説明

プラスチック多層構造体

酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及びシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有する熱可塑性樹脂層(C)を含有するプラスチック多層構造体、及び該プラスチック多層構造体で形成されてなる飲料などの食品及び医薬品等のボトルなどの包装材を提供する。このプラスチック多層構造体は、酸素バリヤー性を有し、湿度の高い雰囲気下で用いても該構造体から出てくる酸化分解生成物の量を極めて少なくすることができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容物、特に飲料などの食品、及び医薬品等の包装材に用いるのに好適な酸素吸収性プラスチック多層構造体に関する。
(発明の背景)
近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。
プラスチック容器は、金属容器やガラス容器と比べると、酸素バリヤー性が劣るため、容器内に充填された内容物の変質や、フレーバーの低下が問題になる。
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を多層構造とし、少なくとも一層を酸素バリヤー性に優れている樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層を設けている。また、容器内部に残存する酸素及び容器外部から侵入してくる酸素を除去するために、酸素吸収層を設けた容器がある。酸素吸収層に用いられる酸素吸収剤(脱酸素剤)には、例えば、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いるもの(特許文献1〜3等)がある。
エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いる方法は、エチレン性不飽和炭化水素自体が酸素を吸収して酸素バリヤー性を達成するものであるが、酸素を吸収する際に低分子量の分解生成物が発生し、これが内容物の味覚や香りに影響するとの問題がある。このような問題を解決するために、分解生成物に着目して、酸−、アルコール−又はアルデヒド−反応性の中和剤、具体的には無機塩基又は有機アミンを添加することか開示されている(特許文献4)。
しかしながら、従来公知の酸化バリヤー性を有するプラスチック多層構造体形成された容器では、湿度の高い雰囲気下で用いると該構造体から出てくる酸化分解生成物の量が多くなって、内容物の味などに大きな影響がでるとの問題があることがわかった。特に夏場における高温多湿下での長期保管や、水分を含む内容物、特に液状の食品や医薬品などを収容した場合に問題があることがわかった。
【0002】
【特許文献1】特開2001−39475号公報
【特許文献2】特開平5−115776号公報
【特許文献3】特表平8−502306号公報
【特許文献4】特表2000−506087号公報
【発明の開示】
【0003】
本発明は、酸化バリヤー性を有するプラスチック多層構造であって、湿度の高い雰囲気下で用いても該構造体から出てくる酸化分解生成物の量を極めて少なくすることができる酸素吸収性プラスチック多層構造体を提供することを目的とする。
本発明は、又、水分を含む内容物を収容した時に該構造体から出てくる酸化分解生成物の量を極めて少なくすることができ、かつ内容物の味などに影響することが少ない酸素吸収性プラスチック多層構造体を提供することを目的とする。
本発明は、又、該プラスチック多層構造体で形成されてなる容器を提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及び熱可塑性樹脂層(C)を、外側から内側(内容物側)に向かってこの順序での層構成とし、かつ熱可塑性樹脂層(C)中にシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有させると上記課題を解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及びシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有する熱可塑性樹脂層(C)を含有することを特徴とするプラスチック多層構造体を提供する。
本発明は、又、上記プラスチック多層構造体で形成されてなる容器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明のプラスチック多層構造体で用いる酸素バリヤー層(A−1)を構成する酸素バリヤー性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成することができる分子量を有する。一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01dl/g以上、好ましくは、0.05dl/g以上の粘度を有する。
酸素バリヤー性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリデンアジパミド(MXD6)等のポリアミド樹脂、ポリグリコール酸等のポリエステル樹脂等を用いることができる。
酸素バリヤー層(A−1)の厚みは3〜50μmとするのがよい。
本発明の酸素吸収層(B)は、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(b‐1)、樹脂(b‐1)以外の樹脂であって樹脂(b‐1)の酸化のトリガーとなる樹脂(b‐2)、及び遷移金属触媒(b‐3)を含有するのが好ましい。
【0006】
ここで、ポリオレフィン樹脂(b-1)としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティック又はシンジオタクテイクスポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。また、上記樹脂をベースポリマーとし、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体でグラフト変性された酸変性オレフィン系樹脂を用いる事も出来る。好ましくは、分子構造にエチレン構造を有するポリオレフィン樹脂であり、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体等のエチレン系共重合体である。特に好ましくは、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0007】
酸化のトリガーとなる樹脂(b‐2)としては、例えば主鎖又は側鎖に脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有する樹脂、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂及び主鎖に活性メチレン基を有する樹脂を挙げることができる。
これらは、樹脂(b‐1)中に単独で含有されていてもよいし、二種以上の組合せで含有されていてもよい。
主鎖又は側鎖に脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有する樹脂としては、鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が挙げられる。
このような単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン等が挙げられる。
【0008】
具体的な重合体としては、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,2−イソプレン、ポリ−1,4−イソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が挙げられる。
また、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂としては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導された単位を含む重合体または共重合体、或いは側鎖にベンゼン環を有する重合体または共重合体が好適に使用される。上記α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。具体的な重合体としては、特にポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体が挙げられる。また、上記側鎖にベンゼン環を有する単量体としては、スチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等のアルケニルベンゼンが挙げられる。具体的な重合体としては、ポリスチレン、スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体又はスチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
【0009】
また、主鎖に活性メチレン基を有する樹脂としては、主鎖に電子吸引性の基、特にカルボニル基とこれに隣接するメチレン基とを有する樹脂であり、具体的には、一酸化炭素とオレフィンとの共重合体、特に一酸化炭素−エチレン共重合体等が挙げられる。
樹脂(b-2)としては、側鎖にベンゼン環を有するポリスチレンまたはスチレン共重合体が、樹脂(b-1)の酸化のトリガーとしての機能の点から特に好ましい。
スチレン共重合体においては、スチレン部分を10重量%以上含有するものがラジカル発生効率の点で好ましく、スチレン部分を15〜50重量%含有するものがより好ましい。
また、スチレン共重合体がブロック共重合体である場合には、樹脂(b-1)に対する相溶性、分散性に優れるという利点を有する。
さらに、スチレン共重合体は、樹脂組成物の機械的特性の点で、分子末端部分にポリスチレンブロックを有するブロック共重合体であるのが好ましく、イソプレン単位を含むブロック共重合体であるのが樹脂(b-1)に対するトリガー効果の点で好ましい。
【0010】
すなわち、樹脂(b‐2)としては、スチレン−イソプレン共重合体等のスチレン共重合体が好ましく、特に、スチレン−イソプレン共重合体の一種であるスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体が好ましい。さらに、水添スチレン−ジエン共重合体が好ましい。これはスチレン−ジエン共重合体を水素化することによって得ることができる。具体的には、水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0011】
樹脂(b-2)の分子量については特に制限はないが、樹脂(b-1)への分散性の点から数平均分子量が1000〜500000の範囲であるのが好ましく、より好ましくは10000〜250000の範囲である。
樹脂(b-1)は、マトリックスの形成が可能であり、かつ酸化により多量の酸素を吸収することが可能であるように多割合で含有されるのが好ましく、樹脂(b-1)の含有量は90〜99重量%の範囲がより好ましく、92.5〜97.5重量%の範囲がさらに好ましい。また、樹脂(b-2)は、樹脂(b-1)のマトリックス中に分散した状態で存在することが可能であり、かつ樹脂(b-1)の酸化のトリガーとして機能を十分に発揮することが可能であるように少割合で含有されるのが好ましく、フィルム、シート或いはカップ、トレイ、ボトル、チューブとする際に成形性を考慮すると、樹脂(b-2)の含有量は1.0〜10.0重量%の範囲が好ましく、2.5〜7.5重量%の範囲がさらに好ましい。樹脂(b-2)が樹脂(b-1)のマトリックス中に分散した状態で存在する事は、電子顕微鏡を用いて簡便に観察する事ができる。
【0012】
本発明に用いる遷移金属触媒(b‐3)としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分であり、特に、コバルト成分は、酸素吸収速度が大きいため好ましい。
遷移金属触媒(b‐3)は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等の硫黄オキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0013】
有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられ、中でもカルボン酸塩が好ましく、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
【0014】
遷移金属の錯体としては、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。本発明において、遷移金属触媒(b‐3)は、単独で用いることも、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
上記遷移金属触媒(b‐3)は、少なくとも樹脂(b‐1)中に存在するのが好ましく、樹脂(b‐1)の酸化反応の進行を促進し、効率良く酸素を吸収することができる。より好ましくは、遷移金属触媒(b‐3)は樹脂(b‐1)及び樹脂(b‐2)中に存在させて、樹脂(b‐2)のトリガー機能を促進させることができる。また、遷移金属触媒(b‐3)の配合量は、使用する遷移金属触媒の特性に応じて樹脂(b‐1)の酸化反応を進行できる量であれば良く、樹脂(b‐1)の酸化反応を十分に促進し、流動特性の悪化による成形性低下の防止の点から、一般的には10〜3000ppmの範囲が好ましく、50〜1000ppmの範囲がより好ましい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物における樹脂(b‐2)の上記トリガー機能の作用機構に関しては、その全てが解明されているわけではないが、その1つとして本発明者らの検討により以下のような機構が推察されるが、上記トリガー機能の作用機構はこれに限定されるものではない。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、始めに遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐2)の水素の引き抜きが起こり、ラジカルが発生し、続いて、このラジカルによる攻撃と遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐1)の水素の引き抜きが起こり、樹脂(b‐1)にもラジカルが発生し、このようにして生じたラジカルの存在下で、酸素が樹脂(b‐1)と接触したときに樹脂(b‐1)の初期酸化が起こると考えられる。以降、樹脂(b‐1)の酸化反応は遷移金属触媒の作用により自動酸化の理論に従って連鎖的に進行し、樹脂(b‐1)自体が酸素吸収剤として機能すると考えられる。
このトリガー効果の発現において、ベンジル基の存在が極めて重要であり、ベンジル基を含むスチレン系共重合体においては、ベンジル炭素のC−H結合解離エネルギーが他のC−H結合より低いことからベンジルラジカルが最初に発生し、上記トリガー作用を引き起こすと推察される。
【0016】
本発明の酸素吸収層(B)は、例えば、以下の方法により形成することができる。上記成分(b‐1)〜(b‐3)の混合については、この三成分を別個に混合してもよく、また、上記三成分の内、二成分を予め混合し、これと残りの成分を混合してもよい。例えば、樹脂(b‐1)と樹脂(b‐2)とを予め混合し、これに遷移金属触媒(b‐3)を混合する方法や、樹脂(b‐1)と遷移金属触媒(b‐3)とを予め混合し、これに樹脂(b‐2)を混合する方法、或いは樹脂(b‐2)と遷移金属触媒(b‐3)とを予め混合し、これに樹脂(b‐1)を混合する方法が挙げられる。
樹脂(b‐1)及び/又は樹脂(b‐2)に、遷移金属触媒(b‐3)を混合するには、種々の手段を用いることができる。例えば、遷移金属触媒(b‐3)を樹脂に乾式でブレンドする方法や、遷移金属触媒(b‐3)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下により乾燥する方法等がある。遷移金属触媒(b‐3)が樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うため、遷移金属触媒(b‐3)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合する方法が好ましい。
【0017】
遷移金属触媒(b‐3)を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができる。遷移金属触媒(b-3)の濃度は、5〜90重量%が好ましい。
樹脂(b-1)、樹脂(b-2)及び遷移金属触媒(b-3)を混合するとき、及び混合した組成物を保存するときは、使用前にこの組成物が酸化しないように、非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。即ち、減圧下又は窒素気流中で混合又は保存を行うことが好ましい。
ベント式又は乾燥機付の押出成形機や射出成形機を使用すると、成形工程の前段階で混合及び乾燥を行うことができ、遷移金属触媒が配合された樹脂の保存に格別の配慮が不要になるため好ましい。
また、遷移金属触媒を比較的高い濃度で含有する樹脂のマスターバッチを調製し、これを未配合の樹脂と乾式ブレンドして調製することもできる。
【0018】
酸素吸収層(B)には、ラジカル開始剤や光増感剤等の種々の添加剤を配合することができる。これらのうち、後述するシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有させるのが好ましい。これらは、酸素吸収層(B)中に、0.5〜5重量%とするのが好ましく、特に1〜3重量%であるのが好ましい。
酸素吸収層(B)の厚みは5〜50μmとするのがよい。
また、酸素吸収層Bとして、ガスバリヤー性樹脂と炭素−炭素二重結合を有する樹脂と遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物を用いることもできる。この酸素吸収性樹脂組成物に用いるガスバリヤー性樹脂としては、酸素バリヤー層(A―1)において、記載したものが好適に用いられる。炭素−炭素二重結合を有する樹脂については、樹脂(b-2)において記載した鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に用いられる。また、遷移金属触媒としては、遷移金属触媒(b-3)に記載した化合物が好適に用いられる。
【0019】
本発明で用いるハイシリカ型ゼオライトとしては、シリカ/アルミナ比(モル比)が、80以上のものが好ましく、より好ましくは90以上、最も好ましくは100〜700である。上記ハイシリカゼオライトは、実施例において述べるように、本発明の酸化副生成物の捕捉に対して極めて有効であり、更にシリカ/アルミナ比が低いゼオライトが吸着性を低下させてしまうような高湿度条件において逆に酸化副生成物の捕捉性能が向上するという性質を有しており、水分を含む内容品を包装する包装体に使用した場合、特に有効である。
このようなハイシリカ型ゼオライトとしては、ZSM−5型ゼオライト、ZSM−11型ゼオライト、ZSM−12型ゼオライトやY型ゼオライトなどが好ましい。交換カチオンとしては、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の一種又は2種以上の混合物であるのがよく、特にナトリウムであるのが好ましい。交換カチオンの実質的に100%が上記カチオンとなっているのが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で水素カチオンを有するゼオライトを併用しても良い。本発明で用いるゼオライトとしては、平均粒径が0.5〜10μmであるのが好ましい。本発明で用いるゼオライトは水沢化学工業や東ソー株式会社などから容易入手できる。
本発明では上記ハイシリカ型ゼオライトをそのまま用いることができるが、水で洗浄して不純物を洗い流したものを熱可塑性樹脂に混合し、熱可塑性樹脂層(C)を形成すると、未洗浄のものを用いる場合に比べて、酸素吸収性能が向上するので好ましい。
上記ハイシリカ型ゼオライトの熱可塑性樹脂層(C)への含有量は、0.1〜5質量%とするのが好ましく、特に0.5〜2質量%であるのが好ましい。
【0020】
本発明では、熱可塑性樹脂層(C)を形成するために用いる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を主体とする、或いは他の熱可塑性樹脂を含有するシート、ボトル等の容器の成形工程で発生するスクラップ等を粉砕したリグラインド樹脂が好ましく、本発明の優れた効果が顕著である。
リグラインド樹脂は、その履歴から複数回に亘って熱履歴を受けていることが一般的であり、熱分解などによる酸化分解物が発生しやすい樹脂である。特に、上記酸素吸収層を有する容器のスクラップを含有する場合、そこから発生する分解成分は、異臭や異味の原因に繋がることもある。しかし、一方で成形工程中に発生したスクラップ等を容器に還元することは、廃棄物を削減するという環境に配慮した行為であり、スクラップの有効利用は極めて重要な課題である。リグラインド樹脂を含有する熱可塑性樹脂層(C)に特定のゼオライトを配合することで、異臭や異味の発生を抑え、しかも環境への配慮にも対応できるのであり、本発明の効果がより顕著に発現するのである。
この場合、熱可塑性樹脂層(C)形成用樹脂として、リグラインド樹脂のみを使用することもできるが、50質量%以下の量でバージン樹脂を混合して使用するのが好ましい。
熱可塑性樹脂層(C)の厚みは150〜1500μmとするのがよい。
【0021】
また、本発明で用いる熱可塑性樹脂層(C)を形成するために用いる他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂などがあげられる。このうちポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はこれらの共重合ポリエステル、さらに、これらのブレンド物等が挙げられる。
酸素バリヤー層(A−1)の外層側にポリオレフィン系樹脂層(D−1)を設けることができる。ここでポリオレフィン系樹脂層(D−1)に使用するポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂があげられる。
ポリオレフィン系樹脂層(D−1)の厚みは20〜500μmとするのがよい。
熱可塑性樹脂層(C)の内層側に、第2の酸素バリヤー層(A−2)を設けることができる。ここで、第2の酸素バリヤー層(A−2)としては、酸素バリヤー層(A−1)について説明したのと同様の酸素バリヤー性樹脂があげられる。
第2の酸素バリヤー層(A−2)の厚みは3〜50μmとするのがよい。
【0022】
さらに、本発明では、第2の酸素バリヤー層の内層側にポリオレフィン系樹脂層(D−2)を設けることができる。ここでポリオレフィン系樹脂層(D−2)に使用するポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂層(D−1)の項で説明したのと同様のポリオレフィン系樹脂があげられる。
ポリオレフィン系樹脂層(D−2)の厚みは50〜1000μmとするのがよい。
本発明ではさらに、酸素バリヤー層(B)と熱可塑性樹脂層(C)の間に中間層を設けることができる。ここで中間層として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂等の接着剤樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリヤー性樹脂で構成された層を設けると酸素吸収性能が向上する。この際、中間層としては、2〜30μm程度の厚みの層とするのが好ましい。
本発明のプラスチック多層構造体の1態様の層構成例を図1に示す
本発明の積層体を構成する各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。この場合、酸素バリヤー層(A−1)と酸素吸収層(B)の間、熱可塑性樹脂層(C)と第2の酸素バリヤー層(A−2)の間、第2の酸素バリヤー層(A−2)とポリオレフィン系樹脂層(D−2)の間、酸素バリヤー層(A)とポリオレフィン系樹脂層(D−1)の間、に接着剤樹脂を介在させるのが好ましい。
また、酸素吸収層(B)がガスバリヤー性樹脂と炭素−炭素二重結合と遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる場合には、酸素吸収層(B)と熱可塑性樹脂層(C)との間に接着剤樹脂を介在させるのが好ましい。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、好ましくは、10〜500meq/100g樹脂、の濃度で含有する重合体が挙げられる。
【0023】
接着剤樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等があり、これらを二種以上の組み合わせたものでもよい。
これらの接着剤樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。また、予め形成されたガスバリヤー性樹脂フィルムと耐湿性樹脂フィルムとの接着積層には、イソシアネート系又はエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
本発明のプラスチック多層構造体を構成する各層には、各種添加剤、例えば、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤などを必要に応じて、それ自体公知の処方に従って添加することができる。
【0024】
本発明のプラスチック多層構造体の製造には、例えば、それ自体公知の共押出成形法を用いることができる。例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで積層体が成形できる。
これにより、フィルム、シート、ボトル、カップ、キャップ、チューブ形成用パリソン又はパイプ、ボトル又はチューブ成形用プリフォーム等の積層体が成形できる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができる。例えば、三方又は四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。
パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルが成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
さらに、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
【0025】
多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により多層射出成形体を製造することができる。
さらに、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
本発明のプラスチック多層構造体は、酸素を有効に遮断するので、包装材又は包装容器に好ましく使用できる。この積層体は長期間酸素を吸収できるので、内容物の香味低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に有用である。
【0026】
本発明のプラスチック多層構造体でボトルやパウチなどの各種容器を形成し、固形状物や液状物といった内容物を収容し、高温多湿条件下(例えば、温度30℃で相対湿度80%)で保存しても、従来の酸素バリヤー樹脂製容器に入れて保管した場合に比べて、内容物の味覚や香りが新鮮なまま保持できるとの利点がある。特に、内容物が水分を含有する液状物、飲料や経口投与用医薬の場合に効果的である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
参考例、実施例及び比較例に使用したゼオライトの特徴を表1に示す。
【表1】

【0028】
参考例1[ゼオライトの吸着性能評価])
本発明に用いるゼオライトの吸着性能を評価するため、以下の分析を行った。
水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(タフテック P2000:旭化成(株)製、酸化のトリガーとして作用する)と低密度ポリエチレン(JB221R:日本ポリエチレン(株)製、密度0.92、MI0.5)の粉状混合物(重量比5/95)からなる酸素吸収材1g(試験1)、この酸素吸収材1gとゼオライトZSM−5−100の粉末を20mg(試験2)、及びこの酸素吸収材1gとゼオライトHSZ−390HUAの粉末を20mg(試験3)をそれぞれ内容積85ccの密封容器中に封入して酸化させた場合の容器ヘッドスペースガスをパージ&トラップ式(Tekmar4000)のGC−MS(Agilent社製、カラムDB-1)で分析した。結果を図2に示す。図中、図2a、2b及び2cは、それぞれ、試験1、2及び3の結果を示す。
【0029】
図2から明らかなように、ゼオライトを封入することによって、ヘッドスペースガス中のアルデヒド、ケトン、炭化水素などが激減していることがわかる。特に、炭素数が4以上の水溶性の低い化合物は、臭気ばかりでなく味覚にも悪影響する物質であるが、これらの悪影響物質が特に効率良くゼオライトにより減少していることが分る。
次に、ゼオライトZSM−5−100とHSZ−390HUAについて、酸化副生成物のモデル物質である数種類のアルデヒド、ケトン、アルコールに対する吸着性能を、以下の方法で調べた。
湿度30%RH以下の環境中で、ゼオライト粉末0.5〜2.0mgを内容量22mlのヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)用のバイアルに入れてバイアル内を窒素置換した。吸着分子として炭素数が4以上のケトン、アルデヒド、アルコール類を用いて、これらの1wt%メタノール溶液又はアセトン溶液5〜10μlをバイアルにそれぞれ封入した。このバイアルを30℃で保管して1日後にGCの測定を行い、このときの測定値とブランク値との差から揮発性物質の吸着量を算出した。
また、調湿用としてガラスインサートに蒸留水0.15mlを入れたバイアルで同様の評価を行い、湿度100%RHでのゼオライトの吸着性能も同様に評価した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2より、本発明に用いるシリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトは、ケトン、アルデヒド、アルコール類のいずれに対しても優れた捕捉性能があることが分る。
また、表2には、これらのゼオライトは、通常のゼオライトや多孔質シリカが化学物質に対する捕捉能力が低下するような高湿度条件の方が乾燥条件より、化学物質の捕捉性能が向上するという、興味深い事実が示されている。このことは、日本のような湿度の高い環境において、水分を含有する内容品を保管する容器に適用する場合、本発明に用いるシリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトは好適な酸化副生成物捕捉剤として作用することを意味している。
以下に、このようなゼオライトを樹脂に配合し、酸素吸収材層を中間層とした多層容器の例を述べる。
【0032】
実施例1
[ゼオライトマスターバッチの作製]
出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら、粉体フィーダーを用いてゼオライトを低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(JB221R:日本ポリエチレン(株))95重量部に対して5重量部配合し、成形温度200℃でストランドを引き、ゼオライトマスターバッチのペレットを作製した。
【0033】
[酸素吸収材の作製]
LDPE(JB221R:日本ポリエチレン(株))95重量部に、水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(タフテック P2000:旭化成(株))2.5重量部、水添スチレン−ブタジエンラバー(ダイナロン 1320P:JSR(株))2.5重量部、及びステアリン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株))をコバルト換算で90ppm配合し、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収材Aのペレットを作製した。
【0034】
[リグラインド樹脂の作製]
ダイレクトブロー成形機により、LDPE(JB221R:日本ポリエチレン(株))、接着剤(モディックL522:三菱化学(株))、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EP−F101B:(株)クラレ)、前記酸素吸収材を用いて、LDPEを80重量%、接着剤を4重量%、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を6重量%、酸素吸収材を10重量%となるような多層パリソン(外層よりLDPE/接着剤/EVOH/接着剤/酸素吸収材/LDPE/接着剤/EVOH/接着剤/LDPE)を作製し、クラッシャーにより粉砕して、リグラインド樹脂チップを作製した。
また、フレーバー評価のリファレンスボトルに使用するリグラインド樹脂チップは、LDPE(JB221R)を90重量%、接着剤(モディック L522)を4重量%、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を6重量%となるように、多層パリソンを作製した後、このパリソンを粉砕して、リグラインド樹脂チップを得た。
【0035】
[リファレンス(コントロール)ボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機を用いて、(1)外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(10)/リグラインド層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの4種10層ボトル、(2)外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(10)/リグラインド層(45)/LDPE層(30)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの4種7層ボトルをそれぞれ作製した。ここで用いた樹脂は上記と同じである。
作製したボトルの胴部の最薄肉部の総厚みは300μmであった。
尚、リグラインド層形成用樹脂としては、前記リファレンスボトル用リグラインド樹脂チップ50重量部とLDPE50重量部をドライブレンドしたものを使用した。
【0036】
[本実施例に係るボトルの作製]
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部とZSM−5−100のマスターバッチ20重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材Aを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた。
そして、ダイレクトブロー成形機を用いて、(1)外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/酸素吸収材層(10)/リグラインド層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの5種10層ボトルを作製した。
尚、作製したボトルの胴部の最薄肉部の総厚みは300μmであった。
【0037】
[臭気・味覚の評価]
前記作製した多層容器に85〜90℃に加熱した蒸留水500mlを注ぎ、ボトルの開口部にアルミ箔をバリヤー層とする蓋材でヒートシールした。このボトルを22℃−60%RH条件下で6ヶ月経時した後、ボトルの蓋を破り、ボトル内の臭気・味覚を官能試験で評価した。
臭気について、リファレンスとほぼ同等であるときを○、異臭・異味を感じたときを△、強く異臭・異味を感じたときを×とした。
本発明のボトルは、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0038】
実施例2
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部とHSZ−390HUAのマスターバッチ20重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料とした以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0039】
実施例3
LDPE(JB221R:日本ポリエチレン(株))95重量部に、水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(タフテック P2000:旭化成(株))2.5重量部、水添スチレン−ブタジエンラバー(ダイナロン 1320P:JSR(株))2.5重量部、及びステアリン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株))をコバルト換算で90ppm配合し、この出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))のホッパーに投入した。98重量部に対して、2重量部となるようにゼオライト(HSZ−390HUA:東ソー(株))を、粉体フィーダーを用いてサイドフィードし、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収材Bのペレットを作製した。
また、前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部と、HSZ−390HUAのマスターバッチ10重量部及びZSM−5−100のマスターバッチ10重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材CBを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0040】
実施例4
ゼオライトをZSM−5−100(水澤化学工業(株))に代える以外は、実施例3と同様にして酸素吸収材ペレットCを作製した。
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))40重量部とHSZ−390HUAのマスターバッチ10重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材BCを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0041】
実施例5
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部とZSM−5−100のマスターバッチ20重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材Bを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた。
そして、ダイレクトブロー成形機を用いて、外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/酸素吸収材層(10)/リグラインド層(45)/LDPE層(30)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの5種7層形状ボトルを作製した。
尚、作製したボトルの胴部の最薄肉部の総厚みは300μmであった。
このボトルについて、前記4種7層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0042】
実施例6
[酸素吸収材の作製]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株))をコバルト量で350ppm配合し、撹拌乾燥機(ダルトン(株))で予備混練後、ホッパーに投入した。次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、液体フィーダーにより無水マレイン酸変性ポリイソプレン(LIR−403:(株)クラレ)を、ネオデカン酸コバルトを配合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂950重量部に対して50重量部となるようにサイドフィードより混合し、スクリュー回転数100rpmで低真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収材Dのペレットを作製した。
【0043】
[リグラインド樹脂の作製]
ダイレクトブロー成形機により、LDPE(JB221R:日本ポリエチレン(株))、接着剤(モディックL522:三菱化学(株))、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EP−F101B:(株)クラレ)、前記酸素吸収材を用いて、LDPEを84重量%、接着剤を4重量%、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を6重量%、酸素吸収材を6重量%となるような多層パリソン(外層よりLDPE/接着剤/EVOH/酸素吸収材/接着剤/LDPE/接着剤/EVOH/接着剤/LDPE)を作製し、クラッシャーにより粉砕して、リグラインド樹脂チップを作製した。
また、フレーバー評価のリファレンスボトルに使用するリグラインド樹脂チップは、LDPE(JB221R)を84重量%、接着剤(モディック L522)を4重量%、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を12重量%となるように、多層パリソンを作製した後、このパリソンを粉砕して、リグラインド樹脂チップを得た。
【0044】
[リファレンス(コントロール)ボトルの作製]
外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(9)/接着剤層(1)/リグラインド層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの4種10層ボトルを作製した。ここで用いた樹脂は上記と同じである。
作製したボトルの胴部の最薄肉部の総厚みは300μmであった。
尚、リグラインド層形成用樹脂としては、前記リファレンスボトル用リグラインド樹脂チップ50重量部とLDPE50重量部をドライブレンドしたものを使用した。
【0045】
[本実施例に係るボトルの作製]
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部とZSM−5−100のマスターバッチ20重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材Aを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた。
そして、ダイレクトブロー成形機を用いて、(1)外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/酸素吸収材層(6)/接着剤層(1)/リグラインド層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)を有する内容量525ml、重量20gの5種10層ボトルを作製した。
尚、作製したボトルの胴部の最薄肉部の総厚みは300μmであった。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、実施例1に記載の方法により臭気・味覚評価を行った結果、臭気、味覚ともにリファレンスボトルと同等であった。
【0046】
比較例1
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))50重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、異臭、異味を感じた。
【0047】
比較例2
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))30重量部とEX122のマスターバッチ20重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、異臭、異味を感じた。使用したゼオライトのシリカ/アルミナ比が33と本発明の範囲より小さいため、酸化副生成物の捕捉能力が不足しており、異味、異臭を取り除くことはできなかった。
【0048】
比較例3
前記リグラインド樹脂チップ50重量部に対して、LDPE(JB221R:日本ポリオレフィン(株))50重量部をドライブレンドしたものをリグラインド層形成用材料に、また、酸素吸収材Bを酸素吸収材層用の材料にそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製した。
このボトルについて、前記4種10層のリファレンスボトルを比較対照として、臭気・味覚評価を行った結果、比較例1や2に比べると、程度は向上しているものの異臭、異味が感じられた。このように、リグラインド樹脂層にシリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトを配合していない場合には、酸化副生成物に由来する異臭、異味を完全に取り除くことはできなかった。
上述した実施例及び比較例の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のプラスチック多層構造体の1態様の層構成例を示す。
【図2】各種ゼオライトを用いたときの酸化生成物の吸着性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及びシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有する熱可塑性樹脂層(C)を含有することを特徴とするプラスチック多層構造体。
【請求項2】
酸素バリヤー層(A−1)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されてなる請求項1記載のプラスチック多層構造体。
【請求項3】
酸素吸収層(B)が、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(b-1)、樹脂(b-1)以外の樹脂であって樹脂(b-1)の酸化のトリガーとなる樹脂(b-2)、及び遷移金属触媒(b-3)を含有する請求項1又は2記載のプラスチック多層構造体。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂(b-1)が分子構造にエチレン構造を有する熱可塑性樹脂、樹脂(b-2)が水添スチレン−ジエン共重合体である請求項3記載のプラスチック多層構造体。
【請求項5】
酸素吸収層(B)が、ガスバリヤー性樹脂、炭素−炭素二重結合を有する樹脂、及び遷移金属触媒を含有する請求項1又は2記載のプラスチック多層構造体。
【請求項6】
酸素吸収層(B)が、シリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを含有する請求項1〜5のいずれか1項記載のプラスチック多層構造体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂層(C)が、リグラインド樹脂を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載のプラスチック多層構造体。
【請求項8】
酸素バリヤー層(A−1)の外層側にポリオレフィン系樹脂層(D−1)が設けられている請求項1〜7のいずれか1項記載のプラスチック多層構造体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂層(C)の内層側に、第2の酸素バリヤー層(A−2)が設けられている請求項8記載のプラスチック多層構造体。
【請求項10】
酸素バリヤー層(A−2)の内層側にポリオレフィン系樹脂層(D−2)が設けられている請求項9記載のプラスチック多層構造体。
【請求項11】
外側から内側に向かって、ポリオレフィン系樹脂層(D−1)、酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、熱可塑性樹脂層(C)、第2の酸素バリヤー層(A−2)、ポリオレフィン系樹脂層(D−2)の順で層が積層されてなる請求項1記載のプラスチック多層構造体。
【請求項12】
酸素バリヤー層(A−1)と酸素吸収層(B)の間、熱可塑性樹脂層(C)と第2の酸素バリヤー層(A−2)の間、第2の酸素バリヤー層(A−2)とポリオレフィン系樹脂層(D−2)の間、酸素バリヤー層(A)とポリオレフィン系樹脂層(D−1)の間に接着剤樹脂が介在する請求項11記載のプラスチック多層構造体。
【請求項13】
酸素吸収層(B)と熱可塑性樹脂層(C)の間に中間層が設けられている請求項11又は12記載のプラスチック多層構造体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載のプラスチック多層構造体で形成されてなる容器。
【請求項15】
水分を含む食品を収容するための請求項14記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/080076
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510265(P2006−510265)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002713
【国際出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】