説明

プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法およびプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置

【課題】従来の処理方法では、前面板と背面板を分離する工程が必要であり、数多くのフラットディスプレイパネルを処理するには、不向きであった。また、設備面やエネルギー面においても多大な負荷がかかっていた。
【解決手段】背面板と前面板とが対向配置される配置面の外周を接着するシールガラスと、前面板および背面板の配置面側に備える表示部材と、放電空間にするために、背面板の対向配置面と反対の面に備える排気管を接着するシール材と、を含むようにプラズマディスプレイパネルの少なくとも一部を切断して切断断面を形成する切断ステップと、切断断面を蛍光X線で分析する分析ステップと、分析ステップによって切断された切断断面における鉛の有無を判別する判別ステップと、を備えるプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部材を間に含む背面板と前面板が放電空間を介して対向配置されたプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、大型化に適した表示装置、例えばプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置が注目され、大量に生産され、販売も急拡大している。
【0003】
プラズマディスプレイ装置の大量普及に伴って、使用済みプラズマディスプレイ装置の廃棄台数が飛躍的に増加している。
【0004】
この状況において、環境問題および省資源の観点から、製品寿命を迎えた使用済みの廃棄プラズマディスプレイ装置から各種の部材、材料を低コストで再利用できる形態に解体する体制の整備が緊急かつ重要な課題となっている。
【0005】
そこで、プラズマディスプレイパネルを構成する部材を再利用できるようにするには、プラズマディスプレイパネルを適切に処理することが求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、フラットディスプレイパネルを構成している部材の元素をX線で検出するフラットディスプレイのガラス基板の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3793209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されているフラットディスプレイパネルのガラス基板の処理方法は、元素を分析するまでに他の工程を要するため、多くのフラットディスプレイパネルを効率的に処理することができない。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、製品寿命を迎えた使用済みの廃棄プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別を効率的な処理方法を提供し、プラズマディスプレイパネルに使用されている部材や材料の再利用の促進を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、表示部材を備える背面板と前面板とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネルにおける鉛の有無を判別するプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法であって、背面板と前面板とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラスと、前面板および背面板の対向配置面側に備える表示部材と、放電空間にするために、前面板の対向配置面と反対の面に備える排気管を接着するシール材と、を含むようにプラズマディスプレイパネルの少なくとも一部を切断して切断断面を形成する切断ステップと、切断断面を蛍光X線で分析する分析ステップと、分析ステップによって切断された切断断面における鉛の有無を判別する判別ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、表示部材を備える背面板と前面板とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネルにおける鉛の有無を判別するプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置において、背面板と前面板とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラスと、前面板および背面板の対向配置面側に備える表示部材と、放電空間にするために、背面板の対向配置面と反対の面に備える排気管を接着するシール材と、を含むようにプラズマディスプレイパネルの少なくとも一部を切断した切断断面を蛍光X線で分析する分析部と、分析ステップによって切断された切断断面における鉛の有無を判別する判別部と、を備えるプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法によれば、プラズマディスプレイパネルの鉛含有の有無判別を効率的にすることができ、プラズマディスプレイパネル処理作業の効率化を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイ装置の主要構成を示す分解斜視図
【図2】本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの外観平面図
【図3】本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法を示すフローチャート
【図4】本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの切断箇所を示す外観平面図
【図5】本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの切断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[第一実施形態]
<1、PDP>
図1は、本発明の第一実施形態におけるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)の基本構造を示す分解斜視図である。
【0016】
なお、説明の便宜のため、PDP装置の画像を表示する側を「前面」、前面の反対側の面を「背面」と称する。すなわち、前面板の背面および背面板の前面が対向配置面である。
【0017】
図2は、第一実施形態におけるPDPの外観平面図であり、前面板2の前面側を正面から見た図である。
【0018】
なお、説明の便宜のため、前面板2と背面板3とが対向配置している対向配置面が透けているように示している。
【0019】
図1に示すように、PDP1は、前面板2と背面板3と放電空間(図示せず)とで構成されている。
【0020】
前面板2は、前面ガラス基板21と、表示部材5とを備える。
【0021】
表示部材5としては、表示電極対53と、誘電体層54と、保護層55とを備える。
【0022】
より具体的には、前面ガラス基板21の背面上に、平行に配列された走査電極51と維持電極52とからなる表示電極対53が複数形成されている。
【0023】
そして、表示電極対53を覆うように誘電体層54が形成され、その誘電体層54上に保護層55が形成されている。
【0024】
一方、背面板3は、背面ガラス基板31と、表示部材5とを備える。
【0025】
表示部材5としては、データ電極56と、下地誘電体層57と、隔壁58と、蛍光体層59とを備える。
【0026】
より具体的には、背面ガラス基板31の前面上に、平行に配列されたデータ電極56が複数形成されている。
【0027】
そして、データ電極56を覆うように下地誘電体層57が形成され、その上に井桁状の隔壁58が一定の間隔を有して形成されている。
【0028】
隔壁58の側面および下地誘電体層57上には、データ電極56毎に、赤色、緑色、青色の各色に発光する蛍光体層59が設けられている。
【0029】
放電空間(図示せず)は、前面板2と背面板3との間にある微小な空間に形成されている。
【0030】
つまり、前面板2と背面板3とは、微小な放電空間(図示せず)を介して、表示電極対53とデータ電極56と、が交差するように対向配置されている。
【0031】
そして、図2に示すように、対向配置面の外周をシールガラス4等の封着部材によって封着している。
【0032】
封着された放電空間内には、放電空間内にはネオン(Ne)およびキセノン(Xe)等を混合した放電ガスが封入されている。
【0033】
より具体的には、図2に示すように、背面板の背面に、放電ガスを放電空間に封入するために管状の排気管6を有している。
【0034】
その排気管6を通して、放電ガスが放電空間内に封入される。
【0035】
<2、プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法>
次に、製品寿命を迎えた使用済みの廃棄PDPにおけるPDPの鉛含有判別方法について説明する。
【0036】
本発明の第一実施形態におけるPDPの鉛含有判別方法の一例として、図3、図4、図5を用いて説明する。
【0037】
図3は、第一実施形態におけるPDPの鉛含有判別方法を示すフローチャートである。
【0038】
図4は、第一実施形態におけるPDPの切断箇所を詳細に表した図である。
【0039】
図3に示すように、第一実施形態におけるPDPの鉛含有判別方法は、切断ステップと、分析ステップと、判別ステップとを備える。
【0040】
一重線の四角は、第一実施形態におけるPDPの鉛含有判別方法における各ステップを示す。
【0041】
2−1、切断ステップ
まず、PDPを固定する。
【0042】
そして、切断ステップ1(図面では「S1」と略記する。以下、同様とする)では、前面板の前面側からPDP1に対して垂直にPDP1を切断する。
【0043】
より具体的には、図4に示すように、切断ラインA−A’、切断ラインB−B’、切断ラインC−C’のいずれかに沿ってPDP1を切断する。
【0044】
上記切断ラインは、シールガラス4と、表示部材5と、シール材7とを含むように切断する。
【0045】
PDPを切断する方法としては、カッターホイール、ダイヤモンドカッターやウォータージェット、通電したワイヤーをガラス基板に接触させる方法、さらにはレーザーなどを用いる方法がある。
【0046】
図5は、切断ステップでPDPを切断した後のPDPの断面図である。
【0047】
より具体的には、図4のD部に示した円部のB−B’切断ラインで切断した切断断面部10を示している。
【0048】
図5において、点線の円で示したE部には、シールガラス4と、表示部材5と、排気管6を接着するシール材7とが含まれる。
【0049】
2−2、分析ステップ
次に、分析ステップ(S2)について説明する。
【0050】
切断断面部10のB部に、1次X線を照射する。
【0051】
そして、D部から発生した蛍光X線を検出する。
【0052】
2−3、判別ステップ
そして、判別ステップ(S3)において、検出された蛍光X線から鉛含有の有無を判別する。
【0053】
<実施形態の特徴>
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0054】
(1)
プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法(PDPの鉛含有判別方法)は、表示部材(5)を備える背面板(3)と前面板(2)とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネル(PDP1)における鉛の有無を判別する。
【0055】
そして、プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法(PDPの鉛含有判別方法)は、背面板(3)と前面板(2)とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラス(4)と、前面板(2)および背面板(3)の対向配置面側に備える表示部材(5)と、放電空間にするために、背面板(3)の対向配置面と反対の面に備える排気管(6)を接着するシール材(7)と、を含むようにプラズマディスプレイパネル(PDP1)の少なくとも一部を切断して切断断面(切断断面部10)を形成する切断ステップと、切断断面(切断断面部10)を蛍光X線で分析する分析ステップと、分析ステップによって切断された切断断面(切断断面部10)における鉛の有無を判別する判別ステップと、を備える。
【0056】
これにより、プラズマディスプレイパネル(PDP1)の一部を切断し、その切断した断面を蛍光X線により分析することだけでプラズマディスプレイパネル(PDP1)の鉛含有の有無判別を効率的にすることができる。そして、鉛含有を判別することで、プラズマディスプレイパネル(PDP1)に使用されている部材や材料を適切に処理することができ、リサイクルが促進される。
【0057】
(2)
プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置は、表示部材(5)を備える背面板(3)と前面板(2)とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネル(PDP1)における鉛の有無を判別する。
【0058】
プラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置は、背面板(3)と前面板(2)とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラス(4)と、前面板(2)および背面板(3)の対向配置面側に備える表示部材(5)と、放電空間にするために、背面板(3)の対向配置面と反対の面に備える排気管(6)を接着するシール材(7)と、を含むようにプラズマディスプレイパネル(PDP1)の少なくとも一部を切断した切断断面を蛍光X線で分析する分析部と、分析ステップによって切断された切断断面における鉛の有無を判別する判別部と、を備える。
【0059】
これにより、プラズマディスプレイパネル(PDP1)の一部を切断し、その切断した断面を蛍光X線により分析することだけでプラズマディスプレイパネル(PDP1)の鉛含有の有無判別を効率的にすることができる。そして、鉛含有を判別することで、プラズマディスプレイパネル(PDP1)に使用されている部材や材料を適切に処理することができ、リサイクルが促進される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法によれば、鉛含有を判別することで、プラズマディスプレイパネルに使用されている部材や材料を適切に処理することができ、リサイクルが促進される。
【符号の説明】
【0061】
1 プラズマディスプレイパネル
2 前面板
3 背面板
4 シールガラス
5 表示部材
6 排気管
7 シール材
10 切断断面部
21 前面ガラス基板
31 背面ガラス基板
51 走査電極
52 維持電極
53 表示電極対
54 誘電体層
55 保護層
56 データ電極
57 下地誘電体層
58 隔壁
59 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部材を備える背面板と前面板とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネルにおける鉛の有無を判別するプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法において、
前記背面板と前記前面板とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラスと、
前記前面板および前記背面板の対向配置面側に備える表示部材と、
前記放電空間にするために、前記背面板の前記配置面と反対の面に備える排気管を接着するシール材と、
を含むようにプラズマディスプレイパネルの少なくとも一部を切断して切断断面を形成する切断ステップと、
前記切断断面を蛍光X線で分析する分析ステップと、
前記分析ステップによって切断された前記切断断面における鉛の有無を判別する判別ステップと、
を備えるプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別方法。
【請求項2】
表示部材を備える背面板と前面板とが放電空間を介して対向配置されるプラズマディスプレイパネルにおける鉛の有無を判別するプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置において、
前記背面板と前記前面板とが対向配置される対向配置面の外周を接着するシールガラスと、
前記前面板および前記背面板の対向配置面側に備える表示部材と、前記放電空間にするために、前記背面板の前記配置面と反対の面に備える排気管を接着するシール材と、を含むようにプラズマディスプレイパネルの少なくとも一部を切断した切断断面を蛍光X線で分析する分析部と、
前記分析ステップによって切断された前記切断断面における鉛の有無を判別する判別部と、
を備えるプラズマディスプレイパネルの鉛含有判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154852(P2011−154852A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14972(P2010−14972)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】