説明

プラスチック光ファイバコード

【課題】伝送損失、耐湿熱性、耐屈曲性などを維持しつつ、被覆層との密着性に優れた屋内配線や自動車内配線用のプラスチック光ファイバコードを提供する。
【解決手段】コアと、少なくとも1層のクラッドからなるプラスチック光ファイバ1の外層に少なくとも1層の被覆層2を設けたプラスチック光ファイバコードであって、プラスチック光ファイバの最表層のクラッドが下記の成分を含有し、かつ、30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力が50N以上であるプラスチック光ファイバコード。フッ化ビニリデン:52〜72モル%、テトラフルオロエチレン:26〜46モル%、ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性などを維持しつつ、被覆層との密着性に優れた屋内配線や自動車内配線用等に使用されるプラスチック光ファイバコードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバは、加工性、取扱い性、製造コストなどの面でガラス系光ファイバに比べて優れており、短距離の光信号伝送、照明用ライトガイドなどに広く利用されている。またプラスチック光ファイバを保護する目的で、プラスチック光ファイバの外周に押出成形機を用いて被覆層を被覆したプラスチック光ファイバコードが知られており、光電センサや光信号伝送、最近では自動車内情報通信用途などの分野で利用されている。
【0003】
上記プラスチック光ファイバは、コア、クラッドの2種の重合体により構成されている。コアには、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する)に代表されるように、透明性に優れ耐候性の良好な重合体が一般に使用される。一方、クラッドには、コア内部に光を閉じ込めておくために、コアよりも低屈折率であることが必要であり、フッ素含有重合体が広く使用されている。
【0004】
屋内配線や自動車内情報通信用途において、プラスチック光ファイバは高温多湿の環境下で狭い空間を屈曲した状態で施工される事が多く、耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性、耐曲げ損失特性などが要求される。
【0005】
更に、プラスチック光ファイバコードは、通常その端部にコネクタを装着して使用するが、被覆層を剥離する際、プラスチック光ファイバ素線に傷を付けやすいということから、被覆層を残したままコネクタ部品と接続固定する装着方式が行われている。被覆層をコネクタ部品に接続固定する場合、コネクタとプラスチック光ファイバコードとの接続強度を保持する上で、プラスチック光ファイバ素線と被覆層の密着力が高いことも必要である。
【0006】
そのため、被覆層の樹脂にクラッド材をポリマーブレンドしたり共重合したり、特殊な高接着性樹脂を使用することが検討されている。
【0007】
ところで、プラスチック光ファイバの耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性、耐曲げ損失特性などの改善を目的として、クラッドに低屈折率であるフッ化ビニリデン(ビニリデンフロライド)とテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンからなる3元共重合体を用い、曲げ特性を向上させる技術がいくつか提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1に示すようにクラッド材としてフッ化ビニリデン成分30〜50重量%、テトラフルオロエチレン成分25〜55重量%、ヘキサフルオロプロピレン成分15〜25重量%の範囲にある3元共重合体を用いたプラスチック光ファイバが開示されている。
【0009】
また、特許文献2に示すように、クラッド材として、ビニリデンフロライド成分が45〜57モル%、テトラフルオロエチレン成分が31〜35モル%、ヘキサフルオロプロピレン成分が12〜20モル%の範囲にある3元共重合体を用いたプラスチック光ファイバ素線の外側にビニリデンフロライド系樹脂からなる保護層を被覆したプラスチック光ファイバが提案されている。
【0010】
また、特許文献3には、第1クラッドの屈折率が第2クラッドの屈折率より高い樹脂からなり、第2クラッドがフッ化ビニリデン成分30〜92モル%、テトラフルオロエチレン成分0〜55モル%、ヘキサフルオロプロピレン成分8〜25モル%の範囲にある三元共重合体からなるプラスチック光ファイバが開示されている。また、第1クラッドに最適なものとして(メタ)アクリル酸長鎖フルオロアルキルエステル/(メタ)アクリル酸短鎖フルオロアルキルエステル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体が例示されている。
【0011】
一方、特許文献4には、コアがメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体、第1クラッドがパーフルオロアルキルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含有する共重合体、第2クラッドがヘキサフルオロプロピレン成分10〜25重量%、テトラフルオロエチレン成分35〜70重量%、フッ化ビニリデン成分15〜45重量%を含有する共重合体からなるプラスチック光ファイバが開示されている。
【0012】
しかし、特許文献1に開示されているプラスチック光ファイバは開口数が高く伝送損失に優れる一方、クラッド材が柔軟であるため巻き取り時に粘着する問題があり、また、耐熱性、耐湿熱性などが劣るという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示されているプラスチック光ファイバは、2層クラッド構造とすることにより、上記粘着性は改善されるものの、耐熱性、耐湿熱性や被覆層との密着力などが劣るという問題があった。
【0014】
また、特許文献2、3、4、5に開示されているプラスチック光ファイバにおける第2クラッドは耐熱性、耐湿熱性は改善されるものの、被覆層との密着力が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第2857411号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3850961号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−101915号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2002−156533号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2003−139973号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性などとのバランスを維持しつつ、被覆層との密着性に優れた、屋内配線や自動車内配線用等に使用されるプラスチック光ファイバコードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を有する。
【0018】
すなわち、本発明は、コアと、少なくとも1層のクラッドからなるプラスチック光ファイバの外層に少なくとも1層の被覆層を設けたプラスチック光ファイバコードであって、プラスチック光ファイバの最表層のクラッドが下記の成分を含有し、かつ、30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力が50N以上であるプラスチック光ファイバコードである。
フッ化ビニリデン:52〜72モル%
テトラフルオロエチレン:26〜46モル%
ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性などとのバランスを維持しつつ、被覆層との密着性に優れた、屋内配線や自動車内配線用等に使用されるプラスチック光ファイバコードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のプラスチック光ファイバコードコードの一態様の模式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、コアと、少なくとも1層のクラッドからなるプラスチック光ファイバの外層に少なくとも1層の被覆層を設けたプラスチック光ファイバコードである。
【0022】
図1に、本発明のプラスチック光ファイバコードの一態様の模式的断面図を示す。図中、1はプラスチック光ファイバであり、2はプラスチック光ファイバに接する被覆層である。
【0023】
本発明のプラスチック光ファイバコードのコア材は、好ましくは、メチルメタクリレート(以下、MMAと略記する)を主成分とする(共)重合体であり、PMMAまたはMMAが70重量%以上である共重合体も含む。MMAを主成分とする(共)重合体は、例えば(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(置換)スチレン、(N−置換)マレイミドなどを共重合するか、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレートなどが、置換スチレンとしては、メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが、N−置換マレイミドとしては、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミドなどが挙げられる。これら共重合成分は、複数で用いても良く、これら以外の成分を少量使用しても良い。また、耐酸化防止剤などの安定剤が伝送損失に悪影響しない量だけ含まれていても構わない。これらの重合体の中で、実質的にPMMAであることが、生産性、伝送損失、耐環境性などの点から最も好ましい。
【0024】
本発明のプラスチック光ファイバコードにおけるクラッド材は、最表層のクラッドが、下記の成分を
フッ化ビニリデン : 52〜72 モル%
テトラフルオロエチレン : 26〜46 モル%
ヘキサフルオロプロピレン: 2〜8 モル%
含有する。
【0025】
上記共重合成分がこの範囲外の組成では、低屈折率化、低結晶化(低伝送損失)が達成できなかったり、コアのMMA主体の(共)重合体への密着性が劣ったり、耐屈曲性などの機械特性が大幅に低下したり、低結晶化(無色透明化)が達成できなかったり、耐屈曲性などの機械特性が大幅に低下したり、また粘着性がある、耐熱性が不十分であったりなどの問題を有する。
【0026】
また、最表層のクラッドが、コアの屈折率より小さい屈折率を有する有機重合体からなることが好ましく、その共重合体のメルトフローレート(以下、MFR)値が5〜30g/10分であることが好ましい。
【0027】
また、上記共重合体のMFR値が、5〜30g/10分(条件:230℃、荷重2.16kg、オリフィス径2mm、長さ8mm)の範囲内であることが好ましい。MFR値が5未満であると溶融粘度が高すぎて成型が難しくなる場合があり、伝送損失が悪化する傾向がある。30を越えると分子量が低くて機械特性、耐熱性が劣る場合がある。
【0028】
本発明において、プラスチック光ファイバ外周部の30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力が50N以上であることが重要である。ここでいう30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力の測定方法については後述する。
【0029】
密着力が50N未満では、コネクタからプラスチック光ファイバコードを引き抜いた際に、プラスチック光ファイバ素線と被覆層が剥離してプラスチック光ファイバ端面が引っ込み、光学的結合の信頼性が低下する。また、環境変化においてもピストニングを起こす懸念があり、50N以上必要である。さらに好ましい密着力は60N以上である。外径1000μmのプラスチック光ファイバの場合、密着力は、60〜100Nがより好ましい。密着力が100N以上あると、プラスチック光ファイバの破断強力以上となるため、プラスチック光ファイバが切断してしまう場合があるため好ましくない。
【0030】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、コア/クラッドの2層芯鞘構造の場合は、クラッド層の厚みが、2〜20μmが好ましく、5〜15μmが特に好ましい。
【0031】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、好ましくは、クラッドが、第1クラッド、第2クラッドからなる。
【0032】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、第1クラッドとして
CH=C(CH)−COOCH(CF
(但し、Rはフッ素原子又は水素原子、nは1から4の整数を表す。)
で示されるパーフルオロアルキルメタクリレート40〜90モル%、及びメチルメタクリレ−ト10〜60モル%を共重合成分として含有する共重合体を用いることが、透明性や耐熱性の点から好ましい。
【0033】
上記化学式で示される以外のパーフルオロアルキルメタクリレートは、共重合体が白濁、黄変したり、機械特性が著しく劣ったりして、プラスチック光ファイバとすると伝送損失、耐熱性、耐屈曲性などが不充分な場合がある。
【0034】
本発明で好ましく使用するパーフルオロアルキルメタクリレートは、より好ましくは、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレ−ト、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレ−ト、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピリメタクリレ−トなどがある。
【0035】
本発明で好ましく使用するパーフルオロアルキルメタクリレートは、さらにMMA以外の(メタ)アクリル酸エステル類、脂環式炭化水素をエステルに有するメタクリル酸、(メタ)アクリル酸、(置換)スチレン、(N−置換)マレイミドなどを10重量%程度以内で共重合してもよい。
【0036】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、好ましくは、第2クラッドが下記成分
フッ化ビニリデン:52〜72モル%
テトラフルオロエチレン:26〜46モル%
ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%
を有する。
【0037】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、好ましくは、第1クラッドの屈折率はコアより低く、第2クラッドより高い樹脂からなる。第2クラッドが第1クラッドより低屈折率であれば、プラスチック光ファイバコードが曲げられたり、第1クラッドの不整部分から漏れだした光を反射して回収する働きをするので好ましい。
【0038】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、第1クラッドを使用したプラスチック光ファイバの理論開口数は、NA=0.45〜0.52が好ましい。
【0039】
理論開口数は次式のように
開口数=((コアの屈折率) −(第1クラッドの屈折率)1/2
コア、第1クラッドの屈折率差にて表わされる。開口数を0.45〜0.52とすることにより、従来1層で用いていた物性バランスのとれたクラッドをそのまま本発明の第1クラッドとして使用することが可能である。
【0040】
また、本発明のプラスチック光ファイバコードが、コア/第1クラッド/第2クラッドの3層芯鞘構造の場合は、第1および第2クラッド厚みはそれぞれ2〜10μmであることが好ましい。更に、特性上問題にならない程度に薄くすることが好ましく、第1及び第2クラッド合計の厚みで5〜15μmであることが特に好ましい。
【0041】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、その外周部に少なくとも1層以上の被覆層を有する。
【0042】
被覆層は、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、例えば、ポリオレフィン樹脂、有機シラン基を含有するオレフィン系ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン12などのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマーあるいはウレタン樹脂、フッ素樹脂が用いられる。
【0043】
自動車内通信用途として必要な特性である耐油性、耐摩耗性、耐熱性、耐衝撃性の観点から、被覆層は、前記の中でもプラスチック光ファイバの外周部に接する被覆層にポリアミド12またはポリプロピレンを主成分とする樹脂を用いることが好ましい。ポリアミド12を主成分とする樹脂とは、ポリアミド12ホモポリマーあるいはポリアミド12を50重量%以上含有する共重合体、ポリマーブレンドなどをさし、可塑剤、難燃剤の他、耐酸化防止剤、耐老化剤、UV安定剤などの安定剤、あるいは着色のためのカーボンブラック、顔料、染料などを含んでも良く、また、曲げ弾性率が1.0〜2.0GPa、引張降伏強度が30〜55MPa、荷重たわみ温度(0.45MPa)が135〜150℃などの特性の一般市販品を利用できるが、上記添加剤などの含有や他の樹脂とのポリマーブレンドによりこれ以外の範囲の特性のものでも構わない。ポリプロピレンを主成分とする樹脂とはポリプロピレン、あるいはポリエチレンなどとの架橋を含めた共重合体、あるいはそれらの混合物などをさし、難燃剤の他、耐酸化防止剤、耐老化剤、UV安定剤などの安定剤、あるいは着色のための顔料などを含んでも良く、また、引張降伏強度20〜35MPa(ASTM D638)、曲げ弾性率1.1〜1.7GPa(ASTM D790)、ロックウエル硬度(R)80〜110(JIS−K7202)、荷重たわみ温度105〜130℃(JIS−K7207、0.45MPa)などの特性の一般市販品を利用できるが、上記添加剤などの含有や他の樹脂とのポリマーブレンドによりこれ以外の範囲の特性のものでも構わない。
【0044】
本発明のプラスチック光ファイバコードは、より好ましくは、第1クラッドを
CH2=C(CH3)−COOCH2(CF2)nR
(但し、Rはフッ素原子又は水素原子、nは1から4の整数を表す。)
で示されるパーフルオロアルキルメタクリレート40〜90モル%、およびメチルメタクリレ−ト10〜60モル%を共重合成分として含有する共重合体、及び第2クラッドが,
(1)フッ化ビニリデン:52〜72モル%、(2)テトラフルオロエチレン:26〜46モル%、(3)ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%を含有する共重合体からなる光ファイバ素線と熱可塑性樹脂からなる被覆層を組み合わせることで、光ファイバ素線と被覆層成分の相互作用が大きくなり、プラスチック光ファイバ外周部の30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力が50N以上にすることができる。
【0045】
本発明に用いられるプラスチック光ファイバについて説明する。
【0046】
本発明のプラスチック光ファイバは常法により製造することができる。例えば、コア材とクラッド材とを加熱溶融状態下で、同心円状複合用の複合口金から吐出してコア/クラッドの2層芯鞘構造を形成させる複合紡糸法が好ましく用いられる。さらに、例えば、コア/第1クラッド/第2クラッドの3層芯鞘構造を形成させる複合紡糸法が好ましく用いられる。
【0047】
続いて、機械特性を向上させる目的で1.2〜3倍程度の延伸処理が一般的に行なわれプラスチック光ファイバとなる。
【0048】
プラスチック光ファイバの外径は、通常、0.1〜3mm程度であり、自動車内で配線するための強力、取扱性などの面から外径0.7〜1.5mmがより好ましい。また、更に外層に保護層を設ける場合にも公知の方法によって製造することができるが、3層同時の複合紡糸法が好ましく用いられる。
【0049】
次にプラスチック光ファイバコードの製造方法について説明する。
【0050】
プラスチック光ファイバコードは、プラスチック光ファイバの外層に被覆層を形成することにより得られる。被覆層はクロスヘッド、ダイを使用した溶融押出成形法等の公知の方法によって形成することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、評価は以下の方法で行った。
【0052】
伝送損失:
ハロゲン平行光(波長650nm、入射NA=0.25)を使用して30/2mカットバック法により測定した。150dB/km以下で合格である。
【0053】
ピストニング:
試長50cmのプラスチック光ファイバコードを高温オーブン(タバイエスペック社製PHH−200)内に85℃、24時間投入し、試験前後のプラスチック光ファイバコードの長さを測定した。プラスチック光ファイバコードにおける試験前の長さから試験後の長さを引くことでピストニング評価を行った。(−はプラスチック光ファイバが被覆層から突き出ている状態を表し、+はプラスチック光ファイバが被覆層から引っ込んでいる状態であることを表す。)±0.5mm以内が合格である。
【0054】
耐熱性:
高温オーブン(タバイエスペック社製PHH−200)内に試長28mのプラスチック光ファイバコード(両末端各1mはオーブン外)を85℃、500時間投入し、試験前後の光量を測定してその変化量を指標とした(n=3の平均値。マイナスは光量ダウンを示す)。変化量が−1.0dB以内であれば合格である。
【0055】
耐湿熱性:
恒温恒湿槽(ナガノサイエンス社製LH41−12A)を使用する以外は耐熱性と同様にし、温度85℃、湿度85%にて評価した。変化量が−1.0dB以内であれば合格である。
【0056】
曲げ損失:
660nmLEDを使用し、金属製半径10mmの丸棒に360度巻き付けた時の光量を測定し、巻き付け後の変化量を指標とした(n=3の平均値)。変化量が−1.0dB以内であれば合格である。
【0057】
密着力:
試長90mmのプラスチック光ファイバコードの被覆層を60mm剥離し、被覆層を30mmだけ残し光ファイバを露出した。光ファイバ径より0.1mm大きな穴をあけた金属板にファイバを通し、一般市販の引張試験機にて引張速度50mm/分でファイバを引き抜き、n=20の引張降伏強度の最低値を密着力として示した。n=20の最低値が50N以上であれば合格である。
【0058】
屈折率:
測定装置としてアッベ屈折率計を使用して、室温25℃雰囲気にて測定した。
【0059】
連続屈曲回数:
プラスチック光ファイバコードの一端に500gの荷重をかけ、直径30mmのマンドレルで支持し、その支持点を中心にファイバの他端を角度90°で連続的に屈曲させて、コードが切断するまでの回数を測定した(n=5の平均値)。50,000回以上持てば合格である。
【0060】
[実施例1]
クラッド材として表1に示す組成のフッ化ビニリデン(2F)/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)共重合体(屈折率1.371 MFR12)を複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMA((屈折率1.492)をコア材として複合紡糸機に供給して、235℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、ファイバ径1000μm(コア径980μm、クラッド厚10.0μm)のプラスチック光ファイバを得た。
【0061】
得られたプラスチック光ファイバの外層に、引張降伏強度40MPa、融点178℃のポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック社製“ダイアミド”L1640)を、線速度50m/分の条件にて溶融押出成型法により形成した。さらにその外層に、引張降伏強度25MPa、融点178℃のポリアミドエラストマー樹脂(エムスケミー社製“グリルアミド”ELYXE3833)を、線速度50m/分の条件にて溶融押出成形法にて形成し、プラスチック光ファイバコードとした。
【0062】
こうして得られたプラスチック光ファイバコードを前記の評価方法により評価した。結果を表2に示す。表2からわかるように、密着力、伝送損失、繰り返し屈曲性、耐熱性、耐湿熱性、曲げ損失がいずれも優れていた。
【0063】
[実施例2〜6および比較例1〜5]
第1クラッド/第2クラッドを表1のとおり(ただし、ファイバ径をすべて1000μmに統一)に変更した以外は、実施例1と同様にしてプラスチック光ファイバコードを得た。これらのプラスチック光ファイバコードを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表2に示した。
【0064】
本発明の実施例2〜6は、被覆層とファイバの密着力が高く、また、伝送損失、耐屈曲性、耐熱性、耐湿熱性、耐曲げ特性がいずれも優れていた。
【0065】
一方、クラッド組成比が異なる比較例1〜5については、密着力が悪く、伝送損失、耐屈曲性、その他の物性バランスも取れなかった。
【0066】
【表1】

【0067】
PMMA :ポリメチルメタクリレ−ト
MMA :メタクリル酸メチル
3FM :2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレ−ト
4FM :2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレ−ト
5FM :2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピリメタクリレ−ト
17FM :1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシルメタクリレ−ト
2F :フッ化ビニリデン
4F :テトラフルオロエチレン
6F :ヘキサフルオロプロピレン
【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、少なくとも1層のクラッドからなるプラスチック光ファイバの外層に少なくとも1層の被覆層を設けたプラスチック光ファイバコードであって、プラスチック光ファイバの最表層のクラッドが下記の成分を含有し、かつ、30mm長さにおける被覆層とプラスチック光ファイバ素線との密着力が50N以上であるプラスチック光ファイバコード。
フッ化ビニリデン:52〜72モル%
テトラフルオロエチレン:26〜46モル%
ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%
【請求項2】
クラッドが、第1クラッド、第2クラッドからなるプラスチック光ファイバコードであって、前記第1クラッドが
CH=C(CH)−COOCH(CF
(但し、Rはフッ素原子又は水素原子、nは1から4の整数を表す。)
で示されるパーフルオロアルキルメタクリレート40〜90モル%、およびメチルメタクリレ−ト10〜60モル%を共重合成分として含有する共重合体からなり、前記第2クラッドが下記成分を有する請求項1記載のプラスチック光ファイバコード。
フッ化ビニリデン:52〜72モル%
テトラフルオロエチレン:26〜46モル%
ヘキサフルオロプロピレン:2〜8モル%
【請求項3】
前記被覆層が、第1被覆層および第2被覆層の2層構造からなる請求項1ないし2記載のプラスチック光ファイバコード。
【請求項4】
前記第1の被覆層がポリアミドを主成分とする請求項3記載のプラスチック光ファイバコード。
【請求項5】
ポリアミド樹脂がポリアミド12を主成分とする請求項4記載のプラスチック光ファイバコード。
【請求項6】
前記第2の被覆層がポリアミドおよび/ないしは熱可塑性エラストマーよりなる請求項3〜5記載のプラスチック光ファイバコード。
【請求項7】
前記熱可塑性エラストマーがUL94規格の難燃性試験において、V2相当以上の難燃性を有する請求項6記載のプラスチック光ファイバコード。

【図1】
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【公開番号】特開2010−107961(P2010−107961A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220201(P2009−220201)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】