説明

ブロー成形用金型およびブロー成形方法

【課題】ブロー成形サイクル中において、確実にバリを切り離すことができるようにする。
【解決手段】一方の分割型1と他方の分割型2とを有するブロー成形用金型において、他方の分割型2の合わせ面にはピンチオフ部5およびピンチオフ部5に外堀状に隣接する溝部4が設けられている。前記一方の分割型1における前記他方の分割型2の前記溝部4に相対する部位に沿って互いに間隔をおいて配設された複数のバリ突き出し部材7と、複数のバリ突き出し部材7を同時に溝部4内へ突き出すための駆動機構と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品のブロー成形時に発生するバリをブロー成形サイクル中に自動的に切り離すことができるブロー成形用金型およびブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空成形品のブロー成形時において、型開きした分割金型間にパリソンを配置して型締めした際に、ピンチオフ部で挟圧されたパリソンの部分が薄肉部になり、ピンチオフ部よりはみ出したパリソンの部分が前記薄肉部を介して中空成形品に連結されたバリとなる。このバリの切り離しをブロー成形サイクル中に自動的に行うブロー成形方法およびブロー成形用金型の従来例を簡単に説明する。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭49−98470号公報)に開示されたブロー成形方法は、図4に示すような、一方の金型背板106Aに取り付けられる一方の分割金型101Aおよび他方の金型背板106Bに取り付けられる他方の分割金型101Bの外側に、一方の外型102Aおよび他方の外型102Bを金型開閉方向に相対移動自在に嵌合し、一方の外型102Aの合わせ面にピンチオフ部からはみ出したバリを押し込む溝104を設けたブロー成形用金型を用いる。
【0004】
型開きした一方の外型102Aを有する一方の分割金型101Aと他方の外型102Bを有する他方の分割金型101Bとの間にパリソンを配置したのち、型締めを行ってパリソンを保持したときに発生したバリを一方の外型102Aの合わせ面に設けた溝104内に押し込む。ついでパリソン内に加圧空気を導入してキャビティに倣う形状に膨張させたのち、両分割金型101A、101Bに対して、両外型102A、102Bを型開閉方向に相対移動させてバリを切り離す。冷却後に型開きを行って中空成形品を取り出すとともに押出ピン105によってバリを溝104より突き出して落下させる。
【0005】
特許文献2(特公平4−36533号公報)に開示されたブロー成形用金型は、図5に示すように、雌型201と、雄型202と、雄型202の後方の油圧室204に導入する油圧によって直線移動されるバリ切り用の枠状金型203とを備えており、型締めが終了と同時にバリ切り用の枠状金型203の刃先をパーティングラインに一旦停止させてブロー成形したのち、油圧室204への油圧によりバリ切り用の枠状金型203の刃先を雌型201の肩部(当接部)に強く当接してバリを切断するように構成されている。
【特許文献1】特開昭49−98470号公報
【特許文献2】特公平4−36533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に開示された発明は、一対の分割金型の外側にそれぞれ嵌合されたバリ切り用の外型や枠状金型を直線移動させるので、一対の分割金型の型締めおよび型開き用のアクチュエータに加えて、バリ切り用の外型や枠状金型を直線移動させるアクチュエータが必要である。また、多数個取りのようなバリの発生する部位の形状が複雑な中空成形品のブロー成形用金型では、バリ切断機構が複雑になる。
【0007】
その結果、部品点数が多く構造が複雑化するために製造コストおよびメンテナンスコスト高を招くという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであって、ブロー成形サイクル中において確実にバリを切除できる部品点数が少なく構造の簡単なブロー成形用金型およびブロー成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るブロー成形用金型は、中空成形品をブロー成形するためのキャビティを一方の分割キャビティと他方の分割キャビティとに合わせ面で分割し、前記一方の分割キャビティを設けた一方の分割型と、前記他方の分割キャビティを設けた他方の分割型とを有するブロー成形用金型において、前記他方の分割型の合わせ面に設けられたピンチオフ部および該ピンチオフ部に外堀状に隣接する溝部と、前記一方の分割型における前記他方の分割型の前記溝部に相対する部位に沿って互いに間隔をおいて配設された複数の案内孔と、前記複数の案内孔に前記溝部に向かって進退自在に嵌挿された複数のバリ突き出し部材と、前記複数のバリ突き出し部材を前記溝部に対して進退させる駆動機構と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、前記溝部には、バリを冷却するための冷却媒体を導入するための導入孔が連通されているとよい。
【0011】
さらに、前記他方の分割型の合わせ面に、前記溝部の外側にはみ出したバリを保持するためのバリ挟み部を設けるとよい。
【0012】
本発明に係るブロー成形方法は、請求項1記載のブロー成形用金型を用い、型開きした一方の分割型と他方の分割型との間に溶融したパリソンを配置し、ついで、型締めを行って前記ピンチオフ部と前記一方の分割型の当接部との間で前記パリソンをピンチオフした薄肉部を形成し、ついで前記パリソン内に加圧流体を導入して前記キャビティに倣う形状に膨脹させたのち、前記バリ突き出し部材を前記溝部内へ突き出すことにより前記溝部を跨ぐバリの部分を前記ピンチオフ部の薄肉部から切り離すこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0014】
総バリのようなバリが発生する中空成形品あるいは複数個取りのようなバリの発生する部位の形状が複雑な中空成形品であっても、ブロー成形サイクル中において確実にバリを切除することができる。
【0015】
また、従来例のように、一対の分割金型とバリ切り用の外型または枠状金型とを相対移動させる複雑な構造のブロー成形用金型に比べて構造が簡単で部品点数も少ないため、製造コストおよびメンテナンスコストを著しく低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、一実施の形態によるブロー成形用金型を型締装置に取り付けて型締した状態を示す模式断面図である。
【0018】
先ず、型締機構について説明する。
【0019】
一方の取付盤14および他方の取付盤15を軸方向へ移動自在に案内する複数のタイバー13と、タイバー13の両端部を支持する一方の定盤11および他方の定盤12と、を有している。
【0020】
一方の取付盤14には、一方の定盤11に配設された一方の型締シリンダ16のロッド16aの先端部を結合し、他方の取付盤15には他方の定盤12に配設された他方の型締シリンダ17のロッド17aの先端部を接合することにより、両ロッド16a、17aを伸縮させて一方の取付盤14に取り付けた一方の分割型1および他方の取付盤15に取り付けた他方の分割型2の型締めおよび型開きを行うように構成されている。
【0021】
ブロー成形用金型は、一ブロー成形サイクルで2個の中空成形品を成形する2個のキャビティを有する2個取りである。一方の分割キャビティ1aと他方の分割キャビティ2aとは、中空成形品をブロー成形するためのキャビティを合わせ面において分割したものである。一方の分割型1には一方の分割キャビティ1aが2個併設されており、これに相対して他方の分割型2には他方の分割キャビティ2aが2個併設されており、型締めしたときに中空成形品の外面を規制する形状のキャビティが2個形成される。
【0022】
一方の分割型1には、併設された2個の一方の分割キャビティ1aの開口縁部1bをとり囲むように、合わせ面に対して垂直方向に貫通する複数の案内孔8が互いに間隔をおいて設けられており、複数の案内孔8には、それぞれバリ突き出し部材7が軸方向へ移動自在に嵌挿されている。
【0023】
複数の案内孔8にそれぞれ嵌挿されたバリ突き出し部材7は、先端部7aが尖った丸棒からなり、各バリ突き出し部材7の後端が突き出し板6に固着されている。このバリ突き出し板6には、一方の分割型1に一体的に設けた支持部材6cに配設された突き出しシリンダ6aのロッド6bの先端部が結合されている。つまり、バリ突き出し部材7を進退させる駆動機構は、突き出し板6と突き出しシリンダ6aからなり、突き出しシリンダ6aを起動させてロッド6bを進退させることにより、突き出し板6とともに複数の突き出し部材7を同時に進退させることができる。
【0024】
また、本実施の形態におけるブロー成形用金型には、図2の(a)、(b)に示すように、一方の分割キャビティ1aの外側角隅部に板状部を形成するための圧縮部9a、10aが設けられているとともに、他方の分割キャビティ2aの外側角隅部に板状部を形成するための圧縮部9b、10bが設けられている。圧縮部のピンチオフ部からはみ出した複雑な形状のバリを確実に引きちぎるために、前記圧縮部をとり囲むへの字形状の突き当て部7bを有するバリ突き出し部材7が配設されている。
【0025】
なお、バリ突き出し部材7は、上述の丸棒に限らず、円筒体、角材等でもよい。
【0026】
他方の分割型2の合わせ面には他方の分割キャビティ2aの開口縁部に沿うピンチオフ部5と、ピンチオフ部5に外堀状に隣接する溝部4が形成されている。
【0027】
さらに、溝部4の外縁部に沿って外側にはみ出したバリを保持するためのバリ挟み部2bが突設されている。また、溝部4の底面には導入孔4aが開口されており、この溝部4に連通された導入孔4aを介して冷却媒体を溝部4内へ導入して、後述するように溝部4内のバリを冷却することができる。
【0028】
続いて、本発明に係るブロー成形方法の一実施の形態について、図1および図2に示したブロー成形用金型を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0029】
(1)図1に示した型締機構を有するブロー成形機において、一方の取付盤14に取り付けた一方の分割型1と他方の取付盤15に取り付けた他方の分割型2とを型開きし、両分割型間に溶融した筒状のパリソンを配置する。
【0030】
(2)上記(1)ののち、型締めして一方の分割型1と他方の分割型2とによりパリソンを挟み、ピンチオフ部5から溝部4を跨いではみ出したバリを、他方の分割型2のピンチオフ部5およびバリ挟み部2bと一方の分割型1の合わせ面における当接部との間で挟んで保持する。
【0031】
(3)上記(2)ののち、前記パリソンのキャビティ内の部位に吹込手段を突き刺して加圧流体を導入してキャビティに倣う形状に膨脹させる。あわせて導入孔4aを介して冷却媒体を溝部4内へ導入する。これにより、溝部4の底面に開口する導入孔4aから導入された冷却媒体の圧力によりバリ21はバリ突き出し部材7側へ押圧された状態で冷却固化される。また、バリ21の冷却を促進させるために、溝部4に排気口を設けて冷却媒体を溝部内で循環させることが好ましい。
【0032】
(4)上記(3)ののち、図3の(a)に示すように、溝部4を跨ぐピンチオフ部5とバリ挟み部2b間のバリ21に対して、バリ突き出し部材7を溝部4内へ突き出し、図3の(b)に示すように、先端部7aを当接した状態で溝部4の底面側へ押し込むことにより、ピンチオフ部5の薄肉部で引きちぎって中空成形品20から切り離す。
【0033】
本工程において、バリ突き出し部材7の先端部7aは円錐状に尖っているのでバリ21との当接部で滑りがなく確実にバリ21を引きちぎることができる。
【0034】
ただし、バリ突き出し部材7の先端部の接触面積はバリ21を突き破ることがない大きさにする必要があり、例えば円柱状のバリ突き出し部材では直径が10mm以上のものにすることが好ましい。
【0035】
また、溝部4の深さは、バリ21を確実に引きちぎることができる深さに設定する必要がある。溝部4の深さは、熱可塑性樹脂の種類、バリ21の冷却条件、バリ突き出し部材7の形状、溝部4の幅等により異なるが、30mm以上に設定することが好ましい。
【0036】
さらに、バリ挟み部2bは、バリ21がバリ突き出し部材7によって溝部4内において引きちぎられる際に溝部4内に滑り落ちないように保持するためのものである。したがって、ピンチオフ部5よりも突出高さを低く設定し、ピンチオフ部5と一方の分割型1の当接部との間に形成された薄肉部の肉厚よりもバリ挟み部2bと一方の分割型1の当接部との間に形成される薄肉部の肉厚を厚くすることが好ましい。
【0037】
(5)上記(4)ののち、型開きを行って中空成形品20を取り出し、必要に応じてパーティングライン上に残った小さなバリを公知の後加工により除去する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、上記実施の形態に示した筒状の溶融パリソンを用いた押出ブロー成形に限らず、押圧ヘッドより押し出された溶融状態のシート状パリソン、あるいは予備成形されたプラスチックシートを再加熱したシート状パリソンを用いたシートブロー成形、コールドパリソンブロー成形等の他の公知の中空成形品のブロー成形に適用できる。
【0039】
また、上述した2個取りのブロー成形用金型に限らず、1個取りまたは3個取り以上のブロー成形用金型に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施の形態によるブロー成形用金型を取り付けた型締機構の主要部の模式断面図である。
【図2】一実施の形態によるブロー成形用金型を示し、(a)は一方の分割型の合わせ面からみた模式正面図、(b)は他方の分割型の合わせ面からみた模式正面図である。
【図3】一実施の形態によるブロー成形方法の工程を示し、(a)はバリ突き出し部材の突出しを開始した状態を示す模式断面図、(b)はバリ突き出し部材を突き出してバリを引きちぎった状態を示す模式断面図である。
【図4】一従来例によるブロー成形用金型を示し、(a)はバリを切り離すために分割型と外型とを型開閉方向へ相対移動させた状態を示す模式断面図、(b)は一方の分割型を合わせ面側からみた模式正面図である。
【図5】他の従来例によるブロー成形用金型を型締めした状態で示す模式平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 一方の分割型
1a 一方の分割キャビティ
2 他方の分割型
2a 他方の分割キャビティ
2b バリ挟み部
4 溝部
5 ピンチオフ部
6 突き出し板
6a 突き出しシリンダ
6b ロッド
6c 支持部材
7 バリ突き出し部材
7b 突き当て部
8 案内孔
9a、9b、10a、10b 圧縮部
11 一方の定盤
12 他方の定盤
13 タイバー
14 一方の取付盤
15 他方の取付盤
16 一方の型締シリンダ
17 他方の型締シリンダ
20 中空成形品
21 バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空成形品をブロー成形するためのキャビティを一方の分割キャビティと他方の分割キャビティとに合わせ面で分割し、前記一方の分割キャビティを設けた一方の分割型と、前記他方の分割キャビティを設けた他方の分割型とを有するブロー成形用金型において、
前記他方の分割型の合わせ面に設けられたピンチオフ部および該ピンチオフ部に外堀状に隣接する溝部と、
前記一方の分割型における前記他方の分割型の前記溝部に相対する部位に沿って互いに間隔をおいて配設された複数の案内孔と、
前記複数の案内孔に前記溝部に向かって進退自在に嵌挿された複数のバリ突き出し部材と、
前記複数のバリ突き出し部材を前記溝部に対して進退させる駆動機構と、を有することを特徴とするブロー成形用金型。
【請求項2】
前記溝部には、バリを冷却するための冷却媒体を導入するための導入孔が連通されていること、を特徴とする請求項1記載のブロー成形用金型。
【請求項3】
前記他方の分割型の合わせ面に、前記溝部の外側にはみ出したバリを保持するためのバリ挟み部を設けたこと、を特徴とする請求項1または2記載のブロー成形用金型。
【請求項4】
請求項1記載のブロー成形用金型を用い、型開きした一方の分割型と他方の分割型との間に溶融したパリソンを配置し、ついで、型締めを行って前記ピンチオフ部と前記一方の分割型の当接部との間で前記パリソンをピンチオフした薄肉部を形成し、ついで前記パリソン内に加圧流体を導入して前記キャビティに倣う形状に膨脹させたのち、前記バリ突き出し部材を前記溝部内へ突き出すことにより前記溝部を跨ぐバリの部分を前記ピンチオフ部の薄肉部から切り離すこと、を特徴とするブロー成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−276125(P2007−276125A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101445(P2006−101445)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【出願人】(506113082)タケダ金型株式会社 (1)
【Fターム(参考)】