説明

プラズマディスプレイ装置及び駆動回路

【課題】駆動回路に異常電圧が印加された場合に、異常が発生したことを確実に検出できるようにする。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルと、プラズマディスプレイパネルの電極に駆動電圧を印加する駆動回路と、駆動回路内の所定の回路部分に異常電圧が印加されたことを検出する異常電圧検出回路とを備え、異常電圧検出回路は、所定の回路部分に対する異常電圧の印加を検出する検出部と、検出部で異常電圧が検出された場合に異常電圧の検出状態を保持する保持部とを有し、駆動回路にて異常電圧が一瞬のみでも印加されると異常電圧の検出状態を保持できるようにし、異常電圧が印加されたことを確実に検出できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルを用いて画像を表示するプラズマディスプレイ装置及び駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
平面ディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)を用いたプラズマディスプレイ装置が実用化されており、高輝度の薄型ディスプレイとして期待されている。プラズマディスプレイ装置では、所望の画像表示を行うために、プラズマディスプレイパネルにおける各電極に複数の高電圧を印加する必要がある。
【0003】
例えば、壁電荷状態を初期化して各表示セルを一様な状態にするリセット動作においてリセット電圧を供給する際、誤作動等によってスキャンドライバに異常電圧(過電圧)が印加されスキャンドライバや他の駆動回路が破壊されるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置においては、スキャンドライバ等に異常電圧が印加されたことを検出し、駆動回路の動作を停止させたり電源回路からの電源供給を停止させたりするような保護回路が必要とされる。
【0004】
図6に、従来の保護回路の一例を示す(例えば、特許文献1参照。)。
図6において、抵抗R35とコンデンサC32は、リセット電圧を印加するためのリセット回路の一部であり、リセットパルスの出力時に電流が流れる。検出回路は、図6に示すように、抵抗R35の両端の電圧をモニタするように組み込まれる。
【0005】
リセットパルスが出力されていないときは、抵抗R35に電流が流れないので抵抗R34、ダイオードD32、及びフォトカプラPC31のフォトダイオードPD31により形成される回路には電流が流れない。そのため、フォトダイオードPD31は発光せず、フォトカプラPC31のトランジスタPT31はオフした状態にある。このとき、バッファBF31の入力端子は抵抗R33により電源V0の電源電圧まで上昇しており、バッファBF31の出力電圧は0となる。したがって、出力信号である検出信号の電圧値は0となり、抵抗R35に異常電流が流れていないこと、すなわち正常な状態であることが検出できる。
【0006】
リセットパルスの出力時、抵抗R35に異常電流が流れると、抵抗R35の両端には異常電流に応じた電圧が発生する。そのため、抵抗R34、ダイオードD32、及びフォトダイオードPD31により形成される回路に電流が流れ、フォトカプラPC31のトランジスタPT31がオンする。これにより、バッファBF31の入力電圧が0となり、バッファBF31の出力はオープン状態となる。このため、検出信号はプルアップ抵抗R31に引き上げられて、正の電圧をとり、異常電流が流れたことを検出する。
【0007】
一方、正常なリセットパルスが発生した場合には、抵抗R35には瞬間的に電流が流れるが、次のリセットパルスまで時間間隔があるため、抵抗R35の両端子間には、間隔をあけて単一のパルス電圧が発生することとなる。この場合、リセットパルス発生時、抵抗R35の両端子間の電圧は上昇し、瞬間的にトランジスタPT31はオンする。しかし、トランジスタPT31のコレクタ−エミッタ間に接続されたコンデンサC31とトランジスタPT31のオン抵抗とにより構成される積分回路の作用によって、バッファBF31の入力端子の電圧は急激に低下することなく、バッファBF31の出力電圧はほぼ0に維持される。したがって、正常なリセットパルスが発生した場合には検出信号の電圧値は0に維持され、正常な状態であることが検出される。
【0008】
【特許文献1】特開2004−309607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来技術では、一瞬のみ異常な電流が流れることにより瞬間的に過電圧となった場合には、検出信号も異常電流が流れたことを一時的に示し、制御回路等が異常を検出できない(読み取れない)おそれがある。そのため、制御回路等が確実に検出できる(読み取れる)検出信号が必要とされる。
【0010】
本発明は、駆動回路に異常電圧が印加された場合に、異常が発生したことを確実に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、複数の表示電極対が配列された第1基板と、前記第1基板に対向して配置された第2基板とが放電空間を介して封着されてなるプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルの電極に駆動電圧を印加する駆動回路と、前記駆動回路内の所定の回路部分に異常電圧が印加されたことを検出する異常電圧検出回路とを有し、前記異常電圧検出回路は、前記所定の回路部分に対する異常電圧の印加を検出する検出回路と、前記検出回路により異常電圧が検出された場合に、異常電圧の検出状態を保持する保持回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動回路にて異常電圧が一瞬のみでも印加されると異常電圧の検出状態が保持されるので、異常電圧が印加されたことを確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイ装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態におけるプラズマディスプレイ装置は、例えば3電極型AC駆動方式のプラズマディスプレイ装置であって、プラズマディスプレイパネル10、Y電極ドライバ20、X電極ドライバ30、アドレスドライバ40、制御回路50、及び電源回路60を有する。
【0015】
Y電極ドライバ20は、表示電極のうちY電極(スキャン電極、走査電極)Yを駆動する回路である。Y電極ドライバ20は、スキャン回路21、サステイン回路22、リセット回路23、及び異常電圧検出回路24を有する。
【0016】
スキャン回路21は、線順次走査して表示すべき行を選択する回路からなり、サステイン回路22は、サステイン放電(維持放電)を繰り返す回路からなり、リセット回路23は、壁電荷状態を初期化する回路からなる。スキャン回路21、サステイン回路22、及びリセット回路23により、複数のY電極Yに所定の電圧が供給される。
【0017】
スキャン回路21は、Y電極Yの各々に対応する複数のスイッチがそれぞれ設けられている。スキャン回路21は、壁電荷状態を初期化するリセット期間においてリセット回路23からのリセット電圧が全Y電極Yに同時に印加され、表示すべきセル(画素)を選択するアドレス期間においてY電極Yにスキャンパルスが順に印加され、サステイン放電(維持放電)を行うサステイン期間においてサステイン回路22からのサステインパルス(維持放電パルス)が全Y電極Yに同時に印加されるよう動作する。
【0018】
異常電圧検出回路24は、Y電極ドライバ20内の回路に対して異常電圧(過電圧)が印加されたことを検出する。異常電圧検出回路24は、異常電圧の印加を検出する検出部と、異常電圧が検出された状態を保持する保持部とを有する。
【0019】
X電極ドライバ30は、表示電極のうちX電極(維持電極)Xを駆動する回路であり、サステイン回路31を有する。サステイン回路31は、サステイン放電(維持放電)を繰り返す回路からなり、X電極Xに所定の電圧を供給する。X電極Xは、一端がX電極ドライバ30に共通接続されている。アドレスドライバ40は、表示すべき列を選択する回路からなり、複数のアドレス電極Aに所定の電圧を供給する。
【0020】
制御回路50は、外部から入力される表示データ、クロック信号、水平同期信号、及び垂直同期信号等に基づいて制御信号を生成する。制御回路50は、生成した制御信号によって、Y電極ドライバ20、X電極ドライバ30、アドレスドライバ40、及び電源回路60を制御する。また、制御回路50は、異常電圧検出回路24で異常電圧が印加されたことを検出した場合には、Y電極ドライバ20、X電極ドライバ30、及びアドレスドライバ40の動作を停止させたり電源回路60からの電源供給を停止させたりするよう制御する。電源回路60は、Y電極ドライバ20、X電極ドライバ30、及びアドレスドライバ40等に、電圧(Vs/2)、Vw、Vx、Va等の各種電圧を供給する。なお。図示していないが、電源回路60は、制御回路等のロジック回路の電源電圧も供給している。
【0021】
プラズマディスプレイパネル10では、表示電極対を構成するY電極Y及びX電極Xが水平方向に並列に延びる行を形成し、アドレス電極Aが垂直方向に延びる列を形成する。Y電極Y及びX電極Xは、垂直方向にかつ互いに平行に配置される。アドレス電極Aは、Y電極Y及びX電極Xに略垂直な方向に配置される。Y電極Y及びアドレス電極Aは、i行j列の2次元行列を形成する。
【0022】
セルCijは、第i行のY電極Y及び第j列のアドレス電極Aの交点並びにそれに対応して隣接する第i行のX電極Xにより形成される。このセルCijが、例えば赤色、緑色、青色のサブピクセルに対応し、これら3色のサブピクセルで1画素が構成される。パネル10は2次元配列された複数の画素の点灯により画像を表示する。Y電極ドライバ20内のスキャン回路21とアドレスドライバ40によってどこのセルを点灯させるかを決め、Y電極ドライバ20内のサステイン回路22とX電極ドライバ30内のサステイン回路31によって繰り返し放電を行うことにより表示動作が行われる。
【0023】
図2は、本実施形態におけるY電極ドライバ及びX電極ドライバの構成例を示す回路図である。
図2において、容量性負荷20は、1つのX電極Xと1つのY電極Yとの間に形成されているセルの合計の容量である。容量性負荷20には、X電極X及びY電極Yが形成されている。
【0024】
X電極X側では、スイッチSW1、SW2は、図示しない電源から供給される電圧(Vs/2)の電源ラインとグランドとの間に直列に接続される。2つのスイッチSW1、SW2の相互接続点にはコンデンサC1の一方の端子が接続され、コンデンサC1の他方の端子とグランドとの間には、スイッチSW3が接続される。また、コンデンサC1と並列にコンデンサCxが接続されている。
【0025】
また、直列接続されたスイッチSW4、SW5は、コンデンサC1の両端に接続される。これら2つのスイッチSW4、SW5の相互接続点は出力ラインOUTCを介して負荷20のX電極Xに接続されている。
【0026】
また、コイル回路Aは、ダイオードDA及びコイルLAを具備し、コイル回路Bは、ダイオードDB及びコイルLBを具備する。ダイオードDAのカソードは、スイッチSW1、SW2の相互接続点に接続される。また、ダイオードDAのアノードは、コイルLAを介してグランドに接続される。
【0027】
ダイオードDBのアノードは、コンデンサC1とスイッチSW3の相互接続点に接続される。また、ダイオードDBのカソードは、コイルLBを介してグランドに接続される。ダイオードD2のアノードは、ダイオードDBのカソードと接続され、ダイオードD2のカソードは、スイッチSW3を介してグランドに接続される。
【0028】
Y電極Y側では、スイッチSW1'、SW2'は、図示しない電源から供給される電圧(Vs/2)の電源ラインとグランドとの間に直列に接続される。2つのスイッチSW1'、SW2'の相互接続点にはコンデンサC4の一方の端子が接続され、コンデンサC4の他方の端子とグランドとの間には、スイッチSW3'が接続される。また、コンデンサC4と並列にコンデンサCyが接続されている。
【0029】
また、直列接続されたスイッチSW4'、SW5'は、コンデンサC4の両端に接続される。これら2つのスイッチSW4'、SW5'の相互接続点は出力ラインOUTC'を介して負荷20のY電極Yに接続されている。尚、スイッチSW4'、SW5'は、スキャンドライバSDを構成している。スキャンドライバ(スキャン回路)SDは、表示すべきセル(画素)を選択するアドレス期間のスキャン時にはスキャンパルスを出力して、ライン毎のY電極Yの選択動作を行う。また、スイッチSW4'とコンデンサC4の一方の端子を接続する接続線を第3の信号ラインOUTA'とし、スイッチSW5'とコンデンサC4の他方の端子を接続する接続線を第4の信号ラインOUTB'とする。
【0030】
第4の信号ラインOUTB'と、書き込み電圧Vwを発生する電源ラインとの間には、抵抗R1やnpnトランジスタTr1を含むスイッチSW8が接続される。また、第4の信号ラインOUTB'と、電圧Vxを発生する電源ラインとの間には、nチャネルMOSトランジスタTr2、Tr3を含むスイッチSW9が接続される。
【0031】
第3の信号ラインOUTA'は、コイル回路A'を介してグランドに接続される。また第4の信号ラインOUTB'は、コイル回路B'及びスイッチSW10を介してグランドに接続される。コイル回路A'は、ダイオードDA'及びコイルLA'を具備し、コイル回路B'は、ダイオードDB'及びコイルLB'を具備する。ダイオードDA'のカソードは、スイッチSW1'、SW2'の相互接続点に接続される。また、ダイオードDA'のアノードは、コイルLA'を介してグランドに接続される。
【0032】
ダイオードDB'のカソードは、コイルLB'及びスイッチSW10を介してグランドに接続される。スイッチSW10は、リセット期間やアドレス期間等に、第4の信号ラインOUTB'に印加される電圧(Vs/2+Vw)や(Vs/2+Vx)が、そのままグランドに抜けてしまわないようにするためのスイッチである。また、ダイオードDB'のアノードは、コンデンサC4とスイッチSW3'の相互接続点に接続される。また、ダイオードD2'のアノードは、ダイオードDB'のカソードと接続され、ダイオードD2'のカソードは、スイッチSW3’に接続される。
【0033】
尚、上述したスイッチSW1〜SW5、SW8〜SW10、SW1'〜SW5'、及びトランジスタTr1〜Tr3は、図1に示した制御回路50からそれぞれ供給される制御信号により制御される。例えば、X電極ドライバにおける出力ラインOUTCの(Vs/2)からグランドレベル、又はグランドレベルから(−Vs/2)への立ち下げ動作のタイミングに合わせてY電極ドライバでのスイッチ制御によりグランドを介してコンデンサC4に電荷を回収する電力回収動作を行う。
【0034】
以上の構成により、維持放電期間の間、X電極Xへ(−Vs/2)〜(Vs/2)まで変化する電圧を印加する。また、上述したX電極Xに供給する電圧と極性の異なる電圧(+Vs/2,−Vs/2)を各表示ラインのY電極Yに交互に印加する。
【0035】
次に、本実施形態におけるプラズマディスプレイ装置の動作について説明する。
図3は、画像のサブフレームにおけるX電極X、Y電極Y、及びアドレス電極Aの電圧波形の例を示す図である。1フレームは、複数のサブフレームにより構成される。各サブフレームは、リセット期間、アドレス期間、及びサステイン(維持放電)期間により構成される。リセット期間では、表示セルCijの初期化を行う。アドレス期間では、アドレス電極A及びY電極Y間のアドレス放電により各表示セルCijの発光又は非発光を選択することができる。具体的には、Y電極Yに順次負のスキャンパルスを印加し、そのスキャンパルスに対応してアドレス電極AにアドレスパルスVaを印加することにより、所望の表示セルCijの発光を選択することができる。サステイン期間では、X電極X及びY電極Yに逆位相のサステインパルスを供給する。X電極X及びY電極Y間に電圧Vsが印加される毎に選択された表示セルCijでサステイン放電を行い、発光を行う。
【0036】
次に、本実施形態における異常電圧検出回路について説明する。以下では、Y電極ドライバ内のスキャンドライバを保護するように構成された異常電圧検出回路を一例として示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の駆動回路に対しても適宜適用可能である。
【0037】
図4は、本実施形態における異常電圧検出回路の構成例を示す回路図である。
異常電圧検出回路100は、ダイオードD11のカソードとコンデンサC11とスキャンドライバとの接続点(ノードN2)と、コンデンサC11のノードN2側とは反対側のコモン電極(ノードN1)との間に接続される。異常電圧検出回路100は、検出部101と保持部102とを有する。図4に示すコンデンサC11は、図2に示したコンデンサC4に対応する。
【0038】
検出部101は、ダイオードD12、D13、抵抗R11〜R16、トランジスタTR11、及びツェナーダイオードZD11を有する。ダイオードD12のアノードはノードN1に接続され、ダイオードD12のカソードは抵抗R11の一端に接続される。抵抗R11の他端は、抵抗R12を介してグランドに接続される。ダイオードD13のアノードはノードN2に接続され、ダイオードD13のカソードは抵抗R13の一端に接続される。抵抗R13の他端は、抵抗R14を介してグランドに接続される。
【0039】
トランジスタTR11のベースは抵抗R11、R12の相互接続点(ノードNA)に接続され、トランジスタTR11のエミッタは抵抗R13、R14の相互接続点(ノードNB)に接続される。トランジスタTR11のコレクタは、抵抗R15の一端に接続される。抵抗R15の他端は、抵抗R16を介してグランドに接続される。ツェナーダイオードZD11のカソードは抵抗R15、R16の相互接続点(ノードNC)に接続され、ツェナーダイオードZD11のアノードは保持部102に接続される。
【0040】
保持部102は、抵抗R17〜R19、及びトランジスタTR12、TR13を有する。抵抗R17の一端は、トランジスタTR12のエミッタに接続され、抵抗R17の一端とトランジスタTR12のエミッタとの相互接続点に、ラッチ回路を動作させるための電圧V1が印加される。
【0041】
トランジスタTR12のコレクタは、抵抗R18の一端に接続される。抵抗R18の他端は、ツェナーダイオードZD11のアノードに接続され、抵抗R18の他端とツェナーダイオードZD11のアノードとの相互接続点にトランジスタTR13のベースが接続される。トランジスタTR13のエミッタはグランドに接続され、トランジスタTR13のコレクタは抵抗R19の一端に接続される。抵抗R17、R19の相互接続点にトランジスタTR12のベースが接続される。
【0042】
抵抗R19と、トランジスタTR13のコレクタとの相互接続点に、異常を検出するための電圧V2が一端に印加された抵抗R20の他端が接続され、その接続点の電位が検出信号として出力される。
【0043】
ここで、ノードN1の電位をVN1、ノードN2の電位をVN2、ノードNAの電位をVNA、ノードNBの電位をVNB、ノードNCの電位をVNCとすると、検出部101の抵抗R11〜R14の抵抗値及びツェナーダイオードZD11のツェナー電圧は、下記の条件を満たすように設定される。
【0044】
コンデンサC11に異常電圧が印加されていない定常時、すなわちノードN2とノードN1との電位差(VN2−VN1)が所定の電位差より小さいときには、ノードNBとノードNAとの電位差(VNB−VNA)が例えば0.6Vより小さくなるように、抵抗R11〜R14の抵抗値は設定される。すなわち、抵抗R11〜R14の抵抗値をR11〜R14とすると、(R14・VN2/(R13+R14))−(R12・VN1/(R11+R12))<0.6を満たすように設定される。
【0045】
また、コンデンサC11に異常電圧が印加された時、すなわちノードN2とノードN1との電位差(VN2−VN1)が所定の電位差以上のときには、ノードNBとノードNAとの電位差(VNB−VNA)が0.6V以上となりトランジスタTR11が動作する。このとき、電流ICは、IC=IB−(VB/R14)=(VN2−VNB)/R13−(VB/R14)となる。また、ノードNCの電位VNCは、VNC=R16・IC=((VN2−VNB)/R13−(VB/R14))・R16となるので、この電位VNCにあわせてツェナーダイオードZD11のツェナー電圧が設定される。
【0046】
上述のように異常電圧検出回路100を構成することにより、コンデンサC11に異常電圧が印加された場合に、検出状態を維持する特徴を持つ検出信号を発生し、より確実に制御回路50等が異常を検出することができ、従来よりも確実に駆動回路(本例ではスキャンドライバ)を保護することができる。
【0047】
異常電圧検出回路100の検出部101は、コンデンサC11にかかる電圧をノードNA、NBの電位として監視している。そして、ノードNAの電位よりノードNBの電位が高いと、トランジスタTR11にベース電流が流れるようになり、コレクタ方向にも電流が流れることとなる。つまり、異常電圧印加時にはノードNBの電位が高くなるため、ノードNAとの電位差が大きくなり、コレクタ方向の電流も大きくなる。抵抗R11〜R14の抵抗値を、上述のように正常時にはコレクタ電流はほとんど流れないように設定し、異常電圧印加時にのみ電流が流れるように設定する。また、コレクタ電流の値は、ツェナーダイオードZD11により調整可能であり、ツェナー電圧が5Vだとすれば、正常時にノードNCの電位が1〜2Vかかるように抵抗R11〜R14を設定し、かつ異常電圧印加時ノードNCの電位が5Vを超えるように抵抗R11〜R14を設定する。
【0048】
また、異常電圧検出回路100の保持部102は、コンデンサC11に異常電圧が印加されたことによりツェナーダイオードZD11の逆方向に電流が流れると、トランジスタTR13がオンになる。それによりトランジスタTR13のコレクタに電流が流れ、トランジスタTR12もオンとなりコレクタ電流が流れる。これにより、さらにトランジスタTR13に帰還がかかって、トランジスタTR13のコレクタ電流が増加する。このようにして、2つのトランジスタが互いのコレクタ電流を増加しあうため、異常電圧が一瞬で終了し、ツェナーダイオードZD11の電流が短時間しか流れなくても、保持部102は動作し続ける。その結果、正常時にほぼ電圧V2である検出信号の電位は、異常が検出されると、保持部102によって、ほぼゼロ電位に保持され続けるため、出力される検出信号によって制御回路50等は異常を容易に検知することができる。
【0049】
なお、出力される検出信号の異常検出時の電位は、制御回路50等の受け入れレベルに応じて設定すれば良く、例えば、一般的な制御回路では概ね5Vであるので、V2の電位も5Vにすればよい。
【0050】
図5は、本実施形態における異常電圧検出回路の他の構成例を示す回路図である。
図4に示した異常電圧検出回路100と同様に、異常電圧検出回路200は、ダイオードD21のカソードとコンデンサC21とスキャンドライバとの接続点と、コンデンサC21においてダイオードD21との接続点側とは反対側のコモン電極(ノードN1)との間に接続される。異常電圧検出回路200は、検出部201と保持部202とを有する。図5に示すコンデンサC21は、図2に示したコンデンサC4に対応する。
【0051】
検出部201は、抵抗R21〜R25、フォトカプラPC21、及びツェナーダイオードZD21を有する。抵抗R21の一端は、ダイオードD21のカソードとコンデンサC21との相互接続点に接続され、抵抗R21の他端は、抵抗R22の一端に接続される。抵抗R22の他端は、コンデンサC21においてダイオードD21との接続点側とは反対側の端子に接続される。
【0052】
抵抗R21、R22の相互接続点に、ツェナーダイオードZD21のカソードが接続される。ツェナーダイオードZD21のアノードは、抵抗R23を介して、フォトカプラPC21のフォトダイオードPD21のアノードに接続される。フォトカプラPC21のフォトダイオードPD21のカソードは、抵抗R22の他端に接続される。
【0053】
フォトカプラPC21のトランジスタPT21のコレクタは、抵抗R24を介して電圧V3が印加され、トランジスタPT21のエミッタは、抵抗R25を介してグランドに接続される。トランジスタPT21のエミッタと抵抗R25の接続点に保持部202が接続される。
【0054】
保持部202は、抵抗R26〜R28、及びトランジスタTR21、TR22を有する。抵抗R26の一端は、トランジスタTR21のエミッタに接続され、抵抗R26の一端とトランジスタTR21のエミッタとの相互接続点に電圧V3が印加される。
【0055】
トランジスタTR21のコレクタは、抵抗R27の一端に接続される。抵抗R27の他端は、トランジスタPT21のエミッタと抵抗R25の接続点に接続され、抵抗R27の他端にトランジスタTR22のベースが接続される。トランジスタTR22のエミッタはグランドに接続され、トランジスタTR22のコレクタは抵抗R28の一端に接続される。抵抗R26、R28の相互接続点にトランジスタTR21のベースが接続される。
【0056】
抵抗R28と、トランジスタTR22のコレクタとの相互接続点に、電圧V3が一端に印加された抵抗R29の他端が接続され、その接続点の電位が検出信号として出力される。
【0057】
ここで、図5に示すように、コンデンサC21の端子間の電圧をVY、抵抗R22の端子間の電圧をVX、ツェナーダイオードZD21の端子間の電圧をVD、フォトカプラPC21の一次側の端子間の電圧をD1F、フォトカプラPC21のトランジスタPT21の電流増幅率をhfeとする。
このとき、VX=R21・VY/(R21+R22)である。
【0058】
コンデンサC21に異常電圧が印加されていない定常時、R25・IE<0.6Vを満たすようにする。ここで、IE=ID・hfeであり、ID=(VX−VD−D1F)/R23であるので、R25・((VX−VD−D1F)/R23)・hfe<0.6Vを満たすようにする。
また、コンデンサC21に異常電圧が印加された時、0.6V<R25・IEを満たすようにする。すなわち、IE=ID・hfeであり、ID=(VX−VD−D1F)/R23であるので、0.6V<R25・((VX−VD−D1F)/R23)・hfeを満たすようにする。
これらの条件に合わせて、抵抗R21〜R25、ツェナーダイオードZD11、フォトカプラPC21が選択し構成すればよい。
【0059】
異常電圧検出回路200の検出部201は、コンデンサC21に並列に抵抗R21、R22を接続し、コンデンサC21の両端に印加される電圧を監視する。これらの抵抗値は、上述したようにツェナーダイオードZD21におけるツェナー電圧等に応じて調整する。コンデンサC21に異常電圧が印加された場合のみ、ツェナーダイオードZD21の逆方向に電流を流すことができ、フォトカプラPC21により2次側のコレクタ−エミッタ方向に電流が流れ、トランジスタTR22がオンする。これにより、図4に示した異常電圧検出回路100と同様に保持部202が動作し、制御回路50等に確実に異常を検出させることができる。
【0060】
なお、図5に示した例は、フォトカプラPC21のトランジスタPT21に電流を流すための電圧、ラッチ回路を動作させるための電圧、異常を検出させるための検出信号の電圧を等しくした場合の回路例である。例えば、電圧V3は、図4に示した例と同様に5Vにすればよい。
【0061】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイ装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態におけるY電極ドライバ及びX電極ドライバの構成例を示す図である。
【図3】本実施形態におけるプラズマディスプレイ装置の動作を説明するための図である。
【図4】本実施形態における異常電圧検出回路の構成例を示す図である。
【図5】本実施形態における異常電圧検出回路の他の構成例を示す図である。
【図6】従来の保護回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 プラズマディスプレイパネル
20 Y電極ドライバ
21 スキャン回路
22 サステイン回路
23 リセット回路
24 異常電圧検出回路
30 X電極ドライバ
31 サステイン回路
40 アドレスドライバ
50 制御回路
60 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示電極対が配列された第1基板と、前記第1基板に対向して配置された第2基板とが放電空間を介して封着されてなるプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルの電極に駆動電圧を印加する駆動回路と、
前記駆動回路内の所定の回路部分に異常電圧が印加されたことを検出する異常電圧検出回路とを有し、
前記異常電圧検出回路は、前記所定の回路部分に対する異常電圧の印加を検出する検出回路と、
前記検出回路により異常電圧が検出された場合に、異常電圧の検出状態を保持する保持回路とを有することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
所定の回路部分の両端の電位差が所定の電位差より大きい場合に前記検出回路から前記保持回路に対して電流が流れ、当該電流に基づいて帰還動作を行い前記保持回路が異常電圧の検出状態を保持することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記検出回路は、スキャンドライバに係るコンデンサに対する異常電圧の印加を検出することを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記保持回路は、トランジスタを用いて構成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
複数の表示電極対が配列された第1基板と前記第1基板に対向して配置された第2基板とが放電空間を介して封着されてなるプラズマディスプレイパネルの電極に駆動電圧を印加する駆動回路であって、
前記駆動回路内の所定の回路部分に異常電圧が印加されたことを検出する異常電圧検出回路を有し、
前記異常電圧検出回路は、前記所定の回路部分に対する異常電圧の印加を検出する検出回路と、
前記検出回路により異常電圧が検出された場合に、異常電圧の検出状態を保持する保持回路とを有することを特徴とする駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−49117(P2010−49117A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214655(P2008−214655)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】