説明

プラスチック光ファイバ連接ケーブル

【課題】3本以上の光ファイバ素線11を個々にシース12で被覆した光ファイバコード13を樹脂で繋げ、変形可能な連接部14を有する多芯連接ケーブルについて、連接部14を曲げて個々のケーブルを束ねた後でも、曲げ癖が付きにくくする。
【解決手段】個々の連接部14を、平行に並べたそれぞれの光ファイバコード13の外周同士を繋ぐ接線のうち、交差しない接線のうちの一本に沿って設けるようにし、なおかつ、それらの連接部14が、少なくとも一箇所の光ファイバコードにおいて不連続となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にテレビ等の機器内配線に使用される多芯型のプラスチック光ファイバ連接ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビなどで用いられる信号伝送用の機器内配線には、メタルケーブルが用いられてきたが、それら電子機器の薄型化、小型化を進めるために、径がより細いケーブルや、取り回しがより容易なケーブルが求められている。また、機器内ケーブルも、電気信号を伝達するメタルケーブルから、高速性を求めて光ファイバを用いたケーブルが利用されるようになってきているが、光ファイバの中でも、屈曲性や接続のし易さからプラスチック光ファイバを用いたケーブルが注目されている。
【0003】
さらに、機器内でやりとりされる信号量の増加に伴い、単線の光ファイバでは足らず、多芯のプラスチック光ファイバを一繋がりのケーブル化したものが求められるようになっている。しかし、単純に多芯を束ねただけのケーブルでは、薄型化が要求されてスペースが少なくなっている機器内配線の取り回しが困難になってしまう。一方で、単純なフラットケーブルでは隙間を通すのには有効であるが、曲げが不自由になってしまう。このため、幅が狭いところでは断面扁平形状で通過させ、曲がる部分では断面円形状に丸めて曲げることができる配線ケーブルが求められている。
【0004】
これに対して、特許文献1に記載のように、多芯でありながら、平行に並べた複数の芯線を個々に樹脂で被覆し、その被覆間を、薄肉の樹脂からなる可撓性のある連接部で、被覆を施された芯線に沿って連接させた多芯型の連接ケーブルが提案されている。この連接部は個々の芯線をフラットな形状になるように平行に並べて繋げており、力を加えていない状態では断面が図18のように一直線状に連なったものとなる。一方で、曲げが必要な箇所では薄肉の連接部を曲げて個々の芯線を丸く束ね、筒状のチューブ6に収納し、図19のように断面の輪郭を円形状にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−135713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図18のような連接ケーブル1は、図19のように断面円形状に束ねようとしたとき、連接部5が全体的に強く曲げられることとなる。また、隣り合う光ファイバコード4同士を一体にまとめようとしても、芯を通る線にそって連接部5が設けられているために、連接部5同士を中心部分に集中させることができず、全ての連接部5について、どの方向に曲げるにしても、曲げた際の内側となる連接部が収縮されようとする力と外側となる連接部が伸ばされる力との差が大きく、全体として負荷を大きく受けることになってしまっていた。
【0007】
このため、断面扁平状と断面円形状とに相互に変換してケーブルを配しようとしても、曲げが不自由で、連接部にかかる負荷が大きくなりやすく、配線の自由度は十分ではなかった。また、連接ケーブルとして曲げ癖が付きやすくなり、一旦束ねて筒状のチューブに収容して断面円形状にした連接ケーブルを再び断面扁平状にする際に戻りにくくなったりすることがあった。さらに、複数の連接ケーブルを一本のチューブに収容する際には、折り畳みにくく、結果として必要とするチューブの内径が大きくなりがちであった。
【0008】
そこでこの発明は、全体を断面円形又は断面楕円形と断面扁平形状とに相互に変形するための可撓性のある連接部を有する多芯連接ケーブルにおいて、全体として連接部にかかる負担を小さくし、曲げる際の取り回しの自由度を向上させて、連接ケーブルを用いた配線作業の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、光ファイバ素線を被覆するプラスチック製のシースを含む光ファイバコード同士を繋ぐ個々の連接部を、平行に並べたそれぞれの光ファイバコードの外周同士を繋ぐ接線のうち、交差しない接線のうちの一方に沿って設けるようにし、なおかつ、それらの連接部が、少なくとも一箇所の光ファイバコードにおいて不連続となるようにすることで上記の課題を解決したのである。ここで外周とは、シースの断面形状を円と仮想した場合の円の外周である。二つの円を繋ぐ接線は四本存在し、うち二本は交差するが、この発明にかかる連接部は、交差しない方の二本の接線のうちのいずれかの位置に沿って設けるものである。なお、この出願において光ファイバ素線とは、コア及びクラッドを共にプラスチックとする光ファイバをいう。個々の光ファイバ素線は互いに間隔を空けて平行に配置される位置関係となり、それらはシースと連接部によって接続される。
【0010】
不連続である連接部に繋がる1つの光ファイバコードに着目すると、それぞれの連接部の根本となる接点同士は、180度の位置関係にある状態である。これはすなわち、連接部を断面扁平形状に延ばして平面上に広げたとき、連接部が上下位置に交互に設けてある状態である。ただし、5芯以上の光ファイバコードからなる場合は、全ての光ファイバコードで、連接部が不連続でなくてもよい。5芯以上で全ての連接部が不連続であると、連接部を曲げたときの光ファイバコードの配置取りが難しくなる場合があるからである。
【0011】
連接部を接線に沿う位置に設けることによって、光ファイバコードを束ねた際にその連接部の多くを従来の型式よりも中心に集めやすくすることができるとともに、不連続である箇所を設けることによって、内曲げ外曲げの両方に対応させることができ、曲げの自由度を十分に確保することができる。
【0012】
これにより、複数の連接ケーブルを束ねたときに、連接ケーブル同士の隙間に別の連接ケーブルの光ファイバコードを配置させやすく、複数本からなる連接ケーブルを束ねるチューブの内径を小さくすることができる。
【0013】
連接させる光ファイバ素線は、3芯以上であり、4芯以上で特に発明の効果を発揮する。2芯では光ファイバコードを束ねてチューブに収容することによる効果がほとんど無い。芯数は特に上限があるわけではないが、10芯を超えると、連接部を曲げてコードを束ねようとしても連接部同士の干渉がひどくなり、この発明の効果をあまり発揮できない。好ましくは4〜6芯である。
【0014】
4芯以上からなる場合、その構造は、連接部が不連続となる光ファイバコードが2つあり、なおかつ、断面が連接ケーブルの幅方向に線対称であると好ましい。すなわち、連接部が両端部と中央部との三箇所に分けられる形状である。中央の連接部を動かさずに両端の連接部同士を隣り合わせるように折り畳むことで、連接部をまとめやすく、扁平状のままでは曲げにくい、扁平状部分と同一平面方向への曲げを容易に行うことができるようになる。
【0015】
この発明を用いる光ファイバ素線の外径は0.25mm以上3mm以下であると好ましい。0.25mmより細いと取り扱いや接続のしやすさ等のプラスチック光ファイバのメリットを損ねてしまう。一方で、3mmを超えると曲げにくくなりすぎてこの発明にかかる連接ケーブルのメリットがほとんど活かせなくなる。また、上記光ファイバ素線を被覆するシースの厚みは0.1mm以上0.5mm以下であると好ましい。0.1mm未満では被覆の効果が十分でなく、一方で0.5mmを超えると無駄に光ファイバコードが太くなりすぎて取り回しを阻害することとなってしまう。従って、上記光ファイバ素線と上記シースからなる光ファイバコードの外径dは、0.45mm以上4mm以下が好ましい範囲となる。
【0016】
また、連接部の厚みTは、曲げを容易にするために、0.5mm以下であると好ましい。一方で、厚みTは0.1mm以上でないと、曲げる際に破れが生じる可能性が無視できないものとなってくる。好ましくは0.2mm以上である。また、チューブへの収容時や線対称の位置にある連接部同士の貼り合わせを容易にするため、上記光ファイバコードとの関係では、厚みTが、繋がっている光ファイバコードのシース外径dの2分の1以下であることが好ましく、より好ましくは外径dの6分の1以下である。
【0017】
さらに、連接部により離れている光ファイバ素線の中心間距離Lは光ファイバコードの外径dの1倍以上3倍以下であるとよい。好ましくは1.5倍以上である。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる連接ケーブルを用いると、断面扁平状な部分と断面円形状の部分とを使い分けての取り回しが容易になり、狭く複雑な電子機器の内部における信号ケーブルの配置が容易となる。すなわち断面扁平状の部分から立ち上がる方向への曲げは、断面扁平状のまま曲げることができる。一方で、断面扁平状の部分と同一平面方向へ曲げるにあたっては、そのまま曲げるのではなく、断面円形状となるように連接部を曲げてコードを束ね、チューブに収容したものを曲げる。外側となる連接部と内側となる連接部との曲率半径は差が小さくなるので、連接ケーブルにかかる負荷は少なくなり、破断が生じたり、曲げ癖が残ってしまうことを起こりにくくすることができる。具体的な配線の際には、直線部分や狭い部分にはできるだけ扁平状となる部分を配するように配線を行い、扁平状のままでは曲げが難しくなる方向への曲がり部分は断面円形又は断面楕円形のチューブに収容した部分により配線を行うことで、複雑かつ狭い電子機器内でも有効な取り回しが可能となる。なお、スパイラル状の結束具や抜け止めを有する結束具など、コードを束ねることができるものであれば、上記チューブの代わりに利用可能である。
【0019】
なお、チューブを用いる場合は、シースや連接部を形成させるとともにチューブを形成させていって、予めチューブに収めたものとしてもよいし、逆に、最初は断面扁平状としておき、必要な箇所のみ筒状物に収容するようにしてもよい。予めチューブに収めた場合は、必要に応じてチューブを裂いて、曲げ癖がほとんど残らない連接部を開いて断面扁平状に開き、扁平部分の平面から立ち上がる方向に曲げたり、扁平部分の薄さを利用して隙間を通したりすることができる。
【0020】
また、断面線対称である連接ケーブルや、線対称である部分を有する連設ケーブルでは、扁平状部分の平面方向への曲げを行うにあたり、チューブに収容する変わりに、中央の連接部をそのままの位置とし、両端の連接部同士を、光ファイバコードの接線にあたる面同士で貼り合わせてまとめることでも、曲げを容易に行うことができる。狭い部分や平面から立ち上がる方向は断面扁平状そのままで配置させ、その断面扁平状部分の平面方向への曲げが必要な箇所や、連接ケーブルの幅方向に狭い箇所では、連接部を貼り合わせて曲げたり、隙間を通したりする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態にかかる四芯からなる連接ケーブルの概略図
【図2】図1のA−A断面図(外力を加えない扁平形状での断面図)
【図3】図1のB−B断面図(チューブによる筒状形状での断面図)
【図4】連接部が不連続となり、上下位置交互に伸びる光ファイバコード外周の接線方向を示す概念図
【図5】二つの円を繋ぐ接線の概念図
【図6】第一の実施形態で両端の連接部を接着させた際の断面図
【図7】図6の接着状態で左右方向に曲げる際の概略図
【図8】扁平状態で平面から立ち上がる方向に曲げる際の概略図
【図9】第一の実施形態で図3とは逆方向に曲げた際の断面図
【図10】第一の実施形態にかかる連接ケーブルを4本、断面楕円状のチューブに収容した形態の断面図
【図11】第二の実施形態にかかる六芯からなる連接ケーブルの断面図
【図12】第二の実施形態にかかる連接ケーブルを曲げてチューブに収容した形態の断面図
【図13】第三の実施形態にかかる六芯からなる連接ケーブルの断面図
【図14】第四の実施形態にかかる五芯からなる連接ケーブルの断面図
【図15】第四の実施形態にかかる連接ケーブルを断面円形状のチューブに収容した際の断面図
【図16】第五の実施形態にかかる五芯からなる連設ケーブルの断面図
【図17】第六の実施形態にかかる五芯からなる連設ケーブルの断面図
【図18】従来の連接ケーブルの断面図
【図19】従来の連接ケーブルをチューブに収容した形態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を実施する具体的な実施形態について説明する。
この発明にかかる光ファイバ連接ケーブルは、個々の光ファイバ素線11を樹脂で被覆してシース12を形成させた個々の光ファイバコード13の間を、薄肉の樹脂からなり可撓性のある連接部14で連接させた多芯型ケーブルである。
【0023】
この発明の第一の実施形態を図1〜3に示す。図1はこの第一の実施形態の連接ケーブルの、断面筒状部分と断面扁平形状とを切り替える部分の概略図である。図2は、この実施形態にかかる連接ケーブルの、断面扁平形状となる部分(図1中のA−A)の断面図である。図3は、この実施形態にかかる連接ケーブルの、断面円形となる部分(図1中のB−B)の断面図である。
【0024】
この第一の実施形態は、四本の光ファイバ素線11を個々に被覆してシース12を形成させた光ファイバコード13を四本、間隔を置いて平行に並べてあり、その間を連接部14で繋げている。外部から力を加えていない開放状態では、この光ファイバ素線11とシース12からなる光ファイバコード13が、図2に示すように一列に並ぶ。これら個々の光ファイバコード13間を繋ぐ連接部14は、個々の光ファイバコード13で全て不連続になっており、ケーブルの中心を対称中心として、点対称の位置に形成されている。すなわち、内側の二本の光ファイバコード13a、13aを繋ぐ連接部14aと、内側の光ファイバコード13a及び外側の光ファイバコード13bを繋ぐ連接部14bとが、上下方向に交互に設けてあり、連接ケーブル10を形成している。
【0025】
図4は、この連接部14と光ファイバコード13との関係を示す概念図である。円はシース12の断面外周を示し、中の小さな円は光ファイバ素線11の断面を示す。一つの連接部14は、円上の点Tから伸びる接線方向に伸びている。この実施形態の光ファイバコード13から伸びるもう一つの連接部14は、接点Tと接点Tとの中心角が180度となる位置関係で、同様にして接点Tから伸びるものとなっている。
【0026】
なお、二つの離れた円を繋ぐ接線は、図5の通り4通り引くことができる。この発明で設ける連接部は、その接線のうち、交差する接線(図中破線で示す。)ではなく、交差しない接線のうちの1本に沿ったものである。
【0027】
この実施形態にかかる連接ケーブルでは、連接部14を交互に設けてあることにより、光ファイバコード13を束ねる際には、容易に密着させることができる。図6は、その密着させた際の断面形状を示す。中央の連接部14aを曲げの外側に、両端の連接部14bを曲げの内側となるようにして、一対の光ファイバコード13同士を隣り合わせに密着させている。この際、隣り合わせになった連接部14bは必要に応じて接着剤や両面テープなどで貼り合わせても構わない。この形状では、図7に示すように、束ねた連接ケーブル10を図6の左右方向、すなわち、元の扁平状部の平面方向に曲げる際に、内側となる連接部14bと外側となる連接部14bとの曲げの曲率半径の差をほぼ0にすることができ、外側が伸び、内側を縮めようとする力による負荷が小さくなり、左右方向への曲げは容易にできる。このとき、中央の連接部14aも束の左右方向中央に位置するため、この連接部14aにかかる歪みも最小限に抑えることができる。
【0028】
逆に、この連接ケーブルを図6における上下方向に曲げようとする場合には、図6のような束から図2のような扁平形状に戻すことによって、曲げにより生じる歪みを最小限に留めることができる。このときの曲げ方を図8に示す。扁平形状部と同一平面から立ち上がる場合には、それぞれの連接部14a、14bと光ファイバコード13a,13bとにかかる負荷はほぼ同一であり、図8のように曲げることは容易にできる。
【0029】
一方、この連接ケーブル10の光ファイバコード13を束ねる場合には、図3のように中央の連接部14aを外側に配する所謂「外曲げ」とは逆に、図9のように中央の連接部14aを内側に配する所謂「内曲げ」で纏めることもできる。ただし、この束ね方をすると、連接ケーブル10を左右方向に曲げたときに、左右の両端に配されるそれぞれの連接部14bについて、内側に位置する連接部と外側に位置する連接部とで、かかる力の差が大きいため、ほとんどの場合は「外曲げ」で収容することが好ましい。
【0030】
この「外曲げ」であると、束ねた連接ケーブルの断面は、奥行きの深い略コの字型になる。この深さを利用して、二本の連接ケーブル10について互いにコの字部分を噛み合わせることで、その占有する外周径を従来の連接ケーブルよりも小さくすることができる。このように複数の連接ケーブル10を、複数本まとめてチューブ19で束ねた際の断面図を図10に示す。
【0031】
具体的には、チューブ16への収容にあたり、第一の実施形態にかかる連接ケーブル10は、図18,19に示す従来の連接ケーブル1と比べて、連接ケーブルが1本では必要とするチューブ16の内径は123%となり、すなわち、23%増加する。しかし、連接ケーブルが2本同士の組み合わせで比較すると、第一の実施形態にかかる連接ケーブル10が必要とするチューブ16(19)の内径は、従来の連接ケーブル1の場合の88%、4本同士の組み合わせでは、従来の連接ケーブル1の場合の85%にまで小さくなる。すなわち、本数が増えるほど、この第一の実施形態にかかる連接ケーブル10のように、接線に沿い、不連続な箇所を有するものの方が、従来のように中心に連接部を設けたものよりも連接部の無い側が大きく開くので、深く噛み合わせることができ、必要とするチューブの内径を小さくすることができる。
【0032】
図10のように複数本の連接ケーブル10を束ねる場合、チューブ19は断面が楕円状であると、断面円状である場合よりも占有スペースを小さくすることができる場合がある。また、一本の連接ケーブル10を曲げて収容する場合でも、例えば図6のように両端の連接部14b同士を接着させた場合には、断面楕円形状の方が占有スペースを小さくできる場合がある。
【0033】
上記の連接ケーブル10は、全体を予めチューブ16に収めておいてもよいし、必要に応じて一部をチューブ16に収容してもよい。予めチューブ16に収めておき、必要に応じてチューブ16を破いて連接ケーブル10を露出させる方が、機器内への取り付けが簡便にできる。また、この発明にかかる連接ケーブルの連接部は上記の条件を満たすものであるため、チューブ16から開放されると、ほとんど曲げ癖を残すことなく、扁平形状に戻る。一方で、扁平形状のまま取り回すべき部分が長い場合などには、連接ケーブル10を扁平形状のまま配線し、必要な曲げ部分のみチューブに収容して曲げ形状を作るとよい。また、特にまとめるべき部分が短い場合は、部分的に収容するチューブの代わりに、スパイラル状の結束具や抜け止めを有する結束具などで光ファイバコード13を束ねてもよい。
【0034】
チューブ16の内径は、少なくとも連接部で変形させた連接ケーブル10が収容できるものである必要がある。一方で、内径が大きすぎると光ファイバ素線11を束ねることができず、チューブ16の内部で連接ケーブル10が開放状態に近くなってしまう。この第一の実施形態のように四芯からなる場合、内径は中心間距離Lの2倍以下であると好ましい。
【0035】
また、チューブ16に覆われた部分(図1の奥側に相当する。)と、断面扁平状の開放状態とした部分(図1の手前側に相当する。)との間の変形部17は、樹脂テープなどで覆っておくとよい。
【0036】
上記連接部14を形成する方法としては、このシース12と連接部14とを同一の樹脂で一体となるように押出成形しても良いし、一旦光ファイバ素線を被覆専用の樹脂で被覆してシース12を形成させた後、別途連接部14を形成してもよい。個別に形成させると製造の工程が増えるという欠点があるが、シース12と連接部14とがそれぞれに適した樹脂から構成されるため、物性上より優れた連接ケーブル10となる。
【0037】
上記連接部14の厚みTは、シース12の外径dの2分の1以下であることが必要である。それより厚いと光ファイバ素線11を束ねるために連接部14を適切な角度にまで曲げることが困難になってしまうからである。一方、厚みTは少なくとも0.1mm以上である必要がある。0.1mm未満では薄すぎて強度に問題があり、破れが生じる可能性があるためである。
【0038】
また、上記連接部14の長さ(中心間距離L)は、シース12の外径dの1倍以上3倍以下である必要があり、1.5倍以上であると好ましい。1倍未満であると遊びが少なすぎて、光ファイバ素線11を束ねるために連接部14を十分に曲げることが困難となる可能性が高くなる。一方で、3倍を超えると無駄に光ファイバ素線11間が開きすぎてしまい、連接部14を曲げたときに邪魔となり、チューブ16への収容が難しくなったり、無駄にチューブ16の径を大きくせざるを得なくなり、かえって機器内部での取り回しが困難になってしまう。
【0039】
なお、個々の中心間距離Lは等ピッチであると好ましいが、上記の値の範囲であれば異なっていてもよい。
【0040】
また、個々の光ファイバ素線11は同一のものであると好ましいが、必ずしも同一でなくてもよい。光ファイバ素線11の径が異なる場合、上記の外径dを基準としたサイズは、最大の径を有する光ファイバコード13の外径dを基準にするとよい。
【0041】
この発明で上記の寸法からなる連接部14を形成させる樹脂は、デュロメーターD硬さが55以下であると好ましい。単純に被覆に用いる樹脂をそのまま転用するのではなく、この条件を満たす樹脂を用いることによって、形成された連接部は曲げ癖が付きにくく、個々の光ファイバコード13を束ねていたとしても、開放により速やかに扁平形状に戻すことができるようになる。
【0042】
また、上記連接部14を形成させる樹脂は、上記のデュロメーターD硬さの条件に加えて、190℃におけるメルトフローレートが10g/10min以上、100g/10min以下である条件を満たすものであると好ましい。メルトフローレートの値がこの条件を満たすことで、上記のサイズの条件下における成形性がよくなり、かつ、光ファイバの光損失の増加を避けることができる。
【0043】
上記樹脂の具体的な曲げ癖の付きにくさとしては、厚さ1mmのシートとしたときに、内径25mmφの筒に60分保持し、解放後60分経過後に扁平形状へ戻りつつあるシートの曲率半径が80mm以上となるものであれば好ましい。なお、この曲率半径は大きいほど好ましく、無限大、すなわち完全な平面に戻るのが最も好ましい。
【0044】
このような値を満たす樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂や、低密度ポリエチレン(LDPE)若しくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又はそれらとその他の樹脂との混合樹脂が挙げられる。LDPE又はLLDPEと混合する樹脂としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)や塩素化ポリエチレン(CPE)が挙げられる。特に、LDPEやLLDPEに適切な樹脂を混合することで、上記の樹脂に求められる物性を満足しやすいものとなる。
【0045】
具体的な混合樹脂の例としては、LLDPEとEPDMとの重量比90:10〜40:60の混合樹脂、LLDPEとCPEとの重量比90:10〜40:60の混合樹脂が挙げられる。LDPEやLLDPEの混合樹脂の中でも特にこれら二つの混合樹脂は被覆除去性がよいため、連接部及びシースを剥がして光ファイバ素線を露出させ、多芯一括コネクタに繋げる際の取り付け作業性がよいという効果がある。
【0046】
次に、第二の実施形態にかかる連接ケーブル20について、図11に示す断面図を用いて説明する。この実施形態は、6本の光ファイバコード21(21a〜21c×2)を平行に並べて、連接部22(22a、22b×2、22c×2)で繋げたものである。個々の光ファイバコード21及び連接部22の構成は、上記第一の実施形態における光ファイバコード13及び連接部14と同様であってよい。
【0047】
この第二の実施形態では、中央二つの光ファイバコード21a同士を繋ぐ連接部22aと、それらの光ファイバコード21aから両隣の光ファイバコード21bへ伸びる連接部22bとが不連続になるよう交互に設けてある。また、その光ファイバコード21bから伸びる連接部22bと22cは連続している。すなわち、図2に示す第一の実施形態から、両端の連接部を延長してその先にそれぞれ光ファイバコードを設けた形状である。連接部が不連続となる箇所が二箇所あり、幅方向に線対称な形状となっている。この連接ケーブル20の連接部22を曲げるときは、中央の連接部22aを外側に向くようにして曲げると、全体にかかる負荷が比較的小さくなる。この連接ケーブル20を断面楕円状のチューブ23に収容した際の断面形状を図12に示す。第一の実施形態と同様、この状態では図中の左右方向へ曲げたとしても内側となる連接部と外側となる連接部との間の歪みは小さくて済む。
【0048】
なお、チューブに収容するのではなく、連接部22b、22c同士を貼り合わせることでも、同様に左右方向への曲げは容易になる。
【0049】
次に、第三の実施形態にかかる連接ケーブル20’について、図13に示す断面図を用いて説明する。これは、第二の実施形態と同様に、6本の光ファイバコードを平行に並べたものであるが、両端の光ファイバコード21c以外の四つの光ファイバコード21a,21a,21b,21bから伸びる連接部は、全て交互に伸びており、不連続なものとなっている。交互に折り畳むことができるため、この連接ケーブル20’を単独で折り畳む場合には占有スペースを小さくすることができるが、外側に回る連接部が増えるため、曲げる際の歪みは第二の実施形態よりもやや大きくなってしまう。
【0050】
さらに、第四の実施形態にかかる連接ケーブル25について、図14に示す断面図を用いて説明する。これは、5本の光ファイバコード26を平行に並べたものである。中央の光ファイバコード26aと、その両隣の光ファイバコード26b、26bとを繋ぐ連接部27a,27aは連続している。そして、それぞれの光ファイバコード26b、26bで連接部は不連続となっており、両端の光ファイバコード26c、26cに繋がる連接部27b、27bは、中央の二つの連接部27a,27aと交互に形成されている。
【0051】
この実施形態にかかる連接ケーブル25を扁平状部と同一平面方向へ曲げようとする場合、両端の連接部27b、27b同士を接着させようとしても、中央の光ファイバコード26aが邪魔になるので困難である。このため、図15に示すように、チューブ28に収容して用いることが好ましい。チューブ28に収容するにあたっては、両端の連接部27b、27bを内側になるように曲げるのが好ましい。これらが中央に集まることにより、図15の左右方向へ曲げる分には、連接部にかかる歪みが小さくなるからである。
【0052】
さらにまた、第五の実施形態にかかる連接ケーブル25’について図16に示す断面図により説明する。これは、5本の光ファイバコード26を平行に並べたものであるが、第一の実施形態にかかる連接ケーブル10の両端の上記光ファイバコードのうちの一つから、連続する連接部を設けた形状である。幅方向に左右非対称であり、これをチューブに収容しようとすると、左右のバランスが崩れ、曲げる際の歪みが大きくなってしまうため、第四の実施形態よりも曲げについては不利になってしまうが、連接部が不連続となる光ファイバコード26e及び光ファイバコード26fとが隣接しているために、チューブへの収容にあたっては、第四の実施形態よりもコンパクトにすることができるという利点を有する。また、チューブに収容する代わりに、第一の実施形態の図6と同様に、連設部27cと連設部27eとを貼り合わせることもできる。
【0053】
さらにまた、第六の実施形態にかかる連接ケーブル25’’について図17に示す断面図により説明する。これも5本の光ファイバコード26を平行に並べたものであるが、全ての連接部が交互になるように形成したものである。すなわち、中心となる光ファイバコード26iを中心にして、その両隣の光ファイバコード26j、両端の光ファイバコード26kと、それぞれを繋ぐ連接部とが点対称の位置関係にある。全ての連接部が交互に設けられているため、連接部を曲げてチューブに収容する際には第五の実施形態よりもさらにコンパクトにすることができる。また、第一の実施形態の図6と同様に、連設部27hと連設部27gとを貼り合わせることもできる。一方で、曲げについてはどのように曲げても歪みが大きくなる連接部があるため、曲げについては第四、第五の実施形態よりもやや不利となる。
【0054】
すなわち、不連続となる箇所は、上記の連接ケーブル全体で二箇所であると好ましく、その二箇所は幅方向に線対称の位置であるとよい。また、上記光ファイバコードが6本以上の場合、連接部が不連続となる光ファイバコードは隣接しているか、或いは間に挟む上記光ファイバコードが1つであると好ましい。ただしこの条件は上記光ファイバコードの数が8本以下の場合であり、本数がそれを超える場合には、不連続となる箇所が2箇所だけではその不連続となる箇所のみで曲げたとしても、全体が長くなりすぎてしまうため、さらに不連続となる箇所を増やすことが望ましい。
【実施例】
【0055】
以下、この発明を具体的に実施した例について説明する。図2及び3に示す、第一の実施形態にかかる連接ケーブル(実施例)と、図18及び図19に示す従来の連接ケーブル(比較例)について、曲げ癖の付きにくさを検証した。いずれも被覆及び連接部はポリ塩化ビニル樹脂により製造した
【0056】
それぞれの例について、連接部の中心間距離Lの合計が50mm、厚さ1mmの連接部を有し、シースの外径dが5.5mmである連接ケーブルを製造した。連接ケーブル全体を25mmφとなるように曲げた状態で60分保持し、解放後、60分経過後の中央の連接部の曲率半径(mm)を測定した。ただし、実施例については、上記の外曲げと内曲げの両方を測定した。
【0057】
実施例の内曲げは124mm、外曲げは145mmとなり、外曲げの方が、曲げ癖が付きにくいことがわかった。一方、比較例では80mmとなり、実施例よりも曲げ癖が付きやすく、取り回しが不便であることが示された。
【符号の説明】
【0058】
1 連接ケーブル
2 光ファイバ素線
3 シース
4 光ファイバコード
5 連接部
6 チューブ
10 連接ケーブル
11 光ファイバ素線
12 シース
13 光ファイバコード
13a (内側の)光ファイバコード
13b (外側の)光ファイバコード
14 連接部
14a (中央の)連接部
14b (両端の)連接部
16 チューブ
17 変形部
19 (断面楕円状)チューブ
20、20’ (第二、第三の)連接ケーブル
21(21a〜21c) 光ファイバコード
22(22a〜22c) 連接部
23 チューブ
25、25’、25’’ (第四、第五、第六の)連接ケーブル
26(26a〜26k) 光ファイバコード
27(27a〜27h) 連設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本以上のプラスチック製の光ファイバ素線が間隔を空けて平行に配置され、それら各々の光ファイバ素線は樹脂製のシースで被覆されており、かつ、その光ファイバ素線とシースからなる光ファイバコード同士を、その光ファイバコードに沿って接続する樹脂製で可撓性を有する連接部を設けた連接ケーブルであって、
個々の上記連接部はそれぞれの隣り合う上記光ファイバコードの外周同士を繋ぐ接線のうち、交差しない接線のうちの一本に沿って設け、
両端以外の少なくとも一つの上記光ファイバコードにおいて、それに繋がる二つの連接部が不連続となるよう交互に設けたことを特徴とする連接ケーブル。
【請求項2】
上記光ファイバコードが4本以上からなり、繋がる二つの連接部が不連続となる光ファイバコードがそのうちの2本であり、断面が連接ケーブルの幅方向に線対称となる請求項1に記載の連接ケーブル。
【請求項3】
上記連接部の厚みを上記光ファイバコードの外径以下とし、その連接部を形成する樹脂が、デュロメーターD硬さが55以下の樹脂である請求項1又は2に記載の連接ケーブル。
【請求項4】
上記連接部を形成する樹脂の190℃におけるメルトフローレートが10g/10min以上、100g/10min以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の連接ケーブル。
【請求項5】
上記連接部を形成する樹脂がポリ塩化ビニル樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の連接ケーブル。
【請求項6】
上記連接部を形成する樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと、エチレン−プロピレン−ジエンゴムとを重量比90:10〜40:60で混合した混合樹脂である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の連接ケーブル。
【請求項7】
上記連接部を形成する樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと、塩素化ポリエチレンとを重量比90:10〜40:60で混合した混合樹脂である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の連接ケーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の連接ケーブルの長さ方向の少なくとも一部について、少なくとも両端に位置する二つの連接部の上記接線にあたる面同士を貼り合わせたケーブル。
【請求項9】
請求項8に記載の連接ケーブルを用い、少なくとも一部に上記貼り合わせをしていない扁平状部を配置し、前記扁平状部と同一平面方向への曲がり部分には、上記の連接部の面同士を貼り合わせた部分を配置する機器内配線方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の連接ケーブルの長さ方向の少なくとも一部を、断面円形状又は断面楕円状のチューブに収容したケーブル。
【請求項11】
請求項10に記載のケーブルを用い、少なくとも上記チューブに覆われていない扁平状部分を配置し、前記扁平状部と同一平面方向への曲がり部分には上記チューブにより断面円形状又は断面楕円状とした部分を配置する機器内配線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−81089(P2011−81089A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231807(P2009−231807)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】