説明

プラスグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む医薬組成物並びにその製造方法及び使用方法

本発明は、プラスグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む医薬組成物、並びにその製造方法及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む医薬組成物、並びにその製造方法、及び例えばプラスグレルに対して治療的に反応性の障害及び疾患を処置するための、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は、アテローム性血栓症の発病、並びにステント挿入を伴うか伴わない冠動脈形成術後の血栓形成において中心的役割を果たす。血小板は最初に、血管損傷、動脈硬化プラーク破綻、バルーン血管形成術、及びステント留置の部位に付着する。これらの相互作用後の血小板活性化の結果として、アデノシン二リン酸(「ADP」)、トロンボキサンA2、及び他のメディエーターが放出される。放出されたADPは、Gタンパク質連結P2Y1及びP2Y12プリン作動性受容体を介する血小板活性化を促進し、さらなる血小板活性化、凝集、及びその他の血小板機能、例えば血小板形態変化、分泌、並びに凝血原及び炎症促進活性の発生をもたらす。活性化された血小板は、冠動脈プラーク破綻及び動脈内ステント留置の部位に集まり、それにより凝集体を形成し、これが、急性冠症候群(「ACS」)として集合的に知られるものにおける多血小板血栓、血管閉塞、組織虚血、及び心筋壊死をもたらし得る。用語ACSは、突然発生して悪化する虚血性胸痛から、持続性のST部分上昇を伴わず心臓バイオマーカーで検出される不可逆性の心筋障害を引き起こすほど重症な虚血、持続性のST部分上昇を伴い、心筋壊死及び上昇したバイオマーカーをもたらす責任冠動脈全体の閉塞へと進行する病態生理の連続である。ACSは多様な世界中の集団で発生し、そして患者は入院、リハビリテーションを必要とし、そしてしばしば引き続いて虚血性事象を患うので、重大な社会経済的な影響を有する。
【0003】
ACSの初期治療の選択肢には、薬物療法のみ、又は経皮的冠動脈形成術(「PCI」、冠動脈ステント留置を伴うか又は伴わない)若しくは冠動脈造影の結果に左右される冠動脈バイパス術(CABG)を用いる初期の侵襲性の方針が含まれる。現在の米国心臓病学会(American College of Cardiology)/米国心臓協会(American Heart Association)及び欧州心臓病学会(European Society of Cardiology)のガイドラインは、中程度から高い危険性の特徴を有するACS患者に関して初期の侵襲性の方針を推奨する。薬物療法には、抗凝固薬及び抗血小板薬の両方が含まれる。ACS患者に対する現在の標準的治療としては、処置の急性期及び慢性期の両方におけるアスピリン及びチエノピリジンを用いた二重抗血小板治療が挙げられる。この治療は、ACS患者及びPCIを受けている患者において結果を改善する;初期のステントに関連する血栓症の高い危険性は、二重抗血小板治療により実質的に減少される。チクロピジン及びクロピドグレルは、2つの現在認可されたチエノピリジン類である。その1日1回の投与計画のため、クロピドグレルはACSに罹患した患者を処置するために圧倒的に多く処方される治療薬である。
【0004】
クロピドグレルの負荷投与量にもかかわらずクロピドグレル治療のいくつかの潜在的な限界が同定されている。これには血小板阻害における顕著な個体間変動性及び作用の比較的遅い開始が含まれる。PCI後の血栓性合併症と認可された標準的なクロピドグレル投与計画(負荷投与量(「LD」)300mg及び維持量(「MD」)75mg)に対する低い抗血小板反応との間の関連性が示唆されている。さらに、クロピドグレル600mgLDに対する「非反応性」が薬物溶出ステントを受けた対象におけるステント血栓症の強い予測因子であること、そしてさらに、中間値より多い残留血小板凝集が、待機的PCIを受けている対象における1ヶ月の経過観察における主要な有害心臓事象(死亡、心筋梗塞及び標的血管血行再建)の6.7倍増加した危険性と関連するということが示されている。これらの知見は、より高くより一貫したレベルの血小板阻害がPCIを受けているACSを有する対象における臨床成績を改善し得るという可能性を示唆する。
【0005】
プラスグレルは、経口投与も非経口投与もできるチエノピリジンADP受容体アンタゴニストであり、化学名5−[(1RS)−2−シクロプロピル−1−(2−フルオロフェニル)−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−2−イルアセテート(化学式:C2020FNO3S;分子量373.44g/mol)を有する。プラスグレルの臨床試験は、塩酸塩のラセミ混合物を利用しており、これは白色から淡褐色の結晶性固体であり、わずかに吸湿性である。プラスグレル塩酸塩は、pH1〜4で可溶性からわずかに可溶性であり、pH5ではごくわずかに可溶性であり、そしてpH6〜7では実質的に不溶性である。プラスグレル塩酸塩のpKa値は5.1である。プラスグレルは多形を示すことも知られている。
【0006】
プラスグレルは、カルボキシルエステラーゼによる加水分解、次いで多数のシトクロムP450酵素を介してインビボ代謝を受け、P2Y12受容体により媒介される血小板活性化及び凝集を不可逆的に抑制する活性代謝物を形成する。一度結合されると、血小板はその残りの寿命の間阻害される。プラスグレル投与を停止すると、新しい血小板が形成されるにつれて血小板凝集のベースラインまで戻る。処置の停止後約7〜10日間の間に典型的に起こる過程である。
【0007】
非臨床研究は、エクスビボ血小板凝集及びインビボ血栓形成の抑制に関して、プラスグレルがクロピドグレル及びチクロピジンよりそれぞれ約10倍〜100倍有効であるということを示す。プラスグレル組成物、投薬形態及びそれを使用する処置方法が公知である。例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3、特許文献4及び特許文献5、並びに特許文献6、特許文献7及び特許文献8(これらは全体として参照により本明細書に加入される)を参照のこと。健常対象における臨床データは、クロピドグレルと比較してより高い血小板阻害、及びプラスグレルに対するより一貫した反応を裏付けた。プラスグレル及びクロピドグレルの活性代謝物はインビトロで同様のレベルの血小板阻害を生じるが、インビボで生じたそれぞれの活性代謝物の量は有意に異なる:プラスグレル60mgの負荷投与量は、クロピドグレル300mgの負荷投与量と比較して、ミリグラムベースで約50倍高いその活性代謝物への曝露を生じる。
【0008】
クロピドグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む組成物は公知である。例えば、特許文献9、特許文献10、特許文献11及び特許文献12(これらは全体として参照により本明細書に加入される)を参照のこと。
【0009】
プラスグレルは、経皮的冠動脈形成術を受けたか経皮的冠動脈形成術が計画されている、急性冠症候群に罹患した対象の処置に関して少なくとも1つの臨床試験を完了した。例えば、非特許文献1を参照のこと。急性冠症候群には、心臓発作及び不安定狭心症(胸痛)が含まれる。プラスグレルは、クロピドグレルと比較して、心臓血管が原因の死亡及び非致死性の心筋梗塞、さらには非致死性の脳卒中を合わせた比率の減少を示した。しかし、プラスグレルを投与された対象は、深刻な出血事象の増加した比率も示した。臨床試験において、3つのサブグループは処置グループ全体よりも少ない有効性及び出血の高い絶対レベルを有し、結果として減少した正味の臨床的利点であるか又は臨床的損害であった。出血関連有害作用の危険性は、登録前に脳卒中又は一過性脳虚血の病歴を有する患者、高齢者(75歳及びそれより高齢の対象)、及び60kgより少ない体重を有する対象において最も顕著であった。高齢の対象及び60kgより少ない体重の対象における増加した出血の危険性は、薬物に対する変更された性質及び/又はより小さな身体サイズから生じる活性代謝物の増加したレベルに起因したのかもしれないと仮定された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,288,726号
【特許文献2】米国特許第5,436,242号
【特許文献3】米国特許第6,693,115号
【特許文献4】米国特許公開第2008/0108589号
【特許文献5】米国特許公開第2008/0176893号
【特許文献6】WO2004/098713
【特許文献7】WO2006/138317
【特許文献8】WO2008/073759
【特許文献9】米国特許第5,989,578号
【特許文献10】WO2008/072836
【特許文献11】WO2008/134600
【特許文献12】WO2008/134601
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wiviott、S.D. et al.、N. Engl. J. Med. 357:2001 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
必要とされているものは、例えば治療的に有効な投薬量に対してより安全かつ/若しくは容易に滴定することができるプラスグレル製剤を提供することにより、増加したバイオアベイラビリティーの活性種を提供することにより、及び/又は治療開始の改善された速度を提供することにより、プラスグレルの毒性学及び副作用プロフィールを最少にすることができるプラスグレル製剤である。本明細書に記載されるように、プラスグレル及びシクロデキストリンを含む、経口又は非経口投与に適した組成物が開発された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、プラスグレル及び式I:
【化1】

[式中、nは4、5又は6であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]のシクロデキストリン誘導体を含み、ここでシクロデキストリン誘導体がプラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比の濃度で存在する、医薬組成物に関する。
【0014】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、プラスグレルに対して少なくとも50:1のモル比の濃度で存在する。
【0015】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は約2〜約4のpHを有し、そしてシクロデキストリン誘導体は、プラスグレルに対して約100:1〜約700:1の質量比で存在する。
【0016】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は約4〜約9のpHを有し、そしてシクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して少なくとも700:1の質量比で存在する。
【0017】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは−O−(ヒドロキシ−置換−C3)基である。
【0018】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は独立して、シクロデキストリン誘導体あたり約4〜約8の置換度を有する直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基であり、そして残りの置換基は−Hである。
【0019】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つが−O−(直鎖C4−(アルキレン))−SO3-基で置換される。
【0020】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式II:
【化2】

[式中、Rは(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+xである]の化合物である。いくつかの実施態様において、xは6.0〜7.1である。
【0021】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、担体、保存料、抗酸化剤、第二の治療薬、酸性化剤、アルカリ化剤(alkalinizing agent)、緩衝剤、増量剤(bulking agent)、錯形成促進剤、凍結保護物質、密度調整剤、電解質、矯味矯臭剤、香料、凍結乾燥補助剤、可塑剤、溶解性向上剤、安定剤、甘味料、表面張力調整剤、揮発性調整剤、粘度調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される薬剤を含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー(hemorrheologic)薬、血栓溶解(thromobolytic)剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型(modified)組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせを含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、プラスグレルの類似体又は誘導体、クロピドグレル(clopridogrel)、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク(etolodac)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム(isoxicam)、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート(mefenamate)、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン(otamixaban)、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、チカグレロル(ticagrelor)、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン(irbesartran)、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン(sitaxentan)、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト(enaliprilat)、 スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル(benazapril)、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン(fondaparin)、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル(coumatetralyl)、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール(carvediol)、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療薬を含む。
【0024】
本発明はまた、プラスグレル約1mg〜約120mg、及び式I:
【化3】

[式中、nは4、5又は6であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]
のシクロデキストリン誘導体を含んでなる、単位投与形態であって、
該シクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比の濃度で存在する、単位投与形態に関する。
【0025】
いくつかの実施態様において、単位投与形態はプラスグレル約1mg〜約20mgを含む。いくつかの実施態様において、単位投与形態はプラスグレル約20mg〜約120mgを含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、単位投与形態は固形物である。いくつかの実施態様において、固形単位投与形態は凍結乾燥固形物又は無菌噴霧乾燥固形物である。
【0027】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、プラスグレルを約.005%〜約2%(質量/体積)の濃度で含み、シクロデキストリン誘導体を約5%〜約40%(質量/体積)の濃度で含み、そして該単位投与形態は約2〜約4のpHを有する水性液剤である。
【0028】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、緩衝剤0.1Mを含み、ここで該単位投与形態中のプラスグレルが24時間で10%又はそれ以下分解する。
【0029】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、プラスグレルを約0.005%〜約1%(質量/体積)の濃度で含み、シクロデキストリン誘導体を約5%〜約40%(質量/体積)の濃度で含み、そして該単位投与形態は約4〜約9のpHを有する水性液剤である。
【0030】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は緩衝剤0.1Mを含み、ここで該単位投与形態中のプラスグレルが24時間で20%又はそれ以下分解する。
【0031】
本発明はまた、本発明の単位投与形態を、それを必要とする対象に経口又は非経口投与することを含む、それを必要とする対象を処置する方法に関する。
【0032】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、本発明の単位投与形態を水性担体で希釈すること、次いで希釈した単位投与形態を非経口投与することを含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、濃縮液体単位投与形態、凍結乾燥された固形単位投与形態、無菌噴霧乾燥された固形単位投与形態、及び再構成可能な単位投与形態から選択される単位投与形態を投与することを含む。
【0034】
本発明はまた、プラスグレルの投与後のその治療開始までの時間を減少させる方法に関し、該方法は、それを必要とする対象に本発明の医薬組成物を経口又は非経口投与することを含み、ここで経口又は非経口投与された組成物によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間は、シクロデキストリン誘導体が除かれ、かつ等量のプラスグレルが含まれている経口投与された参照組成物によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間より短い。
【0035】
本発明はまた、血小板凝集に関連する病因を有する疾患、障害若しくは状態、又はプラスグレルに対して治療的に反応性の疾患、障害若しくは状態を処置する方法に関し、該方法は、それを必要とする対象に本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0036】
いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレルの治療有効用量に用量設定するための、それを必要とする対象での方法に関し、該方法は:第一の用量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする対象に非経口投与すること;第一の用量の医薬組成物に対する対象の反応性を決定すること;及び対象に第二の用量の医薬組成物を非経口投与することを含み、ここで第二の用量は、第一の用量と比較して増加又は減少した量のプラスグレルを含む。いくつかの実施態様において、該方法は、決定すること及びさらなる用量の本発明の医薬組成物を非経口投与することを、所望の治療有効性が達成されるまで繰り返すことを含む。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、プラスグレル約1mg〜約20mgの維持量を投与することを含む。
【0037】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、プラスグレル約20mg〜約120mgを含む負荷投与量を投与することを含む。
【0038】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、急性冠症候群(例えば、不安定狭心症/非Q波心筋梗塞、心臓発作、アンギナなど)、亜急性心筋梗塞、亜急性脳卒中、確定した末梢動脈疾患、ST上昇急性心筋梗塞、非ST上昇急性冠症候群、亜急性期経皮的冠動脈インターベンション、亜急性期血管形成術、血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、一過性虚血性イベント、二次性虚血性イベント、確定した末梢動脈疾患を伴う血管死、心血管疾患、脳血管疾患、狭心症、不整脈、鎌状赤血球発症、及びそれらの組み合わせから選択される疾患、障害又は状態に罹患した対象を処置することを含む。
【0039】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー薬、血栓溶解(thromobolytic)剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせを対象に投与することを含む。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、プラスグレルの類似体又は誘導体、クロピドグレル(clopridogrel)、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク(etolodac)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム(isoxicam)、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、チカグレロル、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療薬を対象に投与することを含む。
【0041】
本発明のさらなる実施態様、特徴及び利点、さらには本発明の種々の実施態様の組成物、構造及び操作は、添付の図面を参照して以下で詳細に記載される。
【0042】
本明細書に加入され、明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様を説明し、そして明細書と共に、本発明の原理を説明し、そして関連技術の当業者が本発明を製造及び使用することを可能にするためにさらに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一般化溶解度式を使用して決定された、pHの関数としてのプラスグレルの理論的溶解度プロフィールのグラフ表現を提供する。
【図2】SBE6.5−β−CDについてのスルホアルキルエーテルシクロデキストリン濃度(% w/v)の関数としての、pH7.4での水性液剤中のプラスグレルの相溶解度(mg/mL)のグラフ表現を提供する。
【図3】HP4.3−β−CD及びSBE6.5−β−CDについてのシクロデキストリン誘導体濃度(% w/v)の関数としての、pH4での水性液剤中のプラスグレルの相溶解度(mg/mL)のグラフ表現を提供する。
【図4】HP4.3−β−CD及びSBE6.5−β−CDについてのシクロデキストリン誘導体濃度(M)の関数としての、pH4での水性液剤中のプラスグレルの相溶解度(M)のグラフ表現を提供する。
【図5】種々のpHでの水性液剤、シクロデキストリン誘導体を含有する水性液剤中でのプラスグレルの安定性のグラフ表現を提供する。
【図6】種々のpHでの水性液剤、シクロデキストリン誘導体を含有する水性液剤中でのプラスグレルの安定性のグラフ表現を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に開示される種々の局面及び実施態様の組み合わせ及びサブコンビネーションを含む。さらに、特定の特徴、構造又は特性が実施態様に関連して記載される場合、明確に記載されているか否かにかかわらず、他の実施態様に関連してそのような特徴、構造又は特性を達成することは当業者の知識の範囲内であるということが理解される。本発明のこれらの局面及び他の局面は、以下の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲及び添付の図面を参照して明らかとなるだろう。
【0045】
プラスグレル
本発明の組成物、製剤、及び単位投与形態はプラスグレルを含み、これは以下の化学構造:
【化4】

を有する。
【0046】
本明細書で使用される用語「プラスグレル(prasugrel)」は、上記の化合物、5−[(1RS)−2−シクロプロピル−1−(2−フルオロフェニル)−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−2−イル アセテート、さらにはプラスグレルの薬学的に許容しうる塩、さらにその多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶、無水物、及び非晶形も指す。プラスグレルは不斉原子を含み、したがって本明細書で使用される「プラスグレル」は、左旋性鏡像異性体、右旋性鏡像異性体、これらの鏡像異性体のラセミ混合物、及びそれらの組み合わせを指す。従って本発明は、プラスグレルの薬学的に許容しうる塩、並びにプラスグレルの多形体、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶、無水物、及び非晶形を、シクロデキストリン誘導体と組み合わせて含む医薬組成物及び投薬形態を包含する。
【0047】
本明細書で使用される「薬学的に許容しうる」は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の可能な合併症がなく、妥当なベネフィット/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織との接触に適した添加物、化合物、付加塩、材料、及び/又は組成物を指す。
【0048】
シクロデキストリン誘導体
本発明の組成物、製剤及び/又は単位投与形態はシクロデキストリン誘導体を含む。本明細書で使用される「シクロデキストリン誘導体」は、環状1→4配置で連結された5つ又はそれ以上のα−D−グルコピラノシド単位を含み、そして1つ又はそれ以上のグルコピラノシド単位に2、3及び/又は6位にてエーテル結合(−O−R−、ここでRは置換基を指す)を通して結合した置換基を含む、環状オリゴ糖を指す。
【0049】
本発明での使用のためのシクロデキストリン誘導体は、式I:
【化5】

[式中、nは4、5又は6であり、そしてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]
の化合物である。
【0050】
いくつかの実施態様において、本発明での使用のためのシクロデキストリンは、平均置換度(「ADS」)に基づいて選択され、この平均置換度は、本明細書で使用される場合シクロデキストリン分子あたりの置換基の平均数を指す。シクロデキストリン誘導体の平均置換度は、WO2009/018069(その全体として参照により本明細書に加入される)に詳細に記載される。本明細書で使用される場合、本発明での使用のためのシクロデキストリン誘導体組成物は、以下の表記法により言及される:置換基は、置換基のADSを示す下付き文字と共に略され(例えば、スルホブチルエーテル基は「SBE」と略される)、そしてシクロデキストリン構造が規定される。例えば、6.5のADSを有するスルホブチルエーテル誘導体化β−シクロデキストリン組成物は、「SBE6.5−β−CD」と称される。第二の例として、スルホブチルエーテルとヒドロキシプロピル基の両方で誘導体化されたシクロデキストリン分子を含むβ−シクロデキストリン組成物は、「SBE4.2−HP2.5−β−CD」と称され、ここでスルホブチルエーテル基のADSは4.2であり、そしてヒドロキシプロピル基のADSは2.5である。
【0051】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは直鎖−O−(C4−(アルキレン))−SO3-基で置換される。本発明での使用に適した例となる−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基としては、限定されないが、スルホエチルエーテル、スルホプロピルエーテル、1−メチル−スルホプロピルエーテル、スルホブチルエーテル、1−メチル−スルホブチルエーテル、2−メチル−スルホブチルエーテル、1−メチル−スルホブタ−3−イルエーテル、2−エチル−スルホブチルエーテル、3−エチル−スルホブチルエーテル、スルホペンチルエーテル、1−スルホペンタ−3−イルエーテル、スルホヘキシルエーテル、スルホヘプチルエーテル、スルホオクチルエーテルなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は独
立して、シクロデキストリン誘導体あたり約4〜約8、約4〜約7.5、約4〜約7、約4〜約6.5、約4.5〜約8、約4.5〜約7.5、約4.5〜約7、約5〜約8、約5〜約7.5、約5〜約7、約5.5〜約8、約5.5〜約7.5、約5.5〜約7、約5.5〜約6.5、約6〜約8、約6 約7.5、約6〜約7.1、約6.5〜約8、又は約6.5〜約7.5のADSを有する直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基であり、そして残りの置換基は−Hである。
【0053】
いくつかの実施態様において、置換基は、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基である。いくつかの実施態様において、置換基は、場合により置換される直鎖、分枝鎖若しくは環状の−O−(C1−C8)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖若しくは環状の−O−(C2−C6)基、又は場合により置換される直鎖、分枝鎖若しくは環状の−O−(C3−C5)基である。
【0054】
本明細書で使用される「場合により置換される」は、ハロゲン(すなわち、−F、−Cl、−Br、−I)、−NO2、−C≡N、−OR22、−SR22、−SO222、−C(=O)OR22、−C(=O)R22、−C(=O)N(R222、−SO2N(R222、−SO2N(H)C(=O)R22、−SO2N(H)C(=O)OR22(ここでR22はHではない)、−N(R222、−N(R22)SO222、−N(R22)C(O)m22(ここでmは1又は2である)、−N(R22)C(O)N(R222、−N(R22)SO2N(R222、−O−C(=O)R22、−O−C(=O)OR22、−O−C(=O)N(R222、−C(=O)N(H)SO2N(R222、−C(=O)N(H)SO222、オキソ(又はケト、すなわち、=O)、チオキソ(すなわち、=S)、イミノ(すなわち、=NR22)、−NR22−C(=NR22)R22、−NR22−C(=NR22)N(R222、−C(=NR22)N(R222、−O−C(=NR22)N(R222、−O−C(=NR22)R22、−C(=NR22)R22、−C(=NR22)OR22、及びそのイオン形態(例えば、−N+(R222-など、ここでX−は薬学的に許容しうるアニオンである)、[ここでR22は各出現においてH、及びC1−C4アルキルから独立して選択される]から選択される1つ又はそれ以上の任意の置換基を指す。
【0055】
例となる場合により置換される直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C10)基としては、限定されないが、2−ヒドロキシプロピルエーテル、3−ヒドロキシプロピルエーテル、2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、3−オキソブチルエーテル、及び2−エトキシ−エチルエーテルが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは−O−(ヒドロキシ置換C3)基である。いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、約1〜約8、約2〜約8、約3〜約7、約4〜約7.5、約4.3〜約7.5、約1、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.3、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、又は約7.5のADSを有する−O−(ヒドロキシ置換C3)基を含むβ−シクロデキストリンを含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基である。例えば、本発明での使用に適したシクロデキストリンとしては、1つ又はそれ以上のカルボキシ置換アルキルチオエーテル基で場合により置換されたβ−及びγ−シクロデキストリンが挙げられる。代表的な構造としては、スガマデックス、8つのカルボキシプロピルチオエーテル基で置換されたγ−シクロデキストリン(すなわち、CAS登録番号343306−79−6、BRIDION(登録商標)として入手可能、N.V.
Organon、Oss、NL)が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9波独立してサッカリドである。本明細書で使用される「サッカリド」は、天然及び合成の単糖、二糖、三糖、四糖、及び五糖、さらには米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)によりヒトの消費に一般的に安全として認可されている糖アルコール及びポリオールを指し、ここでサッカリドは、シクロデキストリン上に存在するヒドロキシ基を通してシクロデキストリンに共有結合されている。
【0059】
本発明での使用に適した単糖としては、限定されないが、アロース、アルトロース、アラビノース、エリトロース、エリトルロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、イドース、リキソース、プシコース、リボース、リブロース、ソルボース、タガトース、タロース、トレオース、キシロース、キシルロースなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
本発明での使用に適した二糖としては、限定されないが、セロビオース、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース、ツラノースなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
本発明での使用に適した三糖としては、限定されないが、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースなど、さらには上で列挙した単糖のいずれかの組み合わせを含むニゲロトリオース類(nigerotrioses)、ゲンチオトリオース類(gentiotrioses)などが挙げられる。
【0062】
本発明での使用に適した四糖としては、限定されないが、アカルボース、ニストース、スタキオースなど、さらには上で列挙した単糖のいずれかの組み合わせを含むニゲロテトラオース類(nigerotetraoses)、ゲンチオテトラオース類(gentiotetraoses)などが挙げられる。
【0063】
本発明での使用に適した五糖としては、限定されないが、上で列挙した単糖のいずれかの組み合わせを含むニゲロペンタオース類(nigeropentaoses)、ゲンチオペンタオース類(gentiopentaoses)などが挙げられる。
【0064】
本発明での使用のための二糖、三糖、四糖、及び五糖としては、マルト−オリゴ糖(すなわち、α−1,4グルコシド結合のみを含むオリゴマー)、イソマルト−オリゴ糖(すなわち、α−1,4及びα−1,6グルコシド結合の両方を含む「分枝」オリゴマー)、ニゲロ−オリゴ糖(すなわち、α−1,3結合オリゴマー)、ゲンチオ−オリゴ糖(すなわち、β−1,6結合オリゴマー)が挙げられる。
【0065】
本発明での使用に適した糖アルコールとしては、限定されないが、アラビトール、エリトリトール、グリセロール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
本発明での使用に適したポリオールとしては、限定されないが、イノシトールなどが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、β−シクロデキストリンの第一級ヒドロキシル基の1つがα−1,6グリコシド結合によりマルトースで置換されるマルトシル−β−シクロデキストリンである。
【0068】
本発明での使用に適した例となるシクロデキストリン組成物、及びそれを製造する方法には、米国特許第5,134,127号、同第5,241,059号、同第5,376,645号、同第5,874,418号、同第6,046,177号、同第6,133,248号、同第6,153,746号、同第6,204,256号、同第7,034,013号、米国特許公開第2009/0012042号、WO2005/117911、及び米国出願第12/363,719号及び同第12/404,174号、(これらの各々の内容は全体として参照により本明細書に加入される)に記載されるものが含まれる。
【0069】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式II:
【化6】

[式中、Rは(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+xである]の化合物である。いくつかの実施態様において、xは6.0〜7.1である。いくつかの実施態様において、式IIのシクロデキストリン誘導体は、約2163g/molの質量平均分子量を有する。
【0070】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、約6.5のADSを有するスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(例えば、CAPTISOL(登録商標)、CyDex Pharmaceuticals、Inc.、Lenexa、KS)である。CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンは、ブチルエーテルスペーサー基で親油性シクロデキストリンキャビティーから離されたナトリウムスルホネート、又はスルホブチルエーテル(SBE)を有するポリアニオン性β−シクロデキストリン誘導体である。CAPTISOL(登録商標)シクロデキストリンは、非経口、経口又は吸入により投与された場合に安全であることが示されており、β−シクロデキストリンに関連する腎毒性を示さない。β−シクロデキストリンと比較して、CAPTISOL(登録商標)スルホアルキルエーテルシクロデキストリンは、同程度か又はより高い錯体形成特性、及び100mLあたり90gを超える、50倍の改善である優れた水溶性をもたらす。
【0071】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、薬学的に許容しうるアニオン又はカチオンと場合により塩を形成し得るイオン性基を有する置換基を含む。本発明の負に荷電したシクロデキストリン誘導体と塩を形成するために適した薬学的に許容しうるカチオンとしては、限定されないが、H+、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、アンモニウム及びアミンカチオン、例えば(C1−C6)−アルキルアミン類、(C4−C8)−シクロアルキルアミン類(例えば、ピペリジン、ピラジンなど)、(C1−C6)−アルカノールアミン類、及び(C4−C8)−シクロアルカノールアミン類などのカチオン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の正に荷電したシクロデキストリン誘導体と塩を形成するために適した薬学的に許容しうるアニオンとしては、限定されないが、ハロゲン化物(例えば、Cl-など)、(C1−C6)−アルキル酸類のアニオン(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩など)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
医薬組成物及び単位投与形態
本発明は、プラスグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む医薬組成物及び単位投与形態に関する。本発明の医薬組成物は、対象への経口及び/又は非経口投与に適している。医薬組成物の非経口投与としては、限定されないが、静脈内(ボーラス注射を含む)、動脈内、筋内、経粘膜(例えば、鼻腔、直腸など)、及び皮下投与を挙げることができる。本発明の組成物の非経口投与は典型的には混入物に対する対象の自然な防御を回避するので、本医薬組成物は滅菌であり得るか、又は投与前に滅菌することができる。
【0073】
例となる医薬組成物としては、限定されないが、投与の準備ができた液剤、懸濁剤又は乳剤、薬学的に許容しうるビヒクル中に溶解又は懸濁するように準備ができた液剤、懸濁剤又は乳剤、及び薬学的に許容しうるビヒクル中に溶解又は懸濁するように準備ができた乾燥製品が挙げられる。
【0074】
一般に、本発明の医薬組成物は、プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい状態を処置するために適した濃度でプラスグレルを含む。従って、本発明の医薬組成物は、それを必要とする対象に投与するため、治療有効量のプラスグレルを含む単位投与形態を製造するために使用することができる。いくつかの実施態様において、単位投与形態は、希釈せずに投与するために適した濃度のプラスグレルを含む医薬組成物を含み得る。
【0075】
滅菌の液剤、懸濁剤、乳剤などは、本明細書で列挙される他の任意成分と共にプラスグレルを適切な溶媒又は担体中に加え、続いて滅菌することにより製造され得る。滅菌散剤は、滅菌の液剤、懸濁剤、又は乳剤を噴霧乾燥、無菌噴霧乾燥、真空乾燥、又は凍結乾燥して、いずれかのさらなる添加物とともにプラスグレルを含む乾燥した固形物(例えば粉末)を生じることにより製造され得る。
【0076】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、対象への投与前に液体担体又は希釈剤で希釈されるストック溶液を含む。従って、本発明の医薬組成物及び単位投与形態は、滅菌で水性の溶液、懸濁液、及び分散、さらには滅菌の溶液、懸濁液又は分散を提供するために即席で希釈又は可溶化される滅菌固形物(例えば粉末)を含む。
【0077】
いくつかの実施態様において、プラスグレルは本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、約0.001mg/mL〜約1mg/mL、約0.005mg/mL〜約1mg/mL、約0.01mg/mL〜約1mg/mL、約0.05mg/mL〜約1mg/mL、約0.1mg/mL〜約1mg/mL、約0.5mg/mL〜約1mg/mL、約0.001mg/mL〜約0.5mg/mL、約0.005mg/mL〜約0.5mg/mL、約0.01mg/mL〜約0.5mg/mL、約0.05mg/mL〜約0.5mg/mL、約0.1mg/mL〜約0.5mg/mL、約0.001mg/mL〜約0.1mg/mL、約0.005mg/mL〜約0.1mg/mL、約0.01mg/mL〜約0.1mg/mL、又は約0.05mg/mL〜約0.1mg/mLの濃度で存在する。
【0078】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、約0.1mg/mL〜約1000mg/mL、約0.1mg/mL〜約700mg/mL、約0.1mg/mL〜約500mg/mL、約0.1mg/mL〜約250mg/mL、約0.1mg/mL〜約200mg/mL、約0.1mg/mL〜約150mg/mL、約0.1mg/mL〜約100mg/mL、約0.1mg/mL〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約1000mg/mL、約1mg/mL〜約700mg/mL、約1mg/mL〜約500mg/mL、約1mg/mL〜約250mg/mL、約1mg/mL〜約200mg/mL、約1mg/mL〜約150mg/mL、約1mg/mL〜約100mg/mL、約1mg/mL〜約50mg/mL、約10mg/mL〜約1000mg/mL、約10mg/mL〜約700mg/mL、約10mg/mL〜約500mg/mL、約10mg/mL〜約250mg/mL、約10mg/mL〜約200mg/mL、約10mg/mL〜約150mg/mL、約10mg/mL〜約100mg/mL、約10mg/mL〜約50mg/mL、約50mg/mL〜約1000mg/mL、約50mg/mL〜約700mg/mL、約50mg/mL〜約500mg/mL、約50mg/mL〜約250mg/mL、約50mg/mL〜約200mg/mL、約50mg/mL〜約150mg/mL、約50mg/mL〜約100mg/mL、約100mg/mL〜約1000mg/mL、約100mg/mL〜約700mg/mL、約100mg/mL〜約500mg/mL、約100mg/mL〜約250mg/mL、約100mg/mL〜約200mg/mL、約200mg/mL〜約1000mg/mL、約200mg/mL〜約700mg/mL、約200mg/mL〜約500mg/mL、約200mg/mL〜約250mg/mL、約500mg/mL〜約1000mg/mL、又は約500mg/mL〜約700mg/mLの濃度で存在する。
【0079】
いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレル及び式I:
【化7】

[式中、nは4、5又は6であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3-基、場合により置換される直鎖、分枝鎖、又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]のシクロデキストリン誘導体を含む医薬組成物であって、そしてここでシクロデキストリン誘導体はプラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比の濃度で存在する、医薬組成物に関する。
【0080】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、プラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比、少なくとも125:1の質量比、少なくとも150:1の質量比、少なくとも200:1の質量比、少なくとも250:1の質量比、少なくとも300:1の質量比、少なくとも400:1の質量比、少なくとも500:1の質量比、少なくとも600:1の質量比、少なくとも700:1の質量比、少なくとも800:1の質量比、少なくとも900:1の質量比、又は少なくとも1000:1の質量比の濃度で存在する。
【0081】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、プラスグレルに対して約100:1〜約8000:1の質量比、約100:1〜約5000の質量比、約100:1〜約1000:1の質量比、約100:1〜約900:1の質量比、約100:1〜約700:1の質量比、約100:1〜約600:1の質量比、約100:1〜約500:1の質量比、約100:1〜約400:1の質量比、約100:1〜約300:1の質量比、約100:1〜約250:1の質量比、約100:1〜約200:1の質量比、約100:1〜約175:1の質量比、約100:1〜約150:1の質量比、約100:1〜約125:1の質量比、約125:1〜約700:1の質量比、約125:1〜約500:1の質量比、約125:1〜約250:1の質量比、約150:1〜約700:1の質量比、約150:1〜約500:1の質量比、約150:1〜約300:1の質量比、約175:1〜約700:1の質量比、約175:1〜約500:1の質量比、約150:1〜約300:1の質量比、約200:1〜約700:1の質量比、約200:1〜約500:1の質量比、約250:1〜約700:1の質量比、約250:1〜約500:1の質量比、約300:1〜約700:1の質量比、約300:1〜約500:1の質量比、約700:1〜約8000:1の質量比、約700:1〜約5000:1の質量比、約700:1〜約1000:1の質量比、約700:1〜約900:1の質量比、又は約700:1〜約800:1の質量比の濃度で存在する。
【0082】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、プラスグレルに対して少なくとも50:1のモル比、少なくとも75:1のモル比、少なくとも100:1のモル比、少なくとも125:1のモル比、少なくとも150:1のモル比、少なくとも200:1のモル比、又は少なくとも250:1のモル比の濃度で存在する。
【0083】
いくつかの実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態中に、プラスグレルに対して約50:1〜約300:1のモル比、約50:1〜約250:1のモル比、約50:1〜約200:1のモル比、約50:1〜約150:1のモル比、約50:1〜約125:1のモル比、約50:1〜約100:1のモル比、約50:1〜約75:1のモル比、約75:1〜約300:1のモル比、約75:1〜約250:1のモル比、約75:1〜約200:1のモル比、約75:1〜約150:1のモル比、約75:1〜約125:1のモル比、約75:1〜約100:1のモル比、約100:1〜約300:1のモル比、約100:1〜約250:1のモル比、約100:1〜約200:1のモル比、約100:1〜約150:1のモル比、約100:1〜約125:1のモル比、約150:1〜約300:1のモル比、約200:1〜約300:1のモル比、又は約250:1〜約300:1のモル比の濃度で存在する。
【0084】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物及び単位投与形態は実質的に均一である。本明細書で使用される「均一」は、全体にわたる成分の均一な分布を有する、本発明の混合物、溶液、懸濁液、組成物、投薬形態及び/又は製剤を指す。均一性(Homogeneity)は均一性(uniformity)と同義であり、そしてサンプル内の均一性、バッチごとの均一性、実行ごとの均一性及び/又は投薬形態ごとの均一性のことを指していてもよい。例えば、サンプル内の均一性は、サンプル、混合物、又は組成物の第一の部分を分析し、そしてこれを同じサンプル、混合物又は組成物の第二の部分と比較することにより決定することができる。実質的に均一な組成物の組成の典型的な偏差(deviations)(例えば、添加物の質量パーセントの変動など)は、5%若しくはそれ以下、3%若しくはそれ以下、2%若しくはそれ以下、1%若しくはそれ以下、又は実験誤差内である。
【0085】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、薬学的に許容しうる添加物を含む。本明細書で使用される用語「添加物(excipient)」は、医薬組成物を製造するためにプラスグレル及びスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと混合され得るいずれかの不活性物質を指す。
【0086】
本発明での使用に適した薬学的に許容しうる添加物としては、限定されないが、担体、保存料、抗酸化剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、増量剤、錯形成促進剤、凍結保護物質、密度調整剤、電解質、矯味矯臭剤、香料、凍結乾燥補助剤(例えば、増量剤及び/又は安定剤)、可塑剤、溶解性向上剤、安定剤、甘味料、表面張力調整剤、揮発性調整剤、粘度調整剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、The Handbook of Pharmaceutical Excipients、5th Ed.、The Pharmaceutical Press and American Pharmacists Association、London、UK and Washington、DC (2006)(これはその全体として参照により本明細書に加入される)に列挙されるものを含む薬学的に許容しうる添加物が本発明において使用され得るということを当業者は認識するだろう。
【0087】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は薬学的に許容しうる担体を含む。本明細書で使用される「担体」は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態を移送及び/又は希釈するために適したビヒクルを指す。本発明での使用に適した薬学的に許容しうる担体としては、限定されないが、液体、固形物、コロイド、ゲル及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明での使用に適した液体担体としては、限定されないが水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール類など)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの組み合わせのような溶媒、液体分散媒体などが挙げられる。いくつかの実施態様において、液体担体は;デキストロース溶液、食塩水、血漿、及び乳酸加リンガー液から選択される。
【0088】
いくつかの実施態様において、医薬組成物又は単位投与形態のpHは制御される。いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、薬学的に許容しうる緩衝剤及び/又はpH調整剤(例えば、酸性化剤及び/又はアルカリ化剤)を含む。いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、約2〜約9、約2〜約8、約2〜約7、約2〜約6、約2〜約4、約3〜約9、約3〜約8、約3〜約7、約3〜約6、約4〜約9、約4〜約8、約4〜約7、約4〜約6、約6〜約9、約6〜約8、約3、約4、約5、約6、約7、又は約8のpHを有する。
【0089】
いくつかの実施態様において、対象への投与前に希釈される医薬組成物又は単位投与形態は、約2〜約9、約2〜約7、約2〜約6、約2〜約5、又は約2〜約4のpHを有する。いくつかの実施態様において、(例えば、液体担体を用いる)希釈後に、本発明の単位投与形態は、それを必要とする対象への投与の時点で約4〜約9、約4〜約8、約4〜約7、約4〜約6、約5〜約9、又は約6〜約8のpHを有する。
【0090】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は緩衝剤を含む。いくつかの実施態様において、緩衝剤は約0.01M〜約10M、約0.02M〜約5M、約0.03M〜約2M、約0.05M〜約1M、約0.1M〜約0.5M、約0.05M、約0.1M、約0.15M、約0.2M、約0.25M、又は約0.3Mの濃度で存在する。
【0091】
本発明での使用に適した緩衝剤としては、限定されないが、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤、水酸化物緩衝剤など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
水性液剤中のプラスグレルの溶解度はpH依存性であるので、本発明の医薬組成物マテャア単位投与形態中のシクロデキストリン誘導体の濃度はpHにより変動する。一般に、医薬組成物のpHが減少するにつれて、プラスグレルを可溶化するために必要とされ得るシクロデキストリン誘導体の濃度は低くなる。従って、いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は約4若しくはそれ以下、又は約2〜約4のpHを有し、そしてプラスグレルに対するシクロデキストリン誘導体の比は、少なくとも100:1の質量比、若しくは約100:1〜約700:1の質量比、又は本明細書中で開示される比の間にあるいずれかの他の質量比である。
【0093】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、約4若しくはそれ以上のpH、又は約4〜約9のpHを有し、そしてプラスグレルに対するシクロデキストリンの比は少なくとも700:1の質量比、若しくは約700:1〜約1000:1の質量比、又は本明細書に開示される比の間にあるいずれかの他の質量比である。
【0094】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、抗血栓性、抗血小板凝集、抗アテローム硬化性、抗再狭窄及び/又は抗凝固活性を有する第二の治療薬を含む。このような薬物は、血栓症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中及び血栓塞栓性脳卒中、末梢血管疾患、他の心血管疾患、脳虚血、炎症性障害及び癌、さらにはトロンビン及びその受容体が病的役割を果たす他の障害を含む血栓関連疾患の処置において有用である。
【0095】
適切な第二の治療薬としては、限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー薬、血栓溶解(thromobolytic)剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、の類似体又は誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態は、限定されないが、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク(etolodac)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、プラスグレルの類似体及び誘導体、クロピドグレル(clopridogrel)、チカグレロル、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及びそれらの組み合わせのような第二の治療薬を含む。
【0097】
本明細書で使用される「単位投与形態」は、特定量のプラスグレルを含有する組成物を指し、その全体が単回用量で対象に投与されることを意図される。単位投与形態は、そこから単回用量を図り分ける複数回投与量の医薬組成物の供給、例えば薬瓶とは区別され得る。
【0098】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は治療有効量のプラスグレルを含む。本明細書で使用される「治療有効量」は、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医により求められている組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的反応(これは処置される疾患又は障害の症状の軽減を含む)を誘発するプラスグレルの量を指す。
【0099】
単位投与形態は典型的に、本発明の医薬組成物、及び場合により1つ又はそれ以上の薬学的に許容しうる添加物を含み、ここでこの単位投与形態中に存在するプラスグレルの量は、それを必要とする対象への単回投与に十分である。本発明の単位投与形態としては、限定されないが、液剤、液状懸濁剤、液状分散剤、乳剤、ゲル剤、散剤、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などが挙げられる。プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい疾患又は状態の処置は、本発明の単位投与形態の周期的な投与(例えば1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1回若しくはそれ以上の食事と共に、1回若しくはそれ以上の食事の少なくとも1時間前若しくは2時間後、4〜6時間ごとに、8時間ごとに、12時間ごとに、又はいくつかかの他の間隔)を含み得る。
【0100】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態はプラスグレル1mg〜120mgを含む。いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は維持量のプラスグレルを含む。本明細書で使用される「維持量」は、プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい疾患又は障害に罹患した対象においてプラスグレル又はその活性代謝物のインビボでの濃度を維持するために周期的様式(例えば、1日に1回、1日に2回など)で投与され得るプラスグレルの量を指す。いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態はプラスグレル約1mg〜約20mg、約1mg〜約10mg、約1mg〜約8mg、約1mg〜約6mg、約1mg〜約5mg、約1mg〜約2.5mg、約1mg〜約2mg、約2mg〜約20mg、約2mg〜約10mg、約2mg〜約8mg、約2mg〜約6mg、約2mg〜約5mg、約5mg〜約20mg、約5mg〜約10mg、約10mg〜約20mg、約20mg、約15mg、10mg、約8mg、約7.5mg、約6mg、約5mg、約4mg、約2.5mg、又は約2mgを含む。
【0101】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、負荷投与量のプラスグレルを含む。本明細書で使用される「負荷投与量」は、より低い維持量を開始する前の処置の過程の初めに投与される、プラスグレルの初期の高い用量を指す。いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、プラスグレル約20mg〜約120mg、約20mg〜約100mg、約20mg〜約80mg、約20mg〜約60mg、約20mg〜約50mg、約40mg〜約120mg、約40mg〜約100mg、約40mg〜約80mg、約40mg〜約60mg、約50mg〜約120mg、約50mg〜約100mg、約50mg〜約80mg、約50mg〜約70mg、約60mg〜約120mg、約60mg〜約100mg、約60mg〜約80mg、約80mg〜約120mg、約80mg〜約100mg、約120mg、約100mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約40mg、又は約20mgを含む。
【0102】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は固形物である。いくつかの実施態様において、本発明の固形単位投与形態は凍結乾燥固形物又は無菌噴霧乾燥固形物である。いくつかの実施態様において、本発明の投薬形態は、所定量の液体担体を用いた希釈及び/又は再構成に適している。例えば、本発明の単位投与形態(例えば、液体又は固形)は、液体担体約10mL〜約500mL、約10mL〜約250mL、約10mL〜約100mL、又は約10mL〜約50mLで希釈され得る。
【0103】
いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、プラスグレルを約0.005%〜約2%(質量/体積)の濃度で、シクロデキストリン誘導体を約5%〜約40%(質量/体積)の濃度で含み、そして本単位投与形態は約2〜約4のpHを有する水性液剤である。いくつかの実施態様において、本発明の単位投与形態は、プラスグレルを約0.005%〜約1%(質量/体積)の濃度で、シクロデキストリン誘導体を約5%〜約40%(質量/体積)の濃度で含み、そして本単位投与形態は約4〜約9のpHを有する水性液剤である。
【0104】
本発明の医薬組成物及び単位投与形態は安定である。従って、固形又は液体の単位投与形態が希釈される実施態様において、希釈は投与の直前に行われてもよいし、又は治療効果の有意な損失なく投与のしばらく前に行われ得る。
【0105】
いくつかの実施態様において、約2〜約4のpHを有する本発明の液体の医薬組成物又は単位投与形態中のプラスグレルは、24時間で10%若しくはそれ以下、又は48時間の間に15%若しくはそれ以下分解する。
【0106】
いくつかの実施態様において、約4〜約9のpHを有する本発明の液体の医薬組成物又は単位投与形態中のプラスグレルは、24時間で20%若しくはそれ以下、又は48時間の間に40%若しくはそれ以下分解する。
【0107】
従って、本発明の液体医薬組成物又は液体単位投与形態は、使用の少なくとも24時間前又は約48時間前に(すなわち、それを必要とする対象への投与の前に)製造され得る。従って、いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレル及びシクロデキストリン誘導体を含む液体プラスグレル組成物を提供し、ここで該組成物は、約25℃で少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、又は少なくとも24時間の間の貯蔵後に、10%又はそれ以下のプラスグレル分解生成物(degradant)を含有する。
【0108】
投与及び処置の方法
いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレルを、それを必要とする対象に送達する方法に関し、該方法は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態をそれを必要とする対象に投与することを含む。本発明の方法は、本発明の医薬組成物又は単位投与形態を経口又は非経口投与することを含み得る。
【0109】
いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレルの経口組成物が1つ又はそれ以上の理由から適切でない対象に、本発明の医薬組成物又は単位投与形態を非経口投与することに関する。例えば、プラスグレルの経口組成物は、対象が若すぎるか、嚥下できないか、手術を受けているか、無能力であるか、又は経口経路により投与されたプラスグレルの吸収を阻止する障害を有するという理由で適切ではないかもしれない。さらに、本発明の医薬組成物の非経口投与は、プラスグレルのインビボ濃度の急速な、例えば薬物の投与の数秒又は数分以内の増加が必要とされる対象において状態を処置するために有用である。さらに、 プラスグレルが血流に直接送達されて胃腸吸収及び分布を回避するので、非経口投与は経口投与された製剤よりもより急速な開始をもたらし得る。
【0110】
さらに、所望の血小板凝集抑制効果レベルを達成するためのプラスグレルの有効な用量に対する滴定は、過剰で有害な出血作用を回避するために必要である。従って、非経口投与に適したプラスグレル製剤は、より有効な投薬量滴定を効率的に提供し得、それにより有害な出血事象を最小にする。
【0111】
いくつかの実施態様において、本発明は、ヒト対象に本発明の医薬組成物及び又は単位投与形態を投与することにより、該ヒト対象において疾患を処置及び又は予防する方法に関する。いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい疾患又は障害に罹患した対象を処置する方法に関し、該方法は、該対象に医薬組成物又は単位投与形態を投与することを含む。本明細書で使用される用語「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、いずれかの症状の発生を予防するように疾患状態/状態の臨床症状の開始前に本発明の組成物を投与すること、さらには疾患状態/状態のいずれかの上記症状、局面又は特徴を低減又は除去するように疾患状態/状態の1つ又はそれ以上の臨床症状の開始後に組成物を投与することを指す。このような処置は絶対的に有用である必要はない。さらに、用語「処置する」及び「処置」は、治療的処置及び予防的(prophylactic)の両方、維持又は予防的(preventative)な手段を指し、ここで目的は、望ましくない生理的状態、障害もしくは疾患を予防するか若しくは遅延させる(低下させる)こと、又は有益若しくは望ましい臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有益又は望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状若しくは徴候の軽減;状態、障害若しくは疾患の程度の縮小;状態、障害若しくは疾患の状況の安定化(すなわち、悪化しない);状態、障害若しくは疾患の進行の開始の遅延若しくは減速;状態、障害若しくは疾患状態の改善、寛解(部分的でも全体でも)(検出可能でも検出不能でも);又は状態、障害若しくは疾患の増大又は改善が挙げられる。処置には過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に重要な反応を誘発することが含まれる。処置はまた、処置を受けていない場合に予期される生存期間と比較した場合に生存期間を延長することも含む。
【0112】
本明細書で使用される用語「対象」は、ヒト及び非ヒトを含む、哺乳動物のような温血動物を指し、限定されないが、例えば家畜(domestic and farm animals)、動物園の動物、競技用動物、及びペット(例えば、ネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、及びヒツジ)である。いくつかの実施態様において、対象はヒト対象である。本発明の医薬組成物及び単位投与形態を投与するために適したヒト対象としては、限定されないが、小児、成人、老人及び高齢の対象が挙げられる。本発明のいくつかの実施態様において、対象は小児対象である。本明細書で使用される「小児(pediatric)」対象は17歳までの年齢であり、新生児(0〜約1ヶ月)、乳児(約1ヶ月〜約2歳)、小児(children)(約2〜約12歳)及び青年(約12〜17歳)を含む。成人対象は少なくとも18歳である。本発明のいくつかの実施態様において、対象は成人である。本発明のいくつかの実施態様において、対象は老人である。老人対象は少なくとも65歳又はそれ以上である。高齢対象は少なくとも75歳又はそれ以上で
ある。
【0113】
いくつかの実施態様において、本発明は、プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい状態を有するか又はプラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい状態を発症する危険性がある対象を処置するための方法を含み、該方法は、有効量(すなわち、治療有効量)の本発明の組成物を対象に投与することを含む。プラスグレルの治療有効量は、約0.001mg/kg/日〜約1mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約0.5mg/kg/日、約0.05mg/kg/日〜約0.5mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、又は約0.1mg/kg/日を投与することを含み得る。
【0114】
いくつかの実施態様において、本発明は、血小板凝集に関連する病因を有する疾患、障害若しくは状態、又はプラスグレルに対して治療的に反応性である疾患、障害若しくは状態を処置する方法に関し、該方法は、それを必要とする対象に本発明の医薬組成物又は単位投与形態を投与することを含む。
【0115】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、急性冠症候群(例えば、不安定狭心症/非Q波心筋梗塞、心臓発作、アンギナなど)、亜急性心筋梗塞、亜急性脳卒中、確定した末梢動脈疾患、ST上昇急性心筋梗塞、非ST上昇急性冠症候群、亜急性期経皮的冠動脈インターベンション、亜急性期血管形成術、血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、一過性虚血性イベント、二次性虚血性イベント、確定した末梢動脈疾患を伴う血管死、心血管疾患、脳血管疾患、狭心症、不整脈、鎌状赤血球発症、及びそれらの組み合わせから選択される障害に罹患した対象に医薬組成物又は単位投与形態を投与することを含む。従って、本発明の医薬組成物及び単位投与形態は、プラスグレルを用いた処置の影響を受けやすい状態の処置に有用であり、これには上記の障害及び疾患が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明は、経皮的冠動脈形成術を勧められたか若しくは行った(冠動脈ステント留置を伴うか又は伴わない)対象、又は冠状動脈パイパス術を勧められたか若しくは行った対象を含む、急性冠症候群に罹患した対象に医薬組成物又は単位投与形態を投与することを含む。
【0116】
本発明はまた、治療有効量の医薬組成物又は単位投与形態を、それを必要とする対象を処置するために投与することを含む方法に関する。例えば、急性冠症候群の処置のための治療有効量は、投与された場合にこの障害に関連する1つ又はそれ以上の症状を軽減する量を指す。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、プラスグレル約1mg〜約20mg、約1mg〜約15mg、又は約10mgの維持量を含む本発明の単位投与形態を対象に投与することを含む。
【0117】
いくつかの実施態様において、本発明は、治療上有効なプラスグレル濃度を達成するために対象にロードする(loading)方法に関し、該方法は、有効量の本発明の医薬組成物又は単位投与形態を(例えば静脈内又は経口で)対象に投与することを含む。本発明はまた、経口プラスグレル治療が中断された(意図的又は非意図的に)対象を処置することを含む。従って、本発明の医薬組成物及び単位投与形態は、所定の(すなわち、標的にしたか又は所望される)血漿プラスグレル濃度を急速に達成するか又は再達成することを必要とする対象を、例えばプラスグレルの維持量を一定期間摂取しない結果としてプラスグレルの濃度が低下した場合に、処置するために有用である。例えば、本発明の組成物は、対象における補助的療法又は単剤療法のいずれかとしてプラスグレルの投与を再開する際に対象に非経口投与され得る。従って、いくつかの実施態様において、本発明はプラスグレル約20mg〜約120mg、約20mg〜約100mg、約40mg〜約80mg、又は約60mgの負荷投与量を含む本発明の単位投与形態を対象に投与することに関する。いくつかの実施態様において、本発明は、負荷投与量のプラスグレルを提供することに関し、ここでプラスグレルの用量は、プラスグレルの所定の血中全身濃度を提供するために対象に非経口投与される。
【0118】
いくつかの実施態様において、本発明はプラスグレルの治療有効量に対してそれを必要とする対象を滴定する方法に関し、該方法は:第一の用量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする対象に非経口投与すること;第一の用量の医薬組成物に対する対象の反応性を決定すること;及び対象に第二の用量の医薬組成物を非経口投与することを含み、ここで第二の用量は、第一の用量と比較して増加又は減少した量のプラスグレルを含む。いくつかの実施態様において、該方法は:決定すること及びさらなる用量の本発明の医薬組成物を非経口投与することを、所望の治療有効性が達成されるまで繰り返すことを含む。所望の治療有効性は、所望の又は所定のレベルの血小板凝集を対象の血漿において達成することを含み得る。
【0119】
いくつかの実施態様において、滴定する方法は、脳卒中又は一過性脳虚血発作の病歴を有するそれを必要とする対象、高齢対象、又は約60kgより少ない体重を有する対象に対して実施される。
【0120】
プラスグレルに対する対象の反応性を決定することは:対象から血液サンプルを採取すること;及び対象の血漿における血小板凝集の程度を決定することを含み得る。対象の血漿における血小板凝集の程度を決定するための適切な方法として、例えば、凝集測定法、例えば光透過率又はインピーダンス凝集測定法、及び当業者に公知のその他の方法が挙げられる。
【0121】
いずれの特定の理論にも束縛されないが、治療上有効なプラスグレルの用量に対してそれを必要とする対象を滴定することは、とりわけ、シクロデキストリン誘導体を含まない組成物と比較して、非経口投与されたプラスグレル用量によりもたらされるより速い治療開始、本発明の医薬組成物によりもたらされる増強されたバイオアベイラビリティー、本発明の医薬組成物によりもたらされるより速い開始速度、及びこれらの組み合わせに起因して、本発明の組成物を使用してより安全かつ効率的に達成され得る。従って、経口投与されたプラスグレル組成物は、それを必要とする対象に投与されるプラスグレルのより低い第一の用量を可能にし得、続いて例えばこの第一のプラスグレル用量の血小板凝集抑制作用を決定することにより、第一の用量のプラスグレルの治療効果を決定する。従って、所望の治療効果を達成するために必要なプラスグレル用量は、より安全かつ効率的に達成され得、そして結果として危険な状態にある患者集団における有害な出血事象の比率を実質的に減少させ得る。
【0122】
いくつかの実施態様において、プラスグレルの治療有効用量に対して滴定するために適した初期用量プラスグレルは、プラスグレル約1mg〜約60mg、約2mg〜約60mg、約5mg〜約60mg、約10mg〜約60mg、約15mg〜約60mg、約20mg〜約60mg、約30mg〜約60mg、約50mg〜約60mg、約1mg〜約50mg、約2mg〜約40mg、約5mg〜約30mg、約10mg〜約20mg、約1mg、約2mg、約2.5mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、又は約60mgである。
【0123】
本発明の医薬組成物及び単位投与形態は、単独で、又は他の薬剤若しくは医薬組成物と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー薬、血栓溶解(thromobolytic)剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせを対象に投与することを含む。
【0124】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、プラスグレルの類似体又は誘導体、クロピドグレル(clopridogrel)、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク(etolodac)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、チカグレロル、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療薬を対象に投与することを含む。
【0125】
いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物及び単位投与形態は、プラスグレルのバイオアベイラビリティー、治療開始速度、及び/又は治療効果を増強することができる。したがって、本発明はまた、プラスグレルの投与後のその治療開始までの時間を減少させる方法に関し、この方法は、それを必要とする対象に本発明の医薬組成物又は単位投与形態を経口又は非経口投与することを含み、ここで経口又は非経口投与された組成物又は単位投与形態によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間は、シクロデキストリン誘導体が除かれ、かつ等量のプラスグレルが含まれている経口投与された参照組成物によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間より短い。いくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物又は単位投与形態の投与後のプラスグレルの治療開始までの時間は、シクロデキストリン誘導体が除かれ、かつ等量のプラスグレルが含まれている経口投与された参照組成物によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%だけ短い。
【0126】
いくつかの実施態様において、本発明の投薬形態からのプラスグレルの溶解は、 プラスグレル及び/又はその代謝物(単数又は複数)の薬物動態パラメーター及び/又はインビボ濃度に関連し得る。プラスグレル及びその代謝物(単数又は複数)のインビボ濃度、さらにはプラスグレルの活性形態に関連する薬物動態パラメーターは、例えば、本発明の組成物を投与した後に対象の血漿をサンプリングすることにより決定され得る。測定され得る薬物動態パラメーターとしては、限定されないが、AUCt、AUCinf、及びln(AUCLAST)が挙げられる。
【0127】
本明細書で使用される「AUCt」は、プラスグレル投与後の濃度時間曲線下面積(すなわち、血漿濃度対時間のプロット)を指す。この面積は、「台形公式」により都合よく決定される:データ点を直線部分で接続し、横座標から垂線を各データ点に引き、そしてこのようにして構築された三角形及び台形の面積の合計を計算する。
【0128】
本明細書で使用される「AUCinf」は濃度時間曲線下面積を指し、ここで最終濃度を排出についての速度定数に基づいてベースラインに対して外挿する。
【0129】
本明細書で使用される「ln(AUCLAST)」は血漿濃度を自然対数スケールでプロットし、最後に測定された血漿濃度を終点として使用することにより決定された濃度時間曲線下面積を指す。
【0130】
本明細書で使用される「IntraCV」は、アッセイ内の変動係数を指し、これはサンプルセットの平均値により割られたサンプルセット内の標準偏差であり、結果をパーセントとして報告する。
【0131】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物からのプラスグレルのバイオアベイラビリティーは、等投薬量のプラスグレルを含有するEFFIENT(登録商標)(Eli Lilly & Co.、Indianapolis、IN)医薬製剤の投与の際に観察されるバイオアベイラビリティーと実質的に同等である。例えば、本発明の投薬形態は、EFFIENT(登録商標)医薬製剤が等投薬量で投与された場合に観察されるものの約80%〜約120%、約90%〜約110%、約95%〜約105%以内であるか、又はほぼ等しいAUCt又はAUCinfを有し得る。
【0132】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物からのプラスグレルのバイオアベイラビリティーは、等投薬量のプラスグレルを含有するEFFIENT(登録商標)医薬製剤の投与の際に観察されるバイオアベイラビリティーより高い。例えば、本発明の投薬形態は、EFFIENT(登録商標)医薬製剤が等投薬量で投与された場合に観察されるよりも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30%高いAUCt又はAUCinfを有し得る。
【0133】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物からのプラスグレルの治療開始の速度は、等投薬量のプラスグレルを含有するEFFIENT(登録商標)医薬製剤の投与の際に観察される速度より速い。例えば、本発明の投薬形態は、等投薬量でのEFFIENT(登録商標)医薬製剤の投与の際に観察されるCmaxの時間よりも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30%速いCmaxまでの時間を有し得る。
【0134】
本発明を一般的に記載してきたが、本明細書に提供される実施例を参照することによりさらなる理解が得られ得る。これらの実施例は説明の目的のみのために示されるのであり、限定することを意図されない。
【実施例】
【0135】
実施例1
pH1〜14の間でのプラスグレルの溶解度を、一般溶解度式(例えば、T. Sanghvi et al.、QSAR & Combinatorial Science 22:258 (2003)を参照のこと)を使用して決定した。ACD(登録商標)ソフトウエア(Advance Chemistry Development Inc.、Toronto、Canada)を使用して以下のデータを使用して計算を行った:Log P=3.17、pKa=4.07、及び融点=112−114℃。結果を図1に図示する。図1を参照して、プラスグレル溶解度(Log溶解度、mg/mL)対pHのプロットが示される。一般溶解度式を使用して計算されたプラスグレルの固有溶解度は、約pH5及びそれ以上で約0.1mg/mLであった。示されるように、プラスグレルの溶解度は約pH4又はそれ以下で増加する。
【0136】
実施例2
様々な量のスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(約6.5のADSを有するスルホブチルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン、SBE6.5−β−CD)を含む水性液剤中でpH7.4でのプラスグレルの質量:体積相溶解度を測定した。
【0137】
pH7.4における相溶解度研究の結果を以下の表に列挙する:
【表1】

【0138】
pH7.4での相溶解度研究の結果を図2にも図示する。図2を参照して、プラスグレルの溶解度は誘導体化シクロデキストリン濃度の関数として直線的に増加した。
【0139】
実施例3
様々な量のスルホアルキルエーテルシクロデキストリン(約6.5のADSを有するスルホブチルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン、SBE6.5−β−CD)又はヒドロキシプロピルエーテルシクロデキストリン(約4.3のADSを有する2−ヒドロキシプロピルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン、HP4.3−β−CD)を含有する水性液剤中でpH4でのプラスグレルの相溶解度を決定した。
【0140】
pH4での相溶解度研究の結果を以下の表に列挙する:
【表2】

【0141】
pH4における相溶解度研究の結果も図3に図示する。図3を参照して、プラスグレルの溶解度は、ヒドロキシプロピルエーテル−及びスルホブチルエーテル−誘導体化β−シクロデキストリンの両方について誘導体化シクロデキストリン濃度の関数として直線的に増加した。10%(質量/体積) シクロデキストリン誘導体について得られたデータは図3に見られる最適線に含まれていなかったことに留意すること。
【0142】
pH4での様々な濃度のヒドロキシプロピルエーテル−及びスルホブチルエーテル−誘導体化β−シクロデキストリンを含有する水性液剤中のプラスグレルモル相溶解度を図4に示す。図4を参照して、プラスグレルのモル溶解度は、ヒドロキシプロピルエーテルβ−シクロデキストリン及びスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの両方のモル濃度に対して(with respect)直線的に増加する。データを比較して、誘導体化シクロデキストリン濃度の関数としてのプラスグレル溶解度についての最適線の傾きは、SBE6.5−β−CDがHP4.3−β−CDと比較して、モルベースでプラスグレルの改善された可溶化をもたらすということを示す。
【0143】
実施例4
20%(質量/体積)の種々の誘導体化シクロデキストリンを含有する水性液剤中のpH4でのプラスグレルの相溶解度を決定した。調べたシクロデキストリン誘導体は以下のとおりであった:約5.1のADSを有するスルホプロピルエーテル基で誘導体化されたα−シクロデキストリン(SPE5.1−α−CD)、約5.6のADSを有するスルホプロピルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン(SBE5.6−β−CD)、約5.4のADSを有するスルホプロピルエーテル基で誘導体化されたγ−シクロデキストリン(SPE5.4−γ−CD)、約4.9のADSを有するスルホブチルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン(SBE4.9−β−CD)、約7のADSを有するスルホブチルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン(SBE7−β−CD)、約6.1のADSを有するスルホブチルエーテル基で誘導体化されたγ−シクロデキストリン(SBE6.1−γ−CD)、及び約7.5のADSを有するヒドロキシプロピルエーテル基で誘導体化されたβ−シクロデキストリン(HP7.5−β−CD)。
【0144】
相溶解度データを以下の表に列挙する:
【表3】

【0145】
実施例5
30%(質量/体積)のSBE6.5−β−CDを含有し、0.1Mリン酸緩衝液を使用してpH3、pH4及びpH6に緩衝化された水性液剤中でのプラスグレルの安定性を決定した。初期プラスグレル濃度は0.09mg/mL(pH3)、0.062mg/mL(pH4)、及び0.048mg/mL(pH6)であった。これらの溶液を0、2、7及び53時間目にサンプリングした。プラスグレルアッセイを、UV/可視検出器(検出波長、λ=220nm)を備えたShimadzu LC20AD HPLCを使用して決定した。安定性研究から得られたデータを図5に図示する。図5を参照して、30%(質量/体積)SBE6.5−β−CD溶液中pH3及び4でのプラスグレルは、30時間後に10%未満、及び約55時間後に20%未満のプラスグレル濃度の減少を示した。30%(質量/体積)SBE6.5−β−CD溶液中pH6でのプラスグレルは、30時間後に約20%、及び約55時間後に約36%のプラスグレル濃度の減少を示した。データは、スルホアルキルエーテル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤中のプラスグレルはpH4又はそれ以下でより安定であるということを示す。
【0146】
実施例6
30%(質量/体積)のSBE6.5−β−CD又はHP4.3−β−CDを含有し、0.1Mリン酸緩衝液を使用してpH4に緩衝化された水性液剤中でのプラスグレルの安定性を決定した。初期プラスグレル濃度は0.06mg/mLであった。これらの溶液を0、4、24及び48時間目にサンプリングした。プラスグレルアッセイを、実施例4に記載されるプロトコルを使用して決定した。安定性研究から得られたデータを図6に示す。図6を参照して、SBE6.5−β−CD及びHP4.3−β−CDの30%(質量/体積)溶液中pH4でのプラスグレルは、ほとんど同じ安定性を示した。30%(質量/体積)SBE6.5−β−CD溶液中pH6でのプラスグレルは、90時間後に約20%、及び163時間後に約36%のプラスグレル濃度の減少を示した。データは、スルホアルキルエーテル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤中のプラスグレルがpH4又はそれ以下でより安定であることを示した。
【0147】
理論的実験例(prophetic example)A
それを必要とする対象への非経口投与に適した水性プラスグレル製剤は以下のように製造されるだろう:SBE−β−CD(DS=6.5±0.5)(87.5g±12.5g)をリン酸緩衝液(0.1M)約200mLに加え、そして室温で完全に溶解するまで混合する。プラスグレル(250mg)をこの溶液に加え、これを室温で溶液が透明になるまで撹拌する。この透明溶液を、さらにリン酸緩衝液(0.1M)50mLを加えることにより最終体積250mLまで希釈する。得られる水性液剤のpHを、適切な量のHCl又はNaOHを加えることによりpH4±0.5に調整する。
【0148】
水性プラスグレル製剤の成分を以下の表に示す:
【表4】

【0149】
理論的実験例B
理論的実験例Aで製造されたプラスグレルの水性液剤は、室温での貯蔵に適しており、かつそれを必要とする対象への非経口投与のために例えば注射用塩化ナトリウム、USPで希釈されることが可能である凍結乾燥プラスグレル製剤を製造するために使用されるだろう。プラスグレルを0.1%(質量/体積)の濃度で、及びSBE−β−CD[DS=6.5±0.5]を35%±5.0%(質量/体積)の濃度で含有する水性製剤を、60mLアリコートで100mL血清バイアルに移す。いっぱいになった血清バイアルを凍結乾燥機、例えば、FTS SystemsのDURA−DRY(登録商標)II MP Condenser Moduleに取り付けられたDURA−DRY(登録商標)トレイ乾燥機に移し、そして凍結乾燥して自由流動性粉末を得る。凍結乾燥製剤は、滅菌水又は別の薬学的に許容しうる希釈剤約10mL〜約100mLを使用して再構成されて、非経口投与に適した透明溶液を生じ得る。
【0150】
理論的実験例C
それを必要とする対象への非経口投与に適した水性プラスグレル製剤は以下のように製造されるだろう:SBE−β−CD(DS=6.5±0.5)(45g±10g)をリン酸緩衝液(0.1M)約200mLに加え、そして室温で完全に溶解するまで混合する。プラスグレル(125mg)をこの溶液に加え、これを室温で溶液が透明になるまで撹拌する。この透明溶液を、さらにリン酸緩衝液(0.1M)50mLを加えることにより最終体積250mLまで希釈する。生じる水性液剤のpHを、適切な量のHCl又はNaOHを加えることによりpH4±0.5に調整する。
【0151】
水性プラスグレル製剤の成分を以下の表に詳細に示す:
【表5】

【0152】
理論的実験例D
本発明の医薬組成物は、薬物動態パラメーター、及び血小板凝集の抑制の有効性を決定するためにイヌに投与されるだろう。
【0153】
研究倫理
全ての実験は、米国国立衛生研究所(U.S. National Institutes of Health)により公開された実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(NIH出版番号85−23、1996年改訂)にしたがって行われる。
【0154】
動物
7〜11月齢の間(体重約8kg)の雌性ビーグル犬(コホートごとにn=3)をこの研究に使用する。これらの動物はCovance Research Products(Kalamazoo、MI)又は別の適切な供給源から入手される。イヌを囲い中で飼育し、そして交互の12/12時間明/暗サイクルを維持する。各動物に215g/日の25%タンパク質食餌を与え、そして各動物は水に自由にアクセスさせる。
【0155】
研究薬物
プラスグレル製剤は、プラスグレル(60mg/バイアル)及び平均置換度約6.5を有するスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、21g/バイアル)(CyDex Pharmaceuticals、Inc.(Lenexa、KS)により提供される)を含有する凍結乾燥固形物である。凍結乾燥固形物は、約4のpHを有する100mMリン酸緩衝剤を含む溶液から製造される。凍結乾燥固形物は、この固形物を滅菌水又は別の薬学的に許容しうる希釈剤10mL〜100mLと接触させて、0.6mg/mL〜6mg/mLのプラスグレル及び0.21g/mL〜2.1g/mLのスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンを含有するプラスグレル製剤を生じることにより、投与の直前に再構成される。プラスグレル製剤を3匹のイヌに約1mg/kg(すなわち、体重1kgあたり1mgのプラスグレル)の用量で、以前に移植された静脈カニューレを通してボーラスプッシュ(push)として投与する。
【0156】
コントロールグループの動物に、シクロデキストリン誘導体を含まないプラスグレル製剤(EFFIENT(登録商標)、Eli Lilly & Co.、Indianapolis、IN)を投与する。シクロデキストリン非含有プラスグレル製剤を、3匹のイヌに約1mg/kgの用量を胃管を通して経口経管栄養として投与する。各投与後に胃管を水道水(10mL)ですすぐ。
【0157】
研究設計
一晩の断食後に、モルヒネ(1mg/kg、皮下)を投与し、そしてそれらのイヌをα−クロラロース(120mg/kg、静脈内)を使用して全身麻酔下におく。麻酔を、伏在静脈又は橈側皮静脈における留置カテーテルを通したα−クロラロースの持続注入(35mg/kg/時〜75mg/kg/時、静脈内)により維持する。各実験の終わりに、これらのイヌを全身麻酔下でバルビツレート過量投与により安楽死させる。
【0158】
静脈カニューレから血液サンプル(約1mL)を投薬前に集め(ベースライン)、次いでプラスグレル投与の10、20、30、及び60分後、そして2、3、及び5時間後に集める。これらの血液サンプルを薬物動態分析のためにK3 EDTAサンプルチューブ中に集める。これらのチューブを冷却遠心器で回転させ、そして血漿を−70℃で分析が行われるまで保存する。プラスグレル及びそのチオール代謝物(Smith et al.、Xenobiotica 37:884−901(2007))の血漿濃度を、タンデム質量分析検出を用いる液体クロマトグラフィー(LC/MS/MS、Finnigan LCQ DECA、ポジティブイオンエレクトロスプレーモード)を使用して決定する。アセトニトリルを用いるタンパク質沈殿により注射のためにサンプルを調製する。上記に概説される方法又は別の適切な方法が使用されるだろう。
【0159】
静脈カニューレからの血液サンプル(約10mL)もまた投薬前にクエン酸ナトリウムサンプルチューブに集め(ベースライン)、次いでプラスグレル投与の10、20、30、60分後、そして2、3、及び5時間後に集める。血小板凝集測定を、Hennan et al.、Br. J. Pharmacol. 136:927−937(2002)に記載されるようにこれらのサンプルに対して行う。具体的には、血液(10mL)を右大腿静脈カニューレから、エクスビボ血小板凝集測定のために、抗凝固剤としてクエン酸三ナトリウム溶液(3.7%)(1:10クエン酸塩対血液、体積/体積;最終濃度、0.37体積%)を含有するプラスチックシリンジ中に抜き取る。ヘパリン添加血液(10mL;10U/血液mL)も血小板凝集研究のために集める。全血球数をH−10細胞カウンタ(Texas International Laboratories、Inc.)を用いて決定する。抗凝固処理全血を1000rpmで5分間遠心分離した後に存在する上清である血小板富化血漿(140g)を、血小板乏血漿で希釈して200,000/mm3の血小板数を達成する。血小板乏血漿は、残りの血液を2000gで10分間遠心分離し、底の細胞層を廃棄することにより血小板富化血漿を除去した後に製造される。エクスビボ血小板凝集は、4チャンネル血小板凝集計(BioData−PAP−4、Bio Data Corp.)を用いて約37℃に維持された血小板富化血漿の撹拌懸濁液を通る光透過率の増加を記録することによる確立された分光光度法により評価される。凝集はADP(20μM)で誘導される。副凝集(subaggregatory)濃度のエピネフリン(550nM)を、アゴニストを加える前に血小板を刺激するために使用する。血小板凝集の値を、血小板富化血漿サンプル(T=0%の光透過率)及び血小板乏血漿サンプル(T=100%の光透過率)に対して標準化された光透過率パーセントとして表す。
【0160】
結論
これらの実施例は、本発明の可能な実施態様を説明する。本発明の種々の実施態様が上で記載されてきたが、当然のことながら、それらは例としてのみ示されるのであり、限定ではない。関連分野の当業者には当然のことながら、形態及び詳細における種々の変更が、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくそれらにおいてなされ得る。従って、本発明の幅及び範囲は、上記の例となる実施態様のいずれによっても限定されるべきでなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ定義されるべきである。
【0161】
学術論文若しくは要旨、公開されているか若しくは対応する米国若しくは外国の特許出願、発行された特許若しくは外国特許、又はいずれか他の書類を含む、本明細書中で引用される全ての書類は、引用された書類に示される全てのデータ、表、図面、及び文章を含めて、各々の全体が本明細書に参照により加入される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスグレル、及び式I:
【化1】

[式中、nは4、5又は6であり、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]
のシクロデキストリン誘導体を含み、そして
該シクロデキストリン誘導体がプラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比の濃度で存在する、医薬組成物。
【請求項2】
シクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して少なくとも50:1のモル比の濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が約2〜約4のpHを有し、そしてシクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して約100:1〜約700:1の質量比で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物が約4〜約9のpHを有し、そしてシクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して少なくとも700:1の質量比で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つが−O−(ヒドロキシ−置換−C3)基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は独立して、シクロデキストリン誘導体あたり約4〜約8の置換度を有する直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3基であり、そして残りの置換基は−Hである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つが−O−(直鎖C4−(アルキレン))−SO3基で置換されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
シクロデキストリン誘導体が、式II:
【化2】

[式中、Rは(H)21−x又は(−(CH24−SO3Na+xである]
の化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
xが6.0〜7.1である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
担体、希釈剤、保存料、抗酸化剤、第二の治療剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、増量剤、錯形成促進剤、凍結保護物質、密度調整剤、電解質、矯味矯臭剤、香料、凍結乾燥補助剤、可塑剤、溶解性向上剤、安定剤、甘味料、表面張力調整剤、揮発性調整剤、粘度調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される薬剤を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
プラスグレル投与後のその治療開始までの時間を短縮させる方法であって、それを必要とする対象に請求項1に記載の医薬組成物を経口又は非経口投与することを含み、ここで該組成物の経口又は非経口投与によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間が、シクロデキストリン誘導体を除きかつ等量のプラスグレルを含有する基準組成物の経口投与によりもたらされるプラスグレルの治療開始までの時間より短い、上記方法。
【請求項12】
血小板凝集に関連する病因を有する疾患、障害若しくは状態、又はプラスグレルに対して治療的に反応性の疾患、障害若しくは状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項13】
投与がプラスグレル約1mg〜約20mgの維持量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プラスグレル約20mg〜約120mgを含む負荷投与量を、それを必要とする対象に投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
対象が、急性冠症候群、亜急性心筋梗塞、亜急性脳卒中、確定した末梢動脈疾患、ST上昇急性心筋梗塞、非ST上昇急性冠症候群、亜急性期経皮的冠動脈インターベンション、亜急性期血管形成術、血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、一過性虚血性イベント、二次性虚血性イベント、確定した末梢動脈疾患を伴う血管死、心血管疾患、脳血管疾患、狭心症、不整脈、鎌状赤血球発症、及びそれらの組み合わせから選択される障害に罹患している、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー薬、血栓溶解剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療薬を対象に投与することを含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
プラスグレルの類似体又は誘導体、クロピドグレル、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、チカグレロル、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療剤を対象に投与することを含む、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
プラスグレル約1mg〜約120mg、及び式I:
【化3】

[式中、nは4、5又は6であり、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、−OH、直鎖又は分枝鎖の−O−(C1−C8−(アルキレン))−SO3基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−O−(C1−C10)基、場合により置換される直鎖、分枝鎖又は環状の−S−(C1−C10)基、及びサッカリドから独立して選択される]
のシクロデキストリン誘導体を含んでなる、単位投与形態であって、
該シクロデキストリン誘導体が、プラスグレルに対して少なくとも100:1の質量比の濃度で存在する、上記単位投与形態。
【請求項19】
プラスグレル約1mg〜約20mgを含む、請求項18に記載の単位投与形態。
【請求項20】
プラスグレル約20mg〜約120mgを含む、請求項18に記載の単位投与形態。
【請求項21】
固形物である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の単位投与形態。
【請求項22】
固形物が、凍結乾燥固形物又は無菌噴霧乾燥固形物である、請求項21に記載の単位投与形態。
【請求項23】
プラスグレルが約0.005%〜約2%w/vの濃度であり、シクロデキストリン誘導体が約5%〜約40%w/vの濃度であり、そして単位投与形態が約2〜約4のpHを有する水性液剤である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の単位投与形態。
【請求項24】
緩衝剤0.1Mを含み、ここで単位投与形態中のプラスグレルが24時間で10%又はそれ以下分解する、請求項23に記載の単位投与形態。
【請求項25】
プラスグレルは約0.005%〜約1%w/vの濃度であり、シクロデキストリン誘導体は約5%〜約40%w/vの濃度であり、そして単位投与形態は約4〜約9のpHを有する水性液剤である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の単位投与形態。
【請求項26】
緩衝剤0.1Mを含み、ここで単位投与形態中のプラスグレルが24時間で20%又はそれ以下分解する、請求項25に記載の単位投与形態。
【請求項27】
必要とする対象を処置する方法であって、請求項18に記載の単位投与形態を、それを必要とする対象に経口又は非経口投与することを含む、上記方法。
【請求項28】
プラスグレルの治療有効用量に用量設定するための、それを必要とする対象での方法であって:第一の用量の請求項1に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に非経口投与すること;第一の用量の医薬組成物に対する対象の反応性を決定すること;及び対象に第二の用量の医薬組成物を非経口投与することを含み、ここで第二の用量は、第一の用量と比較して増加又は減少した量のプラスグレルを含む、上記方法。
【請求項29】
決定すること及びさらなる用量の医薬組成物を非経口投与することを所望の治療有効性が達成されるまで繰り返すことを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
それを必要とする対象が、急性冠症候群、亜急性心筋梗塞、亜急性脳卒中、確定した末梢動脈疾患、ST上昇急性心筋梗塞、非ST上昇急性冠症候群、亜急性期経皮的冠動脈インターベンション、亜急性期血管形成術、血栓塞栓症、肺塞栓症、深部静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、一過性虚血イベント、二次性虚血イベント、確定した末梢動脈疾患を伴う血管死、心血管疾患、脳血管疾患、狭心症、不整脈、鎌状赤血球発症、及びそれらの組み合わせから選択される障害に罹患している、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
非ステロイド性抗炎症薬、選択的第Xa因子阻害剤、直接トロンビン阻害剤、プロスタグランジン類似体、アデノシン二リン酸(ADP)阻害剤、血小板凝集抑制剤、抗血小板薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤又はアンタゴニスト、抗鎌状化薬、血液レオロジー薬、血栓溶解剤、血栓溶解酵素、トロンボキサンA2生合成阻害剤、トロンボキサンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アンギオテンシンアンタゴニスト、エンドセリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、抗凝固剤、利尿薬、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、生体応答調節薬、スタチン、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬、α−アドレナリン作動薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、及びそれらの組み合わせから選択される治療薬を対象に投与することを含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
プラスグレルの類似体又は誘導体、クロピドグレル、ジクロフェナク、ドロキシカム、エトロダク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、イソキシカム、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、メフェナマート、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、アピキサバン、オタミキサバン、リバロキサバン、エプチフィバチド、ベラプロスト、プロスタサイクリン、イロプロスト、トレプロスチニル、チカグレロル、チクロピジン、アブシキシマブ、クロリクロメン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、セチエジル、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンアルファ、モンテプラーゼ、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノリジン、アンクロド、アスピリン、ピコタミド、ラマトロバン、セラトロダスト、アロキシプリン、カルバサラートカルシウム、セレコキシブ、イブプロフェン、ロフェコキシブ、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、ボセンタン、シタキセンタン、テゾセンタン、シロスタゾール、ジピリダモール、エノキシモン、ミルリノン、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラト、スピラプリル、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ベナザプリル、カンドキサトリル、エカドトリル、カンドキサトリル、エカドトリル、未分画ヘパリン、アルデパリン、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、フォンダパリン、フラグミン、メラガトラン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、デフィブロチド、ラマトロバン、アンチトロンビンIII、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸、合成五糖、ヒルジン、ジスルファトヒルジン ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、アセノクマロール、クマテトラリル、ジクマロール、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクモン、クロリンジオン、ジフェナジオン、フェニンジオン、チオクロマロール、ワルファリン、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、エタクリン酸、フロセミド、アミロリド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、アムロジピン、フェロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ベプリジル、ベラパミル、ドフェチリド、イブチリド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルベジオール、ナドロール、ネビボロール、チモロール、アジマリン、ジソピラミド、プラジュマリン、プロカインアミド、キニジン、スパルテイン、アプリンジン、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、エンカイニド、フレカイニド、ロルカイニド、モリシジン、プロパフェノン、アセブトロール、ピンドロール、アミオダロン、ブレチリウム、ブナフチン、ドフェチリド、ソタロール、アデノシン、アトロピン、ジゴキシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及びそれらの組み合わせから選択される第二の治療剤を対象に投与することを含む、請求項27〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
単位投与形態を水性担体で希釈すること、次いで希釈した単位投与形態を非経口投与することを含む、請求項27〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
単位投与形態が、濃縮液体単位投与形態、凍結乾燥固形単位投与形態、無菌噴霧乾燥固形単位投与形態、及び再構成可能な単位投与形態から選択される、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−526849(P2012−526849A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511026(P2012−511026)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034800
【国際公開番号】WO2010/132711
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(501278788)サイデックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】