説明

プランジャポンプ及びその吐出制御方法

【課題】 所望の圧縮率が得られ、プランジャのストロークやプランジャの摺動孔の内径を変えることなく簡単に吐出量を変えることができるとともに、流体漏れを防止して一定量の流体を正確に吐出できるプランジャポンプ及びその吐出制御方法の提供を目的とする。
【解決手段】 プランジャポンプ1は、流体を吸入する吸入口8と吸入した流体を吐き出す吐出口10とを有するシリンダ2と、シリンダ2内に形成され吐出口10に連通する通孔6と、通孔6内に摺動可能に嵌挿され且つ流体を吸入して吐き出すためのポンプ室20を吐出口10との間に形成するプランジャ4と、シリンダ2に形成され且つポンプ室20と吸入口8とを接続する流体吸入流路12とを備え、ポンプ室20に開口する流体吸入流路12の開口部19が、通孔6内で摺動するプランジャ4自体によって開閉されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体源から一定量の流体を吸入して吐出するためのプランジャポンプ及びその吐出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プランジャの往復動によって流体を吸入・吐出するプランジャポンプは、プランジャの駆動形式や弁の配置形式などに関し、従来から様々な形態のものが提案されている。例えば、特許文献1ないし特許文献3には、電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力によってプランジャを往復動させるプランジャ型の電磁ポンプが開示されている。
【0003】
図8には、特許文献1ないし特許文献3に開示された電磁ポンプと同じ種類のプランジャ型電磁ポンプが概念的に示されている。図示のように、このプランジャポンプ100は、シリンダ102と、シリンダ102内に摺動可能に嵌挿されたプランジャ104とを備えている。具体的には、シリンダ102は吸入側Sと吐出側Dとを有しており、シリンダ102の吸入側Sに形成された通孔106内にプランジャ104が摺動可能に嵌挿されている。プランジャ104には、リザーバタンク等の図示しない流体源から潤滑油等の流体を吸入するための吸入口108が設けられ、また、シリンダ102には、その吐出側Dに、吸入口108を通じて吸入した流体を吐き出すための吐出口110が、通孔106に連通して設けられている。
【0004】
また、プランジャ104は、図示しないソレノイドの電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力によって通孔106内で摺動され、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室120を吐出口110との間に形成できるようになっている。
【0005】
また、プランジャ104には、ポンプ室120と吸入口108とを接続する流体吸入流路112が、その軸方向に沿って形成されている。この場合、ポンプ室120に開口する流体吸入流路112の開口部112aは、プランジャ104の摺動に伴って吸入弁125により開閉されるようになっている。吸入弁125は、ポンプ室120内に設けられており、開口部112aに当接してこれを閉塞可能な球状の弁体125aと、弁体125aと吐出口110との間に介挿され且つ弁体125aをシリンダ102に対して支持するバネ125bとから成る。
【0006】
また、吐出口110には、逆止弁(ワンウェイバルブ)を形成する吐出弁130が配設されている。吐出弁130は、球状の弁体130aと圧縮バネ130bとから成るとともに、圧縮バネ130bの付勢力により弁体130aを吐出口110の弁座110aに対して押し当てて吐出口110を常時閉じており、圧縮バネ130bの付勢力に打ち勝つ圧力がポンプ室120内に生起された時にのみ吐出口110を開くようになっている。
【0007】
以上のような構成のプランジャポンプ100においては、前記電磁コイルに通電がなされていない(OFF状態)と、図示しないソレノイドの駆動軸(コア)が退避して、図8の(a)に示されるように、プランジャ104がそのストロークの下死点まで引き戻されるため、吸入弁125の弁体125aが流体吸入流路112の開口部112aから離間して開口部112aが開き、ポンプ室120と吸入口108とが連通する。したがって、前記流体源からの流体がポンプ室120内に流入する。
【0008】
その後、所定のタイミングで前記電磁コイルに対して通電がなされる(ON状態)と、ソレノイドの駆動軸(コア)が前進してプランジャ104が通孔106内に押込まれ、流体吸入流路112の開口部112aに吸入弁125の弁体125aが当て付いて開口部112aが閉じられる。そして、更にバネ125bの付勢力に抗してプランジャ104が押込まれると、開口部112aの閉状態がバネ125bによって維持されたまま、ポンプ室120内の圧力が増大し、その圧力が吐出弁130のバネ130bの付勢力を上回ると、弁体130aが弁座110aから離間して吐出口110が開き、ポンプ室120内の流体が吐出口110から吐き出される。なお、吐出口110から吐き出された流体は、シリンダ102の吐出側Dに設けられた管状の接続口金135を介して、エンジン等の作動体の潤滑対象部位へと導かれるようになっている。
【0009】
また、以上のようにしてプランジャ104が通孔106内に押込まれ、プランジャ104がそのストロークの上死点に達すると、その時点で、前記電磁コイルに対する通電が停止(OFF状態)され、ソレノイドの駆動軸(コア)の退避動作によってプランジャ104がそのストロークの下死点へと再び引き戻される。そして、プランジャ104が吸入弁125の弁体125aから離間して流体吸入流路112の開口部112aが開かれると、ポンプ室120と吸入口108とが連通して、前述した吸入動作へと移行する。
【0010】
なお、以上のような一連の吸引・吐出動作は、図8の(d)に示されるように、電磁コイルに対する通電のON/OFFを1サイクルとして繰り返し行なわれる。
【特許文献1】特許第3345332号
【特許文献2】特許第3429719号
【特許文献3】特開平8−270571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、図8に示される従来のポンプ構造においては、吸入側Sおよび吐出側Dの両方に、球状の弁体とバネとからなる2部品構造の弁(吸入弁125および吐出弁130)が設けられているため、部品点数が多く、弁構造が複雑になるとともに、組立が煩雑になり、プランジャポンプ全体も大型化してしまうという問題がある。しかも、このような大型化は、吸入弁125および吐出弁130が流体の吸入・吐出方向に沿って直列に配置されることにより、更に促進される。
【0012】
また、図8に示される従来のポンプ構造においては、吸入弁125がポンプ室を形成するポンプ室120内に配置されているため、ポンプ室120のデッドボリューム(死空間)が増大し、ポンプ室120の内容積全体をポンプ室として有効に利用することができない。そのため、圧縮率が低下し、吐出圧の上昇およびエアー排除において大きな弊害となってしまう。
【0013】
また、図8に示される従来のポンプ構造においては、プランジャ104が吸入弁125の弁体125aに対して繰り返し当て付く(プランジャ104によって弁体125aを叩く)ことにより、開口部112aの開閉が行なわれるため、騒音や振動が生じるだけでなく、吸入弁125の摩耗等によりポンプ室120のシール性が損なわれる虞がある。
【0014】
また、図8に示される従来のポンプ構造において、吐出流量を変えるためには、プランジャ104のストロークや通孔106の内径を変えなければならないが、通孔106の内径を変える場合には、加工が煩雑になる。
【0015】
また、以上説明した一連の問題は、図8に示されるようなポンプ構造を複数備えることにより複数の吐出口から流体を同時に吐出させる多吐出型のプランジャポンプにおいて更に顕著となる。特に、このような多吐出型のプランジャポンプにおいて、複数のプランジャ104を1つの共通の駆動部で同時に作動させるとともに、全てのプランジャ104のストロークを同一にした一定の吐出ピッチで各吐出口110から異なった流量を供給しようとする場合には、前述したように、各プランジャ104毎にその対応する通孔106の内径を変える必要があり、そうした場合、加工工程が煩雑化するだけでなく、組立工程も複雑になり、更には、管理工程が増大することになりかねない。
【0016】
また、図8に示される従来のポンプ構造においては、消費電力低減のため、前記電磁コイルに対する通電時間(ON状態の持続時間)を必要最低限の長さで固定し、電磁コイルに対する通電停止時間(OFF状態の持続時間)を調整することにより、ソレノイドの駆動周波数を決定している(図8の(d)参照)。そのため、必然的に、流体の吸入工程時間である通電OFF時間が長くなってしまっている。しかしながら、このように通電OFF時間が長くなると、1つの問題が生じる。すなわち、流体の吸入工程時(通電OFF状態)においては、ポンプ内で流体の流通路を閉じているのが吐出弁130だけであるため、吐出側Dの圧力が吸入側Sの圧力よりも小さくなった場合にあっては、吐出弁130の開弁圧が低下し、弁座110aの部位で流体の微小漏れ(吐出弁130および吸入弁125が共に開くことにより、流体源からの流体が吸入口108から吸入されて吐出口110からそのまま漏れる、いわゆる吹き抜け現象)が発生してしまう虞がある。そのため、流体の吸入工程時間(通電OFF時間)が長くなると、微小漏れの可能性が増大し、一定量の流体を正確に供給することが困難になり流体が浪費されてしまう。なお、図8の従来のポンプ構造においては、吐出工程中においても、吸入側Sと吐出側Dとの差圧により吸入弁125が開く可能性があるため、前記吹き抜け現象が起こり得る。
【0017】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、所望の圧縮率が得られ、プランジャのストロークやプランジャの摺動孔の内径を変えることなく簡単に吐出量を変えることができるとともに、流体漏れを防止して一定量の流体を正確に吐出できるプランジャポンプ及びその吐出制御方法を提供することにある。また、組立が簡単で且つ小型化を図ることができると共に、高価なオイルや燃料の浪費を防止するプランジャポンプ及びその吐出制御方法の提供も目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、請求項1に記載されたプランジャポンプは、流体源から流体を吸入するための吸入口と、吸入した流体を吐き出すための吐出口とを有するシリンダと、前記シリンダ内に形成され、前記吐出口に連通する通孔と、前記通孔内に摺動可能に嵌挿され、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室を前記吐出口との間に形成するプランジャと、前記シリンダ又は前記プランジャに形成され前記ポンプ室に流体を吸入する流体吸入流路と、を備え、前記ポンプ室に開口する前記流体吸入流路の開口部が、前記通孔内で摺動する前記プランジャ自体によって開閉されることを特徴とするものである。
【0019】
この請求項1に記載されたプランジャポンプによれば、ポンプ室に開口する流体吸入流路の開口部がプランジャ自体によって開閉されるため、すなわち、プランジャ自体が弁機能を備える(プランジャが流体吸入側の吸入弁を兼ねる)ため、流体吸入側に専用の弁(例えば、図8に示される吸入弁125)を設ける必要がなくなる。そのため、従来に比べて部品点数が削減されて、弁構造が簡略化されるとともに、組立が簡単になり、また、プランジャポンプ全体の小型化を図ることも可能になる。
【0020】
また、流体吸入流路の開口部の開閉に伴ってプランジャと衝突する部材(例えば、図8に示される吸入弁125の弁体125a)も存在しないため、ポンプ作動時の振動や騒音を最小限に抑えることができ、また、弁構造の摩耗やそれに伴うポンプ室内のシール不良を生じさせないで済む。
【0021】
なお、前記流体吸入流路の大きさや数は、必要な吐出量に応じて任意に設定すれば良い。また、プランジャの駆動機構としては、ソレノイド、モータやエンジン等で駆動されるカムなど、従来から知られる任意の形態を採用することができる。更に、前記流体吸入流路は、通孔の内面に沿って形成されて通孔の軸方向と平行に延びていても良いが、通孔の軸方向に対して直交する方向に延びていても良く、あるいは、通孔の軸方向に対して斜めに延びていても良い。
【0022】
また、請求項2に記載されたプランジャポンプは、前記吐出口を閉じるように設けられ、前記吐出口に向かう前記プランジャの摺動に伴って前記ポンプ室内に生起される所定の圧力を受けた時にのみ前記吐出口を開く弁体とを備える。これにより、本プランジャポンプにおいては、ポンプ室を形成するポンプ室内に弁部材を必要としないため、ポンプ室のデッドボリューム(死空間)の問題も解消され、ポンプ室の内容積全体をポンプ室として有効に利用することができる。そのため、圧縮率(ポンプ性能)が向上し、吐出圧の上昇およびエアー排除において望ましい構造を実現することができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載されたプランジャポンプは、請求項1に記載されたプランジャポンプにおいて、前記プランジャのストロークの上死点と前記流体吸入流路の前記開口部の位置とによって、前記吐出口から吐き出される流体の吐出量が規定されることを特徴とする。
【0024】
この請求項3に記載されたプランジャポンプによれば、請求項1に記載されたプランジャポンプと同様の作用効果が得られるとともに、プランジャのストロークの上死点と流体吸入流路の前記開口部の位置とによって、前記吐出口から吐き出される流体の吐出量が規定されるため、プランジャのストローク(の量)や通孔の内径を変えなくても、前記開口部の位置を単に変えるだけで(したがって、簡単な加工で)、吐出量を簡単に変える(所要の吐出流量を得る)ことができる。すなわち、前記開口部の位置を変えるだけで、プランジャの全ストロークに対する吸入ストロークと吐出ストロークとの割合を変更することができる。なお、本明細書において、「上死点」とは、プランジャが通孔内に最も押し込まれた位置のことである。
【0025】
また、請求項4に記載されたプランジャポンプは、請求項1に記載のプランジャポンプにおいて、前記流体吸入流路は、前記通孔の内面にその軸方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0026】
この請求項4に記載されたプランジャポンプによれば、請求項1に記載されたプランジャポンプと同様の作用効果が得られるとともに、前記流体吸入流路が前記通孔の内面にその軸方向に沿って形成されているため、流体吸入流路の延在方向と通孔の延在方向とが一致し、流体吸入流路の加工を通孔の加工方向と同じ方向から行なうことができるので加工が容易である。
【0027】
なお、上記構成においては、前記プランジャを前記通孔内で摺動させるための駆動部が更に設けられていても良い。この場合、前記駆動部は、電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力により前記プランジャを前記通孔内で摺動させても良い。また、前記流体としては、潤滑油を含むオイルまたはガソリン等、あらゆる流体を想定することができる。
【0028】
また、請求項7に記載されたプランジャポンプにおける前記駆動部は、前記プランジャをそのストロークの上死点位置で所定時間保持することを特徴とする。
【0029】
この請求項7に記載されたプランジャポンプによれば、プランジャがそのストロークの上死点位置で所定時間保持されるため、吸引・吐出動作の1サイクルにおいて、プランジャをそのストロークの下死点位置(ポンプ吸入側と吐出側との差圧によって吐出口の弁体が開くことにより、流体源からの流体が吸入口から吸入されて吐出口からそのまま漏れる、いわゆる吹き抜け現象が生じる虞がある位置)に保持する時間を最小限に抑えることが可能になる。すなわち、ポンプ吸入側と吐出側との差圧により吹き抜け現象が起こる時間割合を極力少なくすることができ、適正な吐出量を確保することが可能になる。これは、特に、ポンプの駆動周波数を変えて流量制御を行なう場合においては駆動周波数が小さいほど効果的である。流量が小さい程微小漏れの影響が大きく、また、吹き抜けや抑止時間(OFF時間)が長いため、小吐出量時(1サイクルの設定吐出量が少ない時)において有益である。
【0030】
なお、プランジャがそのストロークの上死点位置で保持されている間は、ポンプ室であるポンプ室が密閉状態で保持されるため(プランジャによって流体吸入流路の開口部が閉じられており、基本的に吸入口と吐出口とが連通することがないため)、吹き抜け現象は抑制される。この場合、プランジャとシリンダとの間のクリアランスシールが吹き抜け現象の抑制に大きく寄与する。これに対し、図8の従来の構造では、プランジャがそのストロークの上死点位置で保持されたとしても、吸入側Sと吐出側Dとの差圧や振動により吸入弁125が開く可能性があるため、吹き抜け現象を完全に抑制することは難しい。
【0031】
また、請求項8に記載されたプランジャポンプにおける前記駆動部は、前記プランジャがそのストロークの上死点位置に達した後、前記プランジャを上死点位置へ摺動させるために必要な前記電磁コイルへの印加電圧よりも低い電圧を維持することにより、前記プランジャを上死点位置で所定時間保持することを特徴とする。
【0032】
この請求項8に記載されたプランジャポンプによれば、プランジャを上死点位置で所定時間保持するために電磁コイルへ印加する電圧(吐出完了状態を維持する電力)が、プランジャを上死点位置へ摺動させるために必要な印加電圧(吐出始めに必要な電力)よりも低いため、省電力化を図ることができる(消費電力を低減できる)。吐出完了状態では、電磁プランジャ部の推力が最大となるため、作動電圧を下げても吐出完了状態を十分に維持することができる。
【0033】
また、請求項10に記載された多吐出型プランジャポンプは、流体源から流体を吸入するための吸入管路と、前記吸入管路に連通する吸入口と、吸入した流体を吐き出すための吐出口とをそれぞれが有する複数のシリンダ部と、前記各シリンダ部内に形成され、前記吐出口に連通する通孔と、前記各通孔内に摺動可能に嵌挿されるとともに、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室を、前記吐出口との間に形成するプランジャと、前記各シリンダ部又は前記各通孔内に嵌挿されるプランジャに形成され、前記ポンプ室に流体を吸入する複数の流体吸入流路と、を備え、前記ポンプ室に開口する前記流体吸入流路の開口部が、前記各通孔内で摺動する前記プランジャ自体によって開閉されることを特徴とする。
【0034】
この請求項10に記載された多吐出型プランジャポンプによれば、請求項1と同様の作用効果が得られるとともに、特に、複数のプランジャを1つの共通の駆動部で同時に作動させるとともに、全てのプランジャのストロークを同一にした一定の吐出ピッチで各吐出口から異なった流量を供給しようとする場合であっても、各プランジャ毎にその対応する通孔の内径を変えることなく、単に各流体吸入流路の開口部の位置を変えるだけで済むため、加工が容易である。すなわち、複数のプランジャを連動させる多吐出構造において、各流体吸入流路の開口部の位置を変えるだけで各ポンプ室で流量設定を変えることができるため、ポンプとしてのバリエーションを格段に広げることができる。
【0035】
さらに、本発明は、上記構成のプランジャポンプを用いた吐出制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明のプランジャポンプ及びその吐出制御方法によれば、所望の圧縮率が得られ、プランジャのストロークやプランジャの摺動孔の内径を変えることなく簡単に吐出量を変えることができると共に、流体漏れを防止して一定量の流体を正確に吐出できた。また、使用時の騒音と振動を共に著しく低減化させることができた。さらに、部品点数が少なく組立が簡単で且つサイズ(特に長さ方向)を小さくして小型化することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るプランジャポンプ1が示されている。図示のように、本実施形態のプランジャポンプ1は、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動可能に嵌挿された円柱状のプランジャ4とを備えている。具体的には、シリンダ2は吸入側Sと吐出側Dとを有しており、シリンダ2の吸入側Sに形成された断面が円形の通孔6内にプランジャ4が摺動可能に嵌挿されている。プランジャ4には、リザーバタンク等の図示しない流体源から潤滑油等の流体を吸入するための吸入口8が設けられ、また、シリンダ2には、その吐出側Dに、吸入口8を通じて吸入した流体を吐き出すための吐出口10が、通孔6に連通して設けられている。
【0038】
また、プランジャ4は、図示しないソレノイド(駆動部)の電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力によって通孔6内で摺動され、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室20を吐出口10との間に形成できるようになっている。
【0039】
また、シリンダ2には、ポンプ室20と吸入口8とを接続する流体吸入流路12が少なくとも1つ形成されている。特に本実施形態において、流体吸入流路12は、通孔6の内面にその軸方向に沿って形成されており、通孔6の周方向に沿って略等しい角度間隔で3つ(無論、この数は任意であり、1つだけであっても構わない)設けられている。具体的に、各流体吸入流路12は、通孔6の内面の一部を径方向外側に切り欠くことにより、通孔6を形成するシリンダ2の内面とプランジャ4の外面との間に形成されるとともに、その一端が吐出口10から軸方向に所定距離だけ離間した位置で終端し、その他端が通孔6の端部で終端して吸入口8を形成している。したがって、ポンプ室20に開口する流体吸入流路12の開口部19は、通孔6内で摺動するプランジャ4自体によって開閉され、また、ポンプ室20に対する流体吸入流路12の開口部19の開度は、プランジャ4の摺動に伴って変化する。
ところで、本発明においては、ポンプ室20と吸入口8とを接続する流体吸入流路12を、上記したようにシリンダ2側に形成しても良いがプランジャ4内に形成しても良く、同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
また、吐出口10には、逆止弁(ワンウェイバルブ)を形成する吐出弁30が配設されている。吐出弁30は、球状の弁体30aと圧縮バネ30bとから成るとともに、圧縮バネ30bの付勢力により弁体30aを吐出口10の弁座10aに対して押し当てて吐出口10を常時閉じており、圧縮バネ30bの付勢力に打ち勝つ圧力がポンプ室20内に生起された時にのみ吐出口10を開くようになっている。
【0041】
次に、上記構成のプランジャポンプ1の動作を、前記電磁コイルへの電圧制御とともに説明する。
まず、前記電磁コイルに通電がなされていないOFF状態(図1の(d)参照)においては、図示しないソレノイドの駆動軸(コア)が退避して、プランジャ4がそのストロークの下死点(プランジャ4のストローク範囲のうち、プランジャ4が吐出口10から最も離間する位置)へと引き戻されるため、図1の(a)に示されるように、プランジャ4によって流体吸入流路12の開口部19が開かれ、ポンプ室20と吸入口8とが連通する。したがって、前記流体源からの流体がポンプ室20内に流入する。
【0042】
その後、所定のタイミングで前記電磁コイルに対して通電がなされる(ON状態・・・図1の(d)参照)と、ソレノイドの駆動軸(コア)が前進してプランジャ4が通孔6内に押込まれ、流体吸入流路12の開口部19がプランジャ4によって閉じられる。したがって、この状態では、ポンプ室20が密閉状態に保持される。そして、この状態から更にプランジャ4が押込まれると、ポンプ室20内の圧力が増大し、その圧力が吐出弁30のバネ30bの付勢力を上回ると、弁体30aが弁座10aから離間して吐出口10が開き、ポンプ室20内の流体が吐出口10から吐き出される(図1の(b)の状態)。なお、吐出口10から吐き出された流体は、シリンダ2の吐出側Dに設けられた管状の接続口金35を介して、エンジン等の作動体の潤滑対象部位へと導かれる。
【0043】
以上のようにしてプランジャ4が通孔6内に押込まれ、プランジャ4がそのストロークの上死点に達した段階で、予め定められた設定吐出量の全てが吐出口10から吐き出される。無論、この場合の設定吐出量は、プランジャ4のストロークの上死点と流体吸入流路12の開口部19の位置とによって規定される。
【0044】
また、プランジャ4がそのストロークの上死点に達すると、その上死点位置でプランジャ4が所定時間保持される。この場合、前記電磁コイルに印加される電圧は、プランジャ4を上死点位置へ摺動させるために必要な電圧値Vよりも低い電圧値Vに維持される(図1の(d)参照)。すなわち、プランジャ4がそのストロークの上死点に達した時点で、電磁コイルに印加される電圧がVからVに下げられ、この値Vで所定時間保持される。本構成において吐出工程を電磁力で行ない且つ吸入工程をスプリング力で行なう場合、吐出完了状態(プランジャ4が上死点位置に達した状態)では、電磁プランジャ部の推力が最大となるため、作動電圧をVからVまで下げても吐出完了状態を十分に維持することができる。ここで、プランジャ4を上死点位置に保持する時間Tは、吸入・吐出動作の1サイクルに対応する時間の例えば略半分であっても良く、ON時間Tと上死点保持時間Tとを合わせた時間がOFF時間Tを上回るように設定されることが好ましい。要は、吸入・吐出工程に必要な時間を除く時間を吐出完了状態に維持すれば良い。
【0045】
なお、このようにプランジャ4がそのストロークの上死点位置で保持されている間は、ポンプ室であるポンプ室20が密閉状態で保持され(プランジャ4によって流体吸入流路12の開口部19が閉じられており、基本的に吸入口8と吐出口10とが連通することがないため)、また、プランジャ4とシリンダ2との間のクリアランスシールにより、吐出側Dの圧力が吸入側Sの圧力よりも低くなった場合に流体源からの流体が吸入口8から吸入されて吐出口10からそのまま漏れる、いわゆる吹き抜け現象を抑制できる。これに対し、図8の従来の構造では、プランジャ104がそのストロークの上死点位置で保持されたとしても、吸入側Sと吐出側Dとの差圧により吸入弁125が開く可能性があるため、吹き抜け現象を完全に抑制することは難しい。
【0046】
以上のようにしてプランジャ4がそのストロークの上死点位置で所定時間保持されると、その後、所定のタイミングで、電磁コイルに対する通電が停止(OFF状態)され、ソレノイドの駆動軸(コア)の退避動作によってプランジャ4がそのストロークの下死点へと再び引き戻される。そして、プランジャ4によって流体吸入流路12の開口部19が開かれると、ポンプ室20と吸入口8とが連通して、前述した吸入動作へと移行する。そして、このような一連の吸引・吐出動作は、図1の(d)に示されるように、電磁コイルに対する通電のON/OFFを1サイクルとして繰り返し行なわれる。なお、このような電圧制御を実現する手段としては、ソレノイド以外に、機械式によるカムタイミングの調整や、電気制御可能なアクチュエータのプログラム制御などを挙げることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のプランジャポンプ1では、ポンプ室20に開口する流体吸入流路12の開口部19がプランジャ4自体によって開閉されるため、すなわち、プランジャ4自体が弁機能を備える(プランジャ4が吸入側Sの吸入弁を兼ねる)ため、吸入側Sに弁(例えば、図8に示される吸入弁125)を設ける必要がなくなる。そのため、従来に比べて部品点数が削減されて、弁構造が簡略化されるとともに、組立が簡単になり、また、プランジャポンプ1全体の小型化を図ることも可能になる。
【0048】
また、ポンプ室20内に弁等の部材が一切存在しないため、ポンプ室20のデッドボリューム(死空間)の問題も解消され、ポンプ室20の内容積全体を有効に利用することができる。そのため、圧縮率(ポンプ性能)が向上し、吐出圧の上昇およびエアー排除において望ましい構造を実現することができる。
【0049】
また、流体吸入流路12の開口部19の開閉に伴ってプランジャ4と衝突する部材(例えば、図8に示される吸入弁125の弁体125a)も存在しないため、ポンプ作動時の振動や騒音を最小限に抑えることができ、また、弁構造の摩耗やそれに伴うポンプ室20内のシール不良を生じさせないで済む。
【0050】
また、本実施形態のプランジャポンプ1では、プランジャ4のストロークの上死点と流体吸入流路12の開口部19の位置とによって、吐出口10から吐き出される流体の吐出量が規定されるため、プランジャ4のストロークや通孔6の内径を変えなくても、開口部19の位置を単に変えるだけで(したがって、簡単な加工で)、吐出量を簡単に変える(所要の吐出流量を得る)ことができる。すなわち、開口部19の位置を変えるだけで、プランジャ4の全ストロークに対する吸入ストロークと吐出ストロークとの割合を変更することができる。
【0051】
また、本実施形態のプランジャポンプ1では、流体吸入流路12が通孔6の内面にその軸方向に沿って形成されているため、流体吸入流路12の延在方向と通孔6の延在方向とが一致し、流体吸入流路12の加工を通孔6の加工方向と同じ方向から行なうことができる。
【0052】
また、本実施形態のプランジャポンプ1では、プランジャ4がそのストロークの上死点位置で所定時間保持されるため、吸引・吐出動作の1サイクルにおいて、プランジャ4をそのストロークの下死点位置すなわち吹き抜け現象が生じる虞がある位置に保持する時間を最小限に抑えることが可能になる。すなわち、吸入側Sと吐出側Dとの差圧により吹き抜け現象が起こる時間割合を極力少なくすることができ、適正な吐出量を確保することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、プランジャ4を上死点位置で所定時間保持するために電磁コイルへ印加する電圧Vが、プランジャ4を上死点位置へ摺動させるために必要な印加電圧Vよりも低く設定されているため、省電力化を図ることができる(消費電力を低減できる)。
【0054】
なお、本実施形態のプランジャポンプ1によって吸入・吐出される流体としては、潤滑油を含むオイルやガソリン等、あらゆる流体を想定することができる。また、本実施形態において、流体吸入流路12の大きさや数は、必要な吐出量に応じて任意に設定することができる。また、流体吸入流路12は、本実施形態においては通路6の内面にその軸方向に沿って形成されているが、図2に示されるように、通路6とは別個に形成されていても良い。すなわち、図2に示される流体吸入流路12’は、通路6とは別個にシリンダ2内に形成され且つ通路6と平行に延びる第1の流路12aと、第1の流路12aと直交する方向に延び且つ第1の流路12aをポンプ室20内に連通させる横穴としての第2の流路12bとから成る。
【0055】
図3〜図5には、図1に示されたプランジャポンプ1を複数備える多吐出型プランジャポンプ50が示されている。この多吐出型プランジャポンプ50は、プランジャポンプ1を7つ備えた(したがって、吐出口を7つ有する)例えば2サイクルエンジン分離給油用7吐出電磁オイルポンプとして形成されており、図示しない油源(流体源)に通じる共通の1つの吸入管路52を有している。各プランジャポンプ1のシリンダ(シリンダ部)2は、多吐出型プランジャポンプ50のハウジング54と一体に形成されている。なお、各プランジャポンプ1の構造および動作は既に図1において説明したので、ここでは、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図5に明確に示されるように、吸入管路52は各プランジャポンプ1に共通の吸入ポンプ室56に連通しており、この吸入ポンプ室56には各プランジャポンプ1の吸入口8が開口している。各プランジャポンプ1のプランジャ4は、これらを同時に一体で摺動させる共通の駆動プランジャ62に取り付けられており、ソレノイドを形成する電磁コイル58への電圧印加に伴うソレノイド駆動軸(コア)60の作動により駆動プランジャ62が進退されることによって往復動されるようになっている。
【0057】
本実施形態において、吸入管路52を通じて多吐出型プランジャポンプ50の一方側から吸入された流体は、吸入ポンプ室56を経て反転されつつ各プランジャポンプ1の流体吸入流路12からポンプ室20内に入り、吸入管路52が位置する前記一方側から再び吸入方向と逆方向に吐出される。
【0058】
また、本実施形態において、7つある吐出口10のうちの少なくとも幾つかは、吐き出される流体の吐出量が互いに異なっている。具体的には、流体吸入流路12の開口部19の位置がプランジャポンプ1間で異なっている。
【0059】
このように、図1の構造のプランジャポンプ1を用いると、本実施形態のように、複数のプランジャ4を1つの共通の駆動部で同時に作動させるとともに、全てのプランジャ4のストロークを同一にした一定の吐出ピッチで各吐出口10から異なった流量を供給しようとする場合であっても、各プランジャ4毎にその対応する通孔6の内径を変えることなく、単に各流体吸入流路12の開口部19の位置を変えるだけで済むため、加工が容易である。すなわち、複数のプランジャ4を連動させる多吐出構造において、各流体吸入流路12の開口部19の位置を変えるだけで各ポンプ室20で流量設定を変えることができるため、ポンプとしてのバリエーションを格段に広げることができる。
【0060】
図6および図7には、例えば船外機に使用できる多吐出型プランジャポンプの他の実施形態が示されている。この多吐出型プランジャポンプ70は、その基本的な構造が図3〜図5の多吐出型プランジャポンプ50と同様であり、したがって、同一の参照符号を付してその説明を省略するが、流体の吸入・吐出方向が直線的である点が多吐出型プランジャポンプ50と異なる。すなわち、吸入管路52を通じて多吐出型プランジャポンプ70の一方側から吸入された流体は、吸入ポンプ室56を経て直線的に流されて各プランジャポンプ1の流体吸入流路12からポンプ室20内に入り、吸入管路52が位置する側と反対側の他方側から吸入方向と同じ方向で吐出される。
【0061】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した各実施形態においては、各プランジャ4に対して吐出口10が1つだけ設けられているが、各プランジャ4に対して吐出口10が複数設けられていても良い。無論、この場合も、各吐出口10にそれぞれ吐出弁30が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、流体源から一定量の流体を吸入して吐出するプランジャポンプ及びその吐出制御方法に関するものであり、産業上に利用可能性を有する。本プランジャポンプは、様々な流体を吸入して吐出する種々のプランジャポンプに対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係るプランジャポンプの吸入工程時の断面図、(b)は本発明の一実施形態に係るプランジャポンプの吐出工程時の断面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図、(d)は吸入・吐出制御に伴って電磁コイルに対して印加される電圧の波形図である。
【図2】(a)は図1のプランジャポンプの変形例に係る断面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図3】一実施形態に係る多吐出型プランジャポンプの側面図である。
【図4】図3のA方向矢視図である。
【図5】図3の多吐出型プランジャポンプの要部断面図である。
【図6】他の実施形態に係る多吐出型プランジャポンプの断面図である。
【図7】図6のB方向矢視図である。
【図8】(a)は従来のプランジャポンプの吸入工程時の断面図、(b)は従来のプランジャポンプの吐出工程時の断面図、(c)は(a)のA−A線に沿う断面図、(d)は従来の吸入・吐出制御に伴って電磁コイルに対して印加される電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0064】
1 プランジャポンプ
2 シリンダ
4 プランジャ
6 通孔
8 吸入口
10 吐出口
12 流体吸入流路
19 開口部
20 ポンプ室
30 弁体
50,70 多吐出型プランジャポンプ
52 吸入管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体源から流体を吸入するための吸入口と、吸入した流体を吐き出すための吐出口とを有するシリンダと、
前記シリンダ内に形成され、前記吐出口に連通する通孔と、
前記通孔内に摺動可能に嵌挿され、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室を前記吐出口との間に形成するプランジャと、
前記シリンダ又は前記プランジャに形成され、前記ポンプ室に流体を吸入する流体吸入流路と、を備え、
前記ポンプ室に開口する前記流体吸入流路の開口部が、前記通孔内で摺動する前記プランジャ自体によって開閉されることを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
前記吐出口を閉じるように設けられ、前記吐出口に向かう前記プランジャの摺動に伴って前記ポンプ室内に生起される所定の圧力を受けた時にのみ前記吐出口を開く弁体を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
前記プランジャのストロークの上死点と前記流体吸入流路の前記開口部の位置とによって、前記吐出口から吐き出される流体の吐出量が規定されることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項4】
前記流体吸入流路は、前記通孔の内面にその軸方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
前記プランジャを前記通孔内で摺動させるための駆動部を、更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項6】
前記駆動部は、電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力により前記プランジャを前記通孔内で摺動させることを特徴とする請求項5に記載のプランジャポンプ。
【請求項7】
前記駆動部は、前記プランジャをそのストロークの上死点位置で所定時間保持することを特徴とする請求項5に記載のプランジャポンプ。
【請求項8】
前記駆動部は、前記プランジャがそのストロークの上死点位置に達した後、前記プランジャを上死点位置へ摺動させるために必要な前記電磁コイルへの印加電圧よりも低い電圧を維持することにより、前記プランジャを上死点位置で所定時間保持することを特徴とする請求項7に記載のプランジャポンプ。
【請求項9】
前記流体が潤滑油を含むオイルまたはガソリンであることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項10】
流体源から流体を吸入するための吸入管路と、
前記吸入管路に連通する吸入口と、吸入した流体を吐き出すための吐出口とをそれぞれが有する複数のシリンダ部と、
前記各シリンダ部内に形成され、前記吐出口に連通する通孔と、
前記各通孔内に摺動可能に嵌挿されるとともに、流体を吸入して吐き出すためのポンプ室を、前記吐出口との間に形成するプランジャと、
前記各シリンダ部又は前記各通孔内に嵌挿されるプランジャに形成され、前記ポンプ室に流体を吸入する複数の流体吸入流路と、
を備え、
前記ポンプ室に開口する前記流体吸入流路の開口部が、前記各通孔内で摺動する前記プランジャ自体によって開閉されることを特徴とする多吐出型プランジャポンプ。
【請求項11】
前記各吐出口に対してこれを閉じるように設けられ、前記吐出口に向かう前記プランジャの摺動に伴って前記ポンプ室内に生起される所定の圧力を受けた時にのみ前記吐出口を開く弁体と、を有することを特徴とする請求項10に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項12】
前記各プランジャのストロークの上死点と前記各流体吸入流路の前記開口部の位置とによって、前記各吐出口から吐き出される流体の吐出量が規定されることを特徴とする請求項11に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項13】
前記吐出口のうちの少なくとも幾つかは、吐き出される流体の吐出量が互いに異なることを特徴とする請求項12に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項14】
前記各流体吸入流路は、前記各通孔の内面にその軸方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項11乃至13の何れかの項に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項15】
前記各プランジャを前記各通孔内で摺動させるための駆動部を更に備えていることを特徴とする請求項11に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項16】
前記駆動部は、全てのプランジャを同時に一体で摺動させることを特徴とする請求項15に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項17】
前記駆動部は、電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力により前記各プランジャを前記各通孔内で摺動させることを特徴とする請求項15に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項18】
前記駆動部は、前記各プランジャをそのストロークの上死点位置で所定時間保持することを特徴とする請求項15に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項19】
前記駆動部は、前記各プランジャがそのストロークの上死点位置に達した後、前記各プランジャを上死点位置へ摺動させるために必要な前記電磁コイルへの印加電圧よりも低い電圧を維持することにより、前記各プランジャを上死点位置で所定時間保持することを特徴とする請求項18に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項20】
前記流体が潤滑油を含むオイルまたはガソリンであることを特徴とする請求項10に記載の多吐出型プランジャポンプ。
【請求項21】
流体源から流体を吸入するための吸入口および吸入した流体を吐き出すための吐出口を有するシリンダと、前記シリンダ内に形成され且つ前記吐出口に連通する通孔と、前記通孔内に摺動可能に嵌挿され且つ流体を吸入して吐き出すためのポンプ室を前記吐出口との間に形成するプランジャと、前記吐出口を閉じるように設けられ且つ前記吐出口に向かう前記プランジャの摺動に伴って前記ポンプ室内に生起される所定の圧力を受けた時にのみ前記吐出口を開く弁体と、前記シリンダ又は前記プランジャに形成され、前記ポンプ室に流体を吸入する流体吸入流路と、を備え、前記ポンプ室で開口する前記流体吸入流路の開口部が、前記通孔内で摺動する前記プランジャ自体によって開閉されるプランジャポンプの吐出制御方法において、
前記プランジャがそのストロークの上死点位置に達した後、その上死点位置でプランジャを所定時間保持することを特徴とする吐出制御方法。
【請求項22】
電磁コイルへの通電により発生する電磁起動力により前記プランジャを前記通孔内で摺動させ、
前記プランジャがそのストロークの上死点位置に達した後、前記プランジャを上死点位置へ摺動させるために必要な前記電磁コイルへの印加電圧よりも低い電圧を維持することにより、前記プランジャを上死点位置で所定時間保持することを特徴とする請求項21に記載の吐出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−70893(P2006−70893A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217684(P2005−217684)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】