プラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置
【課題】プラズマを内包する気泡(1次気泡)を安定に維持することのできるプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置を提供する。
【解決手段】本発明のプラズマ診断装置は、貯留部2が、ソリューションプラズマ放電装置に設けられた1対の放電電極1・1と離間して上部に設けられ、かつ、貯留部2の下方に形成される2次気泡7の表面が、1次気泡6の表面に接触する位置に配置されている。これにより、2次気泡7が、1次気泡6の振動を抑制するので、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。
【解決手段】本発明のプラズマ診断装置は、貯留部2が、ソリューションプラズマ放電装置に設けられた1対の放電電極1・1と離間して上部に設けられ、かつ、貯留部2の下方に形成される2次気泡7の表面が、1次気泡6の表面に接触する位置に配置されている。これにより、2次気泡7が、1次気泡6の振動を抑制するので、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電電極間に発生したプラズマを内包する気泡(1次気泡)の振動を抑制し、その気泡を安定化することのできるプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用した技術の中に、液体中でプラズマを発生させて、これを工業的に応用する技術が開発されつつある。このような液体中のプラズマは、主に溶液中で利用されるので「ソリューションプラズマ」と呼ばれる。
【0003】
ソリューションプラズマは、溶液中に対向配置された2つの放電電極間に電圧(高電場)を印加することにより、放電電極間に発生するプラズマである。発生したプラズマの周囲には気泡が発生し、その気泡がプラズマを取り囲んでおり、その気泡の周囲を溶液が取り囲んでいる。つまり、ソリューションプラズマには、プラズマ/気相,気相/液相という2つの界面が存在するという特徴がある。このように、ソリューションプラズマは、プラズマによる「高エネルギー状態」を溶液内に閉じ込めるという状態を実現している。これにより、プラズマの周囲の気相、液相またはその界面で様々な化学反応が促進される。この化学反応による産業への応用として、水処理、滅菌、廃棄物処理、新物質創製、物質の新規合成法の開発、表面改質、超高速加工、希少金属回収、超機能溶液、及び養殖等を含む生物培養等が挙げられる。
【0004】
非特許文献1には、ソリューションプラズマを用いた金ナノ微粒子の合成反応が記載されている。図11は、非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置(ソリューションプラズマ発生装置)121を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置121は、対向する2つのワイヤ状金属電極101・101を備えており、各ワイヤ状金属電極101・101がホルダ110・110によって容器111に固定されている。また、容器111内の溶液112として、塩化金酸水溶液が用いられている。ソリューションプラズマ放電装置121では、ワイヤ状金属電極101・101間にパルス電圧を印加すると、ワイヤ状金属電極101・101間にプラズマ113が発生する。これにより、溶液112(塩化金酸水溶液)中の金を還元し、直径10〜15nmの金ナノ微粒子が合成される。
【0005】
また、特許文献1には、本願発明者等によって開発されたソリューションプラズマ放電装置が記載されている。図12は、特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置221を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置221は、2つの放電電極201・201が、シリコンゴム製の基板202に貫通するように固定された構成である。放電電極201・201間の間隔は、下部Aが狭く、上部Bに向かって広くなっている。さらに、放電電極201・201間の上部Bは、基板202の下面に形成された凹部203内に配置されている。なお、凹部203は溶液212の液面より下あるため、放電電極201・201も溶液(液体)12に浸されている。また、基板202に対する放電電極201の角度αは、78°〜85°となっている。
【0006】
ソリューションプラズマ放電装置221では、放電電極201・201間に電圧を印加すると、放電電極201・201間の距離が短い下部Aでプラズマが発生する。発生したプラズマは同時に気泡を生じ、電圧印加中、プラズマ状態が気泡内部で安定化され、維持される。下部Aで発生したプラズマは、気泡を発生させ続ける。その結果、プラズマの周囲の気泡が上昇するのに伴い、プラズマが徐々に放電電極201・201の上部Bへ移動する。そして、上部Bが配置された凹部203内に気泡がたまってゆき、最終的に上部Bで放電電極201・201間の放電がつながったプラズマ状態が安定化される。
【0007】
ところで、気相プラズマにおいては、プラズマの主要パラメータであるプラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断する技術(プラズマ診断法)が既に確立されている。
【0008】
例えば、非特許文献2には、1920年代にラングミュア(Langmuir)によって提案された、気相プラズマにおけるプローブ測定法(Langmuirプローブ法;探針測定法とも称される)が開示されている。そして、このプローブ測定法が、気相プラズマのプラズマ診断に応用されている。
【0009】
プローブ測定法とは、プラズマの近傍にプローブ電極(測定電極)を挿入し、微小の直流電圧を印加することにより、プラズマ状態を計測する方法である。プローブ測定法では、印加電圧を変化させるとプローブ電極の電流が、周りに存在する電子やイオンの分布密度により変化する。これにより、この電流−電圧特性から様々な物理量を定量化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−9993号公報(2010年1月14日公開)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】高井治、「ソルーションプラズマによるナノ微粒子合成と界面制御」、粉砕、ホソカワ粉体技術研究所、2007年12月28日、No.51、p.30−36
【非特許文献2】Journal of Plasma and Fusion Research, Vol. 81(2005), No. 7 pp. 482-525.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ソリューションプラズマにおいて、プラズマ状態を診断することは極めて困難であるため、ソリューションプラズマのプラズマ診断法は、未だ確立されていないのが現状である。
【0013】
上述のように、ソリューションプラズマを用いると、様々な化学反応を促進することができる。しかし、その化学反応は、印加電圧、電流、電極の条件(材料など)、溶液の条件(成分、導電率など)等により様々に変化する。このため、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0014】
非特許文献1には、気相プラズマと同様に、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ状態の診断および制御することの必要性が指摘されているものの、プラズマ診断法の確立は、今後の課題として記載されている。
【0015】
一方、特許文献1のソリューションプラズマ放電装置221は、放電電極201・201間の距離が短い下部Aで発生したプラズマを、凹部203内に配置された放電電極201・201間の距離が長い上部Bに移動させて、プラズマを安定化している。また、特許文献1には、「放電電極201・201間の距離が長く、プラズマ状態の領域が広くなるので、プローブ測定法を用いてプラズマ状態を観測する場合において、測定電極(プローブ電極)をプラズマ状態の領域に挿入することが容易になる。」と記載されている。
【0016】
しかし、プラズマ状態の領域を広くしてプラズマを安定化しただけでは、プラズマ状態を診断することは困難である。
【0017】
具体的には、上述のように、ソリューションプラズマは、プラズマの周囲に発生した気泡がプラズマを取り囲み、その気泡の周囲を溶液が取り囲んでいる。しかし、プラズマを内包する気泡(1次気泡)は、極めて不安定である。さらに、プローブ測定法を行うためには,針状のプローブ電極をプラズマ中に挿入する必要がある。このため、プローブ電極が、プラズマを乱す可能性や、ただでさえ不安定な1次気泡を破壊する可能性がある。従って、プローブ測定法によって、ソリューションプラズマのプラズマ診断を実現することはできないか、できたとしてもその再現性は極めて低くなる。
【0018】
このように、ソリューションプラズマにおいて、プラズマを内包する1次気泡は不安定である。それにも拘わらず、非特許文献1および特許文献1には、1次気泡を安定化させる根本的な対策は、一切開示されていない。
【0019】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマを内包する気泡(1次気泡)を安定に維持することのできるプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るプラズマ診断装置は、上記の課題を解決するために、液体中に配置され、先端が互いに対向した1対の放電電極を備えたソリューションプラズマ放電装置の放電電極間に発生したプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置であって、
放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、ソリューションプラズマ放電装置に設けられた1対の放電電極への電圧印加により、放電電極間にプラズマが発生する。さらに、放電電極間に流れる電流により、液体が加熱される。これにより、液体中、特にプラズマの周囲には、気泡が発生する。発生した気泡のうち、プラズマの周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマを内包する1次気泡が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマから離れて存在する気泡は、1次気泡の形成に関与しない。
【0022】
ここで、1次気泡は、極めて不安定である。そこで、上記の構成によれば、この不安定な1次気泡を安定化させるために、貯留部を備えている。この貯留部は、放電電極と離間し、放電電極の上部に配置されている。このため、この貯留部には、液体中を上昇する1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部が溜まる。これにより、貯留部の下方(底部)には、溜まった気泡を含む2次気泡が形成される。しかも、貯留部は、2次気泡の表面が、1次気泡の表面に接触するように配置される。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマのプラズマ状態を診断することができる。
【0023】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡は、1次気泡の形成に関与しない気泡からなることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、1次気泡と2次気泡とが、いずれも液体中に発生した気泡から形成される。つまり、1次気泡と2次気泡とが同一成分の気体からなる。これにより、1次気泡と2次気泡との境界(接触部)で副反応が起きない。従って、不安定な1次気泡を2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0025】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡の表面は、上記貯留部から下方に突出していることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、貯留部には十分に気泡が溜まり、2次気泡の表面が貯留部の下方から突出している。つまり、2次気泡の表面は、貯留部の底からはみ出している。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0027】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡は、上記1次気泡よりも大きいことが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、1次気泡よりも大きい2次気泡が、1次気泡に接触する。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0029】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記プラズマの状態を計測する計測部を備えることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、プラズマの状態を診断する計測部を備えている。従って、2次気泡によって安定に維持された1次気泡内のプラズマ状態を、計測部によって診断することができる。
【0031】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記計測部は、上記貯留部内を貫通するプローブ電極であり、上記プローブ電極の先端部が、上記1次気泡内に挿入される構成であってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、1次気泡の形成後、プローブ電極の先端部が、1次気泡内に挿入される。上述のように、1次気泡は、2次気泡によって、安定に維持されている。このため、1次気泡内にプローブ電極を挿入しても、1次気泡が破壊されたり、プラズマが乱されたりすることはない。従って、プローブ測定法により、プラズマ状態を診断することができる。
【0033】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記計測部は、上記貯留部内を貫通する光ファイバであり、上記光ファイバの先端部が、上記1次気泡内に挿入される構成であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、1次気泡の形成後、光ファイバの先端部が、1次気泡内に挿入される。上述のように、1次気泡は、2次気泡によって、安定に維持されている。このため、1次気泡内に光ファイバを挿入しても、1次気泡が破壊されたり、プラズマが乱されたりすることはない。従って、光ファイバを用いた分光法により、プラズマ発光を測定することによって、プラズマ状態を診断することができる。
【0035】
本発明に係るプラズマ診断装置は、上記貯留部と計測部とを、互いに独立して移動させる移動部を備える構成であってもよい。
【0036】
上記の構成によれば、移動部が、貯留部の移動とは独立して、計測部を移動させる。これにより、貯留部を液体中の最適な位置に移動させて、2次気泡によって、1次気泡の振動を抑制しつつ、計測部を液体中の最適な位置に配置することができる。従って、計測部を用いたプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0037】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記貯留部は、透明であってもよい。
【0038】
上記の構成によれば、貯留部が透明材料から構成されているため、貯留部内の状況を把握しやすい。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0039】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置は、上記の課題を解決するために、
液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、
上記1対の放電電極の各先端が互いに対向しており、
上記放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されていることを特徴としている。
【0040】
上記の構成によれば、1対の放電電極への電圧印加により、放電電極間にプラズマが発生する。さらに、放電電極間に流れる電流により、液体が加熱される。これにより、液体中、特にプラズマの周囲には、気泡が発生する。発生した気泡のうち、プラズマの周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマを内包する1次気泡が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマから離れて存在する気泡は、1次気泡の形成に関与しない。
【0041】
ここで、1次気泡は、極めて不安定である。そこで、上記の構成によれば、この不安定な1次気泡を安定化させるために、貯留部を備えている。この貯留部は、放電電極と離間し、放電電極の上部に配置されている。このため、この貯留部には、液体中を上昇する1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部が溜まる。これにより、貯留部の下方(底部)には、溜まった気泡を含む2次気泡が形成される。しかも、貯留部は、2次気泡の表面が、1次気泡の表面に接触するように配置されている。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマのプラズマ状態を診断することができる。
【0042】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記1対の放電電極は、水平に配置されていることが好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、1対の放電電極が、液面に対して平行に配置されている。このため、1次気泡の形成に関与しない気泡が、貯留部に溜まりやすい。その結果、2次気泡が、迅速に貯留部に形成される。従って、2次気泡が1次気泡を安定化する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置は、以上のように、上記貯留部が、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置された構成である。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置におけるプラズマ発生領域付近の側面図である。
【図2】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置を示す断面図である。
【図3】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、2次気泡が1次気泡に接触した状態を示す図である。
【図4】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、2次気泡が1次気泡に接触していない状態を示す図である。
【図5】プラズマ発生前における、安定化前のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図6】プラズマ発生前における、安定化後のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図7】貯留部を設けない場合のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図8】貯留部を設けた場合のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図9】図8の電流−電圧曲線をデータ処理した結果の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図10】図9において(b)で示されるグラフにおける領域Aのプローブ電流を自然対数に変換したグラフである。
【図11】非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【図12】特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態について図に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
本発明は、プラズマを内包する気泡(1次気泡)に、別の気泡を積極的に接触させることにより、不安定な1次気泡を安定化する。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態に係るソリューションプラズマ放電装置21を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置21は、容器11内の溶液(液体)12中に、1対の放電電極1・1を備えている。さらに、ソリューションプラズマ放電装置21は、発生するプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置を備えている。このプラズマ診断装置は、貯留部2を備えている。なお、本実施形態では、プラズマ診断装置は、ソリューションプラズマ放電装置21と独立した構成となっている。しかし、プラズマ診断装置が、ソリューションプラズマ放電装置21に組み込まれた(一体化された)構成であってもよい。つまり、プラズマ診断装置が、ソリューションプラズマ放電装置21の構成要素の1つであってもよい。また、貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の構成要素であってもよい。
【0049】
放電電極1・1は、いずれも水平(溶液12の液面に対して平行)に設けられおり、各放電電極1・1の先端は互いに対向している。また、各放電電極1・1は、互いに近接して設けられている。各放電電極1・1は、セラミックチューブ10・10で覆われている。ただし、各放電電極1・1の先端部は、セラミックチューブ10・10で覆われておらず、溶液12中に露出している。
【0050】
なお、放電電極1・1には、図示しない電源から、電圧が供給される。これにより、放電電極1・1間には、プラズマ13が発生する。なお、この電源の条件は、プラズマ13が発生する条件であれば、特に限定されるものではない。すなわち、電圧値、パルス幅,パルス周波数,パルス波形などは、特に限定されるものではない。
【0051】
また、本実施形態では、放電電極1・1として、針対針電極構造を用い、放電電極間1・1の距離を、0.5mmとしている。しかし、放電電極1・1の形状(種類)、電極間距離,大きさ、材質、などは、特に限定されるものではない。例えば、放電電極1は、タングステン、銅、またはその他の導電性の材料から構成することができる。
【0052】
溶液12は、化学反応の対象となる任意の溶質の他、溶液12の導電性を調整するための電解質を含んでもよい。また、溶液12は、溶媒自身を反応の対象とし、溶質を含まなくてもよい。なお、溶液12を構成する溶質と溶媒との組み合わせ,溶液12の濃度,導電率,pHなどは、目的に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0053】
一方、プラズマ診断装置の一部である貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の放電により発生する気泡の一部を、内部に貯留する。貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の各放電電極1・1と離間して設けられており、放電電極1・1の上部に配置されている。すなわち、貯留部2は、放電電極1・1間に発生するプラズマ13の真上に配置されている。
【0054】
なお、プラズマ診断装置は、図示しないマイクロメータ(移動部)を備えており、貯留部2は、マイクロメータによって、1/100mm間隔で、xyz軸の各方向に、位置を制御し、任意の方向に移動できるようになっている。また、プラズマ診断装置は、貯留部2およびマイクロメータの他に、ソリューションプラズマ放電装置21に発生するプラズマの状態を計測するための計測部、計測部による計測結果を解析する解析部などを備えていてもよい。
【0055】
なお、本実施形態では、中空の無底円錐形状の貯留部2を用いている。具体的には、底面の開口の直径が6mm,高さ1cmの円錐型(傘状)の貯留部2を用いている。しかし、貯留部2の形状は、放電により発生する気泡を溜めることができれば特に限定されるものではない。また、貯留部2は、例えば、ガラス、または、セラミック等の絶縁性の材料から構成することができる。
【0056】
ソリューションプラズマ放電装置21は、放電電極1・1間に電圧(例えば約1100V)が印加されると、放電し放電電極1・1間にプラズマ13が発生する。さらに、この放電の際、放電電極1・1間に流れる電流により、溶液12が加熱される。これにより、溶液12中、特にプラズマ13の周囲には、気泡が発生する。プラズマ13の周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマ13を取り囲み、プラズマ13を内包する1次気泡が形成される。1次気泡の周囲は、溶液12が取り囲む。そして、このようなプラズマ状態が、1次気泡中および溶液12中の分子の各種の化学反応を促進する。このため、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0057】
このように、プラズマ状態は、電圧印加中、プラズマ13を内包する1次気泡によって維持される。しかし、1次気泡は、極めて不安定である。このため、当業者の間では、1次気泡内のプラズマ診断を実現することは極めて困難であるか、不可能であるというのが技術常識である。
【0058】
そこで、本願発明は、このような技術常識を覆すために、不安定な1次気泡を、貯留部2に溜めた別の気泡によって安定化することを最大の特徴としている。以下図1に基づいて、この特徴部分について具体的に説明する。図1は、ソリューションプラズマ放電装置21のプラズマ発生領域付近の側面図である。
【0059】
図1のように、放電により放電電極1・1間にプラズマ13が発生すると、溶液12も加熱され、気泡(図示せず)も発生する。発生した気泡のうち、プラズマ13の周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマ13を内包する1次気泡6が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマ13から離れて存在する気泡8は、1次気泡6の形成に関与しない。上述のように、貯留部2は、放電電極1・1と離間し、放電電極1・1の上部に配置されている。このため、貯留部2には、溶液12中を上昇する気泡8の少なくとも一部が溜まる。一方、1次気泡6は、貯留部2に溜まらない。これにより、貯留部2の下方(底部)には、溜まった気泡8を含む2次気泡7が形成される。さらに、貯留部2は、2次気泡7の表面が、1次気泡6の表面に接触するように配置されている。図3は、2次気泡7が1次気泡6に接触した状態を示す図である。一方、図4は、2次気泡7が1次気泡6に接触していない状態を示す図である。図3のように、2次気泡7が1次気泡6に接触すると、2次気泡7が、1次気泡6の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ診断装置によってプラズマ状態を診断することができる。
【0060】
また、ソリューションプラズマ放電装置21では、1対の放電電極1・1は、水平に(溶液12の液面に対して平行)に配置されていることが好ましい。これにより、1次気泡6の形成に関与しない気泡8が、貯留部2に溜まりやすい。その結果、2次気泡7が、迅速に貯留部2に形成される。従って、2次気泡7が1次気泡6を安定化する時間を短縮することができる。なお、貯留部2は、放電電極1・1の上部に配置されている。このため、放電電極1・1が水平に配置されていなくても、溶液12中を上昇する気泡8の少なくとも一部を、貯留部2に溜めることができる。すなわち、放電電極1・1の配置状態は、水平に限定されるものではない。例えば、放電電極1・1は、液面に対して垂直に配置されていてもよい。また、特許文献1に記載されているように、気泡8を貯留部2に誘導するための整流部材を、溶液12中に設けてもよい。
【0061】
一方、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、2次気泡7の表面は、貯留部2から下方に突出していることが好ましい。言い換えれば、貯留部2には十分に気泡が溜まっており、2次気泡7の表面が、貯留部2の底からはみ出していることが好ましい。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡6の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。なお、2次気泡7が貯留部2からはみ出しておらず、貯留部2内で、1次気泡6と2次気泡7とが接触していてもよい。この場合も、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。
【0062】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、1次気泡6および2次気泡7の大きさは特に限定されるものではない。しかし、2次気泡7は、1次気泡6よりも大きいことが好ましい。この場合、1次気泡6よりも大きい2次気泡7が、1次気泡6に接触する。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡6の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0063】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、2次気泡7は、気泡8の少なくとも一部を含んでいればよい。つまり、2次気泡7は、一部の1次気泡6を含んでいてもよい。また、貯留部2に供給されるガス等、溶液12中に存在する気泡8以外の成分を含んでいてもよい。しかし、2次気泡7は、1次気泡6の形成に関与しない気泡8からなることが好ましい。この場合、1次気泡6と2次気泡7とが、いずれも溶液12中に発生した気泡から形成される。つまり、1次気泡6と2次気泡7とが同一成分の気体からなる。これにより、1次気泡6と2次気泡7との境界(接触部)で副反応が起きない。従って、不安定な1次気泡6を2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0064】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、貯留部2は、透明であることが好ましい。貯留部2が、透明材料から構成されていると、貯留部2内の状況を把握しやすい。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、放電電極1・1間の距離が近く、放電電極1・1が互いに近接して設けられている。放電電極1・1間の距離は、特に限定されるものではない。放電電極1・1間の距離が近いと、放電電極1・1間には、大きな1つの1次気泡6が発生する。一方、放電電極1・1間の距離が遠いと、各放電電極1・1に別々に小さな1次気泡6が発生する。また、本実施形態では、I型の放電電極1・1を用いているため、大きな1次気泡6が形成される。
【0066】
また、放電電極1・1と、貯留部2との距離は、1次気泡6の形成に関与しない気泡8を溜めることができれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、プラズマ13の発生領域の真上に貯留部2が配置されているため、貯留部2内に確実に気泡8を溜めることができる。
【0067】
ところで、ソリューションプラズマを用いて、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0068】
そこで、ソリューションプラズマ放電装置21に設けられたプラズマ診断装置は、プラズマ状態を診断するための計測部として、プローブ電極3を備えることが好ましい。具体的には、図1のように、ソリューションプラズマ放電装置21に設けられたプラズマ診断装置は、ガラスチューブ4内に挿入されたプローブ電極3が、貯留部2内を貫通している。さらに、参照電極5も、貯留部2内を貫通している。本実施形態では、プローブ電極3および参照電極5として、直径0.1mmのタングステン線を用い、外径0.5mm,内径0.13mmのガラスチューブ4を用いているが、これらに限定されるものではない。また、プローブ電極3および参照電極5は、図示しないマイクロメータ(移動部)によって、任意の方向に移動できるようになっている。
【0069】
上記プラズマ診断装置によるプラズマ状態の診断時には、1次気泡6の形成後、プローブ電極3の先端部が、ガラスチューブ4と共に1次気泡6内に挿入される。上述のように、1次気泡6は、2次気泡7によって、安定に維持されている。このため、1次気泡6内にプローブ電極3を挿入しても、1次気泡6が破壊されたり、プラズマ13が乱されたりすることはない。従って、プローブ測定法により、プラズマ状態を診断することができる。
【0070】
一方、プラズマ状態の診断時には、参照電極5は、1次気泡6外(1次気泡6近傍)の溶液12中に配置される。これにより、プローブ電極3と参照電極5とを用いた、いわゆるダブルプローブ法により、プラズマ状態を診断することができる。なお、参照電極5を用いない、いわゆるシングルプローブ法によっても、プラズマ状態を診断することができる。また、図1では、参照電極5が、貯留部2内を貫通している。しかし、参照電極5は、溶液12中の1次気泡6外に設けられていればよいため、参照電極5は、溶液12中の貯留部2外に設けられていてもよい。
【0071】
なお、貯留部2,プローブ電極3(ガラスチューブ4),参照電極5は、互いに独立したマイクロメータ等によって移動させてもよいし、単一のマイクロメータ等によって移動させてもよい。ただし、プローブ電極3は、貯留部2と独立して移動できるようになっていることが好ましい。例えば、貯留部2の移動に連動してプローブ電極3が移動する一方、プローブ電極3の移動に連動して貯留部2が移動させないようにする。これにより、まず、2次気泡7が1次気泡6に接触する位置まで、溶液12の深さ方向に貯留部2を移動させる。このとき、プローブ電極3も貯留部2に連動して移動する。ただし、プローブ電極3は、1次気泡6内には挿入されない。貯留部2の移動は、2次気泡7が1次気泡6を安定化する最適な位置で、停止する。一方、プローブ電極3は、貯留部2の停止後、貯留部2とは独立して移動させて、1次気泡6内の最適位置に挿入される。従って、最適な状態でプラズマ状態を診断することができる。
【0072】
このように、貯留部2の移動とは独立してプローブ電極3を移動させれば、貯留部2を溶液12中の最適な位置に移動させて、2次気泡7によって、1次気泡6の振動を抑制しつつ、プローブ電極を1次気泡6内の最適な位置に配置することができる。従って、プローブ測定法によるプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0073】
なお、上記プラズマ診断装置は、プローブ電極3の代わりに、光ファイバを用いることもできる。この場合、1次気泡6の形成後、光ファイバの先端部が、1次気泡6内に挿入される。上述のように、1次気泡6は、2次気泡7によって、安定に維持されている。このため、1次気泡6内に光ファイバを挿入しても、1次気泡6が破壊されたり、プラズマ13が乱されたりすることはない。従って、光ファイバを用いた分光法により、プラズマ発光を測定することによって、プラズマ状態を診断することができる。
【0074】
また、貯留部2の移動とは独立して光ファイバを移動させれば、貯留部2を溶液12中の最適な位置に移動させて、2次気泡7によって、1次気泡6の振動を抑制しつつ、光ファイバを1次気泡6内の最適な位置に配置することができる。従って、光ファイバを用いたプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0075】
なお、貯留部2が透明であれば、プラズマ状態の診断時にも、貯留部2内の状況や、プローブ電極3の位置を確認しやすい。従って、貯留部2は、透明材料から構成されていることが好ましい。
【0076】
以上のように、本発明のソリューションプラズマ放電装置21およびプラズマ診断装置では、貯留部2に形成された2次気泡7の表面を1次気泡6の表面に接触させることによって、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。さらに、時々刻々と変化する1次気泡6内のプラズマ状態を、測定することができる。このため、診断が困難とされてきた、ソリューションプラズマのプラズマ状態の診断を実現することができる。つまり、ソリューションプラズマのプラズマ診断法を確立することができる。
【実施例】
【0077】
図2のソリューションプラズマ放電装置21によってプラズマを発生させ、プローブ測定法により、プラズマ状態を観測した。ソリューションプラズマ放電装置21は、放電電極1・1として直径1mmのタングステン電極、放電電極1・1間の距離を0.5mm、溶液12としてNaCl水溶液を用いた。また、比較のため、貯留部2を用いない場合についても、同条件下でプラズマ状態を観測した。
【0078】
(実験方法)
まず、放電電極間の距離およびプローブ電極の位置を調節した後、リファレンスデータを取得した。すなわち、放電電極1・1の電圧を0Vとし、プラズマを発生させない状態のプローブ電極のI−V特性を測定した。図5および図6は、いずれもプラズマ発生前のI−V曲線をグラフであり、図5は安定化前、図6は安定化後のグラフである。図5のように、測定直後のデータは安定ではない。そこで、電位掃印を繰り返し、図6のように、I−V曲線が十分に安定したデータを、リファレンスデータとした。次に、放電電極間に電圧を印加し、プラズマを発生させた。そして、プラズマを内包する1次気泡内にプローブ電極を挿入し、1次気泡内のI−V特性を測定し、放電データとした。
【0079】
図7は貯留部2を設けない場合のプローブ電極のI−V曲線(放電データ)を示すグラフである。一方、図8は、貯留部2を設けた場合のプローブ電極のI−V曲線(放電データ)を示すグラフである。図7に示すように、貯留部2を設けない場合、1次気泡が安定化されないため、I−V曲線に大きなバラツキがあることが確認された。一方、図8に示すように、貯留部2を設けた場合、I−V曲線のバラツキが大きく改善された。このように、貯留部2を設けた場合、貯留部2に形成された2次気泡によって、不安定な1次気泡が安定化され、プラズマ状態を診断できることが確認された。
【0080】
次に、図8に示すI−V曲線(放電データ)のデータ処理を行った。具体的には、まず、図8の放電データから、図6のリファレンスデータを差し引く。次に、差し引いて得られたデータの近似曲線を求める。図9は、図8の電流−電圧曲線をデータ処理した結果の電流−電圧曲線を示すグラフである。図中の(a)のグラフは、図8の放電データから図6のリファレンスデータを差し引いたI−V曲線である。一方、図中の(b)で示すグラフは、(a)のグラフを多項式近似した近似曲線である。
【0081】
次に、この近似曲線より算出されたプローブ電流が正の領域について自然対数(ln(I))を計算し、立ち上がり部分(領域A)を抽出した。図10は、図9において(b)で示される近似曲線における領域Aについて、プローブ電流を自然対数に変換したグラフである。図10のグラフから、浮動電位付近での直線部分の傾き(Δln(I)/ΔV)を求めた。そして、求めた傾きから、下記(1)式により、電子温度(Te)を算出した。さらに、下記(2)式により、電子温度(Te)および電子飽和電流(Ies)から電子密度(ne)を算出した。なお、(1)式および(2)式において、kはボルツマン定数,meは電子質量,Aはプローブ電極の表面積を示す。その結果、電子温度(Te)は約2000Kであり、電子密度(ne)は1017(m−3)のオーダーであることが確認された。
【0082】
【数1】
【0083】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明はソリューションプラズマを応用した物質合成、液体処理、及び加工等に利用することができる。また、ソリューションプラズマ状態の診断(観測)を容易にし、ソリューションプラズマ状態の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 放電電極
2 貯留部
3 プローブ電極
6 1次気泡
7 2次気泡
8 気泡(1次気泡の形成に関与しない気泡)
12 溶液(液体)
13 プラズマ
21 ソリューションプラズマ放電装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電電極間に発生したプラズマを内包する気泡(1次気泡)の振動を抑制し、その気泡を安定化することのできるプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用した技術の中に、液体中でプラズマを発生させて、これを工業的に応用する技術が開発されつつある。このような液体中のプラズマは、主に溶液中で利用されるので「ソリューションプラズマ」と呼ばれる。
【0003】
ソリューションプラズマは、溶液中に対向配置された2つの放電電極間に電圧(高電場)を印加することにより、放電電極間に発生するプラズマである。発生したプラズマの周囲には気泡が発生し、その気泡がプラズマを取り囲んでおり、その気泡の周囲を溶液が取り囲んでいる。つまり、ソリューションプラズマには、プラズマ/気相,気相/液相という2つの界面が存在するという特徴がある。このように、ソリューションプラズマは、プラズマによる「高エネルギー状態」を溶液内に閉じ込めるという状態を実現している。これにより、プラズマの周囲の気相、液相またはその界面で様々な化学反応が促進される。この化学反応による産業への応用として、水処理、滅菌、廃棄物処理、新物質創製、物質の新規合成法の開発、表面改質、超高速加工、希少金属回収、超機能溶液、及び養殖等を含む生物培養等が挙げられる。
【0004】
非特許文献1には、ソリューションプラズマを用いた金ナノ微粒子の合成反応が記載されている。図11は、非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置(ソリューションプラズマ発生装置)121を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置121は、対向する2つのワイヤ状金属電極101・101を備えており、各ワイヤ状金属電極101・101がホルダ110・110によって容器111に固定されている。また、容器111内の溶液112として、塩化金酸水溶液が用いられている。ソリューションプラズマ放電装置121では、ワイヤ状金属電極101・101間にパルス電圧を印加すると、ワイヤ状金属電極101・101間にプラズマ113が発生する。これにより、溶液112(塩化金酸水溶液)中の金を還元し、直径10〜15nmの金ナノ微粒子が合成される。
【0005】
また、特許文献1には、本願発明者等によって開発されたソリューションプラズマ放電装置が記載されている。図12は、特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置221を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置221は、2つの放電電極201・201が、シリコンゴム製の基板202に貫通するように固定された構成である。放電電極201・201間の間隔は、下部Aが狭く、上部Bに向かって広くなっている。さらに、放電電極201・201間の上部Bは、基板202の下面に形成された凹部203内に配置されている。なお、凹部203は溶液212の液面より下あるため、放電電極201・201も溶液(液体)12に浸されている。また、基板202に対する放電電極201の角度αは、78°〜85°となっている。
【0006】
ソリューションプラズマ放電装置221では、放電電極201・201間に電圧を印加すると、放電電極201・201間の距離が短い下部Aでプラズマが発生する。発生したプラズマは同時に気泡を生じ、電圧印加中、プラズマ状態が気泡内部で安定化され、維持される。下部Aで発生したプラズマは、気泡を発生させ続ける。その結果、プラズマの周囲の気泡が上昇するのに伴い、プラズマが徐々に放電電極201・201の上部Bへ移動する。そして、上部Bが配置された凹部203内に気泡がたまってゆき、最終的に上部Bで放電電極201・201間の放電がつながったプラズマ状態が安定化される。
【0007】
ところで、気相プラズマにおいては、プラズマの主要パラメータであるプラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断する技術(プラズマ診断法)が既に確立されている。
【0008】
例えば、非特許文献2には、1920年代にラングミュア(Langmuir)によって提案された、気相プラズマにおけるプローブ測定法(Langmuirプローブ法;探針測定法とも称される)が開示されている。そして、このプローブ測定法が、気相プラズマのプラズマ診断に応用されている。
【0009】
プローブ測定法とは、プラズマの近傍にプローブ電極(測定電極)を挿入し、微小の直流電圧を印加することにより、プラズマ状態を計測する方法である。プローブ測定法では、印加電圧を変化させるとプローブ電極の電流が、周りに存在する電子やイオンの分布密度により変化する。これにより、この電流−電圧特性から様々な物理量を定量化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−9993号公報(2010年1月14日公開)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】高井治、「ソルーションプラズマによるナノ微粒子合成と界面制御」、粉砕、ホソカワ粉体技術研究所、2007年12月28日、No.51、p.30−36
【非特許文献2】Journal of Plasma and Fusion Research, Vol. 81(2005), No. 7 pp. 482-525.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ソリューションプラズマにおいて、プラズマ状態を診断することは極めて困難であるため、ソリューションプラズマのプラズマ診断法は、未だ確立されていないのが現状である。
【0013】
上述のように、ソリューションプラズマを用いると、様々な化学反応を促進することができる。しかし、その化学反応は、印加電圧、電流、電極の条件(材料など)、溶液の条件(成分、導電率など)等により様々に変化する。このため、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0014】
非特許文献1には、気相プラズマと同様に、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ状態の診断および制御することの必要性が指摘されているものの、プラズマ診断法の確立は、今後の課題として記載されている。
【0015】
一方、特許文献1のソリューションプラズマ放電装置221は、放電電極201・201間の距離が短い下部Aで発生したプラズマを、凹部203内に配置された放電電極201・201間の距離が長い上部Bに移動させて、プラズマを安定化している。また、特許文献1には、「放電電極201・201間の距離が長く、プラズマ状態の領域が広くなるので、プローブ測定法を用いてプラズマ状態を観測する場合において、測定電極(プローブ電極)をプラズマ状態の領域に挿入することが容易になる。」と記載されている。
【0016】
しかし、プラズマ状態の領域を広くしてプラズマを安定化しただけでは、プラズマ状態を診断することは困難である。
【0017】
具体的には、上述のように、ソリューションプラズマは、プラズマの周囲に発生した気泡がプラズマを取り囲み、その気泡の周囲を溶液が取り囲んでいる。しかし、プラズマを内包する気泡(1次気泡)は、極めて不安定である。さらに、プローブ測定法を行うためには,針状のプローブ電極をプラズマ中に挿入する必要がある。このため、プローブ電極が、プラズマを乱す可能性や、ただでさえ不安定な1次気泡を破壊する可能性がある。従って、プローブ測定法によって、ソリューションプラズマのプラズマ診断を実現することはできないか、できたとしてもその再現性は極めて低くなる。
【0018】
このように、ソリューションプラズマにおいて、プラズマを内包する1次気泡は不安定である。それにも拘わらず、非特許文献1および特許文献1には、1次気泡を安定化させる根本的な対策は、一切開示されていない。
【0019】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマを内包する気泡(1次気泡)を安定に維持することのできるプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るプラズマ診断装置は、上記の課題を解決するために、液体中に配置され、先端が互いに対向した1対の放電電極を備えたソリューションプラズマ放電装置の放電電極間に発生したプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置であって、
放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、ソリューションプラズマ放電装置に設けられた1対の放電電極への電圧印加により、放電電極間にプラズマが発生する。さらに、放電電極間に流れる電流により、液体が加熱される。これにより、液体中、特にプラズマの周囲には、気泡が発生する。発生した気泡のうち、プラズマの周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマを内包する1次気泡が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマから離れて存在する気泡は、1次気泡の形成に関与しない。
【0022】
ここで、1次気泡は、極めて不安定である。そこで、上記の構成によれば、この不安定な1次気泡を安定化させるために、貯留部を備えている。この貯留部は、放電電極と離間し、放電電極の上部に配置されている。このため、この貯留部には、液体中を上昇する1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部が溜まる。これにより、貯留部の下方(底部)には、溜まった気泡を含む2次気泡が形成される。しかも、貯留部は、2次気泡の表面が、1次気泡の表面に接触するように配置される。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマのプラズマ状態を診断することができる。
【0023】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡は、1次気泡の形成に関与しない気泡からなることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、1次気泡と2次気泡とが、いずれも液体中に発生した気泡から形成される。つまり、1次気泡と2次気泡とが同一成分の気体からなる。これにより、1次気泡と2次気泡との境界(接触部)で副反応が起きない。従って、不安定な1次気泡を2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0025】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡の表面は、上記貯留部から下方に突出していることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、貯留部には十分に気泡が溜まり、2次気泡の表面が貯留部の下方から突出している。つまり、2次気泡の表面は、貯留部の底からはみ出している。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0027】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記2次気泡は、上記1次気泡よりも大きいことが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、1次気泡よりも大きい2次気泡が、1次気泡に接触する。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0029】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記プラズマの状態を計測する計測部を備えることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、プラズマの状態を診断する計測部を備えている。従って、2次気泡によって安定に維持された1次気泡内のプラズマ状態を、計測部によって診断することができる。
【0031】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記計測部は、上記貯留部内を貫通するプローブ電極であり、上記プローブ電極の先端部が、上記1次気泡内に挿入される構成であってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、1次気泡の形成後、プローブ電極の先端部が、1次気泡内に挿入される。上述のように、1次気泡は、2次気泡によって、安定に維持されている。このため、1次気泡内にプローブ電極を挿入しても、1次気泡が破壊されたり、プラズマが乱されたりすることはない。従って、プローブ測定法により、プラズマ状態を診断することができる。
【0033】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記計測部は、上記貯留部内を貫通する光ファイバであり、上記光ファイバの先端部が、上記1次気泡内に挿入される構成であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、1次気泡の形成後、光ファイバの先端部が、1次気泡内に挿入される。上述のように、1次気泡は、2次気泡によって、安定に維持されている。このため、1次気泡内に光ファイバを挿入しても、1次気泡が破壊されたり、プラズマが乱されたりすることはない。従って、光ファイバを用いた分光法により、プラズマ発光を測定することによって、プラズマ状態を診断することができる。
【0035】
本発明に係るプラズマ診断装置は、上記貯留部と計測部とを、互いに独立して移動させる移動部を備える構成であってもよい。
【0036】
上記の構成によれば、移動部が、貯留部の移動とは独立して、計測部を移動させる。これにより、貯留部を液体中の最適な位置に移動させて、2次気泡によって、1次気泡の振動を抑制しつつ、計測部を液体中の最適な位置に配置することができる。従って、計測部を用いたプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0037】
本発明に係るプラズマ診断装置において、上記貯留部は、透明であってもよい。
【0038】
上記の構成によれば、貯留部が透明材料から構成されているため、貯留部内の状況を把握しやすい。これにより、2次気泡の表面を、1次気泡の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、より安定に維持することができる。
【0039】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置は、上記の課題を解決するために、
液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、
上記1対の放電電極の各先端が互いに対向しており、
上記放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されていることを特徴としている。
【0040】
上記の構成によれば、1対の放電電極への電圧印加により、放電電極間にプラズマが発生する。さらに、放電電極間に流れる電流により、液体が加熱される。これにより、液体中、特にプラズマの周囲には、気泡が発生する。発生した気泡のうち、プラズマの周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマを内包する1次気泡が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマから離れて存在する気泡は、1次気泡の形成に関与しない。
【0041】
ここで、1次気泡は、極めて不安定である。そこで、上記の構成によれば、この不安定な1次気泡を安定化させるために、貯留部を備えている。この貯留部は、放電電極と離間し、放電電極の上部に配置されている。このため、この貯留部には、液体中を上昇する1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部が溜まる。これにより、貯留部の下方(底部)には、溜まった気泡を含む2次気泡が形成される。しかも、貯留部は、2次気泡の表面が、1次気泡の表面に接触するように配置されている。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマのプラズマ状態を診断することができる。
【0042】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記1対の放電電極は、水平に配置されていることが好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、1対の放電電極が、液面に対して平行に配置されている。このため、1次気泡の形成に関与しない気泡が、貯留部に溜まりやすい。その結果、2次気泡が、迅速に貯留部に形成される。従って、2次気泡が1次気泡を安定化する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るプラズマ診断装置およびソリューションプラズマ放電装置は、以上のように、上記貯留部が、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置された構成である。このため、2次気泡が、1次気泡の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置におけるプラズマ発生領域付近の側面図である。
【図2】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置を示す断面図である。
【図3】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、2次気泡が1次気泡に接触した状態を示す図である。
【図4】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、2次気泡が1次気泡に接触していない状態を示す図である。
【図5】プラズマ発生前における、安定化前のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図6】プラズマ発生前における、安定化後のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図7】貯留部を設けない場合のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図8】貯留部を設けた場合のプローブ電極の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図9】図8の電流−電圧曲線をデータ処理した結果の電流−電圧曲線を示すグラフである。
【図10】図9において(b)で示されるグラフにおける領域Aのプローブ電流を自然対数に変換したグラフである。
【図11】非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【図12】特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態について図に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
本発明は、プラズマを内包する気泡(1次気泡)に、別の気泡を積極的に接触させることにより、不安定な1次気泡を安定化する。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態に係るソリューションプラズマ放電装置21を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置21は、容器11内の溶液(液体)12中に、1対の放電電極1・1を備えている。さらに、ソリューションプラズマ放電装置21は、発生するプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置を備えている。このプラズマ診断装置は、貯留部2を備えている。なお、本実施形態では、プラズマ診断装置は、ソリューションプラズマ放電装置21と独立した構成となっている。しかし、プラズマ診断装置が、ソリューションプラズマ放電装置21に組み込まれた(一体化された)構成であってもよい。つまり、プラズマ診断装置が、ソリューションプラズマ放電装置21の構成要素の1つであってもよい。また、貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の構成要素であってもよい。
【0049】
放電電極1・1は、いずれも水平(溶液12の液面に対して平行)に設けられおり、各放電電極1・1の先端は互いに対向している。また、各放電電極1・1は、互いに近接して設けられている。各放電電極1・1は、セラミックチューブ10・10で覆われている。ただし、各放電電極1・1の先端部は、セラミックチューブ10・10で覆われておらず、溶液12中に露出している。
【0050】
なお、放電電極1・1には、図示しない電源から、電圧が供給される。これにより、放電電極1・1間には、プラズマ13が発生する。なお、この電源の条件は、プラズマ13が発生する条件であれば、特に限定されるものではない。すなわち、電圧値、パルス幅,パルス周波数,パルス波形などは、特に限定されるものではない。
【0051】
また、本実施形態では、放電電極1・1として、針対針電極構造を用い、放電電極間1・1の距離を、0.5mmとしている。しかし、放電電極1・1の形状(種類)、電極間距離,大きさ、材質、などは、特に限定されるものではない。例えば、放電電極1は、タングステン、銅、またはその他の導電性の材料から構成することができる。
【0052】
溶液12は、化学反応の対象となる任意の溶質の他、溶液12の導電性を調整するための電解質を含んでもよい。また、溶液12は、溶媒自身を反応の対象とし、溶質を含まなくてもよい。なお、溶液12を構成する溶質と溶媒との組み合わせ,溶液12の濃度,導電率,pHなどは、目的に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0053】
一方、プラズマ診断装置の一部である貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の放電により発生する気泡の一部を、内部に貯留する。貯留部2は、ソリューションプラズマ放電装置21の各放電電極1・1と離間して設けられており、放電電極1・1の上部に配置されている。すなわち、貯留部2は、放電電極1・1間に発生するプラズマ13の真上に配置されている。
【0054】
なお、プラズマ診断装置は、図示しないマイクロメータ(移動部)を備えており、貯留部2は、マイクロメータによって、1/100mm間隔で、xyz軸の各方向に、位置を制御し、任意の方向に移動できるようになっている。また、プラズマ診断装置は、貯留部2およびマイクロメータの他に、ソリューションプラズマ放電装置21に発生するプラズマの状態を計測するための計測部、計測部による計測結果を解析する解析部などを備えていてもよい。
【0055】
なお、本実施形態では、中空の無底円錐形状の貯留部2を用いている。具体的には、底面の開口の直径が6mm,高さ1cmの円錐型(傘状)の貯留部2を用いている。しかし、貯留部2の形状は、放電により発生する気泡を溜めることができれば特に限定されるものではない。また、貯留部2は、例えば、ガラス、または、セラミック等の絶縁性の材料から構成することができる。
【0056】
ソリューションプラズマ放電装置21は、放電電極1・1間に電圧(例えば約1100V)が印加されると、放電し放電電極1・1間にプラズマ13が発生する。さらに、この放電の際、放電電極1・1間に流れる電流により、溶液12が加熱される。これにより、溶液12中、特にプラズマ13の周囲には、気泡が発生する。プラズマ13の周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマ13を取り囲み、プラズマ13を内包する1次気泡が形成される。1次気泡の周囲は、溶液12が取り囲む。そして、このようなプラズマ状態が、1次気泡中および溶液12中の分子の各種の化学反応を促進する。このため、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0057】
このように、プラズマ状態は、電圧印加中、プラズマ13を内包する1次気泡によって維持される。しかし、1次気泡は、極めて不安定である。このため、当業者の間では、1次気泡内のプラズマ診断を実現することは極めて困難であるか、不可能であるというのが技術常識である。
【0058】
そこで、本願発明は、このような技術常識を覆すために、不安定な1次気泡を、貯留部2に溜めた別の気泡によって安定化することを最大の特徴としている。以下図1に基づいて、この特徴部分について具体的に説明する。図1は、ソリューションプラズマ放電装置21のプラズマ発生領域付近の側面図である。
【0059】
図1のように、放電により放電電極1・1間にプラズマ13が発生すると、溶液12も加熱され、気泡(図示せず)も発生する。発生した気泡のうち、プラズマ13の周囲に存在する気泡が集合すると、プラズマ13を内包する1次気泡6が形成される。一方、発生した気泡のうち、プラズマ13から離れて存在する気泡8は、1次気泡6の形成に関与しない。上述のように、貯留部2は、放電電極1・1と離間し、放電電極1・1の上部に配置されている。このため、貯留部2には、溶液12中を上昇する気泡8の少なくとも一部が溜まる。一方、1次気泡6は、貯留部2に溜まらない。これにより、貯留部2の下方(底部)には、溜まった気泡8を含む2次気泡7が形成される。さらに、貯留部2は、2次気泡7の表面が、1次気泡6の表面に接触するように配置されている。図3は、2次気泡7が1次気泡6に接触した状態を示す図である。一方、図4は、2次気泡7が1次気泡6に接触していない状態を示す図である。図3のように、2次気泡7が1次気泡6に接触すると、2次気泡7が、1次気泡6の振動を抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。それゆえ、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ診断装置によってプラズマ状態を診断することができる。
【0060】
また、ソリューションプラズマ放電装置21では、1対の放電電極1・1は、水平に(溶液12の液面に対して平行)に配置されていることが好ましい。これにより、1次気泡6の形成に関与しない気泡8が、貯留部2に溜まりやすい。その結果、2次気泡7が、迅速に貯留部2に形成される。従って、2次気泡7が1次気泡6を安定化する時間を短縮することができる。なお、貯留部2は、放電電極1・1の上部に配置されている。このため、放電電極1・1が水平に配置されていなくても、溶液12中を上昇する気泡8の少なくとも一部を、貯留部2に溜めることができる。すなわち、放電電極1・1の配置状態は、水平に限定されるものではない。例えば、放電電極1・1は、液面に対して垂直に配置されていてもよい。また、特許文献1に記載されているように、気泡8を貯留部2に誘導するための整流部材を、溶液12中に設けてもよい。
【0061】
一方、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、2次気泡7の表面は、貯留部2から下方に突出していることが好ましい。言い換えれば、貯留部2には十分に気泡が溜まっており、2次気泡7の表面が、貯留部2の底からはみ出していることが好ましい。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡6の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。なお、2次気泡7が貯留部2からはみ出しておらず、貯留部2内で、1次気泡6と2次気泡7とが接触していてもよい。この場合も、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、安定に維持することができる。
【0062】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、1次気泡6および2次気泡7の大きさは特に限定されるものではない。しかし、2次気泡7は、1次気泡6よりも大きいことが好ましい。この場合、1次気泡6よりも大きい2次気泡7が、1次気泡6に接触する。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡6の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0063】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、2次気泡7は、気泡8の少なくとも一部を含んでいればよい。つまり、2次気泡7は、一部の1次気泡6を含んでいてもよい。また、貯留部2に供給されるガス等、溶液12中に存在する気泡8以外の成分を含んでいてもよい。しかし、2次気泡7は、1次気泡6の形成に関与しない気泡8からなることが好ましい。この場合、1次気泡6と2次気泡7とが、いずれも溶液12中に発生した気泡から形成される。つまり、1次気泡6と2次気泡7とが同一成分の気体からなる。これにより、1次気泡6と2次気泡7との境界(接触部)で副反応が起きない。従って、不安定な1次気泡6を2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0064】
また、ソリューションプラズマ放電装置21および上記プラズマ診断装置では、貯留部2は、透明であることが好ましい。貯留部2が、透明材料から構成されていると、貯留部2内の状況を把握しやすい。これにより、2次気泡7の表面を、1次気泡6の表面に確実に接触させることができる。このため、2次気泡7が、1次気泡の振動を確実に抑制する。従って、不安定な1次気泡6を、2次気泡7によって、より安定に維持することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、放電電極1・1間の距離が近く、放電電極1・1が互いに近接して設けられている。放電電極1・1間の距離は、特に限定されるものではない。放電電極1・1間の距離が近いと、放電電極1・1間には、大きな1つの1次気泡6が発生する。一方、放電電極1・1間の距離が遠いと、各放電電極1・1に別々に小さな1次気泡6が発生する。また、本実施形態では、I型の放電電極1・1を用いているため、大きな1次気泡6が形成される。
【0066】
また、放電電極1・1と、貯留部2との距離は、1次気泡6の形成に関与しない気泡8を溜めることができれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、プラズマ13の発生領域の真上に貯留部2が配置されているため、貯留部2内に確実に気泡8を溜めることができる。
【0067】
ところで、ソリューションプラズマを用いて、望みの化学反応を安定して継続させるためには、発生したプラズマ状態を安定して維持・制御する必要がある。従って、ソリューションプラズマにおいても、プラズマ密度,電子温度等のプラズマ状態を診断することが重要である。
【0068】
そこで、ソリューションプラズマ放電装置21に設けられたプラズマ診断装置は、プラズマ状態を診断するための計測部として、プローブ電極3を備えることが好ましい。具体的には、図1のように、ソリューションプラズマ放電装置21に設けられたプラズマ診断装置は、ガラスチューブ4内に挿入されたプローブ電極3が、貯留部2内を貫通している。さらに、参照電極5も、貯留部2内を貫通している。本実施形態では、プローブ電極3および参照電極5として、直径0.1mmのタングステン線を用い、外径0.5mm,内径0.13mmのガラスチューブ4を用いているが、これらに限定されるものではない。また、プローブ電極3および参照電極5は、図示しないマイクロメータ(移動部)によって、任意の方向に移動できるようになっている。
【0069】
上記プラズマ診断装置によるプラズマ状態の診断時には、1次気泡6の形成後、プローブ電極3の先端部が、ガラスチューブ4と共に1次気泡6内に挿入される。上述のように、1次気泡6は、2次気泡7によって、安定に維持されている。このため、1次気泡6内にプローブ電極3を挿入しても、1次気泡6が破壊されたり、プラズマ13が乱されたりすることはない。従って、プローブ測定法により、プラズマ状態を診断することができる。
【0070】
一方、プラズマ状態の診断時には、参照電極5は、1次気泡6外(1次気泡6近傍)の溶液12中に配置される。これにより、プローブ電極3と参照電極5とを用いた、いわゆるダブルプローブ法により、プラズマ状態を診断することができる。なお、参照電極5を用いない、いわゆるシングルプローブ法によっても、プラズマ状態を診断することができる。また、図1では、参照電極5が、貯留部2内を貫通している。しかし、参照電極5は、溶液12中の1次気泡6外に設けられていればよいため、参照電極5は、溶液12中の貯留部2外に設けられていてもよい。
【0071】
なお、貯留部2,プローブ電極3(ガラスチューブ4),参照電極5は、互いに独立したマイクロメータ等によって移動させてもよいし、単一のマイクロメータ等によって移動させてもよい。ただし、プローブ電極3は、貯留部2と独立して移動できるようになっていることが好ましい。例えば、貯留部2の移動に連動してプローブ電極3が移動する一方、プローブ電極3の移動に連動して貯留部2が移動させないようにする。これにより、まず、2次気泡7が1次気泡6に接触する位置まで、溶液12の深さ方向に貯留部2を移動させる。このとき、プローブ電極3も貯留部2に連動して移動する。ただし、プローブ電極3は、1次気泡6内には挿入されない。貯留部2の移動は、2次気泡7が1次気泡6を安定化する最適な位置で、停止する。一方、プローブ電極3は、貯留部2の停止後、貯留部2とは独立して移動させて、1次気泡6内の最適位置に挿入される。従って、最適な状態でプラズマ状態を診断することができる。
【0072】
このように、貯留部2の移動とは独立してプローブ電極3を移動させれば、貯留部2を溶液12中の最適な位置に移動させて、2次気泡7によって、1次気泡6の振動を抑制しつつ、プローブ電極を1次気泡6内の最適な位置に配置することができる。従って、プローブ測定法によるプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0073】
なお、上記プラズマ診断装置は、プローブ電極3の代わりに、光ファイバを用いることもできる。この場合、1次気泡6の形成後、光ファイバの先端部が、1次気泡6内に挿入される。上述のように、1次気泡6は、2次気泡7によって、安定に維持されている。このため、1次気泡6内に光ファイバを挿入しても、1次気泡6が破壊されたり、プラズマ13が乱されたりすることはない。従って、光ファイバを用いた分光法により、プラズマ発光を測定することによって、プラズマ状態を診断することができる。
【0074】
また、貯留部2の移動とは独立して光ファイバを移動させれば、貯留部2を溶液12中の最適な位置に移動させて、2次気泡7によって、1次気泡6の振動を抑制しつつ、光ファイバを1次気泡6内の最適な位置に配置することができる。従って、光ファイバを用いたプラズマ状態の診断結果の再現性を高めることができる。
【0075】
なお、貯留部2が透明であれば、プラズマ状態の診断時にも、貯留部2内の状況や、プローブ電極3の位置を確認しやすい。従って、貯留部2は、透明材料から構成されていることが好ましい。
【0076】
以上のように、本発明のソリューションプラズマ放電装置21およびプラズマ診断装置では、貯留部2に形成された2次気泡7の表面を1次気泡6の表面に接触させることによって、不安定な1次気泡を、2次気泡によって、安定に維持することができる。さらに、時々刻々と変化する1次気泡6内のプラズマ状態を、測定することができる。このため、診断が困難とされてきた、ソリューションプラズマのプラズマ状態の診断を実現することができる。つまり、ソリューションプラズマのプラズマ診断法を確立することができる。
【実施例】
【0077】
図2のソリューションプラズマ放電装置21によってプラズマを発生させ、プローブ測定法により、プラズマ状態を観測した。ソリューションプラズマ放電装置21は、放電電極1・1として直径1mmのタングステン電極、放電電極1・1間の距離を0.5mm、溶液12としてNaCl水溶液を用いた。また、比較のため、貯留部2を用いない場合についても、同条件下でプラズマ状態を観測した。
【0078】
(実験方法)
まず、放電電極間の距離およびプローブ電極の位置を調節した後、リファレンスデータを取得した。すなわち、放電電極1・1の電圧を0Vとし、プラズマを発生させない状態のプローブ電極のI−V特性を測定した。図5および図6は、いずれもプラズマ発生前のI−V曲線をグラフであり、図5は安定化前、図6は安定化後のグラフである。図5のように、測定直後のデータは安定ではない。そこで、電位掃印を繰り返し、図6のように、I−V曲線が十分に安定したデータを、リファレンスデータとした。次に、放電電極間に電圧を印加し、プラズマを発生させた。そして、プラズマを内包する1次気泡内にプローブ電極を挿入し、1次気泡内のI−V特性を測定し、放電データとした。
【0079】
図7は貯留部2を設けない場合のプローブ電極のI−V曲線(放電データ)を示すグラフである。一方、図8は、貯留部2を設けた場合のプローブ電極のI−V曲線(放電データ)を示すグラフである。図7に示すように、貯留部2を設けない場合、1次気泡が安定化されないため、I−V曲線に大きなバラツキがあることが確認された。一方、図8に示すように、貯留部2を設けた場合、I−V曲線のバラツキが大きく改善された。このように、貯留部2を設けた場合、貯留部2に形成された2次気泡によって、不安定な1次気泡が安定化され、プラズマ状態を診断できることが確認された。
【0080】
次に、図8に示すI−V曲線(放電データ)のデータ処理を行った。具体的には、まず、図8の放電データから、図6のリファレンスデータを差し引く。次に、差し引いて得られたデータの近似曲線を求める。図9は、図8の電流−電圧曲線をデータ処理した結果の電流−電圧曲線を示すグラフである。図中の(a)のグラフは、図8の放電データから図6のリファレンスデータを差し引いたI−V曲線である。一方、図中の(b)で示すグラフは、(a)のグラフを多項式近似した近似曲線である。
【0081】
次に、この近似曲線より算出されたプローブ電流が正の領域について自然対数(ln(I))を計算し、立ち上がり部分(領域A)を抽出した。図10は、図9において(b)で示される近似曲線における領域Aについて、プローブ電流を自然対数に変換したグラフである。図10のグラフから、浮動電位付近での直線部分の傾き(Δln(I)/ΔV)を求めた。そして、求めた傾きから、下記(1)式により、電子温度(Te)を算出した。さらに、下記(2)式により、電子温度(Te)および電子飽和電流(Ies)から電子密度(ne)を算出した。なお、(1)式および(2)式において、kはボルツマン定数,meは電子質量,Aはプローブ電極の表面積を示す。その結果、電子温度(Te)は約2000Kであり、電子密度(ne)は1017(m−3)のオーダーであることが確認された。
【0082】
【数1】
【0083】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明はソリューションプラズマを応用した物質合成、液体処理、及び加工等に利用することができる。また、ソリューションプラズマ状態の診断(観測)を容易にし、ソリューションプラズマ状態の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 放電電極
2 貯留部
3 プローブ電極
6 1次気泡
7 2次気泡
8 気泡(1次気泡の形成に関与しない気泡)
12 溶液(液体)
13 プラズマ
21 ソリューションプラズマ放電装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に配置され、先端が互いに対向した1対の放電電極を備えたソリューションプラズマ放電装置の放電電極間に発生したプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置であって、
放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されることを特徴とするプラズマ診断装置。
【請求項2】
上記2次気泡は、1次気泡の形成に関与しない気泡からなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ診断装置。
【請求項3】
上記2次気泡の表面は、上記貯留部から下方に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ診断装置。
【請求項4】
上記2次気泡は、上記1次気泡よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項5】
上記プラズマの状態を計測する計測部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項6】
上記計測部は、上記貯留部内を貫通するプローブ電極であり、
上記プローブ電極の先端部が、上記1次気泡内に挿入されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ診断装置。
【請求項7】
上記計測部は、上記貯留部内を貫通する光ファイバであり、
上記光ファイバの先端部が、上記1次気泡内に挿入されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ診断装置。
【請求項8】
上記貯留部と計測部とを、互いに独立して移動させる移動部を備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項9】
上記貯留部は、透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項10】
液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、
上記1対の放電電極の各先端が互いに対向しており、
上記放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されていることを特徴とするソリューションプラズマ放電装置。
【請求項11】
上記1対の放電電極は、水平に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のソリューションプラズマ放電装置。
【請求項1】
液体中に配置され、先端が互いに対向した1対の放電電極を備えたソリューションプラズマ放電装置の放電電極間に発生したプラズマの状態を診断するプラズマ診断装置であって、
放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されることを特徴とするプラズマ診断装置。
【請求項2】
上記2次気泡は、1次気泡の形成に関与しない気泡からなることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ診断装置。
【請求項3】
上記2次気泡の表面は、上記貯留部から下方に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ診断装置。
【請求項4】
上記2次気泡は、上記1次気泡よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項5】
上記プラズマの状態を計測する計測部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項6】
上記計測部は、上記貯留部内を貫通するプローブ電極であり、
上記プローブ電極の先端部が、上記1次気泡内に挿入されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ診断装置。
【請求項7】
上記計測部は、上記貯留部内を貫通する光ファイバであり、
上記光ファイバの先端部が、上記1次気泡内に挿入されることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ診断装置。
【請求項8】
上記貯留部と計測部とを、互いに独立して移動させる移動部を備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項9】
上記貯留部は、透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ診断装置。
【請求項10】
液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、
上記1対の放電電極の各先端が互いに対向しており、
上記放電により発生する気泡のうち、上記プラズマの周囲に存在する気泡の集合体からなり上記プラズマを内包する1次気泡とは異なる、1次気泡の形成に関与しない気泡の少なくとも一部を溜め、溜まった気泡を含む2次気泡を形成する貯留部を備え、
上記貯留部は、上記1対の放電電極と離間して上部に設けられ、かつ、上記貯留部の下方に形成される2次気泡の表面が、上記1次気泡の表面に接触する位置に配置されていることを特徴とするソリューションプラズマ放電装置。
【請求項11】
上記1対の放電電極は、水平に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のソリューションプラズマ放電装置。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−171054(P2011−171054A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32484(P2010−32484)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構「ソリューションプラズマ反応場の自立制御化とナノ合成・加工への応用」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構「ソリューションプラズマ反応場の自立制御化とナノ合成・加工への応用」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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