説明

プラスチック異形材の処理方法

プラスチック異形材の処理方法を開示する。この方法は、プラスチック異形材を押し出してキャリブレートし、次いでその異形材を、少なくとも1つの添加剤を含む浴を通過させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法、より詳細には押し出し後のプラスチック異形材の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
押し出しによって熱可塑性物質(例えば、PC、PCブレンド、PMMAおよびTPU)製の異形材、管およびパネルを製造することは、よく知られている。押し出しのために、プラスチック顆粒を押出機に導入し、溶融させ、スクリューとシリンダとから成る押出機の可塑化機構内を搬送する。押出機から吐出されたプラスチック溶融物を、形状を整えたダイを通して加圧下に搬送し、その間に予備成形して、次いでキャリブレータ内で最終的な所望の形状にし、通常は10〜165℃の温度で冷却して硬化させる。次いで、異形材を引取装置(pull-off device)でキャリブレータから一様に取り出し、クロスカットして定寸に切断する。押し出しに用いられるプラスチックは、通常は160〜350℃の溶融温度で加工され、可塑化シリンダのシリンダ温度とダイ温度は、この目的に合わせて調節される。
【0003】
熱可塑性顆粒(例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタンの顆粒およびそれらと他の熱可塑性物質(例えば、ABSグラフトポリマー、ポリエステル)との混合物)を、現在では通常、押し出し工程の前に、乾式混合ミキサ、重量定量秤(gravimetric proportioning weighers)または同様の混合装置を用いて、特定の濃度の染料または添加剤のマスターバッチ顆粒と機械的に混合し、次いで、押出機に導入して加工するか、もしくはすでに染色されるか添加剤で処理された材料や熱可塑性顆粒を加工すると、形材が形成される。
【0004】
異形材の染色や添加剤処理を、押し出し工程中に行うことも知られている。
【0005】
上記の方法は、添加剤処理、例えば、押し出しまたは共押し出し工程中のプラスチック異形材の染色や紫外線安定化が、非常に複雑でコスト集約的であるという欠点を有する。加えて、これらの方法では、プラスチック異形材の部分的な添加剤処理や染色が不可能である。異形材全体が添加剤で処理されるか、染色される。
【0006】
成形材を染浴に浸漬することによって染色する方法は、既知である(WO 03/040461、WO 04/101881およびWO 03/083207を参照)。これらの文献では、完成した成形材、例えばレンズを、製造工程とは独立に染浴中で染色している。しかし、上記の文献のいずれも、プラスチック異形材を、押し出してキャリブレート(寸法規制)した直後に添加剤を含む浴を通過させる方法を記載していない。
【0007】
同様にここで関連があるのは、米国特許出願第2005/0127570号で、これは、プラスチック製品(例えば、熱可塑性ポリカーボネートの成形品)の表面の少なくとも一部を、1つ以上の性能添加剤を含む処理組成物と接触させる(例えば、処理組成物に浸漬する)方法を開示している。この処理組成物は、以下のものを含んでいる:(i)少なくとも1つの性能添加剤(例えば、紫外線吸収剤)、(ii)水、(iii)特定の式で表される少なくとも1つのキャリアおよび(iv)ジオール。本発明のある態様においては、キャリアはエチレングリコールモノブチルエーテルであり、ジオールはジエチレングリコールである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎となった課題は、従って、上記の欠点を回避し、さらなる利点を提供する方法を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プラスチック異形材の処理方法を開示する。この方法は、プラスチック異形材を押し出してキャリブレートし、次いでその異形材を、少なくとも1つの添加剤を含む浴を通過させる工程を含む。
【0010】
本発明によると、着色された、もしくは添加剤で処理された異形材を押し出すために、共押出機や共押出機のアダプタや混合装置は必要ない。使用する染料および/または添加剤の量を減らしてもよく、従って、製造工程のコストが低下する。本発明によると、添加剤処理や染色を、異形材の部分的領域にのみ適用することができる。染料および/または添加剤は、もっと複雑な表面コーティングとは対照的に、プラスチックを透過する。
【0011】
さらに、仕上げ時間およびすすぎ時間が短くなるために、かなりの時間短縮とより迅速な色変化が得られる。染色工程の多目的性および柔軟性は、かなり増大する。比較的温度が低いことなどに起因して、本発明の方法によると、熱可塑性物質における熱安定性のために押し出し工程における処理に不向きであると考えられる添加剤でも、使用することができる。本発明の方法によるその後の添加剤処理は、押し出し工程に影響を与えない。
【0012】
従って、本発明は、プラスチック異形材の処理方法、好ましくは添加剤処理の方法、特に染色方法に関し、該方法は、押し出してキャリブレートしたプラスチック異形材を、添加剤を含む浴を通過させることを特徴とする。本発明におけるプラスチック異形材とは、好ましくはあらゆる形状のパネル、例えばリブで補強されたサンドイッチパネルおよび(中実)形材や中空体、例えば管であると理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添加剤は、好ましくは、染料(例えば、蛍光染料/色素および燐光染料/色素、発光色素または染料、フォトクロミック染料/色素およびサーモクロミック染料/色素、ポリマー染料)、紫外線安定剤、帯電防止剤、水滴防止剤(例えば、乳化剤、テンシド)、赤外線吸収剤、界面活性剤、蛍光増白剤および殺生物剤から選択される。染料および紫外線安定剤が、特に好ましい添加剤である。格別に特に好ましい添加剤は、染料である。本発明によれば、染料は、それについて別途言及する場合であっても、添加剤の定義に該当する。
【0014】
好ましくは、浴は、以下のものを含む:
i) 少なくとも1つの添加剤
ii) 水
iii) 以下の一般式(I)で表される少なくとも1つのキャリア
R-O-(CH2)n-OH (I)
(ここで、Rは直鎖状または分岐状のC1-C18アルキル、ベンジル、ベンゾイルおよびフェニルから選択される基であり、nは2または3である)
および
iv) 直鎖状または分岐状のC2-C20脂肪族ジオール、ポリ(C2-C4アルキレングリコール)、環の炭素数が5〜8の脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノールおよび水素化ビスフェノールから選択される少なくとも1つのジオール。
【0015】
式(I)のRを選択することができる直鎖状または分岐状のアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へプタデシルおよびオクタデシル、ならびにそれらの構造異性体(例えば、イソ-プロピル、i-ブチル、t-ブチル等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
さらに式Iに関して、Rは、ベンジル、ベンゾイルおよびフェニル基から選択されてもよく、これら基の各々は、独立して、かつ所望により、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモおよびフルオロ)、直鎖状または分岐状のC1-C9アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびノニル)および芳香族基(例えば、フェニル)から選択される1〜5の基で置換されていてもよい。
【0017】
本発明のある態様においては、式Iに関して、nは2であり、Rはn-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルから選択される。本発明の特に好ましい態様においては、nは2であり、Rはn-ブチルである。
【0018】
キャリアは、典型的に、30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下の量で、浴中に存在する。キャリアはまた、典型的に、10重量部以上、好ましくは15重量部以上、より好ましくは17重量部以上の量で、浴中に存在する。キャリアは、これらの上限と下限との(その値を含む)いかなる組み合わせ間の範囲の量で浴中に存在してもよい。例えば、キャリアは、典型的には2〜30重量部、より典型的には5〜25重量部、さらに典型的には17〜20重量部の量で、浴中に存在してよい。重量部は、いずれの場合にも浴の総重量に基づく。
【0019】
浴は、直鎖状および分岐状のC2-C20脂肪族ジオール、ポリ(C2-C4アルキレングリコール)、環の炭素数が5〜8の脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノールおよび水素化ビスフェノールから選択される少なくとも1つのジオールをさらに含む。直鎖状または分岐状のC2-C20脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-および2,3-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、へプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、へプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオールおよびイコサンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
ジオール(iv)を選択することができるポリ(C2-C4アルキレングリコール)の例としては、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびそれ以上のエチレングリコール、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびそれ以上のプロピレングリコール、ならびにジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびそれ以上のブチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ジオール(iv)として使用できる炭素数が5〜8の脂環式ジオールとしては、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオールおよびシクロオクタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。ジオール(iv)として使用できる単環式芳香族ジオールの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゼンジオール(例えば、1,2-ジヒドロキシベンゼンおよび1,3-ジヒドロキシベンゼン)、C1-C4アルキル置換ベンゼンジオール(例えば、4-tert-ブチル-ベンゼン-1,2-ジオール、4-メチル-ベンゼン-1,2-ジオール、3-tert-ブチル-5-メチル-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3,4,5,6-テトラメチル-ベンゼン-1,2-ジオール)、ハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3,5-ジクロロベンゼン-1,2-ジオール、3,4,5,6-テトラブロモ-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3,4,5-トリクロロ-ベンゼン-1,2-ジオール)およびC1-C4アルキルおよびハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3-ブロモ-5-tert-ブチル-ベンゼン-1,2-ジオール、3,6-ジクロロ-4-メチル-ベンゼン-1,2-ジオール、3,-ブロモ-4,5-ジメチル-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3-クロロ-4,6-ジ-tert-ブチル-ベンゼン-1,2-ジオール)。
【0021】
ジオール(iv)として使用できる化合物は、以下の一般式IIで表すことができる。
式II

【0022】
式IIにおいて、R1およびR2は、それぞれ互いに独立して、かつ各pおよびqについて独立して、C1-C4アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)、塩素および臭素から選択され;pおよびqは、それぞれ独立して、0〜4までの整数であり;-X-は、-O-、-S-、-S(O2)-、-C(O)-、-CH2-、-CH=CH-、-C(CH3)2-および-C(CH3)(C6H5)-から選択される2価の連結基であり;

は、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を表す。ジオール(iv)として使用できるビスフェノールの例は、4,4’-イソプロピリデンビスフェノール(すなわち、ビスフェノールA)である。ジオール(iv)として使用できる水素化ビスフェノールの例は、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキサノールである。
【0023】
本発明の好ましい態様において、ジオール(iv)は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択されるポリ(C2-C4アルキレングリコール)である。特に好ましいジオールは、エチレングリコールおよびジエチレングリコールである。
【0024】
ジオールは、典型的に、20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは12重量部以下の量で、浴中に存在する。ジオールはまた、典型的に、1重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上の量で、浴中に存在する。ジオールは、これらの上限と下限との(その値を含む)いかなる組み合わせ間の範囲の量で浴中に存在してもよい。例えば、ジオールは、典型的には1〜20重量部、より典型的には5〜15重量部、さらに典型的には10〜12重量部の量で、浴中に存在してよい。重量部は、いずれの場合にも浴の総重量に基づく。
【0025】
浴中に存在する染料は、静的(固定)染料(static dyes)、フォトクロミック染料およびそれらの組み合わせから選択することができる。本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、用語「静的染料」は、紫外(UV)線に曝露されても(または、紫外線から遮蔽されても)実質的に色が変化しない染料を意味する。本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、用語「フォトクロミック染料」は、当業者には既知であるとおり、紫外線に曝露されると可逆的に色が変化する染料を意味する。典型的には、紫外線の特定の波長に曝露されると、フォトクロミック染料は、(可視スペクトルの特定の部分内で)着色された開(作動)状態または活性化状態へと変化する。紫外光源を取り去ると、開状態の/活性化したフォトクロミック染料は、着色されていない、もしくは少なくとも活性化状態よりも着色の少ない閉(休止)状態/不活性化状態に戻る。
【0026】
浴に含まれていてもよい静的染料としては、熱可塑性ポリカーボネート異形材などのプラスチック異形材を着色するのに好適であることが当該分野で知られている染料に加えて、例えば、布染料、油溶性染料および分散染料が挙げられる。好適な分散染料の例としては、Disperse Blue 3、Disperse Blue 14、Disperse Yellow 3、Disperse Red 13およびDisperse Red 17が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書においては、静的染料の分類および表示を、参照によって本明細書に組み込まれる”The Color Index”第3版(1971年)(Society of Dyes and ColorsおよびAmerican Association of Textile Chemists and Coloristsの共同出版)に従って列挙する。染料は一般に、所望の色に応じて、単独の染料成分または染料混合物の構成成分のいずれかとして使用することができる。従って、本明細書において使用する用語「静的染料」は、静的染料の混合物をも含む。
【0027】
使用されるその他の染料は、Solvent Blue 35、Solvent Green 3およびAcridine Orange Baseなどの油溶性染料である。
【0028】
「油溶性染料」として知られている染料の種類は、本発明の実施において有用である。この染料の種類には、好ましい染料のSolvent Blue 35、Solvent Green 3およびAcridine Orange Baseが含まれる。しかし、一般的に油溶性染料は、分散染料ほど濃く着色しない。
【0029】
さらなる好適な静的染料としては、例えば、水不溶性のアゾ、ジフェニルアミンおよびアントラキノン化合物が挙げられる。特に好適な例としては、それぞれすべて参照によって本明細書に組み込まれるColor Index 第3版、第2巻(The Society of Dyers and Colorists、1971年)2479頁および2187〜2743頁に開示されているようなアセテート染料、分散アセテート染料、分散染料およびDispersol染料が挙げられる。好ましい分散染料としては、DystarのDIANIX Blue E-R150(アントラキノン/Disperse Blue)およびDIANIX Orange E-3RN(アゾ染料/CI Disperse Orange 25)が挙げられる。本発明の方法において、フェノールレッドおよび4-フェニルアゾフェノールは、プラスチック異形材が熱可塑性ポリカーボネートである場合、所望のレベルの染色を与えないことが観察されている。
【0030】
直接染料として知られる静的染料や、酸性染料と呼ばれているものは、本発明の実施において、プラスチック異形材が熱可塑性ポリカーボネートである場合、所望のレベルに満たない着色を与えることが観察されている。しかし、酸性染料は、ナイロンに効果的であることが観察されている。
【0031】
本発明の方法に使用できる他の種類の好適な静的染料としては、非移動性静的染料(すなわち、染料が組み込まれたプラスチック異形材からの染料の移動を最小限にする、もしくは排除するように化学修飾された静的染料)が挙げられる。特定の種類の非移動性静的染料は、以下の式IIIで表すことができる。
R5-(ポリマー成分-Y)t III
【0032】
式IIIにおいて、R5は有機染料基(または発色団基)を表し;ポリマー成分は各(t)について独立に、ポリ(C2-C4アルキレンオキシド)のホモポリマー、コポリマーおよびブロックコポリマー、例えばポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドのホモポリマー、ポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)コポリマー、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのジ-またはそれ以上のブロックコポリマーから選択され;(t)は1〜6までの整数であってよく;(Y)は各(t)について独立に、ヒドロキシル、第1級アミン、第2級アミンおよびチオール基から選択される。ポリマー成分の分子量は、例えば44〜1500であってよい。(Y)を選択することができる染料基としては、ニトロソ、ニトロ、アゾ(例えば、モノアゾ、ジアゾおよびトリアゾ)、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリデン、メチン、チアゾール、インダミン、アジン、オキサジンおよびアントラキノン染料基が挙げられるが、これらに限定されない。式IIIで表される非移動性静的染料は、参照によってすべてが本明細書に組み込まれる米国特許第4,284,729号、4,640,690号および4,812,141号にさらに詳細に記載されている。
【0033】
非移動性静的染料は、本発明の(例えば、浸漬による)方法に従って、吸収または拡散によってプラスチック異形材を染色する際に、有用であることがわかった。吸収によってプラスチック異形材に組み込まれた場合、過剰の非移動性静的染料はプラスチック異形材から洗い流されて、吸収された非移動性静的染料のプラスチック異形材からの浸出は最小限に抑えられ得る。非移動性静的染料(例えば、式IIIで表されるもの)は、熱可塑性ポリウレタンから製作されたプラスチック異形材を(例えば、浸漬によって)染色する場合に、本発明の方法において特に有用であることがわかった。
【0034】
本発明の方法において使用できるフォトクロミック染料としては、当業者に既知のものが挙げられる。好適なフォトクロミック染料の種類としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:スピロ(インドリン)ナフトキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンゾオキサジン(例えば、米国特許第4,818,096号に記載のとおり);およびクロメン、例えばベンゾピランおよびナフトピラン(例えば、米国特許第5,274,132号に記載のとおり)、およびピラン環の2位に置換基を、かつ置換されていてもよい複素環(例えば、ベンゾピランのベンゼン部分に縮合したベンゾチエノ環またはベンゾフラノ環)を有するベンゾピラン(例えば、米国特許第5,429,774号に記載のとおり)。フォトクロミック染料のさらなる種類としては、例えば、フルギドおよびフルギミド、例えば3-フリルおよび3-チエニルフルギドおよびフルギミド(例えば、米国特許第4,931,220号に記載のとおり)が挙げられる。フォトクロミック染料に関する引用特許の関連する開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0035】
フォトクロミック染料またはその混合物は、本発明の方法において、単独で、もしくは1つ以上の静的染料と組み合わせて使用することができる。典型的には、熱可塑性ポリカーボネート異形材などの熱可塑性異形材へのフォトクロミック染料の吸収によって、紫外線への曝露または紫外線からの遮蔽時に容易に色が変化しない染色プラスチック異形材が得られる。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、入手した情報に基づくと、フォトクロミック染料は、熱可塑性ポリマーマトリックス中で開状態または閉状態のいずれにおいても捕捉されると考えられている。フォトクロミック染料が、熱硬化性ポリマー、例えば熱硬化性ポリカーボネートまたは熱硬化性ポリウレタンから製作されたプラスチック異形材に吸収されることによって、典型的には、フォトクロミック特性を有する染色プラスチック異形材が形成される。
【0036】
浴中に存在する添加剤、好ましくは染料の量は、幅広く変化させ得る。典型的には、染料は、例えば、フォトクロミック染料の場合には紫外線に曝露されたときに、裸眼で認識できる着色効果および/またはフォトクロミック効果を有する染色プラスチック異形材を形成するのに充分な量で、浴中に存在する。
【0037】
浴中に実際に存在する染料の量は、水、キャリアおよびジオールの混合物中での染料の溶解度に依存する。浴中での染料の溶解度は、浴の温度によっても影響を受ける。染料が浴に完全には可溶性でない場合、浴は、飽和レベルの染料を含んでいるとみなされる。浴における染料の飽和レベルを超える量の染料を(例えば、浴を継続的に通過させるバグフィルタに)添加することによって、染色操作の間、浴中の染料のレベルを飽和レベルに維持することができる。浴中の染料のレベル(例えば、飽和レベル)は、例えば、熱重量分析または分光光度分析によって、定期的にまたは連続的に測定することができる。
【0038】
添加剤、好ましくは染料は、典型的には15重量部以下、より典型的には5重量部以下、さらに典型的には1重量部以下、その上さらに典型的には0.5重量部未満の量で、浴中に存在する。添加剤/染料はまた、0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上の量で、典型的に浴中に存在する。添加剤/染料は、これらの上限と下限との(その値を含む)いかなる組み合わせ間の範囲の量で浴中に存在してもよい。例えば、添加剤/染料は、典型的には0.001〜15重量部、より典型的には0.005〜5重量部、さらに典型的には0.01〜1重量部、その上さらに典型的には0.01〜0.5重量部の量で、浴中に存在してよい。ある態様においては、染料は、0.03重量部の量で浴中に存在する。重量部は、いずれの場合にも浴の総重量に基づく。浴のすべての重量部の合計を、100に基準化する。
【0039】
本発明の好ましい態様において、浴は以下を含む:0.001〜0.5重量部の上記添加剤/染料;65〜75重量部の水;1,0〜25重量部の上記キャリア;および0,5〜15重量部の上記ジオール。重量部は、いずれの場合にも静的染料やその他の構成成分(例えば、紫外線吸収剤、フォトクロミック染料、ポリマー染料、界面活性剤、蛍光増白剤、抗菌剤)を含めた浴の総重量に基づく。
【0040】
水は、典型的に、99重量部以下、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下の量で、浴中に存在する。水はまた、典型的に、50または51重量部以上、好ましくは60重量部以上、より好ましくは65重量部以上の量で、浴中に存在する。水は、これらの上限と下限との(その値を含む)いかなる組み合わせ間の範囲の量で浴中に存在してもよい。例えば、水は、典型的には50(または51)〜85重量部、より典型的には60〜87重量部、さらに典型的には65〜75重量部の量で、浴中に存在してよい。重量部は、いずれの場合にも浴の総重量に基づく。使用される水は、好ましくは脱イオン水または蒸留水である。
【0041】
本発明のある態様において、浴は、キャリアおよびジオールのいずれとも異なる界面活性剤(または乳化剤)をさらに含む。本発明における好適な界面活性剤は、水に注ぐと容易に分散し得、次いで、その分散液を攪拌すると乳状のエマルションを形成する。界面活性剤は、以下から選択される少なくとも1つであってよい:陰イオン界面活性剤;両性界面活性剤;およびポリ(C2-C4アルコキシル化)C14-C18不飽和脂肪酸、ポリ(C2-C4アルコキシル化)フェノールおよびポリ(C2-C4アルコキシル化)C1-C9アルキル置換フェノールから選択される少なくとも1つの非イオン界面活性剤。
【0042】
本発明において使用できる陰イオン界面活性剤の例としては、例えば、以下が挙げられる:カルボン酸、スルファミン酸またはリン酸のアミン塩またはアルカリ塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、リグノスルホン酸塩、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)のナトリウム塩)、およびアミンの酸性塩(例えば、ラウリルアミン塩酸塩またはα-スルホ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)と1-(メチルフェニル)エチルフェノールとのエーテル化誘導体のアンモニウム塩)。
【0043】
浴中に存在してもよい両性界面活性剤としては、例えば、以下が挙げられる:ラウリルスルホベタイン;ジヒドロキシエチルアルキルベタイン;ココナッツ酸をベースとしたアミドベタイン;N-ラウリルアミノプロピオン酸2ナトリウム;またはジカルボン酸のココナッツ誘導体のナトリウム塩。
【0044】
ポリ(C2-C4アルコキシル化)C14-C18不飽和脂肪酸の例としては、エトキシ化、プロポキシ化、および/またはブトキシ化テトラデセニルカルボン酸が挙げられる。ポリ(C2-C4アルコキシル化)フェノールの例としては、エトキシ化、プロポキシ化、および/またはブトキシ化フェノールが挙げられる。ポリ(C2-C4アルコキシル化)C1-C9アルキル置換フェノールの例としては、オクチルフェノキシポリエチレンオキシエタノールおよびスチレン化α-フェニル-ω-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)が挙げられる。
【0045】
所望による界面活性剤(乳化剤)は、5重量部以下の量で使用することができる。好ましくは、所望による界面活性剤は、0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部の量で、浴中に存在する。重量部は、いずれの場合にも浴の重量に基づく。
【0046】
浴はさらに、紫外線安定剤、蛍光増白剤、離型剤、帯電防止剤、熱安定剤、赤外線吸収剤および抗菌剤(物質または化合物)から選択される少なくとも1つの性能強化添加剤を、所望により含んでいてよい。これらの所望による性能強化添加剤を浴中に1つ以上含めることは、染色プラスチック異形材の物理的性能/特性の改善に効果がある。染料に加えて、所望による添加剤もまた、異形材が浴中に浸漬されている間に、プラスチック異形材の大部分に拡散し、染み込み、もしくは吸収される。例えば、浴中に紫外線安定剤を含めることによって、結果的に、改善された紫外線抵抗性を有する染色プラスチック異形材が得られる。本明細書においてさらに検討するように、プラスチック異形材が熱可塑性ペレットおよび/または熱可塑性ストランドから選択され、選択されたペレットやストランドから後に成形異形材が調製される場合、離型剤を浴中に含めることは、さらに有利である。所望による性能強化添加剤は、熱可塑性および熱硬化性の成形プラスチック異形材の調製における用途が知られているものから選択してよい。
【0047】
本発明の浴に使用できるUV(紫外線)安定剤(または吸収剤)の種類としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のより具体的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2-(2’-ヒドロキシ-5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)PとしてCiba(タリータウン、ニューヨーク)より市販);2-(3’-5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)327としてCibaより市販);2(2’-ヒドロキシ-3’-5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)328としてCibaより市販);ベンゼンプロパン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-、C7-9分岐アルキルエステル(Tinuvin(登録商標)384としてCibaより市販);2-(3’-5’-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)900としてCibaより市販);2-[2-ヒドロキシ-3-ジメチルベンジルフェニル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)]-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)928としてCibaより市販);α-[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)と、α-[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)との混合物(Tinuvin(登録商標)1130としてCibaより市販);および2-[4-[2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル]オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンおよび2-[4-[2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル]オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(Tinuvin(登録商標)400としてCibaより市販)。市販のベンゾフェノン系紫外線安定剤の一例は、2-ヒドロキシ-4-(N-オクトキシ)ベンゾフェノン(Lowilite(登録商標)22としてGreat Lakes Chemical Corp.(ウエストラファイエット、インディアナ)より市販)である。
【0048】
本発明において使用できる市販の紫外線安定剤のさらなる例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ブチル化ヒドロキシトルエン(以下、「BHT」)安定化p-メトキシ桂皮酸2-エチルへキシルエステル(Uvinul MC 80としてBASF(マウントオリーブ、ニュージャージー)より市販);未安定化p-メトキシ桂皮酸2-エチルへキシルエステル(Uvinul MC 80 NとしてBASFより市販);2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2’-エチルへキシルエステル(Uvinul 539 TとしてBASFより市販);2-ヒドロキシ-4-(N-オクトキシ)ベンゾフェノン(Cyasorb UV-501としてCytec(ウエストパターソン、ニュージャージー)より市販);2-(2’-ヒドロキシ-3’-5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Cyasorb UV-2337としてCytecより市販);および2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Cyasorb UV-5411 PAとしてCytecより市販)。
【0049】
本発明の方法において使用できるさらなる種類の紫外線安定剤としては、少なくとも1つのポリ(オキシアルキレン)鎖で修飾されたものが挙げられる。このようなポリ(オキシアルキレン)鎖で修飾された紫外線安定剤は、一旦プラスチック異形材に吸収される(または拡散する)と低い移行特性を有する(例えば、その紫外線安定剤を吸収したプラスチック異形材から容易に浸出しない)ことを特徴とする。ポリ(オキシアルキレン)鎖は、C2-C20アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド)の反応から生成したホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。ポリ(オキシアルキレン)基は、末端がヒドロキシル基、C1-C20アルキルエーテル基またはC1-C20エステル基であってよい。ポリ(オキシアルキレン)鎖で修飾された紫外線安定剤は、例えば、米国特許第6,602,447 B2号にさらに詳細に記載されている。
【0050】
本発明の方法において浴中に含めることができる蛍光増白剤は、典型的には波長450nm以下の光を吸収し、その光をそれより長い波長、例えば波長550nm以下、好ましくは525nm以下で放射する。放射光が可視スペクトルの青色領域にあること(例えば、約400nm以上かつ約525nmまでの波長を有する放射光)が好ましい。最も好ましくは、放射光は約500nm以下である。
【0051】
本発明において使用できる蛍光増白剤の種類としては、ベンゾオキサゾール誘導体およびスチルベン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用できる市販のベンゾオキサゾール誘導体の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-tert-ブチルベンゾオキサゾール](Uvitex(登録商標)OBとしてCibaより市販);Blankophor(登録商標)KLA(Bayer(ピッツバーグ、ペンシルバニア)より)などのベンゾオキサゾール誘導体;Hostalux(登録商標)KCB(Clariant(ムッテンツ、スイス)より);およびHostalux(登録商標)KCU(Clariantより)。市販のスチルベン誘導体の一例は、4,4’-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)スチルベン(Eastobrite(登録商標)OB-1としてEastman(キングスポート、テネシー)より市販)である。本発明において使用できるさらなる種類の蛍光増白剤としては、4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸の誘導体;クマリン誘導体(例えば、4-メチル-7-ジエチルアミノクマリン);およびビス(スチリル)ビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
浴中に含めることができる離型剤の種類としては、炭化水素系離型剤、脂肪酸系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤、アルコール系離型剤、脂肪酸エステル系離型剤、シリコーン系離型剤、およびこれらの混合物または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。炭化水素系離型剤の例としては、合成パラフィン、ポリエチレンワックスおよびフッ化炭素が挙げられる。使用できる脂肪酸系離型剤としては、例えばステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が挙げられる。使用できる脂肪酸アミド系離型剤としては、例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミドおよびアルキレンビス脂肪酸アミドが挙げられる。アルコール系離型剤の例としては、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよび多価アルコール、例えばポリグリコールおよびポリグリセリンが挙げられる。染料に含めることができる脂肪酸エステル系離型剤の一例は、ステアリン酸ブチルである。
【0053】
本発明の方法において浴中に含めることができる帯電防止剤としては、非イオン性帯電防止剤、例えばフッ化炭素基を含むものや、シリコーンオイル、例えばBAYSILONE O1 A(Bayer AG(ドイツ)より市販)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用できる帯電防止剤のさらなる例としては、ジステアリルヒドロキシルアミン、トリフェニルアミン、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ピリジンN-オキシドおよびエトキシ化ソルビタンモノラウレートが挙げられる。
【0054】
本発明の方法の浴に含めることができる熱(または耐熱)安定剤の種類としては、フェノール安定剤、有機チオエーテル安定剤、有機リン化物安定剤、ヒンダードアミン安定剤、エポキシ安定剤およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。熱安定剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、o-t-ブチル-p-クレゾール、テトラキス-(メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、β-ナフチルアミン、p-フェニレンジアミンおよびチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシヒドロ桂皮酸(商品名IRGANOX 1035熱安定剤としてCiba Specialty Chemicalより市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の方法において使用できる赤外線(IR)吸収剤としては、スペクトルの赤外領域で吸収する染料が挙げられる。市販の赤外線吸収剤の例としては、Glendale Protective Technologies, Inc.(レイクランド、フロリダ)より入手できるCYASORB IR-99、IR-126およびIR-165が挙げられる。
【0056】
本発明の方法において浴中に含めることができる抗菌剤としては、例えば、微生物(例えば、病原微生物)に対して抗菌活性を有する物質が挙げられる。本明細書において使用する用語「抗菌剤」は、防腐剤、消毒剤および抗かび物質をも含む。さらに、抗菌剤は、予備活性化された状態(例えば、予備活性化された物質に対して細菌が作用するなどの誘因となる事象が発生するまで、抗菌活性を示さない状態)でも使用できる。
【0057】
浴中に含めることができる抗菌剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:キノロン(例えば、ナリジクス酸、ピペミド酸、シノキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシンおよびエノキサシン)、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソマイシン、トブラマイシンおよびネチルマイシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシン)、ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ムピロシン、チロスリシン、グラミシジンおよびチロシジン)、リンコマイシン(例えば、リンコマイシンおよびクリンダマイシン)および抗抗酸菌剤(例えば、リファンピシンおよびフシジン酸)。浴中で使用できる抗菌剤のさらなる例としては、以下のものが挙げられる:10,10’-オキシビスフェノキシアルシン;2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノールとも称され、一般にTriclosanと呼ばれる);N-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン;およびN-(トリクロロメチルチオ)フタルアミド。
【0058】
使用される場合、性能強化添加剤は、合計が15重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1重量部以下の正の量で、典型的に浴中に存在する。性能強化添加剤はまた、合計が0.001重量部以上、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上の量で、典型的に浴中に存在する。性能強化添加剤は、これらの上限と下限との(記載した値を含む)いかなる組み合わせ間の範囲の合計量で浴中に存在してもよい。例えば、性能強化添加剤は、典型的には合計が0.001〜15重量部、より典型的には0.005〜5重量部、さらに典型的には0.01〜1重量部の量で、浴中に存在してよい。重量部は、いずれの場合にも浴の総重量に基づく。
【0059】
プラスチック異形材は、熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーを含んでいてよい。本発明のある態様においては、プラスチック異形材は、(コ)ポリエステル、(コ)ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)およびスチレンコポリマー(例えば、スチレンアクリロニトリルコポリマー)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。(コ)ポリエステル、(コ)ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートコポリマーは、脂肪族または芳香族ポリマーであってよい(例えば、ビスフェノールAの残基を含む)。これらの列挙したポリマーは、状況に応じて、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーまたはそれらの組み合わせであってよい。
【0060】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、用語「熱可塑性ポリマー」および類似の用語は、軟化点または融点を有し、化学反応性の基同士(例えば、活性水素基や遊離イソシアネート基同士)の共有結合の形成に起因する三次元架橋ネットワークを実質的に含まないポリマーを意味する。本発明において使用できる熱可塑性ポリマーとしては、当業者に既知のもの、例えば熱可塑性(コ)ポリエステル、熱可塑性(コ)ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルポリカーボネートコポリマー、熱可塑性アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアルキル(メタ)アクリレートおよび熱可塑性スチレンコポリマーが挙げられる。
【0061】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、用語「熱硬化性ポリマー」および類似の用語は、化学反応性の基同士(例えば、活性水素基や遊離イソシアネート基またはオキシラン基同士;またはアリル基などの不飽和基同士)の共有結合の形成に起因する三次元架橋ネットワークを有するポリマーを意味する。熱硬化性ポリマーは、典型的には融点を有しない。本発明において使用できる熱硬化性ポリマーとしては、当業者に既知のもの、例えば、熱硬化性(コ)ポリエステル、熱硬化性(コ)ポリカーボネート、熱硬化性ポリエステルポリカーボネートコポリマー、熱硬化性ポリアミド、熱硬化性ポリウレタンおよび熱硬化性ポリアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
好ましい熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性ポリカーボネートが挙げられる。好ましい熱硬化性ポリカーボネートは、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えば、PPG Industries, Inc.より市販されているCR-39ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーを含む重合性組成物の重合物である。
【0063】
プラスチック異形材は、当業者に既知の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:離型剤;充填剤;繊維状またはフレーク状強化剤(例えば、アルミニウムフレークなどの金属フレーク);難燃剤;顔料;および乳白剤、例えば、二酸化チタン;光拡散剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、酸化亜鉛、Rohm and Haasより入手できるParaloid EXL-5136および架橋ポリメチルメタクリレート微小球(例えば、n-licrosphere(Nagase Americaより));紫外線安定剤;加水分解安定剤;熱安定剤;および抗菌剤。ある態様においては、プラスチック異形材は、顔料、架橋ポリメチルメタクリレートマイクロスフェア、ガラスマイクロスフェアおよび金属フレークの少なくとも1つを含む。
【0064】
成形プラスチック異形材は、形状を整えた異形材、フィルム(例えば、厚みが30ミル(762μm)未満のもの)およびシート(例えば、厚みが30ミル(762μm)以上のもの)から選択することができる。
【0065】
異形材は、プラスチック異形材の大部分への添加剤/染料の少なくとも幾分かの含浸(拡散または吸収)を促進し、それによって染色(または着色)もしくは添加剤の添加を行うのに少なくとも充分な期間および温度で、少なくとも部分的に浴中に浸漬される。使用する時間および温度は、典型的にはプラスチック異形材の組成に依存する。典型的には、熱硬化性プラスチック異形材の方が熱可塑性異形材よりも耐熱性が高い(例えば、加熱たわみ温度が高い)。従って、熱硬化性プラスチック異形材は、典型的には、熱可塑性異形材よりも高い温度での浴への浸漬に耐えることができる。
【0066】
浸漬時間は、押出機の速度や浴の長さに応じて、1時間までであってよく、好ましくは15分までであってよい。典型的には、浴の長さは10メートルまで、好ましくは3メートルまで、特には1メートルまでである。浸漬時間はまた、典型的には5秒以上、より典型的には30秒以上、さらに典型的には1分以上である。浸漬時間は、これらの上限と下限との間の(記載した値を含む)いかなる範囲にあってもよい。プラスチック異形材を浸漬している間の浴の温度は、典型的には室温(例えば25℃)以上で、140℃または浴の熱分解温度未満である。典型的には、浴は25℃〜99℃、例えば60℃〜97℃、もしくは70℃〜95℃の温度に維持される。本明細書において前述したように、浸漬の時間および温度は、染色される、もしくは添加剤と混合されるプラスチック異形材の種類に少なくとも部分的に依存する。例えば、熱可塑性芳香族ポリカーボネートのプラスチック異形材では、染色/添加剤の混合は、90〜99℃の温度で、典型的には1時間未満、より典型的には1〜15分の範囲の浸漬時間で、効率的に行われ得る。沸点よりも高い温度で、また0.1barよりも高い圧力下では、染色/混合時間は、5分未満に短縮する。
【0067】
場合によっては、添加剤/染料は、比較的柔らかいプラスチック異形材、例えば、比較的柔らかい熱可塑性異形材に、より迅速かつ効率的に吸収され得、この場合、比較的低い浴温度でも典型的には充分である。例えば、熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)から製作されたプラスチック異形材は、熱可塑性芳香族ポリカーボネートへの着色/添加剤の混合に使用したのと同じ浴組成物を用いて、ただし、それぞれ60℃および80℃の温度で、容易に染色することができる。
【0068】
このように処理されたプラスチック異形材は、次いで、浴から取り出される。処理済みプラスチック異形材の浴からの取り出しは、迅速に、もしくは比較的遅い速度で(例えば、着色勾配を生じるのに充分な速度で)行ってよい。着色勾配を有する染色プラスチック異形材を形成する場合、異形材の長期間にわたって浴中にとどまる部分は、含浸する染料の量が多く、従って、着色度が大きくなる(早い時期に浴から取り出された部分に対して)。
【0069】
浴は、添加剤/染料、水、キャリア、ジオール、所望による界面活性剤および所望による性能強化添加剤を、いかなる順序で混合するこによっても調製できる。例えば、キャリアとジオールとを添加剤/染料と混合し、次いでこの混合物を水に加えても、水を混合物に加えてもよい。ある態様においては、浴は以下の工程によって形成される:(i)水、キャリアおよびジオールの混合物を調製する;(ii)添加剤/染料をフィルタに導入する;(iii)混合物を、フィルタを通して添加剤/染料上を通過させ、それによって浴を形成する。浴、もしくは少なくともその一部を、次いで、典型的には継続的にフィルタを通過させる。所望により、水、キャリアおよびジオールの混合物を、例えば、25℃〜99℃、好ましくは60℃〜97℃、より好ましくは70℃〜95℃の温度まで加熱し、次いでフィルタ内で添加剤/染料と接触させてよい。
【0070】
添加剤/染料を加えるフィルタは、当業者に既知のいかなる適切なフィルタであってもよい。好ましい種類のフィルタはバグフィルタであり、この用途に典型的なのは、5〜500μm、より典型的なのは20〜200μmの範囲のフィルタである。このようにして浴を調製し維持することによって、浴中の染料のレベルは、実質的に飽和レベルに確実に維持される(本明細書において前述したとおり)。加えて、バグフィルタを通して継続的に浴を通過させることによって、浴への浸漬によって調製された染色済みの、もしくは処理済みのプラスチック異形材を汚すおそれのある粒子状の混入物(例えば、不溶化された染料)が、そこから取り除かれる。
【0071】
さらなる態様においては、浴は継続的に浸漬槽(または容器)に導入され、そこから抜き出される。典型的には、浸漬槽は、(注入導管を通じて)ポンプと流体連通している注入口を含む回路の一部であり、該ポンプは排出導管を通じて槽からの排出口と流体連通している。回路は、本明細書において前述したとおり、所望により、注入導管および/または排出導管と直列に配置された少なくとも1つのフィルタ、例えばバグフィルタを含んでよい。好ましくは、浸漬槽の注入口と排出口は、槽内の浴の液面よりも下に位置する。
【0072】
これに加えて、100μm未満、典型的には25μm未満の異形材を濾過できる非常に微細なフィルタを使用することができる。
【0073】
浸漬槽の注入口は、複数の孔を有する板(例えば、拡散装置や拡散板)を含んでいてもよい。複数の孔を有する板を通過させて継続的に浴を浸漬槽に導入することによって、浸漬槽内での激しい混合のレベルが上昇し、その中に浸漬されているプラスチック異形材の染色の効率性および均一性が向上する。拡散板の孔は、例えば、円形、楕円形、多角形またはそれらの組み合わせなどのいかなる適切な形状を有してもよい。拡散板の孔は、典型的には直径が0.79mm〜12.70mm、例えば3.17mm〜6.35mmである。拡散板は、いかなる適切な構成を有してもよく、例えば、平面、凹面または凸面であってよい。
【0074】
本発明の方法の範囲には、さらなる工程が含まれ、それによると浴の組成は、例えば最初の添加剤/染料が、その後の添加剤/染料で置き換えられるように変更される。本発明のある態様においては、添加剤/染料は、浴の他の構成成分(例えば、水、キャリア、ジオールおよび所望による界面活性剤)から分離される。このような分離は、浴の非添加剤/非染料構成成分の、例えば、別種の添加剤/染料または新しい添加剤/染料との再利用、もしくは浴から取り出された処理済みプラスチック異形材をすすぐためのすすぎ組成物としての再利用を可能にする点で、環境面で好ましい。加えて、この添加剤/染料の分離方法は、浴の添加剤/染料が(例えば、温度の急上昇による過熱によって)損なわれている場合、例えば、酸化していたり、もしくは変性していたりする場合に、行うことができる。
【0075】
染料分離工程は、浴を微粒活性炭と接触させ、次いで、水、キャリア、ジオールおよび所望による界面活性剤を分離工程前と実質的に同じ相対的比率で含み、実質的に染料を含まない液体を、そこから単離することによって行うことができる。次いで、この染料非含有液体を異なる染料と混合して、異なる浴を形成することができる。浴は、活性炭を含む床またはカラムを継続的に通過させることによって、活性炭と接触させることができる。
【0076】
活性炭は、典型的には、浴の実質的にすべての染料と、浴の有機液体成分(例えば、キャリア、ジオールおよび所望による界面活性剤)の好ましくはごく少量を保持する。しかし、有機液体成分が幾分蒸発する場合があり、蒸発した成分をその後に加えることによって染料非含有液体を調整する必要がある場合がある。染料分離工程を、染料、水、キャリアおよびジオールを含む浴で(所望による界面活性剤および所望による性能強化添加剤なしで)行った場合、有機液体成分は、活性炭上に実質的に全く保持されないことが見出された。この結果は、有機化合物を水性組成物から分離するための活性炭の使用が既知である点において、特に驚くべきことである。従って、染料と相当量の浴の有機液体成分との両方が保持されることが予想されるが、驚くべきことに、この場合には両方の保持は観察されない。
【0077】
本発明のある態様においては、本方法は、以下を含む染料分離工程をさらに含む:
(i) 浴を微粒活性炭と接触させて、浴と微粒活性炭との混合物を形成する;
(ii) 混合物から、水、キャリアおよびジオールを含む染料非含有液体を単離する;および
(iii) 所望により、染料非含有液体に少なくとも1つの染料を添加して、それによってさらなる浴を形成する。
【0078】
本明細書において前述したように、浴を、微粒活性炭を含む床またはカラムを通過させることによって、微粒活性炭と接触させることができる。染料分離工程で単離された染料非含有液体は、実質的に染料を含まない。例えば、分光光度分析によって測定すると、含有染料の量が検出不可能である。
【0079】
微粒活性炭は、典型的には200メッシュの粒径(例えば、粒径0.075mm)を有する。本発明において使用できる市販の微粒活性炭の一例は、Calgon Carbon Corporation製のFiltrasorb 200活性炭である。
【0080】
染料を分離するのに必要な活性炭の量は、一つには浴の温度に依存する。一般的に、染料を分離するのに必要な活性炭の量は、浴の温度が下降すると減少し、浴の温度が上昇すると増加する。本発明のある態様においては、浴を、25℃の温度で活性炭と接触させる。
【0081】
染料非含有液体に添加してもよい染料は、静的染料、フォトクロミック染料およびそれらの組み合わせから選択することができる。添加してもよい静的染料およびフォトクロミック染料としては、本明細書において前述した種類および例が挙げられる。染料非含有液体に添加する染料は、浴から取り除いた染料と同じ種類のものであってよく、その場合、さらなる浴は新しい、もしくは再生された浴である。もしくは、染料非含有液体に添加する染料は、浴から取り除いた染料とは異なっていてもよく、その場合、さらなる浴は別個の、もしくは異なる浴である。
【0082】
染料分離工程は、染料非含有液体および/またはさらなる浴に、さらなる材料を添加する工程を含んでもよい。そのような他の材料としては、例えば、界面活性剤および/または性能強化添加剤(いずれも、本明細書において前述した種類および例から選択することができる)が挙げられる。
【0083】
浴から取り出した後、染色プラスチック異形材は、典型的には、過剰の浴材料を取り除くためにすすがれる。すすぎ工程は、典型的には、染色異形材の表面の少なくとも一部を、水、および所望により式Iで表されるキャリア、および/またはジオールを含むすすぎ組成物と接触させることによって達成される。すすぎ組成物の水は、脱イオン水または蒸留水であってよい。すすぎ組成物中に存在してよいキャリアおよびジオールは、浴に関して本明細書において前述したとおりであり、それぞれ、本明細書中にすでに列挙した種類および例から選択することができる。例えば、ある態様においては、キャリアはエチレングリコールモノブチルエーテルであり、ジオールはジエチレングリコールである。好ましくは、すすぎ組成物は、(本明細書において、浴のジオール(iv)に関して前述したとおり)水、式Iで表されるキャリアおよびジオールで構成される。
【0084】
すすぎ組成物は、例えば、浸漬(浸すこと)、スプレー塗布および/またはカーテン塗布によって、染色プラスチック異形材の表面と接触させることができる。染色プラスチック異形材の表面との接触の後、すすぎ組成物を再生処理して、さらなる染色異形材のすすぎに使用することができる。すすぎサイクルを何度も行うと、染料は、典型的には再生処理したすすぎ組成物中に蓄積する。蓄積した染料は、染料分離工程に関して本明細書において前述したとおり、再生処理したすすぎ組成物を微粒活性炭と接触させることによって、再生処理したすすぎ組成物から取り除くことができる。蓄積した染料を再生処理したすすぎ組成物から分離すると、染料非含有の再生処理したすすぎ組成物を、次いで、さらなる染色異形材のすすぎに使用することができる。
【0085】
すすぎ組成物は、典型的には水を、典型的には50〜100重量部、より典型的には60〜87重量部、さらに典型的には65〜75重量部の量で含む。重量部は、いずれの場合にもすすぎ組成物の総重量に基づく。
【0086】
存在する場合、すすぎ組成物中に存在してもよいキャリアおよび/またはジオールの量は、浴に関して本明細書において前述した範囲および量から選択することができる。例えば、キャリアは、すすぎ組成物中に、典型的には10〜30重量部、より典型的には15〜25重量部、さらに典型的には17〜20重量部の量で存在してよい。重量部は、いずれの場合にもすすぎ組成物の総重量に基づく。ジオールは、例えば、すすぎ組成物中に、典型的には1〜20重量部、より典型的には5〜15重量部、さらに典型的には10〜12重量部の量で存在してよい。重量部は、いずれの場合にもすすぎ組成物の総重量に基づく。
【0087】
すすぎの後、染色プラスチック異形材を、典型的には乾燥させる。乾燥は、すすぎを済ませた染色プラスチック異形材を乾いた布でふくことによって、および/または室温(25℃)で保持することによって、達成することができる。もしくは、すすぎを済ませた染色プラスチック異形材を、高温(25℃を超える温度)、例えば50℃〜100℃の温度にさらすことによって、乾燥してもよい。加えて、温風(例えば、50℃〜100℃の温度の風)を、すすぎを済ませた染色プラスチック異形材の表面に通してもよい。
【0088】
該処理は、特に好ましくは、押し出してキャリブレートした後(例えば、キャリブレーションスリーブなどのキャリブレーション装置を通過した後)のプラスチック異形材が、少なくとも1つの添加剤、特に好ましくは染料および紫外線安定剤から成る群から選択される添加剤を含む浴を通過し、次いですすぎ浴を通過し、該プラスチック異形材が、次いで引取装置で搬送され、次いで適切な方法、例えばのこ引きによって所望の長さに切断されるように、実施される。
【0089】
本発明を、以下の実施例においてより具体的に説明するが、実施例における数々の変形および変更は当業者にとって明らかであろうから、これらの実施例は例示のみを目的とする。
【実施例】
【0090】
以下の実施例を行うために使用する装置は、以下のものから構成される:
・直径(D)が48mm、長さが33XDの3ゾーンスクリュー付き押出機
・ダイ直径が50mm、マンドレル直径が44mmの管押し出しヘッド
・直径46mmのキャリブレーションスリーブ
・温度調節可能な浴(30リットル)およびすすぎ浴(20リットル)
・容量80リットルの添加剤槽
・引取装置、および
・定寸切断装置(鋸)。
【0091】
溶融物は、ダイからキャリブレーションスリーブ、および表1に記載の温度を有する温度調節された水浴を通過する。材料の最終的な成形および冷却を、キャリブレーション装置内および浴中で行う。次いで、引取装置を通して管を搬送し、鋸で定寸に切断する。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例1:
直径が46mm、肉厚が2mmのポリカーボネート管を押し出すために、粘性の高い分岐状のポリカーボネート(Makrolon(登録商標)1143)を使用する。該ポリカーボネートは、MVRの測定値(ISO 1133による)が約3cm3/10分である。
【0094】
ダイ溶液の配合:
総量:以下のものから成る60リットル:
・水58リットル
・ベンジルアルコール2リットル
・以下のものから成る粉末染料250g:
Dianix Turquoise Blue S-BG(Dystarより)180g
Dianix Blue E-R 150%(Dystarより)70g
【0095】
説明:
染料をまず40℃の水と一緒に添加剤槽に分散させ、次いで、溶液を添加剤槽内で96℃まで加熱し、浴とともに環状に循環させる。次いで、ベンジルアルコールを添加剤槽に量り入れ、その後で溶液を添加剤槽から浴1中に継続的に環状にポンプで注入し、添加剤槽に戻す。これにより、均一な添加剤処理を提供するために、ポリカーボネート管の付近における均一な分布および循環が可能になり、従って、均一な染料の分布が保証される。ここで、管は染料溶液とともに浴を通過し、引取速度を0.6〜2.0m/分に制御することによって、溶液がポリカーボネート管に作用する時間を変化させることができ、従って、色の強さや移動の深さの調節が可能になる。
【0096】
60リットルの多量の溶液を使用して、管の押出量25kg/時で3時間にわたって押し出しを行った。実行時間の全体にわたって、染色の強さは一定のままであった。
【0097】
さらなる試験において、オパール管上の染料の着色品質、強さおよび分布を評価するために、Makrolon(登録商標)1143ポリカーボネートに5%Makrolon(登録商標)1920(オパール染料ポリカーボネートマスターバッチ)を加えた。試験期間の全体にわたって、非常に効果的な分布が得られた。
【0098】
実施例2:
直径が46mm、肉厚が2mmのポリカーボネート管を押し出すために、粘性の高い分岐状のポリカーボネート(Makrolon(登録商標)1143)を使用する。該ポリカーボネートは、MVRが約3cm3/10分である。
【0099】
ダイ溶液の配合:
総量:以下のものから成る60リットル:
・水42リットル
・ブトキシエタノール(エチレングリコールブチルエーテル)12リットル
・ジエチレングリコール6リットル
・以下のものから成る粉末染料180g:
Macrolex(登録商標)Red G(Lanxess Deutschland GmbHより)108g
Macrolex(登録商標)Red 5B(Lanxess Deutschland GmbHより)33g、および
Macrolex(登録商標)Yellow 3G(Lanxess Deutschland GmbHより)39g
【0100】
説明:
染料をまず40℃で添加剤槽内の混合溶媒に溶解させ、次いで水を加え、この溶液を添加剤槽内で96℃まで加熱し、浴とともに環状に循環させる。次いで、溶液を添加剤槽から浴中に継続的に環状にポンプで注入し、再び添加剤槽に戻す。これにより、均一な添加剤処理を提供するために、ポリカーボネート管の付近における均一な分布および循環が可能になり、従って、均一な染料の分布が保証される。
【0101】
次いで、管は染料溶液とともに浴を通過し、引取速度を0.6〜2.0m/分に制御することによって、溶液がポリカーボネート管に作用する時間を変化させることができ、従って、着色の強さや移動の深さの調節が可能になる。
【0102】
60リットルの多量の溶液を使用して、管の押出量25kg/時で3時間にわたって押し出しを行う。実行時間の全体にわたって、染色の強さは一定のままである。
【0103】
さらなる試験において、オパール管上の染料の着色品質、強さおよび分布を評価するために、Makrolon(登録商標)1143ポリカーボネートに5%Makrolon(登録商標)1920(オパール染料ポリカーボネートマスターバッチ)を加えた。試験期間の全体にわたって、非常に効果的な分布が得られた。
【0104】
本発明を、例示の目的で詳細に説明してきたが、かかる詳細は例示の目的のみのためのものであり、当業者は、特許請求の範囲に限定されている場合を除き、本発明の精神および範囲からそれることなく、本発明に変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形材を押し出してキャリブレートし、キャリブレートした異形材を、少なくとも1つの添加剤を含む浴を通過させる工程を含んでなるプラスチック異形材の処理方法。
【請求項2】
添加剤が、染料、紫外線安定剤、帯電防止剤、水滴防止剤(antidrop agents)、赤外線吸収剤、界面活性剤、蛍光増白剤および殺生物剤から成る群から選択される少なくとも1つの成分である請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
添加剤が、染料および紫外線安定剤から成る群から選択される少なくとも1つの成分である請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
浴が、浸漬槽または浸漬容器中にある請求項1に記載の処理方法。

【公表番号】特表2008−546903(P2008−546903A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519820(P2008−519820)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005879
【国際公開番号】WO2007/025579
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】