説明

プラルナカサンの遅延処方物

自己免疫疾患、I型及びII型糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症並びに/又は乾癬を処置するための少なくとも二層を含む本発明の遅延錠剤であって、少なくとも一層が、薬物1S,9S(RS,3S)N−(2−エトキシ−5−オキソ−テトラフラン−3−イル)−6,10−ジオキソ−9−(イソキノリン−1−オイル−アミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6−H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]ジアゼピン−1−カルボキシアミド及び/若しくはその塩若しくは誘導体並びに/又はそこから放出される酸を迅速に放出し、そして少なくとも一層が、薬物1S,9S(RS,3S)N−(2−エトキシ−5−オキソ−テトラフラン−3−イル)−6,10−ジオキソ−9−(イソキノリン−1−オイル−アミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6−H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]−ジアゼピン−1−カルボキシアミド及び/若しくはその塩若しくは誘導体並びに/又はそこから放出される酸を持続性様式で放出する遅延錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラルナカサン(pralnacasan)を含む持続放出性処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラルナカサン(1S,9S(RS,3S)N−(2−エトキシ−5−オキソ−テトラフラン−3−イル)−6,10−ジオキソ−9−(イソキノリン−1−オイルアミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6−H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]ジアゼピン−1−カルボキシアミド並びにその塩及び誘導体は、例えば自己免疫疾患、関節リウマチ、変形性関節症、I型及びII型糖尿病並びに乾癬の処置について、WO 97/22619に開示されている。これに関して有効な化合物は、開鎖化合物である3S(1S,9S)3−[6,10−ジオキソ−9(イソキノリン−1−オイルアミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]ジアゼピン−1−カルボキシアミド]−4−オキソブタン酸であるが、一方プラルナカサンは、そのプロドラッグすなわち薬剤である。WO 97/22619はまた、このプロドラッグを迅速に放出する標準的な錠剤(table)を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
わずか2回の日用量だけで、標準的な錠剤と比較して均質で且つ少ない総日用量のプラルナカサン並びに/又はその塩及び/若しくは誘導体の送達を可能にする持続放出性錠剤を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、少なくとも一層が、プラルナカサン並びに/又はその塩及び/若しくはその誘導体を迅速に送達し(初回量)、そして少なくとも第二の層が、プラルナカサン並びに/又はその塩及び/若しくは誘導体を持続性様式で送達する(維持量)、少なくとも二層からなる持続放出性錠剤によって達成される。これらの層は、サンドイッチ様式で積層され得るが、コア及びシェルとしてもまた配置され得るものである。
【0005】
「迅速」送達とは、プラルナカサン又はその塩及び/若しくは誘導体の少なくとも60%が、わずか30分以内に錠剤から放出されることを意味している。「持続」送達とは、プラルナカサン又はその塩及び/若しくは誘導体の少なくとも90%が、180分後に放出されることを意味する。この場合、吸収ウィンドウ(window)は、6時間から8時間に延長されている。
【0006】
薬剤を迅速に送達する慣用の錠剤においては、プラルナカサンの有効性は不十分であるか、又は望まれない副作用の恐れがあるくらいの高用量で使用される必要がある。しかし、1回の高投与量を避けるものである1日3回の投与は、患者の薬剤服用順守の面から望ましくない。一方、慣用の持続放出性錠剤は同様に、1日2回の投与(2×6=12時間にわたる薬剤の放出)では不十分である。これはなぜなら、第一に、薬剤の放出が極めて遅く生じるので、十分に高い、すなわち治療に有効な血液レベルに最初は達しないからであり、そして第二に、腸下部(大腸)まで放出されない薬剤の部分(proportion)はそこで吸収されず、従って効果がないままであるからである。しかし、持続放出性錠剤と慣用の錠剤との併用はまた望ましくないようである。これはなぜなら、このような錠剤の2つの部分は、通常は互いに有害作用を有するからである。
【0007】
驚くべきことに、本発明の少なくとも二層を有する持続放出性錠剤を用いて、薬剤の迅速な送達が持続放出性部分によって悪影響を及ぼされないことが見出されている。すなわちこれらの層は、本発明の持続放出性錠剤の作用の開始が標準的な錠剤よりも驚くべきことに決して遅くないものである最初の部分、及び上部消化管(upper GT tract)だけで吸収されているが、十分に長くそして完全に吸収される持続放出性部分、すなわち最初の部分によって悪影響を及ぼされないだけではなく、驚くべきことに実際有益に作用している持続放出性部分を有するものである。特にこの作用様式は、併用錠剤では予測不可能であった。
【0008】
本発明の持続放出性錠剤を用いて、驚くべきことに、通常は薬剤の中毒性副作用に関与している高い血液レベルのピークが妨げられる。薬剤は、一日当たりより多い用量で摂取される必要がなくなるので、患者の薬剤服用順守は、本発明の持続放出性錠剤の使用を通じて改善される。薬剤が複数の層を有するにもかかわらず、必要とされる持続放出性錠剤は、標準的な錠剤よりも容積は大きくない。これは、特に高齢の患者にとって重要かつ有利なことである。
【0009】
本発明の持続放出性錠剤は、好ましくは、コア及びシェルの両方として、好ましくは球状又は楕円状として同心性に、そして積層として配置される二層からなる。この層状錠剤は、円形又は長円形の輪郭を有する錠剤であり得る。コア−シェル配置において、初回量は好ましくは外側のシェルに位置しており、そして持続放出用量はコア領域に位置している。
【0010】
好ましくは、本発明の錠剤の二層は、いずれの場合にも、薬剤に加えていずれの場合にも1つ又はそれ以上、好ましくは2つ又は3つの増量剤、そして1つ又はそれ以上、好ましくは1つの結合剤、そして1つ又はそれ以上、好ましくは1つの潤滑剤を含み得るものである。この増量剤、結合剤及び潤滑剤は、各錠剤のそれぞれの層で異なり得る。その数はまた、いずれの場合にも異なり得る。3つの異なる増量剤が持続放出層に存在することが好ましく、一方、迅速放出性層には、2つの異なる増量剤が存在することが好ましい。
【0011】
これらの層に存在している結合剤及び潤滑剤は、好ましくは同一のものである。
持続放出性層はさらに、特にこの持続放出性層が錠剤の外側の層に存在しているときに1つ又はそれ以上のゲル形成剤をさらに含む。1つのゲル形成剤が好ましい。
迅速放出性層は、1つ又はそれ以上の崩壊剤を含み、1つの崩壊剤が好ましい。
【0012】
増量剤の例は、コーンスターチ、ホスフェート、例えばリン酸カルシウム、ラクトース、例えばラクトースD80、スクロース、例えばマンニトール又は微結晶性セルロース、例えばタイプ102である。ラクトース、マンニトール又は微結晶性セルロースが好ましい。増量剤は、それぞれの層に1層当たり0〜400mg、好ましくは10〜200mg、特に好ましくは20〜100mgの範囲で存在している。1層に2つ又は3つの増量剤が存在している場合、およそ2:1又は2:1:1の比で存在している。2つの増量剤が存在している場合、これらは好ましくは、ラクトースD80及びマンニトール又は微結晶性セルロースである。3つの増量剤が存在している場合、これらは好ましくは、ラクトースD80、微結晶性セルロース及びマンニトールである。持続放出性層は、好ましくは3つの増量剤を含んでおり、そして迅速放出性層は、2つの増量剤を含んでいる。
【0013】
好適な結合剤は、一般にセルロースエーテル又はポリビニルピロリドンである。1層当たり5〜30mgの範囲のヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、好ましくは1層当たり10〜20mgである。
【0014】
潤滑剤は、当業者に公知のステアレート、例えばステアリン酸マグネシウム及びフマレート、例えばステアリルフマル酸ナトリウムであり得る。各層に潤滑剤5〜20mgが存在しており、そして迅速放出性層には、好ましくは潤滑剤1〜5mgが存在する。
【0015】
持続放出性層はさらに、1つ又はそれ以上のゲル形成剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカラゲナンを含み、好ましくは、1層当たり20〜100mgの範囲のヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、特に好ましくは1層当たり30〜50mgである。迅速放出性層はさらに、少なくとも1つの崩壊剤、例えばクロスカルメロース又はクロスポビドンを含み、好ましくは、1層当たり5〜20mgの範囲のクロスカルメロースであり、好ましくは1層当たり6〜15mgである。
【0016】
二層で生じる錠剤のすべての成分は、迅速放出性層と比較して、持続放出性層において原則として1.5−1.0から3.0−1.0、好ましくは2.0−1.0の比で存在する。
【0017】
これはまた薬剤にもあてはまる。持続放出性層は、1層当たり薬剤を200〜600mg、好ましくは1層当たり300〜500mg含んでいる。迅速放出性層は、1層当たり薬剤を50〜400mg、好ましくは1層当たり100〜300mg含む。
【0018】
この比は好ましくは、1層当たり400:200mgである。薬剤として好適なものは、プラルナカサン及び/又はその誘導体並びにそれぞれの塩並びにそれぞれの活性化合物(遊離酸)である)。
【0019】
プラルナカサン及び/若しくはその塩及び/若しくはその誘導体の混合物、又はそれぞれの遊離酸の混合物がまた存在し得る。遊離酸とのプラルナカサン又はその誘導体の混合物がまた利用され得る。
【0020】
本発明の持続放出性錠剤は、薬剤を顆粒化することによって製造される。これらの顆粒は、さらなる賦形剤、例えば増量剤、結合剤及び潤滑剤と混合される。最後に、特に持続放出性層用としてゲル形成剤が添加され、そして崩壊剤が迅速放出性層に添加される。これら二層が互いに圧縮されて錠剤を与える。
【0021】
図1は、本発明の持続放出性処方物(二層錠剤)と、迅速放出性錠剤及び持続放出性錠剤(単層錠剤)との活性成分の放出を比較している。
【0022】
驚くべきことに、本発明の錠剤では、薬剤の少なくとも60%がわずか30分後までに放出されており、そして少なくとも90%が180分後までに放出されることが明らかである。従って図2に示されるように、本発明の錠剤は、迅速放出性錠剤と比較して、6時間という狭い吸収ウィンドウを越えて血中の治療的濃度を2時間延長している。
【0023】
本発明の持続放出性処方物は、好ましくは自己免疫疾患、I型及びII型糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症並びに乾癬の処置のためのものである。一般に、WO 97/22619で言及されるすべての障害が、本発明の持続放出性錠剤を用いて処置され得る。
【0024】
本発明の持続放出性処方物は、カプセル剤及び錠剤の形態で経口投与され得る。この持続放出性処方物は、好ましくは1日に1回投与される。薬剤の用量は、1日につき体重1kg当たり0.01〜100mg、好ましくは1日につき体重1kg当たり1〜50mgである。
【実施例】
【0025】
本発明は、以下の実施例(二層錠剤)によって明白になる:
持続放出性層
プラルナカサン 400
ラクトースD80 62
ヒドロキシプロピルセルロース 18
微結晶性セルロースタイプ102 30
ヒドロキシプロピルメチルセルロース4000mPas 40
マンニトール 30
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 590
【0026】
迅速放出性層
プラルナカサン 200
ラクトースD80 31
クロスカルメロース 10
ヒドロキシプロピルセルロース 9
微結晶性セルロースタイプ102 15
ステアリン酸マグネシウム 1,5
合計 266.5
【0027】
完全な錠剤
HMR3480 600
ラクトースD80 93
ヒドロキシプロピルセルロース 27
クロスカルメロース 10
微結晶性セルロースタイプ102 45
ヒドロキシプロピルメチルセルロース4000mPas 40
マンニトール 30
ステアリン酸マグネシウム 11.5
合計 856.5
データは1錠剤当たりのmg
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の持続放出性処方物(二層錠剤)、迅速放出性錠剤及び持続放出性錠剤(単層錠剤)の活性成分の放出を示す。。
【図2】持続放出性処方物(二層錠剤)、及び迅速放出性錠剤の血液レベルの濃度変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層が、薬剤1S,9S(RS,3S)N−(2−エトキシ−5−オキソ−テトラフラン−3−イル)−6,10−ジオキソ−9−(イソキノリン−1−オイルアミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6−H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]ジアゼピン−1−カルボキシアミド及び/若しくはその塩若しくは誘導体並びに/又はその遊離酸を迅速に送達し、そして少なくとも一層が、薬剤1S,9S(RS,3S)N−(2−エトキシ−5−オキソ−テトラフラン−3−イル)−6,10−ジオキソ−9−(イソキノリン−1−オイルアミノ)−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロ−6−H−ピリダジノ[1,2−a][1,2]−ジアゼピン−1−カルボキシアミド及び/若しくはその塩若しくは誘導体並びに/又はその遊離酸を持続性様式で送達する、少なくとも二層からなる持続放出性錠剤。
【請求項2】
錠剤が二層からなり、そしてこれらが層形態又はコア及びシェルとして配置される、請求項1に記載の持続放出性錠剤。
【請求項3】
持続放出層が、コア−シェル配置のコアとして存在する、請求項1及び2に記載の持続放出性錠剤。
【請求項4】
両方の層が、少なくとも1つの増量剤、少なくとも1つの結合剤及び少なくとも1つの潤滑剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の持続放出性錠剤。
【請求項5】
迅速送達層が、少なくとも1つの崩壊剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の持続放出性錠剤。
【請求項6】
持続放出層が、少なくとも1つのゲル形成剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の持続放出性錠剤。
【請求項7】
薬剤の少なくとも60%が30分後以内に錠剤から放出され、そして薬剤の少なくとも90%が180分後に錠剤から放出される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の持続放出性錠剤。
【請求項8】
自己免疫疾患、I型及びII型糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症並びに/又は乾癬を処置するための請求項1〜7のいずれか1項に記載の持続放出性錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511441(P2009−511441A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533913(P2008−533913)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009466
【国際公開番号】WO2007/042160
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】