説明

プラスチック成形機構

【課題】粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施する回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構を提供する。
【解決手段】成形金型1から取り出された回収成形物3を射出装置4の材料落下口5上方へ直接搬送する搬送手段6と、前記材料落下口5上部に固着した原料送り量調整手段7の上面に配設され搬送された前記回収成形物3を粗砕する粗砕手段8と、前記粗砕手段8で粗砕された前記回収成形物3を前記材料落下口5へ落下させる貫通穴9を有するとともに原料10をその送り量を調整しつつ前記貫通穴9へ搬送して前記回収成形物3及び前記原料10を混合する前記原料送り量調整手段7とを備えた回収成形物3の再利用を行うプラスチック成形機構28。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収して再利用可能な回収成形物を射出装置に供給する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この技術分野においては、例えば特許文献1と特許文献2がある。特許文献1は、成形後の再生材を成形型よりつかみ出し射出装置の再生材投入部まで移動して該投入部で当該再生材を放出する再生材取出装置と、前記再生材投入部において前記取出装置から放出された再生材を射出装置の加熱筒内に送り込む送り込み装置を設けた再生材供給装置付き射出成形機に係るものである。また、特許文献2は、プラスチック成形時に発生するスプール・ランナおよびバリ等を粉砕せしめ、この粉砕物とバージン材とを混合して成形機に供給するプラスチック原料のリサイクル装置において、スプール・ランナ投入口およびバージン材投入口を有し、粉砕機構を内蔵して成形機樹脂投入口の上部に設置されたホッパーと、バージン材をホッパーに供給するバージン材供給装置と、成形されたスプール・ランナ部を金型よりホッパーに移送するスプール・ランナ移送装置とを有するリサイクル装置に係るものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、再生材の破砕を可塑化スクリュにより行うので、必ずしも良好に実施されるとは限らないとともに、破砕された再生材と新規材料との混合が良好に行われないという問題がある。特許文献2の技術は、ホッパに粉砕機構を内臓しているので、スプール・ランナは良好に粉砕されるが、その粉砕材とバージン材はホッパ内で個別に堆積されるのみであるから、それらが成形機樹脂投入口に供給される時点で良好に混合されることはなく、成形材料の可塑化が安定せず成形品も安定しないのである。
【0004】
【特許文献1】特許第2911676号公報
【特許文献2】特開平7−88843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施する回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、成形金型から取り出された回収成形物を射出装置の材料落下口上方へ直接搬送する搬送手段と、前記材料落下口上部に固着した原料送り量調整手段の上面に配設され搬送された前記回収成形物を粗砕する粗砕手段と、前記粗砕手段で粗砕された前記回収成形物を前記材料落下口へ落下させる貫通穴を有するとともに原料をその送り量を調整しつつ前記貫通穴へ搬送して前記回収成形物及び前記原料を混合する前記原料送り量調整手段とを備えた回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構によれば、粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構を示す部分縦断面図である。
【0009】
プラスチック成形機構28は、固定盤2と図示しない可動盤等を備え可動型12及び固定型13からなる成形金型1を型開閉及び圧締する型締装置27と、固定盤2に取付けられた固定型13に当接し可塑化した成形材料を成形金型1へ射出する射出装置4とから主に構成される。
【0010】
可塑化された成形材料は、成形金型1のキャビティに射出されると、成形金型1で冷却され固化して、成形品11とそれ以外のスプルやランナである回収成形物3になる。回収成形物3は、通常不要であるから廃棄されるが、コスト削減と環境・資源保護のため回収して再利用されることが多くなった。そのための機構として、搬送手段6、粗砕手段8及び原料送り量調整手段7がプラスチック成形機構28に附加される。
【0011】
搬送手段6は、チューブ状の金属又はプラスチックで成り、型締装置27の固定部分に配設される固定部23と、可動の射出装置4に配設される可動部24からなる。固定部23は、その開口端を、型開きした可動型12の近傍に位置するように型締装置27の固定部分として好適である固定盤2の側面に設けられる。固定部23の開口端近傍には圧送器22が挟設されている。圧送器22は、圧力空気を射出装置4側に吹き出すようなものであり、図示しない取出し装置により成形金型1から取出され前記開口端まで搬送された回収成形物3を吸引してさらに射出装置4まで搬送する。少なくとも、粗砕手段8のホッパ21上面に固着された可動部24と、固定部23の反開口端の部分は、剛性のある部材で構成されている。そして、対向する前記両者のいずれか一方の端部には円筒状の摺動部材25が固着され、前記両者の他方の端部は摺動部材25の内周面に摺動自在に嵌入する。すなわち、固定部23と可動部24とは伸縮自在に係合しているのである。このような構成により、移動する射出装置4に設けられた可動部24と移動しない固定部23とが余剰な部分を有せず簡潔に構成される。なお、固定部23と可動部24とが、摺動部材25を要せずに摺動自在となる場合であっても、固定部23若しくは可動部24そのものの材質又は摺動部分の構成が摺動部材を備えていると見做し得る。また、搬送手段6は、可撓性でかつ余裕をもった長さの部材で構成される場合であれば、固定部23と可動部24とが伸縮自在に係合しなくてよく、当然ながら摺動部材25は必要としない。またさらに、搬送手段6は、チューブ状で空送方式のものを例示したが、コンベア式やアームのロボット式のものであってもよい。
【0012】
射出装置4は、固定型13に対して進退自在かつ押圧するノズル14と、ノズル14を先端面に螺着する加熱筒15と、加熱筒15の内孔に回転往復動自在に嵌挿されたスクリュ16と、加熱筒15の後部を固着しスクリュ16の回転往復動駆動手段(図示せず)を取付けるハウジング17とからなる。加熱筒15の後部上面には、加熱筒15の内孔へ成形材料を供給する材料落下口5が穿孔されている。ハウジング17の前部には、材料落下口5に滑らかに連通するような縦貫通穴が穿孔されている。
【0013】
原料送り量調整手段7は、そのシリンダ29がハウジング17の上面に固着され、シリンダ29に回転自在に嵌挿されたフィードスクリュ18を有している。フィードスクリュ18は、電動機等の駆動手段19で任意の回転数に設定・駆動され、原料10を前方へ搬送して、シリンダ29の前端部に縦に設けられた貫通穴9へ原料10を落下させる。貫通穴9は材料落下口5と滑らかに連通しているので、原料送り量調整手段7で単位時間あたり所定量に調整された原料10は、加熱筒15内へ供給されて可塑化される。
【0014】
粗砕手段8は、原料送り量調整手段7のシリンダ29上面に固着され、駆動手段20で駆動される回転刃と、回転刃と協働して回収成形物3を略10mm以下の粗砕材に砕く固定刃とからなる。粗砕手段8で粗砕された粗砕材は原料送り量調整手段7の貫通穴9に直接落下するように構成されている。固定刃の上部には粗砕手段8の一部としてのホッパ21が固着されている。ホッパ21は、固定刃と回転刃との間に効果的に回収成形物3を供給できるような形状を有している。ホッパ21の上面には、可動部24,26が固着されている。可動部26は、他のプラスチック成形機構から他の搬送手段を介して他の回収成形物を受け入れるためのものである。可動部26を複数設けて複数の他のプラスチック成形機構から他の回収成形物を受け入れるようにすることもできる。
【0015】
次に、本発明の回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構の作動について説明する。成形金型1のキャビティへ射出された成形材料が固化したとき、型開きして成形品11と回収成形物3が成形金型1内で分離されて取出される。このとき、成形金型1によっては成形品11と回収成形物3を分離しない場合があるが、いずれにしても、回収成形物3のみを分離してそれを搬送手段6によって射出装置4の上方へ搬送する。射出装置4の粗砕手段8に投入された回収成形物3は、粗砕手段8により粗砕される。駆動手段20により粗砕を実行する時期は、検出器により回収成形物3がホッパ21に到達したことを検出したとき、回収成形物3をホッパ21に貯留しておき可塑化のためにスクリュ16を回転させたとき、又は連続的に常時のいずれかである。
【0016】
また、粗砕手段8の作動と同期するか又は単独に、原料送り量調整手段7が作動する。原料送り量調整手段7は、成形品11の容積に相当する量となるように送り量が調整された原料10を貫通穴9を経由して材料落下口5へ供給する。すなわち、可塑化工程毎に必要とする成形材料の量は、成形品11と回収成形物3の合計した容積に相当する量である。本願のプラスチック成形機構では、材料落下口5へ供給される可塑化工程毎の回収成形物3の量は一定であるからその量に応じて供給する原料10の量も一定となり、可塑化工程に対応した成形サイクル毎に回収成形物3と原料10との混合比は一定となる。なお、成形材料において回収成形物3の混合比がさらに多くても成形品11の品質に影響を及ぼさない場合には、他のプラスチック成形機構から他の回収成形物を可動部26を介して粗砕手段8に投入することが可能である。このときには、当然ながら、他の回収成形物の容積は成形品11の容積より小さくなくてはならない。
【0017】
このように、回収成形物3と原料10とは、比較的狭い貫通穴9の内部へ略同時に落下するので、両者の材料落下口5における分布に大きな偏りは発生しない。そのため、可塑化は均一かつ良好に行われるのである。
【0018】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 成形金型
2 固定盤
3 回収成形物
4 射出装置
5 材料落下口
6 搬送手段
7 原料送り量調整手段
8 粗砕手段
9 貫通穴
10 原料
11 成形品
12 可動型
13 固定型
14 ノズル
15 加熱筒
16 スクリュ
17 ハウジング
18 フィードスクリュ
19,20 駆動手段
21 ホッパ
22 圧送器
23 固定部
24,26 可動部
25 摺動部材
27 型締装置
28 プラスチック成形機構
29 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型から取り出された回収成形物を射出装置の材料落下口上方へ直接搬送する搬送手段と、前記材料落下口上部に固着した原料送り量調整手段の上面に配設され搬送された前記回収成形物を粗砕する粗砕手段と、前記粗砕手段で粗砕された前記回収成形物を前記材料落下口へ落下させる貫通穴を有するとともに原料をその送り量を調整しつつ前記貫通穴へ搬送して前記回収成形物及び前記原料を混合する前記原料送り量調整手段とを備えたことを特徴とする回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構。
【請求項2】
前記搬送手段は、チューブ状のものであって、前記成形金型を取付ける固定盤を有する型締装置に配設される固定部と、前記射出装置に配設される可動部とを有し、前記固定部と前記可動部は摺動部材を介して伸縮自在に係合する請求項1に記載のプラスチック成形機構。
【請求項3】
前記粗砕手段は、他のプラスチック成形機構からの他の回収成形物も受入可能に構成した請求項1に記載のプラスチック成形機構。

【図1】
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【公開番号】特開2007−125818(P2007−125818A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321188(P2005−321188)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】