説明

ブロック塀

【課題】施工経費を最小限に抑えながら地震や車両の接触等による不測の事態の発生時においても容易に倒壊することのない新たなブロック塀。
【解決手段】基礎コンクリート1と、基礎コンクリート1上に複数のコンクリートブロック20を組積してブロック壁2を形成し、基礎コンクリート1とブロック壁2とを縦筋3によって補強したブロック塀において、基礎コンクリート1には、上記縦筋3の周囲に上面に開口する凹部13を形成し、上記縦筋3に沿って上記ブロック20の上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部13にも連続して充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒壊防止のための特別の構造を備えるブロック塀に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から良く知られているブロック塀は、通常、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックからなるブロック壁を組積してなり、基礎コンクリートの過半部が基礎地中に埋設状態とされて倒壊しないように支えられており、基礎コンクリート上に積み上げられるブロック壁は縦筋を利用してモルタルで固められて基礎コンクリート上に結合支持されている。
【0003】
昨今、ブロック塀の地震や自動車等の車両接触等による倒壊事故がしばしば発生しており、倒壊したブロック塀の下敷きとなりケガをしたり、時には死亡する人さえ出るという現状であり、ブロック塀の安全性が問題視される中で、一般的には倒壊防止対策としては、施工に際しての基礎コンクリート部の強化や、既存の鉄筋を太くする等の鉄筋増量等が行われている。
【0004】
ところで、従来公知のブロック塀は、既述のように、基礎コンクリート上に積み上げられるブロックが根付けモルタルによって基礎コンクリート上に接着される。しかし、基礎コンクリートの上面は一般に金ゴテで平滑に仕上げられるため、基礎コンクリートとその上のブロックとの間、すなわち根付け部分では十分な接着強度が得られにくい。一方、地震などの外力がブロック塀に作用する場合、接着力に弱点のある根付け部分に大きな力が作用することになり、根付け部分から倒壊しやすくなっている。
【0005】
したがって、本来このようなブロック塀においては、その倒壊防止策として施工や構造的視点に基づいた対策が必要であるが、上述のブロック塀倒壊の要因である根付け部分の強化のための対策は格別採られていないのが現状である。
【0006】
そして、また、仮にこの公知ブロック塀において倒壊防止のための強化策が採られたとしても、上述の従来一般的に行われてきたブロック塀の倒壊防止のための強化策を考えると、その対策は、既存の鉄筋を太くする鉄筋量の増量を施すなどであり、根付け部分に着目した対策はなかった。ブロック塀における既存の鉄筋を太くする等の鉄筋量の増量による倒壊防止策は、勿論それなりの効果は期待できるところであるが、ブロック塀の施工における経費の増大を招くものであり、施工経費の節約の面からすると必ずしも上述の鉄筋量の増量策は上述の公知ブロック塀の倒壊防止策としての最良策であるとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、施工経費の節約が望まれる中で、鉄筋量を全く増量することなく、もしくは増量するにしても比較的僅かな鉄筋量の増量で、施工経費の増大を最小限に抑えながら上述の公知ブロック塀の構造的問題に言及した倒壊防止策を該ブロック塀に施すことで、地震や車両接触等の不測の事態の発生においても容易に倒壊することのないブロック塀の提供が求められている。
【0008】
上述したような状況の中で、本発明は上述の公知ブロック塀における上述の問題点の解消が図られた新たなブロック塀の提供をその課題とするものであり、上述の公知ブロック塀の倒壊における構造的要因に着目し、つまり、基礎コンクリートと積み上げブロック壁との境界部である根付け部の構造的弱点に着目した上述の公知ブロック塀の改良の提案であり、発明その施工経費を最小限に抑えながら地震や車両の接触等による不測の事態の発生時においても容易に倒壊することのない新たなブロック塀を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積してブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、上記基礎コンクリートには、上記縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記コンクリートブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積してブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、上記ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積してブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、上記基礎コンクリートには、上記縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記ブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填し、上記凹部が形成されていない部分には、上記ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、基礎コンクリートには、縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記ブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填したので、モルタルはブロックと縦筋を一体化して固定されるとともに、基礎コンクリート内部に入り込むモルタルの柱が形成され、基礎コンクリートと一段目のコンクリートブロック積み上げ部との構造的に弱いとされる境界部分である塀の根付け部を縦筋を太くすることなく強化することができる。したがって、倒壊防止効果の大きな低コストのブロック塀の提供が可能となる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえたので、基礎コンクリートと下段のコンクリートブロックの境界部は補強鉄筋により強化され、補強鉄筋の長さは最下段のコンクリートブロックまででもよいので、鉄筋の増量を最小限に抑えて倒壊防止効果の大きなブロック塀を提供することが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明は、基礎コンクリートには、縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記ブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填するとともに、ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえているので、モルタルはブロックと縦筋を一体化して固定するとともに、基礎コンクリート内部に入り込むモルタルの柱が形成され、基礎コンクリートと下段のコンクリートブロックの境界部は補強鉄筋により強化されるので、塀の根付け部をより一層強化してより有効にブロック壁の倒壊を防止することができる。
【0015】
また、補強鉄筋の長さは最下段のコンクリートブロックまででよいので、鉄筋の増量を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
・実施形態1
図1ないし図4に基づいて本発明の実施形態1を説明する。
【0017】
図1に図示されるようにブロック塀Aは、コンクリートの打設により施工される基礎コンクリート1と、この基礎コンクリート1上にコンクリートブロック(以下ブロックという)20を複数段組積して形成されるブロック壁2とからなる。最上部に積まれたブロック20の上には笠木21が取付け固定されている。
【0018】
基礎コンクリート1は、基礎地Bに所定長さで、所定の幅と深さの溝を掘り、この溝に砕石等を敷いて下地を整えてから突き固め、枠板を嵌め込み、溝の延長方向の所定間隔に配置した縦筋3と、縦筋3の相互間を互いに結束する横筋(あばら筋)4を配置し、その後、コンクリートを打設することで通常施工されている。
【0019】
基礎コンクリート1は、その上面に組積みされるブロック20のブロック壁2を倒れることなく支える必要があることから、その過半部を基礎地B中に埋設する構造となっている。
【0020】
基礎コンクリート1の基礎地B表面から露出する露出部は、通常ブロック20の高さより低目に設定され、この露出部の上面は、比較的精度の高い水平面として仕上げられており、これによりブロック20の各段における積み上げが高い精度で行われて、長期に亘り歪みや傾きによる倒壊等の発生の恐れのない高い安全性が確保されたブロック塀2が得られる。
【0021】
また、基礎コンクリート1の上面の幅は、図2に図示されるように、積み上げられるブロック20の幅よりやや広目とされ、これによりブロック塀Aの安定性が確保され、またブロック20の積み上げは上述の上面の高い水平度の確保とその幅の広さが相俟ってブロック20の積み上げの作業性を向上させている。そして、また、ブロック20の積み上げ上面の幅広構造はブロック壁2の視観的安定感を増大させる効果もある。
【0022】
基礎コンクリート1には所定の間隔で多数の縦筋3と横筋4が配置されている。縦筋3は基礎コンクリート1には1本おきに上方に延出され、ブロック2つ置きに配筋されている。縦筋3の太さは、通常直径10mmのものが使用される。
【0023】
そして、特徴的には、図1、図2に図示されるように、基礎コンクリートの上面には、上記縦筋3の周囲に上面に開口する凹部13が形成されている。
【0024】
これら凹部13は、ブロック20の積み上げにおけるモルタル30の充填空間として供されるものであり、基礎コンクリート1の打設時の治具としての筒体14(図4参照)の介在により形成されるものである。なお、凹部13の形成は後述される。
【0025】
すなわち、ブロック20の端部には凹溝21が形成され、ブロック20の組積み時には、図1、図3等により理解できるように、隣り合うブロック20、20の突合せによりブロック壁2には長い円柱状の空間Sが形成される。この空間に縦筋3が配置され、モルタル30で固めるようになっている。これにより、モルタル30はブロック壁2内で柱状に形成されている。
【0026】
そして、基礎コンクリート上面に積み上げられた一段目の2つのブロック20の凹部13に充填されたモルタル30は上記柱状モルタル30と連続一体となる。
【0027】
したがって、基礎コンクリ−ト1と、基礎コンクリート1上に積み上げ形成されたブロック壁2との境界である根付け部が強化される。
【0028】
上述のように、基礎コンクリート1の上面に凹部13を形成してモルタルを充填するにあたっては、基礎コンクリート1を成形する際に、コンクリートパネルの内側にコンクリートを充填するときに、各縦筋3に筒体14(図4参照)を通し、筒体14の下部を基礎コンクリート1の上面よりも下にして保持させ、コンクリートを打設する。コンクリートが硬化した後、筒体14を抜き取れば、縦筋3の周囲に上方に開口する凹部13が形成される(図2参照)。
【0029】
基礎コンクリート1上に一段目のブロック20を積んだ後、一段目のブロック20上にモルタルを載せ、その上に二段目のブロック20を積み、以下順に組積していく。そして、隣り合うブロック20、20間に形成された長い円柱状の空間Sにモルタル30を充填して連続させればよい。
【0030】
上記施工方法により施工されたブロック塀2は、ブロック20の組積みによるブロック接合のモルタル30が基礎コンクリート上面で該基礎コンクリート1内部に入り込む構造とされるので、基礎コンクリート1とその上に積み上げられるブロック壁2の境界である根付け部を強化することができる。
【0031】
・実施形態2
本発明の実施形態1の基礎コンクリート1とブロック壁2との根付け部の強化策の別の実施形態を、図5〜図7に基づいて説明する。なお、ブロック塀Aの構造や施工における実施形態1との共通部分については、その説明を省略するが、一部重複説明される部分については共通部分は原則同一符号を用いて説明する。
【0032】
基礎コンクリート1には縦筋3(あばら筋3aを含む)と横筋4が配筋され、縦筋3は基礎コンクリート1には1本おきに上方に延出され、ブロック2つ置きに配筋されている。基礎コンクリート1上にはブロック20が組積みされるが、隣り合うブロック20の突合せ部には、実施形態1の場合と同様に、モルタルが充填される。
【0033】
ところで、基礎コンクリートの縦筋3のうち、そのあばら筋3aには補強鉄筋6の下部6aが埋設状態でワイヤにより結束され、補強鉄筋6の先端部6bは基礎コンクリート部面から1段目のブロック20の上方に突出している。補強鉄筋6の先端部にはネジ7が切られており、このネジ7に押え手段としての当て板8を介してナット9(蝶ネジのようなものでもよい)が螺合され、ナット9の締付けにより、一段目に積み上げられたブロック20は補強鉄筋6を介して基礎コンクリート1と一体化されている。
【0034】
基礎コンクリート1上に一段目のブロック20を積んだ後、一段目のブロック20上にモルタルを載せ、その上に二段目のブロック20を積み、以下順に組積していく。
【0035】
以上説明したように、一段目のブロック20と基礎コンクリート1とは補強鉄筋6と当て板8を介して一体化され、根付け部は強化されているから、ブロック壁2の倒壊の恐れは殆ど解消される。
【0036】
また、補強鉄筋6は一段目のブロック20の積み上げに必要な長さを備えればよいので短くて済み、最小限の鉄筋の増量使用で倒壊防止効果の大きなブロック塀Aを提供することができる。
【0037】
・実施形態3
次に示す実施形態3は、実施形態1と実施形態2で開示された両強化策を併用したブロック塀Aである。
【0038】
すなわち、図8に図示されるように、基礎コンクリート1の上方に延出した縦筋3を挟んで突き合わさられたブロック20には、隣り合うブロック20、20間に形成された長い円柱状の空間Sにモルタル30が連続充填されている。
【0039】
これによれば、ブロック20の組積みによるブロック接合のモルタル30が基礎コンクリート上面で凹部13の内部に入り込む構造なので、基礎コンクリート1とその上に積み上げられるブロック壁2の境界である根付け部を強化することができる。
【0040】
また、基礎コンクリート1の上面において、上方に延出された縦筋3の間に突き合わさられたブロック20には、下部が基礎コンクリート1に埋設された補強鉄筋6の上端ネジ7に押え手段としての当て板8を介してナット9が螺合され、ナット9の締付けにより、一段目のブロック20を基礎コンクリート1と一体化される。
【0041】
これによれば、一段目のブロック20と基礎コンクリート1とは補強鉄筋6と当て板8を介して一体化され、根付け部は強化されている。
【0042】
したがって、凹部13の充填モルタルと当て板8の押えの相乗効果によりブロック壁2は強固に支持され、ブロック塀Aの倒壊の恐れは殆ど解消される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のブロック塀の主要構造部を示す側断面図
【図2】図1におけるX−X線上の断面図
【図3】図1におけるY−Y線上の断面図
【図4】凹部の形成態様説明図
【図5】本発明の別の実施形態の主要構造部を示す側断面図
【図6】図5における主要構造部の拡大図
【図7】上記主要構造部の要部の斜視図
【図8】本発明のさらに別の実施形態の主要構造部を示す側面図
【符号の説明】
【0044】
A ブロック塀
1 基礎コンクリート
2 ブロック壁
3 縦筋
3a 埋設縦筋
4 横筋
6 補強鉄筋
13 凹部
20 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積みしてブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、
上記基礎コンクリートには、上記縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記コンクリートブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填したことを特徴とするブロック塀。
【請求項2】
基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積みしてブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、
上記ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえたことを特徴とするブロック塀。
【請求項3】
基礎コンクリートと、基礎コンクリート上に複数のコンクリートブロックを組積みしてブロック壁を形成し、基礎コンクリートとブロック壁とを縦筋によって補強したブロック塀において、
上記基礎コンクリートには、上記縦筋の周囲に上面に開口する凹部を形成し、上記縦筋に沿って上記ブロックの上下方向に連続充填されたモルタルを上記凹部にも連続して充填し、
上記凹部が形成されていない部分には、上記ブロック壁の下段のコンクリートブロックから上記基礎コンクリートに補強鉄筋を通し、この補強鉄筋の下部を基礎コンクリートに埋設するとともに、上端に設けられた押え手段によって上記下段のコンクリートブロックの上部を押さえた
ことを特徴とするブロック塀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−291621(P2007−291621A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117554(P2006−117554)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】