説明

プリンター

【課題】印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化する。
【解決手段】高精細モードにおいて,記録ヘッドは,標準モードよりも平均的に小さなインク滴を吐出し,送風ユニットは,記録ヘッドがインク滴を吐出する期間に標準モードよりも平均的に低い風速で送風し,搬送ユニットは,媒体に対して所定時間あたりにインク滴が付着する範囲が平均的に狭くなるように記録ヘッドを移動させる,プリンター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,接触角が大きくなるインクと媒体を使用してインクジェット方式で画像を媒体に形成する場合,高い分布密度で媒体に付着したインク滴同士が集合することが知られている。このようなインク滴の集合を防止するためには,1パスで媒体に付着させるインク滴の分布密度を低く抑えるとともに,インク滴を乾燥させた後に,先行パスと同一領域に後続パスでインク滴を付着させる処理を繰り返す。特許文献1には,媒体に付着したインク滴を強制乾燥させる技術が記載されている。媒体に付着したインク滴を強制乾燥させることによって,インク滴の乾燥時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−191507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載されているように,媒体に付着したインク滴を強制乾燥させる空気は記録ヘッドと媒体の間に送られる。したがって,記録ヘッドからインク滴が吐出されている期間に送風すると,風圧によってインク滴の飛行軌跡がずれてインク滴の着弾位置がずれる。そして画像を高精細化するためにインク滴を微小化すると,インク滴の比表面積が大きくなるため,着弾位置のずれが大きくなるという問題がある。また,記録ヘッドからインク滴が吐出されていない期間に限って送風する場合,印刷速度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するために創作されたものであって,印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するためのプリンターは,インク滴を媒体に向けて吐出する記録ヘッドと,前記媒体に付着した前記インク滴に向けて送風する送風ユニットと,前記記録ヘッドを前記媒体に対して相対的に移動させる搬送ユニットと,を備え,印刷モードとして標準モードと高精細モードとを有するプリンターであって,前記高精細モードにおいて,前記記録ヘッドは,前記標準モードよりも平均的に小さな前記インク滴を吐出し,前記送風ユニットは,前記記録ヘッドが前記インク滴を吐出する期間に前記標準モードよりも平均的に低い風速で送風し,前記搬送ユニットは,前記媒体に対して所定時間あたりに前記インク滴が付着する範囲が平均的に狭くなるように前記記録ヘッドを移動させる。
【0007】
記録ヘッドがインク滴を吐出する期間に標準モードよりも平均的に低い風速で送風すると,インク滴が標準モードよりも平均的に小さくても,インク滴の着弾位置のずれを抑制できる。風速が低くなれば風量が減少するため,インク滴の乾燥は遅くなる。所定時間あたりに媒体にインク滴が付着する範囲を平均的に狭くすると,所定時間あたりに媒体に付着するインク滴の量が減少するため,風量が減少してもインク滴を十分に乾燥させることができる。したがって本発明によると,印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化することができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するためのプリンターにおいて,前記搬送ユニットは,前記インク滴を吐出している前記記録ヘッドを前記媒体に対して主走査方向に移動させる主搬送部を備え,前記高精細モードにおいて,前記主搬送部は,前記主走査方向に垂直な副走査方向への前記記録ヘッドの前記媒体に対する移動距離あたりの前記主走査方向における前記記録ヘッドの往復移動回数を前記標準モードよりも増大させてもよい。
【0009】
媒体に対する記録ヘッドの副走査方向への移動距離あたりの主走査方向における往復移動回数を増大させることにより,面積あたりのインク滴の必要吐出量を確保しながら,媒体に対して所定時間あたりにインク滴が付着する範囲を平均的に狭くすることができる。このため,媒体に付着したインク滴を乾燥させる時間を確保することができる。
【0010】
(3)上記目的を達成するためのプリンターにおいて,前記搬送ユニットは,前記高精細モードにおいて前記インク滴を吐出していない前記記録ヘッドを前記媒体に対して一時停止させてもよい。
【0011】
送風ユニットが送風している期間にインク滴を吐出していない記録ヘッドを媒体に対して一時停止させることにより,媒体に付着したインク滴を乾燥させる時間を確保することができる。
【0012】
(4)上記目的を達成するためのプリンターにおいて,前記搬送ユニットは,前記高精細モードにおいて前記インク滴を吐出している前記記録ヘッドを前記媒体に対して前記主走査方向に前記標準モードよりも遅く移動させてもよい。
【0013】
インク滴を吐出している記録ヘッドを媒体に対して主走査方向に遅く移動させることにより,媒体に付着したインク滴を乾燥させる時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図2】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図3】本発明の実施形態にかかるフローチャート。
【図4】本発明の実施形態にかかるフローチャート。
【図5】本発明の実施形態にかかるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
【0016】
1.第一実施例
図1に本発明の一実施例としてのプリンター1を示す。プリンター1は,媒体にインクを定着させることによって画像を形成するシリアル型インクジェットプリンターである。プリンター1は,主走査方向に移動しながらインク滴を吐出する記録ヘッド11と,媒体Pに対して記録ヘッド11を主走査方向及び副走査方向に相対的に移動させる搬送ユニット20と,媒体Pに付着したインク滴に向けて送風する送風ユニット30と,制御部40とを備えている。
【0017】
搬送ユニット20は,媒体Pを主走査方向に対して垂直な副走査方向に移動させるために,給紙ローラー22,中継ローラー21a,21b,副走査ローラー17a,17b,17c,17d,電動機26,モータードライバー45,ガイド25,プラテン19,紙検出センサー18等からなる副搬送部を備えている。給紙ローラー22は,トレイ27から最上部の媒体Pを1枚ずつ取り出して媒体Pをその先端が中継ローラー21a,21bに到達するまで搬送するためのローラーである。中継ローラー21a,21bは,トレイ27から給紙ローラー22によって搬送された媒体Pを副走査ローラー17c,17dが保持できる位置まで搬送するローラーである。モータードライバー45は電動機26を駆動する回路である。電動機26は,給紙ローラー22と中継ローラー21a,21bと副走査ローラー17b,17dとを同時に回転させる。ガイド25は中継ローラー21a,21bと給紙ローラー22によって搬送される媒体Pを副走査ローラー17c,17dが保持できる位置まで案内する形態を有する壁である。副走査ローラー17a,17b,17c,17dはトレイ27から取り出され中継ローラー21a,21bによって搬送された媒体Pを副走査方向に搬送する。プラテン19は,記録ヘッド11の直下に設けられ,媒体Pを記録ヘッド11に対して位置決めする棒状部材である。紙検出センサー18は,プラテン19の上流側の近傍に設けられた光センサーである。紙検出センサー18は図示しない発光部と受光部とを備え,発光部から受光部までの光路を媒体Pが遮ることにより,カット紙の先端が紙検出センサー18の光路に到達したことを検出する。
【0018】
また搬送ユニット20は,媒体Pに対して記録ヘッド11を主走査方向に移動させるために,キャリッジ13,ガイド14,無端ベルト15,電動機16,モータードライバー47等からなる主搬送部を備えている。キャリッジ13は,インクタンク12および記録ヘッド11を搭載して往復移動する支持部材である。ガイド14は,図2に示すホームポジションHからアウェイポジションLまでキャリッジ13の移動を主走査方向に案内する棒状部材である。無端ベルト15は,図示しないプーリーに架け渡され,キャリッジ13を主走査方向に牽引する。電動機16は無端ベルト15が架け渡されているプーリーを回転させるステッピングモーターである。モータードライバー47は電動機16を駆動する回路である。
【0019】
記録ヘッド11はピエゾ方式やサーマル方式といった周知のインク吐出機構を備え,トレイ27から供給された媒体Pに対してインク滴を多数のノズルから吐出して定着させる。インク滴の吐出タイミングは記録ヘッド11が主走査方向に所定距離移動する度に図示しないエンコーダーから出力される信号の立ち上がりまたは立ち下がりに対応する。インクタンク12は,記録ヘッド11に供給されるインクを色別に貯蔵する容器である。ヘッドコントローラー46は1バンド分の印刷データに基づいて記録ヘッド11を駆動する回路である。ここでいうバンドは,記録ヘッド11がノズルからインク滴を吐出しながら主走査方向に移動することによってインク滴を付着させることができる媒体Pの領域である。
【0020】
送風ユニット30は,ファンと,ファンを駆動する電動機と,この電動機を駆動する回路と,ファンの軸方向から吸気してファンの接線方向に排気するケースと,ケースの排気口からプラテン19の近傍に延伸するノズルとを備えている。プラテン19の近傍に位置するノズルの開口部30aは図2に示すようにプラテン19と平行な方向に長く伸びる扁平な形状を有し,プラテン19と記録ヘッド11の間に空気を送出する。ノズルの開口部30aの幅は媒体Pの主走査方向の幅とほぼ等しい。したがって送風ユニット30は主走査方向に移動することなく,媒体Pに付着した1バンド分のインク滴に風を送ることができる。
【0021】
制御部40は,図示しないCPU(Central Processing Unit),メインメモリ,不揮発性メモリ,入出力部等で構成されるコンピューターを含む。不揮発性メモリにはモータードライバー45,47,ヘッドコントローラー46および送風ユニット30を制御するための印刷制御プログラムが記憶されている。CPUはメインメモリにロードされる印刷制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0022】
図3はプリンター1を用いた印刷方法の第一実施例を示すフローチャートである。この方法は,水またはアルコールを溶媒の主成分とする水系インクをPET(Polyethylene terephthalate)やPEN(Polyethylene naphthalate)等の樹脂性の媒体Pに定着させることによって画像を印刷するものである。水系インクは樹脂製の媒体Pに浸透しないため,インク滴の吹きつけと乾燥とを繰り返して媒体Pに画像を形成する。
【0023】
はじめに制御部40によって印刷モードが判定される(S100)。すなわち,制御部40は印刷モードとして標準モードと高精細モードのどちらが選択されているかを判定する。印刷モードは,プリンター1に設けられる操作パネルやプリンター1に接続される制御装置としてのPC(Personal Computer)等においてユーザーが行う所定の操作に応じて選択される。
【0024】
標準モードと高精細モードの具体的な違いは次の通りである。記録ヘッド11から吐出されるインク滴の質量は,標準モードでは7ngとなり,高精細モードでは3ngとなる。インク滴の質量が小さいほど媒体へのインク滴の付着面積が小さくなるため,きめの細かい画像を形成することができる。1バンドあたりのパス数は,標準モードでは記録ヘッド11がホームポジションHとアウェイポジションLとを4往復する8パスとなり,高精細モードでは記録ヘッド11がホームポジションHとアウェイポジションLとを8往復する16パスとなる。すなわち,印刷速度を高めるためにプリンター1は標準モードおよび高精細モードの両方で双方向印刷を実施する。1バンドあたりのパス数が多いほど,1パスあたりに吐出されるインク量が少なくなり,1バンドの画像を形成するのに要する時間が長くなり,媒体Pに付着した1バンド分のインク量あたりに送風ユニット30から送られる空気量が多くなる。記録ヘッド11の主走査方向への移動速度は,記録ヘッド11の主走査方向の位置を検出するエンコーダーの出力パルス換算で標準モード,高精細モードともに200cpsである。送風ユニット30の送風速度は,標準モードで3m/s,高精細モードで1m/sである。送風速度が高いほど,媒体Pに付着した1パス分のインクに送風ユニット30から送られる空気量が多くなる。
【0025】
すなわちプリンター1は,印刷モードが標準モードである場合,パス数を減らし,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を上げ,大きなインク滴を記録ヘッド11から吐出して印刷を実行する(S101a)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が7ngのインク滴をノズルから吐出しながら主走査方向に200cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速3m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。なお,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する間,媒体Pの副走査方向への搬送を停止してもよいが,記録ヘッド11が主走査方向に1往復する度に1/4バンド分だけ媒体Pを記録ヘッド11に対して副走査方向に移動させてもよいし,記録ヘッド11が1パス分移動する度に1/8バンド分だけ媒体Pを記録ヘッド11に対して副走査方向に移動させてもよい。
【0026】
またプリンター1は,印刷モードが高精細モードである場合,パス数を増やし,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を下げ,小さなインク滴を記録ヘッド11から吐出して印刷を実行する(S102a)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が3ngのインク滴を吐出しながら主走査方向に200cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速1m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に8往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。
【0027】
以上説明した第一実施例によると,高精細モードでは標準モードよりも小さなインク滴を記録ヘッド11から吐出している期間も送風ユニット30による送風が継続するが,風速が標準モードよりも低いため,インク滴の着弾位置のずれを抑制できる。また高精細モードでは送風ユニット30の風速が低くなるものの,バンドあたりのパス数が標準モードよりも増大しているため,媒体Pに付着したインク滴に吹き付けられるバンドあたりの空気量の減少が抑制される。また,高精細モードではパスあたりのインク吐出量が標準モードよりも少なくなるため,送風ユニット30によって媒体Pに付着したインク滴に吹き付けられるインク量あたりの空気量の減少が抑制される。したがって先行パスのインク滴を十分乾燥させてから,先行パスによって付着したインク滴を下地として後続パスのインク滴を付着させることができる。すなわち,上述した第一実施例によると,印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化することができる。
【0028】
なお,標準モードでは比較的高い風速で空気が媒体Pと記録ヘッド11の間を流通するため,極微小な霧状のインク滴を吐出することは望ましくないが,高精細モードよりも比表面積が小さく,3ngよりも重いインク滴を吐出してもよい。例えば,7ngと14ngの2種類のインク滴を高精細モードで吐出してもよい。また高精細モードにおいても送風ユニット30による送風の影響が少ない範囲で質量が互いに異なる2種類以上のインク滴を吐出してもよい。もちろん,3ng,7ngというインク滴の質量や,3m/s,1m/sという風速や,200cpsという記録ヘッドの主走査方向の速度や,8パス,16パスという1バンドあたりのパス数は例示である。すなわち,印刷モードが高精細モードである場合,バンドあたりのパス数が標準モードよりも多く,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速が標準モードよりも低く,標準モードよりも小さなインク滴を記録ヘッド11から吐出して印刷を実行すればよい。
【0029】
2.第二実施例
図4はプリンター1を用いた印刷方法の第二実施例を示すフローチャートである。第一実施例と共通の説明は省略する。
【0030】
第二実施例において標準モードと高精細モードの具体的な違いは次の通りである。記録ヘッド11から吐出されるインク滴の質量は,標準モードでは7ngとなり,高精細モードでは3ngとなる。1バンドあたりのパス数は,標準モードも高精細モードも記録ヘッド11がホームポジションHとアウェイポジションLとを4往復する8パスとなる。ただし,高精細モードでは2パス毎にホームポジションHにおいて記録ヘッド11が5秒間一時停止する。標準モードでは媒体Pが副走査方向に搬送するのに必要な期間を除いて記録ヘッド11は移動し続ける。記録ヘッド11の主走査方向への移動速度は,高精細モードも標準モードも200cpsである。送風ユニット30の送風速度は,標準モードで3m/s,高精細モードで1m/sである。
【0031】
すなわち,プリンター1は,印刷モードが標準モードである場合,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を上げ,大きなインク滴を記録ヘッド11から吐出しながら印刷を実行する(S101b)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が7ngのインク滴をノズルから吐出しながら主走査方向に200cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速3m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。
【0032】
また,プリンター1は,印刷モードが高精細モードである場合,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を下げ,小さなインク滴を記録ヘッド11から吐出して2パス毎に記録ヘッド11の移動を一時停止させながら印刷を実行する(S102b)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が3ngのインク滴をノズルから吐出しながら主走査方向に200cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11がホームポジションHに移動する度に5秒間停止するように電動機16およびモータードライバー47を制御する。記録ヘッド11がホームポジションHに停止している期間は,記録ヘッド11からインク滴が吐出されることはない。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速1m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。
【0033】
以上説明した第二実施例によると,高精細モードでは2パス毎に5秒間ずつ記録ヘッド11を停止させたまま送風ユニット10によって送風し続けるため,媒体Pに付着したインク滴を十分乾燥させることができる。したがって印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化することができる。なお,アウェイポジションLにおいては記録ヘッド11を一時停止させないため,ホームポジションHからアウェイポジションLまでの往路において記録ヘッド11から吐出されたインク滴が十分乾燥する前に復路において記録ヘッド11から吐出されたインク滴が媒体Pに付着することになるが,1バンド分のインク滴を8パスに振り分けているため,1パスの吐出によって媒体Pに付着するインク滴の分布密度は低い。このため,往路のパスで媒体Pに付着したインク滴が十分乾燥する前に復路のパスでインク滴が吐出されたとしても問題はない。なお,アウェイポジションLにおいても記録ヘッド11を一時停止させてもよい。
【0034】
3.第三実施例
図5はプリンター1を用いた印刷方法の第三実施例を示すフローチャートである。第一実施例と共通の説明は省略する。
【0035】
第三実施例において標準モードと高精細モードの具体的な違いは次の通りである。記録ヘッド11から吐出されるインク滴の質量は,標準モードでは7ngとなり,高精細モードでは3ngとなる。1バンドあたりのパス数は,標準モードも高精細モードも記録ヘッド11がホームポジションHとアウェイポジションLとを4往復する8パスとなる。記録ヘッド11の主走査方向への移動速度は,標準モードでは200cps,高精細モードでは100cpsである。送風ユニット30の送風速度は,標準モードで3m/s,高精細モードで1m/sである。
【0036】
すなわち,プリンター1は,印刷モードが標準モードである場合,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を上げ,高い速度で主走査方向に移動する記録ヘッド11から大きなインク滴を吐出しながら印刷を実行する(S101c)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が7ngのインク滴をノズルから吐出しながら主走査方向に200cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速3m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。
【0037】
また,プリンター1は,印刷モードが高精細モードである場合,媒体Pに付着したインク滴に送風ユニット30から送る空気の風速を下げ,低い速度で主走査方向に移動する記録ヘッド11から小さなインク滴を吐出しながら印刷を実行する(S102c)。具体的には,制御部40は,記録ヘッド11が3ngのインク滴をノズルから吐出しながら主走査方向に100cps相当の速度で移動するようにヘッドコントローラー46,電動機16,モータードライバー47および記録ヘッド11を制御する。また制御部40は,印刷開始から印刷終了まで,ノズルの開口部30aから風速1m/sで空気が吹き出されるように送風ユニット30を制御する。そして制御部40は,記録ヘッド11が主走査方向に4往復する度に,1バンド分だけ媒体Pが記録ヘッド11に対して副走査方向に移動するようにモータードライバー45および電動機26を制御する。
【0038】
以上説明した第三実施例によると,インク滴を吐出している記録ヘッド11を媒体Pに対して主走査方向に遅く移動させることにより,媒体Pに付着したインク滴を乾燥させる時間を確保することができる。したがって印刷速度の低下を抑制しつつ,媒体に印刷される画像を高精細化することができる。
【0039】
4.他の実施形態
尚,本発明の技術的範囲は,上述した実施例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0040】
例えば本発明はラインプリンターに適用してもよい。すなわち,主搬送部としてのモータードライバー47,電動機16,無端ベルト15,ガイド14を備えず,記録ヘッド11の主走査方向の幅をバンドの長さと一致させてもよい。
【0041】
また送風ユニットを主走査方向に移動させてもよい。すなわち,記録ヘッド11に追従するように送風ユニットを主走査方向に移動させてもよい。この場合,記録ヘッド11と媒体Pの間に送風ユニットから直接風が送られることはないが,送風ユニットによる送風によってプリンター1の図示しない筐体内で気流が発生するため,微小なインク滴はこの気流の影響を受ける。したがって,このような場合であっても,本発明は有効に作用する。
【0042】
また,どのような組成のインク滴や媒体を用いる場合であっても,本発明は有効に作用する。例えばカット紙などの紙媒体に溶剤系インク滴(比極性溶媒に顔料や染料が分散または溶けているインク滴)を吐出する場合であっても,本発明を適用することにより,紙媒体に印刷される画像を高精細化することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…プリンター,10…送風ユニット,11…記録ヘッド,12…インクタンク,13…キャリッジ,14…ガイド,15…無端ベルト,16…電動機,17a,17b,17c,17d…副走査ローラー,18…紙検出センサー,19…プラテン,20…搬送ユニット,21a,21b…中継ローラー,22…給紙ローラー,25…ガイド,26…電動機,27…トレイ,30…送風ユニット,30a…開口部,40…制御部,45,47…モータードライバー,46…ヘッドコントローラー,P…媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を媒体に向けて吐出する記録ヘッドと,
前記媒体に付着した前記インク滴に向けて送風する送風ユニットと,
前記記録ヘッドを前記媒体に対して相対的に移動させる搬送ユニットと,
を備え,
印刷モードとして標準モードと高精細モードとを有するプリンターであって,
前記高精細モードにおいて,
前記記録ヘッドは,前記標準モードよりも平均的に小さな前記インク滴を吐出し,
前記送風ユニットは,前記記録ヘッドが前記インク滴を吐出する期間に前記標準モードよりも平均的に低い風速で送風し,
前記搬送ユニットは,前記媒体に対して所定時間あたりに前記インク滴が付着する範囲が平均的に狭くなるように前記記録ヘッドを移動させる,
プリンター。
【請求項2】
前記搬送ユニットは,前記インク滴を吐出している前記記録ヘッドを前記媒体に対して主走査方向に移動させる主搬送部を備え,
前記高精細モードにおいて,
前記主搬送部は,前記主走査方向に垂直な副走査方向への前記記録ヘッドの前記媒体に対する移動距離あたりの前記主走査方向における前記記録ヘッドの往復移動回数を前記標準モードよりも増大させる,
請求項1に記載のプリンター。
【請求項3】
前記搬送ユニットは,前記高精細モードにおいて前記インク滴を吐出していない前記記録ヘッドを前記媒体に対して一時停止させる,
請求項1または2に記載のプリンター。
【請求項4】
前記搬送ユニットは,前記高精細モードにおいて前記インク滴を吐出している前記記録ヘッドを前記媒体に対して前記主走査方向に前記標準モードよりも遅く移動させる,
請求項1,2または3に記載のプリンター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−187750(P2012−187750A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51332(P2011−51332)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】