説明

プラント洗浄方法,アスベスト除去方法および解体処理方法並びにミスト発生機

【課題】 プラント解体工事における高圧水での洗浄時に、プラント内部に付着・堆積した残留汚染物を簡単かつ確実に除去できるようにする。
【解決手段】 高圧水での洗浄に先だって、プラント内に薬液ミストを充満させ所定時間放置する。このミストは希硫酸または水酸化ナトリウムを混合してなり、プラント内壁の付着汚染物を好ましく分解する。プラント内部には小型の送風機を設置して、微弱な出力でプラント内のミストを対流させる。薬液ミストにはさらに着色料を混合して、作業員がミストに暴露するのを防止するとともに、高圧水での洗浄漏れが生じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント解体処理における解体対象プラントの内部洗浄方法に関し、特に、高圧水で洗浄する前に予めプラント内に薬液ミストを充満させ残留物を剥落させ易いようにした洗浄法およびミスト発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば焼却炉プラントの解体工事では、解体時に周辺環境への汚染物質の飛散を防止すべく、長年の運用により焼却炉や煙道などに付着・堆積したダイオキシンや鉛等の有害物質を十分に除去し洗浄してから実際の解体を行うことが義務づけられている。この洗浄工程は、定められたマニュアルやガイドラインに則り、人力または吸引ホース等で残渣汚染物を回収した後に、汚染エリアに作業員が実際に入り高圧水を吹き付けて洗浄するか、汚染エリアに高圧水の噴射ノズルを入れて洗浄する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年アスベスト(石綿)による健康被害が問題となっており、内壁にアスベストを施したプラントの解体時にはアスベストを飛散させないよう事前に確実に除去する必要がある。また、プラントの運用を継続する場合であってもアスベストを放置するのが危険であり、アスベスト除去作業を実施することが積極的に行われている。このような工法では、アスベストを除去する前に作業員がプラント内に入り、スプレーノズルを持って全面に飛散防止剤を吹き付けて、後の除去工程で飛散しないようにすることが求められている。
【特許文献1】特開2004−316962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラント洗浄工程において例えばプラント内部が複雑な形状であったり高さや広さのある場合、作業員が高圧水を直接的かつ効果的に吹き付けられない箇所が生じ、汚染物が残ってしまう場合があった。また、例えば燃焼設備の場合は長年に亘り燃焼と冷却を繰り返し、強固に性状の安定したクリンカ等がこびりつき、高圧水を吹き付けただけではこれらのクリンカ等が剥落せず十分な洗浄ができないという不都合があった。このため、洗浄が不十分にも拘わらずプラントが解体されて搬出され、汚染物質が外部に飛散する可能性があった。
【0005】
また、アスベスト除去工法においてプラントが広い場合も作業員がスプレーノズルを持ってプラント内全面に飛散防止剤を吹き付けるのは多大な手間がかかり、また飛散防止剤の吹き付けにムラが生じうるため飛散防止が不十分でない箇所が生じる可能性がある。また、煙突の内壁にアスベストが施されているような場合、上の方はスプレーノズルが届かず飛散防止剤を吹き付けられないという問題があった。
【0006】
本発明はこの点に鑑みなされたものであり、高圧水での洗浄やアスベスト除去に先だって、プラント内に薬液ミストを充満させ所定時間置くことにより、薬液ミストが付着残留物に染み込んで後の洗浄工程で剥落し易くなるよう、あるいはアスベストに満遍なく飛散防止剤を行き渡らせる工程を備える方法およびプラント解体処理方法並びにこれに用いるミスト発生機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラント内の残灰や金属粉等の残留物を回収する工程と、前記プラント内にミストを充満させ所定時間放置する工程と、その後前記プラント内壁に高圧水を吹き付けて洗浄する工程とを備えることを特徴とするプラントの洗浄方法に関する。
【0008】
前記ミストが酸性またはアルカリ性の薬液を含むことが望ましい。
【0009】
また、前記ミストが着色料を含むことが望ましい。
【0010】
また本発明は、内壁にアスベストを施してなるプラント設備のアスベスト除去方法において、前記プラント内に飛散防止剤を混入したミストを充満させ所定時間放置する工程と、その後前記プラント内を負圧に保ちアスベストを除去する工程とを具えることを特徴とする。
【0011】
前記プラント内にミストを充満させる工程は、前記プラント内で送風機を動作させ前記ミストを対流させる工程を備えることが望ましい。
【0012】
また本発明は、上記の工程を備えることを特徴とするプラント解体処理方法に関する。
【0013】
また本発明は、上記の方法に用いるミスト発生機であって、少なくとも液体タンクの内壁がステンレススチールで構成されていることを特徴とするミスト発生機に関する。
【0014】
このミスト発生機において、噴射ノズルの高さが少なくとも地上高約3mまで伸長可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラント洗浄方法では、プラント内を高圧水で洗浄する前段階で、プラント内にミストを充満させ所定時間放置する工程を備えるため、当該ミストがプラント内壁の付着物に染み渡り、後に吹き付けられる高圧水で落ちやすくなる。したがって、この洗浄方法によれば確実に汚染物質を洗浄除去することができ、プラントを安全に解体できるとともに周辺環境の汚染を確実に防ぐことができる。
【0016】
また、このミストに希硫酸や水酸化ナトリウム等の薬液を含めることにより、プラント内に付着しているダイオキシンや金属等を分解して落ちやすくすることができる。このような構成により、高圧水が直接吹き付けられないような箇所であっても、その上から水を流すようにするだけで汚染物を洗浄することができ、プラントを安全に解体して撤去することができる。
【0017】
また、ミストに着色料を含めると、ミスト工程によりプラント内壁が着色されることとなる。これにより、高圧水を吹き付ける作業員が薬液ミストの付着した箇所に触れないようにしたり、高圧水による洗浄が不十分な箇所を容易に把握できるようになる。
【0018】
また本発明のアスベスト除去方法によれば、プラントが広い場合にもすべて均一に飛散防止剤を噴霧できるため、飛散防止剤のムラが生じることがない。また例えば煙突などの高さのあるプラントであっても好適にムラ無く飛散防止剤を付着させることができる。
【0019】
また、ミスト噴霧時にプラント内の空気を対流させ、ミストがプラント内にくまなく行き渡るようにすると、後に高圧水を吹き付けたときに汚染物が落ちにくい箇所がなくなり、確実に除染して安全にプラントを解体することができる。
【0020】
また、ミスト発生機の液体タンク内壁をステンレススチールで構成すると、薬液による腐食、劣化が防止されミスト発生機の耐久性を向上させることができる。また、このミスト発生機の噴霧ノズルを伸長可能とすると、例えば焼却炉の煙突など高さのあるプラントにおいて高い位置から好適にミストを噴霧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のプラント洗浄方法に用いるミスト発生機の一実施例を示す概略斜視図である。本図に示すように、ミスト発生機1は、ステンレススチールでなる液体タンク3と、上方向に伸長可能な支柱4と、支柱4の頂部に取り付けられた噴霧ノズル5と、液体タンク3等を載置する台車部6とを備えている。液体タンク3から噴霧ノズル5には液体およびエア用ホース7が伸びている。このホース7は支柱4の周りを螺旋形に取り巻いており、支柱4を伸長した場合にも十分に対応しうる長さを有する。支柱4は伸長式であり、噴霧ノズルを地上高約1m〜2.5m、好ましくは3m以上の高さまで配置することができる。噴霧ノズル5はスプレー式の噴霧器であり、例えばノズル口を4つまで増設して同時に四方にミストを噴霧することができる。噴霧量は約1〜17L/hの間で設定可能であり、ミストの粒子径は約7〜11μmである。このミスト発生機1は予め開始時間と終了時間をセットすることによりタイマ動作が可能である。このようなミスト発生機1は市販の噴霧器の液体タンク3をステンレススチール製に変更して用いることができ、噴霧ノズルや制御タイマの構成等は公知であるため詳細な説明は省略する。なお、噴霧方式はスプレー式に限らず、気化式や超音波式であってもよい。
【0023】
このミスト発生機を用いたプラントの洗浄方法および解体処理方法を以下に説明する。図2は、本発明の適用対象の一例としての焼却炉設備の解体現場の構成を示す図である。図に示す焼却炉解体設備は大別すると、閉塞され負圧に維持される作業現場10と、作業現場10の出入口に設けられる準備室20とを備えている。
【0024】
解体対象となる焼却炉施設は屋内部分11と屋外部分12とがあり、これ全体を気密可能に閉塞して作業現場10を構成する。すなわち、屋内部分11を取り囲む建屋には開口部や窓等の隙間部分を防炎シートと目張りテープとを用いて閉塞するとともに、屋外部分12についてはこれを内包するように養生設備を組み上げる。この養生設備は金属パイプで梁枠を組み立て、出入口など必要な部分を残して防炎シートを張り渡し、隙間を目張りテープで閉塞して構成する。天井も同様にして焼却炉の屋外部分12を外部から遮蔽するように作業現場10を組み上げる。ただし、作業現場10は作業現場内部と外部を仕切って解体作業中に発生する粉塵を外部に飛散させない程度の遮蔽性があればよく、後述する負圧機により内部をある程度の負圧に維持できる機密性を備えていれば、すべての隙間を完全に密閉することまでは要求されない。なお、高い煙突は開口部をシート等で閉塞して先に解体しておき、低くした後に作業場10を組み上げてもよい。
【0025】
作業場10には負圧機13が設けられている。負圧機13は作業場10の外部に配置される排気装置であり、その吸気口が作業場10内に導入されている。この負圧機13はガイドラインに則りプレフィルタ,チャコールフィルタ,ヘパフィルタの組み合わせを備え、1時間あたり作業場10の容積の4倍に相当する空気を排気する出力で動作する。負圧機13を動作させると作業場10の空気が吸い出され、作業場10が一定の負圧に維持される。この場合にも様々な隙間から作業場10に空気が流入するため、作業場内が酸欠状態になるようなことはない。また、解体作業においては粉塵の飛散を防止する、あるいは高圧水による洗浄等のため多量の水が用いられ、これらが地中に入ると環境汚染の原因となり得るため、床面には防水シートの敷設その他の防水処理が施される。
【0026】
解体対象となる焼却炉は現場によって異なるが、例えば図2に示す焼却炉は煙道61、洗煙シャワー62、サイクロン63、誘引送風機64、煙突65、焼却炉本体66、灰出設備67、汚水処理施設68を備えており、これらすべての要素について、残留している残灰その他の堆積物を除去し、内部を洗浄してから解体する必要がある。
【0027】
作業場10の出入口には準備室20が設けられる。準備室20には作業員が作業中についた残灰等を落とすためのエアシャワーやオートマット、作業員が防護服を着脱する更衣室、その他防護服やマスク等が用意された棚類、廃棄物集積容器やテーブルなどが配設されており、図2に示すように二部屋以上に別れていてもよい。各部屋および外部への通用口は戸で仕切られており、作業場10が直接外部に開口することがないよう配慮されている。
【0028】
残灰その他の堆積物の除去は、防護服を着用した作業員の手作業あるいは適宜の吸引装置を用いて実施される。ここで回収された残灰等はフレキシブル・コンテナ(通称フレコンバック)に詰められ廃棄物処理場へと搬出される。その後に高圧洗浄水を導入して各設備の洗浄を行うが、本発明の方法では、その前に洗浄対象設備へのミスト噴霧工程を備える。
【0029】
ミスト工程では、作業対象プラントの点検口等からミスト発生機1を導入して、プラント内部に大量の酸性またはアルカリ性のミストを充満させ、所定時間放置する。これに先立ち、酸またはアルカリ水の漏洩を防ぐため、点検口の周囲に防液堤を設置する。また、薬液が設備の系外へ飛散しないよう養生設備を今一度点検することが望ましい。なお、上述のように、作業場の床に防水シートを敷設した状態で作業を行うものとする。
【0030】
次に、ミスト発生機1の薬液タンク3に所定の薬液を20〜40L入れる。この薬液は作業対象プラントまたはその内部の付着物によって適宜決定されるが、例えばクリンカや錆、耐火煉瓦素地、金属表面といった環境に対しては希硫酸を用い、油分が付着しているプラントには水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の水溶液を用いる。薬液の作成に際し、MSDS(化学物質安全性データシート:Material Safety Data Sheet)にて性状を確認し、事前に作業手順を確認するようにする。この薬液作成作業はエアーラインマスク着用で実施するものとする。さらに、薬液の希釈後に食紅等の着色料を水溶液に対し1〜5%程度添加する。なお、薬液の希釈またはミスト噴霧中およびその放置時間の間は作業場10に設けた負圧機13を停止し、現場に立ち入り禁止とする。
【0031】
次に、ミスト発生機1をプラント内部の中央に置き、外部コンプレッサ(図示せず)からのエア配管を接続する。この際、ミスト発生機1の支柱4を伸ばして噴霧ノズル5を適宜の高さにセットする。ここで、ノズル5の高さはプラント内部の高さの半分以上上側となることが望ましい。また、ミスト発生機1全体が洗浄対象プラントの点検口等から入らない場合は、噴霧ノズル5が本体部に対して着脱可能なミスト発生機を用い、噴霧ノズル5のみを設備内部に配置する。同時に、小型の送風機8をプラント内部に設置して、微弱な出力(例えば、10〜60m/min)で内部の空気を対流させる。器材を導入した点検口を閉塞してからミスト発生機1を動作させ、ミストを発生させる。噴霧時間は1mあたり3〜15分程度とし、予めセットすることによりタイマ動作させるものとする。ミスト発生中および停止後2時間はプラント内に立ち入り禁止とする。図2は、ミスト発生中のプラントの様子を示すイメージ図である。
【0032】
これにより大量に発生されるミストがプラント内部の隅々まで行き渡り、プラント内壁に付着した残留物に染み込んでその構造を脆くさせ、後の高圧水洗浄工程で容易に剥落できるようになる。なお、ミスト発生後の放置時間は最低1時間〜3時間程度とする。1時間より短い場合は未だ雰囲気中に多量のミストが残留しており作業員が薬液ミストに暴露してしまうため好ましくなく、3時間より長い場合は一端湿潤した付着物が再び乾燥して洗浄水で落ちにくくなる不都合がある。
【0033】
適切な時間放置した後、負圧機13を作動させ作業場ないしプラント内を負圧に維持し、図2に示すように、プラント内部に高圧洗浄水のノズル15を導入するとともに、プラント底部に吸引車50からの吸引ホースを設置する。化学防護服、保護帽、レベル3エアーラインマスク、化学保護手袋、化学防護靴を着用した作業員がプラント内部に入り、高圧水をプラント内壁に吹き付けて洗浄する。ここで、プラント内壁の付着物はミストにより脆くなっており、高圧水を吹き付けるあるいは水が上から流れることにより容易に剥落し、プラント内壁から除去される。着色ミストにより作業開始時にはプラント内壁がすべて着色された状態であり、作業員が高圧水で洗浄した部分から着色料が除去されることとなる。したがって、作業員は既に高圧洗浄した箇所とそうでない箇所を容易に識別することができ、確実かつ漏れのない洗浄作業を実施することができる。また、薬液ミストが付着している部分が容易に識別可能であるため、作業員が酸性またはアルカリ性の薬液に触れてしまうのを防止することができる。また、プラント内に入ったときに防護服の色を確認することにより、着色ミストが未だ雰囲気中に飛散しているか否かを確認することができる。防護服に色が着く程度であれば一旦外に出て、再び30分−1時間程度放置する。
【0034】
プラント底部に落下した排水は、吸引ホースから吸引車50で回収される。このとき、ある程度の高圧水を流してから吸引を開始し、噴霧した薬液が十分に希釈された状態で回収されるようにすることが望ましい。回収した排水は吸引車50ごと水処理プラントへ運搬し、そこで処理される。プラント内にてミスト発生機1や送風機8などの器材も高圧水で洗浄し、付着した薬液を落とすようにする。この洗浄工程が終了したら、必要に応じて乾燥期間を設けた後、プラントを解体して処理場へと搬出する。すべての設備について堆積物の除去・ミスト工程を含む高圧水洗浄・解体を終了したら、養生設備や準備室を撤去して、プラント解体処理を終了する。
【0035】
このように、薬液ミストをプラント内に充満させ、薬液をプラント内壁に堆積・付着した残留物に染み込ませてから高圧水洗浄を行うことにより、残留汚染物を簡単かつ確実に除去することができるため、作業労力が軽減されるとともに、作業員や周辺環境の安全を高度に維持したまま汚染プラントの解体処理を安全に実施することができる。また、ミストによりプラント内壁に付着した汚染物が湿潤するため、高圧水を吹き付けたときに灰が舞い上がったりするのが防止され、安全な環境で作業を行うことができる。
【0036】
本発明のプラント洗浄方法、プラント解体処理方法並びにこれに用いるミスト発生機について説明したが、本発明は上記実施例に限らず様々な変形例として実現することができる。例えば上記実施例では酸性またはアルカリ性の薬液ミストを用いているが、これは薬液を混合しない水を噴霧する構成であってもよい。薬液ミストを用いる場合より効果が少なくなるが、予め水ミストを噴霧してプラント内の付着物を湿潤させることにより、ミストの粒子が付着汚染物に染み込んでその構造を脆くさせ、高圧水により簡単に剥落させることが可能となる。また、ミスト発生機は上記構造のものに限らず、公知の様々なミスト発生機を適用しても良い。この場合でも薬液噴霧のため、少なくとも薬液タンクの内壁をステンレススチールで構成することが望ましい。洗浄対象となるプラント自体が小さかったり、内部へアクセスするための点検口等が小さな場合は小型のミスト発生機を用いてもよいし、上述のように本体とノズル部が一体型でないものを用いて、ノズル部のみをプラント内に設置するようにしてもよい。
【0037】
また、上記のミスト工程はアスベスト除去作業にも適用することができる。すなわち、アスベスト除去作業において実際の剥離作業の前にプラント内に適宜の飛散防止剤を入れたミスト発生機1を配置し、ミスト噴霧させる。この場合にも送風機8を設置して内部の空気が対流するようにする。飛散防止剤は市販の薬剤を用いることができるが、例えば酢酸ビニル等の樹脂やエマルジョンを含む適宜の飛散防止剤を用いることができる。これにより作業員がプラント内全面に飛散防止剤をスプレーで吹き付ける必要がなくなり手間を軽減できる。またプラント内の高い位置などにも満遍なく飛散防止剤を付着させることができるため、後の剥離工程にてアスベストの粉末が飛散するのが確実に防止される。この場合も2時間以上放置してから、負圧機を作動させプラント内を負圧に保った状態で、防護服を着用した作業員がプラント内部に入ってアスベストの剥落作業を行い、除去したアスベストを適宜の例えば密閉空間を具えるホッパ手段で吸引することにより回収し、処理場へ運搬する。
【0038】
図4は、洗浄対象プラントの種類、除去対象となる付着物の厚さに対する薬剤ミストの詳細の例を記載した一覧表である。本図に示すように、硬化したクリンカが付着している場合において、クリンカ層が3mm程度の場合は約5%濃度の希硫酸を1mあたり3分程度、合計3L程度噴霧し、クリンカ層が厚くなるに伴い噴霧量を増やしていく。同様に、錆、耐火煉瓦素地、金属表面、アスベスト(石綿)、油分が付着している場合などに、適宜の薬剤を用いて適宜の量を噴霧すると、高圧水による洗浄時に付着物除去硬化が飛躍的に向上することが判明している。なお、クリンカおよび錆の場合、出願人の実験により表に示す量以下では付着物除去効果が低減し、逆にこれより多くした場合にも設定量以上の効果が期待できないことが判明している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明にかかるプラントの洗浄方法および解体処理方法並びにミスト発生機は、建設業,焼却炉等を解体する解体工事業その他産業廃棄物処理業に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかるミスト発生機の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明のプラント洗浄および解体処理方法の施工現場の一例を示す図である。
【図3】ミスト発生時の様子を示すイメージ図である。
【図4】対象プラントに応じた使用ミストの詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ミスト発生機
3 液体タンク
4 支柱
5 噴霧ノズル
6 ホース
10 作業現場
13 負圧機
20 準備室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの洗浄方法であって、前記プラント内の残灰や金属粉等の残留物を回収する工程と、前記プラント内にミストを充満させ所定時間放置する工程と、その後前記プラント内壁に高圧水を吹き付けて洗浄する工程とを備えることを特徴とするプラントの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記ミストが酸性またはアルカリ性の薬液を含むことを特徴とするプラントの洗浄方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記ミストが着色料を含むことを特徴とするプラントの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、前記プラント内にミストを充満させる工程が、前記プラント内で送風機を動作させ前記ミストを対流させる工程を備えることを特徴とするプラントの洗浄方法。
【請求項5】
内壁にアスベストを施してなるプラント設備のアスベスト除去方法において、前記プラント内に飛散防止剤を混入したミストを充満させ所定時間放置する工程と、その後前記プラント内を負圧に保ちアスベストを除去する工程とを具えることを特徴とするアスベスト除去方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の工程を備えることを特徴とするプラント解体処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の方法に用いるミスト発生機であって、少なくとも液体タンクの内壁がステンレススチールで構成されていることを特徴とするミスト発生機。
【請求項8】
請求項7記載のミスト発生機において、噴射ノズルの高さが少なくとも地上高約3mまで伸長可能であることを特徴とするミスト発生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−51842(P2007−51842A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238247(P2005−238247)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(592101736)株式会社日本水処理技研 (9)
【Fターム(参考)】