説明

ブレーキ

【課題】ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させる。
【解決手段】ブレーキレバーの操作に伴うインナーワイヤWの移動により、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16が、インナーワイヤWの張設方向に沿って直線移動させられ互いに接近離間しつつ、多節リンク機構14が作動するブレーキ1であって、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16には、前記張設方向に沿って延びる案内部材21に前記張設方向に移動自在に係合する係合部22、23が各別に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキとして、例えば下記特許文献1に示されるような、左右一対のアームと、各アームをその延在方向の中間部回りに回動自在に支持する支持体と、各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の一方側に位置する部分に各別に配設されたブレーキシューと、各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の他方側に位置する部分同士を左右方向に接近離間自在に連結する多節リンク機構と、該多節リンク機構に装着されるとともに、ブレーキレバーに連係されたインナーワイヤを保持するインナーワイヤ保持部材と、前記多節リンク機構に装着されるとともに、前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤを保持するアウターワイヤ保持部材と、を備える構成が知られている。
そして、ブレーキレバーの操作に伴うインナーワイヤの移動により、インナーワイヤ保持部材が、インナーワイヤの張設方向に沿って直線移動させられアウターワイヤ保持部材に対して接近離間しつつ、多節リンク機構が作動することにより、ブレーキシューによるリムの挟み込みおよびその解除が切り替えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−90891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のブレーキでは、ブレーキレバーを操作したときに、インナーワイヤ保持部材が、インナーワイヤのうちアウターワイヤ保持部材との間に位置する部分を屈曲させるように、多節リンク機構の平面視で、ブレーキレバーを操作する前のインナーワイヤの延在方向、つまりインナーワイヤの張設方向に対して傾く方向に移動しながらアウターワイヤ保持部材に接近することがあり、ブレーキシューの左右方向のストローク量が安定せずばらつくおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させることができるブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のブレーキは、左右一対のアームと、各アームをその延在方向の中間部回りに回動自在に支持する支持体と、各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の一方側に位置する部分に各別に配設されたブレーキシューと、各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の他方側に位置する部分同士を左右方向に接近離間自在に連結する多節リンク機構と、該多節リンク機構に装着されるとともに、ブレーキレバーに連係されたインナーワイヤを保持するインナーワイヤ保持部材と、前記多節リンク機構に装着されるとともに、前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤを保持するアウターワイヤ保持部材と、を備え、前記ブレーキレバーの操作に伴うインナーワイヤの移動により、前記インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材が、インナーワイヤの張設方向に沿って直線移動させられ互いに接近離間しつつ、前記多節リンク機構が作動するブレーキであって、前記インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材には、前記張設方向に沿って延びる案内部材に前記張設方向に移動自在に係合する係合部が各別に備えられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材に、案内部材に前記張設方向に沿って移動自在に係合する係合部が各別に備えられているので、ブレーキレバーを操作したときに、これらの保持部材が、インナーワイヤのうち両保持部材間に位置する部分を屈曲させるように、多節リンク機構の平面視で、ブレーキレバーを操作する前のインナーワイヤの延在方向、つまりインナーワイヤの張設方向に対して傾く方向に移動しながら互いに接近しようとしても、その位置ずれを、前記係合部が案内部材に係合した状態で前記張設方向に沿って移動することによって規制することが可能になる。
したがって、ブレーキレバーを操作したときに、両保持部材を互いに前記張設方向に沿って確実に接近移動させることが可能になり、ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させることができる。
【0008】
なお、このブレーキに、左右一対のアームを、各ブレーキシューが互いに離間する方向に付勢する付勢手段が配設されている場合には、構造を複雑にすることなく、ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させることができる。
すなわち、前記付勢手段を有し、かつ前述の案内部材や係合部を有しないブレーキでは、ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させるためには、付勢手段から左右一対のアームに付与する付勢力を各別に調整可能な調整手段が必要になるため、構造が複雑になり高コストになるおそれがある。
なお、付勢手段としては、例えばコイルスプリングが挙げられ、この場合、左右一対のアームそれぞれについて、互いに巻き方向が異なり弾性率が同等のコイルスプリングを各別に配設したり、コイルスプリングに対する押し付け力を調整する押しボルトや押しボルトを支持する支持体等を備える調整手段を各別に配設したりする必要がある。
【0009】
ここで、前記多節リンク機構は、前記張設方向に沿って延びる対称軸に対して左右対称形状をなし、前記案内部材は、前記多節リンク機構の平面視で前記対称軸上に沿って延設されてもよい。
【0010】
この場合、構造を複雑にすることなく前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0011】
また、前記インナーワイヤ保持部材においてインナーワイヤが保持された部分を挟む両側、並びに前記アウターワイヤ保持部材においてアウターワイヤが保持された部分を挟む両側に、前記多節リンク機構が備える複数のリンクのうちの1つの端部が単独で各別に連結されてもよい。
【0012】
この場合、インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材それぞれにおける前記両側に、多節リンク機構が備える複数のリンクのうちの1つの端部が単独で各別に連結されているので、インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材に、2つのリンクの端部同士を重ね合わせずに連結することが可能になり、多節リンク機構の厚さ方向の大きさを抑えることができる。
【0013】
さらに、前記左右一対のアームのうちの少なくとも一方と、前記多節リンク機構と、の連結部分には、それぞれのアームに配設されたブレーキシュー同士の左右方向の間隔を一定に維持した状態で、前記多節リンク機構が備える各リンクの前記張設方向に対する傾斜角度を調整可能な調整手段が配設されてもよい。
【0014】
この場合、ブレーキシュー同士の左右方向の間隔を一定に維持した状態で、多節リンク機構が備える各リンクの前記張設方向に対する傾斜角度を調整可能な調整手段が配設されているので、一対のブレーキシューによるリムに対する左右方向の挟み力を、両ブレーキシューのリムに向けた接近移動代を適切に維持したまま、容易かつ確実に変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したブレーキの正面図である。
【図2】図1に示すブレーキの裏面図である。
【図3】図1および図2に示すブレーキを作動させたときの正面図である。
【図4】図1および図2に示すブレーキを作動させたときの裏面図である。
【図5】図1および図2に示すブレーキが装着された自転車の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るブレーキ1は、左右一対のアーム11と、各アーム11を支持する支持体12と、各アーム11に配設されたブレーキシュー13と、各アーム11同士を連結する多節リンク機構14と、多節リンク機構14に装着されるとともに図示されないブレーキレバーに連係されたインナーワイヤWを保持するインナーワイヤ保持部材15と、多節リンク機構14に装着されるとともにインナーワイヤWが挿通されたアウターワイヤCを保持するアウターワイヤ保持部材16と、を備えている。
【0018】
図示の例では、左右一対のアーム11は、上下方向(延在方向)Yに沿って延設されるとともに、支持体12により上下方向Yの中間部11a回りに回動自在に支持されている。なお図示の例では、各アーム11の中間部11aは、支持体12に上下方向Yおよび左右方向Xの双方に対して直交する前後方向Zに延びる軸線回りに回動自在に連結されている。
また、ブレーキシュー13は、各アーム11において中間部11aよりも下方(延在方向の一方側)に位置する部分に各別に配設されている。なお図示の例では、ブレーキシュー13は各アーム11における下端部に各別に配設されている。
多節リンク機構14は、各アーム11において中間部11aよりも上方(延在方向の他方側)に位置する部分同士を左右方向Xに接近離間自在に連結している。なお図示の例では、多節リンク機構14は各アーム11における上端部11e同士を連結している。
インナーワイヤWの張設方向は、左右方向Xに直交する方向であり、図示の例では、上下方向Yと一致している。
【0019】
支持体12は、前後方向Zから見た正面視で下方に向けて開口した弧状をなす板状体となっている。図示の例では、支持体12の上端部における左右方向Xの中央部に、後方に向けて突出し、かつ車体フレームFを貫く固定ボルト12aが配設されており、この固定ボルト12aの後端部にナット12bが螺着されて、支持体12が車体フレームFに固定されている。なお、車体フレームFは車輪Tを回転自在に支持していて、車輪Tの回転に伴い、車輪Tの外周縁部のうち上端部に近い部分が、支持体12の内側を前後方向Zに通過するようになっている。
【0020】
アーム11の中間部11aには、前後方向Zに貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔内に、支持体12から前方に向けて延びる軸部12cが相対的に回転自在に嵌合されている。これにより、アーム11は、その後方から支持部12により軸部12c回りに回転自在に支持されている。なお、軸部12cは、前述のような弧状をなす支持部12の両周端部に各別に配設されている。
また、左右一対のアーム11それぞれにおいて、支持体12の周端部より下方に位置する下端部には、上下方向Yに延びかつ左右方向Xを向く支持板11bが前方に向けて突設され、これらの支持板11b同士の間を、リムRのうち上端部に近い部分が、車輪Tの回転に伴い前後方向Zに通過するようになっている。これらのアーム11の各支持板11bには、ブレーキシュー13から左右方向Xの外側に向けて突設された図示されない雄ねじ部が挿通される上下方向Yに長い長穴11dが形成されている。そして、この雄ねじ部の左右方向Xの外端部に袋ナット13aが螺着されて、ブレーキシュー13が、アーム11の支持板11bに左右方向Xの内側に向けて突出した状態で固定されている。
【0021】
さらに本実施形態では、左右一対のアーム11を、前記中間部11aを中心に、各ブレーキシュー13が互いに離間する方向に付勢する付勢手段20が配設されている。
付勢手段20は、前後方向Zから見た正面視で、支持体12に沿うように下方に向けて開口した弧状をなす湾曲した金属線材となっている。付勢手段20は、前述のような弧状をなす支持体12の上端部から両周端部を下方に超えてアーム11の下端部に至っている。また、付勢手段20は、支持体12の後側に1つ配設されていて、1つの付勢手段20が左右一対のアーム11を双方ともに前述のように付勢している。
ここで、左右一対のアーム11の各下端部には、後方に向けて支持突起11cが各別に突設されており、付勢手段20の両末端部がそれぞれ、支持突起11cを左右方向Xの内側から外側に向けて押圧している。
【0022】
多節リンク機構14は、その平面視、すなわち前後方向Zから見た正面視で、上下方向Yに沿って延びる対称軸Oに対して左右対称形状をなしていて、支持体12より上方に配置されている。
ここで図示の例では、左右一対のアーム11、および支持体12はそれぞれ、前後方向Zから見た正面視で、対称軸Oに対して左右対称形状をなしている。
【0023】
多節リンク機構14が備える複数のリンク14aそれぞれの両端部は、前後方向Zに延びる軸線回りに回転自在に支持されている。また、多節リンク機構14は、複数のリンク14aが上下方向Yに直結されてなるリンク列14bが、対称軸Oを左右方向Xに挟む両側に各別に配設されて構成されている。そして、左右一対のアーム11の各上端部11eは、各リンク列14bが備える複数のリンク14aの端部同士の連結部分のうち、リンク列14bにおける上下方向Yの中央部に位置する部分に連結されている。
【0024】
具体的には、各リンク列14bには2つのリンク14aが備えられ、これらのリンク14aの端部同士の連結部分に、アーム11の上端部11eが連結されている。なお、各リンク列14bにおけるリンク14aの端部同士は、前後方向Zに重ね合わされて連結されている。また、アーム11の上端部11eは、左右方向Xに延びる筒体とされ、その内側に支持軸17が挿通されていて、この支持軸17における左右方向Xの内端部に、リンク列14bにおける2つのリンク14aの端部同士が、前後方向Zに延びる軸線回りに回転自在に連結されている。また、支持軸17における左右方向Xの外端部にナット18が着脱自在に螺着されている。なお、支持軸17の左右方向Xの両端部は、アーム11の上端部11eから外側に突出している。
【0025】
さらに本実施形態では、左右一対のアーム11のうちの少なくとも一方と、多節リンク機構14と、の連結部分に、それぞれのアーム11に配設されたブレーキシュー13同士の左右方向Xの間隔を一定に維持した状態で、多節リンク機構14が備える各リンク14aの上下方向Yに対する傾斜角度を調整可能な調整手段19が配設されている。
【0026】
図示の例では、調整手段19は、支持軸17に挿通された複数のワッシャ19aを備えている。
すなわち、支持軸17において、アーム11の上端部11eと、リンク列14bにおける2つのリンク14aの端部同士の連結部分と、の間に位置する部分、並びにアーム11の上端部11eとナット18との間に位置する部分にそれぞれ挿通するワッシャ19aの数を増減させ、それに伴い、アーム11を前記中間部11a回りに回動変位させず、支持軸17を左右方向Xに移動させることで、複数のリンク14aの上下方向Yに対する傾斜角度が変化するように構成されている。
なお、この調整作業は、ナット18を支持軸17から外し、かつアーム11の上端部11eから支持軸17を抜くことで行うことができる。
【0027】
インナーワイヤ保持部材15は、多節リンク機構14の下端部に装着され、前後方向Zを向き左右方向Xに長い平面視多角形状の本体板15aと、この本体板15aから前方に向けて突設されるとともに、前後方向Zに沿って螺設された雄ねじ部を有する突部15bと、この突部15bに螺着された保持部15cと、を備えている。また、インナーワイヤ保持部材15は、支持体12より上方に配置されている。
図示の例では、インナーワイヤ保持部材15は、前後方向Zから見た正面視で、対称軸Oに対して左右対称形状をなしている。
【0028】
突部15bは、本体板15aの中央部に配設され、突部15bにおける本体板15a側の基端部には、上下方向Yに貫通する挿通孔が形成されている。
保持部15cは、図示の例ではナットおよびワッシャを備え、ナットが突部15bに螺着されることにより、突部15bの挿通孔に挿通されたインナーワイヤWをワッシャが本体板15aに向けて前方から押し付けて固定するように構成されている。なお、突部15bの挿通孔に挿通されるインナーワイヤWは、アウターワイヤCから下方に突出した部分となっている。
また、本体板15aにおいて、突部15bおよび保持部15cを左右方向Xに挟む両側に、各リンク列14bが備える2つのリンク14aのうち下側に位置するリンク14aの下端部が1つずつ、前後方向Zに延びる軸線回りに回転自在に連結されている。
【0029】
アウターワイヤ保持部材16は、多節リンク機構14の上端部に装着されて、インナーワイヤ保持部材15に上下方向Y(インナーワイヤWの張設方向)で対向している。また、アウターワイヤ保持部材16は、前後方向Zを向き左右方向Xに長い平面視多角形状の本体板16aと、この本体板16aから前方に向けて突設されるとともに、上下方向Yに沿って螺設された雌ねじ部を有する雌ねじ筒16bと、雌ねじ筒16bに螺着されかつアウターワイヤCの下端部が嵌合される接続部材と、接続部材に螺着されて雌ねじ筒16b上に位置するナット16cと、を備えている。
図示の例では、アウターワイヤ保持部材16は、前後方向Zから見た正面視で、対称軸Oに対して左右対称形状をなしている。
【0030】
雌ねじ筒16bは、本体板16aにおける左右方向Xの中央部に配置され、前後方向Zから見た正面視で、対称軸Oに沿って延在している。
前記接続部材は、雌ねじ筒16bに螺着された雄ねじ部16fと、該雄ねじ部16fの上端に上方に向けて突設されアウターワイヤCの下端部が嵌合される有底筒状の嵌合筒16dと、を備え、雄ねじ部16fには、アウターワイヤCから下方に向けて突出したインナーワイヤWが挿通される図示されない貫通孔が上下方向Yの全長にわたって形成されている。
ナット16cは、接続部材の雄ねじ部16fにおいて雌ねじ筒16bよりも上方に位置する部分に螺着されて、雌ねじ筒16bの上面に向けて締め込まれている。このようにナット16cおよび雌ねじ筒16bと、接続部材の雄ねじ部16fと、が螺合し、かつアウターワイヤCの下端部が接続部材の嵌合筒16d内に嵌合することにより、アウターワイヤCがアウターワイヤ保持部材16に固定されている。
また本体板16aにおいて、雌ねじ筒16bを左右方向Xに挟む両側に、各リンク列14bが備える2つのリンク14aのうち上側に位置するリンク14aの上端部が1つずつ、前後方向Zに延びる軸線回りに回転自在に連結されている。
【0031】
そして本実施形態では、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16に、上下方向Yに沿って延びる案内部材21に上下方向Yに移動自在に係合する係合部22、23が各別に備えられている。
案内部材21は、多節リンク機構14、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16より後方に配置されるとともに、上下方向Yに延びる棒状体とされ、図示の例では、支持体12から上方に向けて延設されている。また、案内部材21の上下方向Yから見た平面視形状は、四角形状となっている。さらに、案内部材21は、前後方向Zから見た正面視で、前記対称軸Oに沿って延在している。なお、図示の例では、案内部材21は、支持体12の上端部における左右方向Xの中央部に配設されている。
【0032】
係合部22、23は、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16それぞれの本体板15a、16aに後方に向けて各別に突設された左右一対のガイド板とされ、これらのガイド板が案内部材21を前方から上下移動自在に左右方向Xに挟み込んでいる。これにより、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16が、係合部22、23を介して、左右方向Xの移動が規制された状態で上下移動自在に案内部材21により支持されている。
本実施形態では、案内部材21の平面視形状が四角形状となっているので、係合部22、23は、案内部材21に対する該案内部材21の軸線回りの回転移動も規制されている。
以上のように構成されたブレーキ1は全体が、前後方向Zから見た正面視で、前記対称軸Oに対して左右対称な形状となっている。
【0033】
以上の構成において、図示されないブレーキレバーを握ってインナーワイヤWを引き上げると、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16が、上下方向Yに沿って互いに接近移動することで、多節リンク機構14が上下方向Yに縮小変形しかつ左右方向Xに拡幅変形するように、各リンク14aがそれぞれの両端部回りに回転変位する。
この際、左右一対のアーム11の各上端部11eが、各リンク列14bにおける2つのリンク14aの端部同士の連結部分により左右方向Xの外側に向けて押されることで、左右一対のアーム11が付勢手段20による付勢力に抗して中間部11aを中心に回動する。これにより、各ブレーキシュー13が左右方向Xに互いに接近移動しリムRを挟み込む。
以上の過程において、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16は、各係合部22、23が案内部材21に係合した状態で、上下方向Yに沿って互いに接近移動する。
【0034】
次に、図示されないブレーキレバーを放すと、付勢手段20による付勢力により、左右一対のアーム11が、各上端部11e同士が左右方向Xに接近移動し、かつ各ブレーキシュー13同士が左右方向Xに離間移動するように、中間部11aを中心に回動する。これにより、ブレーキシュー13によるリムRの挟み込みが解除され、かつアーム11の上端部11eが、各リンク列14bにおける2つのリンク14aの端部同士の連結部分を左右方向Xの内側に向けて押すことで、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16が、各係合部22、23が案内部材21に係合した状態で、上下方向Yに沿って互いに離間移動し、多節リンク機構14が復元変形する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるブレーキ1によれば、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16に、案内部材21に上下方向Yに沿って移動自在に係合する係合部22、23が各別に備えられているので、ブレーキレバーを操作したときに、これらの保持部材15、16が、インナーワイヤWのうち両保持部材15、16間に位置する部分を屈曲させるように、前後方向Zから見た正面視で、ブレーキレバーを操作する前のインナーワイヤWの延在方向、つまりインナーワイヤWの張設方向に対して傾く方向に移動しながら互いに接近しようとしても、その位置ずれを、係合部22、23が案内部材21に係合した状態で上下方向Yに沿って移動することによって規制することが可能になる。
したがって、ブレーキレバーを操作したときに、両保持部材15、16を互いに上下方向Yに沿って確実に接近移動させることが可能になり、ブレーキシュー13の左右方向Xのストローク量を安定させることができる。
【0036】
また、このような案内部材21および係合部22、23を備えているので、左右一対のアーム11それぞれについて、例えば、付勢手段を1つずつ配設したり、付勢手段に対する押し付け力を調整する押しボルトや押しボルトを支持する支持体等を備える調整手段を各別に配設したりしなくても、ブレーキシュー13の左右方向Xのストローク量を安定させることができる。つまり、構造を複雑にすることなく前述の作用効果を奏功させることができる。
さらに本実施形態では、多節リンク機構14が、対称軸Oに対して左右対称形状をなし、案内部材21が、前後方向Zから見た正面視で、対称軸O上に沿って延設されているので、構造を複雑にすることなく前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0037】
また本実施形態では、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16それぞれにおける前記両側に、多節リンク機構14が備える複数のリンク14aのうちの1つの端部が単独で各別に連結されているので、インナーワイヤ保持部材15およびアウターワイヤ保持部材16に、2つのリンク14aの端部同士を重ね合わせずに連結することが可能になり、多節リンク機構14の前後方向Zにおける大きさ、つまり厚さを抑えることができる。
【0038】
さらに、ブレーキシュー13同士の左右方向Xの間隔を一定に維持した状態で、多節リンク機構14が備える各リンク14aの上下方向Yに対する傾斜角度を調整可能な調整手段19が配設されているので、一対のブレーキシュー13によるリムRに対する左右方向Xの挟み力を、両ブレーキシュー13のリムRに向けた接近移動代を適切に維持したまま、容易かつ確実に変更することができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
例えば、前記実施形態では、左右一対のアーム11を延設する方向を上下方向Yとしたが、この上下方向Yに限らず任意の方向に延設してもよい。
また、インナーワイヤWの張設方向を上下方向Yと一致させたが、インナーワイヤWは、左右方向Xに直交する方向であれば、上下方向Yに限らず任意の方向に張設してもよい。
さらに、アーム11を延設する方向と、インナーワイヤWの張設方向と、を互いに異ならせてもよい。
また、アーム11が中間部11a回りに回動する中心軸線の延びる方向と、多節リンク機構14の備える複数のリンク14aがそれぞれの端部回りに回転する中心軸線の延びる方向と、を互いに異ならせてもよい。
さらに、左右一対のアーム11に配設された各ブレーキシュー13の左右方向Xのストローク量は、互いに同等にしてもよいし、異ならせてもよい。
【0041】
また、多節リンク機構14は、その平面視で対称軸Oに対して左右非対称形状であってもよい。
さらに、各リンク列14bが備える2つのリンク14aのうち、上側に位置するリンク14aの上端部同士を、アウターワイヤ保持部材16における同じ部分に連結して前後方向Zに重ね合わせてもよい。
また、各リンク列14bが備える2つのリンク14aのうち、下側に位置するリンク14aの下端部同士を、インナーワイヤ保持部材15における同じ部分に連結して前後方向Zに重ね合わせてもよい。
さらに、各リンク列14bは、リンク14aを3個以上備えてもよい。
【0042】
また、調整手段19および付勢手段20は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよく、さらには配設しなくてもよい。
さらに、案内部材21は、前後方向Zから見た正面視で対称軸Oから左右方向Xにずれた位置に延設されてもよい。
また、案内部材21は、支持体12ではなく他の部材に配設してもよいし、また、上下方向Yから見た平面視形状を円形状、あるいは四角形状以外の多角形状等にしてもよい。
さらに、係合部22、23は、前記実施形態に限らず例えば、案内部材21が挿通される筒体にする等適宜変更してもよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
ブレーキシューの左右方向のストローク量を安定させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ブレーキ
11 アーム
11a 中間部
12 支持体
13 ブレーキシュー
14 多節リンク機構
15 インナーワイヤ保持部材
16 アウターワイヤ保持部材
19 調整手段
21 案内部材
22、23 係合部
C アウターワイヤ
O 対称軸
W インナーワイヤ
X 左右方向
Y 上下方向(延在方向、張設方向)
Z 前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のアームと、
各アームをその延在方向の中間部回りに回動自在に支持する支持体と、
各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の一方側に位置する部分に各別に配設されたブレーキシューと、
各アームにおいて前記中間部より前記延在方向の他方側に位置する部分同士を左右方向に接近離間自在に連結する多節リンク機構と、
該多節リンク機構に装着されるとともに、ブレーキレバーに連係されたインナーワイヤを保持するインナーワイヤ保持部材と、
前記多節リンク機構に装着されるとともに、前記インナーワイヤが挿通されたアウターワイヤを保持するアウターワイヤ保持部材と、を備え、
前記ブレーキレバーの操作に伴うインナーワイヤの移動により、前記インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材が、インナーワイヤの張設方向に沿って直線移動させられ互いに接近離間しつつ、前記多節リンク機構が作動するブレーキであって、
前記インナーワイヤ保持部材およびアウターワイヤ保持部材には、前記張設方向に沿って延びる案内部材に前記張設方向に移動自在に係合する係合部が各別に備えられていることを特徴とするブレーキ。
【請求項2】
請求項1記載のブレーキであって、
前記多節リンク機構は、前記張設方向に沿って延びる対称軸に対して左右対称形状をなし、前記案内部材は、前記多節リンク機構の平面視で前記対称軸上に沿って延設されていることを特徴とするブレーキ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキであって、
前記インナーワイヤ保持部材においてインナーワイヤが保持された部分を挟む両側、並びに前記アウターワイヤ保持部材においてアウターワイヤが保持された部分を挟む両側に、前記多節リンク機構が備える複数のリンクのうちの1つの端部が単独で各別に連結されていることを特徴とするブレーキ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキであって、
前記左右一対のアームのうちの少なくとも一方と、前記多節リンク機構と、の連結部分には、それぞれのアームに配設されたブレーキシュー同士の左右方向の間隔を一定に維持した状態で、前記多節リンク機構が備える各リンクの前記張設方向に対する傾斜角度を調整可能な調整手段が配設されていることを特徴とするブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6427(P2012−6427A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141795(P2010−141795)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000112978)ブリヂストンサイクル株式会社 (78)
【Fターム(参考)】