説明

プランタ装置および植物栽培システム

【課題】植木鉢、プランタなどの植物栽培用容器において、簡易な構成で、植物の根の周囲を加温でき、植物の根の周囲の環境を改善し、育成を促進させる。
【解決手段】プランタ10の収容部の内側に導電性樹脂材料を露出し、導電性樹脂材料に少なくとも一対の電極14A、15A(14B、15B)を設けて発熱体としての導電性樹脂製ヒータ11A(11B)を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランタ装置および植物栽培システムに係り、特に植物の育成を促進させるためのプランタ装置および植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の育成を促進するために植物の温室栽培が行われており、家庭においても小型の温室を用いて植物を栽培することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−319383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、家庭用の温室は小型であり、低コストで制作する必要があるため、暖房装置を備えていないものが一般的であった。
したがって、夜間時や、冬季においては、温室の内部に収納したプランタや植木鉢(以下、これらをプランタ装置という。)の土床の温度が下がることとなり、植物の根の環境が悪化し、ひいては、植物全体の育成に悪影響を及ぼすこととなっていた。
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で、植物の周囲を加温でき、植物の生育環境を改善して育成を促進させることが可能なプランタ装置および植物栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の第1態様は、プランタ本体の収容部の内側に導電性樹脂材料を露出し、前記導電性樹脂材料に少なくとも一対の電極を設けて発熱体を形成したことを特徴とする。
上記構成によれば、発熱体として形成された導電性樹脂材料は、プランタ本体の収容部の内側に露出されているので、収容部に収容された植物の周囲(特に根の周囲)を加温できるとともに、周囲の水を電気分解して、酸素などを植物の根に供給し、育成を助けることができる。
【0005】
第2態様は、第1態様において、前記導電性樹脂材料を前記収容部の内壁面に露出し、前記一対の電極を前記収容部の内壁面の対向する位置に形成したことを特徴とする。
上記構成によれば、一対の電極は収容部の内壁面の対向する位置に形成されていることから、効率的に植物の周囲の水を電気分解して酸素などを効率的に供給できる。
【0006】
第3態様は、第1態様において、前記導電性樹脂材料の樹脂製シートを真空成形することにより前記収容部を形成し、前記収容部の上縁に連なるフランジ部に前記一対の電極を形成したことを特徴とする。
上記構成によれば、電極間の電流は、主として収容部内を流れることとなり、効率的な酸素供給などが行える。
【0007】
第4態様は、第1態様ないし第3態様のいずれかにおいて、前記プランタ本体が収容部を支持して棚部に係止自在な支持具を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、プランタ本体を多段に構成することができる。
【0008】
第5態様は、第4態様において、前記プランタ本体の収容部が前記一対の電極を有した前記導電性樹脂材料の樹脂製シートであり、当該樹脂製シートを曲げて前記支持具に保持可能としたことを特徴とする。
上記構成によれば、簡易な構成で、プランタ装置を構成することができる。
【0009】
第6態様は、第1態様ないし第5態様のいずれかにおいて、前記一対の電極間に30[V]未満の直流電圧を印加することを特徴とする。
上記構成によれば、無駄な漏れ電流を低減しつつ、漏れ電流を利用して、水の電気分解を行って、酸素などを植物に供給することができる。
【0010】
第7態様は、第1態様ないし第5態様のいずれかにおいて、前記一対の電極間に印加する直流電圧の極性を所定時間毎に反転することを特徴とする。
上記構成によれば、電極表面あるいは電極近傍に集まることにより、肥料成分などの各種イオンの分布が偏るのを防止することができる。
【0011】
本発明の第8態様は、棚部と、当該棚部に係止自在に形成した第1態様ないし第7態様のいずれかのプランタ本体と、当該プランタ本体の収容部に給水自在な配管と、前記収容部からの排水を貯留する排水受けと、当該排水受けに貯留した排水を前記配管に環流するポンプとを備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、植物の周囲の加温と、電気分解による酸素などの供給とを行うに際し、少ない水で運用が可能となる。
【0012】
第9態様は、第8態様において、前記棚部が前下がりに傾斜し、当該棚部の前後方向に間隔をあけて複数のプランタ本体が係止され、各プランタ本体の収容部が真上を開放することを特徴とする。
上記構成によれば、プランタ本体の収容部の真上は開放されているので、各プランタ本体への日光の入射を妨げることもなく、植物の生長方向も開放されているので、植物の育成を阻害することがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、栽培対象の植物の周囲を加温でき、植物の生育環境を改善し、育成を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態のプランタ装置の一部断面図である。
図2は、プランタに導電性樹脂製ヒータを配置した場合の説明図である。
プランタ装置である樹脂製のプランタ10の側壁内面(プランタ本体の収容部の内側に相当)に、導電性樹脂材料を露出し、この導電性樹脂材料に少なくとも一対の電極を設けて発熱体として形成した導電性樹脂製ヒータ11A、11Bが略対向状態で配置されている。これらの導電性樹脂製ヒータ11A、11Bは図示しない、ねじなどによりプランタ10の側壁内面に固定されている。
【0015】
この一対の導電性樹脂製ヒータ11A、11Bは、図1に示すように、植物12の根13を周囲の土床SLごと囲うように配置されている。そして、上述したように、本実施形態においては、各導電性樹脂製ヒータ11A、11Bの表面は、絶縁されておらず、そのまま露出された状態となっており、漏れ電流を利用して、土床SLに含まれる水を電気分解するように動作している。この場合において、有効に利用されない漏れ電流を少なくして消費電力低減を図る観点から、植物12の根13に対向する面以外の面を絶縁被覆するように構成することも可能である。
【0016】
導電性樹脂製ヒータ11Aと導電性樹脂製ヒータ11Bとは、同一構成となっているので、主として導電性樹脂製ヒータ11Aについて説明する。
導電性樹脂製ヒータ11Aは、長手方向に沿って一対の電極14A、15Aが内蔵されている。この電極14A、15Aは、平編カーボン繊維電極ケーブルが用いられている。電極14A、15Aとして平編カーボン繊維を用いているのは、後述する電気分解に伴って、電極成分が溶出して電極14A、15Aが劣化するのを防止し、ひいては、導電性樹脂製ヒータ11Aの劣化を防止し、寿命を延ばすためである。
【0017】
導電性樹脂製ヒータ11Aは、例えば、熱可塑性樹脂に導電性粒子である鉄粉末、アルミ粉末、カーボン粉末などが混入されている。この場合において、導電性粒子は、導電性樹脂製ヒータ11Aの表面に近づくほど密になるように混入されている。このため、通電して導電性樹脂製ヒータ11Aの内部(導電性粒子が少ない部分)に形成される発熱部の温度が上昇し、安定温度に近くなると電気抵抗が増大し、消費電力が減少するというPTC効果を有している。
【0018】
同様に導電性樹脂製ヒータ11Bは、電極14B、15Bを有している。
一対の電極14A、15Aには、配線16A、17Aを介して、また、一対の電極14B、15Bには配線16B、17Bを介して直流電源として機能する電源コントロールユニット20が接続されている。各電極間14A−15A、14B−15Bには、およそ30[V]未満、本実施形態では、24[V]以下の電圧(具体的には、15〜24V)が印加される。これは、印加電圧が30[V]未満であれば、水の電気分解に必要な電流(漏れ電流)が微弱なものとなり、感電のおそれがないからである。また、24[V]以下としているのは、発熱量および酸素発生量が十分満たされるからである。さらにこれらの電極14A、14B、15A、15Bは、この電源コントロールユニット20の防水電源プラグ20Aを介して商用電源に接続されている。
【0019】
この場合において、電極14A、15Aあるいは電極14B、15Bは、常に同一の極性とされているわけではなく、電源コントロールユニット20により、各々所定時間毎に極性を入れ替えている。これは、電気分解に伴い、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)に特定のイオンが集まることを無くし、土床SL中のイオン分布の偏りや、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)における特定の物質(特に肥料としての、窒素、リン、カリウムなどの必須元素)の析出を抑制するためと、土床SL内で発生させる酸素の発生位置を万遍なくするためである。具体的には、ある切換タイミングで、電極14A、14Bが正極となり、電極15A、15Bが負極となったとすると、次のタイミングでは、電極14A、14Bが負極となり、電極15A、15Bが正極となる。したがって、切換タイミング毎に極性が変更され、イオンや、酸素の発生位置が均一となる。
【0020】
図3は、第1実施形態の導電性樹脂製ヒータを含む電気系統の概要構成説明図である。
電源コントロールユニット20は、商用電源PW(例えば、交流単相100V)の交流/直流変換および電圧変換(例えば、交流単相100V→直流20V)を行うAC/DCコンバータ21と、AC/DCコンバータ21から供給される直流電源を導電性樹脂製ヒータ11A、11Bに供給するに際し、切換信号Sswに基づいて極性を切り替える切替部22と、マイクロコンピュータとして構成され、電源コントロールユニット20全体を制御するとともに、内蔵したタイマにより所定時間毎に導電性樹脂製ヒータ11A、11Bに印加する直流電圧の極性を切り替えるための切換信号Sswを出力するコントローラ23と、を備えている。
【0021】
次に第1実施形態の動作について説明する。
電源コントロールユニット20の防水電源プラグ20Aを商用電源PWの図示しない防水コンセントに接続すると、AC/DCコンバータ21は、交流/直流変換および電圧変換を行って切替部22に直流電源を供給する。
これにより、導電性樹脂製ヒータ11Aの電極14A−電極15A間及び、導電性樹脂製ヒータ11Bの電極14B−電極15B間に直流電圧が印加され、導電性樹脂製ヒータ11Aおよび導電性樹脂製ヒータ11Bのそれぞれに電流が流れて発熱し、植物12の根13の周りの土床SLを加温することとなる。
【0022】
また、導電性樹脂製ヒータ11Aおよび導電性樹脂製ヒータ11Bは、非絶縁状態であるため、例えば、導電性樹脂製ヒータ11Aの電極14Aを正極とし、電極15Aを負極とし、導電性樹脂製ヒータ11Bの電極14Bを正極とし、電極15Bを負極とした場合には、漏れ電流により、電極14A−土床SL−電極15B間および電極14B−土床SL−電極15A間でそれぞれ電流が流れ、さらに電極14A−土床SL−電極15A間および電極14B−土床SL−電極15B間にも電流が流れることとなる。
【0023】
これにより、土床SL中に含まれる水(正確には、土床SLの成分に起因する各種イオンが溶けた状態の水)が電気分解され、正極となった電極側(上述の例の場合、電極14A、14B側)では、酸素が発生し、負極となった電極側(上述の例の場合、電極15A、15B側)では、水素が発生する。なお、水素は、軽いため、発生後直ちに土床SLから大気中に放出され、実効的には酸素のみが土床SL内にある程度の時間留まって、植物12の根13から吸収されることとなる。
【0024】
これと並行してコントローラ23は、タイマのカウントを開始し、所定のタイミングで切換信号Sswを切替部22に出力する。
これにより、一対の電極14A、15Aの極性および一対の電極14B、15Bの極性がそれぞれ所定タイミング毎に反転することとなり、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)に特定のイオンが集まることを無くし、土床SL中のイオン分布の偏りや、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)における特定の物質(特に肥料としての、窒素、リン、カリウムなどの必須元素)の偏りや、析出を抑制することができる。
【0025】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、プランタ10内の土床SL、ひいては、植物12の根13を効果的に加温することができる。したがって、プランタ10を寒い季節に屋外に設置する場合でも、植物12の育成を促進できる。
さらに導電性樹脂製ヒータ11A、11Bは、植物12の根13側の面は、絶縁されていないので、導電性樹脂製ヒータ11A、11Bの製造時に、絶縁工程を設ける必要が無く、製造コストならびに製造時間の短縮が図れる。加えて、電極間の漏れ電流により、プランタ10内の土床SLに含まれる水を電気分解して土床SL内に酸素及び水素を発生し、発生した酸素は、土床SL内に留まって植物12の根13に吸収されることとなるので、植物12の根13の呼吸を助け、発根を促し、根腐れや立ち枯れなどを防止することができるとともに、植物12の成長を促進することができる。
【0026】
[2]第2実施形態
以上の第1実施形態においては、平板状の導電性樹脂製ヒータ11A、11Bをプランタ装置であるプランタの側壁に沿って対向配置させるものであったが、本第2実施形態は植物栽培用容器自体を導電性樹脂製ヒータで形成する場合のものである。
【0027】
図4は、第2実施形態のプランタ装置の外観斜視図である。
また、図5は、図4のプランタ装置のA−A断面図である。
プランタ装置としてのプランタ30は、導電性樹脂材料の樹脂製シートを真空成形することにより断面U字状の収容部31を形成し、収容部31の上縁に連なるフランジ部32A、32Bに一対の電極33、34を形成している。この場合において、プランタ30は、導電性樹脂製ヒータとして機能するが、第1実施形態と同様に非絶縁状態とされている。なお、収容部31の外面およびフランジ部32A、32Bの両面のみを絶縁状態とすることも可能である。
【0028】
図6は、成形前の導電性樹脂製ヒータの平面図である。
成形前のプランタ30は、対向する一対の側辺部に1対の電極33、34が設けられた略正方形状を有している。そして、中央部に割り当てられた電極33、34間の距離Lよりもやや短い直径Dを有する収容部形成位置31Pに真空成形を施すことにより収容部31が形成される。
続いて成形前に電極33、34が配置されていなかった側辺部30P1,30P2の導電性樹脂を円弧状に切り取り、中心部に水抜き用の孔31Aを例えば、打ち抜きにより形成することにより導電性樹脂製ヒータで構成されたプランタ30として完成する。
【0029】
成形前に電極が配置されていなかった側辺部30P1,30P2の導電性樹脂を円弧状に切り取るのは、この部分を流れようとする電流を無くし、必ず収容部31を電流が流れるようにするためである。
上記構成によれば、第1実施形態と同様に、電極33、34間に直流電源を供給することにより、プランタ30、すなわち、導電性樹脂製ヒータの電極33−34間に直流電圧が印加されると、収容部31を経由して電流が流れて発熱し、植物の根の周りの土床を加温することとなる。
【0030】
また、上述したように、少なくとも、収容部31の内面は、非絶縁状態であるため、収容部31内に土床を入れた場合には、漏れ電流により、電極33−土床−電極34間にも電流が流れ、土床中に含まれる水が電気分解され、正極となった電極側では、酸素が発生し、負極となった電極側水素が発生し、酸素のみが土床内にある程度の時間留まって、第1実施形態と同様に、植物の根から吸収されることとなる。
【0031】
この場合においても、第1実施形態と同様に、一対の電極33、34の極性を所定時間毎に反転させることとなり、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)に特定のイオンが集まることを無くし、土床SL中のイオン分布の偏りや、正極あるいは負極(あるいは、その近傍)における特定の物質(特に肥料としての、窒素、リン、カリウムなどの必須元素)の析出を抑制するのが好ましい。
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、プランタ30を容易に形成することができるとともに、プランタ30は、導電性樹脂製ヒータとして構成されているので、第1実施形態のように、別体の植物栽培用容器内に導電性樹脂製ヒータを配置する場合と比較して、その取り扱いが容易となる。
【0032】
[3]第3実施形態
以上の第1実施形態においては、平板状の導電性樹脂製ヒータ11をプランタ装置であるプランタの側壁に沿って2枚対向配置させるものであったが、本第3実施形態はプランタ装置の側壁部自体を導電性樹脂製ヒータで形成した樹脂製のプランタ装置を構成する場合のものである。
【0033】
図7は、第3実施形態のプランタ装置の外観斜視図である。
プランタ装置としてのプランタ40は、断面L字形状を有し、一対の側壁および底を構成する、一対の対向配置された導電性樹脂製ヒータ41A、41Bと、これらの導電性樹脂製ヒータ41A、41Bをその両端でそれぞれ支持するとともに、プランタ40を構成する他の一対の側壁を構成する一対の支持側壁部42を備えている。
この一対の導電性樹脂製ヒータ41A、41Bは、図7に示すように、植物の根を周囲の土床ごと囲うように配置されており、第1実施形態と同様に、少なくとも各導電性樹脂製ヒータ41A、41Bの植物の根に対向する面は絶縁されていない。
【0034】
図8は、第3実施形態のプランタ装置の分解斜視図である。
導電性樹脂製ヒータ41Aと導電性樹脂製ヒータ41Bとは、同一構成となっているので、主として導電性樹脂製ヒータ41Aについて説明する。
導電性樹脂製ヒータ41Aは、図8に示すように、側壁部51と、側壁部51につながり側方に伸びる底部52と、を備えている。
側壁部51には、その長手方向に沿って一対の電極53A、54Aが内蔵されている。この電極53A、54Aは、平編カーボン繊維電極ケーブルが用いられ、それらの端部には、配線55A、56Aが設けられている。
【0035】
同様に導電性樹脂製ヒータ41Bは、側壁部51には、その長手方向に沿って一対の電極53B、54Bが内蔵され、それらの端部には、配線55B、56Bが設けられている。
また、支持側壁部42は、導電性樹脂製ヒータ41A及び導電性樹脂製ヒータ41Bの側壁部51をそれぞれ支持する一対の支持側壁部57、導電性樹脂製ヒータ41A及び導電性樹脂製ヒータ41Bの底部52を支持するための底支持部58およびプランタ40の短手方向の側壁を構成する側壁部59を備えている。
【0036】
したがって、一対の支持側壁部42に導電性樹脂製ヒータ41Aと導電性樹脂製ヒータ41Bとを嵌め込み、溶着あるいは接着などにより、長方形状のプランタ40として構成されることとなる。この状態で、導電性樹脂製ヒータ41Aの底部52と、導電性樹脂製ヒータ41Bの底部52とは、離間した状態であり、この長方形状の間隙GPは、水抜き孔として機能することとなる。
【0037】
次に導電性樹脂製ヒータ41Aおよび導電性樹脂製ヒータ41Bの製造方法について説明する。
図9は、第3実施形態の導電性樹脂製ヒータの製造方法の説明図である。
第3実施形態の導電性樹脂製ヒータの基本的構成は、第1実施形態の導電性樹脂製ヒータと同様である。
第3実施形態の導電性樹脂製ヒータの製造にあたっては、まず、図9(A)に示すように、2対の電極53A、54A、53B、54Bを形成した1枚の導電性樹脂製ヒータ50を製造する。
【0038】
次に、図9(B)に示すように、折曲げラインLBで導電性樹脂製ヒータ50を構成する導電性樹脂を折り曲げて、断面コ字状とする。
続いて、図9(C)に示すように、カットラインLCでカットして、二つの導電性樹脂製ヒータ41A、41Bとして分離し、完成とする。
第3実施形態の動作については、第1実施形態と同様となるので、その詳細な説明は省略する。
本第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
[4]第4実施形態
第4実施形態は、壁等に沿って上下方向に多段にプランタ本体を配置した植物栽培システムを構成した場合のものである。
図10は、植物栽培システムの外観斜視図である。
植物栽培システム60は、大別すると、前下がりに傾斜した棚部70と、複数のプランタ本体61と、プランタ本体61の収容部61Aに給水自在な給水配管63と、棚部70の前後方向に間隔をあけて係止された収容部61Aからの排水を、棚部70を介して受けて、貯留する排水受け74と、排水受け74に貯留した排水を給水配管63に環流するポンプ75とを備えている。
【0040】
この場合において、棚部70の前後方向に間隔をあけて複数のプランタ本体61が係止され、各プランタ本体61の収容部61Aが真上を開放するようにされている。したがって、収容部61Aに植えられた植物同士が干渉して成長の妨げとなることを防止するとともに、世話を容易に行うことができる。さらに日光の入射も妨げることがないので、植物の生育に影響を与えることがない。
棚部70は、複数枚の棚パネル71と、これらの棚パネル71を前下がりに支持する支持部材72と、支持部材72を所定角度で保持する脚部材73と、を備えている。本第4実施形態では、支持部材72は、2枚の棚パネル71を支持した場合について説明しているが、建物の壁面を覆う場合などには、n×m枚の棚パネル71を支持可能に構成することが可能である。
プランタ本体61は、平板上の導電性樹脂製ヒータを断面U字状に折り曲げ、支持部材(支持フレーム)62にぴったりと嵌め込まれることにより、収容部61Aを構成している。
支持部材62は、U字状の下部支持部62Aと、下部支持部62Aに連接されたフック部62Bと、下部支持部62A及びフック部62Bを所定位置に支持するフレーム部62Cと、支持部材62の棚パネル71への取付時に、支持部材62、ひいては、プランタ本体61の収容部61Aが真上を向くように位置決めを行う位置決め部材62Dと、を備えている。
棚パネル71には、支持部材62のフック部62Bが挿入され、係止される係止孔71Aが複数箇所に設けられている。この係止孔71Aにより、高さ方向における支持部材62の取付位置、ひいては、プランタ本体61の取付位置を適宜選択可能になっている。したがって、植物の成長後の大きさなどに応じて、プランタ本体61の取付個数あるいは取付間隔を所望の位置とすることができる。
【0041】
図11は、導電性樹脂製ヒータをプランタ本体として成形する前の平面図である。
本第3実施形態の導電性樹脂製ヒータ61Pは、成形前は基本的に、第1実施形態の導電性樹脂製ヒータと同様の構成となっており、導電性樹脂製ヒータ61Pは、長手方向に沿って一対の電極64、65が内蔵されている。電極64には、配線66が設けられ、電極65には配線67が設けられている。
導電性樹脂製ヒータ61Pの中央部分には、長手方向に沿って、複数の水抜き孔部68が設けられている。各水抜き孔部68は、複数(本実施形態では、4個)の長方形状の水抜き孔69を備えている。
【0042】
これらの水抜き孔部68は、導電性樹脂製ヒータ61Pをプランタ本体61として成形した時点で、プランタ本体61の最下部に位置することとなり、余分な水がプランタ本体61の下方に排出されることとなる。
この導電性樹脂製ヒータ61Pの寸法としては、例えば、50cm×3m程度であり、プランタ本体61の寸法としては、高さ約20cm、長さ3m程度となる。
【0043】
図12は、植物栽培システム60の設置状態の側面図である。
支持部材72は、棚パネル71を支持する枠部材として構成され、この支持部材72は、脚部材73により所定角度で立設するように保持されている。
設置状態においては、図12に示すように、プランタ本体61には、導電性樹脂材料であるプランタ本体61の収容部61A内で栽培対象の植物76の根77の周囲を覆うとともに、全面側も覆うように保水材としての水苔78が配置されている。この水苔78に代えて、あるいは、加えて保水用ゲルを用いることも可能である。
【0044】
上記構成によれば、第1実施形態と同様に、電極64、65間に直流電源を所定時間毎に極性を切換換えて供給することにより、プランタ本体61、すなわち、導電性樹脂製ヒータ61Pの電極64、65間に直流電圧が印加され、導電性樹脂製ヒータ61Pとしてのプランタ本体61内を電流が流れて発熱し、植物の根の周りの保水材としての水苔78、ひいては、栽培対象の植物76の根77の周囲を加温することとなる。
また、電極64、65間の漏れ電流が水苔78に保持された水を介して流れ、当該水が電気分解され、正極となった電極側では、酸素が発生し、負極となった電極側水素が発生し、酸素のみが土床内にある程度の時間留まって、第1実施形態と同様に、植物76の根77から吸収されることとなる。
【0045】
この場合においても、第1実施形態と同様に、一対の電極64、65の極性を所定時間毎に反転させるので、特定の電極に特定のイオンが集まることを無くし、水苔78に保持された水内のイオン分布の偏りや、正極あるいは負極におけるイオン化傾向の小さい物質の析出、もしくは、電極近傍におけるイオン化傾向の小さい物質(より正確には、酸化還元反応における還元されやすい物質)の析出が抑制され、より均質な育成環境を保つことができる。
また、保水材としての水苔78中に含まれる水が少なくなった場合、あるいは、少なくなると予想される場合には、マニュアル操作あるいはタイマにより給水配管63から水苔78に対して、上方から栽培用水Wが供給されることとなる。なお、この栽培用水Wには、液肥を加えたものを用いることも可能である。なお、液肥を加えた場合には、その濃度が所定範囲に収まるように、マニュアルまたは自動でコントロールする必要がある。
本第3実施形態によれば、第2実施形態の効果に加えて、植物栽培を狭い敷地で、手間を簡略化しつつ行うことが可能となる。
【0046】
以上の説明では、電源コントロールユニットについての説明は省略したが、プランタ本体61毎に印加する電圧を変更可能な構成を採れば、植物栽培用容器毎に加温状態あるいは酸素供給状態を変更することができ、様々な種類の植物を栽培するような場合に、栽培対象の植物に適した環境を与えることができ、好都合となる。
以上の説明においては、プランタ装置あるいは植物栽培システムをそのまま用いていたが、冬季などにおいては、ビニールハウスのようにプランタ装置あるいは植物栽培システムの周囲を断熱効果を有するもので覆うあるいは囲うことにより、より一層植物の育成環境を向上することができるとともに、大気中への熱の発散を抑制して消費電力の低減も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態の植物栽培用容器の一部断面図である。
【図2】植物栽培用容器に導電性樹脂製ヒータを配置した場合の説明図である。
【図3】第1実施形態の導電性樹脂製ヒータを含む電気系統の概要構成説明図である。
【図4】第2実施形態の植物栽培用容器の外観斜視図である。
【図5】図4の植物栽培用容器のA−A断面図である。
【図6】成形前の導電性樹脂製ヒータの平面図である。
【図7】第3実施形態の植物栽培用容器の外観斜視図である。
【図8】第3実施形態の植物栽培用容器の分解斜視図である。
【図9】第3実施形態の導電性樹脂製ヒータの製造方法の説明図である。
【図10】植物栽培用装置の外観斜視図である。
【図11】導電性樹脂製ヒータをプランタ本体として成形する前の平面図である。
【図12】植物用栽培装置の設置状態の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
10、30、40 プランタ
11A、11B、41A、41B、50、61P 導電性樹脂製ヒータ
12、76 植物
13、77 根
14A、14B、15A、15B、33、53A、53B、64、65 電極
16A、16B、55A、55B、66、67 配線
16B 配線
20 電源コントロールユニット
20A 防水電源プラグ
21 DCコンバータ
22 切替部
23 コントローラ
30P1、30P2 側辺部
31 収容部
31P 収容部形成位置
32A フランジ部
33 電極
40 プランタ
42 支持側壁部
51 側壁部
52 底部
57 支持側壁部
58 底支持部
59 側壁部
60 植物栽培システム
GP 間隙
61 プランタ本体
61A 収容部
62 支持部材
62A 下部支持部
62B フック部
62C フレーム部
62D 位置決め部材
63 給水配管
68 孔部
70 棚部
71 棚パネル
71A 係止孔
72 支持部材
73 脚部材
75 ポンプ
78 水苔
Ssw 切換信号
W 栽培用水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランタ本体の収容部の内側に導電性樹脂材料を露出し、
前記導電性樹脂材料に少なくとも一対の電極を設けて発熱体を形成したことを特徴とするプランタ装置。
【請求項2】
前記導電性樹脂材料を前記収容部の内壁面に露出し、
前記一対の電極を前記収容部の内壁面の対向する位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載のプランタ装置。
【請求項3】
前記導電性樹脂材料の樹脂製シートを真空成形することにより前記収容部を形成し、前記収容部の上縁に連なるフランジ部に前記一対の電極を形成したことを特徴とする請求項1に記載のプランタ装置。
【請求項4】
前記プランタ本体が収容部を支持して棚部に係止自在な支持具を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプランタ装置。
【請求項5】
前記プランタ本体の収容部が前記一対の電極を有した前記導電性樹脂材料の樹脂製シートであり、当該樹脂製シートを曲げて前記支持具に保持可能としたことを特徴とする請求項4に記載のプランタ装置。
【請求項6】
前記一対の電極間に30[V]未満の直流電圧を印加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のプランタ装置。
【請求項7】
前記一対の電極間に印加する直流電圧の極性を所定時間毎に反転することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプランタ装置。
【請求項8】
棚部と、当該棚部に係止自在に形成した請求項1ないし7のいずれか一項に記載のプランタ本体と、当該プランタ本体の収容部に給水自在な配管と、前記収容部からの排水を貯留する排水受けと、当該排水受けに貯留した排水を前記配管に環流するポンプとを備えたことを特徴とする植物栽培システム。
【請求項9】
前記棚部が前下がりに傾斜し、当該棚部の前後方向に間隔をあけて複数のプランタ本体が係止され、各プランタ本体の収容部が真上を開放することを特徴とする請求項8に記載の植物栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−98988(P2010−98988A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272291(P2008−272291)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(508189441)ナサコア株式会社 (11)
【Fターム(参考)】