説明

プッシュスイッチ作動用つまみ

【課題】つまみの中心部後方のスペースを大きくとれ、照明エリアを広くし、また、金型設計での自由度が大きいプッシュスイッチ作動用つまみを提供する。
【解決手段】操作パネル1に出入自在に取付けられ、操作パネル背後に配置されたプッシュスイッチ3を作動させるプッシュスイッチ作動用つまみ2において、前記つまみ2の押圧部2aから後方に延びてプッシュスイッチを作動する複数のリブ2cを形成し、前記操作パネル1のつまみ取付け用穴の周囲には、前記つまみ2を前記操作パネル1内に押し込むときに前記つまみ2を案内する傾斜面1bと段差1cを有する筐体奥側に延びる係合部1aを形成し、凹み2dを前記リブ2cに設け、前記つまみ2を前記操作パネル1内に押し込むと前記段差1cと前記凹み2dが係止することにより前記つまみ2の前記操作パネル1から突出する方向の移動が規制されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプッシュスイッチ作動用つまみに係わり、特に、その構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチ作動用つまみの例を図4に示す。図4に示すプッシュスイッチ作動用つまみ12は筐体の前面に配置された操作パネル11のつまみ取付け用穴に取付けられる。つまみ12の背後には図示していないプリント基板を覆うメンブレン3が配置されている。
【0003】
前記プリント基板に設けられた対向する導体パターンと、メンブレン3の椀形形状部内凸部に付設され椀形形状部が弾性変形することにより前記導体パターン同士を導通させる導体膜によりメンブレンスイッチが構成されている。
【0004】
つまみ12の押圧部12aは操作パネル11の前側に配置されており、押圧部12aの中心に対して対称位置に2つのリブ12b、12bが後方に向けて延びるように形成されている。リブ12b、12bの外側には夫々凹み12c、12cが形成されている。さらに、押圧部12aの中心位置から後方に延びるように軸12dが形成されている。
【0005】
操作パネル11のつまみ取付け用穴の周囲には筐体奥側に延びる係合部11aが形成されている。係合部11aの中間位置で前記リブ12b、12の夫々の凹み12c、12cと対応する位置に傾斜面11b、11bが形成され、さらに傾斜面11b、11bの後方に段差11c、11cが形成されている。
【0006】
上記つまみを操作パネル11に組み付けるときは、つまみ12を操作パネル11のつまみ取付け用穴に押し込むと、リブ12b、12bは係合部11aの傾斜面11b、11bに押されて弾性変形して傾斜面11b、11bを乗り越える。そして、段差11c、11cがリブ12b、12bの凹み12c、12cの奥側の縁を越えるとリブ12b、12bは元に戻り段差11c、11cが凹み12c、12cの奥側の縁を係止するようになる。
【0007】
このようにつまみ12が押し込まれた後の自然状態では、つまみ12の軸12dがメンブレン3の弾力に押されつまみ12が突出位置にあり、図4に示すように、段差11c、11cが凹み12c、12cの奥側の縁を係止している。このとき、プリント基板の対向する導体パターンは導通していない。つまみ12を指で押すと、つまみ12の軸12dはメンブレン3を変形させメンブレン3の導体膜がプリント基板の対向する導体パターンを導通させる。
【0008】
上記した図4に示す従来のプッシュスイッチ作動用つまみの構造によると、つまみ12の中心背後にメンブレンスイッチを作動させる軸12dが形成されているために、背後からつまみ12の押圧部12aを照明する場合に照明エリアが狭くなる。そのため、押圧部12aの表面の文字配置が制約されてデザインに悪影響があった。
【0009】
また、リブ12b、12bと軸12dとが一部合体しているものでもリブと軸とが占めるスペースが大きくなり、さらに、ガタツキによる軸先端の振れが大きくなっていた。また、つまみを二色成形する場合には、リブ12b、12bと軸12dの間隔が狭いため、金型構造が大きく制約されていた。そして、リブ12b、12bと軸12dの間隔を大きくするために軸12dをDカット形状とすると、メンブレン3を押す中心の位置ずれにより操作感覚が損なわれるようになる。
【0010】
特開2006−302847号公報に開示された従来のスイッチ構造は、筐体20の開口部24に取付けられる押釦20はスイッチ50を作動させる案内片13が押釦20の中心位置に形成され、係止爪12を有する係合片11が押釦20の周辺部に形成されている。このように押釦の中心位置にスイッチを作動させる部材が設けられているので、上記した図4に示す従来のプッシュスイッチ作動用つまみと同様に押圧部を照明する場合に照明エリアが狭くなり、また、金型構造が制約されるという問題があった。
【特許文献1】特開2006−302847号公報、段落0010〜段落0014、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、つまみの中心部後方のスペースを大きくとれ、照明エリアを広くし、また、金型設計での自由度が大きいプッシュスイッチ作動用つまみを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のプッシュスイッチ作動用つまみは、筐体前面に配置される操作パネルに出入自在に取付けられており、突出方向に付勢され指で押し込むことにより前記操作パネル背後に配置されたプッシュスイッチを作動させるプッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみの押圧部後方に延びる複数のリブを形成し、前記リブの先端にプッシュスイッチを作動する凸部を設け、前記操作パネルのプッシュスイッチ作動用つまみ取付け用穴の周囲には、筐体奥側に延びる係合部を形成し、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに前記つまみを案内する傾斜面と段差とを前記リブと係合部の一方に設け、凹みまたは穴を前記リブと係合部の他方に設け、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むと前記段差と前記凹みまたは穴の縁とが係止することにより前記つまみの前記操作パネルから突出する方向の移動が規制されるように構成したものである。
【0013】
また、前記プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記リブが弾性変形するものである。
【0014】
また、同プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記係合部が弾性変形するものである。
【0015】
また、同プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記リブと係合部の双方が弾性変形するものである。
【0016】
また、前記各プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記プッシュスイッチはメンブレンスイッチであり、前記つまみがメンブレンにより付勢されるものである。
【0017】
また、同各プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記プッシュスイッチはマイクロスイッチであり、前記つまみがマイクロスイッチの作動子により付勢されるものである。
【0018】
また、同各プッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみとその背後に配置される部材との間にばねが介装されており、前記つまみが前記ばねにより付勢されるものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明のプッシュスイッチ作動用つまみによれば、つまみの中心部後方のスペースを大きくとれるので、照明エリアが広くなり、また、金型設計での自由度が大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。図1はこの発明の実施例であるプッシュスイッチ作動用つまみを示す斜視図、図2は同プッシュスイッチ作動用つまみを示す底面図、図3は図2におけるA−A断面に同プッシュスイッチ作動用つまみ周辺に配置される部材を示す断面図である。
【0021】
図に示すプッシュスイッチ作動用つまみ2は筐体の前面に配置された操作パネル1のつまみ取付け用穴に取付けられる。つまみ2の背後には図示していないプリント基板を覆うメンブレン3が配置されている。
【0022】
前記プリント基板に設けられた対向する導体パターンと、メンブレン3の椀形形状部内凸部に付設され椀形形状部が弾性変形することにより前記導体パターン同士を導通させる導体膜によりメンブレンスイッチが構成されている。
【0023】
つまみ2の押圧部2aは操作パネル1の前側に配置されており、押圧部2aの中心に対して対称位置に2つのリブ2c、2cが後方に向けて延びるように形成されている。リブ2c、2cの外側には夫々凹み2d、2dが形成されている。さらに、リブ2c、2cの先端には円筒形凸部2e、2eが形成されている。
【0024】
操作パネル1のつまみ取付け用穴の周囲には筐体奥側に延びる係合部1aが形成されている。係合部1aは図2に示すように内部空間を囲む形状となっている。係合部1aの中間位置で前記リブ2c、2cの夫々の凹み2d、2dと対応する位置に傾斜面1b、1bが形成され、さらに傾斜面1b、1bの後方に段差1c、1cが形成されている。
【0025】
上記つまみを操作パネル1に組み付けるときは、つまみ2を操作パネル1のつまみ取付け用穴に押し込むと、リブ2c、2cは係合部1aの傾斜面1b、1bに押されて弾性変形して傾斜面1b、1bを乗り越える。そして、段差1c、1cがリブ2c、2cの凹み2d、2dの奥側の縁を越えるとリブ2c、2cは元に戻り段差1c、1cが凹み2d、2dの奥側の縁を係止するようになる。
【0026】
このようにつまみ2が押し込まれた後の自然状態では、つまみ2の円筒形凸部2e、2eがメンブレン3の弾力に押されつまみ2が突出位置にあり、図3に示すように、段差1c、1cが凹み2d、2dの奥側の縁を係止している。このとき、プリント基板の対向する導体パターンは導通していない。つまみ2を指で押すと、つまみ2の円筒形凸部2e、2eはメンブレン3を変形させて、メンブレン3の導体膜がプリント基板の対向する導体パターンを導通させる。
【0027】
上記実施例のプッシュスイッチ作動用つまみの構造では、つまみ2の中心背後にメンブレンスイッチを部材が形成されていないため、図2に示すように背後からつまみ2の押圧部2aを照明する場合の照明エリア2bを広くすることができる。そのため、押圧部2aの表面の文字配置の自由度が大きくなる。また、金型設計の自由度が大きくなる。
【0028】
また、メンブレン3の弾力が作用するつまみ2の円筒形凸部2e、2eが押圧部2a中心の対称位置に配置されているために、つまみ2を指で押すときにぶれがなく、作動させるときの感覚がよい。
【0029】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、プッシュスイッチを作動させる凸部は円筒形でなく、十字形としてもよい。プッシュスイッチには、メンブレンスイッチの他にマイクロスイッチやタクトスイッチを用いることができる。また、リブに設けた凹みは貫通穴としてもよい。
【0030】
さらに、リブを3個設けて押圧力のバランスが良くなる位置に配置してもよい。すなわち、リブを3、3…がつまみ2の中心を180°以上の円弧角で囲むように配置することでつまみ2を押すときにつまみ2を倒す方向の力が加わらなくなる。また、つまみを付勢するばねをスイッチの他に設けてもよい。その場合付勢する力を適度の大きさとすることが可能となる。
【0031】
さらに、係合部を空間を囲む形状とせず、複数個のリブとして係合部を弾性変形させてもよく、リブと係合部の双方を弾性変形させてもよい。このようにすることにより、個々の部材の弾性変形量が小さくなり、設計の自由度が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施例であるプッシュスイッチ作動用つまみを示す斜視図である。
【図2】同プッシュスイッチ作動用つまみを示す底面図である。
【図3】図2におけるA−A断面に同プッシュスイッチ作動用つまみ周辺に配置される部材を示す断面図である。
【図4】従来のプッシュスイッチ作動用つまみの例を示す段差を有する断面での断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 操作パネル、1a 係合部、1b 傾斜面、1c 段差
2 プッシュスイッチ作動用つまみ、2a 押圧部、2b 照光エリア
2c リブ、2d 凹み、2e 円筒形凸部
3 メンブレン
11 操作パネル、11a 係合部、11b 傾斜面、11c 段差
12 プッシュスイッチ作動用つまみ、12a 押圧部、12b リブ
12c 凹み、12d 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体前面に配置される操作パネルに出入自在に取付けられており、突出方向に付勢され指で押し込むことにより前記操作パネル背後に配置されたプッシュスイッチを作動させるプッシュスイッチ作動用つまみにおいて、前記つまみの押圧部から後方に延びる複数のリブを形成し、前記リブの先端にプッシュスイッチを作動する凸部を設け、前記操作パネルのプッシュスイッチ作動用つまみ取付け用穴の周囲には、筐体奥側に延びる係合部を形成し、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに前記つまみを案内する傾斜面と段差とを前記リブと係合部の一方に設け、凹みまたは穴を前記リブと係合部の他方に設け、前記つまみを前記操作パネル内に押し込むと前記段差と前記凹みまたは穴の縁とが係止することにより前記つまみの前記操作パネルから突出する方向の移動が規制されるように構成したプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項2】
前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記リブが弾性変形する請求項1のプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項3】
前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記係合部が弾性変形する請求項1のプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項4】
前記つまみを前記操作パネル内に押し込むときに、前記リブと係合部の双方が弾性変形する請求項1のプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項5】
前記プッシュスイッチはメンブレンスイッチであり、前記つまみがメンブレンにより付勢される請求項1から4のいずれかに記載したプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項6】
前記プッシュスイッチはマイクロスイッチであり、前記つまみがマイクロスイッチの作動子により付勢される請求項1から4のいずれかに記載したプッシュスイッチ作動用つまみ。
【請求項7】
前記つまみとその背後に配置される部材との間にばねが介装されており、前記つまみが前記ばねにより付勢される請求項1から4のいずれかに記載したプッシュスイッチ作動用つまみ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−3535(P2010−3535A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161258(P2008−161258)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】