説明

プッシャー式加熱炉

【課題】 プッシャー式加熱炉において、スライダーにより被処理物を加熱炉の入口から出口に搬送させた後、このスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻して被処理物の搬送に再度使用する際に、スライダーが冷却されたり、加熱炉の外部の温度が上昇したりするのを抑制する。
【解決手段】 被処理物Wの搬送方向に沿って加熱炉10内に設けられた搬送用ガイド部材12にスライダー14をスライド可能に保持させ、このスライダーの上に被処理物を保持させた状態で、スライダーをプッシャー17により被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された被処理物を加熱炉の入口10bから出口10cに向けて搬送させた後、加熱炉の出口側に移動されたスライダーを、加熱炉内に設けられた戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉の入口側に戻すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内に被処理物の搬送方向に沿った搬送用ガイド部材を加熱炉の幅方向に所要間隔を介して複数並列に設けると共に、被処理物を保持して上記の搬送用ガイド部材に沿って移動するスライダーを各搬送用ガイド部材に複数保持させ、各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された上記の被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるプッシャー式加熱炉に関するものである。特に、上記のようなプッシャー式加熱炉において、スライダーにより被処理物を加熱炉の入口から出口に搬送させた後、このスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻して、このスライダーを被処理物の搬送に再度使用する場合において、加熱炉の出口側から入口側に戻す際に、スライダーが冷却されたり、外部の温度が上昇したりするのを抑制する点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼片、鋼板等の被処理物を加熱炉内において順々に搬送させて連続的に加熱処理する加熱炉として、プッシャー式加熱炉やウォーキングビーム式加熱炉が使用されている。
【0003】
ここで、ウォーキングビーム式加熱炉においては、一般に、炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームを複数設けると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームを複数設けるようにしている。そして、上記の移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持させ、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームをウォーキング動作させて、被処理物を加熱炉内において順々に移動させるようになっている。
【0004】
ここで、上記のようにウォーキングビーム駆動手段によって移動フレームに設けられた各移動ビームをウォーキング動作させる場合、このウォーキングビーム駆動手段が大型化するという問題があった。また、上記のような移動フレームやウォーキングビーム駆動手段を加熱炉における炉床の下に設けるためには、炉床の下の掘り込み深さを大きくすることが必要になり、このような設備に多大なコストが必要になると共に、ウォーキングビーム駆動手段を駆動させるのに大きな動力が必要となり、ランニングコストも高くつくという問題があった。
【0005】
一方、プッシャー式加熱炉においては、一般に、特許文献1,2に示されるように、被処理物の搬送方向に沿った搬送用ガイド部材を、加熱炉内においてその幅方向に所要間隔を介して複数並列に設けると共に、被処理物を保持して上記の搬送用ガイド部材に沿って移動するスライダーを各搬送用ガイド部材に複数保持させるようにしている。そして、各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された上記の被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるようになっている。
【0006】
このため、プッシャー式加熱炉においては、ウォーキングビーム式加熱炉のように、炉床の下方に移動フレームやこの移動フレームに設けられた各移動ビームをウォーキング動作させるウォーキングビーム駆動手段等を設けないため、炉床の下の掘り込み深さを大きくする必要がなく、設備コストやランニングコストが大きく低減されると共に、炉床に設けられた貫通部を通して加熱炉内の熱が逃げないようにするための複雑な機構を設ける必要がない。
【0007】
ここで、このようなプッシャー式加熱炉においては、上記のように各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された上記の被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるため、このスライダーを被処理物の搬送に再度使用する場合には、被処理物を出口に搬送させた後のスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻すことが必要になる。
【0008】
そして、従来においては、一般に、被処理物を出口に搬送させた後のスライダーを加熱炉内から取り出し、このスライダーをコンベア等により加熱炉の出口側から入口側に戻すようにしていた。
【0009】
しかし、このようにした場合、加熱炉内から取り出したスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻す間にスライダーの温度が低下してしまい、このスライダーを被処理物の搬送に再度使用する場合には、スライダーを再度加熱することになり、熱損失が大きくなると共に、スライダーが熱変形を繰り返して、その寿命が低下するという問題があり、さらにスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻す外部の温度が上昇するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭63−11555号公報
【特許文献2】特開平7−252520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、加熱炉内に被処理物の搬送方向に沿った搬送用ガイド部材を加熱炉の幅方向に所要間隔を介して複数並列に設けると共に、被処理物を保持して上記の搬送用ガイド部材に沿って移動するスライダーを各搬送用ガイド部材に複数保持させ、各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるプッシャー式加熱炉における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0012】
すなわち、本発明は、上記のようなプッシャー式加熱炉において、スライダーにより被処理物を加熱炉の入口から出口に搬送させた後、このスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻して、このスライダーを被処理物の搬送に再度使用する場合において、スライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻す間にスライダーが冷却されたり、スライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻す外部の温度が上昇したりするのを簡単に抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るプッシャー式加熱炉においては、上記のような課題を解決するため、加熱炉内に被処理物の搬送方向に沿った搬送用ガイド部材を加熱炉の幅方向に所要間隔を介して複数並列に設けると共に、被処理物を保持して上記の搬送用ガイド部材に沿って移動するスライダーを各搬送用ガイド部材に複数保持させ、各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された上記の被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるプッシャー式加熱炉において、上記の各搬送用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側に移動された各スライダーを加熱炉の入口側に戻す戻し用ガイド部材を加熱炉内に設けた。
【0014】
そして、本発明のプッシャー式加熱炉においては、上記のように各搬送用ガイド部材に沿って被処理物を保持したスライダーを加熱炉の入口から出口に搬送させた後、加熱炉の出口に導かれたスライダーを、加熱炉内に設けられた各戻し用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側から入口側に戻すようにする。
【0015】
ここで、上記のように各搬送用ガイド部材に沿って被処理物を加熱炉の入口から出口に搬送させた各スライダーを、加熱炉内に設けられた各戻し用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側から入口側に戻すにあたっては、戻し用ガイド部材におけるスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻すプッシャーを設けるようにすることができる。
【0016】
また、上記のプッシャー式加熱炉において、加熱炉の出口側に移動された各スライダーを加熱炉の入口側に戻す戻し用ガイド部材を加熱炉内に設けるにあたっては、上記の搬送用ガイド部材とこの戻し用ガイド部材とを加熱炉内において上下に配置させることが好ましい。このように、搬送用ガイド部材と戻し用ガイド部材とを加熱炉内において上下に配置させると、戻し用ガイド部材を加熱炉内において搬送用ガイド部材の横に並列に設ける場合に比べ、加熱炉の幅を小さくして、加熱炉の設置面積を小さくすることができる。
【0017】
また、上記のように搬送用ガイド部材とこの戻し用ガイド部材とを加熱炉内において上下に配置させるようにした場合、加熱炉の入口側と出口側とにそれぞれスライダーを上下方向に移動させる昇降装置を設け、出口側に設けられた昇降装置により、出口側に導かれたスライダーを搬送用ガイド部材から戻し用ガイド部材に導く一方、入口側に設けられた昇降装置により、入口側に戻されたスライダーを戻し用ガイド部材から搬送用ガイド部材に戻すようにすることができる。
【0018】
また、上記のプッシャー式加熱炉においては、上記の搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材が加熱炉内の熱によって変形するのを防止するため、搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材の内部に、水冷等の冷却部を設けるようにすることが好ましい。そして、このように搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材の内部に、水冷等の冷却部を設けると、上記のスライダーも間接的に冷却されて保護され、熱による変形等が防止される。
【0019】
また、上記のプッシャー式加熱炉において、搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材に沿って移動するようにスライダーを搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材に保持させるにあたり、搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材の幅を小さくするため、スライダーの底部に凹部を設け、この凹部内に搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材の上部を嵌め込むようにして、スライダーを搬送用ガイド部材や戻し用ガイド部材に移動可能に保持させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプッシャー式加熱炉においては、上記のように各搬送用ガイド部材に沿って被処理物を加熱炉の入口から出口に搬送させた各スライダーを、加熱炉内に設けられた各戻し用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側から入口側に戻すようにしたため、被処理物を出口に搬送させた後のスライダーを加熱炉内から取り出し、このスライダーをコンベア等により加熱炉の出口側から入口側に戻す場合のように、スライダーが加熱炉の外部に導かれて冷却されるということがない。
【0021】
この結果、本発明のプッシャー式加熱炉においては、スライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻して被処理物の搬送に再度使用する場合に、従来のようにスライダーを再度加熱させることがなく、熱損失が大きく低減されると共に、スライダーが熱変形を繰り返してその寿命が低下するのも抑制されるようになり、さらにスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻す際に、外部の温度が上昇するということもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るプッシャー式加熱炉において、入口側に設けられたプッシャーによりスライダーを搬送用ガイド部材に沿って加熱炉の入口側から出口側に移動させる状態を示した概略縦断面説明図である。
【図2】上記の実施形態に係るプッシャー式加熱炉において、出口側に設けられたプッシャーによりスライダーを戻し用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側から入口側に移動させる状態を示した概略縦断面説明図である。
【図3】同実施形態に係るプッシャー式加熱炉を幅方向に沿って切断させて内部状態を示した概略縦断面説明図である。
【図4】上記の実施形態におけるプッシャー式加熱炉において、支持枠体に保持された搬送用ガイド部材と戻し用ガイド部材との内部にそれぞれ冷却部を設けた状態を示した断面説明図である。
【図5】上記の実施形態におけるプッシャー式加熱炉において使用したスライダーを示し、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図6】上記の実施形態におけるプッシャー式加熱炉において、スライダーを搬送用ガイド部材及び戻し用ガイド部材に移動可能に保持させる場合の変更例を示した断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るプッシャー式加熱炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るプッシャー式加熱炉は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
この実施形態におけるプッシャー式加熱炉10においては、図1〜図3に示すように、加熱炉10内に被処理物Wの搬送方向に所要間隔を介して支持枠体11を複数設けると共に、被処理物Wの搬送方向に沿った支持枠体11の列を加熱炉10の幅方向に複数列設けるようにしている。
【0025】
そして、この支持枠体11の各列において、支持枠体11の上部側における第1保持部11aの上に、被処理物Wの搬送方向に沿った搬送用ガイド部材12を保持させて、加熱炉10の幅方向に所要間隔を介して搬送用ガイド部材12を複数列設けると共に、各搬送用ガイド部材12にそれぞれ複数のスライダー14を移動できるようにして保持させている。
【0026】
また、上記の支持枠体11の各列において、支持枠体11の下部側における第2保持部11bの上に、被処理物Wの搬送方向に沿った戻し用ガイド部材13を保持させて、加熱炉10の幅方向に所要間隔を介してこの戻し用ガイド部材13を複数列設けると共に、各搬戻し用ガイド部材13にそれぞれ複数のスライダー14を移動できるようにして保持させている。
【0027】
ここで、この実施形態においては、図4に示すように、上記の搬送用ガイド部材12及び戻し用ガイド部材13にそれぞれ断面凹型状になった部材を用い、この搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13の凹部12a,13a内に、上記のスライダー14を移動可能に保持させるようにすると共に、上記の搬送用ガイド部材12及び戻し用ガイド部材13の内部にそれぞれ水冷式の冷却部12b,13bを設け、この冷却部12b,13b内に冷却水を通して搬送用ガイド部材12及び戻し用ガイド部材13を冷却させるようにしている。
【0028】
また、この実施形態においては、上記のスライダー14として、図5(A),(B)に示すように、搬送用ガイド部材12及び戻し用ガイド部材13の凹部12a,13a内に保持させる底部よりも被処理物Wと接触して被処理物Wを保持するスライダー14の接触部14aの面積が小さくなったものを用いている。このようなスライダー14を用いると、スライダー14の接触部14aを通して加熱された被処理物Wの熱がスライダー14や搬送用ガイド部材12に逃げるのが少なくなる。
【0029】
また、この実施形態においては、加熱炉10の入口側と出口側とにそれぞれスライダー14を上下方向に移動させる昇降装置15,16を設けている。
【0030】
そして、上記の戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に導かれたスライダー14を、入口側に設けられた昇降装置15の受け台15aに保持させて上昇させ、このスライダー14を上記の搬送用ガイド部材12と対応する位置に導くようにしている。また、上記の搬送用ガイド部材12に沿って加熱炉10の入口側から出口側に導かれたスライダー14を、出口側に設けられた昇降装置16の受け台16aに保持させて下降させ、このスライダー14を戻し用ガイド部材13と対応する位置に導くようにしている。
【0031】
ここで、この実施形態においては、上記の各昇降装置15,16によってスライダー14を上下方向に移動させるにあたり、各昇降装置15,16を炉床10aの下における空間部S内に設け、各昇降装置15,16において上下方向に伸縮する伸縮ロッド15b,16bを、炉床10aを通して加熱炉10内に突出させ、それぞれ上記の伸縮ロッド15b,16bを伸縮させて、各伸縮ロッド15b,16bの先端に設けられた受け台15a,16aを昇降させて、これらの受け台15a,16aに保持されたスライダー14を上下方向に移動させるようにしている。
【0032】
また、この実施形態における加熱炉10においては、加熱炉10の入口側と出口側とにそれぞれプッシャー17,18を設けている。
【0033】
そして、入口側に設けられたプッシャー17により、入口側における昇降装置15の受け台15aに保持されて上昇されたスライダー14を上記の搬送用ガイド部材12に導くと共に、搬送用ガイド部材12に移動可能に保持された各スライダー14を、加熱炉10の入口側から出口側に順々に移動させるようにしている。
【0034】
また、出口側に設けられたプッシャー18により、出口側における昇降装置16の受け台16aに保持されて下降されたスライダー14を上記の戻し用ガイド部材13に導くと共に、戻し用ガイド部材13に移動可能に保持された各スライダー14を、加熱炉10の出口側から入口側に順々に移動させるようにしている。
【0035】
そして、この実施形態におけるプッシャー式加熱炉10においては、図1に示すように、加熱炉10の入口側における昇降装置15により、その受け台15aに保持されたスライダー14を上昇させて、このスライダー14を搬送用ガイド部材12に対応する位置に導くと共に、加熱炉10の入口10bから加熱処理する被処理物Wを、この受け台15aに保持されたスライダー14及び搬送用ガイド部材12に保持されたスライダー14の上に保持させるようにする。
【0036】
次いで、上記のように入口側における昇降装置15の受け台15aに保持されたスライダー14を、入口側に設けられたプッシャー17により押して、被処理物Wを保持させた各スライダー14を搬送用ガイド部材12に沿って加熱炉10の入口側から出口側に順々に移動させ、被処理物Wを加熱炉10内において順々に加熱処理させるようにする。また、このように加熱処理された被処理物Wを加熱炉10の出口10cから取り出すと共に、加熱炉10の出口側に導かれたスライダー14を、出口側における昇降装置16によって上昇された受け台16aの上に保持させるようにする。
【0037】
そして、このようにスライダー14を出口側における昇降装置16の受け台16aに保持させた後、図2に示すように、この昇降装置16における受け台16aに保持させたスライダー14を下降させ、このスライダー14を戻し用ガイド部材13に対応する位置に導くようにすると共に、入口側における昇降装置15によりその受け台15aを下降させて、この受け台15aを戻し用ガイド部材13に対応する位置に導くようにする。
【0038】
次いで、上記のように出口側における昇降装置16の受け台16aに保持されたスライダー14を、出口側に設けられたプッシャー18により押して、戻し用ガイド部材13に保持された各スライダー14を、戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に順々に移動させ、入口側に導かれたスライダー14を、戻し用ガイド部材13から入口側における昇降装置15の受け台15aの上に保持させるようにする。
【0039】
このようにすると、搬送用ガイド部材12に沿って被処理物Wを加熱炉10の入口10bから出口10cに搬送させた後のスライダー14が、加熱炉10内に設けられた戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に順々に戻されるようになり、従来のように、加熱炉10の出口10cに被処理物Wを搬送された後のスライダー14を加熱炉10内から取り出す必要がなく、スライダー14を加熱炉10の出口側から入口側に戻す際に、スライダー14が冷却されるということがない。
【0040】
このため、スライダー14を加熱炉10の出口側から入口側に戻して被処理物Wの搬送に再度使用する場合に、従来のようにスライダー14を再加熱することなく、熱損失が大きく低減されると共に、スライダー14が熱変形を繰り返してほ寿命が低下するのも抑制され、さらにスライダー14を加熱炉10の出口側から入口側に戻す際に、外部の温度が上昇するのも抑制されるようになる。
【0041】
なお、この実施形態におけるプッシャー式加熱炉10においては、スライダー14を搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13に移動可能に保持させるにあたり、スライダー14を搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13に設けた凹部12a,13a内に保持させるようにしたが、搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13に、上記のスライダー14を移動可能に保持させる方法はこのようなものに限定されない。例えば、上記の搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13の幅を小さくするため、図6に示すように、搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13として、内部に冷却部12b,13bが設けられた四角管状のものを用いる一方、スライダー14の底部に凹部14bを設け、このスライダー14の凹部14b内に上記の搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13の上部を嵌め込むようにして、スライダー14を搬送用ガイド部材12や戻し用ガイド部材13に移動可能に保持させるようにすることもできる。
【0042】
また、この実施形態においては、スライダー14を戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に戻すにあたり、加熱炉10の出口側にプッシャー18を設け、このプッシャー18によりスライダー14を戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に順々に移動させるようにした。しかし、スライダー14を戻し用ガイド部材13に沿って加熱炉10の出口側から入口側に戻す方法は特に限定されず、例えば、上記の戻し用ガイド部材13を加熱炉10の出口側から入口側に向けて下方に傾斜するように設け、戻し用ガイド部材13に導かれたスライダー14が、戻し用ガイド部材13の傾斜に沿って自重で滑らせて、加熱炉10の出口側から入口側に移動されるようにすることも可能である。
【0043】
また、この実施形態においては、スライダー14を加熱炉10の入口側から出口側に搬送させる搬送用ガイド部材12の下に、スライダー14を加熱炉10の出口側から入口側に戻す戻し用ガイド部材13を設けるようにしたが、戻し用ガイド部材13を設ける位置も特に限定されない。図示していないが、戻し用ガイド部材13を加熱炉10の天井から吊り下げる等の手段によって、戻し用ガイド部材13を搬送用ガイド部材12の上に設けるようにしたり、また戻し用ガイド部材13を、搬送用ガイド部材12の横に並列に設けるようにしたりすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
10 加熱炉, 10a 炉床, 10b 入口, 10c 出口
11 支持枠体, 11a 第1保持部, 11b 第2保持部
12 搬送用ガイド部材, 12a 凹部, 12b 冷却部
13 戻し用ガイド部材, 13a 凹部, 13b冷却部
14 スライダー, 14a接触部, 14b 凹部
15 加熱炉の入口側の昇降装置, 15a 受け台,15b 伸縮ロッド
16 加熱炉の出口側の昇降装置, 16a 受け台,16b 伸縮ロッド
17 加熱炉の入口側のプッシャー
18 加熱炉の出口側のプッシャー
S 空間部
W 被処理物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内に被処理物の搬送方向に沿った搬送用ガイド部材を加熱炉の幅方向に所要間隔を介して複数並列に設けると共に、被処理物を保持して上記の搬送用ガイド部材に沿って移動するスライダーを各搬送用ガイド部材に複数保持させ、各搬送用ガイド部材に保持されたスライダーをプッシャーにより被処理物の搬送方向に順々に移動させて、スライダーの上に保持された上記の被処理物を加熱炉の入口から出口に向けて順々に搬送させるプッシャー式加熱炉において、上記の各搬送用ガイド部材に沿って加熱炉の出口側に移動された各スライダーを加熱炉の入口側に戻す戻し用ガイド部材を加熱炉内に設けたことを特徴とするプッシャー式加熱炉。
【請求項2】
請求項1に記載のプッシャー式加熱炉において、上記の戻し用ガイド部材におけるスライダーを加熱炉の出口側から入口側に戻すプッシャーを設けたことを特徴とするプッシャー式加熱炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプッシャー式加熱炉において、上記の搬送用ガイド部材と戻し用ガイド部材とを加熱炉内において上下に配置させたことを特徴とするプッシャー式加熱炉。
【請求項4】
請求項3に記載のプッシャー式加熱炉において、上記の加熱炉の入口側と出口側とにそれぞれスライダーを上下方向に移動させる昇降装置を設け、出口側に設けられた昇降装置により出口側に導かれたスライダーを搬送用ガイド部材から戻し用ガイド部材に導く一方、入口側に設けられた昇降装置により入口側に戻されたスライダーを戻し用ガイド部材から搬送用ガイド部材に戻すことを特徴とするプッシャー式加熱炉。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のプッシャー式加熱炉において、上記の搬送用ガイド部材及び/又は戻し用ガイド部材の内部に冷却部を設けたことを特徴とするプッシャー式加熱炉。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のプッシャー式加熱炉において、上記のスライダーの底部に凹部を設け、この凹部内に上記の搬送用ガイド部材と戻し用ガイド部材の上部を嵌め込むようにして、スライダーを搬送用ガイド部材と戻し用ガイド部材に移動可能に保持させたことを特徴とするプッシャー式加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104584(P2013−104584A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247004(P2011−247004)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】