説明

プリンタヘッド、及びこれを備えた画像形成装置、並びにプリンタヘッド用駆動回路

【課題】 有機ELプリンタヘッド等のプリンタヘッドにおいて、クロック信号供給線等の寄生容量を低減する。
【解決手段】 トランスミッションゲートTG01、TG11、・・・、TGm1の夫々は、クロック信号供給線30から供給されるクロック信号を選択的にシフトレジスタ回路SRの各段SRiに供給することによって、クロック信号が電源供給線40と交差する機会を低減する。これにより、クロック信号が電源供給線40を交差する際にクロック信号供給線30及びクロック信号出力線241に生じる寄生容量を低減することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリンタ、コピー、ファクシミリ等の画像形成装置において、感光体を露光して静電潜像を形成するために用いられる、有機EL(Electro-luminescence)プリンタヘッド等のプリンタヘッド或いはラインヘッドと、これを備えた画像形成装置、並びにプリンタヘッド用駆動回路の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の有機ELプリンタヘッドでは、ライン状に配列された複数の有機EL発光素子におけるデータ信号に応じた点灯・非点灯が、ライン走査信号に応じたタイミングで順次行われる場合が多い。ここで、各画素回路には、有機EL発光素子と共に、これに駆動電流を流すための駆動用トランジスタが設けられ、駆動用トランジスタがデータ信号に応じてオンされて、駆動電流が有機EL発光素子に流れることで、データ信号に応じた発光が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−274569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常の有機ELパネルでは、シフトレジスタに含まれる各段は数十段にもなるため、ロジック回路近傍にクロック配線を配置すると多くの個所でクロック信号配線及び電源配線が交差してしまう。このような場合、クロック信号配線を介してクロック信号を供給した際に生じるクロック信号配線の寄生容量が大きくなり、特にプリンタヘッドにおいては高速動作の妨げとなる虞がある。特に、プリンタヘッドにおいて、多相のクロック信号を供給するために複数のクロック信号配線を設けた場合、クロック信号配線の寄生容量が増大し、信号遅延が顕著になる。更に、プリンタヘッドにおいては、プリンタヘッドの小型化を目的として狭い領域に多数の配線を配置した場合には、これら配線のレイアウト上の制約によって、これら配線が互いに交差することに起因する寄生容量が増大し、信号遅延が生じる場合もある。例えば、比較的高周波数のクロック信号が電源供給線等の他の配線と交差する場合にはより一層信号遅延が顕著に発生し、ライン走査回路等を高速且つ正常に駆動させることが困難になる場合もある。また、複数のクロック配線を介して多相のクロック信号を供給する場合には、例えば、各クロック信号波形の立ち上がり或いは立ち下がりのずれに起因するジッタが生じ、プリンタヘッドを正常に駆動させることが困難になることも想定される。
【0005】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、高速且つ正常な駆動が可能になるプリンタヘッド及びこれを備えた画像形成装置、並びにプリンタヘッド用駆動回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリンタヘッドは上記課題を解決するために、基板上に、ライン状に配列されており、感光体を露光するための電流駆動型の発光素子を夫々含むと共に、順次供給されるライン走査信号に応じて前記発光素子に流れる駆動電流を規定するデータ信号が書き込まれるように構成されている複数の画素回路と、前記複数の画素回路に前記ライン走査信号を順次供給するライン走査回路と、前記複数の画素回路の配列方向に沿って延在される部分を含むクロック信号供給線を介して供給されるクロック信号を、前記ライン走査回路に対して選択的にクロック信号出力線を介して供給するクロック信号供給手段と、前記ライン走査回路に電源を供給するために、前記基板上で平面的に見て前記クロック信号供給手段及び前記ライン走査回路の間に設けられており、前記複数の画素回路が配列された配列方向に沿ってライン状に延在すると共に前記クロック信号出力線が交差する部分を含む電源供給線とを備える。
【0007】
本発明に係るプリンタヘッドによれば、例えば、基板上に、有機EL発光素子を含む複数の画素回路がライン状に配列されている。ここで、本発明に係る「ライン状に配列され」とは、複数の画素回路が配列されたライン方向に沿って一列で延びる場合の他、二列或いは複数列で延びる場合や、千鳥足状に延びる場合も含む。このようなライン状のプリンタヘッドは、感光体に対して、その複数の画素回路が配列されたライン方向に沿って順次、発光素子列からライン状の光を発光可能である。或いは、発光素子列からライン状の光を、同時に又は一部について同時に発光可能である。
【0008】
本発明に係るプリンタヘッドによれば、クロック信号が、クロック信号供給手段からライン走査回路に選択的に供給されることにより、クロック信号供給線に生じる寄生容量を低減することができる。複数の画素回路、ライン走査回路、クロック信号供給手段、及び電源供給線は同一基板上に設けられており、例えば、クロック信号供給線から枝分かれした支線が電源供給線と交差している場合であっても、本発明に係るプリンタヘッドによれば、この支線及びクロック信号供給線に生じる寄生容量を低減することができる。より具体的には、例えば、その一部が電源供給線と交差するクロック信号供給線を介してクロック信号をライン走査回路に供給した場合、クロック信号供給線に寄生容量が生じるが、クロック信号供給線を介して選択的にクロック信号をライン走査回路に供給することによって、実質的にクロック信号が電源供給線と交差する回数を低減することができ、クロック信号供給線等に生じる寄生容量を低減することができる。また、クロック信号を選択的にライン走査回路に供給することにより、クロック信号供給線を介して供給されるクロック信号のうち無駄なクロック信号が電源供給線と交差する機会を低減することができる。したがって、例えば、クロック信号供給線、電源供給線、及びライン走査回路等が同じ基板上に配置された状態で、クロック信号が電源供給線を交差するように供給される場合でも、ライン走査回路等のロジック回路に高速でクロック信号を供給することができる。ここで、本発明に係る「選択的に」とは、例えば、プリンタヘッドの動作時に、クロック信号を常時ライン走査回路に供給するのではなく、ライン走査回路等のロジック回路がクロック信号を必要とする場合にのみクロック信号を供給することを意味する。
【0009】
また、電源供給線は、基板上で平面的に見てクロック信号供給手段及びライン走査回路の間に設けられており、且つ複数の画素回路が配列された配列方向に沿ってライン状に延在された部分を含んでいることから、電源供給線はクロック信号出力線と交差する部分を有する構成とならざるを得ないが、上述したように選択的にクロック信号がライン走査回路に供給されることによって、電源供給線のレイアウト等を変更することなく、クロック信号供給線の寄生容量を低減することができる。特に、プリンタヘッドにおいては、画素数の向上と共にプリンタのサイズに合わせた小型化の要求もあり、プリンタヘッドに配置される各種配線等が電気的に絶縁された状態で交差するように配置される場合も多くなる。例えば、電源供給線及びクロック信号が交差するように配置される場合も多い。このような場合でも、クロック信号が電源供給線と交差する機会を低減することにより、プリンタヘッドの高速駆動が損なわれることがないように、より高速でクロック信号を供給することが可能である。尚、本発明に係る「基板上」とは、基板表面上という意味に限定されるものではなく、例えば、基板内部の同一平面上という意味や、基板上に形成された同一積層構造内という意味も含む。即ち、本発明に係る「基板上」は、直接又は間接を問わずに、基板の上方にという意味であり、例えば、電源供給線及びクロック信号供給線等が基板内部の同一平面上に形成された後、その上に保護膜等が形成されている場合も含む。また、本発明に係る「基板上に」とは、例えば、クロック信号供給線、電源供給線、ライン走査回路の如き各種信号を処理して画素回路を駆動させる配線及び回路等が絶縁膜等を介して基板上の異なる層上に夫々配置されている場合も含む。
【0010】
以上、説明したように、本発明に係るプリンタヘッドによれば、クロック信号供給線等の寄生容量を低減し、クロック信号を高速でライン走査回路に供給することができる。特に、ライン走査信号に高い周波数を要する場合があるプリンタヘッドでは、クロック信号供給線に生じる寄生容量を低減することによって、例えば、ライン走査回路を高速、且つ正常に駆動させることが可能になる。
【0011】
本発明に係るプリンタヘッドの一の態様においては、前記ライン走査回路は、前記基板上で平面的に見て前記電源供給線と前記配列方向に沿ってライン状に延在する部分を含む接地側配線との間に配置されていてもよい。
【0012】
この態様によれば、プリンタヘッドの動作時にクロック信号が接地側配線と交差することがないため、クロック信号供給線に寄生容量が生じる機会を低減することができる。
【0013】
本発明に係るプリンタヘッドの他の態様においては、前記クロック信号供給手段は、前記クロック信号供給線に電気的に並列に接続されており且つ前記クロック信号を選択的に前記ライン走査回路に夫々供給する複数の第1単位回路とを備えていてもよい。
【0014】
この態様によれば、クロック信号供給線を介して各第1単位回路からクロック信号をライン走査回路に供給することができる。第1単位回路は、例えば、スタートパルスがライン走査回路に入力されたことを確認した後、クロック信号をライン走査回路に選択的に供給する。これにより、無駄なクロック信号をライン走査回路に供給することを低減することができ、クロック信号供給線における寄生容量の発生を低減することができるだけでなく、ライン走査回路の負荷を低減することも可能である。
【0015】
本発明に係るプリンタヘッドの他の態様においては、前記クロック信号は単相のクロック信号であり、前記ライン走査回路は、前記単相のクロック信号から正相のクロック信号及び逆相のクロック信号を生成するクロック波形生成手段と、該生成された正相及び逆相のクロック信号に基づいて転送信号を順次出力し、前記ライン走査信号として前記複数の画素回路に対して順次出力するシフトレジスタ回路とを備えていてもよい。
【0016】
この態様によれば、クロック波形生成手段は、単相のクロック信号から、正相のクロック信号及び逆相のクロック信号を生成して、シフトレジスタ回路に供給する。このような正相のクロック信号及び逆相のクロック信号を用いれば、予め正相及び逆相の2つのクロック信号を入力するまでもなく、シフトレジスタ回路から転送信号を順次出力することが可能となる。この際のシフトレジスタ回路の構成としては、正相のクロック信号及び逆相のクロック信号の両者の供給を、二本の配線を介して受ける、既存の各種シフトレジスタと同様の構成を採ることができる。したがって、本発明に係るプリンタヘッドによれば、例えば、クロック信号供給線を一本にすることができるうえ、多相のクロック信号が各クロック信号供給線の寄生容量によって遅延することによって生じるジッタを抑制することができる。ここで、シフトレジスタ回路は、例えばシフトレジスタ回路の各段に電気的に接続された論理回路等を介して転送信号をライン走査信号として画素回路に供給する。このような論理回路は、相前後して出力される転送出力の間で、パルスが重ならないように論理演算することができる。
【0017】
この態様においては、前記クロック波形生成手段は、前記ライン方向に沿って前記第1単位回路に対応して配列されており且つ前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を夫々出力する複数の第2単位回路を含んでいてもよい。
【0018】
この態様によれば、第2単位回路によって、例えば、クロック信号が必要なシフトレジスタ回路の一の段に正相及び逆相のクロック信号を供給することができ、シフトレジスタ回路の他の段に無駄なクロック信号が供給されることを低減することが可能である。したがって、クロック波形生成手段及びシフトレジスタ回路の負荷を低減することが可能である。
【0019】
この態様においては、前記複数の第1単位回路の夫々は、前記複数の第2単位回路のうち前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を非生成中のものに対して少なくとも所定期間だけ前記単相のクロック信号を供給しないように、前記複数の第2単位回路のうち前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を生成中のものに対して前記単相のクロック信号を選択的に供給してもよい。
【0020】
この態様によれば、クロック信号供給手段は、例えば前段及び自段からの転送信号(又はその周期)をカウントしており、自段が転送信号(ライン走査信号)を生成する必要がある場合(時間)にのみ単相クロックをクロック波形生成手段に供給し、これに伴い、クロック波形生成手段は、自段が転送信号(ライン走査信号)を生成する必要がある場合にのみ、正逆クロックをシフトレジスタ回路に供給する。よって、シフトレジスタ回路には、その転送信号を出力する動作に必要の無いクロックは、何ら、供給されない。
【0021】
ここで、本発明に係る「生成中の第2単位回路」とは、転送信号を生成する前から転送信号を生成した後までの期間にある第2単位回路を意味し、例えば、一の第2単位回路に対して一段又は複数段だけ前段側にある他の第2単位回路における転送信号の生成中又は生成直後から、一の第2単位回路に対して一段又は複数段だけ後段側の更に他の第2単位回路における転送信号の生成直前又は生成中までの期間にある、当該一の第2単位回路を意味する。したがって、第2単位回路によって正相及び逆相のクロック信号を生成する頻度を最小限に低減することによって、クロック信号供給線における寄生容量の発生やクロック波形生成手段等の負荷を低減することができる。
【0022】
本発明に係るプリンタヘッド用駆動回路は上記課題を解決するために、基板上に、ライン状に配列されており、感光体を露光するための電流駆動型の発光素子を夫々含むと共に、順次供給されるライン走査信号に応じて前記発光素子に流れる駆動電流を規定するデータ信号が書き込まれるように構成されている複数の画素回路を備えたプリンタヘッドを駆動するためのプリンタヘッド用駆動回路であって、前記基板上に、前記複数の画素回路に前記ライン走査信号を順次供給するライン走査回路と、前記複数の画素回路の配列方向に沿って延在される部分を含むクロック信号供給線を介して供給されるクロック信号を、前記ライン走査回路に対して選択的にクロック信号出力線を介して供給するクロック信号供給手段と、前記ライン走査回路に電源を供給するために、前記基板上で平面的に見て前記クロック信号供給手段及び前記ライン走査回路の間に設けられており、前記複数の画素回路が配列された配列方向に沿ってライン状に延在すると共に前記クロック信号出力線が交差する部分を含む電源供給線とを備える。
【0023】
本発明に係るプリンタヘッド用駆動回路によれば、上述したプリンタヘッドと同様に、クロック信号供給線等の寄生容量を低減し、ライン走査信号を供給するライン走査回路等を高速で駆動させながら感光体を露光することが可能である。
【0024】
本発明に係る画像形成装置は上記課題を解決するために、上述したプリンタヘッドと、前記感光体と、前記プリンタヘッドによる露光によって前記感光体に形成された静電潜像を現像することで可視像を形成する現像手段と、前記形成された可視像を記録媒体上に転写する転写手段とを備える。
【0025】
本発明の画像形成装置によれば、上述した本発明に係るプリンタヘッドを備えるので、感光ドラム等の感光体を高速且つ高解像度で露光する。従って、その後の現像及び転写を経て、高速且つ高品位のカラー画像や白黒画像を、コピー用紙等の記録媒体上に形成できる。しかも、プリンタヘッドを小型化することで、画像形成装置における小型化を図ることも可能である。
【0026】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1乃至図6を参照しながら本実施形態に係るプリンタヘッドについて詳細に説明する。その後、図7を参照しながら、本発明に係る画像形成装置の一例であるプリンタについて説明する。尚、以下の実施形態では、電流駆動型の発光素子の一例である有機EL発光素子(以下、EL素子と称す。)を搭載したプリンタヘッドを例に挙げて説明する。
【0028】
(プリンタヘッド)
先ず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係るプリンタヘッドの概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタヘッドの構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、そのうち発光部及び画素回路の平面レイアウトに係る各種具体例を示す、プリンタヘッドの図式的な部分拡大平面図である。
【0029】
図1において、プリンタヘッド1は、基板10、基板10上でライン状に配列された複数の発光部11、データ信号が供給される外部回路接続端子12と、外部回路接続端子12に接続されたデータ線部13、走査回路17、クロック信号供給線30、電源供給線40、及びグランド配線50とを備えている。
【0030】
基板10は、図中左右方向を「長手方向」として長手状に伸びるガラス基板、石英基板、半導体基板等から構成される。基板10は、複数の発光部11が配列されたライン状の領域が、プリンタヘッド1を備えるプリンタが各種サイズの印刷用紙等に印刷できるようなサイズを有している。基板10は、その長手方向に、例えばAサイズの印刷用紙に印刷可能なように20cm〜30cmの長さを有する。基板の10は、その短手方向に例えば10mmの長さを有する。短手方向に短いと、プリンタヘッド1を備えたプリンタ内において、プリンタヘッド1を除く各種要素を配置するためのスペースを広く確保することができるので非常に有利である。
【0031】
外部回路接続端子12は、基板10の縁に沿って配列されている。複数設けられた外部回路接続端子12の一部には、データ信号源として、プリンタエンジン等から2値のデータ信号、即ち画素毎に点灯(オン)とするか又は非点灯(オフ)とするかを示すデータ信号が供給される。
【0032】
データ線部13は、基板10の長手方向に沿って伸びるように一本又は複数本配線されている。データ線部13には、外部回路接続端子12を介して、データ信号源からデータ信号が供給される。
【0033】
走査回路17は、基板10に後付け又は内蔵されている。走査回路17は、後述のように、各発光部11における発光のタイミングを制御するライン走査信号を各画素回路201に順次供給するように構成されている。
【0034】
クロック信号供給線30は、図中左右方向、即ち発光部11が配列された配列方向に沿って延在するように基板10上に配置されている。クロック信号供給線30は、図示しない、例えばタイミングジェネレータから供給されるクロック信号を走査回路17に供給する。
【0035】
電源供給線40及びグランド配線50は、クロック信号供給線30と同様に、発光部11の配列方向に沿って延在するように基板10上に配置されている。また、クロック信号供給線30、電源供給線40、及びグランド配線50は、基板10上に配置されている場合に限定されるものではなく、発光部11及び走査回路17と共に同一平面上に配置されていれば、基板10の内部に配置されていてもよい。電源供給線40は、例えば、走査回路17に含まれる各種素子を駆動するための電源を供給し、グランド配線50は、走査回路17に含まれる各種素子を接地する。プリンタヘッド1は、基板10上において電源供給線40及びグランド配線50の間に走査回路17が配置されている構成を備えており、且つ電源供給線40の外側、より具体的には、基板10上において電源供給線40の図中上側にクロック信号供給線30が配置されている。したがって、クロック信号供給線30から走査回路17にクロック信号を供給する際には、クロック信号が電源供給線40と交差することになる。
【0036】
図2において、複数の発光部11は基板10の長手方向に一致するライン方向に沿って配列されている。発光部11は、1ラインのみ設けられてもよいし(図2(a))、千鳥足状に複数ライン設けられてもよいし(図2(b))、マトリクス状に複数ライン設けられてもよい(図2(c))。いずれの具体例の場合にも、発光部11は、画素回路201毎に一つ設けられており、例えば10μm程度のピッチで配列されている。各画素回路201には、図1に示したライン走査回路17からライン走査信号が、ライン走査信号線141を介して供給されると共に、データ線部13の引出線部分13cを介してデータ信号が供給される。更に、画素回路201は、高電位配線116及び低電位配線118から夫々、高電位電源及び低電位電源が夫々供給されるように構成されている。
【0037】
次に図3を参照して、画素回路201及びこれに接続された各種配線についての一具体例について説明する。図3は、プリンタヘッド1の電気的な概略構成の一具体例を示すブロック図である。尚、図3において、図1及び図2に示した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、それらの説明は適宜省略する。図3において、データ線部13は、データ信号供給線13a、及び入力バッファDINVを含んで構成されている。更に、データ信号供給線13aから枝分かれした支線である引出線部13cの末端の夫々には、複数の画素回路201を備える画素回路群B1、B2、・・・、Bnが電気的に接続されている。尚、図3では、画素回路201は、横一列に配列されているが、その実際の平面レイアウトとしては、図2(a)〜図2(c)に示した如く、各種のレイアウトを採ることが可能である。図3の具体例では特に、入力バッファDINVは、データ信号供給線13aから供給される2値のデータ信号に対応して2値電圧を生成すると共に引出線部分13cを介して画素回路201へ供給する。入力バッファDINV及び静電保護回路226及び228により、静電気等の異常電圧からプリンタヘッド1の各部を保護することができる。更に、別途供給される電源電圧を用いて、データ信号供給線13a及び引出線部分13cにおける2値電圧を、2値のデータ信号のオン又はオフに対応する2値電圧のいずれかに確固として保持することができる。これにより、データ線部13を介して、画素回路201の駆動が可能となる。本実施形態では、プリンタヘッド1が備える画素回路201の駆動方法として電圧プログラム方式を採用しているが、画素回路201の駆動方法は電圧プログラム方式に限定されるものではなく、例えば、伝統的な有機ELディスプレイ装置の駆動方法である電流プログラム方式を採用することも可能である。
【0038】
走査回路17は、本発明に係る「ライン走査回路」の一例であるシフトレジスタ回路SR、及び本発明に係る「クロック信号供給手段」の一例であるトランスミッションゲート群TGを含む。シフトレジスタ回路SRは、クロック信号供給線30からトランスミッションゲート群TGを介して供給されるクロック信号に応じて、ライン走査信号S1、S2、・・・、S4をライン走査信号線141に順次供給するように構成されている。
【0039】
トランスミッションゲート群TGは、本発明に係る「第1単位回路」の夫々一例であるトランスミッションゲートTG01、TG02、・・・、TGm1を備えている。トランスミッションゲートTG01、TG02、・・・、TGm1の夫々は、クロック信号供給線30に電気的に並列に接続されており、且つシフトレジスタ回路SRの各段SRiに電気的に接続されている。即ち、トランスミッションゲートTGm1のmは、シフトレジスタSRnのnと一致する。トランスミッションゲートTG01、TG11、・・・、TGm1の夫々は、クロック信号を順次シフトレジスタ回路SRの各段SRiに供給する。トランスミッションゲートTG10、TG11、・・・、TGm1の夫々は、クロック信号出力線241を介してシフトレジスタ回路SRの各段SRiと電気的に接続されている。クロック信号出力線241は、電源供給線40との間に、例えば絶縁膜等を介在させて配置されており、電源供給線40と交差するように図中上下方向に延在されている。したがって、電源供給線40は、各クロック信号出力線241と交差する部分を含んでおり、トランスミッションゲートTG01、TG11、・・・、TGm1からシフトレジスタ回路SRの各段SRiに供給されるクロック信号は、電源供給線40と交差することになる。
【0040】
シフトレジスタ回路SRは、夫々シフトレジスタ回路SRの各段SRi(i=0、1、2、・・・、n)を備えている。尚、以下の説明においては、最初にスタートパルスSPが入力される段SR0は、次の段SR1にスタートパルスを転送するのみであり、段SR1以降の各段SR1、SR2、・・・、SRnが画素回路201にライン走査信号Siを供給する。
【0041】
シフトレジスタ回路SRの各段SRiの夫々は、本発明に係る「第2単位回路」の夫々一例であり、シフトレジスタ回路SRの第1段目である段SR0には、プリンタヘッド1の動作時にスタートパルスSP及びクロック信号CLKが入力される。段SR0は、クロック信号CLKに応じてスタートパルスSPをラッチしてサンプリング制御信号を出力し、このサンプリング制御信号によって次の段SR1に転送信号を供給し、順次各段SR1が次段に転送信号を供給する。これにより、シフトレジスタ回路SRの各段SRiは、スタートパルスSPをサンプリング制御信号にしたがってサンプリングしてライン走査信号Siとしてライン走査信号線141に供給する。より具体的には、段SRiは、隣接する段と互いに電気的に接続されたフリップフロップ回路部FFi(i=0、1,2、・・・、n)、OR論理回路部ORi(i=1、2、・・・、n)、インバータINVi(i=0、1、2、・・・、n)及びCMOSで夫々構成されるトランスミッションゲートTGi2(i=0、1、2、・・・、n)を備えており、各段SRiはこれらの要素によって上述したスタートパルスSPを処理してライン走査信号S1、S2、…、Snを画素回路201に供給する。2段目以降の段SRi(i=1、2、・・、n)は、NAND回路部Ni(i=1、2、・・・、n)を更に備えており、NAND回路部Niを介してライン走査信号Siを画素回路201に供給する。シフトレジスタ回路SRの最終段である段SRnは、スタートパルスSPをエンドパルスEPとして出力する。
【0042】
トランスミッションゲートTG01、TG11、・・・、TGm1の夫々は、クロック信号供給線30から供給されるクロック信号を選択的にシフトレジスタ回路SRの各段SRiに供給することによって、クロック信号が電源供給線40と交差する機会を低減する。より具体的には、例えば、シフトレジスタ回路SRの各段から供給されるクロック供給制御信号をカウントすることによって、クロック信号が必要とされる段を選択してクロック信号を供給する。これにより、クロック信号が電源供給線40を交差する際にクロック信号供給線30及びクロック信号出力線241に生じる寄生容量を低減することが可能になり、高速でクロック信号を供給することが可能になる。
【0043】
画素回路201は、制御用トランジスタTR1、駆動用トランジスタTR2、及びEL素子OLEDを含んで構成されている。EL素子OLEDは、図1及び図2に示した発光部11として機能する。尚、EL素子OLEDの詳細な構成は、既存の有機ELディスプレイパネルにおけるEL素子におけるそれと同様或いは類似である。制御用トランジスタTR1は、そのゲートにライン走査信号Si(i=1、2…、n)が供給される。そして、そのソースに引出線部分13cから供給されるデータ信号の2値電圧を、対応するライン走査信号Siが供給されるタイミングで、そのソースドレイン間を介して駆動用トランジスタTR2のゲートへ供給するように構成されている。駆動用トランジスタTR2は、そのゲートにデータ信号の2値電圧の一方の値(例えばハイレベルの電圧)が印加されると、オンされる。よってこの際、所定電位が供給されているEL素子の陰極及び陽極間に駆動電流が流れる。これにより、EL素子OLEDは、発光、即ち点灯する。逆に、駆動用トランジスタTR2は、そのゲートにデータ信号の2値電圧の他方の値(例えばローレベルの電圧)が印加されると、オフされる。よってこの際、所定電位が供給されている陰極及び陽極間に、駆動電流が流れることはない。
【0044】
画素回路201は、4つの発光部11(図1及び図2参照)を夫々備える画素ブロックBi(i=0、1、・・・、n)にグループ分けされている。画素ブロックBiは、所定個数の画素回路201(即ち、ここでは4個)を含む。画素ブロックBiは、夫々一本のライン走査信号線141が電気的に接続されており、画素ブロックBiに含まれる複数の発光部11に一括してこのライン走査信号線141から、同一のライン走査信号Siが供給される。尚、本実施形態においては、データ信号供給線13aが4本の場合を例に挙げて説明するが、データ線部13に含まれるデータ線信号供給線の本数は4本に限定されるものではなく、例えば、データ信号供給線の本数が128本である場合には、データ線部13から128個の異なるデータ信号を、同一画素ブロックに属する128個の画素回路毎に、同時に供給することが可能である。4本のデータ信号供給線13aの夫々は、画素ブロックBiに含まれる発光部11に夫々電気的に接続されている。画素ブロックBiに含まれる4つの画素回路201の夫々にデータ信号供給線13aが夫々一本ずつ電気的に接続されている。更に、データ信号供給線13aの夫々は、他の画素ブロックBiに含まれる画素回路201にも電気的に接続されている。したがって、データ線部13に含まれるデータ信号供給線13aの夫々は、各画素ブロックBiに含まれる画素回路201に共用されている。これにより、直線状に配置された画素回路201を画素ブロックBi毎に動作させることができる。
【0045】
次に、図4及び図5を参照しながら、プリンタヘッド1の構成について更に詳細に説明する。図4は、プリンタヘッド1の一部を拡大して示した平面図であり、図5は、図4におけるV−V´線断面図である。尚、各トランスミッションゲートTG01、TG11、・・・、TGm1、TG02、TG12、・・・、TGn2、シフトレジスタ回路SRの各段SR0、SR1、・・・SRn、及びシフトレジスタ回路SRの各段と電気的に接続される配線等は、所要の電気的な接続が互いになされた上で図3中の左右方向に沿って繰り返された構成を備えることから、図4及び図5においては、トランスミッションゲートTG11近傍の構成を示しながら説明する。
【0046】
図4において図中上側から順にクロック信号供給線30、トランスミッションゲートTG11、電源供給線40、トランスミッションゲートTG12、シフトレジスタ回路SRの一の段SR1、及びグランド配線50が基板10上に配置されている。
【0047】
クロック信号供給線30、電源供給線40、及びグランド配線50は、複数の画素回路201に沿って配置された走査回路17に沿って図中左右方向に沿って延在されている。トランスミッションゲートTG11は、図中上下方向に沿ってクロック信号供給線30及び電源供給線40の間に配置されている。トランスミッションゲートTG11の出力側は、トランスミッションゲートTG12の入力側と電気的に接続されている。より具体的には、トランスミッションゲートTG11の出力側は、図中上下方向に沿って延在されたクロック信号出力線241を介してトランスミッションゲートTG12の入力側と電気的に接続されている。クロック信号出力線241は、絶縁膜を介して電源供給線40と絶縁された状態で図中上下方向に沿ってされていることから、クロック信号出力線241は、電源供給線40と絶縁された状態で交差していることになる。したがって、クロック信号をトランスミッションゲートTG11からトランスミッションゲートTG12に供給する場合、クロック信号は電源供給線40を交差することになる。
【0048】
シフトレジスタ回路SRは、図中上下方向に沿って電源供給線40及びグランド配線50の間に配置されている。図中ではシフトレジスタ回路SRの一の段SR1に含まれるトランジスタTR50及びNAND回路N1が備えるトランジスタTR60の一部が示されている。NAND回路N1は、シフトレジスタ回路SRの一の段SR1から出力されたライン走査信号を、NAND回路N1に電気的に接続された画素回路群B1に一括にて供給する。
【0049】
図5において、クロック信号供給線30、トランスミッションゲートTG11、電源供給線40、シフトレジスタ回路SRの一の段SR1、及びグランド配線50は、基板10上に形成された絶縁膜122、124、125、及びゲート絶縁膜123の膜上或いは膜中に配置されている。トランスミッションゲートTG11はトランジスタTR60を備えている。トランジスタTR60には、ゲート絶縁膜124を貫通してトランジスタTR60の半導体層105に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。トランジスタTR60のドレイン電極101及びソース電極103を構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層105の表面に至るように連続的に形成されている。ドレイン電極101は、クロック信号出力線241に電気的に接続されており、ソース電極103は、クロック信号供給線30に電気的に接続されている。ゲート電極102は、ゲート絶縁膜123を介して半導体層105と対向するように形成されていると共に、ドレイン電極101及びソース電極103と電気的に隔絶されるように絶縁膜124に埋め込まれている。クロック信号出力線241は、絶縁膜124上に形成された電源供給線40の下側で電源供給線40と交差するように絶縁膜124に埋め込まれており、シフトレジスタ回路SRの一の段SR1まで延在されている。シフトレジスタ回路SRの一の段SR1に含まれるトランジスタTR50は、トランスミッションゲートTR11と同様に、絶縁膜124を貫通してトランジスタTR50の半導体層205に至るコンタクトホール601及び602が形成されている。トランジスタTR50のドレイン電極201及びソース電極203を構成する導電膜は、コンタクトホール601及び602の各々の内壁に沿って半導体層205の表面に至るように連続的に形成されている。尚、トランジスタTR50のゲート電極202はダブルゲート構造を有しているが、シングルゲート構造でもよいことは言うまでもない。グランド配線50は、ゲート絶縁膜124上に形成されており、ライン信号出力線141は、グランド配線50の下側でグランド配線50と交差するように絶縁膜124に埋め込まれている。
【0050】
このように、クロック信号出力線241が電源供給線40と交差するように配置されている場合、上述したようにトランスミッションゲートTG11が選択的にクロック信号をシフトレジスタ回路SRに供給することによって、クロック信号出力線241及びクロック信号供給線30に生じる寄生容量を低減することができ、高速でクロック信号をシフトレジスタ回路SRに供給することが可能である。特に、クロック信号供給線241及び電源供給線40の間に介在する絶縁膜124の厚みが薄い場合には、クロック信号を供給することによって生じる寄生容量も大きくなるが、クロック信号が電源供給線と交際する機会を低減すれば、発生する寄生容量を低減することが可能である。
【0051】
次に、図6を参照しながら本発明に係るプリンタヘッドの他の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係るプリンタヘッドの電気的な概略構成の一具体例を示すブロック図である。尚、図6において、図1及び図2に示した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、それらの説明は適宜省略する。プリンタヘッド100は、本発明に係る「クロック信号供給手段」の一例であるクロック制御回路部20、ライン走査回路17、データ線部13、画素回路部80、クロック信号供給線30、電源供給線40、及びグランド配線50を主たる構成要素として備えている。
【0052】
図6において、クロック信号制御部20は、本発明に係る「第1単位回路」の一例である複数のクロック制御回路21を備えている。クロック制御回路21は、プリンタヘッド100の長手方向に沿って延在されるクロック信号供給線30に電気的に並列に接続されている。クロック制御回路21は、後述する複数のクロック再生回路41毎に設けられている。クロック信号は、図中左右方向、即ち画素回路201が配列された配列方向に沿ってライン状に延在される部分を含むクロック信号供給線30を介してクロック制御回路21に供給される。尚、クロック信号供給線30を介して供給されるクロック信号は、図中左側である入力側から図示しないタイミングジェネレータ等によって入力される単相のクロック信号である。
【0053】
クロック制御回路21は、夫々4つの入出力端子を備えている。より具体的には、クロック制御回路21は、クロック信号入力端子CLKINa、固定電位入力端子VINa、クロック信号出力端子CLKOUTa、及びクロック供給制御信号入力端子CNTINaを備えている。クロック制御回路21は、クロック信号の入力側にバッファ32が電気的に介挿されたクロック信号供給線30に夫々電気的に並列に接続されている。バッファ32の入力インピーダンスは大きく、出力インピーダンスが小さいため、1(ハイレベル)又は0(ローレベル)を示すクロック信号の2値電圧の絶対値は、入力時と出力時とで殆ど変動しない。従って、バッファ32によれば、入力時のクロック信号の2値電圧の絶対値を維持しながら、クロック信号をクロック制御回路21の夫々に安定して供給することができる。特に、本実施形態では、クロック信号供給線30を一本にして配線容量を抑制した上で、クロック信号を安定して供給することができるとういう格別の効果を得ることが可能である。
【0054】
クロック信号の入力側に最も近い一番目のクロック制御回路21、即ち図中最も左側に配置されたクロック制御回路21の固定電位入力端子VINaには低電位(LO)の電源が入力され、2番目のクロック制御回路21の固定電位入力端子VINaには高電位(HIGH)の電源が入力される。3番目のクロック制御回路21の固定電位入力端子VINaには低電位(LO)の電源が入力され、4番目のクロック制御回路21の固定電位入力端子VINaには高電位(HIGH)の電源が入力される。複数のクロック制御回路21の固定電位入力端子VINaには、クロック信号の入力側から順番に低電位及び高電位の電源が交互に入力される。
【0055】
クロック制御回路21のクロック供給制御信号入力端子CNTINaには、後述するクロック再生回路41から出力されるクロック供給制御信号が入力される。クロック制御回路21は、固定電位入力端子VINa及びクロック供給制御信号入力端子CNTINaの夫々から入力される電源及びクロック供給制御信号に応じて、クロック入力端子CLKINaからクロック信号を取り込み、クロック信号出力端子CLKOUTaに出力する。クロック制御回路21が、電源及びクロック供給制御信号に応じてクロック信号を、後述するクロック再生回路41に供給することが、本発明に係る「選択的に」の一例に該当する。即ち、クロック制御回路21は、クロック信号が供給されている間に常時クロック信号をクロック再生回路41に供給するのではなく、クロック供給制御信号及び電源に応じて所定の期間の間のみクロック信号をクロック再生回路41に供給するのである。
【0056】
このように、クロック制御回路21は、クロック信号を後述するクロック再生回路41に常時供給しているのではなく、クロック供給制御信号及びクロック信号の両方が1(ハイレベル)を示す信号である場合にのみ、クロック再生回路41にクロック信号を供給する。より具体的には、後述するクロック再生回路41が正相及び逆相のクロック信号を生成している場合にのみ、クロック制御回路21はクロック信号をクロック再生回路41に供給可能な状態になる。即ち、クロック制御回路21は、正相及び逆相のクロック信号を生成しているクロック再生回路41に所定の期間のみ選択的にクロック信号を供給するのである。
【0057】
したがって、クロック信号を必要とするクロック再生回路41にのみクロック信号が供給されることになり、クロック信号出力線241が電源供給線40と交差するように配置されている場合であっても、クロック信号が電源供給線40を交差する機会を低減することができる。これにより、クロック信号供給線30及びクロック信号出力線241に寄生容量が生じることを低減することができ、寄生容量によるクロック信号の遅延を抑制し、高速でプリンタヘッドを駆動することができる。
【0058】
クロック生成部40は、本発明に係る「クロック波形生成手段」の一例であり、クロック制御回路21の夫々と電気的に接続された複数のクロック再生回路41を備える。クロック再生回路41は、本発明に係る「第2単位回路」の一例であり、クロック制御回路21から供給された単相のクロック信号から正相及び逆相のクロック信号を生成する。ここで、逆相のクロック信号とは、基準となる電位に対して正相のクロック信号を反転させた波形を有する信号である。クロック再生回路41は、クロック供給制御信号出力端子CNTOUTb、クロック入力端子CLKINb、第1入力端子OR1b及び第2入力端子OR2、正相クロック信号出力端子OUTb、及び逆相クロック信号出力端子OUTBbを備えている。クロック再生回路41は、クロック信号入力端子CLKINbから入力された単相のクロック信号から正相及び逆相のクロック信号を生成し、正相クロック信号出力端子OUTb及び逆相クロック信号出力端子OUTBbの夫々から正相及び逆相のクロック信号を、クロック再生回路41に対応するシフトレジスタ回路SRの一の段に供給する。このように単相のクロック信号から生成された正相及び逆相のクロック信号により、後述するシフトレジスタ回路SRの各段が順次転送信号をシフトレジスタの次段に転送すると共に、後述する画素回路201に論理素子等を介してライン走査信号を供給する。クロック再生回路41は、例えば、電気的に互いに接続された複数の論理素子及びインバータ等により単相のクロック信号を処理して、正相及び逆相のクロック信号を生成する。
【0059】
シフトレジスタ回路SRの各段は、スタートパルス或いは前段から出力された転送信号が入力される入力端子IN、転送信号を出力する出力端子OUT、クロック再生回路41の逆相クロック信号出力端子OUTBを電気的に接続されたクロック信号入力端子CL2、及び正相クロック信号出力端子OUTと電気的に接続されたクロック信号入力端子CL1を備えている。ここで、シフトレジスタ回路SRの図中最も左側に配置された段であるシフトレジスタSR0は、スタートパルスSPを転送信号として次段に転送するのみであり、シフトレジスタ回路SRの各段SR1、SR2、・・・、SRnから夫々順次出力される転送信号は、図中最も右側に配置されたシフトレジスタ回路SRの最終段であるシフトレジスタSRn+1でその転送が終了される。シフトレジスタ回路SRは、シフトレジスタの各段SR1、SR2、・・・、SRnの夫々に対応してNAND論理素子60が設けられている。シフトレジスタ回路SRの各段SR0、SR1、・・・、SRnは、正相のクロック信号及び逆相のクロック信号にしたがって順次1(ハイレベル)を示す転送信号をライン走査信号としてNAND論理素子60に供給する。NAND論理素子60は、後述する画素回路群B1、B2、・・・、Bnにライン走査信号を供給する。尚、スタートパルスをシフトレジスタ回路SRに供給するための配線31の途中に電気的に介挿されたバッファ33によれば、バッファ32と同様にスタートパルス或いは転送信号を安定してシフトレジスタSRの各段に供給することができる。シフトレジスタ回路SRの各段SRiによれば、クロック信号入力端子CL1及びCL2の夫々から正相のクロック信号及び逆相のクロック信号が入力された場合、転送信号は次段に転送される。
【0060】
以上説明したように、プリンタヘッド100によれば、クロック信号供給線30から走査回路17にクロック信号を供給する際に生じる寄生容量を低減することができるだけでなく、走査回路17に含まれるシフトレジスタ回路SRの負荷も低減することが可能である。したがって、プリンタヘッド100におけるクロック信号の伝達を高速で行うことができるだけでなく、プリンタヘッドの信頼性を高めることも可能である。
【0061】
(プリンタ)
次に図7を参照しながら上述のプリンタヘッド1を備えたプリンタに係る実施形態について詳細に説明する。ここに図7は、本実施形態に係るプリンタの主要構成を示す図式的断面図である。尚、以下の実施形態では、プリンタヘッド1をYMCK用に4つ備えたカラープリンタを例に挙げて説明する。
【0062】
図7において、プリンタ1000は、YMCK用の4つの画像形成ユニット1001Y、1001M、100C及び1001Kを備え、これらのユニットは夫々、本発明に係る「感光体」の一例たる感光ドラム1002と、その周囲に順に配置されたクリーナ1011、帯電器1012、プリンタヘッド1、及び本発明に係る「現像手段」の一例たる現像器1013を備えて構成されている。
【0063】
次に本実施形態のプリンタ1の構成をその動作と共に説明する。
【0064】
図7において、クリーナ1011により、前回のサイクルで感光ドラム1002の表面に残ったトナーが除去された後、今回のサイクル用に帯電器1012によって、コロナ放電等により感光ドラム1002の表面が帯電される。続いて、上述した実施形態のプリンタヘッド1によるデータ信号に応じた露光によって、感光ドラム1002の表面にデータ信号に応じた静電潜像が形成される。続いて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(黒)のうち、各ユニットに対応する色のトナーを用いることで、現像器1021による現像が行われ、感光ドラム1002の表面には、トナー付着による可視像たるトナー画像の形成が行われる。他方、転写ベルト1020は、ローラ1021、1022等により回動されている。そして、各感光ドラム1002に対向する転写位置にて、転写ローラ1014で裏側から押された形で、感光ドラム1002上のトナー画像が転写ベルト1020上に転写される。この転写されたトナー画像は、搬送装置1030により搬送されるコピー用紙等の用紙上に更に転写される。そして、不図示の定着装置等を介して、排出トレー上に画像形成済みの用紙が排出される。
【0065】
以上説明したように本実施形態のプリンタ1000は、上述したプリンタヘッド1或いは100を備えるので、感光ドラム1002を高速且つ高解像度で露光可能である。しかも、プリンタヘッド1を小型化することで、プリンタにおける小型化を図ることができる。特に図7において、感光ドラム1002の回転軸方向には、プリンタヘッド1は、その長手方向として所望の長さに形成することが容易にして可能であり、しかも、感光ドラム1002の周方向に沿った方向についてのプリンタヘッド1の長さは、その短長方向の長さに他ならず、非常に短くすることができる。よって、図7の如き感光ドラム1002の周囲を囲んで各種装置を配置する構成を有するプリンタに対して、本実施形態の如きプリンタヘッド1を適用することは、大変有利である。このようなプリンタ100においても、プリンタヘッド1或いは100は所要のサイズに小型化されたうえで高速にクロック信号等を伝達することができる。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うプリンタヘッド及びこれを備えたプリンタもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタヘッドの構成を概略的に示した斜視図である。
【図2】本実施形態に係るプリンタヘッドの図式的な部分拡大平面図である。
【図3】本実施形態に係るプリンタヘッドの電気的な接続状態を示したブロック図である。
【図4】本実施形態のプリンタヘッドの一部を拡大して示した平面図である。
【図5】図4のV−V´線断面図である。
【図6】本発明の他の本実施形態に係るプリンタヘッドの電気的な接続状態を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係るプリンタの主要構成を示す図式的断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1,100 プリンタヘッド、TR1 制御用トランジスタ、TR2 駆動用トランジスタ、201 画素部、11 発光部、17 走査回路、21 クロック制御回路、40 電源供給線、30 クロック信号供給線、50 グランド配線、OLED EL素子、101,201 ドレイン電極、102,202 ゲート電極、103,203 ソース電極、1000 プリンタ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
ライン状に配列されており、感光体を露光するための電流駆動型の発光素子を夫々含むと共に、順次供給されるライン走査信号に応じて前記発光素子に流れる駆動電流を規定するデータ信号が書き込まれるように構成されている複数の画素回路と、
前記複数の画素回路に前記ライン走査信号を順次供給するライン走査回路と、
前記複数の画素回路の配列方向に沿って延在される部分を含むクロック信号供給線を介して供給されるクロック信号を、前記ライン走査回路に対して選択的にクロック信号出力線を介して供給するクロック信号供給手段と、
前記ライン走査回路に電源を供給するために、前記基板上で平面的に見て前記クロック信号供給手段及び前記ライン走査回路の間に設けられており、前記複数の画素回路が配列された配列方向に沿ってライン状に延在すると共に前記クロック信号出力線が交差する部分を含む電源供給線と
を備えたことを特徴とするプリンタヘッド。
【請求項2】
前記ライン走査回路は、前記基板上で平面的に見て前記電源供給線と前記配列方向に沿ってライン状に延在する部分を含む接地側配線との間に配置されていること
を特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッド。
【請求項3】
前記クロック信号供給手段は、前記クロック信号供給線に電気的に並列に接続されており且つ前記クロック信号を選択的に前記ライン走査回路に夫々供給する複数の第1単位回路とを備えたこと
を特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタヘッド。
【請求項4】
前記クロック信号は単相のクロック信号であり、
前記ライン走査回路は、前記単相のクロック信号から正相のクロック信号及び逆相のクロック信号を生成するクロック波形生成手段と、該生成された正相及び逆相のクロック信号に基づいて転送信号を順次出力し、前記ライン走査信号として前記複数の画素回路に対して順次出力するシフトレジスタ回路とを備えたこと
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプリンタヘッド。
【請求項5】
前記クロック波形生成手段は、前記ライン方向に沿って前記第1単位回路に対応して配列されており且つ前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を夫々出力する複数の第2単位回路を含むこと
を特徴とする請求項4に記載のプリンタヘッド。
【請求項6】
前記複数の第1単位回路の夫々は、前記複数の第2単位回路のうち前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を非生成中のものに対して少なくとも所定期間だけ前記単相のクロック信号を供給しないように、前記複数の第2単位回路のうち前記正相のクロック信号及び前記逆相のクロック信号を生成中のものに対して前記単相のクロック信号を選択的に供給すること
を特徴とする請求項5に記載のプリンタヘッド。
【請求項7】
基板上に、ライン状に配列されており、感光体を露光するための電流駆動型の発光素子を夫々含むと共に、順次供給されるライン走査信号に応じて前記発光素子に流れる駆動電流を規定するデータ信号が書き込まれるように構成されている複数の画素回路を備えたプリンタヘッドを駆動するためのプリンタヘッド用駆動回路であって、
前記基板上に、
前記複数の画素回路に前記ライン走査信号を順次供給するライン走査回路と、
前記複数の画素回路の配列方向に沿って延在される部分を含むクロック信号供給線を介して供給されるクロック信号を、前記ライン走査回路に対して選択的にクロック信号出力線を介して供給するクロック信号供給手段と、
前記ライン走査回路に電源を供給するために、前記基板上で平面的に見て前記クロック信号供給手段及び前記ライン走査回路の間に設けられており、前記複数の画素回路が配列された配列方向に沿ってライン状に延在すると共に前記クロック信号出力線が交差する部分を含む電源供給線と
を備えたことを特徴とするプリンタヘッド用駆動回路。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のプリンタヘッドと、
前記感光体と、
前記プリンタヘッドによる露光によって前記感光体に形成された静電潜像を現像することで可視像を形成する現像手段と、
前記形成された可視像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えたこと
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−110821(P2006−110821A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299631(P2004−299631)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】