説明

プラズマディスプレイパネル用フォトマスクおよびプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】フォトマスクを用いて製造したバス電極の電極ピッチを精度よく形成可能なプラズマディスプレイパネル用フォトマスクを提供することを目的としている。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの前面板に配置されたバス電極を形成するためのプラズマディスプレイパネル用のフォトマスク40であって、このフォトマスク40は、バス電極を露光するためマスクを有し、マスクに形成した電極ピッチは、前面板に配置されたバス電極の電極ピッチとは異なる電極ピッチとした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、プラズマディスプレイパネル用フォトマスクおよびプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルとして代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。
【0003】
前面板は、ガラス製の前面基板と、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対と、それらを覆う誘電体層および保護層を有する。
【0004】
背面板は、ガラス製の背面基板と、データ電極と、それを覆う誘電体層と、隔壁と、蛍光体層とを有する。
【0005】
そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。
【0006】
このように構成されたパネルの各放電セル内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0007】
従来、プラズマディスプレイパネルの前面板の製造プロセスは、透明電極ITOを形成する工程、バス電極を形成する工程、バス電極を焼成する工程、誘電体を形成する工程、誘電体を焼成する工程、MgO膜を形成する工程の6工程である。その内、バス電極は、黒色層と電極層の2層構成であり、露光・現像プロセスおよび焼成プロセスを経て形成される。このような技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−335215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ITO無しの場合、バス電極を形成するためのマスクパターン設計においては、バス電極を梯子パタ−ンで形成することが知られている。しかし、バス電極を梯子パタ−ンで形成すると、焼成時の収縮によりフォトマスクの設計パターンと、形成されたパタ−ンのピッチ(ここでは、バス電極間の電極ピッチ)が変化するという問題がある。特に、電極ピッチはプラズマディスプレイパネルの放電に影響するので、高精度で形成することが必要である。
【0010】
ここに開示された技術は上記問題を解決し、フォトマスクを用いて製造したバス電極の電極ピッチを精度よく形成可能なプラズマディスプレイパネル用フォトマスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、プラズマディスプレイパネルの前面板に配置されたバス電極を形成するためのプラズマディスプレイパネル用フォトマスクであって、前記フォトマスクは、前記バス電極を露光するためマスクを有し、前記マスクに形成した電極ピッチは、前記前面板に配置された前記バス電極の電極ピッチとは異なる電極ピッチとした構成である。
【0012】
また、上記目的を達成するためにここに開示された技術は、前記バス電極を配置したプラズマディスプレイパネルを製造する方法である。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、フォトマスクの設計パターンと、形成されたパタ−ンのピッチ(バス電極間の電極ピッチ)の変化を抑制できる。その結果、バス電極の電極ピッチを精度よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルの分解斜視図
【図2】同プラズマディスプレイパネルの前面板の製造プロセス図
【図3】同プラズマディスプレイパネルの背面板の製造プロセス図
【図4】バス電極を形成するためのフォトマスクの平面図
【図5】バス電極を形成するためのフォトマスクの平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施の形態におけるプラズマディスプレイパネル用フォトマスクおよびプラズマディスプレイパネルの製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1において、プラズマディスプレイパネル10は、前面板20と背面板30とが対向配置され、その周辺部が封着部材(図示せず)で封着されて形成されている。この前面板20と背面板30の内部には、多数の放電セルが形成されている。
【0017】
前面板20は、ガラス製の前面基板21と、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24と、ブラックストライプ層25と、誘電体層26と、保護層27とを有する。前面基板21上には1対の走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が互いに平行に複数形成されている。そして、隣り合う表示電極対24の間にはブラックストライプ層25が形成されている。
【0018】
本実施の形態では、表示電極対24とブラックストライプ層25とが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ層25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ層25、・・・となるように形成されているが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ層25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ層25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ層25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ層25、・・・となるように形成されていてもよい。
【0019】
そして、それら表示電極対24およびブラックストライプ層25を覆うように誘電体層26が形成され、この誘電体層26上には保護層27が形成されている。
【0020】
背面板30は、ガラス製の背面基板31と、データ電極32と、誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35とを有する。背面基板31上には、複数のデータ電極32が互いに平行に形成されている。そしてデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成され、誘電体層33の表面と隔壁34の側面とに赤、緑、青各色の蛍光体層35が形成されている。
【0021】
そして、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように前面板20と背面板30とが対向配置され、表示電極対24とデータ電極32とが対向する部分に放電セルが形成される。放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で、低融点ガラスを用いて前面板20と背面板30とが封着され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。
【0022】
次に、プラズマディスプレイパネル10の製造方法について説明する。
【0023】
前面板20の製造方法について、図2を用いて説明する。
【0024】
まず、ガラス製の前面基板21をアルカリ洗浄する。その後、酸化ルテニウムや黒色顔料を主成分とする黒色層用ペーストを用いて、黒色層22c、23cの前駆体22cx、23cx、およびブラックストライプ層25の前駆体25xを前面基板21上に形成する。これら前駆体22cx、23cx、25xはスクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知技術を用いて形成することができる。その後、銀を含む導電層用ペーストを用いて前駆体22cx、23cxの上に導電層22d、23dの前駆体22dx、23dxを形成する(図2(a))。なお、前駆体22dx、23dxは、透明電極または透明電極の前駆体の上に形成されることになる。
【0025】
次に、前駆体22cx、23cx、25x、22dx、23dxが形成された前面基板21を焼成して、バス電極22a、23a、ブラックストライプ層25を形成する。このときの焼成のピーク温度は550〜600℃が望ましく、本実施の形態においては580℃である。またバス電極22a、23aの厚みは、1μm〜6μmが望ましい(図2(b))。
【0026】
次に、走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ層25が形成された前面基板21上に、印刷法等の公知技術により、誘電体層の前駆体を形成する。そして誘電体層の前駆体を焼成して、厚み20μm〜50μmの誘電体層26を形成する(図2(c))。
【0027】
本実施の形態においては、酸化硼素35wt%、酸化硅素1.4wt%、酸化亜鉛27.6wt%、酸化物バリウム3.3wt%、酸化ビスマス25wt%、酸化アルミニウム1.1wt%、酸化モリブデン4.0wt%、酸化タングステン3.0wt%を含んだ誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを作成した。このようにして作成された誘電体ガラスの軟化点は約570℃である。次に走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ層25が生成された前面基板21上にダイコート法により誘電体ペーストを塗布して誘電体層の前駆体を形成した。そして誘電体層の前駆体を約590℃で焼成して誘電体層26を形成した。このときの誘電体層26の厚みは約40μmである。
【0028】
なお、誘電体ペーストとしては、上記以外にも、例えば、酸化硼素、酸化硅素、酸化亜鉛、アルカリ土類酸化物、アルカリ金属酸化物、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化セリウム等の中からいくつかを含んだ軟化点520℃〜590℃の誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを用いることができる。
【0029】
そして誘電体層26の上に、酸化マグネシウムを主成分とする保護層27を、真空蒸着法等の公知技術により形成する(図2(d))。
【0030】
次に背面板30の製造方法について説明する。まず、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知技術を用いて、背面基板31上に、銀を主成分とする導電層用ペーストを一定間隔でストライプ状に塗布し、データ電極32の前駆体32xを形成する(図3(a))。
【0031】
次に、前駆体32xが形成された背面基板31を焼成して、データ電極32を形成する。データ電極32の厚みは、例えば2〜10μmである(図3(b))。
【0032】
続いて、データ電極32を形成した背面基板31上に誘電体ペーストを塗布し、この後焼成して誘電体層33を形成する。誘電体層33の厚みは、例えば約5〜15μmである(図3(c))。
【0033】
続いて、誘電体層33を形成した背面基板31上に感光性の誘電体ペーストを塗布した後、焼成して隔壁34の前駆体を形成する。その後、露光マスクを用いて感光し、エッチングして隔壁34を形成する。隔壁34の高さは、例えば100〜150μmである(図3(d))。
【0034】
そして、隔壁34の壁面および誘電体層33の表面に、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のいずれかを含む蛍光体インクを塗布する。そののち乾燥、焼成して蛍光体層35を形成する。
【0035】
赤色蛍光体としては、例えば(Y、Gd)BO3:Eu、(Y、V)PO4:Eu等を、緑色蛍光体としては、例えばZn2SiO4:Mn、(Y、Gd)BO3:Tb、(Y、Gd)Al3(BO3)4:Tb等を、青色蛍光体としては、例えばBaMgAl1017:Eu、Sr3MgSi28:Eu等をそれぞれ用いることができる(図3(e))。
【0036】
そして上述した前面板20と背面板30とを、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように対向配置し、放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で低融点ガラスを用いて封着する。その後、内部の放電空間にキセノンを含む放電ガスを封入して、プラズマディスプレイパネル10が完成する。
【0037】
本実施の形態では、従来ITO品は、図4(a)に示すように、Aという値で可能であるが、梯子パターンにおいては焼成収縮により、図4(b)に示すように、A−αという値でフォトマスク40を作成する必要がある。このαは1〜5um程度の値が望ましい。すなわち、バス電極22a、23aのピッチとフォトマスク40のピッチを変える必要がある。
【0038】
上記構成により、フォトマスク40の設計パターンと、形成されたパタ−ンのピッチ(バス電極22a、23a間の電極ピッチ)の変化を抑制できる。その結果、バス電極22a、23aの電極ピッチを精度よく形成できる。
【0039】
このフォトマスク40は、形成するバス電極22a、23aに対して、バス電極22a、23aが平行でなく、曲率半径を持ち、この曲率半径は1から5umの値になることが望ましい。なお、曲率半径を持たないものは、図5に示すとおりである。
【0040】
また、フォトマスク40は、バス電極22a、23aが配置される前面基板21のそり量に応じて、フォトマスク40のパターン幅をあらかじめ調整したものを用いてもよい。複数のフォトマスク40を使い分ければよい。前面板20のバス電極22a、23aの電極パターンはそり量に応じて、パターン設計幅が大きく変化する。そり量300umに対して、線幅が1um変化する。そのため、そり量が大きくなった材料の場合、パターン設計線幅を300um大きくなるに従って、1um細く設計すると、できあがり幅が一定になる。ただし、この変化量は材料によって、ことなるため、一意的に決まるわけではなく最適値が存在する。
【0041】
また、上述したフォトマスクを用いてプラズマディスプレイパネルを製造すれば、プラズマディスプレイパネルを精度よく製造できる。
【0042】
なお、本実施の形態において用いた具体的な各数値は一例に過ぎず、パネルの仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【符号の説明】
【0043】
10 プラズマディスプレイパネル
20 前面板
21 前面基板
22 走査電極
23 維持電極
22a、23a バス電極
22c、23c 黒色層
22cx、23cx 前駆体
22d、23d 導電層
22dx、23dx 前駆体
24 表示電極対
25 ブラックストライプ層
25x 前駆体
26 誘電体層
27 保護層
30 背面板
31 背面基板
32 データ電極
32x 前駆体
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
40 フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルの前面板に配置されたバス電極を形成するためのプラズマディスプレイパネル用フォトマスクであって、
前記フォトマスクは、前記バス電極を露光するためマスクを有し、
前記マスクに形成した電極ピッチは、前記前面板に配置された前記バス電極の電極ピッチとは異なる電極ピッチとした
プラズマディスプレイパネル用フォトマスク。
【請求項2】
前記フォトマスクは、所定の曲率半径を有する
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用フォトマスク。
【請求項3】
前記バス電極が配置される基板のそり量に応じて、前記フォトマスクのパターン幅をあらかじめ調整した
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用フォトマスク。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル用フォトマスクを用いて、前記バス電極を配置してプラズマディスプレイパネルを製造する
プラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−64319(P2012−64319A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205129(P2010−205129)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】