説明

プラスチックボトル及び分割金型

【課題】底面の設置面積が広く、且つ金型からの抜けの良いプラスチックボトル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】分割金型を用いて成形されるプラスチックボトルにおいて、底面のピンチオフ下部に少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れ、薬剤の凍結乾燥に好適に用いられるプラスチックボトル及び分割金型に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥薬剤は、バイアル内に凍結乾燥用の薬液を除菌フィルタを通して無菌室或いはクリーンルームで無菌的に充填し、これを凍結乾燥器内で容器底部から熱を伝導させて容器を冷却することで凍結処理し、バイアルを半打栓状態にして減圧乾燥して乾燥後に完全打栓をして凍結乾燥薬剤入りバイアルを得ている。
【0003】
ここで凍結乾燥について詳細に説明する。図10は、凍結乾燥機の模式図である。凍結乾燥機50は、凍結乾燥庫(真空室)51と冷却加熱装置52と排気装置53と冷却装置54と真空ポンプ55とで構成されている。凍結乾燥庫51は、凍結乾燥する容器56を載せて冷却加熱するための冷却加熱棚57を備えている。また排気装置53は、昇華してくる水蒸気を付着凝固するコールドトラップ58を備えている。
【0004】
次に凍結乾燥機50を用いた薬剤の凍結乾燥工程について説明する。まず予備凍結で薬液をよく凍らせる(例えば医薬品などの場合は−40度程度まで冷却する)。次に、一次乾燥として昇華乾燥を行う。これは凍結した薬液を真空中で乾燥する工程である。ここではゆっくりした速度で昇華が進んでいく。最後に、二次乾燥として結合水の除去を行う。これは氷として水を昇華させた後、乾燥の仕上げとして結合水を除去する工程である。ここでは薬剤の許容温度まで加熱し、真空を良くして薬剤の乾燥度を高める。以上が凍結乾燥の基本的な工程であり、容器は冷却加熱棚57から熱伝導率の高い底部の接触面を介して熱を奪われるため、容器の接触面積が重要となる。
【0005】
従来からの凍結乾燥ラインを使用するための薬液を凍結乾燥するための底部平面容器としては、例えば特許文献1には、栓体が半打栓可能に取り付けられる開口部が形成された上部半体と、上記薬液が貯留されて凍結乾燥される下部半体とが分離可能に設けられている凍結乾燥用容器について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−328270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような抗生物質、蛋白質製剤等の凍結乾燥薬剤を収容する容器として、従来はガラス製のバイアル容器やアンプル容器が用いられていたが、近年では安価で廃棄が容易な樹脂製容器への代替が所望されている。このとき、特許文献1のように上下別体で成形する方法では、製造コストが高いために、樹脂の一体成形による容器が所望されている。
【0008】
ところが、分割金型を用いた一体成形により得られるプラスチックボトルを凍結乾燥用容器として利用した場合は、ピンチオフの関係から容器の底部を平面にすることが困難であるために凍結乾燥のための底部の接触面が小さく、凍結乾燥できないという問題があった。すなわち、ブロー成形等の金型を用いた押出成形の場合には、押出したパリソンを金型のピンチオフ部で挟み、上記ピンチオフ部を圧迫して溶着した後、型開き時にアンダーカット部が抜けるようにしなければならないために、ピンチオフ周辺を容器内部に窪ませた形状にしなければならず、必然的に接地面積が小さくなってしまう。
【0009】
すなわち、図11及び図12に示すように、従来のブロー成形ボトルは、ピンチオフ33を容器外側に向けて出っ張らせなければならないために、ボトル底面の形状38が容器内部に凹ませている。さらに凹みの形状がボトル底面の中央部に形成されるピンチオフ33から外周方向に向かって緩やかな曲率半径R(カーブ38)がついた形状であるために底面の接地部分が外周部分39だけであり接地面積が小さく、底面から冷却する凍結乾燥ラインでの冷却時の効率が悪いという問題がある。
【0010】
また底面の凹みの形状をピンチオフ33から外周方向に向かってきつい曲率半径R(カーブ)にして底面の接地部分を外周だけでなく底面を平面状として中央部分まで接地面積を広げた場合は、ボトル底面がブロー成形金型からの抜けが悪くなり、ピンチオフ周辺、特にその外周部では側面がリブとして働くために中央部に比べて剛性が高く、金型を抜くときにひかれて変形してしまい、良好な形状を保てないという問題がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたもので、底面の設置面積が広く、且つ金型からの抜けの良いプラスチックボトル及びその製造方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者らは、上記従来技術の有する問題点を克服するために鋭意研究した結果、分割金型を用いて成形されるプラスチックボトルであって、プラスチックボトル底面のピンチオフ下部は、少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有することで、プラスチックボトルの底面を平面状として接地面積を広く取りつつ、ボトル底面が金型から抜けやすくできることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0013】
すなわち、本発明によれば、分割金型を用いて成形されるプラスチックボトルであって、プラスチックボトル底面のピンチオフ下部は、少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有することを特徴とする底面を平面状として接地面積を広く取ったプラスチックボトルが提供される。
【0014】
また本発明に係るプラスチックボトルは、分割金型を用いて成形されるプラスチックボトルにおいて、底面のピンチオフ下部に少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有することを特徴とする。底部のピンチオフ下部に異なる曲率半径Rを持たせることでプラスチックボトル底面の接触面積を保ちつつ、金型を抜く際の外周部の変形を防止することができる。また接地面積が広いために熱伝導性を良くすることができる。
【0015】
また本発明に係るプラスチックボトルは、ブロー成形により成形されることが好ましい。ピンチオフを有する成形方法であってもプラスチックボトルの底面を平面状として接地面積を広く取ることができる。
【0016】
また本発明に係るプラスチックボトルの曲率半径Rは、底面の端部の方が中央部よりも大きいことが好ましい。このように曲率半径Rを異ならせることにより、中央部の型抜け時において、型が容器に引っかかって変形を伴っても弾性変形により元の形状に容易に戻すことができる。
【0017】
また本発明に係るプラスチックボトルは、複数のピンチオフを有することが好ましい。これにより平らな接地面積を広く取りつつ、ボトルを複数の平らな接地面で支えることができるため、ボトルを立てて置いた時にボトルの安定性を良くすることができる。
【0018】
また本発明に係るプラスチックボトルのピンチオフは、三つ又に分かれていることが好ましい。これにより平らな接地面積を広く取りつつ、ボトルを3つの平らな接地面で支えることができるため、ボトルを立てて置いた時にボトルの安定性を良くすることができる。
【0019】
また本発明に係る分割金型は、上記に記載のプラスチックボトルを形成することを特徴とする。この金型によれば、プラスチックボトルの底面を平面状として接地面積を広く取りつつも、ボトル底面が金型から抜けやすくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、プラスチックボトルの底面を平面状として接地面積を広く取りつつ、ボトル底面が金型から抜けやすいプラスチックボトル及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラスチックボトル底面の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプラスチックボトルの構成図である。
【図3】本発明の実施形態のプラスチックボトルを形成する工程を示す図である。
【図4】図3に示す態様から分割金型を閉じ、プラスチックボトルを形成する工程を示す図である。
【図5】図4に示す態様から分割金型を開き、プラスチックボトルの形成品取り出す工程を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るプラスチックボトル底面の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るプラスチックボトルの構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るプラスチックボトル底面の斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るプラスチックボトルの構成図である。
【図10】凍結乾燥機の模式図である。
【図11】従来のブロー成形によるプラスチックボトル底面の斜視図である。
【図12】従来のブロー成形によるプラスチックボトルの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態におけるプラスチックボトルについて図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトル底面の斜視図である。
【0024】
底面2にはピンチオフ3と曲面4と平らな接地面5とが形成されている。底面2の中央部分には略直線状のピンチオフ3が形成されている。このピンチオフ3は、プラスチックボトル1を平らな平面に置いた時に平面に接触しないように凹ませて設けられている。またピンチオフ3下部(凹んだ根本)から外周に向けた曲面を有する曲率半径R1及びR2を持った曲面4が形成されている。底面2の中心部側の曲面4のピンチオフ3下部の曲率半径R1は、底面2の両端部側の曲面4のピンチオフ3下部の曲率半径R2よりも小さく形成されている(R1<R2の関係)。本構成により、可能な限りの接触面を保ちつつ、金型を抜く際の外周部の変形を防止することができる。また、平らな接地面5が従来のプラスチックボトルの接地面積よりも大きいため、平らな平面にぴったり接触することで、底部における熱伝導性が良い。これにより、凍結乾燥などにおいて用いられる底部からの熱効率を大幅に向上させることができる。なお、接地面5の面積はボトル底面2の面積の少なくとも20%以上を有することが熱伝導性の点で好ましい。
【0025】
ピンチオフ3下部の曲率半径RをR1<R2とすることで、ブロー成形時にボトル底面が分割金型から抜けやすくなる。底面2の中心部側のピンチオフ3下部の曲率半径R1は小さいが分割金型から型抜けする時にピンチオフ周辺部は変形し易いので型抜けが可能である。また底面2の中心部側は変形を伴っても元に戻りやすい。一方、底面2の両端部側のピンチオフ3下部の曲率半径R2はR1より大きいので中心部に比べてピンチオフ周辺部は変形をしないで型抜けが可能である。また成形する樹脂材料に滑剤など当該分野で使用されている添加剤を添加することでさらに型抜けを容易にすることが可能である。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトルの構成図である。図2(a)は横から見た図、図2(b)は底面から見た図、図2(c)はA−A断面図、図2(d)はB−B断面図である。
【0027】
プラスチックボトル1の底面2は、中央部に設けられる凹んだ部分のピンチオフ3と、ピンチオフ3の底から平らな接地面5に向かうピンチオフ3下部の曲率半径Rを持った曲面4と、平らな接地面5と、上部の開口6と、開口部分7と、で構成される。
【0028】
図2(c)で示す、ボトル中央部のA−A断面における、凹んだピンチオフ3の底から平らな接地面5に向かう曲面4のピンチオフ3下部の曲率半径R1は、図2(d)で示すボトル中央部のB−B断面における凹んだピンチオフ3の底から端面の外周部に向かう曲面4のピンチオフ3下部の曲率半径R2よりも小さく形成されている(R1<R2の関係である)。この場合、例えばR1=5、R2=20程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできるRであれば良い。また角度としてはR1'=100度、R2'=160度程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできる角度であれば良い。
【0029】
凹んだピンチオフ3の底からの立ち上がり角度8は、図2(c)及び図2(d)に示すように同様で良い。なお、角度を緩やかにすることで型抜けを良くすることができる。またプラスチックボトル1の底面2の凹んだ部分の形状(平らでない部分)は、図2(b)に示すように底面2の中心側のピンチオフ部の中央部が狭く両側の外周部に向けて広くなる略扇形形状になっている。なお、緩やかな扇形形状とすることにより、中央部の型抜け時において、型が容器に引っかかって変形を伴っても弾性変形により元の形状に容易に戻せる。そしてプラスチックボトル1の底面2の平らな接地面5の形状は、該底面の中央部に設けられるピンチオフを中心として左右対称の形状となっており、平らな接地面は2つに分割されている。
【0030】
なお、図2(c)及び(d)の拡大図で示した凹んだピンチオフ3の底のクリアランス9は、ブロー成型時に金型から抜けが良いように設けた例であるが、このクリアランス9は設けなくても良い。好ましくは金型からプラスチックボトル1を型抜けする際にボトル底面2の変形を少なくするためにクリアランス9を設けたほうが良い。
【0031】
また、プラスチックボトル1は、図2(a)に示すように、上部の開口6を有し、開口部分7は、図示しない可撓性の栓と金属性のキャップにより密封可能に形成されている。
【0032】
次に図3〜図5を参照しながら、本実施形態のプラスチックボトル1の形成方法例について説明する。
【0033】
まず、図3に示すように、本実施形態のプラスチックボトル1を形成する装置は、押出ヘッドを有する図示しない押出器と、分割金型41と、図示しないブローピン48と、押出ヘッド42と、を有して構成される。押出器の押出ヘッド42から溶融状態の熱可塑性樹脂からなるパリソン43を押し出し分割金型41でパリソン43を型締めすることにより、成形する。
【0034】
分割金型41は、図3に示すように、2分割された金型である。分割金型41は、ピンチオフ部44とキャビティ45とを有する。ピンチオフ部44は、分割金型41を型締めしたときに、パリソン43を押しつぶし、局部的に薄肉部を形成して余分なパリソンを切断する箇所を形成する。キャビティ45は、プラスチックボトル1を構成する中空成形体の外形形状をしている。例えば、本実施形態のプラスチックボトル1を製造するとき、ブロー成形などでパリソン43をこのキャビティ45に押し付けることで、プラスチックボトル1の形状に成形される。なお本実施形態では2分割された金型の例を示したが、3分割以上の金型を用いても良い。
【0035】
次に本実施形態に係るプラスチックボトル1の形成工程について説明する。
【0036】
図3に示すように、型開きした分割金型41,41の間に、溶融した熱可塑性樹脂からなるパリソン43を押出器の押出ヘッド42から押し出し、パリソン43をピンチオフ部44より下方に位置するように配置する。パリソン43の押出方法は、特に限定されることなく公知の方法を用いればよい。
【0037】
次に図4に示すように、分割金型41,41を閉じ、型締めするとともに開口部分を形成するためにブローピン46を挿入する。これにより、分割金型41,41のピンチオフ部44が当接し、パリソン43が接合して熱融着してプラスチックボトル1が形成されることになる。
【0038】
次にパリソン43の内部にブローピン46の図示しないガス吹き込み口から空気などの気体を吹き込み、パリソン43をキャビティ45に沿って膨張させて、パリソン43をキャビティ45の形状に成形する。
【0039】
次に分割金型41の内部で成形されたプラスチックボトル1を冷却する。そして、図5に示すように、分割金型41,41を型開きし、プラスチックボトル1を取り出す。その後、取り出されたプラスチックボトル1から不要なバリ47、48(図4参照)を切除してプラスチックボトル1を得ることになる。
【0040】
なお、本実施形態におけるプラスチックボトルは、ブロー成形に限ることなく、例えば真空成形などにも適用可能である。
【0041】
また本実施形態のプラスチックボトル1を形成する材料としての熱可塑性樹脂は、例えば公知のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、耐熱性及び滅菌処理(121℃、30分)の観点から、融点は121℃以上のものが好ましく、医療用または食品包装用などに用いられている公知の樹脂であれば、特に限定されることなく用いることが可能である。また、ポリプロピレン系樹脂は、透明性が良好で耐熱性が高く、高温滅菌に耐えることが可能である。ここではプラスチックボトル1を成形する熱可塑性樹脂をポリプロピレン系樹脂として説明したが、これに限ることなく公知の樹脂であれば特に限定されることなく用いることが可能である。
【0042】
また凍結乾燥容器として熱伝導率の良い熱可塑性樹脂が好ましく、公知の樹脂を用いることが可能である。さらに好ましくは凍結乾燥に適した樹脂であれば良い。
【0043】
また、医療用容器としては、内容物を視認することができるように、さらに好ましくは透明性の高い樹脂であることが良い。このときの光線透過率としては、多層積層体として可視光域全域(波長400〜700nm)にわたって55%以上であることが好ましい。より好ましくは75%以上であることが好ましい。ここで、光線透過率とは、分光光度計により水を対照に測定した値である。また、ポリプロピレン系樹脂にスチレン系エラストマーを添加することで、ポリプロピレン系樹脂層の透明性を向上させることができる。ポリプロピレン系樹脂に添加するスチレン系エラストマーは、ポリスチレンブロック成分とポリブタジエン成分とを逐次重合することによって得られるもので、特に制限はなく、市場で入手することが可能である。
【0044】
また、容器としての特性、特に機械的強度(耐衝撃性)および透明性を損なわない範囲において、例えばシリカ等の充填剤、顔料、染料、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、防炎剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、滑剤など当該分野で使用されている添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0045】
なお、透明性の容器は、特に、医薬品、食品分野において需要が多いが、医薬品には、光に不安定な物質があり、そのような医薬品を充填する場合には、着色剤あるいは酸化チタン等の遮光剤を添加することは任意である。
【0046】
また医療用容器として適用する場合は、多層構造としても良い。特に内層に環状オレフィン系樹脂を備えることで、薬液に含まれる薬剤の吸着を抑えることができる。なお、環状オレフィン系樹脂層を特に最内層とすることで、収容した薬液からの薬剤吸着を良好に抑えることができる。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトル底面の斜視図である。
【0048】
底面12にはピンチオフ13と曲面14と平らな接地面15とが形成されている。底面12の中央部分には略直線状のピンチオフ13が形成されている。このピンチオフ13は、プラスチックボトル11を平らな平面に置いた時に平面に接触しないように凹ませて設けられている。ピンチオフ13下部(凹んだ根本)から外周に向けて曲率半径Rを持った曲面14が形成されている。底面12の中心部側の曲面14のピンチオフ13下部の曲率半径R3は、底面12の両端部側の曲面14のピンチオフ13下部の曲率半径R4よりも大きく形成されている(R3>R4の関係である)。また、平らな接地面15が従来のプラスチックボトルの接地面積よりも大きいため、平らな平面にぴったり接触することで、底部における熱伝導性が良い。これにより、凍結乾燥などにおいて用いられる底部からの熱効率を大幅に向上させることができる。なお、接地面15の面積はボトル底面12の面積の少なくとも20%以上を有することが熱伝導性の点で好ましい。
【0049】
ピンチオフ13下部の曲率半径RをR3>R4とすることで、ブロー成形時にボトル底面が分割金型から抜けやすくなる。底面12の中心部側の曲率半径R3はR4よりも大きいので型抜けが容易である。一方、底面12の両端部側の曲率半径R4はR3より小さいが分割金型から型抜けする時にピンチオフ周辺部は多少の変形を伴うが型抜けが可能である。また、両端部側はボトルの側面がリブのよう役目をするので変形量も小さく、たとえ変形したとしてもボトル側面の効果により元に戻る。また成形する樹脂材料に滑剤など当該分野で使用されている添加剤を添加することでさらに型抜けを容易にすることが可能である。
【0050】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトルの構成図である。図7(a)は横から見た図、図7(b)は底面から見た図、図7(c)はA−A断面図、図7(d)はB−B断面図である。
【0051】
プラスチックボトル11の底面12は、中央部に設けられる凹んだ部分のピンチオフ13と、ピンチオフ13から平らな接地面15に向かう曲率半径Rを持った曲面14と、平らな接地面15と、上部の開口16と、開口部分17と、で構成される。
【0052】
図7(c)で示す、ボトル中央部のA−A断面における凹んだピンチオフ13から平らな接地面15に向かう曲面14のピンチオフ13下部の曲率半径R3は、図7(d)で示すボトル中央部のB−B断面における凹んだピンチオフ13から端面の外周部に向かう曲面14のピンチオフ13下部の曲率半径R4よりも大きく形成されている(R3>R4の関係である)。この場合、例えばR4=5、R3=20程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできるRであれば良い。また角度としてはR3'=160度、R4'=100度程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできる角度R'であれば良い。
【0053】
またプラスチックボトル11の底面12の凹んだピンチオフ13からの立ち上がり角度18は、図7(c)及び図7(d)に示すように同様で良い。なお、角度を緩やかにすることで型抜けを良くすることができる。またプラスチックボトル11の底面12の凹んだ部分の形状(平らでない部分)は、図7(b)に示すように底面12の中心側のピンチオフ部の中央部が広く両側の外周部に向けて狭くなる略卵形形状になっている。そしてプラスチックボトル11の底面12の平らな接地面15の形状は、該底面の中央部に設けられるピンチオフを中心として左右対称の形状となっており、平らな接地面は2つに分割されている。
【0054】
なお、図7(c)及び(d)の拡大図で示した凹んだピンチオフ13の底のクリアランス19は、ブロー成型時に金型から抜けが良いように設けた例であるが、このクリアランス19は設けなくても良い。しかし金型からプラスチックボトル11を型抜けする際にボトル底面12の変形を少なくするために好ましくはクリアランス19を設けたほうが良い。
【0055】
また、プラスチックボトル11は、図7(a)に示すように、上部に開口16を有し、開口部分17は、図示しない可撓性の栓と金属性のキャップにより密封可能に形成されている。
【0056】
本実施形態のプラスチックボトル11の形成方法は、第1の実施形態と同様であるので省略する。また本実施形態のプラスチックボトル11を形成する材料としての熱可塑性樹脂も第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0057】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトル底面の斜視図である。
【0058】
底面22にはピンチオフ23と曲面24と平らな接地面25とが形成されている。底面22の中央部分には底面22の中心部から外周部の3方向に対して放射状のピンチオフ23が形成されている。このピンチオフ23は、プラスチックボトル21を平らな平面に置いた時に平面に接触しないように凹ませて設けられている。ピンチオフ23下部(凹んだ根本)から外周に向けて曲率半径Rを持った曲面24が形成されている。底面22の中心部側の曲面24のピンチオフ23下部の曲率半径R5は、底面22の外周部側の曲面24のピンチオフ23下部の曲率半径R6よりも小さく形成されている。また、平らな接地面25が従来のプラスチックボトルの接地面積よりも大きいため、平らな平面にぴったり接触することで、底部における熱伝導性が良い。これにより、凍結乾燥などにおいて用いられる底部からの熱効率を大幅に向上させることができる。なお、接地面25の面積はボトル底面22の面積の少なくとも20%以上を有することが熱伝導性の点で好ましい。また平らな接地面積を広く取りつつ、ボトルを3つの平らな接地面で支えることができるため、ボトルの安定性が良くなる。なおこれに限ることではなく、形成するピンチオフは3つ以上でも良い。
【0059】
ピンチオフ23下部の曲率半径RをR5<R6とすることで、ブロー成形時にボトル底面が分割金型から抜けやすくなる。底面22の中心部側の曲率半径R5は小さいが分割金型から型抜けする時にピンチオフ周辺部は変形し易いので型抜けが可能である。また底面22の中心部側は変形を伴っても元に戻りやすい。一方、底面22の両端部側の曲率半径R6はR5より大きいので中心部に比べてピンチオフ周辺部は変形をしないで型抜けが可能である。なお、底面22の中心部分だけの曲率半径R5をR6と同じようにしても良い。このようにすることで、中心部分の型抜けがさらに容易になる。また成形する樹脂材料に滑剤など当該分野で使用されている添加剤を添加することでさらに型抜けを容易にすることが可能である。
【0060】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るブロー成形により成形したプラスチックボトルの構成図である。図9(a)は横から見た図、図9(b)は底面から見た図、図9(c)はA−A断面図、図9(d)はB−B断面図、図9(e)はC−C断面図である。
【0061】
プラスチックボトル21の底面22は、中央部に設けられる凹んだ部分のピンチオフ23と、ピンチオフ23から3つの平らな接地面25に向かう曲率半径Rを持った曲面24と、3つの平らな接地面25と、上部の開口26と、開口部分27と、で構成される。このようなピンチオフを有するボトルは、例えば3つの分割金型を用いることで成形することができる。その際、底部のみ3つの分割金型を用いて、胴部の金型は2つの分割金型を用いても良い。
【0062】
図9(c)で示す、ボトル中央部のA−A断面における、凹んだピンチオフ23から平らな接地面25に向かう曲面24のピンチオフ23下部の曲率半径R5は、図9(d)で示すボトル中央部のB−B断面における凹んだピンチオフ23から端面の外周部に向かう曲面24のピンチオフ23下部の曲率半径R6よりも小さく形成されている(R5<R6の関係である)。この場合、例えばR5=5、R6=20程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできるRであれば良い。また角度としてはR5'=100度、R6'=160度程度であるが、本実施形態においては、特にこれに限定されるものではなく型抜けが容易にできる角度R'であれば良い。
【0063】
またプラスチックボトル21の底面22の凹んだピンチオフ23からの立ち上がり角度28は、図9(c)及び図9(d)に示すように同様で良い。なお、角度を緩やかにすることで型抜けを良くすることができる。またプラスチックボトル21の底面22の凹んだ部分の形状(平らでない部分)は、図9(b)に示すように底面22の中心側のピンチオフ部の中央部が狭く底面の周辺端部に向けて広くなる略扇形形状になっている。そしてプラスチックボトル21の底面22の平らな接地面25の形状は、該底面の中心から該底面の外周部に向けて略扇形形状に広がっており、かつ前記平らな接地面は少なくとも3以上に分割されている。なお、本発明はこの形状に限定されるものではなく、ピンチオフ(金型)の数やピンチオフによる底部の分割角度によっては、例えばR5>R6としても良いし、各ピンチオフが交わっている底面22の中心部及び底面22の周辺端部に設けられるRを大きくし、各ピンチオフの中央付近のRをそれより小さく構成しても良い。すなわち、各ピンチオフの交わる角度によって、金型抜き時に底面22の中心部の引っかかりが大きくなり成形品が変形してしまう場合には、その部分に対応する箇所のみのRを大きくすることにより、接地面積を極力大きくとりつつ、金型からの抜けを良くすることが可能である。
【0064】
なお、図9(c)及び(d)の拡大図で示した凹んだピンチオフ23の底のクリアランス29は、ブロー成型時に金型から抜けが良いように設けた例であるが、このクリアランス29は設けなくても良い。しかし金型からプラスチックボトル21を型抜けする際にボトル底面22の変形を少なくするために好ましくはクリアランス29を設けたほうが良い。
【0065】
また、プラスチックボトル21は、図9(a)に示すように、上部に開口26を有し、開口部分27は、図示しない可撓性の栓と金属性のキャップにより密封可能に形成されている。
【0066】
本実施形態のプラスチックボトル21の形成方法は、第1の実施形態と同様であるので省略する。また本実施形態のプラスチックボトル21を形成する材料としての熱可塑性樹脂も第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0067】
また本発明のプラスチックボトルのピンチオフ下部の前記曲率半径Rは、プラスチックボトル底面の端部の方が中央部よりも大きくても良い。
【0068】
また本発明のプラスチックボトルのピンチオフ下部の前記曲率半径Rは、前記プラスチックボトル底面の中央部の方が端部よりも大きくても良い。
【0069】
また本発明のプラスチックボトル底面は、平らな接地面を有し、平らな接地面は2つに分割されていても良い。
【0070】
また本発明のプラスチックボトル底面は、平らな接地面を有し、平らな接地面は少なくとも3以上に分割されていても良い。
【0071】
また本発明のプラスチックボトルの平らな接地面の面積は、プラスチックボトルの底面積の20%以上であることが好ましい。
【0072】
また本発明のプラスチックボトルは、透明性を有することが好ましい。
【0073】
また本発明のプラスチックボトルは、上部に開口を有し、開口は、可撓性の栓と金属性のキャップにより密封可能に形成されていることが好ましい。
【0074】
本発明のプラスチックボトルの製造方法は、熱可塑性樹脂からなるパリソンを押し出してピンチオフ部より下方に位置するように配置し、底面のピンチオフ下部が少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有する分割金型を閉じて型締めするとともに、ブローピンを配置して気体を吹き込み、前記パリソンを前記分割金型に押し当てて、プラスチックボトルを成形しても良い。
【0075】
また本発明のプラスチックボトルのピンチオフの下部の凹んだ部分の形状は、中央部が狭く両側の端部に向けて広くなる略扇形形状になっていても良い。
【0076】
また本発明のプラスチックボトルのピンチオフの下部の凹んだ部分の形状は、中央部が広く両側の端部に向けて狭くなる略卵形形状になっていても良い。
【0077】
また本発明のプラスチックボトルの平らな接地面の形状は、該底面の中央部に設けられるピンチオフを中心として左右対称の形状となっていても良い。
【0078】
また本発明のプラスチックボトルの平らな接地面の形状は、該底面の中心から該底面の端部に向けて略扇形形状に広がっていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上詳細に説明したように、本発明により、プラスチックボトルの底面を平面状として接地面積を広く取りつつ、ボトル底面が金型から抜けやすい、熱伝導性に優れるプラスチックボトルが提供されたということは、特に、医薬品業界、食品業界あるいは化粧品業界などにおける利用価値は極めて多大である。
【符号の説明】
【0080】
1、11、21 プラスチックボトル
2、12、22 ボトル底面
3、13、23 ピンチオフ
4、14、24 曲率半径Rを持った曲面
5、15、25 平らな接地面
6、16、26 上部開口
7、17、27 開口部分
8、18、28 凹んだピンチオフの底からの立ち上がり角度
9、19、29 ピンチオフの底のクリアランス
33 ピンチオフ
38 ボトル底面のカーブR
39 ボトル接地面
41 分割金型
42 押出ヘッド
43 パリソン
44 ピンチオフ部
45 キャビティ
46 ブローピン
47、48 バリ
51 凍結乾燥庫(真空室)
52 冷却加熱装置
53 排気装置
54 冷却装置
55 真空ポンプ
56 バイアル瓶(凍結乾燥試料)
57 冷却加熱棚
58 コールドトラップ
R1、R2、R3、R4、R5、R6 ピンチオフ下部の曲率半径
R1'、R2'、R3'、R4'、R5'、R6' 曲面の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割金型を用いて成形されるプラスチックボトルにおいて、
底面のピンチオフ下部に少なくとも2以上の異なる曲率半径Rを有することを特徴とするプラスチックボトル。
【請求項2】
ブロー成形により成形されることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記曲率半径Rは、前記底面の端部の方が中央部よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
複数のピンチオフを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
前記ピンチオフは、三つ又に分かれていることを特徴とする請求項4に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプラスチックボトルを形成することを特徴とする分割金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−178423(P2011−178423A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43278(P2010−43278)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】