説明

プラント監視制御装置

【課題】プラント監視制御装置において、プラント構成機器の予め操作禁止の機器および運転中に生じる操作すべきでない機器の操作禁止表示を画面上に行う。
【解決手段】プラント1の構成機器10a〜10cの運転中のプロセスデータを入力し、プラント1のあるべき状態と現状との比較をして機器の操作用、操作禁止の判断データを作成するとともに、予め入力された操作禁止対象機器のデータを前記判断データとともに出力するプラント運転支援装置3のデータを格納するデータベース4を参照する表示指令機能5が、画面7上に操作禁止対象機器を操作禁止と表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電プラントや火力発電プラント等におけるプラントの監視、運転制御を行うプラント監視制御装置に関するものであり、特にプラントを構成する例えばポンプやバルブ等の操作機器の内、運転操作すべきでない状態の機器、つまり操作禁止機器を画面上に表示する監視制御装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプラント監視装置において、被操作機器が操作禁止状態となる場合に、モニタ画面に写し出された被操作機器のシンボルに、操作禁止表示を重ね合わせて表示し、その操作機器が操作不能となる技術が示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平04−304799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に示された技術は、運転員が特定の操作機器を意図的に操作禁止状態とした場合や、操作機器が故障等によってインタロックされ自動的に操作不能となった場合について、各被操作機器が操作可能か否かの情報をモニタ画面から把握して誤操作を防止するものであるので、プラントの変化する運転状態において、機器の操作が可能か否かの表示がなく、操作可能であるが操作すべきでない機器を運転員が誤って操作してしまうといういわゆるヒューマンエラーの発生が起こり易いという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、プラント操作機器の運転状態のプロセスデータからプラント全体のあるべき状態を演算し現状との比較を行って、各操作機器毎に操作要、操作禁止を判断し、その結果を受けて画面に表示可能なプラント監視制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、プラントを構成する機器の操作状態を画面上に表示し、プラントの監視制御運転を行うプラント監視制御装置であって、プラント機器運転中のプロセスデータを入力し、プラントのあるべき状態と現状との比較をして機器の操作要、操作禁止の判断を行い、この判断データと予め入力されている操作禁止対象機器のデータとを出力するプラント運転支援装置と、このプラント運転支援装置の出力を格納する操作支援データベースを参照する表示指令機能とが設けられ、操作禁止と判断された機器および操作禁止対象機器が表示指令機能からの出力信号によって前記画面上に操作禁止と表示されるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、プラント機器運転中のデータから、プラントのあるべき状態と現状との比較をして、機器の操作要、操作禁止の判断を行うとともに、予め入力されている操作禁止対象機器のデータと前記判断データとを出力するプラント運転支援装置の出力を格納するデータベースを参照する表示指令機能からの出力信号によって、前記操作禁止と判断された機器および操作禁止対象機器が画面上に操作禁止と表示されるので、プラント運転継続中に判断される操作禁止の機器および定期検査中等における予め操作すべきでないとされている操作禁止対象機器を、プラント運転員が誤判断によって操作することを未然に防止できるという効果がある。またさらにプラント運転継続中に何らかの原因によって機器の操作を禁止しなければならない現象が発生した場合でも、速やかにその情報を入手、表示できるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、例えば原子力発電プラントのプラント監視制御装置100を示すブロック図である。構成要素とその機能を以下に説明する。
原子力発電プラント1に設置されている各種操作対象機器の運転許可、起動、運転停止等の運転情報は、機器の運転情報D/B2に格納されている。プラント運転支援装置3は図示省略した以下の各装置によって構成されている。すなわちプラント1に設置された各種センサで検出されたプロセスデータを入力するプロセス入力装置が送り出すプロセスデータをデータ収集装置が収集し、このプロセスデータをデータ保存装置内に時系列的に保存する。イベント検出手段は前記データ収集装置が収集したプロセスデータを監視し、各種操作機器の故障や運転状態の変化等のイベントを検出する。トレンドグラフ編集および運転情報出力手段は、前記イベントの検出に応じて対応する必要なデータを前記データ保存装置内から読み出してトレンドグラフを作成し、プラントのあるべき状態を演算する。このあるべき状態と現状とを比較して、プラント構成機器毎に正常、操作要、操作禁止の判断データを作成する。ここで操作要とは、前記トレンドグラフから、例えば冷却水流量を50M/Hから60M/Hに増加させることが必要な場合にポンプの操作要という判断データが作成されるものである。
このプラント運転支援装置3は、上記判断データとともに操作機器毎の運転情報(設定値、プロセス量、操作出力、自動/手動運転等)も出力する。なおこのプラント運転支援装置3には、プラントの定期検査期間中や運転停止中等における機器の操作禁止情報も入力されている。
【0009】
操作支援D/B4には、前記プラント運転支援装置3が出力する正常、操作要、操作禁止の判断データが入力され、操作機器番号順に「0」(正常)、「1」(操作要)、「2」(操作禁止)とする0、1、2の符号で格納される。当然前記定検中や停止中の操作禁止対象機器も「2」の情報として格納され、また上記運転情報(設定値、プロセス量他)も格納される。
【0010】
プラント運転員が操作対象機器の監視、運転制御を行うための、例えばパソコンの画面7上には、後述する表示指令機能5の出力信号によって図1に示すような系統図画面上にポンプP10a、バルブV10b、バルブV10c等の被操作機器がシンボル10a〜10cとともに表示され、またこれら被操作機器の運転許可/不許可、起動、停止、さらには図示省略した前記運転データやその他の各種データ、さらには前述した例えばポンプの出力増の具体的指令値も表示される。プラント運転員は画面を参照し、シンボル10a〜10cに対する運転許可/不許可、起動、停止のスイッチ11〜13にマウスやタッチセンサ等を用いてアクセスする。なお、以降この許可/不許可、起動、停止のスイッチ11〜13にアクセスすることを「スイッチを押す」という表現を用いることにする。
【0011】
操作器入力情報D/B8には、前記画面7に表示された操作器の操作された状態が格納される。このD/B情報でプラント1の機器が運転制御される。なお、「許可」情報は履歴として格納される。
【0012】
表示指令機能5は運転状態D/B2の許可情報を入力し画面7に許可の表示を行う信号を出力する。また操作支援D/B4を参照して対象となる機器の起動もしくは停止という「1」の操作要の場合に、画面7上の許可スイッチ11が薄いグレー色で光ることが可能なよう信号を出力する。
また「2」操作禁止の場合には、操作禁止と画面上に黄色表示を行うよう信号出力する。
【0013】
操作器情報入力機能9は、操作された起動12、停止13の情報を入力し、前記操作器入力情報D/B8に格納する。また、許可状態11であることは前記運転情報D/B2に格納するが、不許可状態の場合には格納してない。
【0014】
次に画面7に表示されるまでの処理を図2によって説明する。
ST1でプラント1の各種操作機器の情報、例えばポンプP10aの起動/停止、バルブV10bの開/閉等の運転状態が、運転情報D/B2に格納される。ST2でプラント運転支援装置3がプラント各機器から入力するデータを基にプラント機器のトレンドを含むあるべき状態を演算し、その結果と現状のデータとを比較して、各機器の操作の要否、および操作要の場合の具体的数値、例えば冷却水流量現状の50M/Hを60M/Hに増加させるような判断、あるいは操作禁止の判断も行い、以上の情報を操作支援D/B4に前記した正常、操作要、操作禁止を示す「0」、「1」、「2」として機器番号順のテーブルに格納する。ST3で表示指令機能5は、運転状態D/B2の許可/不許可の信号を入力し、画面7に許可の場合には、許可11を薄いグレー色で表示する。ここで不許可とは、起動スイッチ12、停止スイッチ13の投入ができない状態であり、許可スイッチ12が許可状態時に許可スイッチ12を押すと不許可状態に移行する。
【0015】
ST4で表示指令機能5は、操作支援D/B4からの情報を参照し、ST5の「1」操作要の場合画面7上のシンボル10a〜10cの該当するものを赤色にフリッカさせ、また操作の具体的表示、前述した流量50M/H→60M/Hに上昇等の表示も行う。ST6の「0」正常の場合には概当するシンボルを薄いグレー色等の通常表示が継続して行われる。一方、ST7の「2」操作禁止の場合、操作禁止の表示を概当する機器と共に黄色に表示する。
【0016】
以上のような表示が画面7に表示されるが、次にプラント運転員が画面7を参照して、操作対象機器であるポンプP10aをパソコン7によって操作入力する処理を図3によって説明する。
ST1において運転員は画面7に表示されている許可11の点灯状態を確認する。許可スイッチ11が光っていなく不許可状態であればST2で許可スイッチ11を押すことで許可状態となりST3に移行する。ST1で許可11が薄いグレー色で光っているつまり許可可能状態の場合ST3に移行する。ST3では操作支援D/B4を参照して「0」「1」「2」のいずれかであるかを判定する。「2」の場合、ST4で操作禁止が対象機器とともに表示される。「0」正常あるいは「1」操作要の時には操作機器の操作を行ってもよい状態でありST5で画面7上の許可スイッチ11が薄いグレー色でフリッカする。一方ST3で「2」操作禁止の場合は、「操作禁止」の黄色表示が対象機器のシンボルとともに画面7になされる。ST6で操作支援D/B4を参照して、ポンプP10aの操作(起動、停止)の判定し、ST7では「起動」、ST8では「停止」のスイッチを押す。この起動スイッチ12が押されると赤色にフリッカする。ST9ではその結果が操作器入力情報D/B9を介し、操作器入力D/B8に入力される。この場合「許可」の情報は操作器入力D/B8および運転状態D/B2に履歴として格納される。
【0017】
以上のとおり、プラント運転支援装置3がプラントプロセスのデータを入力しプラント全体のトレンドを含むあるべき状態を演算した結果をもって「0」正常、「1」操作要、「2」操作禁止情報を出力し、それに基づいて表示指令機能5を介して画面7に表示されるので、運転員のプラント操作の信頼性が向上する。また操作機器が操作可能な状態であっても、プラント運転支援装置3のデータ演算により「操作禁止」と判断された結果や、定期検査中の操作禁止機器が画面7に表示されるので運転員の誤判断による操作禁止機器の運転を防止できる。さらにプラント運転支援装置3のデータ演算によりプラント運転中の何らかの原因により重大事故を誘発するような機器トラブルの予兆現象も操作禁止と出力されることによって感知することもでき、より安全性を備えたプラント監視制御装置となる。
【0018】
実施の形態2.
実施の形態2を図4に基づいて説明する。
図に示すように操作支援D/B4には、プラント運転支援装置3が出力する操作対象機器の「0」「1」「2」すなわち「正常」「操作要」「操作禁止」を裏付ける情報である原因あるいは理由のHELP情報データが格納されている。このHELP情報が表示指令機能5を介して画面7に表示される。従って、運転員がこの画面表示によって「操作要」または「操作禁止」の原因、理由を知ることができ、誤判断の予防向上、さらには的確な判断が可能となる。
【0019】
実施の形態3.
実施の形態3は、操作器表示機能5に許可スイッチ11の自動変換機能を設けたものである。この自動変換機能とは、運転員の手動により許可スイッチ11が押されてから所定の時間経過後に自動的に不許可と薄いグレー色にフリッカ点灯表示となるものである。このような機能を設けた理由は、許可スイッチ11を許可状態のまま長時間経過すると、画面7の起動スイッチ12や停止スイッチ13に何らかの物体や人、昆虫等の予期しないものが接触して、その時点に操作可能な操作機器の起動や停止等の誤操作が生じる可能性を防止したものである。このような機能を有することによる偶然の誤操作に伴う重大事故発生が未然に防止可能となる。
【0020】
実施の形態4.
実施の形態4を図5に基づいて説明する。表示指令機能5は、機器運転D/B2から許可状態の機器を参照し、起動スイッチ12を押された操作機器、この場合ポンプP10aを画面7の系統図画面上に点線で囲む表示を指令している。このように操作対応機器を画面上で点線で囲んでいるので運転員による操作確認がより確実に行うことができ誤操作をより防止可能となる。なお対象機器のポンプP10aを点線で囲む例を示したが、機器が動作していることを示すような他の表示方法、例えば赤色フリッカ等、運転員の注意をうながすものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、原子力、火力等の発電プラントや鉄鋼、水処理プラント等のプラント監視制御装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1のプラント監視制御装置を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の表示のフロを示す図である。
【図3】実施の形態1の機器操作入力処理フロを示す図である。
【図4】実施の形態2のプラント監視制御装置を示すブロック図である。
【図5】実施の形態3のプラント監視制御装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 プラント、3 プラント運転支援装置、4 操作支援データベース、
5 表示指令機能、7 画面、10a〜10c プラント構成機器シンボル、
11 許可スイッチ、12 起動スイッチ、13 停止スイッチ、
100 プラント監視制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する機器の操作状態を画面上に表示し、プラントの監視制御運転を行うプラント監視制御装置であって、前記プラント機器運転中のプロセスデータを入力し、プラントのあるべき状態と現状との比較をして機器の操作要、操作禁止の判断を行い、この判断データと予め入力されている操作禁止対象機器のデータとを出力するプラント運転支援装置と、このプラント運転支援装置の出力を格納する操作支援データベースを参照する表示指令機能とが設けられ、前記操作禁止と判断された機器および操作禁止対象機器が前記表示指令機能からの出力信号によって前記画面上に操作禁止と表示されることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項2】
前記プラント運転支援装置はHELP情報を出力するとともに、前記操作支援データベースには前記HELP情報が格納されており、前記表示指令機能からの出力信号により前記HELP情報も前記画面上に表示されることを特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御装置。
【請求項3】
前記画面上には、前記プラント構成機器の操作の許可状態を点灯表示する許可スイッチと、機器の起動スイッチが設けられており、前記許可スイッチがマニュアルにより許可と押された後に所定の時間経過すると、前記プラント構成機器の操作を不許可と点灯表示に変える自動変換機能が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御装置。
【請求項4】
前記画面上には、プラント系統図が表示され、前記起動スイッチが動作すると前記プラント系統図画面上に、対応する機器が動作していることを示す表示がなされていることを特徴とする請求項3に記載のプラント監視制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−265856(P2009−265856A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113267(P2008−113267)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】