説明

プラスチック熱交換器及びその製造方法

【課題】冷媒漏洩に対する信頼性を確保し、金属材質の熱交換器と同等以上の熱交換性能を有しながらも値段が低廉で且つ製造工程が簡単であって量産による大量生産ができるプラスチック熱交換器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック熱交換管とヘッダーとの接合部を熱融着治具で溶融圧着させることを特徴とするプラスチック熱交換器の製造方法及び前記製造方法によって製造されたプラスチック熱交換器を提供してプラスチック熱交換管とヘッダーとを堅固に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック熱交換器及びその製造方法に関するものであって、より詳しくは、プラスチック熱交換器の熱交換管をヘッダーに結合することにおいて、熱交換管とヘッダーとの接合部を融着部及び融着谷を含む熱融着治具(Jig)を介して同時に溶融圧着させて冷媒漏洩に対する信頼性を確保することにより、金属材質の熱交換器と同等以上の熱交換性能を有しながらも値段が低廉で且つ製造工程が簡単であって量産による大量生産ができるプラスチック熱交換器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に熱交換器は図1に示されたように、冷媒入口管1と冷媒出口管2とからなる金属熱交換管の外部に熱交換器フィン(Fin)3を取り付けて熱伝達を向上させ、金属熱交換管の左右側には金属材質のヘッダーが装着されて熱交換器を固定させることができるように構成されるものであって、前記技術による熱交換器はアルミニウム合金、銅などの高価の金属材料で製造され、熱交換器の製作に必要な工程が複雑であって生産時間及び費用がたくさんかかり、従って量産化を通じた大量生産ができないという問題点があった。
【0003】
一方、前記のような問題点を解決するための手段として提案された韓国登録特許公報第10−0366430号(名称:プラスチック熱交換器の管群ヘッダー接合方法)には、熱交換器の材質をプラスチックとし、管とヘッダーを逆三角形の熱融着成形金型で融着させてプラスチック熱交換器を製造する方法を提案しているが、これは冷媒機密性の確保のための管とヘッダーの溶融による形態変形などの結合でない熱融着成形金型の熱を介して管とヘッダー部を単純接合させる方法のみを提案していて、熱交換器で必須的に要求される冷媒の機密性保持などの問題点を解決できないだけでなく、これによる冷凍サイクルの凝縮機の冷媒圧を保持することができなくて、冷凍サイクルがろくに行われなくて熱交換器の冷凍性能に劣るという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであって、特にプラスチック熱交換器の熱交換管をヘッダーに結合することにおいて、熱交換管とヘッダーとの接合部を融着部及び融着谷を含む熱融着治具を介して同時に溶融圧着させて冷媒漏洩に対する信頼性を確保することにより、金属材質の熱交換器と同等以上の熱交換性能を有しながらも値段が低廉で且つ製造工程が簡単であって量産による大量生産ができるプラスチック熱交換器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために本発明は、押出方式によってプラスチック熱交換管を形成する管形成段階と、プラスチック熱交換管をヘッダーに結合する管結合段階と、ヘッダーと結合されたプラスチック熱交換管を熱によって接合させる熱融着段階と、プラスチック熱交換管が接合されたヘッダーにヘッダーキャップを結合させるヘッダーキャップ結合段階を含むプラスチック熱交換器の製造方法において、前記熱融着段階でヘッダーと結合されたプラスチック熱交換管を熱によって溶融圧着させるためにプラスチック熱交換管とヘッダーとの接合部を熱融着治具で溶融圧着させて接合することを特徴とするプラスチック熱交換器の製造方法である。
【0006】
前記した本発明の特徴によるプラスチック熱交換器の製造方法において、ヘッダーとプラスチック熱交換管との接合部は、プラスチック熱交換管と熱によって同時に溶融されてその結合をさらに堅固にする融着ビードと、前記プラスチック熱交換管とヘッダーとの接合部が溶融された溶融物が流入される溶融物流入溝部が融着ビードの外周面に沿って形成されることにより、熱融着治具でプラスチック熱交換管とヘッドとの堅固な結合ができるようにし、従って冷媒の機密性を保持することができるように構成される。
【0007】
また、前記の溶融物流入溝部は溶融物の漏洩防止のための所定の幅(w)と溶融物の堅固な接合と接合後の形態を形成するための所定の角度(θ)を有するように製作することができる。
【0008】
前記の各実施例において熱融着治具は、プラスチック熱交換管への円滑な挿入のために円錐形に製作された挿入部と、熱による融着時にプラスチック熱交換管の内部形状を保持するためにプラスチック交換管の内径と対応される外径を有する円筒形の胴体部が前記挿入部と一体形に形成され、融着ビードとプラスチック熱交換管が溶融された溶融物が溶融物流入溝部に円滑に流入されるように胴体部の上部で一定な角度で傾いて形成される融着部と、溶融物流入溝部に沿って接合して前記溶融物の漏洩を防止し、接合後の形態を形成するための融着谷とを含む形態で構成することができる。
【0009】
なお、本発明は前記ヘッダーの接合部と接合して熱によって前記熱交換管の終端と共に溶融される融着ビードと、前記融着ビードの外周面に沿って形成されて溶融された溶融物が流入される溶融物流入溝部を含めて製作されることを特徴とするプラスチック熱交換器である。
【0010】
また、もう一つの本発明の特徴によるプラスチック熱交換器の熱融着治具は円錐形で製作された挿入部と、熱交換管の内径と対応される外径を有する円筒形の胴体部と、前記胴体部の上部で一定な角度で傾いて形成される融着部と、前記ヘッダーの溶融物流入溝部に沿って接合して溶融物の漏洩を防止する融着谷を含めて構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来金属材質の熱交換器の構造図である。
【図2】本発明のプラスチック熱交換管の斜視図である。
【図3】本発明のヘッダーとヘッダーキャップの斜視図である。
【図4】本発明のヘッダーの接合部の斜視図及び断面図である。
【図5】本発明の融着治具の斜視図である。
【図6】本発明のプラスチック熱交換器の組立図である。
【図7】本発明の製造方法に従って製造されたプラスチック熱交換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記本発明の目的と特徴及び長所は添付図面及び次の詳細な説明を参照すればさらに容易にわかるだろう。
【0013】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例の構成及びその作用効果について詳細に説明する。
【0014】
図2は本発明のプラスチック熱交換管の斜視図であり、図3は本発明のヘッダーとヘッダーキャップの斜視図であって、押出方式によって形成されたプラスチック材質の熱交換管5と射出方式によって形成したヘッダー6とヘッダーキャップ7を示している。即ち、本発明のプラスチック熱交換管5は押出方式によって成形されるものであり、押出方式は押出機に原料を供給し、所望する形態の内径を有する金型から押し出して一定な形の断面を有する連続体に変換する成形法であって、製品を大量生産することにおいて適合且つ多様な形で形成することができる長所がある。
【0015】
また、前記のヘッダー6とヘッダーキャップ7は射出方式によって成形されるものであり、所望する形態の射出枠、つまり射出金型を製作しその中に溶融されたプラスチックなどの樹脂を注入された後に凝固させて生産するものであって、生産単価が低廉で且つ大量生産に有利である長所がある。
【0016】
図4は本発明のヘッダーの接合部の斜視図及び断面図であり、図5は本発明の融着治具の斜視図であって、プラスチック熱交換管5がヘッダー6の接合部で溶融される前の結合された状態と熱融着治具8によって溶融及び融着される過程と熱融着治具8の細部構成を示している。即ち、本発明のプラスチック熱交換器及びその製造方法の熱交換管をヘッダーに結合する管結合段階Bと、ヘッダーと結合された熱交換管を熱によって溶融圧着させる熱融着段階Cを説明するためのものであって、本発明の管結合段階Bと熱融着段階Cでは押出方式によって形成されたプラスチック熱交換管5を射出方式によって形成されたヘッダー6の接合部に結合した後、その接合部を熱融着治具8で同時に溶解させながら圧着することにより、プラスチック熱交換管5とヘッダー6を完全に熱融着させるようになる。
【0017】
前記ヘッダー6の接合部は、プラスチック熱交換管5と熱によって同時に溶融される融着ビード6aが形成され、熱融着治具8による溶融時にその結合をさらに堅固にさせる。前記の過程においてプラスチック熱交換管5とヘッダー6の接合部が溶融された溶融物はヘッダー6の接合部で融着ビード6aの外周面に沿って形成された溶融物流入溝部6bに流入するようになるが、後述する熱融着治具8の融着部8cによって案内されて円滑に流入され、溶融物流入溝部6bに沿って接合する熱融着治具8の融着谷8dによって漏洩が防止され、接合後の形態を形成することができてプラスチック熱交換管5とヘッダー6との堅固な結合ができ、従って冷媒の機密性を完璧に保持することができるように構成される。
【0018】
なお、前記の溶融物流入溝部6bは、図4に示されたように、溶融物の漏洩防止のための所定の幅(w)と溶融物の堅固な接合と接合後の堅固な形態を形成するための所定の角度(θ)を有するように製作することが望ましい。
【0019】
前記のプラスチック熱交換管5とヘッダー6との接合部を同時に熱融着させる熱融着治具8は図4及び図5に示されたように、挿入部8a、胴体部8b、融着部8c、融着谷8dが一体形で形成されており、挿入部8aはプラスチック熱交換管5とヘッダー6との接合部の熱融着時にプラスチック熱交換管5への円滑な挿入のために円錐形で製作され、胴体部8bは熱による融着時にプラスチック熱交換管5の内部形状を保持するためにプラスチック熱交換管5の内径と対応される外径を有する円筒形で形成され、融着部8cはヘッダー6の接合部の融着ビード6aとプラスチック熱交換管5が溶融された溶融物が溶融物流入溝部6bに円滑に流入できるために胴体部8bの上部で溶融物流入溝部6bの方向で傾いて形成され、傾斜角度θ1は溶融物流入溝部6bの形成角度θと対応するように形成することが望ましい。
【0020】
また、融着谷8dは熱融着治具8による熱融着時に溶融物流入溝部6bに沿って接合して前記溶融物の漏洩を防止する同時に接合後の形態を形成することができるように構成するものであって、内部谷の形態によってプラスチック熱交換管5とヘッダー6の接合部の熱融着後の結合形態が決定される。
【0021】
図6は本発明のプラスチック熱交換器の組立図であり、図7は本発明の製造方法によって製造されたプラスチック熱交換器の斜視図であって、プラスチック熱交換器の組立過程と組立後の状態を示している。即ち、本発明のプラスチック熱交換管5が接合されたヘッダー6にヘッダーキャップ7を結合させるヘッダーキャップ結合段階Dを説明するためのものであり、前記プラスチック熱交換管5をヘッダー6の接合部に挿入して結合した後、熱融着治具8で同時に熱融着させる段階を経た後にはヘッダー6に射出方式によって製作されたヘッダーキャップ7を融着させるようになるが、ヘッダー6とヘッダーキャップ7の融着は一般的な公知の技術である振動融着、超音波融着、熱融着などの多様な方法が適用可能である。
【0022】
図7は本発明の一実施例による製造方法によって製造されたプラスチック熱交換器の斜視図であって、前記のような段階を経て完成された本発明のプラスチック熱交換器は冷媒入口管10と冷媒出口管20を有するプラスチック熱交換器を示している。冷媒入口管10と冷媒出口管20は射出方式によるヘッダーキャップの形成時、冷媒入口管10と冷媒出口管20をインサート(Insert)射出で構成して冷媒入口管10と冷媒出口管20がヘッダーキャップ7と完璧に一体形で形成させることにより、冷媒漏洩に対する信頼性を保障するようになる。
【0023】
他にも本発明のプラスチック熱交換器及びその製造方法は多様に変形実施できるものであって、本発明の目的範囲を外れない限り、変形される実施例は全て本発明の権利範囲に含まれて解釈しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上の本発明によると、プラスチック熱交換管とヘッダーとを堅固に結合することによって冷媒漏洩に対する信頼性を確保して金属材質の熱交換器と同等以上の熱交換性能を有する同時に、製造工程が簡単でプラスチック熱交換器を容易に生産させることによってプラスチック熱交換器の量産による大量生産ができるなど、利点が得られるようになる。
【0025】
前記から本発明の記載された具体例を中心に詳細に説明したが、本発明の範疇及び技術思想範囲内で当業者にとって多様な変形及び修正が可能であることは明らかであり、このような変形及び修正が添付された本発明の特許請求範囲に属することも当然である。
【符号の説明】
【0026】
1:冷媒入口管
2:冷媒出口管
3:熱交換器フィン
4:銅熱交換管
5:プラスチック熱交換管
6:ヘッダー
6a:融着ビード
6b:溶融物流入溝部
7:ヘッダーキャップ
8:熱融着治具
8a:挿入部
8b:胴体部
8c:融着部
8d:融着谷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック熱交換器の製造方法において、
プラスチック熱交換管とヘッダーの接合部を熱融着治具で溶融圧着させることを特徴とするプラスチック熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記ヘッダーの接合部は、熱によって前記プラスチック熱交換管と接合されて溶融される融着ビードと、
前記融着ビードの外周面に沿って形成され、前記溶融された溶融物が流入される溶融物流入溝部を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラスチック熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記溶融物流入溝部は、溶融物の漏洩防止のための幅(w)と溶融物の堅固な接合と接合後の形態を形成するための角度(θ)を有するように形成することを特徴とする請求項2に記載のプラスチック熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記熱融着治具は、
前記プラスチック熱交換管への円滑な挿入のために円錐形で製作された挿入部と、
熱による融着時に前記プラスチック熱交換管の内部形状を保持するために前記プラスチック熱交換管の内径と対応される外径を有する円筒形の胴体部と、
前記融着ビードと前記プラスチック熱交換管が溶融された溶融物が前記溶融物流入溝部に円滑に流入できるように前記胴体部の上部で一定な角度で傾いて形成される融着部と、
前記溶融物流入溝部と接合して前記溶融物の漏洩を防止し、接合後の形態を形成するための融着谷を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラスチック熱交換器の製造方法。
【請求項5】
プラスチック材質の熱交換管とヘッダーとを熱融着治具を介して熱融着して形成されるプラスチック熱交換器において、
前記ヘッダーの接合部と接合して熱によって前記熱交換管の終端と共に溶融される融着ビードと、
前記融着ビードの外周面に沿って形成されて溶融された溶融物が流入される溶融物流入溝部を含むことを特徴とするプラスチック熱交換器。
【請求項6】
前記熱融着治具は、
円錐形で製作された挿入部と、
前記熱交換管の内径と対応される外径を有する円筒形の胴体部と、
前記胴体部の状態で一定な角度で傾いて形成される融着部と、
前記ヘッダーの前記溶融物流入溝部に沿って接合して溶融物の漏洩を防止する融着谷を含むことを特徴とする請求項5に記載のプラスチック熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−500528(P2010−500528A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523709(P2009−523709)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003674
【国際公開番号】WO2008/018712
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】