説明

プリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置

【課題】プリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置において、金型のつなぎ目による透過光の光量ムラを低減することができるようにする。
【解決手段】有機ELセル9の光出射側に配置されるプリズムシート7であって、一定形状を有する凹凸形状パターンが2次元的に配列された凹凸面7bを有するプリズム部7Aと、プリズム部7Aと反対の面に設けられ、有機ELセル9からの出射光を拡散する拡散粘着層7Bを備える構成とし、これをELパネル10および液晶パネル20に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)セルは、透光性基板上に、蛍光有機化合物を含む発光層を、陽極と陰極とで挟んだ構造を有する。
そして、陽極と陰極に直流電圧を印加し、発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより、励起子を生成し、この励起子の失活する際の光の放出を利用して発光に至る。
【0003】
従来、このような有機ELセルにおいて、発光層から射出した光線が透光性基板から射出する際、透光性基板上において全反射し、透光性基板から外部に取り出される光量が少なくなるという問題があった。
このときの光の外部取り出し効率は、一般的に20%程度と言われている。そのため、光量を増やすためには投入電力を増大させなくてならないという問題があり、投入電力の増大にともない、有機EL素子の負荷が増大し、有機EL素子自体の信頼性を低下させる問題があった。このため、有機EL素子の光出射側に微小プリズム等が配列された光学シートを設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、有機EL発光素子において、光の外部取り出し効率を向上させる目的で有機EL発光素子が配置された透光性基板の光の取り出し側に、微細な凹凸からなる光角度変換手段を設け、全反射による光量損失を低減する技術が提案されている。
光角度変換手段としては、微小レンズまたは微小プリズムを、透光性基板の一方の面に配列した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術では、透光性基板上に微小レンズまたは微小プリズムを形成する際、製造効率上、微小レンズまたは微小プリズムの形状を転写する金型を用い、樹脂成形によって微小レンズまたは微小プリズムを形成することが好ましい。
しかし、例えば、大画面の液晶表示装置などにおいてバックライトとして用いる有機ELセルなどの場合には、発光面積が大きくなるため、金型の面積より大きな領域に微小レンズまたは微小プリズムを成形しなければならず、成形された微小レンズまたは微小プリズムのパターンには、金型のつなぎ目が現れることになる。金型は加工時の工具が摩耗するため、加工始めに比べて加工終わりの金型面は加工精度が悪化する。このため、金型のつなぎ目の近傍では、透過光の光量が異なり、つなぎ目に対応する透過光の光量ムラとなって、照明の品位が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、金型のつなぎ目による透過光の光量ムラを低減することができるプリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、有機ELセルの光出射側に配置されるプリズムシートであって、一定形状を有する凹凸形状パターンが2次元的に配列されたプリズム部と、該プリズム部と反対の面に設けられ、前記有機ELセルからの出射光を拡散する拡散層を備える構成とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のプリズムシートにおいて、前記拡散層は、透過拡散光強度の半値角が13度以下の拡散性を有する構成とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のプリズムシートにおいて、前記拡散層は、光透過性微粒子と、該光透過性微粒子が分散された粘着性樹脂とからなる構成とする。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリズムシートにおいて、前記ブリズム部は、前記凹凸形状を転写するための金型面が形成された金型ロールを用いて形成され、前記拡散層の前記半値角が次式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリズムシート。
θd>Lc・α ・・・(1)
α=0.000167[度/m] ・・・(2)
Lc=Lw・Ld・π/Pc ・・・(3)
838[m]≦Lc≦301593[m] ・・・(4)
ただし、θdは前記透過拡散光強度の半値角[度]、Lw[mm]は前記金型ロール上の金型面の軸方向の長さ、Ld[m]は前記金型ロールのロール径、Pc[m]は前記金型ロールにおける周方向の切削ピッチを表す。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリズムシートにおいて、前記プリズム部の厚さが、25μm以上、1mm以下である構成とする。
【0012】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリズムシートにおいて、前記プリズム部は、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂からなる構成とする。
【0013】
請求項7に記載の発明では、ELパネルにおいて、透光性基板と、前記透光性基板の一方の面に設けられ、かつ陽極と陰極とに挟まれた発光層と、を有する有機ELセルと、前記透光性基板を挟んで前記有機ELセルと反対側に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載のプリズムシートと、を備える構成とする。
【0014】
請求項8に記載の発明では、液晶表示装置において、請求項7に記載のELパネルをバックライトとして備える構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプリズムシートによれば、拡散層を備えることで、金型を切削するバイトの磨耗により発生するプリズム部の形状バラツキによる視認角度による透過光量のバラツキを低減できるため、金型のつなぎ目による透過光の光量ムラを低減することができるという効果を奏する。
本発明のELパネルおよび液晶表示装置によれば、本発明のプリズムシートを備えるため、プリズムシートの金型のつなぎ目に起因する照明ムラが低減され、照明や表示の品位を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の液晶表示装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施形態のプリズムシートのプリズム部の模式的な斜視図、平面図、およびそのA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態のプリズムシートを製造する金型ロールの製造工程を示す模式的な工程説明図である。
【図4】切削の長さを説明するための模式図である。
【図5】工具の摩耗によるプリズム部の形状変化に伴う拡散光強度分布の例を示す模式的なグラフである。
【図6】本発明の実施形態のプリズムシートの作用を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例のプリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の実施形態の第2変形例のプリズムシート、およびELパネルの主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るプリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態の液晶表示装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。図2(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施形態のプリズムシートのプリズム部の模式的な斜視図、および平面図である。図2(c)は、図2(b)におけるA−A断面図である。
【0018】
本実施形態の液晶表示装置100の概略構成は、図1に示すように、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネル10、プリズムシート7、および液晶パネル20を備える。
【0019】
ELパネル10は、発光層2、透明電極3、陰極4、第1の透光性基板1A、および第2の透光性基板1Bからなる有機ELセル9と、プリズムシート7とを含んで構成されている。
【0020】
発光層2の一方の面(図示上側)には陽極である透明電極3が形成され、他方の面(図示下側)には陰極4が形成されている。
これら発光層2と透明電極3と陰極4とから発光構造体が構成されている。発光構造体としては、EL素子の発光構造体として従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
【0021】
発光層2は、白色発光層とすることもあり、或いは、青色、赤色、黄色、緑色などの発光層とすることもある。
発光層2を白色発光層とする場合には、透明電極3をITO(酸化インジウムスズ)、陰極4をアルミニウムや銀として、発光層2の構成を、透明電極3から陰極4に向かって、例えば、CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ/ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)/フッ化リチウム、という構成とすればよい。ただしこの構成に限定されるものではなく、発光層2から射出する光B0の波長をR(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることのできる適宜材料を用いた任意の構成を採用することが可能である。
また、フルカラーディスプレイ用途で使用する場合にはR、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けとすることや、白色光にカラーフィルターを重ねることによりフルカラー表示が可能となる。この発光層2から光B0が射出される。
【0022】
第1の透光性基板1Aおよび第2の透光性基板1Bは、これらの間に発光構造体を挟むように対向して設けられ、第1の透光性基板1Aには透明電極3が形成され、第2の透光性基板1Bには陰極4が形成されている。
第1の透光性基板1A、第2の透光性基板1Bの材料としては、種々のガラス材料を用いることができる他に、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料を用いることができる。またプラスチック材料では、シクロオレフィン系のポリマーが特に好ましい。このポリマーは、加工性及び、耐熱、耐水性、光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れているためである。
また、第1透光性基板1Aは、発光層2からの光B0をできるだけ透過させることができるように、全光線透過率を50%以上の材料で形成することが好ましい。
【0023】
プリズムシート7は、発光層2から出射され、透明電極3、透光性基板1Aを透過する光B0(有機ELセルからの出射光)が全反射される割合を低減し、ELパネル10から外部に取り出される光の光量を向上する部材であり、プリズム部7Aおよび拡散粘着層7B(拡散層)からなる。
【0024】
プリズム部7Aは、一方の面(図示下側)が平面部7aとされ、他方の面に一定形状を有する凹凸形状パターンが2次元的に配列された凹凸面7bを有する透明フィルムからなる。
本実施形態の凹凸面7bは、図2(a)、(b)、(c)に示すように、四角錐状の凹部(以下、逆四角錐と称する場合がある。)が直角格子状に配列され、これらの溝底の頂点を通る断面を取ると、二等辺三角形の山形の断面が連続している。この二等辺三角形の頂角は、例えば、60度から110度の範囲とすることができる。ただし、頂角の角度範囲はこれには限定されず、従来のプリズムシートにおける頂角の角度範囲はすべて採用することができる。
このようなプリズム部7Aは、円筒状の金型に円周方向及び軸方向に三角形断面の溝を形成して四角錐が2次元的に配列された金型面を形成し、この金型面の四角錐の形状を樹脂材料に転写して、四角錐を反転させた凹凸形状パターンである凹凸面7bを形成することにより製造することができる。
【0025】
プリズム部7Aを形成する樹脂材料としては、発光による温度上昇に耐える程度の耐熱性を有する透明樹脂材料であれば適宜の材料を採用することができる。ただし、プリズムシート7はELパネル10の最表面に配置されるため耐擦傷性等の機能を有することが好ましい。例えば、壁紙工業会制定「表面強化壁紙性能表示規定」に準拠した引っ掻き試験後、耐傷つき性能を目視により判定し4級の表面に少し変化ありか、5級の変化なしとなる程度の硬さを有することが好ましい。
このような硬さを有する樹脂材料として、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のアクリル系樹脂やポリスチレン系樹脂などを好適に採用することができる。
また、ポリカーボネート樹脂を用いてもよく、この場合、分子量の高いものを用いることにより硬いプリズム部7Aが得られる。このときの分子量としては2万以上のものが好ましい。
【0026】
プリズム部7Aの作製方法としては、上記のような材料からなる樹脂フィルムに金型によってエンボス加工して作製する方法を挙げることができる。なお、凹凸面7bの頂部7cは、金型の最凹部となるため、樹脂が入りにくくなるおそれがある。この場合、金型の溝底をR面として、頂部7cを丸めてもよい。例えば、頂部7cに曲率半径5μm以上の丸みを設けることによって、成形性を向上することができる。
【0027】
エンボス加工の圧力条件は、例えば、線圧49N/cm(5kgf/cm)〜4900N/cm(500kgf/cm)に設定することができる。なお、線圧は、好ましくは49N/cm(5kgf/cm)〜2940N/cm(300kgf/cm)、より好ましくは、98N/cm(10kgf/cm)〜1470N/cm(150kgf/cm)である。
線圧が49N/cmより小さい場合には、賦形率が70%未満であり、凹凸形状を十分に賦形できない。線圧が98N/cm以上の場合には、85%以上の賦形率が得られるため、より好ましい。
また、4900N/cmより大きな線圧では、機械への負荷が大きすぎ実用的でない。線圧が2940N/cm以下であれば、プリズム部7Aの幅が1mを超えても、機械への負荷が大きすぎない。線圧が1470N/cmになると、賦形率が99%〜100%になるため、線圧を1470N/cmよりも大きくしても賦形率は向上することができない。
【0028】
またプリズム部7Aは、紫外線硬化樹脂を1m/minから30m/minのラインスピードで金型に押し付けながら、500mJ/mから3000mJ/mの紫外線を照射し、紫外線硬化させて形成することもできる。
ラインスピードが、1m/minより低速では、金型に押し付ける前に、空気中の酸素や水分と紫外線硬化樹脂とが反応してしまいうまく成形できなくなる。
ラインスピードが、30m/minより高速では、気泡の噛み込みが発生してしまう。
【0029】
紫外線硬化樹脂としては、脆性の低い樹脂を用いることが望ましい。紫外線硬化樹脂材料としては、例えば、(ポリ)ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、(ポリ)エチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル(ポリ)スチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂等が挙げられる。
なお、特に、アクリル樹脂としては、単官能のアクリル樹脂と多官能のアクリル樹脂を適時混合することによって、表面の表面強化性能と光取り出しの効果を両立することができる。
【0030】
プリズム部7Aを作製後、加工時の傷つきを防止するため、プリズム部7Aの頂部7cに粘着剤が塗布された保護フィルムを貼り合わせるのがよい。このときロール径が100mm〜350mmのロールで保護フィルムを搬送しながら貼り合わせるのが好ましい。ロール径が100mmより小さいと保護フィルムにカールが生じ易く作業性が著しく低下する。またロール径が350mmより大きいと、貼り合わせの圧力がうまくかからず、ラミネート加工途中で保護フィルムがとれてしまう。なお保護フィルムのゴム硬度は40〜70が好ましい。ゴム硬度が40より小さいとシワが発生し易く、70より大きいと、異物による傷付が発生し易い。さらに、貼合を容易にするため、ロールを加熱しても良い。このときの温度は、15℃〜35℃が好ましい。15℃より低い場合は加熱の効果が無く、35℃より高いと再度保護フィルムを剥離する際に保護フィルムの粘着剤がプリズム部7Aの頂部7c等に残ってしまう。
【0031】
プリズム部7Aの厚みは、25μm以上、1mm以下とすることが好ましい。
プリズム部7Aが25μmより薄いと有機ELセル9が割れた場合に、プリズム部7Aも一緒に割れてしまい、透光性基板1Aが飛散してしまう。一方、プリズム部7Aが1mmより厚いとプリズム部7Aの製造時にロールとして巻き取りにくくなってしまう。
さらに、プリズム部7Aの厚みとしては、125μm以上250μm以下がより好ましい。
プリズム部7Aが125μmより薄いと有機ELセル9に貼合わせる際に、プリズム部7Aにしわが入りやすくなるため、貼り合わせの作業性が悪くなる。一方、プリズム部7Aを250μmより厚くしても貼り合せの作業性は向上せず、プリズム部7Aを巻き取ったロール重量が増大してしまう。
【0032】
拡散粘着層7Bは、プリズムシート7を、透光性基板1Aの透明電極3が形成されたのと反対側の表面に固定するとともに、透光性基板1Aから射出される光B0を拡散させる部材であり、プリズム部7Aの平面部7aにおいて、プリズム部7Aを覆う範囲に設けられている。
拡散粘着層7Bは、例えば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘着剤または接着剤に拡散性を付与する微粒子を分散させた構成を採用することができる。
拡散粘着層7Bの形態としては、例えば、粘着剤または接着剤が含有された両面テープ状のものを、保護フィルムを剥離した後のプリズム部7Aの平面部7aに貼り付けてもよいし、粘着剤または接着剤を、保護フィルムを剥離した後の平面部7aに塗布して設けてもよい。
プリズムシート7は高温になるEL照明で使用されるため、拡散粘着層7Bの粘着力は、80℃において、0.197N/mm(5N/inch)以上であることが望ましい。これより粘着力値が低いと、使用中にプリズムシート7の端部から浮きが発生してしまう。
拡散粘着層7Bに含む微粒子は、例えば、透明のビーズ等を採用することができる。具体的には、(メタ)アクリレート、メラミン、ポリスチレン、シリコーン、ポリオレフィン、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)等の樹脂を単体または共重合させた粒子や、アルミナ、シリカ等の無機粒子を用いることができる。またこれらの微粒子は、中空のものでもよい。また、これらの粒子の表面は、樹脂コーティング、ドライコーティングしてもよい。この場合、分散性を向上させることができる。
これら微粒子は、透過拡散光強度の半値角が13度以下の拡散性が得られるように配合量、分散性を調整する。
【0033】
このとき添加する微粒子の屈折率とバインダーの屈折率差は小さすぎるとレイリー散乱の効果により色づきがでてしまい、散乱量も低下する。一方微粒子が大きすぎると単位体積当りの粒子断面積は、粒子の大きさに反比例して、減少するため散乱量が低下していく。そのため屈折率差に応じた適切な大きさの粒子を添加するのが望ましい。
通常用いる微粒子では、バインダーの屈折率に対して、0.1から、0.3程度の屈折率差を有した粒子を用いることができ、このとき、微粒子が球状であれば、その直径は、2μmから12μmの範囲で、その適切な大きさとなる。楕円形状や針状のものであっても同様の適切な大きさがあるため、微粒子の材質にあった適切な粒子径を選択することによって、最適な散乱が得られる。
【0034】
拡散粘着層7Bを両面テープ状に形成して、プリズム部7Aに貼り合わせる場合、拡散粘着層7Bの貼り合わせ用のニップロールのロール直径は、150mm〜450mmであることが好ましい。ロール直径が150mmより小さいと貼合時に拡散粘着層7Bの保護フィルムに浮きが生じてしまう。ロール直径が450mmより大きいと貼合時に泡がうまく抜けない。
なお、このときの貼り合わせ用のニップロールのゴム硬度は40〜70が好ましい。
貼り合わせ用のニップロールのゴム硬度が40より小さいとシワが発生し易く、70より大きいと、異物による傷付が発生し易い。さらに、貼合を容易にするため、拡散粘着層7Bのロールを加熱してもよい。このときの温度は、15℃〜45℃が好ましい。15℃より低い場合は加熱の効果が無く、45℃より高いと粘着剤または接着剤がプリズム部7Aの端部よりはみ出したり、熱膨張等により拡散粘着層7Bに小さなシワを生じさせたりするおそれがある。
【0035】
また、ELパネル10は様々な環境で用いられ、例えば、紫外線が多く当たるような屋外での使用等が考えられる。このような場合、紫外線が有機ELセル9内部へ照射される事により、劣化損傷が起こる。そのため、プリズム部7Aの樹脂材料、または拡散粘着層7Bの粘着剤または接着剤中に紫外線吸収材を混入してもよい。この場合、外部から有機ELセル9内部への紫外線の照射が抑制され、有機ELセル9の劣化損傷を緩和する事が可能となる。
【0036】
さらに、プリズムシート7を透光性基板1Aに貼合する際には、透光性基板1Aへの力をできるだけ小さくし、且つ圧力を適切に加え、且つ泡がかんでしまうことを防ぐ必要がある。そのためには、プリズムシート7のロールのロール直径は、20mm〜150mmが適している。
150mmより太いロールでは、有機ELセル9が撓んでしまい、中央付近が貼り合わせできない。ロール直径が20mmより小さいとロール自体の撓みにより、ロール中央付近に圧力がかからず、貼り合わせできない。
また、このときの貼り合わせ用のニップロールのゴム硬度は30〜70が好ましい。ゴム硬度が30より小さいとフィルムがよれてしまいやすく、70より大きいと、異物による傷付が発生し易い。さらに、貼合を容易にするため、ロールを加熱してもよい。このときの温度は、15℃〜50℃が好ましい。15℃より低い場合は加熱の効果が無く、50℃より高いと有機ELセル9の発光材料を劣化させる。
【0037】
プリズムシート7は作製後、透光性基板1Aと貼り合わせるが、貼り合わせで不具合があった場合、透光性基板1Aから、プリズムシート7を剥がし、新たに他のプリズムシート7を貼り合わせる事が必要となる。この工程をリワークと呼ぶ。リワークの際には拡散粘着層7Bの粘着剤または接着剤が透光性基板1A側に残らないように、つまり、プリズム部7A側に拡散粘着層7Bの粘着剤または接着剤が着く事が好ましい。
【0038】
次に、本実施形態のプリズムシート7が照明ムラを低減する作用と有する点について、説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の実施形態のプリズムシートを製造する金型ロールの製造工程を示す模式的な工程説明図である。図4は、切削の長さを説明するための模式図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ工具の摩耗によるプリズム部の形状変化に伴う拡散光強度分布の例を示す模式的なグラフである。横軸は放射角度、縦軸は拡散光強度である。
【0039】
まず、プリズム部7Aの具体的な製造方法について説明する。
プリズム部7Aを製造するには、凹凸面7bの形状を転写する四角錐が配列された凹凸面を有する金型ロールを作製する。
まず、図3(a)に示すように、両端部に回転軸51a、51bを有する円柱状のロール50の表面50aをバイト52によって軸方向に切削し(横切削と称する)、二等辺三角形状の断面が軸方向に延ばされた溝50bを形成する。そして、溝50bの幅だけロール50を回転させて、溝50bに隣接する同様の溝50bを形成する。これらを繰り返して、表面50aが、周方向に隣接する溝50bで覆われるようにする。最後に形成された溝50bは最初に形成された溝50bと境界線Tで隣接している。
【0040】
次に、図3(b)に示すように、バイト52の向きを変え、溝50bが全面に形成されたロール50を回転軸51a、51bを中心に回転させて、溝50bに直交する方向に切削し(縦切削と称する)、溝50bと同様な二等辺三角形状の溝50cを形成する。そして、バイト52を溝50cと同幅だけ軸方向に移動して、同様の切削を行って隣接する溝50cを形成し、これを繰り返して、ロール50の表面50aの全面に、溝50cを形成する。
このような複数の溝50b、50cが交差することにより、ロール50の表面には、四角錐状の突起が、軸方向および周方向に隣接して形成され、プリズム部7Aを形成するための金型ロール50Aが得られる。
【0041】
バイト52としては、例えば、高速度鋼バイト、超硬バイト、ダイヤモンドバイト等を用いることができるが、いずれにしても表面50aの全面を切削していくとバイト52の磨耗が進み、切削の始めと終わりとでは、バイト52の形状が変化し、結果として溝50b、50cの形状が変化してしまう。
このため境界線Tを境に、切削の初期のバイト形状による溝50b、50cと、切削の終期のバイト形状による溝50b、50cが隣接することになり、金型形状が変化してしまう。このため、金型ロール50Aを回転させてプリズム部7Aの成形を行うと、金型面としては連続していても、境界線Tに沿って形状が異なるつなぎ目ができてしまう。
このようなつなぎ目における凹凸面7bの形状誤差は、光取り出し効率に影響するため、形状誤差の差が大きすぎると取り出される光量および透過光強度分布がつなぎ目を境に急峻に変化し、見る方向によって光量ムラとなるため、容易に視認されてしまう。このため照明として使うには、見苦しい照明ムラになってしまう。
なお、縦切削では、切削の開始位置と終了位置とが軸方向の両端に分かれるため、金型面上には、つなぎ目は発生しない。
【0042】
バイト52の磨耗は、横切削の切削の長さが増大するほど激しくなる。そのため、横切削の切削の長さは短い方が、つなぎ目が目立ちにくくなるため望ましい。
横切削の切削の長さLcは、溝50bの長さ(以下、切削面長と称する)Lwを溝50bの本数倍することで求められる。したがって、溝50bの溝幅で決まる周方向の切削ピッチPc、金型ロール50Aのロール径Ldを用いると、次式(3)で表される。
【0043】
Lc=Lw・Ld・π/Pc ・・・(3)
【0044】
上記式(3)は、ロール50の軸方向に沿う横切削を行う場合の条件として求めたが、ロール50の表面50aに螺旋状に切削を行う場合にも上記式(3)が適用できる。
この点について、図4に示す切削面の展開図で説明する。図4において図示水平方向はロール50の軸方向、を示す。また符号53a、53bは、螺旋状の切削方向を示す直線である。
切削方向と軸方向とのなす角度をθrとすると、ロール50の軸方向の一端から他端まで1本の螺旋溝を形成する場合の切削の長さLpは、次式(5)で表される。
【0045】
Lp=Lw/cosθr ・・・(5)
【0046】
また、切削の間隔Lb、切削本数Ncは、それぞれ次式(6)、(7)で表される。
【0047】
Lb=Ld・π・cosθr ・・・(6)
Nc=Lb/Pc ・・・(7)
【0048】
また、螺旋状の切削の長さLc’は、切削の間隔Lbと切削本数Ncとの積で表されるから、次式(8)が成り立ち、上記螺旋状の切削の場合でも、上記式(3)を適用できる。
【0049】
Lc’=Lp・Nc
=(Lw/cosθr)・(Ld・π・cosθr/Pc)
=Lw・Ld・π/Pc
=Lc ・・・(8)
【0050】
金型の切削面積が小さく切削ピッチが大きいほど、切削の長さLcを短くできるため、バイトの磨耗は小さくできる。しかし、切削面長Lwが短いと、成形されるプリズム部7Aの幅が狭くなり生産性が低下してしまうため、切削面長Lwは、0.8m以上で1.6m以下が好ましい。
金型ロール50Aのロール径Ldは、小さいほど切削の長さLcを短くできるが、100mmより小さい径では、切削する際にロール50がゆがんでしまう。一方、300mmより大きい径では、ロール50の重量が増大してしまい、ハンドリング性が大きく低下し、切削時間も伸びてしまう。
また、切削ピッチPcを大きくすれば、切削の長さLcを短くできるが、溝が深くなるため成形時の樹脂量やフィルム厚みが増してしまい、コストの増大を招いてしまう。そのため、切削ピッチPcは300μmに以下が望ましい。また、切削ピッチPcを小さくすると回折の影響が大きくなり、取り出し効率が射出光の波長に依存してしまい、可視光全域で、十分な性能が出せなくなるため、切削ピッチPcは5μm以上であることが好ましい。
【0051】
上記式(3)に、上記の好ましい切削面長Lw、ロール径Ldの条件を代入すると、上述から、切削の長さLcとしては、小数点以下を四捨五入して次式(4)が成り立つ。
【0052】
838[m]≦Lc≦301593[m] ・・・(4)
【0053】
本発明者は、鋭意研究した結果、プリズム部7Aに製造上発生するつなぎ目における輝度ムラを低減するため、プリズムシート7に拡散粘着層7Bを設けることに想到し、以下に説明するように、拡散粘着層7Bの拡散性の好適な条件を見出した。
まず、プリズム部7Aのみからなるプリズムシートを、上記の横切削と縦切削と組み合わせた方法で作製し、プリズム部7Aの正面方向(平面部7aに直交する凹凸面7b側の方向)に来る光の分布を把握するためにプリズム部7A側から平行光をプリズムシートに光を入射し、プリズムシートの平面部7aから透過した光の分布を、計測した結果である。測定は、切削の長さLcが、0m、5000m、10000m、30000mとなる位置の4箇所で行った。それぞれの測定結果を、図5(a)、(b)、(c)、(d)に示す。各横軸の中心は、発光層2の法線に沿う方向、すなわち、平面部7aの法線方向の光強度を表す。
【0054】
図5(a)、(b)、(c)、(d)から分かるように、切削初期のおける切削の長さLc=0mのプロファイル(曲線200a参照)は、平面部7aに直交する方向の光強度が最も高い略三角形状の分布が形成されているが、切削の長さLcが増大するにしたがって、拡散される光成分が増大する結果、平面部7aの法線方向と斜め交差する成分が増大していくことが分かる。
すなわち、切削の長さLcの増大による凹凸面7bの形状変化は、透過光の光強度分布から見ると、拡散性が大きくなったこととほぼ同じ結果になっている。
そこで、本発明者は、平面部7aに拡散粘着層7Bを設けて、拡散光B1をプリズム部7Aに入射させれば、透過光B2の光強度分布が凹凸面7bの形状精度によらず、例えば、図5(d)に示すような拡散性の強い光強度分布(曲線200d参照)となり、つなぎ目が視認しにくくなるのではないかと考えた。
例えば、図6に示すように、発光層2から同一方向に出射される光B0は、拡散粘着層7Bによって、同様に拡散される拡散光B1となる。境界線Tを境に切削初期の金型面で形成された凹凸面7Sは、略平面に形成され、きれいな三角形状の断面が形成されている。一方、境界線Tを境に切削終期の金型面で形成された凹凸面7Eは、工具の摩耗により金型面の切削量が少なくなる結果、凹面状に形成されている。
このため、凹凸面7Eから出射方向が拡がって、拡散されたのと同様な光強度分布を示す。
例えば、拡散粘着層7Bがないと、凹凸面7Sを透過した透過光B2a’(二点鎖線参照)は、拡散粘着層7Bを透過し凹凸面7Eを透過した透過光B2bに比べて、光放射範囲が狭く、放射中心がより垂直に近づくことになる。
このような凹凸面7S、7Eの形状誤差による拡散性の違いよりも大きな拡散性を有する拡散粘着層7Bを設ければ、凹凸面7Sの透過光は、透過光B2a’の放射範囲よりも広い範囲に拡散した透過光B2aになり、凹凸面7Eを透過した透過光B2bと同様の放射範囲、放射方向になると考えられる。この場合、境界線Tの近傍で光量分布にあまり差がなくなるため、つなぎ目が視認されにくくなる。
【0055】
そこで、このような拡散粘着層7Bの作用を検証する実験を行った。
すなわち、金型ロール50Aのロール径Ld、切削面長Lw、切削ピッチPcを種々変えてプリズム部7Aを製作し、拡散粘着層7Bに混入する微粒子の配合量等を調整して種々の拡散性を有するものを作製し、これらのプリズム部7A、拡散粘着層7Bを組み合わせたサンプルをELパネル10に取り付けて、つなぎ目が視認されるかどうか検討した。
具体的には、ロール径Ldを、190mm、280mmに変化させ、切削面長Lwを、0.6m、0.8m、1.0m、1.2m、1.4m、1.6mに変化させ、切削ピッチPcを、30μm、60μm、100μmに変化させ、拡散半値角(半値角)θdを、1.0deg、1.6deg、2.1degに変化させ、これらを組み合わせて、切削の長さLcを、3581mから46914mまで変化させた。
つなぎ目の視認性の評価は、暗室下でELパネル10を点灯させて通常の視力を有する過半数が視認できるかで行った。
この結果を、下記表1〜表6に示す。つなぎ目の良否は、つなぎ目が視認できなかった場合を○(良)、つなぎ目が視認できた場合を×(否)で表した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
これらの結果から、拡散半値角θdと切削の長さLcとが一定の関係にあると、つなぎ目が視認できなくなることが分かる。
すなわち、切削の長さLcに応じて拡散粘着層7Bの拡散半値角θdを適宜調整すれば、つなぎ目が目立たなくすることができる。
これらの結果によれば、拡散半値角θdと切削の長さLcとが、次式(1)、(2)を満足すれば、つなぎ目は視認できなくなっている。
【0063】
θd>Lc・α ・・・(1)
α=0.000167[度/m] ・・・(2)
【0064】
ただし、上記式(1)で、拡散半値角θdの単位は[度]、切削の長さLcの単位は[m]である。
【0065】
一方、拡散半値角θdが増大すると、透過光の輝度が下がってしまう。
そこで、以下の表7に、有機ELセル9のパネル反射率[%]と、拡散粘着層7Bの拡散半値角θd(deg)と、輝度上昇率[%]との関係を示す実験結果を示す。
ここで、有機ELセル9のパネル反射率とは、標準白色板の反射率を100%としたときの入射光量に対する射出光量の光量比で定義される。また、輝度上昇率は、有機ELセル9から正面方向に取り出される光の輝度に対するプリズムシート7を設けたELパネル10の正面方向に取り出される光の輝度の比を百分率で表したものである。
【0066】
【表7】

【0067】
上記表7に示すように、パネル反射率が上昇するにつれ、輝度上昇率が上昇する傾向があるがパネル反射率が高いものでも、拡散半値角θdが13度を超えると、輝度上昇率が10%より下回り、プリズムシート7の効果が不十分となるため、本実施形態では、拡散半値角θdを13度以下に設定している。
【0068】
このように、本実施形態のプリズムシート7によれば、拡散粘着層7Bを備えるため、プリズム部7Aに入射する光B0を拡散させて拡散光B1とすることができる。このため、プリズム部7Aに金型のつなぎ目に起因する拡散性のバラツキがあっても、それ以上の角度範囲に拡散させることができるため、視認角度による輝度ムラが解消される。この結果、プリズム部7Aを成形する金型ロール50Aの工具摩耗による形状誤差に起因する金型のつなぎ目による透過光の光量ムラを低減することができる。
これにより、金型のつなぎ目におけるELパネル10の輝度ムラを低減することができ、液晶表示装置100の照明ムラを低減することができる。ELパネル10の照明の品位の低下を防止でき、液晶表示装置100の画質を向上することができる。
【0069】
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例のプリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置について説明する。
図7は、本発明の実施形態の第1変形例のプリズムシート、ELパネル、および液晶表示装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0070】
本変形例の液晶表示装置101は、図7に示すように、上記実施形態の液晶表示装置100のELパネル10に代えて、ELパネル11を備える。
ELパネル11は、上記実施形態のELパネル10のプリズムシート7に代えて、プリズムシート17を備えるものである。
プリズムシート17は、光透過性を有する基材フィルム19の一方の面19a(図示上側)に凹凸面7bと同一の形状を形成する微小プリズム群18が形成され、他方の面19b(図示下側)に拡散粘着層7Bを設けた部材である。
微小プリズム群18の材質としては、上記実施形態に説明したプリズム部7Aを紫外線硬化樹脂で形成する場合の紫外線硬化樹脂と同様な材質を採用することができる。
基材フィルム19の材質としては、上記実施形態に説明したエンボス加工してプリズム部7Aを形成する場合の樹脂材料と同様な樹脂材料を採用することができる。
【0071】
本変形例のプリズムシート17の製造方法の一例としては、まず、回転させた金型ロール50Aの金型面に紫外線硬化樹脂を連続的に供給し、紫外線硬化樹脂を金型面との間に挟むようにして基材フィルム19を金型ロール50Aの外周に密着させ、基材フィルム19を通して紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた後、基材フィルム19とともに、硬化した微小プリズム群18を脱型することにより、プリズム部17Aを作製する。
この成形時における基材フィルム19を搬送するラインスピードは、上記実施形態に説明したプリズム部7Aを紫外線硬化樹脂で形成する場合のラインスピードと同一に設定することができる。
次に、プリズム部17Aの微小プリズム群18と反対側に露出した面19bに拡散粘着層7Bを貼り合わせることにより製造することができる。
このように製造されたプリズムシート17を、上記実施形態のプリズムシート7と同様にして、有機ELセル9の透光性基板1A上に貼り合わせることにより、ELパネル11を製造することができる。
【0072】
このように、プリズム部17Aは、プリズム部7Aと同様の形状を、機材シート19上に樹脂成形して形成したものであるため、上記実施形態のプリズム部7Aと同様にして、拡散粘着層7Bによって拡散された拡散光B1を液晶パネル20に向けて効率的に取り出すこととができる。
【0073】
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例のプリズムシート、およびELパネルについて説明する。
図8は、本発明の実施形態の第2変形例のプリズムシート、およびELパネルの主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0074】
本変形例のELパネル12は、図8に示すように、上記第1変形例のELパネル11のプリズムシート17に代えて、プリズムシート27を備える。ELパネル12は、ELパネル11と同様に液晶パネル20とのバックライトとしても用いることができる。
プリズムシート27は、上記第1変形例のプリズム部17Aの頂部7c側に拡散粘着層7Bを貼り付けて、拡散粘着層7B、微小プリズム部18、および基材フィルム19がこの順に積層されたものである。ただし、本変形例の拡散粘着層7Bは、粘着剤または接着剤が含有された両面テープ状の形態を採用している。
このようなプリズムシート27は、上記第1変形例と同様にしてプリズム部17Aを作製した後、微小プリズム群18の頂部7cに、拡散粘着層7Bを貼り合わせることによって製造することができる。
また、このように製造されたプリズムシート27を、上記実施形態のプリズムシート7と同様にして、有機ELセル9の透光性基板1A上に貼り合わせることにより、ELパネル12を製造することができる。
【0075】
本変形例のELパネル12によれば、図8に示すように、発光層2で発生した光B0が拡散粘着層7Bで拡散されてから、微小プリズム群18に入射することは、上記第1変形例と同様であるため、凹凸面7bの形状誤差による金型のつなぎ目による輝度ムラを同様に低減することができる。
本変形例によれば、ELパネル12の透過光B2が出射されるのは平面状の面19bであるため、微小プリズム群18が外部に露出しないため、微小プリズム群18の材質として、低強度の材質も採用することが可能となる。また、ゴミなどが付着した場合でも、容易にふき取ることができるため、ELパネル12のメンテナンスが容易となる。
【0076】
なお、実施形態および各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり削除したりして実施することができる。
【実施例】
【0077】
次に本発明に係るプリズムシートおよびその作製方法の実施例について説明する。
【0078】
(実施例1)
本実施例は、上記実施形態の第1変形例に対応する実施例である。
まず、基材フィルム19である光学用2軸延伸易接着PETフィルム(膜厚125μm)上に、微小プリズム群18のパターンを形成させるため、ウレタンアクリレートを主成分とし、メガファック(登録商標)F−482(商品名;DIC株式会社製)を3重量部添加した紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製ウレタンアクリレート樹脂(屈折率1.51))を塗布し、ロール径Ldが280mm、切削面長Lwが1300mm、切削ピッチPcが100μm、溝深さが50μmの金型ロール50Aを使用して紫外線硬化型樹脂が塗布されたPETフィルムを搬送しながらUV光をPETフィルム側から露光することにより、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。硬化後、PETフィルムから金型ロール50Aを離型することにより、ピッチが100μmの逆四角錐状の微小プリズム群18を作製した。
また、これに拡散剤が5重量部入っている拡散粘着層7Bを25μmの厚みで形成することにより、拡散光強度の半値角が1.9度のものが得られた。このプリズムシート17を有機ELセル9に貼り付けたところ、金型のつなぎ目が見えなくなっていることを確認した。
【0079】
(実施例2)
本実施例は、上記実施形態の第1変形例に対応する実施例である。
まず、基材フィルム19である光学用2軸延伸易接着PETフィルム(膜厚125μm)上に、微小プリズム群18のパターンを形成させるため、ウレタンアクリレートを主成分とし、メガファック(登録商標)F−482(商品名;DIC株式会社製)を3重量部添加した紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製ウレタンアクリレート樹脂(屈折率1.51))を塗布し、ロール径Ldが190mm、切削面長Lwが800mm、切削ピッチPcが100μm、溝深さが50μmの金型ロール50Aを使用して紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光をPETフィルム側から露光することにより、紫外線硬化型樹脂が硬化させた。硬化後、PETフィルムから金型ロール50Aを離型することにより、ピッチが100μmの逆四角錐状の微小プリズム群18を作製した。
また、これに拡散剤が10%重量部入っている拡散粘着層7Bを35μmの厚みで形成することにより、拡散光強度の半値角が3.6度のものが得られた。このプリズムシート17を有機ELセル9に貼り付けたところ、金型のつなぎ目が見えなくなっていることを確認した。
【0080】
(実施例3)
本実施例は、上記実施形態に対応する実施例である。
まず、AS樹脂を約230℃に加熱し、ロールに沿わせ延伸しながら厚さ0.3mmのフィルムを成形した。次に、ロール径Ldが190mm、切削面長Lwが800mm、切削ピッチPcが150μm、溝深さが75μmの金型ロール50Aを使用し、加熱されたAS樹脂のフィルムを加圧するとともに、常温25℃の金型ロール50Aとの接触により冷却して、逆四角錐状の凹凸面7bが成形されたAS樹脂のフィルムを硬化させて、150μmの逆四角錐状の凹凸面7bを有するプリズムシート7を作製した。
プリズムシート7の表面強化性能については、壁紙工業会制定「表面強化壁紙性能表示規定」に準拠した引っ掻き試験後、耐傷つき性能を目視により判定し4級の表面に少し変化ありのものが得られた。
また、これに拡散剤が10重量部入っている拡散粘着層7Bを25μmの厚みで形成することにより、拡散光強度の半値角が2.6度のものが得られた。このプリズムシート7を有機ELセル9に貼り付けたところ、金型のつなぎ目が見えなくなっていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
有機ELセルに用いられる透光性基板の最表面に貼り合わせることにより光取り出しの効率を向上させるプリズムシートに関する。特に、有機EL照明、看板、LCD用バックライト等に関するものである。
【符号の説明】
【0082】
1A、1B 透光性基板
2 発光層
3 透明電極(陽極)
4 陰極
7、17、27 プリズムシート
7A、17A プリズム部
7B 拡散粘着層(拡散層)
7b、7S、7E 凹凸面
9 有機ELセル
10、11、12 ELパネル
18 微小プリズム群
19 基材フィルム
20 液晶パネル
50A 金型ロール
B0 光(有機ELセルからの出射光)
B1 拡散光
B2、B2a、B2b 透過光
100、101 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELセルの光出射側に配置されるプリズムシートであって、
一定形状を有する凹凸形状パターンが2次元的に配列されたプリズム部と、
該プリズム部と反対の面に設けられ、前記有機ELセルからの出射光を拡散する拡散層を備えることを特徴とするプリズムシート。
【請求項2】
前記拡散層は、透過拡散光強度の半値角が13度以下の拡散性を有することを特徴とする請求項1に記載のプリズムシート。
【請求項3】
前記拡散層は、光透過性微粒子と、該光透過性微粒子が分散された粘着性樹脂とからなることを特徴とする請求項1または2に記載のプリズムシート。
【請求項4】
前記ブリズム部は、前記凹凸形状を転写するための金型面が形成された金型ロールを用いて形成され、
前記拡散層の前記半値角が次式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリズムシート。
θd>Lc・α ・・・(1)
α=0.000167[度/m] ・・・(2)
Lc=Lw・Ld・π/Pc ・・・(3)
838[m]≦Lc≦301593[m] ・・・(4)
ただし、θdは前記透過拡散光強度の半値角[度]、Lw[mm]は前記金型ロール上の金型面の軸方向の長さ、Ld[m]は前記金型ロールのロール径、Pc[m]は前記金型ロールにおける周方向の切削ピッチを表す。
【請求項5】
前記プリズム部の厚さが、25μm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項6】
前記プリズム部は、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項7】
透光性基板と、前記透光性基板の一方の面に設けられ、かつ陽極と陰極とに挟まれた発光層と、を有する有機ELセルと、
前記透光性基板を挟んで前記有機ELセルと反対側に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載のプリズムシートと、
を備えることを特徴とするELパネル。
【請求項8】
請求項7に記載のELパネルをバックライトとして備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203233(P2012−203233A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68180(P2011−68180)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】