁を所定期間閉弁する。また、オイルポンプ34を所定期間駆動させる(S206)。このとき、オイルポンプ34の駆動により加圧工程に移行したことを表す情報を真空充填装置100へ送るようにしてもよい。
【0048】
真空充填装置100は、その後に予め設定した時間Tbが経過すると(S114のY)、ブレーキフルードの充填処理が完了したとして真空充填パターンの終了要求を出力する(S116)。ECU200は、この終了要求を受けると、油圧アクチュエータ80への通電を停止する。その結果、液圧回路上の常閉弁は閉弁状態に保持される。真空充填装置100は、その後、リザーバタンク26の液面調整であるレベリング処理を実行する(S118)。すなわち、リザーバタンク26内の設定位置に延出させた吸引用のチューブを介してブレーキフルードを所定期間吸引する。これにより、ブレーキフルードの液面レベルがそのチューブの先端位置、つまり予め定める液面の適正範囲に調整される。そして、レベリング処理が完了すると、作動流体圧送装置120の駆動を停止させる。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態においては、ブレーキ装置10の真空充填処理におけるブレーキフルードの圧送開始後にオイルポンプ34が駆動され、液圧回路に追加の液圧が供給される。このため、作動流体圧送装置120の圧送能力を一定の水準に設定したとしても、処理対象となるブレーキ装置10の仕様に応じてオイルポンプ34の駆動状態を調整することにより、同じ水準にて様々な車種に対応することができる。また、圧送能力が足りる場合であっても、液圧の追加供給によりその充填処理時間を短縮してトータルとして真空充填処理の効率化を図ることができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、加圧処理の実行条件が異なる点を除けば第1の実施の形態とほぼ同様である。このため、第1の実施の形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等してその説明を省略する。
【0051】
図5は、第2の実施の形態にかかるブレーキフルードの充填方法を示すタイミングチャートである。同図には、オイルポンプ34の駆動状態、電磁開閉弁22FR,22FLの開閉制御状態、増圧弁40FR〜40RLの開閉制御状態、減圧弁42FR〜42RLの開閉制御状態、アキュムレータ圧Paccの状態、およびホイールシリンダ圧Pwcの状態が示されている。同図の横軸は時間の経過を表している。
【0052】
本実施の形態では、加圧工程においてアキュムレータ圧Paccおよびホイールシリンダ圧Pwcを監視し、そのいずれか一方がそれぞれに設定された上限圧を超えると、ブレーキフルードの注入液量が必要ブレーキ液量Vallに達しているか否かにかかわらず、オイルポンプ34の駆動を一旦停止させて液圧回路内の液圧上昇を抑制する。ECU200は、アキュムレータ圧センサ51により検出されるアキュムレータ圧Paccと、シリンダ圧センサ44により検出されるホイールシリンダ圧Pwcとをそれぞれ監視し、その液圧上昇の抑制を実行する。
【0053】
ここでは、アキュムレータ圧Paccの上限圧として、アキュムレータ50の封入圧が設定されている。この封入圧は、アキュムレータ50において蓄圧が開始される圧力を意味し、本実施の形態では例えば9MPaに設定される。また、ホイールシリンダ圧Pwcの上限圧として、液圧回路におけるドレイン系の許容圧が設定されている。この許容圧は、減圧弁42の下流側の低圧管31と油圧給排管28とをつなぐ通路に損傷が発生することのないよう、そのドレイン系の耐圧が設定されている。図1に示した第1の実施の形態では、油圧給排管28が、高圧管30および低圧管31の双方につながる共通の配管として構成されているが、本実施の形態では、低圧管31とリザーバタンク26とをつなぐ配管として油圧給排管28とは別に低圧配管が設けられており、その許容圧としてこの低圧配管のリザーバタンク26からの脱落を防止可能なホース抜け圧(例えば0.5MPa)が設定されている。
【0054】
図示の例では、オイルポンプ34の駆動によってアキュムレータ圧Paccおよびホイールシリンダ圧Pwcがともに上昇しているが、予め設定された加圧処理の実行時間を経過する前の時刻t24にてアキュムレータ圧Paccがその封入圧に達したため、加圧処理が中断されている。つまり、電磁開閉弁22FR,22FLおよび減圧弁42が開弁状態とされて加圧領域が開放され、続いて時刻t25にてオイルポンプ34が停止されている。なお、図示の例では、アキュムレータ圧Paccがホイールシリンダ圧Pwcよりも先に上限圧に達した例を示したが、ホイールシリンダ圧Pwcがアキュムレータ圧Paccよりも先に上限圧に達した場合には、その時点で加圧処理が中断される。なお、液圧回路の構成上、アキュムレータ圧Paccおよびホイールシリンダ圧Pwcのいずれかが先に上限圧に達することが明らかであれば、その先に上限圧に達する液圧についてのみ上限圧を設定し、その監視を行うようにしてもよい。
【0055】
本実施の形態においては、加圧工程においてアキュムレータ50による蓄圧機能が実質的に作動しない範囲にて液圧の追加供給を行うようにしたため、液圧回路に必要以上にブレーキフルードが充填されることを防止することができる。また、ブレーキフルードの充填過程において異常が発生した場合に加圧領域に高圧を封じ込めるようなことが防止され、安全性が確保される。
【0056】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0057】
上記実施の形態においては、真空充填装置100とECU200とを接続し、真空充填装置100からECU200へ真空充填処理のための制御コマンドを出力する態様を示した。変形例においては、真空充填装置100と、真空充填処理において駆動するアクチュエータとを直接接続し、真空充填装置100により該当するアクチュエータを直接駆動制御するようにしてもよい。
【0058】
上記実施の形態においては、ブレーキ装置10として、各ホイールシリンダ20に対して個別にリニア制御を実行する増圧弁40および減圧弁42を設けるシステム構成を有するものを例示した。変形例においては、各ホイールシリンダ20に対して共通のリニア制御弁からなる増圧用制御弁および減圧用制御弁を設け、各ホイールシリンダ20の上流圧を制御するシステム構成を採用してもよい。その場合にもオイルポンプ34による加圧処理を適用することができる。
【0059】
上記実施の形態においては、加圧工程において4つの増圧弁40FR〜40RLの開閉パターン、4つの減圧弁42FR〜42RLの開閉パターンをそれぞれ同様に設定した例を示した。変形例においては、各増圧弁40および各減圧弁42の開閉パターンを個別に設定するようにしてもよい。例えば、前輪側の増圧弁40FR,40FLと後輪側の増圧弁40RR,40RLとを交互に開弁させるようにしてもよい。すなわち、前輪側のホイールシリンダ20FR,20FLと、後輪側のホイールシリンダ20RR,20RLとで油圧アクチュエータ80との接続配管の長さが異なるような場合、接続配管が長い側のホイールシリンダ20のほうがブレーキフルードが回り込みにくくなる。しかし、このようにして加圧領域を小さく設定して交互に切り替えることで、ブレーキフルードをその末端にまで行き渡らせることが容易になる。このように前輪側の増圧弁40FR,40FLと後輪側の増圧弁40RR,40RLとを交互に開弁する際、ブレーキフルードが回り込みにくい一方の加圧時間を他方よりも長くなるようにすると、より効果的である。
【0060】
上記第2の実施の形態においては、アキュムレータ圧Paccおよびホイールシリンダ圧Pwcを液圧回路に設けられた液圧センサにより検出し、加圧工程においてこれら監視する例を示した。変形例においては、これらの液圧センサを用いることなく、各液圧を推定するようにしてもよい。例えば、オイルポンプ34を駆動するモータ32の回転数、あるいはモータ32に供給する制御電流値からアキュムレータ圧Paccを推定するようにしてもよい。その場合、その回転数や制御電流値とアキュムレータ圧Paccとが対応付けられた制御マップを予め用意しておくとよい。ECU200は、検出されたモータ32の回転数あるいは制御電流値を用いて制御マップを参照することにより、アキュムレータ圧Paccを推定することができる。
【0061】
上記第2の実施の形態においては、加圧工程におけるオイルポンプ34の停止条件のひとつとして、アキュムレータ圧Paccおよびホイールシリンダ圧Pwcについての上限値を設定する例を示した。変形例においては加圧処理の開始タイミング、つまりオイルポンプ34の駆動開始タイミングを車両ごとに最適化するようにしてもよい。例えば、アキュムレータ圧Paccまたはホイールシリンダ圧Pwcに基づいて、オイルポンプ34におけるブレーキフルードの充填完了の有無を判定するようにしてもよい。つまり、アキュムレータ圧Paccまたはホイールシリンダ圧Pwcについてその充填完了を判定するための判定基準値を予め設定し、その液圧がその判定基準値以上となったときにオイルポンプ34の充填が完了したとして加圧工程に移行するようにしてもよい。このようにしてオイルポンプ34の駆動開始タイミングを早めることで、液圧回路の末端や袋小路状の部分にもブレーキフルードを行き渡らせることが容易になる。
【符号の説明】
【0062】
10 ブレーキ装置、 14 マスタシリンダ、 16,18 ブレーキ油圧制御管、 20 ホイールシリンダ、 22FL 左電磁開閉弁、 22FR 右電磁開閉弁、 23 シミュレータ作動弁、 26 リザーバタンク、 28 油圧給排管、 30 高圧管、 31 低圧管、 32 モータ、 34 オイルポンプ、 40 増圧弁、 42 減圧弁、 44 シリンダ圧センサ、 50 アキュムレータ、 51 アキュムレータ圧センサ、 80 油圧アクチュエータ、 100 真空充填装置、 120 作動流体圧送装置、 200 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの駆動により作動液を供給可能な液圧源と、作動液の供給を受けて車輪に液圧制動力を付与するホイールシリンダと、前記液圧源と前記ホイールシリンダとをつなぐ液圧回路とを備えたブレーキ装置の前記液圧回路に作動液を充填する方法であって、
前記液圧源に接続された真空引き装置を駆動し、前記液圧回路の真空引き処理を実行する真空引き工程と、
前記液圧源に接続された作動流体圧送装置を駆動し、真空引き後の前記液圧回路に作動液を圧送する圧送工程と、
前記圧送開始後の所定のタイミングにて前記ポンプを所定期間駆動し、そのポンプ駆動による追加の液圧を前記液圧回路に供給する加圧工程と、
を備えることを特徴とするブレーキ装置への作動液充填方法。
【請求項2】
前記所定のタイミングが、前記圧送開始から前記ポンプへの作動液の充填が完了するまでの時間が少なくとも確保されるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置への作動液充填方法。
【請求項3】
前記ブレーキ装置が、前記ポンプの駆動による液圧を所定の封入圧をもって蓄圧可能な蓄圧部を有し、その蓄圧された液圧を各車輪のホイールシリンダに供給して制動力を発生させるように構成され、
前記加圧工程において、前記液圧回路に供給される液圧が前記封入圧以下となるように前記追加の液圧の供給を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置への作動液充填方法。
【請求項4】
前記加圧工程において、前記ホイールシリンダにおける液圧が前記封入圧より低い予め定める許容圧以下となるように前記追加の液圧の供給を調整することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ装置への作動液充填方法。
【請求項5】
前記液圧回路に、前記液圧源から前記ホイールシリンダへの作動液の供給を許容または遮断するために開閉される複数の増圧制御弁と、前記ホイールシリンダから前記液圧源への作動液の開放を許容または遮断するために開閉される複数の減圧制御弁とが設けられ、
前記加圧工程において、前記ポンプ駆動が開始される前に前記複数の増圧制御弁および前記複数の減圧制御弁をそれぞれ開閉制御して、前記液圧回路内に予め設定した加圧領域を形成し、その加圧領域に対して前記追加の液圧を供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキ装置への作動液充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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