説明

プラスチック製カップ状容器およびその一次成形品

【課題】 重量増加を招くことなく口部フランジの口当たりを改善できるプラスチック製カップ状容器を提案すること。
【解決手段】 カップ状容器1は、胴部2と、胴部2の開口縁3aから外に広がる口部フランジ4を有し、口部フランジ4は一定肉厚t(41)のフランジ本体部分41と、その外周縁部分4aに形成した肉厚Lの厚肉外周縁部分42とを備えている。フランジ本体部分41の肉厚t(41)は薄く、厚肉外周縁部分42のみが充分に厚い。口部フランジ4の肉厚を全体として厚く形成していた従来のカップ状容器に比べて、重量を低減でき、しかも口部フランジ4の口当たりを改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形により製造されるプラスチック製カップ状容器、および当該カップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品(プリフォーム)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなる一次成形品を二軸延伸ブロー成形することにより形成されるプラスチック製容器としては、底付の円錐台状あるいは筒状の胴部と、この胴部の開口縁に連続して外側に広がっている口部フランジとを備えたカップ状容器が知られている。
【0003】
カップ状容器は乳飲料などの容器として用いられ、乳飲料などの充填物が直接にカップ状容器に口を付けて飲まれる場合がある。この場合、カップ状容器の口部フランジに口が当たるので、口部フランジが薄い平坦な形状では口当たりが悪い。このため、カップ状容器では、口部フランジの肉厚を厚くすることによって、口部フランジに口を当てたときの感触を良くしている。
【0004】
また、口部フランジを厚くしておくことにより、カップ状容器の強度が向上し、口部フランジ表面へのシール材の接着性が向上し、口部フランジを覆うカバーキャップの安定性が向上するなどの効果が見込まれる。
【0005】
ここで、このような肉厚の厚い口部フランジを備えたカップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品において、肉厚の厚い口部フランジを形成する口部フランジ形成部分は延伸されずにそのまま残り口部フランジとされる。従って、一次成形品の口部フランジ形成部分も成形品であるカップ状容器の口部フランジと同様に肉厚の厚い状態で形成しておく必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一次成形品の口部フランジ形成部分を厚くした場合には、生産性の観点から、これに連続している胴部形成部分の肉厚も厚くせざるを得ない。
【0007】
また、口部フランジ形成部分に比べて、これが連続している胴部形成部分の開口縁側の部分の厚さが薄すぎる場合には、一次成形品の射出成形時に射出圧力が口部フランジ形成部分の全体に伝達するよりも先に、薄い開口縁側の部分の樹脂が冷却してしまう。この結果、口部フランジ形成部分にヒケができ、その上面が平坦にならず凹みができてしまう。口部フランジ形成部分の上面が平坦にならないと、そこに熱接着あるいは溶剤接着されるシールが不完全接着状態になるなどの弊害が発生する。かかる弊害を回避するためには、胴部形成部分の肉厚も厚くせざるを得ない。
【0008】
このように、口部フランジ形成部分の肉厚を厚くする場合には、それに連続している胴部形成部分の肉厚も厚くする必要がある。よって、一次成形品の重量、従って成形品であるカップ状容器の重量が全体として大きくなり、また、一個のカップ状容器を製造するために必要な樹脂材料も増加してしまう。
【0009】
本発明の課題は、重量の増加を招くことなく、口当たりの良い口部フランジを備えたプラスチック製カップ状容器、および当該カップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品を提案することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、かかる課題に加えて、平坦な上面の口部フランジを備えたプラスチック製カップ状容器、および当該カップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、底付きの円錐台状あるいは筒状の胴部と、この胴部の開口縁に連続して外側に広がる口部フランジとを備えたプラスチック製のカップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品において、
ブロー成形により延伸されて前記胴部になるカップ状の胴部形成部分と、
ブロー成形時に延伸されずにそのまま前記口部フランジになる口部フランジ形成部分とを有し、
前記口部フランジ形成部分の外周縁部分は、当該外周縁部分以外の前記口部フランジ形成部分に比べて厚い厚肉外周縁部分であることを特徴としている。
【0012】
本発明の一次成形品を用いてカップ状容器をブロー成形すると、外周縁部分のみが厚い口部フランジを備えたカップ状容器が得られる。外周縁部分が厚いので、ここに口を当てた際の感触を改善できる。また、外周縁部分のみが厚いので、口部フランジの全体が肉厚の場合に比べて、使用樹脂材料を少なくでき、従って、重量を低減できる。
【0013】
さらに、外周縁部分のみが厚いので、それ以外の口部フランジ形成部分の厚さと、これが連続している胴部形成部分の厚さをほぼ同一の厚さにできる。この結果、射出成形時に口部フランジ形成部分にヒケが発生することがなく、当該口部フランジ形成部分の上面を平坦に成形することができる。
【0014】
ここで、前記口部フランジ形成部分を、前記胴部形成部分の開口縁に連続して外側に広がっているほぼ一定厚さのフランジ本体部分と、このフランジ本体部分の外周縁部分に形成された前記厚肉外周縁部分とを備えた形状とし、前記厚肉外周縁部分を、前記フランジ本体部分の外周縁部分を所定長さだけ下方に折り曲げた形状の折り曲げ部分として形成することができる。
【0015】
また、前記厚肉外周縁部分を、前記フランジ本体部分の外周縁部分を、当該フランジ本体部分の厚さとほぼ同一幅で、所定量だけ下方に突出させることにより形成した突出部分として形成することができる。
【0016】
ここで、前記厚肉外周縁部分は、前記口部フランジ形成部分が連続している前記胴部形成部分の開口縁側の部分の肉厚より厚い肉厚とすることが望ましい。
【0017】
また、前記口部フランジ形成部分における前記厚肉外周縁部分以外の部分の厚さを、当該口部フランジ形成部分が連続している前記胴部形成部分の開口縁部分の厚さと同一あるいは薄い厚さとすることが望ましい。
【0018】
次に、本発明は肉厚の厚い口部フランジを備えたプラスチック製カップ状容器に関するものであり、上記構成の一次成形品をブロー成形することにより形成されたことを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、外周縁部分のみが厚い口部フランジを備えたカップ状容器が得られる。外周縁部分が厚いので、ここに口を当てた際の感触を改善できる。また、外周縁部分のみが厚いので、口部フランジの全体が肉厚の場合に比べて、使用樹脂材料を少なくでき、従って、重量を低減できる。これに加えて、シール性などに優れた平坦な上面の口部フランジを有するカップ状容器を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のカップ状容器および一次成形品は、その口部フランジおよび口部フランジ形成部分の外周縁部分のみの肉厚をそれ以外の口部フランジ部分よりも厚くしてある。従って、重量および樹脂材料の使用量の増加を抑制しながら、口部フランジ部分に口を当てた際の感触を改善できる。
【0021】
また、一次成形品の口部フランジ形成部分のフランジ本体形成部分の肉厚に比べて、これに連続している胴部形成部分の開口縁の部分の肉厚を同一あるいは厚くできる。よって、一次成形品の射出成形時に、口部フランジ形成部分にヒケが発生してその上面に凹みができるなどの弊害を回避できる。したがって、平坦な上面の口部フランジ形成部分を備えた一次成形品を用いてブロー成形されたカップ状容器は、口部フランジの上面が平坦面であるので、そのシール性を確保できるなどの利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明を適用したカップ状容器およびプリフォームの一例を説明する。
【0023】
図1(a)は本発明を適用したプラスチック製のカップ状容器の一例を半断面状態で示す立面図である。図1(b)はカップ状容器における口部フランジの断面を示す拡大図である。図1(c)は、カップ状容器を二軸延伸ブロー成形により形成するために用いる一次成形品であるプリフォームを半断面状態で示す立面図である。
【0024】
(カップ状容器)
図1(a)に示すように、本例のカップ状容器1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックからなり、上側に広がっている底付きの円錐台状の胴部2と、この胴部2の開口縁3aに連続して外側に広がっている円環状の口部フランジ4とを備えている。胴部2は、開口縁3aに到る上端部分が一定高さの円筒状の首部3となっており、この首部3の下端に円錐台形状の胴部本体部分5が連続している。
【0025】
図1(b)に示すように、首部3の上端の開口縁3aから外側に広がっている口部フランジ4の外周縁部分4aは、当該外周縁部分以外の口部フランジ形成部分に比べて厚い厚肉外周縁部分42となっている。すなわち、口部フランジ4は、一定厚さの円環状のフランジ本体部分41と、この外周縁部分4aに形成された厚肉外周縁部分42とを備えた形状となっている。厚肉外周縁部分42の肉厚Lは、フランジ本体部分41の肉厚t(41)に比べて充分に厚く、フランジ本体部分41が連続している胴部形成部分2の首部3の肉厚t(3)よりも厚い。本例では、フランジ本体部分41の肉厚t(41)を、首部3の肉厚t(3)と同一の厚さ、あるいはそれよりも薄い厚さとしてある。
【0026】
ここで、厚肉外周縁部分42を、フランジ本体部分41の外周縁部分を所定長さ(本例では厚さLに対応する長さ分)だけ下方に折り曲げた形状の折り曲げ部分として形成することができる。または、厚肉外周縁部分42を、フランジ本体部分41の外周縁部分を、当該フランジ本体部分41の肉厚t(41)とほぼ同一幅t(42)で、所定量(=L−t(41))だけ下方に突出させることにより形成した突出部分としてもよい。
【0027】
このように、本例のカップ状容器1では、その口部フランジ4の外周縁部分4aの肉厚が厚肉外周縁部分42の肉厚Lであり、フランジ本体部分41に比べて肉厚が充分に厚くなっている。よって、口当たりの良い口部フランジ4を備えたカップ状容器1を得ることができる。
【0028】
また、フランジ本体部分41の肉厚t(41)は薄いので、口部フランジ4の断面形状は、厚さLの口部フランジ4におけるフランジ本体部分41の下面側の部分(図1(b)における部分4b)を肉ぬすみした形状となっている。よって、口部フランジ4の全体の肉厚を厚くしていた従来のカップ状容器に比べて樹脂材料の使用量を低減でき、従って重量を低減できる。
【0029】
(プリフォーム)
この形状のカップ状容器1を二軸延伸ブロー成形によって得るために用いるプリフォーム11は、図1(c)に示すように、カップ状容器1の胴部2を形成することになる胴部形成部分12と、口部フランジ4を形成することになる口部フランジ形成部分14とを備えている。胴部形成部分12には、胴部本体5を形成することになる胴部本体形成部分15と、首部3を形成することになる首部形成部分13が含まれている。
【0030】
胴部本体形成部分15は二軸方向に延伸を受けて膨張してカップ状容器1の胴部5になる。これに対して、首部形成部分13および口部フランジ形成部分14は、延伸を受けずに、そのままカップ状容器1の首部3および口部フランジ4として残る部分である。これらの首部形成部分13および口部フランジ形成部分14の寸法及び形状は、カップ状容器1の首部3および口部フランジ4と同一とされている。したがって、口部フランジ4におけるフランジ本体部分41および厚肉外周縁部分42に対応する部分は、それぞれ、口部フランジ形成部分14における肉厚がt(41)のフランジ本体形成部分141および、肉厚がLの厚肉外周縁形成部分142として形成されている。
【0031】
本例のプリフォーム11では、一定厚さの口部フランジ形成部分14における外周縁部分のみを厚肉外周縁形成部分142として形成してある。従って、口部フランジ形成部分14を全体的に厚くし、これに伴って首部形成部分13およびこれに連続している胴部形成部分15も厚くしていた従来の一次成形品に比べて、一次成形品の樹脂使用量、従って重量を低減できる。
【0032】
また、口部フランジ形成部分14のフランジ本体形成部分141の肉厚t(41)は、これが連続している首部形成部分13の肉厚t(3)と同一あるいはそれよりも薄い厚さとなっている。従って、プリフォーム11の射出成形時に、射出圧力が口部フランジ形成部分14に伝達するまでに、首部形成部分13が冷却してしまい、口部フランジ形成部分14にヒケが発生してその上面に凹みができるという弊害を防止できる。よって、本例のプリフォーム11を用いてブロー成形されたカップ状容器1では、その口部フランジ4の上面が平坦面となっているので、そのシール性を確保できるなどの利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明を適用したカップ状容器を半断面状態で示す立面図であり、(b)はカップ状容器における口部フランジの断面を示す拡大図であり、(c)はプリフォームを半断面状態で示す立面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 カップ状容器
2 胴部
3 首部
3a 開口縁
4 口部フランジ
5 胴部
4a 外周縁部分
11 プリフォーム
12 胴部形成部分
13 首部形成部分
14 口部フランジ形成部分
15 胴部本体形成部分
41 フランジ本体部分
42 厚肉外周縁部分
141 フランジ本体形成部分
142 厚肉外周縁形成部分
L 厚肉外周縁部分の厚さ
t(41) フランジ本体部分の厚さ
t(42) 厚肉外周縁部分の幅
t(3) 首部の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底付きの円錐台状あるいは筒状の胴部と、当該胴部の開口縁に連続して外側に広がる口部フランジとを備えたプラスチック製のカップ状容器をブロー成形するために用いる一次成形品において、
ブロー成形により延伸されて前記胴部になるカップ状の胴部形成部分と、
ブロー成形時に延伸されずにそのまま前記口部フランジになる口部フランジ形成部分とを有し、
前記口部フランジ形成部分の外周縁部分は、当該外周縁部分以外の前記口部フランジ形成部分に比べて厚い厚肉外周縁部分であるプラスチック製カップ状容器の一次成形品。
【請求項2】
請求項1において、
前記口部フランジ形成部分は、前記胴部形成部分の開口縁に連続して外側に広がっているほぼ一定厚さのフランジ本体部分と、当該フランジ本体部分の外周縁部分に形成された前記厚肉外周縁部分とを備え、
前記厚肉外周縁部分は、前記フランジ本体部分の外周縁部分を所定長さだけ下方に折り曲げた形状の折り曲げ部分であるプラスチック製カップ状容器の一次成形品。
【請求項3】
請求項1において、
前記口部フランジ形成部分は、前記胴部形成部分の開口縁に連続して外側に広がっているほぼ一定厚さのフランジ本体部分と、当該フランジ本体部分の外周縁部分に形成された前記厚肉外周縁部分とを備え、
前記厚肉外周縁部分は、前記フランジ本体部分の外周縁部分を、当該フランジ本体部分の厚さとほぼ同一幅で、所定量だけ下方に突出させることにより形成した突出部分であるプラスチック製カップ状容器の一次成形品。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記厚肉外周縁部分は、前記口部フランジ形成部分が連続している前記胴部形成部分の開口縁側の部分の肉厚より厚いプラスチック製カップ状容器の一次成形品。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記口部フランジ形成部分における前記厚肉外周縁部分以外の部分の厚さは、当該口部フランジ形成部分が連続している前記胴部形成部分の開口縁側の部分の厚さと同一あるいはそれ以下の厚さであるプラスチック製カップ状容器の一次成形品。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の一次成形品をブロー成形することにより形成されるプラスチック製カップ状容器。

【図1】
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【公開番号】特開2004−268570(P2004−268570A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−366291(P2003−366291)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】