説明

ブロー成形方法及びブロー成形用金型装置

【課題】ブロー成形用金型1のキャビティ面1aに開けたベント穴3及びそのエア配管4〜6が、パリソンの樹脂に由来する固形物により詰まるのを防止する。
【解決手段】型締め完了前後からパリソンが固化するまでの間、キャビティ面1aに開けたベント穴3を通してバキューム機構10によりパリソンとブロー成形用金型1の間のエア抜きをし、型開き開始前後からベント穴3を通して加圧エア供給機構9によりエアをキャビティ内に噴出する。樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスがベント穴3やエア配管4〜6に滞留せず、これらが固形物として付着するのが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベント穴を有するブロー成形用金型を用いたブロー成形方法、及びその方法に使用し得るブロー成形用金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形は、軟化した熱可塑性樹脂製のパリソンを押し出し、必要に応じてプリブローしながら又はプリブローした後、型開きした一対のブロー成形用金型を型締めしてパリソンを挟み、パリソン内に加圧エアを吹き込んで該パリソンを膨張させ、キャビティ面に接触させて該キャビティ面の形状に合致させ、金型内で固化させ、続いて金型を型開きして成形された物品を取り出す、というものである。
【0003】
型締めしたブロー成形金型内でパリソンが膨張するとき、金型内のキャビティ面に囲まれた閉空間において、キャビティ面とパリソン外表面の間に空気が閉じこめられると、パリソン内部とパリソン外部の前記閉空間との圧力差が小さくなり、またパリソンの外表面とキャビティ面の接触が妨げられて、キャビティ面の形状に合致する外観のよいブロー成形品が成形できない。そのため、金型のキャビティ面にはエア抜きのためのベント穴が開けられ、場合によっては、例えば下記特許文献1〜3のように、パリソンが金型のキャビティ面に接触するまで、前記ベント穴を通してバキューム吸引し、金型の閉空間内のエアを強制的に排出することも行われている。
【0004】
一方、下記特許文献3,4には、ブロー成形用金型に加熱−冷却機構を設置し、この加熱−冷却機構を利用して、パリソンが前記キャビティ面に接触するまでに前記金型を高温に加熱しておき、接触後は前記金型を冷却する加熱−冷却サイクルを繰り返すことが記載されている。上記のように金型を加熱するのは、軟化状態のパリソンの外表面を加熱された金型のキャビティ面に接触させて高転写性を得るためであり、パリソンの接触後に金型を冷却するのは、成形体を急速に固化して金型から取り出し、サイクルタイムを短縮するためである。
【0005】
【特許文献1】特開平7−1459号公報(段落0009)
【特許文献2】特開2001−1388号公報(段落0035,0048)
【特許文献3】特開2007−125894号公報(段落0018)
【特許文献4】特開2003−200431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブロー成形時、軟化した高温のパリソンの表面からは、樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスが発散し、これがベント穴及びベント穴に連通するエア配管の内周面に固形物となって付着する。特に金型の加熱−冷却サイクルを繰り返す場合は、パリソンが金型のキャビティ面に接触して直ちに急冷されないため、分解ガスや低分子量ガスの飛散が多くなり、固形物の付着も多くなる。
そのため、固形物がベント穴やそのエア配管に詰まり(ベント穴は極めて細いため特に顕著)、ブロー成形時に金型の閉空間内からのエアの抜けが悪くなり、キャビティ面に合致する外観のよいブロー成形品が得られなくなるという問題があった。また。ベント穴やそのエア配管が詰まると、パリソンの固化後ブロー成形体を離型する時に、ベント穴からのエアの流入が妨げられ、離型がしにくかったり、無理に離型することでブロー成形体表面にキズが付くという問題もあった。
【0007】
従って、本発明は、ブロー成形用金型のキャビティ面に開けたベント穴及びそのエア配管が、パリソンの樹脂に由来する固形物により詰まるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟化した熱可塑性樹脂製のパリソンを、型締めしたブロー成形用金型のキャビティ面に接触させて前記キャビティ面の形状に合致させ、前記金型内で固化させ、続いて型開きして前記金型から成形品を取り出すブロー成形方法において、型締め完了前後からパリソンが固化するまでの間、前記キャビティ面に開けたベント穴を通してバキューム機構によりパリソンと金型の間のエア抜きをし、型開き開始前後から前記ベント穴を通して加圧エア供給機構によりエアをキャビティ内に噴出することを特徴とする。なお、上記エア抜きは上記期間を含むより長い期間継続してよく、ベント穴を通してのエア噴出も、上記エア抜き終了後直ちに行うことができる。
【0009】
本発明は特に、パリソンがキャビティ面に接触するまでにブロー成形用金型を加熱しておき、接触後は前記金型を冷却するという、加熱−冷却サイクルを繰り返すブロー成形方法に好適である。
また、本発明は、キャビティ面に開けたベント穴を有するブロー成形用金型を備えるブロー成形用金型装置において、前記ベント穴に連通するエア配管と、切換弁を介して前記エア配管に連通する加圧エア供給機構及びバキューム機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベント穴及びベント穴に連通するエア配管を通してエア抜きし、エア抜き後は逆に同じエア配管及びベント穴を通してエア噴出することにより、樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスがベント穴やエア配管に滞留せず、固形物として付着することが防止される。
これにより、型締めした金型の閉空間内のエア抜きが妨げられることがなく、キャビティ面の形状に合致する外観のよいブロー成形品が継続して成形でき、また、離型時にブロー成形体と金型のキャビティ面の間に空気層が形成され、ブロー成形体の離型が容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1を参照して、本発明に係るブロー成形方法及びブロー成形用金型装置について説明する。
図1に示すブロー成形用金型装置(片側のみ示す)において、1はブロー成形金型、2はブロー成形金型1を支持する背板2である。ブロー成形金型1には複数個の細いベント穴3がキャビティ面1aに開いており、各ベント穴3には、ブロー成形金型1に形成された金型内エア配管4、及びブロー成形金型1と背板2の間の空間に設置されたエア配管5が連通し、エア配管5は金型外のエア配管6に連通し、さらに止め弁7及び切換弁8を介して、加圧エア供給機構9及びバキューム機構10に連通している。なお、もう一方のブロー成形用金型装置は、必要があればこれと同じ構造(エア配管6乃至バキューム機構10は2つのブロー成形用金型装置で共有できる)であってもよいし、必ずしもこれと同様の構造でなくてもよい(従来構造でもよい)。
【0012】
このブロー成形用金型装置を用いたブロー成形方法を説明すると、軟化した熱可塑性樹脂製のパリソン(図示せず)を押し出し、必要に応じてパリソンをプリブローしながら又はプリブローした後、型開きしておいた一対のブロー成形用金型(一方が前記ブロー成形用金型1)を型締めしてパリソンを挟み、パリソン内に加圧エアをブローして該パリソンを膨張させ、キャビティ面1aに接触させて該キャビティ面1aの形状に合致させ、ブロー成形用金型内で固化させ、続いてブロー成形用金型を型開きして成形されたブロー成形品を取り出す。上記一対のブロー成形用金型は、詳細は図示していないが、例えば特許文献3,4に記載された加熱−冷却サイクルが行えるタイプである。
【0013】
このブロー成形のプロセスと並行して、まず、バキューム機構10をベント穴3に連通させ、ベント穴3からエアの吸引を行い、ブロー成形用金型1のキャビティ面1aとパリソンの間の閉空間からエアを吸引する。このとき同時に、パリソンから発散される樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスも排出される。ベント穴3からのエアの吸引は、型締め完了前後から、キャビティ面に接触したパリソンが固化するまでの間継続することが望ましく、また、この期間を含むより長い期間継続することができる。エアの吸引は、遅くとも型締め完了後加圧エアのブローでパリソンが膨張し始めるタイミングで開始するのが望ましい。
【0014】
パリソンが固化した後、型開き開始前後から、バキューム機構10に代えて加圧エア供給機構9をベント穴3に連通させ、ベント穴3からエアを噴射させる。これにより、ブロー成形体とブロー成形用金型1のキャビティ面1aの間に空気層が形成される。同時に、ベント穴3及びこれに連通する配管(金型内エア配管4、エア配管5、エア配管6)内のエアに含まれていた樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスもベント穴3から排出され、ベント穴3及び前記配管内からこれらのガス成分が除去され又は極めて希釈化される。ベント穴3からのエアの噴射は、パリソンが固化した後可能となり、型開き開始前後からブロー成形品の取り出しまでの間継続して行うことが望ましく、また、この期間を含むより長い期間継続することができる。
【0015】
ベント穴3を通してのエア噴射(加圧エア供給機構9とベント穴3の連通)開始のタイミングは、エア吸引の停止(バキューム機構10とベント穴3の連通解除)と同時、逆にエア吸引(バキューム機構10とベント穴3の連通)開始のタイミングは、エア噴射の停止(加圧エア供給機構9とベント穴3の連通解除)と同時であってもよいし、それぞれそのタイミングがずれていてもよい。いずれにしても、ベント穴3と配管(金型内エア配管4、エア配管5、エア配管6)内に樹脂や添加剤の分解ガスや低分子量ガスが滞留しないようにして、固形物として付着するのを防止するには、エアが流通しない期間を減らすことが望ましく、一方、エネルギー消費の観点からはエアが流通しない期間があった方がよく、両者を勘案してエア吸引及びエア噴射のタイミングを設定すればよい。
なお、バキューム機構10とエア配管5の連通から加圧エア機構9とエア配管の連通への切換、又はその逆の切換、あるいは両機構とエア配管5の連通の遮断は、切換弁8と止め弁7を適宜操作することにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るブロー成形方法及びブロー成形金型装置を説明するための模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ブロー成形金型
1a そのキャビティ面
3 ベント穴
4 金型内エア配管
5,6 エア配管
7 止め弁
8 切換弁
9 加圧エア供給機構
10 バキューム機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化した熱可塑性樹脂製のパリソンを、型締めしたブロー成形用金型のキャビティ面に接触させて前記キャビティ面の形状に合致させ、前記金型内で固化させ、続いて型開きして前記金型から成形品を取り出すブロー成形方法において、型締め完了前後からパリソンが固化するまでの間、前記キャビティ面に開けたベント穴を通してバキューム機構によりパリソンと金型の間のエア抜きをし、型開き開始前後から前記ベント穴を通して加圧エア供給機構によりエアをキャビティ内に噴出することを特徴とするブロー成形方法。
【請求項2】
前記パリソンが前記キャビティ面に接触するまでに前記金型を加熱しておき、接触後は前記金型を冷却する加熱−冷却サイクルを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載されたブロー成形方法。
【請求項3】
キャビティ面に開けたベント穴を有するブロー成形用金型を備えるブロー成形用金型装置において、前記ベント穴に連通するエア配管と、切換弁を介して前記エア配管に連通する加圧エア供給機構及びバキューム機構を備えることを特徴とするブロー成形用金型装置。
【請求項4】
前記ブロー成形用金型が加熱−冷却機構を備え、パリソンが前記キャビティ面に接触するまでに前記金型を加熱しておき、接触後は前記金型を冷却する加熱−冷却サイクルを繰り返すことを特徴とする請求項3に記載されたブロー成形用金型装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−76225(P2010−76225A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246430(P2008−246430)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(390040958)みのる化成株式会社 (36)
【Fターム(参考)】