説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】表示する画像の品質を損なわず焼き付きを低減することで、良好な画像表示が実現できるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマディスプレイパネル150を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置100であって、入力映像を画面全体の領域に表示させ、且つ部分的に拡大率、もしくは縮小率を変更する非線形スケーラー回路120を備え、前記非線形スケーラー回路120により、時間的且つ映像領域毎に拡大率・縮小率の適用を変化させていくことによって、入力画面の表示に欠けを発生させることなく表示画面を移動させてプラズマディスプレイパネル150の焼き付きを低減させることを特徴とするプラズマディスプレイ装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDPには大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、3電極構造の面放電型が主流である。
【0003】
この面放電型のPDPの構造は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する赤色、緑色、青色に発光する蛍光体を設けて複数の放電セルを構成したもので、放電により発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発することによりカラー表示を行っている。
【0004】
このようなPDPは、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−131580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記PDPを表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置においては、同じ映像を一定時間以上表示させたままにすると、いわゆる「焼き付き」が発生する場合があった。
【0006】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、表示する画像の品質を損なわず焼き付きを低減することで、良好な画像表示が実現できるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために本発明のプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルを表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置であって、入力映像を画面全体の領域に表示させ、且つ部分的に拡大率、もしくは縮小率を変更する非線形スケーラー回路を備え、前記非線形スケーラー回路により、時間的且つ映像領域毎に拡大率・縮小率の適用を変化させていくことによって、入力画面の表示に欠けを発生させることなく表示画面を移動させてプラズマディスプレイパネルの焼き付きを低減させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示する画像の品質を損なわず焼き付きを低減することが可能となり、もって良好な画像表示が実現できるプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置について、図を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図である。プラズマディスプレイ装置100は、入力映像を非線形に拡大、もしくは縮小する非線形スケーラー回路120、非線形スケーラー回路120を制御するマイコン110、非線形スケーラー回路120にクロックを供給するクロック生成器130、PDP150、PDP150に映像を表示させる為の放電回路140、を備える。
【0011】
また、非線形スケーラー回路120は、映像データを格納するラインメモリの選択を行なうスイッチ121、124、ラインメモリ122、123、ラインメモリ122、123から出力された映像データを混合して、映像を生成するデータ混合器125を備える。
【0012】
以上の構成において、入力された映像信号を非線形に拡大する制御に関して以下、述べる。非線形スケーラー回路120に入力されたデジタルの映像信号は、スイッチ121を介して、2つのラインメモリ122、123のいずれかに、書き込みクロックWCKによって選択的に書き込まれる。ラインメモリ122、123はともに書き込みクロックWCKと読み出しクロックRCKが独立に入力され、クロック生成器130から生成されるリードイネーブル信号REが入力されて制御される。
【0013】
そして、スイッチ121と逆に制御されるスイッチ124が水平ライン毎に切り替えられ、ラインメモリ122、123に書き込まれたデータは読み出しクロックRCKによって交互に読み出される。ラインメモリ122、123から読み出された画素データはデータ混合器125に入力され、データ混合器125は所定の係数に従った混合比で2個の画素データを混合した画素データを生成し、非線形スケーラー回路120から映像データを出力する。
【0014】
図2は、2つのラインメモリ122、123のうちの、一方のラインメモリの書き込み、読み出し動作を、横軸を時間、縦軸をメモリアドレスとして模式的に示したものであり、前半の1水平期間は書き込み、後半の1水平期間は読み出しを示している。他方のラインメモリは、一方のラインメモリが書き込みの時は読み出し、読み出しの時は書き込みの動作をしている。
【0015】
また、図3は、図2におけるラインメモリの読み出しの状態(図2中の、直線A、曲線B、曲線C)に対する映像表示の状態を模式的に示す図である。
【0016】
ここで、書き込みのクロックWCKに対して、読み出しのクロックRCKも、図2中に直線Aで示すように直線的に読み出しを行うのであれば、図3(a)に示すように、入力と同じイメージの映像が出力される。ここで読み出し速度を速くする事により、映像を拡大する事が可能であり、逆に読み出し速度を遅くする事により、映像を縮小する事が可能となる。ここで、その読み出しクロックのイネーブル信号を時間的に変化させてやる事により、非線形な拡大、縮小をする事が出来る。
【0017】
例えば図2中に曲線Bで示すような読み出し方とした場合、映像の開始側の読み出し速度が速くなっている為、映像が縮小され、映像の終端側の読み出し速度が遅くなっている為、拡大され、図3(b)に示すように、中心が左に寄った映像となる。
【0018】
また図2中に曲線Cで示すような読み出し方をした場合、映像の開始側の読み出し速度が遅くなっている為、映像が拡大され、映像の終端側の読み出し速度が速くなっている為、映像が縮小され、図3(c)に示すように、中心が右に寄った映像となる。このように、読み出しイネーブル信号REを非線形で与える事により、非線形な映像を取り出す事が可能となる。
【0019】
図4は、図1中のデータ混合器125の動作を説明するための図である。A1、B1、C1、D1はラインメモリに入力されるクロックWCKのタイミングで入力された画素データである。A2、B2、C2、D2、E2は、ラインメモリから出力されるRCKのタイミングで記載された画素データである。ここで、入出力のタイミングが異なる映像変換をする際の違和感をなるべく発生させない為、複数の入力画素データから出力画素データを生成する方法に関して述べる。例えばA2に関してはA1のデータと同じタイミングである為、A2=A1とすればよいが、B2に関しては、A1とB1の間である事から、A1側の影響度、B1側の影響度をタイミングの係数をもって混合し、B2=A1*β/(α+β)+B1*α/(α+β)と与えればよい。同様にC2=B1*θ/(γ+θ)+C1*γ/(γ+θ)と与えればよい。
【0020】
また、ラインメモリを持つ事と同様に、フレームメモリを持つ事により、その時は垂直の映像読み出しを非線形に動作させる事によって、垂直方向に関しても非線形な映像を取り出す事が可能となる。
【0021】
上記のような、非線形スケーラーブロックを用いる事により、元の画像が図3(a)のような映像に対し、図3(b)、図3(c)に示すような非線形な映像出力をする事が可能となる。これにより、時間的に拡大率、縮小率の適用を映像領域毎に変更していく事によって、映像全体を欠けさせる事なく、映像の位置を一定時間毎に動かす事が可能となり、プラズマディスプレイの焼き付きを低減させる事を可能とするシステムを実現する事ができる。
【0022】
なお、この非線形スケーラー回路は、4:3の映像を16:9で表示させる際、中心から周辺にかけて拡大率を大きくして表示させる、「ジャスト」と呼ばれるアスペクト処理で用いられている回路を流用する事ができれば、新規の回路追加なしに実現する事が可能である。
【0023】
ここで比較のため、図5に示すようなプラズマディスプレイ装置500について、図を用いて説明する。
【0024】
図5は、比較のためのプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図である。プラズマディスプレイ装置500は、入力映像を拡大、もしくは縮小するスケーラー回路520、スケーラー回路520を制御するマイコン510、スケーラー回路520にクロックを供給するクロック生成器530、PDP550、PDP550に映像を表示させる為の放電回路540、を備える。
【0025】
また、スケーラー回路520は、映像データを格納するラインメモリの選択を行なうスイッチ521、524、ラインメモリ522、523、ラインメモリ522、523から出力された映像を読み込む時に位置制御を行なう回路525、ラインメモリ522、523から出力された映像データを混合して、映像を生成するデータ混合器526を備える。
【0026】
以上の構成においては、まず、スケーラー回路520によって、映像をディスプレイの画素に変換する。ここではVGA(640x480画素)の映像を、XGA(1024x768画素)のディスプレイに拡大する場合を想定すると、スケーラー520にて1024/640倍の水平方向の拡大率に設定し、768/480倍の垂直方向の拡大率に設定する事により、ディスプレイの大きさに表示する事ができる。
【0027】
この時、スイッチ521、524は、ラインメモリ522、523がどちらかに書き込みであれば、もう一方のラインメモリが読み込みになるよう、データ混合器526に対して順次映像が出力されるように制御を行なう。またラインメモリ522、523は、書き込み用クロックはVGAの25.18MHzになるように、また出力の為の読み出し用のクロックはXGAの65.00MHzになるように設定を行う。読み出し制御部525、とデータ混合器526とは順次入力された映像データの混合を行い、出力する。
【0028】
以上の構成においては、映像位置を動かす事によって焼き付きを低減する。その動作に関して以下、説明する。
【0029】
図6を用いてその動作を示す。図6(a)はラインメモリから映像を読み出すタイミングを示す図である。通常はこの図のように映像が格納されている最初の画素データ位置からデータを読み出す事で、ディスプレイの境界と入力映像の境界が一致する事により、図6(b)のような映像を生成する。
【0030】
ここで、図6(c)のように読み出すタイミングを数画素分遅延させた場合、図6(d)のように、ディスプレイの左の境界に対して映像は左に動いたイメージとなる。また図6(e)のように読み出すタイミングを数画素分進めた場合、図6(f)のように映像は右に動いたようなイメージとなる。
【0031】
また、ラインメモリを持つ事と同様に、フレームメモリを持つ事により、その時は垂直の映像読み出し位置を変更する事によって、垂直位置に関しても映像表示位置を上下に動かす事ができる。
【0032】
以上のような移動の動作を数秒〜数分毎に1画素ずつ、移動範囲を水平、垂直共に数画素の範囲を持たせる事によって、1つの場所で表示されていた画素データの発光時間が分散される。例えば垂直、水平とも±5ドットの範囲で1画素ずつ、ロの字に動かす事によって、図6(g)に示すように、中心の1画素が周辺の40画素の範囲を移動する事になり、発光時間が分散され、焼き付きが低減される。
【0033】
しかし、上記のような、比較のためのプラズマディスプレイ装置における焼き付き低減の方法では、画面全体を動かすことによるものであるため、周辺の映像が画面外に出される状態となってしまう。例えば図6(d)のように、左側が欠けた状態となる。これはパソコン信号のような情報表示装置においては、情報不足を招く場合や、欠ける側とは反対側に黒い映像外の領域が見える事により、受像に違和感をもたらす等の表示画像の品質の低下という問題が発生してしまう。
【0034】
しかしながら本発明一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置では、前述したように、入力映像を画面全体の領域に表示させ、且つ部分的に拡大率、もしくは縮小率を変更する非線形スケーラー回路を備えており、この非線形スケーラー回路により、時間的且つ映像領域毎に拡大率・縮小率の適用を変化させていくことによって、入力画面の表示に欠けを発生させることなく且つPDPの焼き付きを低減させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように本発明は、大画面、高精細のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】ラインメモリの書き込み、読み出し動作を、横軸を時間、縦軸をメモリアドレスとして模式的に示す図
【図3】図2におけるラインメモリの読み出しの状態に対する映像表示の状態を模式的に示す図
【図4】図1中のデータ混合器の動作を説明するための図
【図5】比較のためのプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図
【図6】図5のプラズマディスプレイ装置における焼き付き低減の動作を説明するための図
【符号の説明】
【0037】
100 プラズマディスプレイ装置
110 マイコン
120 非線形スケーラー回路
121、124 スイッチ
122、123 ラインメモリ
125 データ混合器
130 クロック生成器
140 放電回路
150 プラズマディスプレイパネル(PDP)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルを表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置であって、入力映像を画面全体の領域に表示させ、且つ部分的に拡大率、もしくは縮小率を変更する非線形スケーラー回路を備え、前記非線形スケーラー回路により、時間的且つ映像領域毎に拡大率・縮小率の適用を変化させていくことによって、入力画面の表示に欠けを発生させることなく表示画面を移動させてプラズマディスプレイパネルの焼き付きを低減させることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−91773(P2010−91773A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261463(P2008−261463)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】