説明

プリクーラを備えたターボファン

本発明はプリクーラを備えたターボファンに関し、加熱冷気流(24)を排出するため、少なくとも1つの排出管(25)が室(12)に配置されており、プリクーラ(18)を、排気ノズル(3)の出口で、少なくとも多少翼(16)と対向して、内側フェアリング(10)に設けられた少なくとも1つの排出オリフィス(26)に連結することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリクーラを備えた、バイパス・タービン・エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機では、操縦室あるいは乗客室での空調のようなある種の作用を行なうため、あるいは航空機のある部分を除氷するため熱気を得る必要があることは既知である。
【0003】
上記の熱気は航空機のターボジェット・エンジンから取られ、使用できる前にかなり冷却されなければならないことも既知である。このため、一般にはプリクーラとして知られている、熱交換器が設けられており、この熱交換器では、ターボエンジンの中央発生器から出された熱気はファン・ダクトからの冷気により冷却される。
【0004】
勿論、この熱交換処理中、上記の中央発生器から出された熱気がファン・ダクトの冷気により冷却されるだけでなく、この冷気は上記の熱気により加熱される。よって、この加熱された冷気を外側に排出することが必要である。
【0005】
一般に、この加熱された冷気は、風よけ構造体の先縁の前方の、エンジンを支持しているパイロンの上方部分の外側に排出されるため、航空機の抗力を増加させ乱気流および空力学的乱流を生じることになる。
【0006】
この欠点を回避するため、加熱された冷気を、中央熱気流発生器とファン・ダクトの内側フェアリング(流線型の覆い)との間に形成された、断面環状の室に排出することが提案されている(特許文献1)。そして、この室には上記の冷気流に向けられた少なくとも1つの噴射オリフィスが開けられている。然し、このような構成は、熱気流発生器の熱調節を乱し、それ故タービン・エンジンの磨耗を加速する危険を有する。
【特許文献1】米国特許第5,729,969号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来例の上記の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明によれば、航空機のバイパス・タービン・エンジンは、
− 前方に空気入り口を、後方にジェット・パイプを備えた、長手方向軸を有する中空ナセルと、
− 上記のナセルの軸方向に位置する中央熱気流発生器と、
− 上記の中央発生器の前方で上記のナセルに位置し、上記のタービン・エンジン用に冷気流を発生できるファンと、
− 上記のナセルの内側に保持された外側フェアリングと、上記の中央発生器を囲む内側フェアリングとで構成され、その間に断面環状の上記冷気流用のファン・ダクトを形成し、上記の内側フェアリングは、上記の中央発生器と共に、上記の中央発生器を囲むようにして断面環状の室を形成し、
− 上記の中央発生器から出る熱気流と上記の冷気流からでる冷気流とを受け、空調あるいは除氷のような作用を航空機内で行なうための冷却された熱気流を生じさせ、同時に加熱された冷気流を生じるプリクーラとからなり、
上記の加熱された冷気流を排出するため、上記の室に位置し、上記のプリクーラを、上記のジェット・パイプがそこを通ってナセルを出てゆく、上記の内側フェアリングに作成された少なくとも1つの排出オリフィスに連結し、少なくともほぼ上記の翼に向けて上方を向いている少なくとも1つの排出管を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明によれば、上記の加熱された冷気は、上記のタービン・エンジンからその出口で、よって乱気流および空力学的乱流を生じることなく、およびファン・ダクトの内側で上記の冷気流を乱すことなく、これに排出されると同時に、上記の中央熱気流発生器の熱調節を中断することなく、上記の排出管によって上記の室内の雰囲気から分離される。
【0010】
更に、上記の排出オリフィスはタービン・エンジンの上方領域に在り、その領域には意図して如何なる装置も置かれてなく、タービン・エンジンの火が上記のサスペンション・パイロンを通って航空機の翼に広がるのを防いでいる。よって、上記の排出管は少なくとも部分的には上記の室の上方部分に収容されているのが望ましい。また、タービン・エンジンに火がついても、このタービン・エンジンの上方領域に上記の加熱された冷気排出管を位置することにより状況を悪化させるものでもない。いずれにせよ、この排出管は上記のタービン・エンジンの高温に耐えれる、耐火材、例えばセラミックで作製されるのが望ましい。
【0011】
通常のように、上記のプリクーラは、又、上記のタービン・エンジンの上方部分に配置させてもよいが、上記の排出管により、上記のタービン・エンジンの多数のその他の異なる位置に収容してもよい。
【0012】
例えば、既知の方法で、上記のプリクーラはファン・ダクトに配置してもよく、するとファンからの冷気流に浸入し、この冷気流の直接の作用を受ける。これに代えて、冷気流のいくらかを上記のプリクーラに運ぶ掬い具を設けてもよい。この代替の形態によれば、制御弁を上記の掬い具と上記のプリクーラとの間に配置することができ、冷却された熱気流の温度が、冷気がプリクーラに入るのを調節することにより少なくとも部分的に調節されるので、特に望ましい。
【0013】
もう1つの実施例では、上記のプリクーラは中央発生器を囲む室に配置してもよい。この場合、冷気流を上記のプリクーラに運ぶため、少なくとも1つの流出管が設けられている。この流出管は少なくとも1部は上記の室に配置されており、上記のプリクーラを、上記の内側フェアリングに作成された流出オリフィスに連結し、そこで、この流出オリフィスに冷気を上記の冷気流から取り出すための掬い具を設けることが望ましい。
【0014】
このような実施例は、制御弁を上記の流出管に取り付けることができ、冷気を上記のプリークーラに入れることにより熱気流の温度を少なくとも部分的に調節することができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付の図面により発明がどのように実施されるかが簡単に理解できる。これらの図中、同一符号は同一要素を示す。
図1、3及び4の各々に示されているバイパス・タービン・エンジンは前部に空気入り口2、後部にジェット・パイプ3を備えた、長手方向軸L−Lを有する中空ナセル1からなる。この中空ナセル1はその内部に、上記のタービン・エンジンの内部ノイズ(騒音)を軽減するようになされた騒音軽減コーティング5で少なくとも部分的に被覆されるのが好ましいフェアリング4を保持する。
【0016】
上記の中空ナセル1に配置されるのは
− 既知の方法で、低圧・高圧圧縮機と、燃焼室と、低圧・高圧タービンとからなり、上記のタービン・エンジンの軸方向熱気流7を生じさせる中央熱気流発生器6と、
− 上記の中央発生器6の前方に位置し、上記のタービン・エンジン用の環状冷気流9を生じさせるファン8と、
− 上記の中央発生器6を囲む内側フェアリング10であって、これと中央発生器のケーシング11との間に、中央発生器を囲む、断面環状の室12を形成するものである。
【0017】
上記の内側フェアリング10と、その外側のフェアリング4とはその間に、上記の中央発生器6を囲む断面環状のファン・ダクト13を形成し、これを通って冷気流9が流れる。
【0018】
内側フェアリング10と中央発生器6との間で、その前方には環状空気入り口スロット14が、後方には、環状空気排出スロット15が形成されている。よって、冷気流9から出た冷気流(f)は前方スロット14で室12を押し流れ、後方スロット15で熱気流7に排出され、この冷気流(f)は中央発生器6の温度調節をなす。
【0019】
更に、通常の方法で、ナセル1は、サスペンション・パイロン17を介して航空機(部分的のみ描写されている)の翼16により支持されている。
【0020】
図1に示されている本発明の実施例では、プリクーラ18が設けられており、このプリクーラ18はファン・ダクト13の上方部分13Sに配置されている。このプリクーラ18には、熱気制御バルブ21が在るパイプ20により中央発生器6から熱気が供給される。プリクーラ18から生じた、冷却された熱気22は、サスペンション・パイロン17を通り、制御バルブ23Vを備えたパイプ23を通って使用者用装置(図示略)に送られる。プリクーラ18から生じた、加熱された冷気24はその1部が、排出管25により、ジェット・パイプ3の出口で冷気流9に排出される。この排出管25は断面環状の室12に位置し、プリクーラ18を、上記のジェット・パイプ3の後ろで、内側フェアリング10に作成された排出オリフィス26に連結し、少なくともほぼ翼16およびパイロン17に向け、即ち上記の内側フェアリング10の上方部分で上方を向いている。
【0021】
パイプ25は、高温に耐えれる耐火材、例えば、セラミックで作製され、室12の上方部分12Sに完全に位置するのが好ましい。
【0022】
プリクーラ18は図2に描写されている既知の構造を有する。この図2の例では、プリクーラ18は、熱交換用管の集合体27からなり、パイプ20により熱気が共通に供給され、上記の集合体27を通過する冷気流9により冷却される。上記の熱交換用管は共通にパイプ23に連結されており、このパイプ23を通って冷却された熱気流22が流れる。
【0023】
上記の熱交換用管の集合体27は、例えば、ボートの船首の形を有し、後方が隔壁28により閉鎖され、キャビティ(空洞)29を形成する。このキャビティ29に、上記の集合体27を通過し、熱交換用管により加熱されて、加熱された冷気流4を形成する、冷気流9の1部が浸入する。冷気流24を排出するパイプ25はキャビティ29を、その開口部30を介して連通し、冷気流24を、室12の上方部分12Sを介してオリフィス26まで運ぶ。
【0024】
図3により示されている本発明の実施例では、符号1から12、12S、13S、13から17、19から26を有し、図1に関して上記に記載されている全ての要素が再度みられる。図1の実施例と比較して、プリクーラ18はプリクーラ31と換わっており、その例は図5に示されている。加えて、ファン8側には、冷気流9の幾らかを取り出し、制御バルブ34を備えたパイプ33に沿ってプリクーラ31に運ぶ掬い具32が在る。
【0025】
図5の例では、プリクーラ31は、熱交換用管の集合体35からなり、これらの熱交換用管には、パイプ20により熱気19が共通に供給され、掬い具32によりすくい上げられ、パイプ33により運ばれる冷気流9の1部により冷却される。上記の集合体35の熱交換用管は共通にパイプ23に連結されており、このパイプ23を通って冷却された熱気流22が流れる。
【0026】
上記の熱交換用管の集合体35は、囲い36の1つの壁を形成し、この囲い36に、上記の集合体35を通過し、加熱された冷気流4を形成する、掬い具32によりすくわれた冷気流9の1部分が浸入する。冷気流24を排出するパイプ25は囲い36を、その開口部37を介して連通し、冷気流24を、室12の上方部分12Sを介してオリフィス26まで運ぶ。
【0027】
図4により示されている本発明の実施例では、符号1から12、12S、13S、13から17、19から26を有し、図1に関して上記に記載されている全ての要素が再度みられる。この実施例では、バルブ21と23Vが省略されているが、在ってもよい。加えて、図1の実施例と比較して、ファン・ダクト13の上方部分13Sに収容されているプリクーラ18は、室12の上方部分12Sに収容されているプリクーラ31と換わっており、このプリクーラは図5のプリクーラ31と類似のタイプのものでもよい。
【0028】
室12の上方部分12Sに位置する流出管39はプリクーラ38を内側フェアリング10の前方部分に作成された流出オリフィス40に連結する。上記の流出オリフィス40には掬い具41が設けられており、よって、オリフィス40を通って、掬い具41によりすくいあげられた冷気流9の1部がプリクーラ38に運ばれて、熱気流19を冷却して冷却された熱気流22と加熱された冷気流24とを生じる。冷気流24は、パイプ25を介してプリクーラ38から排出され、このパイプ25がオリフィス26までそれを運ぶ。
【0029】
制御バルブ42が流出管39に取り付けられていて、冷気の取り入れ、よって冷却された熱気流22の温度を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るバイパス・タービン・エンジンの第1実施例の軸方向略断面図である。
【図2】図1のタービン用のプリクーラの例を示す略斜視図である。
【図3】本発明によるタービン・エンジンの代替形態の図1に類似する図である。
【図4】本発明によるタービン・エンジンの異なる代替形態の図1に類似する図である。
【図5】図3および4のタービン・エンジンのプリクーラの例の略斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…中空ナセル、2…空気入り口、3…ジェット・パイプ、4…外側フェアリング、6…中央熱気流発生器、8…ファン、9…冷気流、10…内側フェアリング、12…断面環状の室、12S…室の上方部分、13…ファン・ダクト、16…航空機の翼、17…サスペンション・パイロン、18・31・38…プリクーラ、19…熱気流、20…パイプ、22…冷却された熱気流、・21・23・34・42…制御バルブ、24…加熱された冷気流、25…排出管、26…排出オリフィス、32・41…掬い具、39・40…流出管、49…流出オリフィス、。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のバイパス・タービン・エンジンであって、サスペンション・パイロン(17)を介して航空機の翼(16)から吊るされていて、
− 前方に空気入り口(2)、後方にジェット・パイプ(3)をそれぞれ備えた、長手方向軸を有する中空ナセル(1)と、
− 上記のナセル(1)の軸方向に位置する中央熱気流発生器(6)と、
− 上記の中央発生器(6)の前方で上記のナセル(1)に位置し、上記のタービン・エンジン用に冷気流(9)を発生できるファン(8)と、
− 上記のナセル(1)の内側に保持された外側フェアリング(4)と、上記の中央発生器(6)を囲む内側フェアリング(10)とで構成され、その間に、断面環状の上記冷気流(9)用のファン・ダクト(13)を形成し、上記の内側フェアリング(10)は、上記の中央発生器(6)とともに、上記の中央発生器(6)を囲むようにして断面環状の室(12)を形成し、
− 上記の中央発生器(6)から出る熱気流(19)と上記の冷気流(19)からでる冷気流とを受け、空調あるいは除氷のような作用を航空機内で行なうための冷却された熱気流(22)を生じさせ、同時に加熱された冷気流(24)を生じるプリクーラ(18、31、38)とからなり、
上記の加熱された冷気流(24)を排出するため、上記の室(12)に位置し、上記のプリクーラ(18、31,38)を、上記のジェット・パイプ(3)がそこを通ってナセルから出ている、上記の内側フェアリング(10)に作成された少なくとも1つの排出オリフィス(26)に連結し、少なくともほぼ上記の翼(16)に向けて上方を向いている少なくとも1つの排出管(25)を備えていることを特徴とするタービン・エンジン。
【請求項2】
上記の排出管(25)が少なくともその大部分上記の室(12)の上方部分(12S)に位置することを特徴とする請求項1に記載のタービン・エンジン。
【請求項3】
上記の排出管(25)が高温に耐えれる、耐火材で作製されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のタービン・エンジン。
【請求項4】
上記のプリクーラ(18、31)が上記のファン・ダクト(13)に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタービン・エンジン。
【請求項5】
上記のプリクーラ(18)が上記の冷気流(9)の直接の作用を受け、制御バルブ(21)が上記の熱気流(19)を上記のプリクーラ(18)に運ぶパイプ(20)に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタービン・エンジン。
【請求項6】
掬い具(32)が上記の冷気流(9)のいくらかを上記のプリクーラ(31)に運ぶために設けられており、制御バルブ(34)が上記の掬い具(32)と上記のプリクーラ(31)との間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタービン・エンジン。
【請求項7】
上記のプリクーラ(38)が上記の中央発生器(8)を囲んで上記の室(12)に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタービン・エンジン。
【請求項8】
上記の冷気流を上記のプリクーラ(38)に運ぶため、このプリクーラ(38)を、上記の内側フェアリング(10)に作成された少なくとも1つの流出オリフィス(49)に連結する少なくとも1つの流出管(39)が、上記の室(12)に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のタービン・エンジン。
【請求項9】
上記の流出管(40)に掬い具(41)が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のタービン・エンジン。
【請求項10】
制御バルブ(42)が上記の流出管(39)に設けられていることを特徴とする請求項8あるいは9に記載のタービン・エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−510304(P2009−510304A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531730(P2008−531730)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002091
【国際公開番号】WO2007/034050
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(506355257)エアバス フランス (117)