説明

プラスチック部材の製造方法およびプラスチック部材

【課題】組成分布を有するプラスチック部材を、簡便な設備で、工程数が少なく、短時間で得ることができるプラスチック部材の製造方法を提供する。
【解決手段】放射線照射面を設けた注型セル3に第1の放射線重合性組成物4を充填する工程と、前記注型セル3の放射線照射面に放射線10を照射し、前記第1の放射線重合性組成物4の一部を重合し第1の組成物の重合体6を得る工程と、未重合の前記第1の放射線重合性組成物を前記注型セル3から除去する工程と、除去により生じた前記注型セル3の空隙に、第2の放射線重合性組成物8を充填して前記第1の組成物の重合体6と接触させる工程と、前記第2の放射線重合性組成物8を前記第1の組成物の重合体6の中へ拡散させる工程と、前記注型セル内3で拡散した前記第2の放射線重合性組成物8および前記第1の組成物の重合体6の全体を硬化させる工程とを有するプラスチック部材9の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成分布を有するプラスチック部材の製造方法およびプラスチック部材に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、光ファイバの結像系、複写機、コンパクトディスクのピックアップ光学系などの各種光学系において、球面収差や色収差などの諸収差を補正するためには、複数のレンズが必要である。特に、撮像系や白色光源下で使用される光学系では、色収差を補正するために単色光学系に比べてレンズ枚数が多く必要とされる。
【0003】
そこで、レンズ媒質中に光軸から半径方向に屈折率勾配を有するラジアル型屈折率分布レンズを用いると、特に色収差の補正に優れた効果を示す。そのため、色収差補正用のレンズの枚数を削減でき、ズームレンズの小型化や、広角化や高倍率化などの高機能化を実現することができる。
【0004】
プラスチックレンズの屈折率分布は、例えば、屈折率の異なる2種以上のモノマの共重合比率や、マトリックスの有機成分とは異なる屈折率を有する無機微粒子の濃度分布など、媒質中の組成分布によって形成することができる。
【0005】
例えば、プラスチックレンズに組成分布を形成する方法としては、固形の高分子重合体をモノマー溶液と接触させ、高分子重合体中に前記モノマーを拡散させる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第03989035号公報
【特許文献2】特開平7−40357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術は、高分子重合体が自己形状保持性を得るまで光硬化した後、モノマー中で高分子重合体を膨潤させてモノマーを拡散させる方法である。そのため高分子重合体の硬化度が高く、モノマの拡散が遅いため、直径20mmのサンプルで中心部にまでモノマを拡散させるには少なくとも17日を要する。得られた屈折率差は、中心部と周辺部で0.02程度である。
【0008】
特許文献2は、注型セルに加圧機構が必要であった。
【0009】
また、大きな屈折率差を得るためには、屈折率の大きい金属酸化物などの微粒子の濃度分布を形成することが有効である。しかし、特許文献1、2には、モノマーの拡散を用いて組成分布を有するプラスチック部材を製造する方法において、微粒子により濃度分布を形成する方法は開示されていない。
【0010】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、組成分布を有するプラスチック部材を、簡便な設備で、工程数が少なく、短時間で得ることができるプラスチック部材の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記のプラスチック部材の製造方法で作製された組成分布を有するプラスチック部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する組成分布を有するプラスチック部材の製造方法は、放射線照射面を設けた注型セルに放射線重合可能な第1のモノマーを含有する第1の放射線重合性組成物を充填する工程と、前記注型セルの放射線照射面に放射線を照射し、前記第1の放射線重合性組成物の一部を重合し第1の組成物の重合体を得る工程と、未重合の前記第1の放射線重合性組成物を前記注型セルから除去する工程と、前記除去により生じた前記注型セルの空隙に、放射線重合可能な第2のモノマーを含有する第2の放射線重合性組成物を充填して前記第1の組成物の重合体と接触させる工程と、前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる工程と、前記注型セル内で拡散した前記第2の放射線重合性組成物および前記第1の組成物の重合体の全体を硬化させる工程と、を有することを特徴する。
【0013】
上記の課題を解決するプラスチック部材は、上記のプラスチック部材の製造方法で作製されたプラスチック部材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組成分布を有するプラスチック部材を、簡便な設備で、工程数が少なく、短時間で得ることができるプラスチック部材の製造方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記のプラスチック部材の製造方法で作製された組成分布を有するプラスチック部材を提供することができる。また、本発明によれば、微粒子の濃度分布を有するプラスチック部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプラスチック部材の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の屈折率分布を示す図である。
【図3】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の酸化ジルコニウム微粒子の分布を示す図である。
【図4】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の酸化ジルコニウム微粒子の分布を示す図である。
【図5】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の酸化ケイ素微粒子由来の蛍光X線強度の分布を示す図である。
【図6】本発明の実施例において使用したグレースケールマスクの透過率プロファイルを示す図である。
【図7】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の屈折率分布を示す図である。
【図8】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の酸化ジルコニウム微粒子の分布を示す図である。
【図9】本発明の実施例において得られたプラスチック部材の屈折率分布を示す図である。
【図10】比較例1及び2のプラスチック部材の製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の実施例8において得られたプラスチック部材の屈折率分布を示す図である((a)実施例8−2(b)実施例8−3(c)実施例8−4)。
【図12】本発明の実施例8において、照射した紫外線の露光時間と第1の組成物の重合体の複素粘度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る組成分布を有するプラスチック部材の製造方法は、放射線照射面を設けた注型セルに放射線重合可能な第1のモノマーを含有する第1の放射線重合性組成物を充填する工程と、前記注型セルの放射線照射面に放射線を照射し、前記第1の放射線重合性組成物の一部を重合し第1の組成物の重合体を得る工程と、未重合の前記第1の放射線重合性組成物を前記注型セルから除去する工程と、除去により生じた前記注型セルの空隙に、放射線重合可能な第2のモノマーを含有する第2の放射線重合性組成物を充填して前記第1の組成物の重合体と接触させる工程と、前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる工程と、前記注型セル内で拡散した前記第2の放射線重合性組成物および前記第1の組成物の重合体の全体を硬化させる工程と、を有することを特徴する。
【0019】
本発明のプラスチック部材を製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のプラスチック部材の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
【0020】
一対の光学ガラス1の間にガスケット2を設けた注型セル3を用意する。光学ガラス1からなる光照射面を設けた上記の注型セル3のガスケット間に、放射線重合可能な第1のモノマーを含有する第1の放射線重合性組成物4を充填する(図1(a))。
【0021】
前記注型セルの上部に遮蔽物5を設けて形成された光照射面の一部分に光等の放射線10を照射し、前記注型セル内の前記第1の放射線重合性組成物4の一部を重合して第1の組成物の重合体6を得る(図1(b))。
【0022】
未重合の前記第1の放射線重合性組成物を前記注型セルから除去する(図1(c))。
【0023】
除去により生じた前記注型セルの空隙7に、放射線重合可能な第2のモノマーを含有する第2の放射線重合性組成物8を充填して前記第1の組成物の重合体6と接触させる(図1(d))。
【0024】
所定時間放置して、前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる(図1(e))。
【0025】
前記注型セル内で拡散した前記第2の放射線重合性組成物および前記第1の組成物の重合体の全体を,放射線照射または加熱により硬化させる(図1(f))。
【0026】
注型セルから硬化物を取り出し、組成分布を有するプラスチック部材9を得る(図1(g))。
【0027】
以下、本発明の製造方法で使用する原料について説明する。
【0028】
(第1の放射線重合性組成物)
第1の放射線重合性組成物(A)は、感放射線重合開始剤(c)と、放射線重合可能な第1のモノマー(d)より構成される。また、第1の放射線重合性組成物は微粒子(e)、光増感剤(f)、熱重合開始剤(g)を含有していても良い。
【0029】
第1のモノマー(d)としては、ラジカル重合性モノマまたはカチオン重合性モノマが例として挙げられる。
【0030】
ラジカル重合性モノマとしてはアクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ以上有する化合物が好ましい。
【0031】
カチオン重合性モノマとしてはビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基を1つ以上有する化合物が好ましい。
【0032】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、
アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC110S、R−564、R−128H (以上、日本化薬製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO, PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記において、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味し、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。
【0036】
多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、
ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート #195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート 4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬製)、アロニックス M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和高分子製)
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
ビニルエーテル基を1つ有する化合物としては、例えば、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
ビニルエーテル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
エポキシ基を1つ有する化合物としては、例えば、
フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
エポキシ基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
オキセタニル基を1つ有する化合物としては、例えば、
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
オキセタニル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
なお、第1のモノマー(d)成分は、単官能モノマーと多官能モノマーとを併用して用いることが好ましい。
【0044】
感放射線重合開始剤(c)は、第1のモノマー(d)成分がラジカル重合性モノマーの場合は感放射線ラジカル発生剤であり、第1のモノマー(d)成分がカチオン重合性モノマーの場合は感放射線酸発生剤である。
【0045】
感放射線ラジカル発生剤とは、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線など、放射線の照射により化学反応を生じ、ラジカルを生成し、ラジカル重合を開始できる化合物である。
【0046】
このような化合物としては、例えば、
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−又はp−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等のような置換されていてもよい2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;
ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパノン−1−オンなどの芳香族ケトン誘導体;
2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;
ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾインなどのベンゾイン誘導体;
ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体;
N−フェニルグリシンなどのN−フェニルグリシン誘導体;
アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;
チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体:
キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド
などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
感放射線ラジカル発生剤の市販品としては、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur l116、1173(以上、チバ・ジャパン製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
感放射線酸発生剤とは、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線など、放射線の照射により化学反応を生じ、酸を生成し、カチオン重合を開始できる化合物である。このような化合物としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明ではオニウム塩化合物を用いることが好ましい。
【0049】
オニウム塩化合物としては、例えば、
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。オニウム塩化合物の具体例としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムピレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムn−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらのα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。スルホン化合物の具体例としては、フェナシルフェニルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4−トリスフェナシルスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
スルホン酸エステル化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。スルホン酸エステル化合物の具体例としては、α−メチロールベンゾインパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、α−メチロールベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、α−メチロールベンゾイン2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニル)フタルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルジアゾメタン、(シクロヘキシルスルホニル)(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
これらの感放射線酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。本発明において、酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
感放射線重合開始剤(c)成分の配合割合は、本発明の第1の放射線重合性組成物(A)の全量に対して、0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。0.01質量%未満であると、硬化速度が低下して反応効率が低くなることがある。一方、10質量%を超えると、感放射線重合性組成物の硬化特性及び取り扱い性や、硬化物の力学特性及び光学特性の点で劣ることがある。
【0056】
本発明の第1の放射線重合性組成物(A)には、光増感剤(f)を添加することができる。光増感剤の添加により、より少ない露光量で組成分布の形成が可能となる。ここで、光増感剤は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、感放射線重合開始剤(c)成分と相互作用性を有する化合物であり、クマリン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、ペリレン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。ここでいう相互作用には、励起状態の光増感剤からのエネルギー移動や電子移動などがある。光増感剤(f)成分の露光波長に対するモル吸光係数は感放射線重合開始剤(c)成分のモル吸光係数よりも大きいことが好ましい。
【0057】
(第2の放射線重合性組成物)
第2の放射線重合性組成物(B)には、放射線重合可能な第2のモノマー(d1)を含有する第2の放射線重合性組成物(C)が用いられる。
【0058】
第2の放射線重合性組成物(C)は、上記の第1の放射線重合性組成物(A)と同様の組成物が用いられる。この場合、第2の放射線重合性組成物(C)と第1の放射線重合性組成物(A)とは、モノマーおよび組成が異なり、硬化後の光学物性や電気物性などの物性が異なる組成物を用いる。
【0059】
本発明における第1の放射線重合性組成物および第2の放射線重合性組成物の少なくとも一方が微粒子(e)を含有することができる。本発明で使用される微粒子(e)を構成する材料は、後述する照射光に対して透明で、感放射線重合性組成物中に均一に分散が可能であれば特に限定されず、有機材料、無機材料、あるいは有機−無機複合材料を用いることができる。表面が修飾されていてもよい。
【0060】
微粒子(e)を構成する材料としては、例えば、
酸化チタン(TiO)、水酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム(In)、酸化ランタン(La)、酸化ガドニウム(Gd)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化エルビウム(Er)、酸化ネオジウム(Nd)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe)、水酸化鉄(Fe(OH))、酸化ガリウム(Ga)、水酸化ガリウム(Ga(OH))、
とこれらの混合酸化物、混合水酸化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定性の観点から、好ましく酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、酸化ガドニウム、酸化ハフニウム、酸化エルビウム、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ジスプロシウム、とこれらの混合酸化物、水酸化物を使用する。
【0061】
微粒子粒径が大きい場合、照射光が散乱されるので、照射光の波長よりも十分に小さい微粒子を使用しなければならない。また、光学レンズのように透明性を必要とするようなプラスチック部材の場合も、粒径が大きいと光散乱の影響で透過率が低下する問題がある。従って、本発明で使用される微粒子の平均粒径は、50nm以下、好ましくは20nm以下である。目的とするプラスチック部材にもよるが、粒径分布は狭いものが好ましい。
【0062】
微粒子を重合性組成物中に均一分散させるために、微粒子作製時に表面を化学修飾、または微粒子作成後に分散剤添加等の処理を行うのが好ましい。前記の微粒子は単独でも、混合体でも、複合体でも使用できる。また、酸化チタンのように光触媒反応のあるものは、その反応により樹脂が分解されるのを防止するために、必要に応じケイ素化合物等で表面をコーティングするなどの処理を施すこともある。
【0063】
微粒子の含有量は、目標とする光学性能や機械的特性によって異なり、また、使用する微粒子や第1のモノマーおよび第2のモノマー(d)成分の種類によっても異なるが、モノマー(d)成分に対して1質量%以上99質量%以下、好ましくは1質量%以上70質量%以下が好ましい。また、分散される微粒子は単一種には限定されず、複数種の微粒子が分散されていてもよい。
【0064】
前記第1の放射線重合性組成物(A)および第2の放射線重合性組成物(B)が液状であることが好ましい。また、注入、除去時には、液状であることが好ましい。室温、大気圧下で固体ならば、必要に応じて加熱したり、加圧したりしながら注入、除去してもよい。
【0065】
第1の放射線重合性組成物(A)は、好ましくは、少なくとも1面が照射される放射線に対して透明な注型セル内に封入される。注型セルの内面が球面、非球面または平面でもよく、目的とするデバイスに応じて選択できる。
【0066】
注型セルは、少なくとも1枚が照射光に対して透明な2枚の基材の間に、ガスケットなどのスペーサーで空隙を設けることで作製できる。注型セルは必要に応じてバネつきクリップなどで固定し、その空隙内にシリンジなどを用いて、放射線重合性組成物(A)を注入する。透明な基材としては、例えば、石英、ガラス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド等の透明樹脂、サファイヤ、ダイヤモンド等など公知の素材があげられる。後述する第1の放射線重合性組成物(A)の除去工程及び第2の放射線重合性組成物(B)の注入工程を容易にするため、放射線重合性組成物(A)を注入後もシリンジ針を刺したままにしておくことが好ましい。
【0067】
第1の放射線重合性組成物(A)及び第2の放射線重合性組成物(B)を硬化させた後の離型を容易にするために、注型セルの表面を離型剤で処理することが好ましい。離型剤処理は、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、脂肪酸エステル等の離型剤をスプレー、ディッピング、スピンコート法等により塗布し、必要に応じて加熱することで行う。溶剤洗浄や拭き取りで余剰の離型剤を除去しても良い。
【0068】
照射する放射線は、使用する第1の放射線重合性組成物(A)の感度波長に応じて選択されるが、200から400nm程度の波長の紫外光や、X線、電子線などを適宜選択して使用することが好ましい。第1のモノマー(c)成分として紫外光に感度を有する多種多様な感光性化合物が容易に入手可能であることから、紫外光が特に好ましい。紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep−UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどが挙げられ、超高圧水銀灯が特に好ましい。これら放射線は1つまたは複数で使用できる。
【0069】
注型セルの一部分に放射線を照射し、セル内の第1の放射線重合性組成物(A)の一部を硬化させる。一部分へ照射する方法としては、注型セルの一部を遮蔽部材で覆っても良いし、ビーム状の放射線を走査しながら照射しても良い。
【0070】
放射線の照射量により、第1の放射線重合性組成物(A)の重合度を制御することができる。放射線照射領域において、照射量分布をつけても良い。
【0071】
例えば、前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が一定でないこと、前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が、外周ほど低照射量であること、または前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が、外周ほど高照射量であることが好ましい。
【0072】
拡散速度は粘度や架橋密度などにより決まるので、照射量分布をつけることで拡散挙動を制御できる。つまり、屈折率分布プロファイルを制御することができる。
【0073】
照射量分布をつける方法としては、放射線透過率が場所によって異なるグレースケールマスクをセル上に設置する方法、放射線照射中に遮蔽部材を移動させる方法、ビーム状の放射線を走査する方法、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
放射線重合による第1の放射線重合性組成物(A)の重合度は、照射部/非照射部境界面において、注型セルからシリンジ針を用いて未重合の液状の第1の放射線重合性組成物(A)を分離する際に照射部、すなわち硬化部が崩壊しない程度の最低の重合度が好ましい。また、後述する除去工程及び第2の放射線重合性組成物(B)の注入工程においても形状が崩壊しない程度の最低の重合度が好ましい。
【0075】
放射線を照射することによりできた第1の放射線重合性組成物(A)の重合体(重合体A)の硬化度について説明する。
【0076】
重合体Aの複素粘度は、10Pa・s以上10000Pa・s未満であることが望ましい。複素粘度が10Pa・s未満だと、注型セルからシリンジ針を用いて未重合の液状の第1の放射線重合性組成物(A)を分離する際に照射部、すなわち硬化部が崩壊する。複素粘度が10000Pa・s以上だと、後述する放置工程において、拡散の進行が遅い。
【0077】
複素粘度は、動的粘弾性測定装置(例えば、株式会社アントンパール・ジャパン製粘弾性測定装置MCR−301)で測定できる。
【0078】
形状が崩壊しない程度のゲル状の重合体を得るには、露光量は波長365nmにおいて、0.01mJ/cm以上1000000mJ/cm以下、好ましくは0.1mJ/cm以上100000mJ/cm以下とする。
【0079】
非照射部分の未重合の第1の放射線重合性組成物(A)を注型セル内から除去する。注入に使用したシリンジ針が残してあれば、シリンジ針から未重合の第1の放射線重合性組成物(A)を吸い出すことが好ましい。必要に応じて加熱したり、加圧したりしながら除去してもよい。
ゲルの端面に接触している放射線重合性組成物(A)は液状であるため、分離される際にゲルの端面を損傷させることがない。
【0080】
第2の放射線重合性組成物(B)が入ったシリンジをシリンジ針に取り付け、前記除去により生じた注型セル内部の空隙に第1の放射線重合性組成物(A)とは異なる物性を有する液状の第2の放射線重合性組成物(B)を充填する。必要に応じて加熱したり、加圧したりしながら注入してもよい。
【0081】
第2の放射線重合性組成物(B)を充填後、注型セルを所定時間放置する。放置工程中に、重合した放射線重合性組成物(A)と重合性組成物(B)との間で拡散による材料の交換が生じ、組成分布が得られる。重合度が低いほど、短時間で拡散が進行する。拡散の加速を目的として、放置工程中に、加熱、電場印加、磁場印加を行っても良いし、注型セルを回転させても良い。前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる工程において、注型セルを室温(23℃)より高い温度に加熱することが好ましい。
【0082】
放置工程後、材料の拡散を停止させるために放射線照射または/及び加熱を行い、重合した放射線重合性組成物(A)と重合性組成物(B)を硬化させる。放射線照射は、前述の放射線を用いることができる。加熱は、オーブン、ホットプレートなどの公知の装置を用いて行うことができる。機械的物性や環境安定性が得られるよう、十分に硬化させることが好ましい。
【0083】
前記第1の放射線重合性組成物および第2の放射線重合性組成物の硬化物が各々異なる屈折率波長分散を有することが好ましい。
【0084】
注型セル内から硬化物を取り出し、目的物である組成分布を有するプラスチック部材を得る。
【0085】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0086】
(d1)成分としてベンジルメタクリレート(共栄社化学製)90重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c1)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部からなる放射線重合性組成物(A1)を調整した。
【0087】
(d2)成分として、メチルメタクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)90重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c2)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(B2)を調整した。
【0088】
ベンジルメタクリレートの硬化物の屈折率は1.568、トリメチロールプロパントリアクリレートの硬化物の屈折率は1.509、メチルメタクリレートの硬化物の屈折率は1.490である。
【0089】
直径70mm、厚さ5mmの2枚の円盤状の光学ガラスに、離型剤としてダイフリーエアゾールタイプGA−6010(ダイキン工業製)をスプレーコートし、光学機器用クリーニングクロスで余剰の離型剤を拭き取った。
【0090】
直径35mm、太さ1.5mmのフッ素系ゴムの円型のOリングを、前記の2枚の光学ガラス間の中央部に挟み、バネつきクリップで2箇所向かい合わせの位置で固定して、注型セルとした。ディスポシリンジを用いて、放射線重合性組成物(A1)を注型セル内に、気泡が残留しないよう注意しながら注入した。
【0091】
放射線照射光源として、250W超高圧水銀ランプを備えたUV光源EX250(HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION社製)を用いた。遮光物として、最小開口径2mm、最大開口径50mmのアイリス絞り(エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)製)を用いた。光源と遮光物との間に、紫外透過可視吸収フィルター(UTVAF−50S−36U)及びフロスト型拡散板(DFSQ1−50C02−800)(いずれもシグマ光機製)を介した。注型セルの照射側の光学ガラス表面における照度は、波長365nmにおいて10mW/cmであった。
【0092】
アイリス絞りの開口径を20mmとして、注型セルの中央部に対して300秒照射を行った。
【0093】
シリンジ針に空のディスポシリンジを取り付け、未硬化の放射線重合性組成物(A1)を吸い出した。次に、シリンジ針に、重合性組成物(B1)が充填されたディスポシリンジを取り付け、重合性組成物(B1)を注型セル内にすみやかに注入した。注型セルを、室温で4時間放置した。
【0094】
上記の光源と光学系を用いて、注型セルの全面を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0095】
光線追跡型屈折率分布測定装置(Index Profile Analyzer:IPA5−C、株式会社アドヴァンストテクノロジ社製)を用いて波長524.3nmにおける屈折率分布を評価した。その結果を図2に示す。直径約27mmの範囲で、約0.056に及ぶ連続的な屈折率分布が得られた。
【実施例2】
【0096】
(d3)成分として、ベンジルメタクリレート(共栄社化学製)75重量部、(e3)成分として平均粒径7nmの酸化ジルコニウム(住友大阪セメント製)25重量部、(c3)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる放射線重合性組成物(A3)を調整した。
【0097】
(d4)成分として、ベンジルメタクリレート(共栄社化学製)90重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c4)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(B4)を調整した。(e3)成分の酸化ジルコニウムの屈折率は2.17である。
【0098】
実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A3)が充填された注型セルを準備した。
【0099】
実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、アイリス絞りの開口径を16mmとして、注型セルの中央部に対して、50秒照射を行った。
【0100】
実施例1と同様に、未硬化の放射線重合性組成物(A3)を吸い出した。
【0101】
実施例1と同様に、重合性組成物(B4)を注型セル内にすみやかに注入した。
【0102】
実施例2−1:注型セルを、室温で2時間放置した。実施例2−2:注型セルを、80℃に保たれたオーブン中で2時間放置した。実施例2−3:注型セルを、80℃に保たれたオーブン中で24時間放置した。
【0103】
実施例1と同様に、実施例2−1から2−3の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0104】
50μmφの領域の元素分析が可能なエネルギー分散型微小部蛍光X線分析装置μEDX−1300(島津製作所製)を用いて、ジルコニウム原子由来の蛍光X線(15.85keV)のピーク強度を0.2mm間隔でマッピングすることで、硬化物の照射側表面の組成分布を観測した。その結果を図3に示す。
【0105】
放射線重合性組成物(A3)の硬化物から酸化ジルコニウム粒子が拡散により溶出しゲル界面付近の1.6から3.6mmの範囲に渡って酸化ジルコニウム粒子の濃度が0体積%(0重量%)から5.0体積%(25重量%)まで連続的に変化する分布が得られた。80℃に加熱することにより拡散距離が長くなる挙動が観察された。
【実施例3】
【0106】
(d5)成分としてベンジルメタクリレート(共栄社化学製)90重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c5)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる放射線重合性組成物(A5)を調整した。
【0107】
(d6)成分としてベンジルメタクリレート(共栄社化学製)90重量部、(c6)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、(e6)成分として平均粒径7nmの酸化ジルコニウム(住友大阪セメント製)10重量部、からなる重合性組成物(B6)を調整した。
【0108】
実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A5)が充填された注型セルを準備した。
【0109】
実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を10mW/cmとし、アイリス絞りの開口径を16mmとして、注型セルの中央部に対して、450秒照射を行った。
【0110】
実施例1と同様に、未硬化の放射線重合性組成物(A5)を吸い出した。
【0111】
実施例1と同様に、重合性組成物(B6)を注型セル内にすみやかに注入した。
【0112】
実施例3−1:注型セルを、室温で4時間放置した。実施例3−2:注型セルを、80℃に保たれたオーブン中で4時間放置した。
【0113】
実施例1と同様に、実施例3−1から3−2の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0114】
実施例2と同様に、硬化物の照射側表面の組成分布を観測した。その結果を図4示す。
【0115】
放射線重合性組成物(A5)の硬化物に対し、重合性組成物(B6)から酸化ジルコニウム粒子が拡散により浸透し、3.6mmの範囲に渡って酸化ジルコニウム粒子の濃度が0体積%(0重量%)から1.9体積%(10重量%)まで連続的に変化する分布が得られた。
【実施例4】
【0116】
(d7)成分としてベンジルメタクリレート(共栄社化学製)90重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c7)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる放射線重合性組成物(A7)を調整した。
【0117】
(d8)成分としてHighlink NanO G 130−31(クラリアント・ジャパン製、シリカ微粒子のイソボルニルアクリレート分散液、シリカ含有量30重量%)及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c8)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(B8)を調整した。
【0118】
実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A7)が充填された注型セルを準備した。
【0119】
実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を10mW/cmとし、アイリス絞りの開口径を16mmとして、注型セルの中央部に対して、450秒照射を行った。
【0120】
実施例1と同様に、未硬化の放射線重合性組成物(A7)を吸い出した。
【0121】
実施例1と同様に、重合性組成物(B8)を注型セル内にすみやかに注入した。
【0122】
実施例4−1:注型セルを、室温で144時間放置した。実施例4−2:注型セルを、室温で4時間放置した。実施例4−3:注型セルを、50℃に保たれたオーブン中で4時間放置した。実施例4−4:注型セルを、80℃に保たれたオーブン中で4時間放置した。
【0123】
実施例1と同様に、実施例4−1から4−4の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0124】
実施例2と同様に、硬化物の照射側表面の、酸化ケイ素微粒子由来の蛍光X線強度分布を観測した。その結果を図5に示す。(A)の硬化物に対し、(B)から酸化ケイ素粒子が拡散により浸透し、3.0から7.0mmの範囲に渡って酸化ケイ素粒子由来の蛍光X線強度が連続的に変化する分布が得られた。
【実施例5】
【0125】
実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A1)が充填された注型セルを準備した。
【0126】
中心部に20mm径の円状の透明部位を有する直径50mmのフォトマスクを準備した。前記フォトマスクの遮光材はクロムであり、母材は石英であり、波長365nmにおいて遮光部位の透過率は0.01%以下であり、透明部位の透過率は98%である。
【0127】
図6に示す透過率プロファイルを有するグレースケールマスクを準備した。前記グレースケールマスクの遮光材はインコネルであり、母材は石英である。
【0128】
実施例5−1:前記フォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、300秒照射を行った。
【0129】
実施例5−2:前記フォトマスク及び前記グレースケールマスクをこの順で注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、300秒照射を行った。
【0130】
実施例1と同様に、実施例5−1から5−2の注型セルから、未硬化の放射線重合性組成物(A1)を吸い出した。
【0131】
実施例1と同様に、重合性組成物(B2)を実施例5−1から5−2の注型セル内にすみやかに注入した。
【0132】
実施例1と同様に、実施例5−1から5−2の注型セルを、室温で4時間放置した。
【0133】
実施例1と同様に、実施例5−1から5−2の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0134】
実施例1と同様に、実施例5−1から5−2の硬化物の波長524.3nmにおける屈折率分布を評価した。その結果を図7に示す。
【0135】
グレースケールマスクの適用で、異なった屈折率分布プロファイルが得られることが示された。
【実施例6】
【0136】
実施例2と同様に、放射線重合性組成物(A3)が充填された注型セルを準備した。
実施例6−1:実施例5と同一のフォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、50秒照射を行った。
【0137】
実施例6−2:実施例5と同一のフォトマスク及び実施例5と同一のグレースケールマスクをこの順で注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、50秒照射を行った。
【0138】
実施例1と同様に、実施例6−1から6−2の注型セルから、未硬化の放射線重合性組成物(A3)を吸い出した。
【0139】
実施例1と同様に、重合性組成物(B4)を実施例6−1から6−2の注型セル内にすみやかに注入した。
【0140】
実施例1と同様に、実施例6−1から6−2の注型セルを、室温で144時間放置した。
【0141】
実施例1と同様に、実施例6−1から6−2の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0142】
実施例2と同様に、硬化物の照射側表面の、ジルコニウム原子由来の蛍光X線(15.85keV)の蛍光X線強度分布を観測した。その結果を図8に示す。
【0143】
実施例6−1から6−2のいずれも、放射線重合性組成物(A3)の硬化物から酸化ジルコニウム粒子が拡散により溶出しゲル界面付近で酸化ジルコニウム粒子の濃度が0体積%(0重量%)から5.0体積%(25重量%)まで連続的に変化する分布が得られた。グレースケールマスクの適用により、拡散距離が長くなる挙動が観察され、また、異なる濃度分布プロファイルが得られた。
【実施例7】
【0144】
(d9)成分として、テトラフルオロプロピルメタクリレート(大阪有機化学製)72重量部、メチルメタクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)18重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、(c9)成分として光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(B9)を調整した。
【0145】
実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A1)が充填された注型セルを準備した。
【0146】
実施例7−1:実施例5と同一のフォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、300秒照射を行った。
【0147】
実施例7−2:実施例5と同一のフォトマスク及び実施例5と同一のグレースケールマスクをこの順で注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、300秒照射を行った。
実施例1と同様に、実施例7−1から7−2の注型セルから、未硬化の放射線重合性組成物(A1)を吸い出した。
【0148】
実施例1と同様に、重合性組成物(B9)を実施例7−1から7−2の注型セル内にすみやかに注入した。
【0149】
実施例1と同様に、実施例7−1から7−2の注型セルを、室温で4時間放置した。
【0150】
実施例1と同様に、実施例7−1から7−2の注型セルの全面に紫外線を1時間照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。
【0151】
実施例1と同様に、実施例7−1から7−2の硬化物の波長524.3nmにおける屈折率分布を評価した。その結果を図9に示す。
【0152】
グレースケールマスクの適用で、異なった屈折率分布プロファイルが得られることが示された。また、グレースケールマスクの適用で、より大きな屈折率差が得られた。
【0153】
大きな屈折率差が得られた理由としては、放射線重合性組成物(A1)のゲル状硬化物の端部の硬化度が低く、ゲル端部の(B9)成分の濃度が高くなったためと考えられる。
【実施例8】
【0154】
まず、実施例1と同様に、放射線重合性組成物(A1)が充填された注型セルを準備した。そして、実施例5と同様に、中心部に20mm径の円状の透明部位を有する直径50mmのフォトマスクを準備した。
【0155】
次に、露光時間を次のように変えて、放射線重合性組成物(A1)に対して紫外線の露光を行った。
【0156】
(実施例8−1)
前記フォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、150秒露光を行った。
【0157】
(実施例8−2)
前記フォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、200秒露光を行った。
【0158】
(実施例8−3)
前記フォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、300秒露光を行った。
【0159】
(実施例8−4)
前記フォトマスクを注型セルの中央部に設置し、実施例1と同様の光源と光学系を用いて、照度を30mW/cmとし、350秒露光を行った。
【0160】
次に、実施例1と同様に、実施例8−1から実施例8−4の注型セルから、未硬化の放射線重合性組成物(A1)を吸い出した。実施例8−1の注型セル内のゲルは崩壊した。
【0161】
また、実施例1と同様に、重合性組成物(B2)を実施例8−2から実施例8−4の注型セル内にすみやかに注入した。実施例1と同様に、実施例8−2から実施例8−4の注型セルを、室温で4時間放置した。実施例1と同様に、実施例8−2から実施例8−4の注型セルの全面に紫外線により1時間露光した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物を得た。実施例1と同様に、実施例8−2から実施例8−4の硬化物の波長524.3nmにおける屈折率分布を評価した。その結果を図11(a)から図11(c)に示す。露光時間が長いほど、サンプル中心部の屈折率分布プロファイルがフラットな傾向が見られた。このことから、露光時間が長いほど、重合性組成物(B2)のゲルへの拡散の進行が遅かったと言える。
【0162】
(複素粘度)
次に、放射線重合性組成物(A1)に対する紫外線の露光時間と複素粘度の関係を、紫外線照射機構を有する動的粘弾性測定装置(アントンパール社製MCR−301)を用いて調べた。紫外線の照度は、波長365nmにおいて30mW/cmとした。露光時間と複素粘度の関係を図12に示す。
【0163】
その結果、実施例8−1では、複素粘度が4Pa・s、実施例8−2では697Pa・s、実施例8−3では1750Pa・s、実施例8−4では39700Pa・sであった。
【0164】
(まとめ)
実施例8−1でゲルが崩壊したのは複素粘度が低すぎたためであることがわかった。そして、実施例8−2から実施例8−4で露光時間が長いほど拡散の進行が遅いのは、露光時間が長いほど複素粘度が高いためであることがわかった。
【0165】
<比較例1>
図10に比較例1のプラスチック部材の製造方法を示す。
【0166】
実施例1と同様の放射線重合性組成物(A1)および重合性組成物(B2)を用いてプラスチック部材を製造した。
【0167】
実施例1と同様の2枚の光学ガラス21間にスペーサー22を挟み、注型セル23とした。ディスポシリンジを用いて、放射線重合性組成物(A1)を注型セル内に注入した。
【0168】
実施例1と同様の方法で放射線重合性組成物(A1)全域に、10mW/cm、300秒の条件で放射線を照射して、ゲル状の重合性組成物(A1)の重合体26を得た。
【0169】
注型セル23内のスペーサー22を取り除こうとしたところ、重合体26が崩壊した。
【0170】
<比較例2>
図10に比較例1のプラスチック部材の製造方法を示す。
【0171】
実施例1と同様の放射線重合性組成物(A1)および重合性組成物(B2)を用いてプラスチック部材を製造した。
【0172】
実施例1と同様の2枚の光学ガラス21間にスペーサー22を挟み、注型セル23とした。ディスポシリンジを用いて、放射線重合性組成物(A1)を注型セル内に注入した。
【0173】
実施例1と同様の方法で放射線重合性組成物(A1)全域に、10mW/cm、1800秒の条件で放射線を照射して、ゲル状の重合性組成物(A1)の重合体26を得た。
【0174】
注型セル23内のスペーサー22を取り除き、重合性組成物(A1)の重合体26の外側に空隙27を設けてスペーサー25を設置して、注型セル23を組み立てた。
【0175】
次に、シリンジ針を用いて、注型セル23の空隙27に重合性組成物(B1)28を注入し、ゲル状の重合性組成物(A1)の重合体26と接触させた。注型セルを、室温で4時間放置した。注型セルの全面に放射線を照射した後、光学ガラスを剥離し、平板状の硬化物からなるプラスチック部材29を得た。
【0176】
得られたプラスチック部材の屈折率分布を実施例1と同様の方法で測定したが、重合体26の部位には有意な屈折率分布が生じていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、組成分布を有するプラスチック部材を、簡便な設備で、工程数が少なく、短時間で得ることができるので、カメラ、光ファイバの結像系、複写機、コンパクトディスクのピックアップ光学系などのレンズの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0178】
1 光学ガラス
2 ガスケット
3 注型セル
4 第1の放射線重合性組成物
5 遮蔽物
6 第1の組成物の重合体
7 空隙
8 第2の放射線重合性組成物
9 プラスチック部材
10 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射面を設けた注型セルに放射線重合可能な第1のモノマーを含有する第1の放射線重合性組成物を充填する工程と、前記注型セルの放射線照射面に放射線を照射し、前記第1の放射線重合性組成物の一部を重合し第1の組成物の重合体を得る工程と、未重合の前記第1の放射線重合性組成物を前記注型セルから除去する工程と、除去により生じた前記注型セルの空隙に、放射線重合可能な第2のモノマーを含有する第2の放射線重合性組成物を充填して前記第1の組成物の重合体と接触させる工程と、前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる工程と、前記注型セル内で拡散した前記第2の放射線重合性組成物および前記第1の組成物の重合体の全体を硬化させる工程と、を有することを特徴する組成分布を有するプラスチック部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1の放射線重合性組成物および第2の放射線重合性組成物が液状であることを特徴する請求項1に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1の放射線重合性組成物が重合した第1の組成物の重合体がゲル状であることを特徴する請求項1または2に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の放射線重合性組成物および第2の放射線重合性組成物の少なくとも一方が微粒子を含有することを特徴する請求項1乃至3のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1の放射線重合性組成物および第2の放射線重合性組成物の硬化物が各々異なる屈折率波長分散を有することを特徴する請求項1乃至4のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項6】
前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が一定でないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項7】
前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が、外周ほど低照射量であることを特徴とする請求項6に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項8】
前記注型セルの放射線照射面に照射する放射線の照射量が、外周ほど高照射量であることを特徴とする請求項6に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項9】
前記第2の放射線重合性組成物を前記第1の組成物の重合体の中へ拡散させる工程において、注型セルを室温より高い温度に加熱することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項10】
前記注型セルの内面が球面、非球面または平面であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のプラスチック部材の製造方法で作製されたプラスチック部材。
【請求項12】
前記第1の組成物の重合体の複素粘度が10Pa・s以上10000Pa・s未満であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかの項に記載のプラスチック部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−116115(P2011−116115A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192388(P2010−192388)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】